説明

電磁クラッチ及び電磁クラッチを備えた圧縮機

【課題】電磁クラッチの過負荷発生時における異音発生や部品の損傷を抑制する。
【解決手段】
車両空調装置の圧縮機等に備えられ、エンジン等からの動力を回転軸4に伝達する電磁クラッチにおいて、回転軸4に過負荷が加わり回転が規制されたときに、インナリング36の筒状部とハブ48の筒状部との間に固定したトルクリミッタ52の外周端部と内周端部との間に所定以上の捩りトルクを生じ、トルクリミッタ52の径方向中間位置に形成された低強度部が全周に亘って破断し、インナリング36のフランジ部とハブ48のフランジ部との間に圧縮状態で介装した皿バネ54の弾性付勢力によって破断面52bより外周側の部材を前方に押し出し、トルクリミッタ52の破断面52bより内周側部分に押し付けて保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンやモータ等の動力を車両用空調装置に使用される圧縮機の回転軸などに伝達する電磁クラッチ、及び該電磁クラッチを備えた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧縮機は例えばエンジンの動力を受けて駆動されるため、エンジンと圧縮機の回転軸との間は動力伝達経路を介して接続されている。この動力伝達経路は、エンジンの動力を駆動ベルトから駆動プーリに伝達し、この駆動プーリから電磁クラッチを介して圧縮機の回転軸に至る。
【0003】
ここで、何らかの原因による圧縮機のロック発生、異物の噛み込み等、回転軸に過負荷が加わって回転が規制されると、駆動ベルト等の損傷に繋がる。このため、特許文献1には、回転軸に過負荷が加わったときには、動力伝達を遮断させるトルクリミッタを備えた電磁クラッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3985705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、トルクリミッタを、回転軸に過負荷が加わったときに、回転を規制されたアーマチュアとロータとの間に生じる摩擦熱を伝達されて溶断する弾性部材で構成しているため、溶断に時間を要し、その間に駆動ベルト等を損傷させてしまうことがあった。
【0006】
また、トルクリミッタにより回転軸との連結を遮断されたアーマチュア側部品の動きを所定の可動範囲内に規制する手段を設けているが、アーマチュア側部品を保持するものではないためアーマチュア側部品のがたつきが大きく、電磁クラッチのオン、オフ操作によってアーマチュアのロータへの吸引・離脱を繰り返すことなどにより、異音を生じたり、他部品を損傷させたりすることがある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、回転軸に過負荷が加わったときに、トルクリミッタにより速やかに動力伝達を遮断すると共に、回転軸側部品との連結を断たれたアーマチュア側部品を、電磁クラッチのオフ後も安定して保持できる電磁クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明に係る電磁クラッチは、従動側機器の回転軸の外周側に外部駆動源によって回転駆動されるロータが配置され、該ロータから前記回転軸への動力の伝達または遮断を、電磁ソレノイドの通電または非通電によって前記回転軸側に連結されたアーマチュアを前記ロータと接続または遮断することによって切り換える一方、前記アーマチュアと前記回転軸との間にトルクリミッタが連結され、前記回転軸に過負荷が加わったときに前記トルクリミッタが破断して前記アーマチュアと前記回転軸間の動力伝達を遮断するように構成された電磁クラッチであって、以下のように構成したことを特徴とする。
【0009】
前記回転軸と前記アーマチュアとの間に介装されて、前記アーマチュアを前記ロータから離す方向に付勢する弾性部材を配設し、
前記トルクリミッタが破断されたとき、前記弾性部材の付勢力によって前記アーマチュア及び該アーマチュアに連結された部分のトルクリミッタを、前記ロータから離れる方向に押し出す一方、前記押し出されたアーマチュア及び該アーマチュアに連結された部分のトルクリミッタを、前記回転軸側に連結された部材に押し付けて保持し、かつ、前記電磁ソレノイドの通電時にも前記保持状態が維持される構成とする。
【0010】
また、本発明に係る圧縮機は、上記構成の電磁クラッチを備えて構成される。
【発明の効果】
【0011】
回転軸に過負荷を生じて回転が規制されると、電磁ソレノイドの通電時に、トルクリミッタには、駆動力を受けるアーマチュア側と、回転を規制された回転軸側との間に過大な捩りトルクを生じて、トルクリミッタが破断され、動力伝達が遮断される。
