説明

電磁コイル絶縁フィルムおよびそれを備えたモーター、トランス

【課題】モーターまたはトランスに用いられる電磁コイル絶縁フィルムにおいて、その難燃性、成形加工性および耐水性を改善する。
【解決手段】電磁コイル絶縁フィルムは、液晶ポリエステルから構成されている。この液晶ポリエステルは、溶媒可溶性を有し、流動開始温度が250℃以上である。これにより、難燃性、成形加工性および耐水性に優れたモーター用またはトランス用の電磁コイル絶縁フィルムが得られる。この電磁コイル絶縁フィルムを用いてモーターまたはトランスを組み立てれば、モーターまたはトランスの実用的な耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター(電動機)またはトランス(変圧器)といった異常電圧が生じたときの安全性が求められる電気部品に適用される電磁コイル絶縁フィルムと、この電磁コイル絶縁フィルムを用いたモーター、トランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モーターにおいては、複数のコイル(電磁コイル)を互いに電気的に絶縁することを目的として、絶縁フィルムがスロットやウェッジの形に成形されてコイル間に挿入されている。また、トランスでは、モーターと同じ目的で、コイル用巻線内の層間絶縁材やスペーサーとして絶縁フィルムが利用されている。そして、これらの絶縁フィルムとしては、電気絶縁性、成形加工性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなるフィルム、すなわちポリエステルフィルムが広く使用されている。
【0003】
ところが、このポリエステルフィルムは、一般に難燃性に劣るため、モーターやトランスのコイルに過電流などが発生して発熱エネルギーが生じた場合に、容易に燃えてしまうという欠点があった。
【0004】
そこで、ポリエステルフィルムの難燃性を向上させて上記欠点を補うべく、ポリエステルフィルムに臭素系、リン系、無機系などの難燃剤を練り込む技術や、ポリエステルにハロゲン含有成分またはリン含有成分を共重合する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−278206号公報
【特許文献2】特開2002−172747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2で提案されている、ポリエステルフィルムの難燃性を改良しようとする技術は、難燃剤の添加や、ハロゲン含有成分、リン含有成分の共重合によるものであり、ポリエステルフィルム本来の機械的特性、成形加工性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、こうした難燃性に加えて、近年は、モーターやトランスの実用的な耐久性を高めるべく、モーターやトランスの電気絶縁材料に耐熱性および耐水性(低吸湿性)が要求されるようになってきている。例えば、冷蔵庫やエアコンディショナーなどに用いられるモーターの電気絶縁材料としては、このモーターの使用時の発熱に耐えられるだけの耐熱性が求められるとともに、環境上の問題から、特定フロン全廃に関連して各種のフロン代替冷媒が次々と提案されているが、これらの冷媒およびそれに対応する潤滑油は水分を吸着しやすいため、耐水性が求められている。また、ハイブリッド自動車や電気自動車に使用されるモーターの電気絶縁材料としては、このモーターの使用時の発熱に耐えられるだけの耐熱性が求められるとともに、使用環境下において水分が浸入するため、耐水性が要求されている。
【0008】
ところが、ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを例にとると、吸水率が約0.56質量%であり、吸水率を一層低減することが望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、難燃性、成形加工性および耐水性に優れ、モーターまたはトランスの電磁コイル絶縁用として有用な電磁コイル絶縁フィルムを提供することを第1の目的とし、さらに、この電磁コイル絶縁フィルムを用いることにより、実用的な耐久性を高めることが可能なモーターおよびトランスを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明者は、電磁コイル絶縁フィルムの原料として液晶ポリエステルを採用することに着目した。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、液晶ポリエステルから構成されている電磁コイル絶縁フィルムとしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが、溶媒可溶性を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で示される構造単位が30.0〜60.0モル%、式(2)で示される構造単位が20.0〜35.0モル%、式(3)で示される構造単位が20.0〜35.0モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレンまたはナフチレンを表し、Ar2 は、フェニレン、ナフチレンまたは下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレンまたは下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレンまたはナフチレンを表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記式(3)で示される構造単位のXおよびYの少なくとも一方がNHであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜60.0モル%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が20.0〜35.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が20.0〜35.0モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、上記電磁コイル絶縁フィルムが用いられているモーターとしたことを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項8に記載の発明は、上記電磁コイル絶縁フィルムが用いられているトランスとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電磁コイル絶縁フィルムの原料が特定の液晶ポリエステルであることから、難燃性、成形加工性および耐水性に優れたモーター用またはトランス用の電磁コイル絶縁フィルムを提供することができる。したがって、この電磁コイル絶縁フィルムを用いてモーターまたはトランスを組み立てることにより、これら電気部品の実用的な耐久性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電磁コイル絶縁フィルムが組み込まれたモーターを示す半断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る電磁コイル絶縁フィルムが組み込まれたトランスを示す斜視図であって、(a)はその組立状態図、(b)はその分解状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0022】
