説明

電磁アクチュエータ、光量調節装置および光学機器

【課題】ヨークの磁気的ロスを抑えつつ、ロータに対してヨークを高い精度で位置決めできる小型の電磁アクチュエータが求められている。
【解決手段】電磁アクチュエータは、ロータと、2つの磁極部およびコイルが装着される磁路形成部を有するヨークとを含む。磁路形成部は、ヨークをベース部材に取り付けるための突起部を有し、ヨークは粉末冶金成形法により形成される。磁路形成部における磁路が延びる第1の方向に直交する断面を磁路断面といい、ロータの回転中心軸が延びる方向から見たときの第1の方向に直交する第2の方向での幅を磁路幅という。突起部は、磁路形成部のうち該突起部を含む第1の部分での磁路断面の面積が、第1の方向にて第1の部分に隣接する第2の部分での磁路断面の面積よりも小さくならず、かつ第1の部分の磁路幅が第2の部分の磁路幅よりも大きくならないように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルへの通電により発生させた電磁力によってロータを回転させる電磁アクチュエータに関し、例えば、カメラ等の光学機器に搭載される光量調節装置の駆動源に好適な電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電磁アクチュエータとして、特許文献1には、複数の着磁部が形成された外周面を有する回転可能なロータと、コイルと、ロータの外周面のうち周方向にて互いに異なる領域に対向する2つの磁極部を有するヨークとにより構成された電磁アクチュエータが開示されている。ロータは、光量調節装置のベース部材によって回転可能に支持されている。また、ヨークには、2つの磁極部をつなぐとともにコイルが装着されるU字形状(馬蹄形状)の磁路形成部が設けられている。特許文献1にて開示された電磁アクチュエータは、上記のようなヨークを2つ備えている。また、特許文献2には、1つのロータに対して、上記のようなヨークとコイルが二組設けられた電磁アクチュエータが開示されている。
【0003】
これらの電磁アクチュエータにおいて、ロータの外周面とこれに対向するヨークの磁極部との位置関係は電磁アクチュエータの性能に大きく影響する。このため、ヨークを、ロータを回転可能に支持するベース部材に対して(つまりはロータに対して)正確な位置に位置決めした上で、該ベース部材に取り付ける必要がある。
【0004】
特許文献1にて開示された電磁アクチュエータでは、ベース部材に位置決め突起(ピン)が設けられる一方、ヨーク(磁路形成部)に位置決め穴が形成され、位置決め突起が位置決め穴に挿入されることで、ヨークのベース部材およびロータに対する位置決めおよび取り付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−095703号公報
【特許文献2】特開2005−107173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示された電磁アクチュエータでは、ヨーク(磁路形成部)の一部を光量調節装置の径方向外側に向かって半円形状に大きく突出させ、その突出部分(以下、外側突出部分という)に打ち抜き加工等によって位置決め穴を形成する。このような外側突出部分に位置決め穴を形成するのは、位置決め穴の形成によって、ヨークの強度が低下したり、磁路形成部における磁束が通過する断面積が小さくなったり(磁気的なロスが増加したり)することを回避するためである。また、ベース部材に設けられた位置決め突起とコイルとの干渉を避けるために、位置決め突起の位置をベース部材における径方向外側寄りに設定する必要があるためでもある。
【0007】
外側突出部分をヨークに形成することで、電磁アクチュエータが大型化する。さらに、ベース部材における位置決め突起の位置をベース部材の径方向外側寄りに設定することで、光量調節装置の外周縁を形成するベース部材、つまりは光量調節装置が径方向に大型化する。
【0008】