【0012】
トルクリミッタの破断後、該トルクリミッタの一方の破断部分と一体に連結されるアーマチュア側部材は、電磁ソレノイドの非通電時に弾性部材の付勢力によって押し出され、回転軸側に連結された部材、例えば、トルクリミッタの他方の破断部分に押し付けられて保持される。また、アーマチュアの弾性部材によるロータからの押出量を所定以上に設定することにより、電磁ソレノイドが通電されてもその吸引力が弾性部材の付勢力を超えることなく、安定して保持し続けることができる。
【0013】
また、弾性部材は、常時回転軸とアーマチュアとの間に圧縮して保持された状態のため、電磁ソレノイドの通電、非通電によらず保持され、電磁ソレノイドの吸引力(クラッチ作動力)を増大させることもなく、消費電力及び大形化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る電磁クラッチを備えた圧縮機を用いた車両用空調装置の概略図である。
【図2】同上電磁クラッチを示した断面図である。
【図3】同上電磁クラッチオン時における圧縮機の正常動作状態を示した断面図である。
【図4】同上電磁クラッチオン時にトルクリミッタが破断した状態を示した断面図である。
【図5】同上トルクリミッタが破断した状態で同上電磁クラッチがオフされたときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。
図1は車両の前部を概略的に示し、この前部にエンジンルーム102が設けられている。
【0016】
エンジンルーム102内にはエンジン104が横置きにして配置され、このエンジン104とエンジンルーム102のフロントグリル106との間にラジエータ108及び電動ファン110がそれぞれ配置されている。そして、電動ファン110が駆動されると、フロントグリル106を通じてラジエータ108内に外気が導かれ、ラジエータ108内での熱交換によりエンジン104の冷却水が冷却される。
【0017】
当該車両は空調装置を備え、この空調装置は冷凍回路112を含んでいる。この冷凍回路112は自然系冷媒であるCO2冷媒や代替冷媒HFC−152a(以下、単に冷媒と称す)の経路を有し、冷媒はこの経路を通じて循環可能であり、車室114内の温度を所望の設定温度に調整する。
【0018】
具体的には、当該経路には、上流側からコンプレッサ(圧縮機)120、コンデンサ(凝縮器)122、レシーバ(受液器)124、膨張弁126及びエバポレータ(蒸発器)128が順次介挿されている。また、これら圧縮機120、凝縮器122、受液器124及び膨張弁126はエンジンルーム102内に配置され、この蒸発器128は助手席の前側に位置したインストルメントパネル118内に配置されている。このインストルメントパネル118とエンジンルーム102との間は隔壁(ダッシュパネル)116により区画される。
【0019】
後述する電磁クラッチを備えた圧縮機120は動力伝達経路130を介してエンジン104に接続され、このエンジン104からの動力を受けて作動される。詳しくは、動力伝達経路130は、エンジン104側に取付けられた出力プーリ132と圧縮機120側に取付けられた駆動プーリ20と、これら各プーリ132、20間に掛け回されたVベルト(駆動ベルト)140とからなる。
【0020】
車両のインストルメントパネル118内に配置された電子コントロールユニット(ECU)198は、温度センサ100によって検出された車室114内の温度に応じて、前記圧縮機120の電磁クラッチをオン、オフ制御して、圧縮機120の駆動と非駆動とを切換制御する。これにより、上述したように、車室114内の温度が所望の設定温度に調整される。
【0021】
図2は、上記空調装置に組込まれた圧縮機120の一部を示し、以下、圧縮機120に備えられた本実施形態に係る電磁クラッチ1について説明する。
【0022】
図2は、車両用空調装置に組込まれる圧縮機の一部を示す。
従動機器である圧縮機120はハウジング2を備え、該ハウジング2内には回転軸4が配置されている。回転軸4は図示しない軸受を介してハウジング2内に回転自在に支持されており、また、この回転軸4はハウジング2からメカニカルシール(軸封止ユニット)6を介して突出した一端部(前端部)10を有している。
【0023】
一方、回転軸4の図示しない他端は圧縮ユニット12に接続されており、この圧縮ユニット12は、例えばピストン往復動型又はスクロール型のいずれのタイプであっても、回転軸4の回転により駆動され、空調装置のためのCO冷媒の吸入、圧縮及び吐出プロセスを実行する。
【0024】