図1には、本発明の実施の形態1(本発明に係る電磁コイル絶縁フィルムをモーターに適用した実施の形態)を示す。
<モーターの構成>
【0023】
モーター1は、図1に示すように、円筒状のハウジング2を有しており、ハウジング2内には、その内周面に沿ってステーター(固定子)3が取り付けられている。このステーター3は、円筒状の鉄心8と、この鉄心8の内側に沿って並ぶように配設された複数のコイル9とから構成されている。これらのコイル9は、各コイル9がそれぞれ電磁コイル絶縁フィルム10によって被覆された形で互いに電気的に絶縁されている。また、ハウジング2の中心部には円筒状の円柱状の出力軸5が、2つの軸受6を介して軸心CT1を中心として矢印M方向に回転自在に支持されている。出力軸5の周面には円筒状のローター(回転子)7が、出力軸5の回転に伴ってステーター3の内部空間で回転しうるように取り付けられている。
【0024】
ここで、電磁コイル絶縁フィルム10は、液晶ポリエステルから構成されており、この液晶ポリエステルは、溶媒可溶性を有し、流動開始温度が250℃以上である。なお、電磁コイル絶縁フィルム10の厚みは、モーター1の出力やコイル9の配置状況などに応じて適宜選択することができるが、あまり薄いと、電磁コイル絶縁フィルム10の本来の機能である絶縁性を損なう恐れがある反面、厚くなるほど成形加工性を消失することから、絶縁性および成形加工性の両方を確保できる範囲内(例えば、1〜1000μm)とすることが望ましい。
【0025】
以下、この電磁コイル絶縁フィルム10の原料となる液晶ポリエステルと、この液晶ポリエステルおよび溶媒(溶剤)を含む溶液組成物と、この溶液組成物を用いた電磁コイル絶縁フィルム10の製造方法について順次説明する。
<液晶ポリエステル>
【0026】
本発明に用いる液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。本発明に使用する液晶ポリエステルとしては、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で示される構造単位(以下、「式(1)構造単位」という。)が30.0〜60.0モル%、式(2)で示される構造単位(以下、「式(2)構造単位」という。)が20.0〜35.0モル%、式(3)で示される構造単位(以下、「式(3)構造単位」という。)が20.0〜35.0モル%であるものが好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレンまたはナフチレンを表し、Ar2 は、フェニレン、ナフチレンまたは下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレンまたは下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレンまたはナフチレンを表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【0027】
なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環には、アルキル基、アリール基が部分的に結合されていてもよいが、難燃性の観点からは、アルキル基が結合されていない方が好ましい。すなわち、アルキル基は、一般に難燃性が低いので、できる限り少なくするのが好ましい。
【0028】
また、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar11およびAr12において、フェニレンはすべての異性体(o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン)を含むが、入手容易性の観点からは、p−フェニレンが最も好適である。Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar11およびAr12において、ナフチレンはすべての異性体を含む。
【0029】
ここで、式(1)構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位であり、この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸などを挙げることができる。この式(1)構造単位は、全構造単位の合計に対して、30.0〜60.0モル%の範囲内で含むと好ましく、35.0〜60.0モル%の範囲内で含むと一層好ましい。このようなモル分率で式(1)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶媒に対する溶解性が優れる傾向にある。さらに、式(1)構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸の入手容易性も合わせて考慮すると、この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸および/または2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が好適である。
【0030】
また、式(2)構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、この芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4'−ジカルボン酸などを挙げることができる。この式(2)構造単位は、全構造単位の合計に対して、20.0〜35.0モル%の範囲内で含むと好ましく、30.0〜32.5モル%の範囲内で含むと一層好ましい。このようなモル分率で式(2)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶媒に対する溶解性が優れる傾向にある。さらに、式(2)構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸の入手容易性も合わせて考慮すると、この芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
【0031】