本発明は、ヨークにおける磁気的ロスの発生を抑えながらも、ロータに対してヨークを高い精度で位置決めすることができる小型の電磁アクチュエータを提供する。また、本発明は、この電磁アクチュエータを備えた光量調節装置、さらには該光量調節装置を備えた光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての電磁アクチュエータは、複数の着磁部が形成された外周面を有し、ベース部材によって回転可能に支持されたロータと、コイルと、ロータの外周面のうち周方向にて互いに異なる領域に対向する2つの磁極部、および該2つの磁極部をつなぐ磁路を形成するとともにコイルが装着される磁路形成部を有するヨークとを有する。磁路形成部は、ヨークをベース部材に対して取り付けるための突起部を有しており、突起部を含むヨークは、粉末冶金成形法により形成される。磁路形成部における磁路が延びる第1の方向に直交する断面を磁路断面といい、該磁路形成部における前記ロータの回転中心軸が延びる方向から見たときの前記第1の方向に直交する第2の方向での幅を磁路幅というとき、突起部は、磁路形成部のうち該突起部を含む第1の部分での磁路断面の面積が、第1の方向にて第1の部分に隣接する第2の部分での磁路断面の面積よりも小さくならず、かつ第1の部分の磁路幅が第2の部分の磁路幅よりも大きくならないように形成されていることを特徴とする。
【0010】
なお、上記電磁アクチュエータを備えた光量調節装置、および該光量調節装置を搭載した光学機器も本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヨークの第1の部分における突起部の裏側に、プレス成形によって該突起部を形成した場合のような大きな凹部が形成されない。このため、該第1の部分に突起部を形成しつつも第1の部分の磁路断面積が第2の部分の磁路断面積より小さくなったり、ヨークの強度が低下したりすることを、従来のようにヨークに外側突出部分を設けなくても回避することができる。したがって、突起部を形成したことによる磁気的ロスの増加を、ヨークの大型化を伴わずに抑えることができる。つまり、ヨークにおける磁気的ロスの増加を抑えながらも、ロータに対してヨークを高い精度で位置決めすることができる小型の電磁アクチュエータを実現することができる。
【0012】
そして、このような電磁アクチュエータを光量調節装置に用いることで、光量調節装置の小型化と光量調節性能の向上とが可能となる。さらに、該光量調節装置を光学機器に備えることで、小型で光学性能が高いカメラ等の光学機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例である絞りシャッタ装置の分解斜視図。
【図2】実施例の絞りシャッタ装置の地板に取り付けられた電磁アクチュエータを示す正面図。
【図3】実施例の絞りシャッタ装置の背面図。
【図4】上記電磁アクチュエータの構成を示す平面図。
【図5】上記地板の形状を示す平面図。
【図6】上記電磁アクチュエータのヨークの断面図。
【図7】実施例の絞りシャッタ装置を搭載したカメラの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1、図2および図3には、本発明の実施例1である電磁アクチュエータを備えた光量調節装置としての絞りシャッタ装置を示している。この絞りシャッタ装置は、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラおよび交換レンズ等の撮影専用の光学機器に搭載される他、携帯電話やパソコン等の情報端末機器に内蔵される光学撮像ユニット(光学機器)にも用いられる。なお、本発明の実施例の電磁アクチュエータは、絞りシャッタ装置に限らず、電磁アクチュエータを駆動源とする様々な装置にも用いることができる。
【0016】
なお、図1は絞りシャッタ装置を分解して示し、図2は正面側から見たときの絞りシャッタ装置(ただし、アクチュエータ固定部材4を取り外した状態)を示している。また、図3は背面側から見たときの絞りシャッタ装置(ただし、カバー板6を取り外した状態)を示している。
【0017】