回転軸4の一端部10にはハブ48がスプラインにより回り止め結合され、該ハブ48の外側周囲に電磁クラッチ1が配置されている。電磁クラッチ1はロータ16を備え、このロータ16は軸受18を介してハウジング2外に回転自在に支持されている。また、ロータ16の外周側には駆動プーリ20が配置されている。該駆動プーリ20は上述の駆動ベルト140を介して外部駆動源としての車両のエンジン104側(或いはモータ側)の出力プーリ132に接続され、この動力を受けて回転される。
【0025】
ロータ16内には電磁ソレノイド22が備えられ、この電磁ソレノイド22は環状のブラケット21を介してハウジング2に固定されている。一方、ロータ16の前方にはアーマチュア24が対向して配設されている。
【0026】
具体的には、アーマチュア24は、電磁ソレノイド22の非通電時に所定のギャップ量L1を開けてロータ16に対峙された円板状磁性体製のクラッチプレート26、このクラッチプレート26に結合される環状のゴム部材32を含み、更に、ゴム部材32の外周側及び内周側にそれぞれ接着固定された金属製のアウタリング30、リベット34及びインナリング36を含んで構成されている。
【0027】
アウタリング30は、その後端部から外周側に延設されたフランジ部がクラッチプレート26にリベット34で結合され、これにより、クラッチプレート26がアーマチュア24に一体化されている。
【0028】
ゴム部材32は、捩り方向及び軸方向の振動を抑制する制振機能を有し、また、電磁ソレノイド22のオン時に軸方向に弾性変形してクラッチプレート26のロータ16への吸引を許容すると共に、電磁ソレノイド22のオフ時に弾性復帰してクラッチプレート26をロータ16から引き離すように作用する。
【0029】
ハブ48は、回転軸4の前端突出部分の外側周囲を覆う筒状部48aと、該筒状部48aの後端部から外周側に延設されたフランジ部48bとを有して形成される。
【0030】
インナリング36は、ゴム部材32の内周面と接着固定される筒状部36aと、該筒状部36aの後端部から内周側に延設されたフランジ部36bと、を有して形成されている。インナリング36の筒状部36aは、前記ハブ48の筒状部48aの外周側に対向し、インナリング36のフランジ部36bは、ハブ48のフランジ部48bの前方に対向して配設される。
【0031】
そして、アーマチュア24とハブ48との間にトルクリミッタ52が連結され、該トルクリミッタ52を介してアーマチュア24とハブ48間の動力伝達が行われる。
詳細には、トルクリミッタ52は、金属材や樹脂材等で円板状に形成され、その外周端部及び内周端部がそれぞれインナリング36の筒状部36a及びハブ48の筒状部48aにかしめ処理等によって固定される。
【0032】
また、トルクリミッタ52は、径方向の中間位置に、例えばスリットを形成して板厚を薄くするなど、他の部位に比較して強度を小さくした低強度部52aを配設してある。これにより、インナリング36の筒状部36aに固定された外周端部とハブ48の筒状部48aに固定された内周端部との間に所定以上の捩りトルクを生じると、低強度部52aから全周にわたって破断して外周側と内周側とに分断されるように形成されている。
【0033】
また、トルクリミッタ52の低強度部52aより外周側には、インナリング36のフランジ部36bに向かって突き当たる突起52bが形成され、これにより、該突起52bより内周側でトルクリミッタ52とフランジ部36bとの間に所定量の隙間L2が形成されている。この隙間L2は、クラッチプレート26がロータ16から隙間L2だけ離された場合には、電磁ソレノイド22を再度通電としてもクラッチプレート26をロータ16に吸引できない(吸引力が作用しない)大きさに設定されている。
【0034】
一方、インナリング36のフランジ部36bとこれに対向するハブ48のフランジ部48bとの間に、皿バネ54が軸方向に前記隙間L2より大きい所定量圧縮された状態で介装されている。
【0035】
次に、上記の構成を有した動力伝達装置の作用を説明する。
空調装置の温度制御に応じて、圧縮機120を駆動するときは、電磁ソレノイド22を通電して電磁クラッチ1がオン作動され、図3に示すように、クラッチプレート26がロータ16に吸引されて摩擦係合する。これにより、ロータ16の回転がクラッチプレート26、アウタリング30、ゴム部材32、インナリング36からなるアーマチュア24を介してトルクリミッタ52に伝達され、さらにトルクリミッタ52からハブ48を介して回転軸4を回転させる。すなわち、アーマチュア24は外部からの動力を受け、ハブ48を介して回転軸4を回転させる。
【0036】
圧縮機1の駆動を停止するときは、電磁ソレノイド22への通電を解除して電磁クラッチ1がオフ作動され、図2に示したように、クラッチプレート26がロータ16からギャップL1だけ離間し、回転軸4の回転が停止される。
【0037】