さらに、式(3)構造単位は、芳香族ジオール、フェノール性ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンに由来する構造単位である。この芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどを挙げることができる。また、このフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンとしては、4−アミノフェノール(p−アミノフェノール)、3−アミノフェノール(m−アミノフェノール)などを挙げることができ、この芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
【0032】
なお、液晶エステルの液晶性を一層高めるためには、式(2)構造単位と式(3)構造単位とのモル比は、[式(2)構造単位]/[式(3)構造単位]で表して、0.9/1.0〜1.0/0.9の範囲が好適である。
【0033】
本発明に使用する液晶ポリエステルは溶媒可溶性を有し、かかる溶媒可溶性とは、温度50℃において、1質量%以上の濃度で溶媒に溶解することを意味する。この場合の溶媒とは、溶液組成物の調製に用いる好適な溶媒のいずれか1種であり、詳細は後述する。 このような溶媒可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、式(3)構造単位として、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンに由来する構造単位および/または芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち、式(3)構造単位として、XおよびYの少なくとも一方がNHである構造単位(例えば、式(3’)で示される構造単位。以下、「式(3’)構造単位」という。)を含むと、後述する好適な溶媒(非プロトン性極性溶媒)に対する溶媒可溶性が優れる傾向がある点で好ましい。特に、実質的に全ての式(3)構造単位が式(3’)構造単位であることが好ましい。また、この式(3’)構造単位は、液晶ポリエステルの溶媒溶解性を十分にすることに加え、液晶ポリエステルの吸湿性が一層低くなる点でも有利である。
(3’)−X−Ar3 −NH−
(式中、Ar3 およびXは、式(3)と同義である。)
【0034】
式(3’)構造単位は、全構造単位の合計に対して、30.0〜32.5モル%の聴囲で含むと好ましく、こうすることにより、溶媒可溶性は一層良好になる。このように、式(3’)構造単位を式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは、溶媒に対する溶解性、低吸水性という点に加えて、溶液組成物を用いた電磁コイル絶縁フィルム10の製造が一層容易になるという利点もある。
【0035】
次に、液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
【0036】
この液晶ポリエステルは、種々公知の方法により製造可能である。好適な液晶ポリエステル、つまり式(1)構造単位、式(2)構造単位および式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーの少なくとも一部をエステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後、重合させて液晶ポリエステルを製造する方法が、操作が簡便であるため好ましい。
【0037】
このエステル形成性・アミド形成性誘導体について、例を挙げて説明する。
【0038】
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳番族ジカルボン酸のように、カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、当該カルボキシル基が、ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように、酸塩化物・酸無水物などの反応活性の高い基になっているものや、当該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
【0039】
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のように、フェノール性ヒドロキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性ヒドロキシル基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
【0040】
また、芳香族ジアミンのように、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、液晶ポリエステルを一層簡便に製造する上では、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジオール、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンといったフェノール性ヒドロキシル基および/またはアミノ基を有するモノマーとを脂肪酸無水物でアシル化してエステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)とした後、このアシル化物のアシル基と、カルボキシ基を有するモノマーのカルボキシ基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させ、液晶ポリエステルを製造する方法が特に好ましい。このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報や特開2002−146003号公報に開示されている。
【0042】
アシル化においては、フェノール性ヒドロキシル基とアミノ基との合計に対して、脂肪酸無水物の添加量が1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、1.05〜1.1倍当量であると一層好ましい。これは、脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して反応系が閉塞しやすい傾向があり、逆に、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向があるからである。
【0043】
アシル化は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。このアシル化に使用される脂肪酸無水物は、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸またはこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく、特に好ましいのは無水酢酸である。
【0044】
アシル化に続く重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。また、この重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