これらの図において、1は絞りシャッタ装置のベース部材となるシャッタ地板であり、電磁アクチュエータのベース部材を兼ねている。図4には、正面から見たシャッタ地板1のみを示している。シャッタ地板1は、合成樹脂により形成された比較的厚い板状の部材である。シャッタ地板1の中央には、被写体からの光を通過させる円形の開口1aが形成されている。なお、開口1aの開口面に対して直交する方向を、以下の説明では光軸方向という。また、シャッタ地板1における開口1aの周囲部分のうち一部には、電磁アクチュエータの駆動ピン9bを貫通させるための円弧状の駆動ピン孔部1bが形成されている。
【0018】
さらに、シャッタ地板1における光軸方向のうち一方の面(アクチュエータ室側の面)には合成樹脂製のアクチュエータ固定部材4が2つのビス2,3によって取り付けられる。シャッタ地板1のうちこのアクチュエータ固定部材4に対向する部分(ビス2,3による取り付け部の間の部分)は、アクチュエータ固定部材4から光軸方向に退避した凹部として形成されている。この凹部は、電磁アクチュエータが配置されるアクチュエータ室となる。
【0019】
シャッタ地板1におけるアクチュエータ室側の面には、ピン部1cと、ヨーク10の位置決め用のボス部1dおよび凹部1e,1fとが形成されている。本実施例では、凹部1eは丸穴形状を有し、凹部1fは長穴形状を有するが、ヨーク10のシャッタ地板1に対する位置決めの仕方に応じて他の凹部形状に形成してもよい。
【0020】
また、シャッタ地板1における光軸方向のうち他方の面(羽根室側の面)には、中央に被写体からの光を通過させるための開口5aが形成された仕切りシート5が2つのビス7,8によって取り付けられる。さらに、仕切りシート5に対して所定の間隔をあけて、中央に被写体からの光を通過させるための開口6aが形成されたカバー板6が上記ビス7,8によって取り付けられる。仕切りシート5とカバー板6との間には羽根室が形成され、この羽根室には、光量調節部材としてのシャッタ羽根13,14が配置される。カバー板6の開口6aの径は、仕切りシート5の開口5aの径よりも若干大きく設定されている。
【0021】
シャッタ地板1のシャッタ室側の面には、2つのピン部1g,1hと、仕切りシート5およびカバー板6の位置決めを行うためのボス部1i,1jとが設けられている。また、シャッタ地板1のアクチュエータ室側の面およびシャッタ室側の面にはそれぞれ、ビス2,3,7,8を締め込むためのビス下孔1k,1l,1m,1nが形成されている。
【0022】
シャッタ室に配置されたシャッタ羽根13,14には、シャッタ地板1に形成されたピン部1g,1hがそれぞれ挿入される円形の孔部13a,14aと、電磁アクチュエータの駆動ピン9bが挿入される長孔部13b,14bとが形成されている。シャッタ羽根13,14は、長孔部13b,14bに挿入された駆動ピン9dが電磁アクチュエータによって回動されることにより、孔部13a,14aに挿入されたピン部1g,1h回りで、仕切りシート5とカバー板6の開口5a,6aを塞ぐ閉位置と該開口5a,6aを開放する開位置との間で回動する。これにより、開口5a,6aを通過する光の量が調節(増減および遮断)され、絞りやシャッタとして機能する。
【0023】
また、アクチュエータ固定部材4には、ビス2,3によって取り付けられるための孔部4a,4bが形成されているとともに、シャッタ地板1に形成されたピン部1cの先端が挿入される孔部4cが形成されている。
【0024】
仕切りシート5には、シャッタ地板1の駆動ピン孔部1bと重なる位置に、該駆動ピン孔部1bと同様な円弧形状を有する駆動ピン孔部5bが形成されている。さらに、仕切りシート5には、シャッタ地板1のピン部1g,1hを貫通させるための孔部5c,5dと、シャッタ地板1のボス部1i,1jがそれぞれ挿入される孔部5eおよび長孔5fも形成されている。
【0025】
カバー板6にも、仕切りシート5と同様に、シャッタ地板1の駆動ピン孔部1bと重なる位置に、該駆動ピン孔部1bと同様な円弧形状を有する駆動ピン孔部6bが形成されている。さらに、カバー板6には、シャッタ地板1のピン部1g,1hの先端が挿入される孔部6c,6dと、シャッタ地板1のボス部1i,1jの先端がそれぞれ挿入される孔部6eおよび長孔6fも形成されている。その他、カバー板6には、ビス7,8を挿入するためのビス孔部6g,6hも形成されている。
【0026】