一方、回転軸4に異物の噛み込み等によって過負荷が加わり回転が規制されると、電磁ソレノイド22が通電されて電磁クラッチ1がオン作動されている時には、ロータ16から駆動トルクを受けるアーマチュア24と、回転が規制される回転軸4との間に所定以上の捩りトルクを生じる。
【0038】
これにより、図4に示すように、アーマチュア24側のインナリング36と回転軸4側のハブ48との間に配設されたトルクリミッタ52は、上記捩りトルクを受けて低強度部52aから全周にわたって破損して外周側と内周側とに分断される。
【0039】
この結果、駆動側から従動側への動力の伝達が遮断される。即ち、トルクリミッタ52の破断面52bより外周側の部材(トルクリミッタ52の一部及びアーマチュア24)は、回転を規制されることなく空転するため、駆動プーリ20に掛けられるVベルト140やベアリング18等の部品に過大な負荷が加わることなく、これら部品の損傷を回避できる。なお、トルクリミッタ52は、回転軸4に過負荷が加わり回転を規制された直後に前記所定以上の捩りトルクを生じるため、速やかに破断して動力伝達を遮断することができ、溶断式トルクリミッタのような遮断遅れによる部品の損傷も回避できる。
【0040】
ここで、電磁クラッチ1がオン状態である間は、皿バネ54は、軸方向の圧縮量に変化はないが、インナリング36のフランジ部36bまたはハブ48のフランジ部48bとの間に接触部の回転方向の滑りを生じる。同様に、トルクリミッタ52の破断された外周側と内周側との破断面52b相互にも回転方向の滑りを生じる。そして、これら回転方向の滑りによって、上記破断面52bより外周側の部材の空転が許容されるが、これら回転方向の滑り摩擦抵抗を小さく設定しておくことが好ましい。
【0041】
なお、トルクリミッタ52の破断後、破断面52bより外周側の部材に遠心力等によって径方向に移動する力が作用した場合でも、クラッチプレート26の内周端面とハブ48のフランジ部48bの外周端面との間、あるいは、インナリング36のフランジ部36b内周端面と対向するハブ48の外周端面との間を微小な隙間で対向させるように設定することにより、径方向の移動をこれら隙間量の範囲内に規制することができる。なお、トルクリミッタ52の外周側及び内周側の破断面52b相互間によっても径方向の移動が規制される。
【0042】
上記のようにトルクリミッタ52が破断して動力伝達が遮断された後に電磁ソレノイド22の通電が断たれて電磁クラッチ1がオフ操作されると、図5に示すように、クラッチプレート26がロータ16から離れると同時に、皿バネ54の付勢力によって、トルクリミッタ52の破断面52bより外周側の部材が前方に押し出される。
【0043】
これにより、図5に示すように、前方に押し出されたインナリング36のフランジ部36bの内周側部分の前面が、トルクリミッタ52の破断面52bより内周側部分の後面に圧接され、フランジ部36bの内周側部分が、トルクリミッタ52の内周側部分と皿バネ54との間に挟持される。
【0044】
なお、破断面52bより外周側の部材は、電磁クラッチ1がオフされた直後は慣性によって回転するが、該部材を挟持している両側の部材、つまりハブ48に固定されて回転を規制されているトルクリミッタ52の破断面52bより内周側の後面及び皿バネ54前端との接触摩擦抵抗によって回転を規制される。
【0045】
また、破断面52bより外周側の部材は、トルクリミッタ52とフランジ部36bの隙間量L2だけ前方に移動するが、インナリング36のフランジ部36b内周端面と、これに対向するハブ48の外周端面との間で径方向の移動を規制することができる。あるいは、前方へL2だけ移動してもクラッチプレート26の内周端面とハブ48のフランジ部48bの外周端面相互が軸方向にオーバーラップするように設定しておけば、この間で径方向の移動の規制を維持することもできる。なお、トルクリミッタ52の外周側及び内周側の破断面52b相互間によっても径方向の移動が規制される。
【0046】
また、回転軸4に過負荷が加えられて回転が規制された時点で、電磁クラッチ1がオフされている場合は、トルクリミッタ52及びアーマチュア24も一体に回転を規制され、この段階ではトルクリミッタ52に捩りトルクは生じないが、電磁クラッチ1がオンされてクラッチプレート26がロータ16に吸引されたときに、トルクリミッタ52に捩りトルクを生じる。したがって、それ以降は、上述したのと同様の経過を辿り、トルクリミッタ52が破断し、破断面52bより外周側の部材が皿バネ54とトルクリミッタ52の破断面52bより内周側部分との間に保持される。
【0047】
このように、トルクリミッタ52の破断後に破断面52b外周側の部材を安定状態に保持でき、該破断面52b外周側の部材の脱落による他の部材の損傷及び異音の発生を抑制できる。