【0045】
アシル化および/または重合の場合には、ルシャトリエの原理に基づき、平衡状態を移動させるため、副生する脂肪酸や未反応の脂肪酸無水物は蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
【0046】
なお、アシル化や重合においては、触媒の存在下に行ってもよい。この触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
【0047】
ただし、金属を含む触媒を使用すると、この金属が液晶ポリエステルに不純物として混入することになり、電磁コイル絶縁フィルム10の絶縁性が損なわれることがある。かかる観点から、前記の触媒の中でも有機化合物触媒が好ましく、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が特に好ましく使用される(例えば、特開2002−146003号公報を参照)。この触媒は、通常モノマーの投入時に一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、この触媒を除去しない場合には、アシル化からそのまま重合に移行することができる。
【0048】
このような重合で得られた液晶ポリエステルは、その流動開始温度が250℃以上であれば、そのまま本発明に用いることができるが、耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには、さらに高分子量化させることが好ましく、かかる高分子量化には固相重合を行うことが好ましい。
【0049】
この固相重合に係る一連の操作を説明する。前記の重合で得られた比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出し、これを粉砕してパウダー状またはフレーク状にする。続いて、粉砕後の液晶ポリエステルを、例えば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、20〜350℃の温度で、1〜30時間にわたって固相状態で加熱処理するという操作により、固相重合は実施できる。この固相重合は、撹拌しながら行ってもよく、撹拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお、後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るといった観点から、この固相重合の好適条件を詳述すると、反応温度として210℃を越えることが好ましく、より一層好ましくは、220〜350℃の範囲内である。また、反応時間は、1〜10時間から選択されることが好ましい。
【0050】
本発明に用いる液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であるため、優れた耐熱性を有するフィルムを形成することができる。かかる観点から、この流動開始温度は260℃以上であることが好ましい。なお、ここでいう流動開始温度とは、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・s以下になる温度をいう。なお、この流動開始温度とは、液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(例えば、小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、第95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0051】
また、液晶ポリエステルの流動開始温度の上限は、この液晶ポリエステルの溶媒可溶性が維持される範囲内で決定されるが、好適には300℃以下である。流動開始温度が300℃以下であれば、液晶ポリエステルの溶媒に対する溶解性がより良好になることに加え、後述する溶液組成物を得たとき、その粘度が著しく増大しないので、この溶液組成物の取扱性が良好となる傾向がある。かかる観点から、流動開始温度の上限は290℃以下であると一層好ましい。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲内に制御するには、前記固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
<溶液組成物>
【0052】
本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10を得るには、液晶ポリエステルおよび溶媒を含む溶液組成物、特に溶媒に液晶ポリエステルを溶解させた溶液組成物を用いることが好ましい。
【0053】
本発明に用いる液晶ポリエステルとして、上述の好適な液晶ポリエステル、特に前記式(3’)構造単位を含む液晶ポリエステルを用いた場合、この液晶ポリエステルはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒に対して十分な溶解性を発現する。ここで、ハロゲン原子を含まない非プロトン性溶媒とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶媒;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン系溶媒が挙げられる。なお、上述の液晶ポリエステルの溶媒可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの非プロトン性溶媒に可溶であることを指すものである。
【0054】
液晶ポリエステルの溶媒可溶性をより一層良好にして、溶液組成物が得られやすくするためには、例示した溶媒の中でも、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。具体的にいえば、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒が好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミト(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることがより好ましい。さらに、前記溶媒が、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶媒であると、電磁コイル絶縁フィルム10の製膜後に溶媒を除去しやすいという利点もある。この観点からは、DMF、DMAcが特に好ましい。
【0055】
前記溶液組成物に、前記のような非プロトン性溶媒を用いた場合、この非プロトン性溶媒100質量部に対して、液晶ポリエステルを20〜50質量部溶解させると好ましく、22〜40質量部溶解させると、さらに好ましい。これは、この溶液組成物に対する液晶ポリエステル含有量がこのような範囲にあると、電磁コイル絶縁フィルム10を製膜した後、前記溶液組成物に用いた溶媒を乾燥除去する際に、電磁コイル絶縁フィルム10に厚みムラ等が生じるといった不都合が起こり難い傾向があるからである。
【0056】
また、この溶液組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、液晶ポリエステル以外の樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂:グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体に代表されるエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂などを1種または2種以上を添加してもよい。ただし、このような他の樹脂を用いる場合においても、これら他の樹脂も、溶液組成物に使用した溶媒に可溶であることが好ましい。
【0057】
さらに、この溶液組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、寸法安定性および熱電導性の改善などを目的として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラー;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等の有機フィラー;シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤が1種または2種以上添加されていてもよい。
【0058】
また、この溶液組成物は、必要に応じて、フィルター等を用いたろ過処理により、溶液中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
【0059】
さらに、この溶液組成物は、必要に応じて、脱泡処理を行っても構わない。
<電磁コイル絶縁フィルムの製造方法>
【0060】
本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、例えば、以下に述べる方法で製造することができる。
【0061】
まず、溶液組成物調製工程で、液晶ポリエステルを溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒に溶解することにより、上述したような溶液組成物を調製する。
【0062】
次いで、溶液組成物塗工工程に移行し、溶液組成物を適当な支持基材上に流延塗工する、かかる流延塗工には、例えば、ローラーコー卜法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法など公知の手段を用いることができる。また、支持基材は、平滑な表面を有し、使用する溶液組成物に対して著しく損なわれることなく、溶液組成物の流延塗工後の加熟処理等に対して十分な耐久性を有するものであればよい。かかる支持基材としては、ガラス板、SUS板、銅箔またはSUS箔などが挙げられる。
【0063】
最後に、フィルム形成工程に移行し、このようにして支持基材上に流延塗工された溶液組成物から溶媒を除去することにより、この支持基材上にフィルムを形成する。溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、溶媒を蒸発させることにより行うことが好ましい。溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率や取扱性の観点から、加熱して蒸発する方法が好ましく、通風しつつ加熱して蒸発させる方法が一層好ましい。
【0064】
例えば、前記溶液組成物の調製にN−メチル−2−ピロリドン(沸点:204℃)を用いた場合の加熱処理について説明する。まず、50〜60℃で約3時間ほど予備乾燥を行う。この予備乾燥の温度が低すぎると、乾燥に時間がかかるばかりでなく、得られる電磁コイル絶縁フィルム10に厚みムラが起こりやすくなる。一方で、予備乾燥の温度が高すぎると、溶媒が急激に蒸発することにより、電磁コイル絶縁フィルム10の平滑性が損なわれる恐れがある。この予備乾燥を行った後、さらに加熱処理を行う。その際の処理条件としては、例えば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、240〜330℃で1〜30時間にわたって加熱処理するといった方法を挙げることができる。なお、得られる電磁コイル絶縁フィルム10の耐熱性を一層良好にするためには、この加熱処理の処理条件として、その温度が250℃を越えるようにして加熟処理することが好ましく、260〜320℃の範囲内で加熟処理することがさらに好ましい。また、この加熱処理の処理時間は、1〜10時間から選択されることが生産性の点で好ましい。このように、予備乾燥後に加熱処理を行うことで、液晶ポリエステルをさらに高分子量化することができる。
【0065】
ここで、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10の製造作業が終了する。
【0066】
なお、この電磁コイル絶縁フィルム10は、電磁コイル絶縁フィルム10として要求される特性を損なわない範囲内で、必要に応じて表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、スパッタリング処理、溶媒処理、UV処理、プラズマ処理などが挙げられる。
【0067】
このようにして得られた本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、液晶ポリエステルから構成されているため、難燃性に優れている。
【0068】
このことを検証するため、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10について、UL規格94に定める垂直燃焼試験を行なった。その結果、この電磁コイル絶縁フィルム10は、V0の基準を満たす高い難燃性を示した。
【0069】
また、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、流動開始温度が250℃以上の液晶ポリエステルから構成されているため、耐熱性に優れている。このような液晶ポリエステルから構成された電磁コイル絶縁フィルム10は、モーター作動などに伴う発熱(最高到達温度100℃程度)によっても、軟化や破断を生じることはない。
【0070】
さらに、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、低い吸水率を有する液晶ポリエステルから構成されているため、耐水性に優れている。
【0071】
このことを検証するため、本発明の電磁コイル絶縁フィルム10を、たとえば温度85℃、相対湿度85%RHといった高温高湿雰囲気下に168時間という長期にわたって放置したとしても、その吸水率は0.4質量%程度であった。
【0072】
また、このようにして得られた本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、液晶ポリエステルの分子がランダムに配向して異方性がなくなるので、特定方向における引裂強度の低下を回避することができる。その結果、電磁コイル絶縁フィルム10の屈曲時の自由度が高まり、電磁コイル絶縁フィルム10を用いてコイル9同士を絶縁する際に、コイル9の外形に合わせて電磁コイル絶縁フィルム10を屈曲させることも可能となる。
【0073】
このように、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム10は、電気絶縁性は勿論のこと、難燃性、耐熱性および耐水性にも優れるとともに、優れた成形加工性を有することから、屈曲時の自由度が高いため、この電磁コイル絶縁フィルム10を用いてモーター1を組み立てれば、モーター1の実用的な耐久性を高めることができる。
[発明の実施の形態2]
【0074】
図2には、本発明の実施の形態2(本発明に係る電磁コイル絶縁フィルムをトランスに適用した実施の形態)を示す。
<トランスの構成>
【0075】
トランス11は、図2に示すように、直方体箱状のケーシング12を有しており、ケーシング12の上面は開口している。ケーシング12内には2つ(1次側および2次側)のコイル13が、その層間および上下両側をそれぞれ電磁コイル絶縁フィルム15で絶縁されて積層された形で収納されている。また、ケーシング12には一対の磁心16が、コイル13の周囲に磁路を形成するようにケーシング12を上下両側から挟み込む形で組み付けられている。
【0076】
そして、各電磁コイル絶縁フィルム15はそれぞれ、上述した実施の形態1におけるモーター用の電磁コイル絶縁フィルム10と同様、液晶ポリエステルから構成されており、この液晶ポリエステルは、溶媒可溶性を有し、流動開始温度が250℃以上である。なお、電磁コイル絶縁フィルム15の厚みは、トランス11の出力やコイル13の配置状況などに応じて適宜選択することができるが、あまり薄いと、電磁コイル絶縁フィルム15の本来の機能である絶縁性を損なう恐れがある反面、厚くなるほど成形加工性を消失することから、絶縁性および成形加工性の両方を確保できる範囲内(例えば、1〜1000μm)とすることが望ましい。
【0077】
また、この電磁コイル絶縁フィルム15の原料となる液晶ポリエステルと、この液晶ポリエステルおよび溶媒(溶剤)を含む溶液組成物と、この溶液組成物を用いた電磁コイル絶縁フィルム15の製造方法については、上述した実施の形態1と同様である。
【0078】
したがって、これらの電磁コイル絶縁フィルム15では、上述した実施の形態1におけるモーター用の電磁コイル絶縁フィルム10と同じ作用効果を奏する。すなわち、本発明に係る電磁コイル絶縁フィルム15は、電気絶縁性は勿論のこと、難燃性、耐熱性および耐水性にも優れるとともに、優れた成形加工性を有することから、屈曲時の自由度が高いため、この電磁コイル絶縁フィルム15を用いてトランス11を組み立てれば、トランス11の実用的な耐久性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電車などの車両の駆動系に使用されるモーターや、発電所・変電所で用いられる大型のトランスに適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1……モーター
2……ハウジング
3……ステーター
5……出力軸
6……軸受
7……ローター
8……鉄心
9……コイル
10……モーター用の電磁コイル絶縁フィルム
11……トランス
12……ケーシング
13……コイル
15……トランス用の電磁コイル絶縁フィルム
16……磁心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とする電磁コイル絶縁フィルム。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、溶媒可溶性を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁コイル絶縁フィルム。
【請求項3】
前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が250℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁コイル絶縁フィルム。
【請求項4】
前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位を有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で示される構造単位が30.0〜60.0モル%、式(2)で示される構造単位が20.0〜35.0モル%、式(3)で示される構造単位が20.0〜35.0モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁コイル絶縁フィルム。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレンまたはナフチレンを表し、Ar2 は、フェニレン、ナフチレンまたは下記式(4)で表される基を表し、Ar3 はフェニレンまたは下記式(4)で表される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレンまたはナフチレンを表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
【請求項5】
前記式(3)で示される構造単位のXおよびYの少なくとも一方がNHであることを特徴とする請求項4に記載の電磁コイル絶縁フィルム。
【請求項6】
前記液晶ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜60.0モル%、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の合計が20.0〜35.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が20.0〜35.0モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁コイル絶縁フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁コイル絶縁フィルムが用いられていることを特徴とするモーター。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁コイル絶縁フィルムが用いられていることを特徴とするトランス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215757(P2010−215757A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62751(P2009−62751)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】