次に、アクチュエータ室内に配置される電磁アクチュエータについて説明する。9は永久磁石により作られた円筒形状の本体部9aを有するロータである。本体部9aの外周面には複数(本実施例では2つ)のN極とS極の着磁部が形成されている。本体部9aの中心の孔部には、シャッタ地板1のピン部1cが挿入される。これにより、ロータ9は、シャッタ地板1によって回転可能に支持される。
【0027】
また、ロータ9は、本体部9aよりも径方向外側に延びた腕部の先端から光軸方向に延びる合成樹脂製の駆動ピン9bを有する。駆動ピン9bは、シャッタ地板1および仕切りシート5の駆動ピン孔部1b,5bを貫通してシャッタ羽根13,14の長孔部13b,14bに挿入され、さらにカバー板6の駆動ピン孔部6bに挿入される。
【0028】
なお、本実施例では、シャッタ地板1に形成されたピン部1cを円筒形状のロータ9(本体部9a)の中心孔に挿入することでロータ9をシャッタ地板1により回転可能に支持する場合について説明するが、ロータ9のシャッタ地板1による支持構造はこれ以外の構造であってもよい。例えば、ロータ9の中心から両側に延出させた軸部を、シャッタ地板1とアクチュエータ固定部材4に形成した孔部に挿入することで、ロータ9をシャッタ地板1により回転可能に支持するようにしてもよい。
【0029】
11はコイルであり、ボビン12の外周に巻き付けられている。ボビン12の内周には、後述するヨーク10が挿入される孔部が形成されている。
【0030】
ヨーク10は、ロータ9(本体部9a)の外周面のうち周方向にて互いに異なる領域に対向する2つの磁極部10dと、該2つの磁極部10dをつなぐ磁路を形成する磁路形成部10eとを有する。磁路形成部10eは、光軸方向(ロータ9の回転中心軸が延びる方向)から見たときにU字形状を有するように形成されている。言い換えれば、U字形状の磁路形成部10eの2つの先端面(ロータ9の外周面に対向する面)に磁極部10dが形成されている。
【0031】
そして、U字形状の磁路形成部10eが有する2つの直線形状部分のうち一方は、コイル11が巻き付けられたボビン12の内周に形成された孔部に挿入されている。これにより、コイル11が磁路形成部10eに装着される。このように構成された電磁アクチュエータにおいて、コイル11に通電されることにより発生した磁束は、磁路形成部10eを流れて2つの磁極部10dにN極とS極を形成する。そして、これら磁極部10dのN極およびS極とロータ9の着磁部のN極およびS極との磁気作用によってロータ9が回転する。
【0032】
図5には、図1および図2に示した電磁アクチュエータをシャッタ地板1側から見て示している。また、図6(a),(b)にはそれぞれ、図5中に示したA−A線とB−B線で切断したときのヨーク10の断面であるA−A断面およびB−B断面を示している。A−A断面およびB−B断面は、ヨーク10のうち磁路形成部10eにおける磁路が延びる方向(磁束が流れる方向:以下、第1の方向という)に直交する磁路断面に相当する。また、以下の説明において、磁路形成部10eにおける光軸方向から見たときの第1の方向に直交する第2の方向での幅を磁路幅(図6(a),(b)中にWで示す)という。
【0033】
図5に示すように、ヨーク10のうち磁路形成部10eには、シャッタ地板1に対する位置決め用のボス部(突起部)10a,10bと位置決め用の穴部10cとが形成されている。ボス部10a,10bは円柱形状を有し、穴部10cは丸穴形状を有する。ただし、ボス部10a,10bと穴部10cの形状はこれ以外の形状であってもよい。また、穴部10cは磁路形成部10eを貫通してもよいし、底面を有する(つまりは凹部)であってもよい。
【0034】
ボス部10a,10bをシャッタ地板1に形成された凹部1e,1fにそれぞれ挿入し、さらに穴部10cにシャッタ地板1に形成されたボス部1dを挿入することで、2つの磁極部10dがロータ9の外周面に対して適正な位置に配置されるようにヨーク10をシャッタ地板1に対して位置決めすることができる。
【0035】
以下、ボス部10a,10bとこれが形成された磁路形成部10eとの関係について、図6(a),(b)を用いて説明する。ここでは、ボス部10aと磁路形成部10eとの関係について説明するが、もう1つのボス部10bと磁路形成部10eとの関係についても同様である。
【0036】
図6(a)に示すように、ボス部10aは、磁路形成部10eからその厚みHの方向(光軸方向)に突出するようにヨーク10に一体形成されている。ただし、ボス部10aは、ヨーク10のプレス加工(半抜き加工)によって形成されたものではない。ボス部10aは、ヨーク10を、軟磁性粉を含む粉体を圧縮して加熱し焼結させる粉末冶金成形法により製造する際に磁路形成部10eに一体形成される。なお、粉末冶金成形法自体は周知の技術であるため、その詳しい説明は省略する。
【0037】
そして、このような粉末冶金成形法を用いることで、ボス部10aは、図6(a)に示す磁路形成部10eのうちボス部10aを含む第1の部分での磁路断面(A−A断面)の面積(磁路断面積)S1が、図6(b)に示す第1の方向にて第1の部分に隣接する第2の部分での磁路断面(B−B断面)の面積(磁路断面積)S2よりも小さくならないように形成されている。さらに、ボス部10aは、第1の部分の磁路幅Wが第2の部分の磁路幅Wよりも大きくならないように(本実施例では、両部分の磁路幅Wが同じになるように)形成されている。なお、第2の部分の厚みHは、第1の部分の厚みHと同じである。
【0038】
図6(c)には、比較例として、ボス部10aをヨーク10(磁路形成部10e)のプレス加工によって形成した場合のA−A断面に相当する断面を示している。磁路形成部10eの厚みは、図6(a),(b)中の厚みHと同じである。この場合、磁路形成部10eにおけるボス部10aの反対側には、ボス部10aの形状に対応する大きな凹部10a′が形成され、この結果、その部分の磁路断面積S3が、図6(b)に示した磁路断面積S2よりも大幅に小さくなる。このため、ヨーク10に磁気的ロスが発生する。これを防止するため、さらにプレス加工におけるボス部10aの加工精度をも確保するためには、磁路形成部10eにおけるボス部10aを形成する部分の幅を、ボス部10aの幅(径)より十分に広くする(一般には2倍以上にする)ことが必要である。
【0039】
これに対して、本実施例では、第1の部分での磁路断面積S1が、第2の部分での磁路断面積S2よりも小さくならないだけでなく、第1の部分の磁路幅Wが第2の部分の磁路幅Wよりも大きくならない。したがって、ヨーク10を大型化することなく、該ヨーク10における磁気的ロスの発生を抑えることができる。磁気的ロスの発生を抑えることにより、電磁アクチュエータ(ロータ)の高精度の回転位置制御を行うことが可能となり、これにより、電磁アクチュエータにより駆動されるシャッタ羽根13,14による高精度な光量調節動作(絞り動作やシャッタ動作)が可能となる。そして、このようにヨーク10を大型化しないことにより、電磁アクチュエータを備える絞りシャッタ装置の径方向の大型化を回避することができる。
【0040】
特に本実施例のように粉末冶金成形法にてボス部10aも成形する場合には、図6(a)に示すボス部10aの第2の方向での幅WPを、第1の部分の磁路幅Wに対して80%以上にすること(より望ましくは90%以上とすること)が可能である。これにより、ヨーク10を大型化することなく、ボス部10aの幅WPとして位置決め用に必要な寸法を確保することができる。
【0041】
また、穴部10cは、磁路形成部10eのうちコイル11(ボビン12)が装着される側の直線形状部分(以下、コイル装着部分という)に形成されている。これは以下の理由による。ヨーク10の磁極部10dは、ロータ9の外周面に対向する円弧面として形成されているため、ボビン12の内周に形成された孔部の幅は、該孔部内を磁極部10dが通過してコイル装着部分の外周にボビン12が位置することができるように、磁極部10dの幅よりも大きく設定される。したがって、コイル装着部分の幅は、ボス部10aが形成された側の直線形状部分よりも広くすることができる。
【0042】
そこで、穴部10cを、コイル装着部分(本実施例ではコイル11(ボビン12)よりも磁極部10d側の位置)に形成することにより、前述した第2の方向でのコイル装着部分の幅を、穴部10cの幅(径)の2倍以上に設定することができる。これにより、磁路形成部10eに穴部10cを形成することによる磁路断面積の不足に伴う磁気的ロスの発生を抑えることができる。
【0043】
なお、本実施例では、ヨーク10に位置決め用のボス部を2つと位置決め用の凹部を1つ形成した場合について説明したが、これらの数は任意に選択することができる。
【0044】
また、本実施例では、絞りシャッタ装置のベース部材であるシャッタ地板1に電磁アクチュエータを直接取り付ける場合について説明したが、電磁アクチュエータを、シャッタ地板1とは別の電磁アクチュエータ専用のベース部材に取り付け(ヨークもこのベース部材に対して位置決めされることになる)、該ベース部材をシャッタ地板1に固定するようにしてもよい。
【実施例2】
【0045】
上記実施例1にて説明した絞りシャッタ装置が搭載された光学機器としてのカメラ(ビデオカメラ又はスチルカメラ)を図7に示す。50はカメラ本体であり、51,53は撮影光学系を構成する複数のレンズである。52はCCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子であり、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する。
【0046】
54はCPU等により構成されるコントローラであり、絞りシャッタ装置20の動作(電磁アクチュエータへの通電)や撮像素子52の光電変換動作を制御する。
【0047】
実施例1にて説明したように、絞りシャッタ装置20は、大型化することなく良好な精度で光量調節(絞り動作やシャッタ動作)を行うことができるため、カメラの小型化および撮像性能を向上させることができる。
【0048】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
小型で、ヨークにおける磁気的ロスが少ない電磁アクチュエータおよびこれを駆動源とする光量調節装置や光学機器を提供である。
【符号の説明】
【0050】
1 シャッタ地板
9 ロータ
9a 本体部
9b 駆動ピン
10 ヨーク
10a,10b ボス部
10c 穴部
10d 磁極部
10e 磁路形成部
11 コイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の着磁部が形成された外周面を有し、ベース部材によって回転可能に支持されたロータと、
コイルと、
前記ロータの前記外周面のうち周方向にて互いに異なる領域に対向する2つの磁極部、および該2つの磁極部をつなぐ磁路を形成するとともに前記コイルが装着される磁路形成部を有するヨークとを有し、
前記磁路形成部は、前記ヨークを前記ベース部材に対して取り付けるための突起部を有しており、
前記突起部を含む前記ヨークは、粉末冶金成形法により形成され、
前記磁路形成部における前記磁路が延びる第1の方向に直交する断面を磁路断面といい、該磁路形成部における前記ロータの回転中心軸が延びる方向から見たときの前記第1の方向に直交する第2の方向での幅を磁路幅というとき、
前記突起部は、前記磁路形成部のうち該突起部を含む第1の部分での前記磁路断面の面積が、前記第1の方向にて前記第1の部分に隣接する第2の部分での前記磁路断面の面積よりも小さくならず、かつ前記第1の部分の前記磁路幅が前記第2の部分の前記磁路幅よりも大きくならないように形成されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記突起部の前記第2の方向での幅が、前記第1の部分の前記磁路幅に対して80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータと、
該電磁アクチュエータにより駆動されて光量を調節する光量調節部材とを有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光量調節装置を備えたことを特徴とする光学機器。


【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30566(P2013−30566A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164771(P2011−164771)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】