また、トルクリミッタ52の構造を変更し、皿バネ54を追加するだけの簡易な構成で低コストに実施できる。
【0048】
また、皿バネ54のインナリング36への付勢力は、正常時には特に機能することはなく、クラッチ駆動力を増大させるようなこともない。したがって、電磁クラッチ1(電磁ソレノイド22)の消費電力の増大ひいては大型化を回避できる。
【0049】
なお、インナリング36をトルクリミッタ52側へ付勢する弾性部材は、皿バネ54の他、コイルスプリングなどでもよい。
また、弾性部材によってアーマチュアをロータから離す方向に付勢し、トルクリミッタ破断時に破断されたトルクリミッタとアーマチュアとを保持する構成は、上記実施形態に示した構成に限定されるものではない。例えば、ハブに連結された支持部材にトルクリミッタを支持し、トルクリミッタ破断時に、アーマチュアのインナリングを支持部材に押し付けて保持するような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…電磁クラッチ、2…ハウジング、4…回転軸、18…ベアリング、20…駆動プーリ、22…電磁ソレノイド、24…アーマチュア、26…クラッチプレート、30…アウタリング、32…ゴム部材、36…インナリング、36a…インナリングの筒状部、36b…インナリングのフランジ部、48…ハブ、48a…ハブの筒状部、48b…ハブのフランジ部、52…トルクリミッタ、52a…低強度部、52b…破断面、54…皿バネ、104…エンジン、L1…隙間量、L2…隙間量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従動側機器の回転軸の外周側に外部駆動源によって回転駆動されるロータが配置され、該ロータから前記回転軸への動力の伝達または遮断を、電磁ソレノイドの通電または非通電によって前記回転軸側に連結されたアーマチュアを前記ロータと接続または遮断することによって切り換える一方、前記アーマチュアと前記回転軸との間にトルクリミッタが連結され、前記回転軸に過負荷が加わったときに前記トルクリミッタが破断して前記アーマチュアと前記回転軸間の動力伝達を遮断するように構成された電磁クラッチであって、
前記回転軸と前記アーマチュアとの間に介装されて、前記アーマチュアを前記ロータから離す方向に付勢する弾性部材を配設し、
前記トルクリミッタが破断されたとき、前記弾性部材の付勢力によって前記アーマチュア及び該アーマチュアに連結された部分のトルクリミッタを、前記ロータから離れる方向に押し出す一方、
前記押し出されたアーマチュア及び該アーマチュアに連結された部分のトルクリミッタを、前記回転軸側に連結された部材に押し付けて保持し、かつ、前記電磁ソレノイドの通電時にも前記保持状態が維持される構成としたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
前記回転軸の前端部にハブが連結され、
前記トルクリミッタは、前記ロータの前方に対向配置された前記アーマチュアと前記ハブとの間に連結され、
前記ハブは、前方に突出する筒状部と、該筒状部の後端部から外周側に延設されたフランジ部と、を有し、
前記アーマチュアは、その内周側に連結されたインナリングを有すると共に、該インナリングは、前記ハブの筒状部の外周側に対向する筒状部と、該筒状部の後端部から内周側に延設されて前記ハブのフランジ部の前方に対向するフランジ部と、を有し、
前記トルクリミッタは、前記インナリングの筒状部と前記ハブの筒状部との間に外周端部と内周端部が固定され、径方向中間位置に、前記外周端部と内周端部との間に所定以上の捩りトルクを生じたときに全周に亘って破断される低強度部を有し、
前記インナリングのフランジ部と、前記ハブのフランジ部との間に、軸方向に圧縮付勢された状態で前記弾性部材が介装され、
前記トルクリミッタの破断後、前記電磁ソレノイドの非通電時に前記インナリングのフランジ部後面を、前記弾性部材が前方に押し出し、該押し出されたフランジ部の前面を前記トルクリミッタの破断面より内周側部分に圧接させることにより、前記破断面より外周側に一体に連結される部材を保持されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記弾性部材は、皿バネである請求項1または請求項2に記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記弾性部材は、コイルスプリングである請求項1または請求項2に記載の電磁クラッチ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載された電磁クラッチを備えた圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate