説明

電磁コイル

【課題】コイル部の温度変化に追従してコイル有効巻数の自動変更を可能とする電磁コイルを提供する。
【解決手段】ボビン40に被覆電線25を積層して巻回したコイル部20と、コイル部20の積層の途中の層間にあり、コイル部20の被覆電線25の導体26と並列に接続されるサーミスタ30と、を有して電磁コイル10を構成する。サーミスタが、温度上昇により抵抗値が上昇する正特性温度係数を有する場合は、非発熱(常温)時は抵抗値が低く有効巻数が減少し、発熱時はコイル部20の有効巻数が増加するので、電磁コイルの発熱時と非発熱時でコイルの有効巻数の自動変更が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁コイルは電磁石、ソレノイド等の種々の電磁機器に使用されている。電磁コイルには所定の電圧が印加されることにより、コイル部に流れる電流により電磁力を発生させるものであるが、発生する電磁力の強弱を変化させる電磁コイルが提案されている(特許文献1参照)。この電磁コイルは、内側コイル部と外側コイル部をボビンに分巻きし、外側コイル部に並列に可変抵抗素子(サーミスタ)を接続した構成とされている。
【0003】
特許文献1の電磁コイルによれば、可変抵抗素子により電磁弁が始動段階から保持段階へ移行する過程において大から小へと電磁コイルに印加する電流を簡単かつ自動的に発生することを実現し、更に強から弱への電磁界を発生して省エネ効果を発揮することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された電磁コイルの構成によると、可変抵抗素子(サーミスタ)は、分巻きされたコイル部の外部に配置されているので、コイル部の温度変化を検出する精度が低い。したがって、コイル部と可変抵抗素子(サーミスタ)との配置位置が異なるので、コイル部の温度変化を遅延なく正確に検出しその検出結果に基づいて電流量を調節することが難しいという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、コイル部の温度変化に追従してコイル有効巻数の自動変更を可能とする電磁コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、被覆電線を積層して巻回したコイル部と、前記コイル部の前記積層の途中の層間にあり、前記コイル部の前記被覆電線の導体と並列に接続されるサーミスタと、を有することを特徴とする電磁コイルを提供する。
【0008】
[2]前記サーミスタは、前記被覆電線の被覆を除去して露出した導体と接触した状態で、前記コイル部の層間に巻き込まれていることを特徴とする上記[1]に記載の電磁コイルであってもよい。
【0009】
[3]また、前記サーミスタは、前記コイル部の異なる層間にそれぞれ巻き込まれていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の電磁コイルであってもよい。
【0010】
[4]また、前記サーミスタは、温度上昇により抵抗値が上昇する正特性温度係数を有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1に記載の電磁コイルであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイル部の温度変化に追従してコイル有効巻数の自動変更を可能とする電磁コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電磁コイルの斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、図2で示すC部の拡大図である。
【図4】図4は、図1のB−B断面図である。
【図5】図5は、コイル部の温度とサーミスタの抵抗値との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る電磁コイルの斜視図である。本発明の実施の形態に係る電磁コイル10は、ボビン40に被覆電線25を積層して巻回したコイル部20と、コイル部20の積層の途中の層間にあり、コイル部20の被覆電線25の導体26と並列に接続されるサーミスタ30と、を有して構成されている。電磁コイル10は、コイル部20の端部から出される接続端子間に電源が供給され、電流により発生する磁界を利用した電磁石、ソレノイド、モータ等に適用可能である。
【0014】
図2は、図1のA−A断面図である。コイル部20は、ボビン40に被覆電線25が積層して巻回されたものである。例えば、図2に示すように、被覆電線25をボビン40にN列の巻回により第1層を形成し、その上の層として同様にN列の巻回により第2層を形成し、順次M層まで積層して巻回することで所定の巻数のコイル部20が形成される。ここで、M層、N列に巻回された電磁コイル10は、巻数がM×Nである。
【0015】
ここで、被覆電線25は、導体26の周囲が絶縁性の被覆27で覆われている線材である。例えば、ポリウレタン被覆線、エナメル線等が使用できる。
【0016】
ボビン40は、被覆電線25を巻回する芯材となるもので、金属、樹脂、セラミックス等により形成される。本発明の実施の形態では、図1等に示すように、鍔つきの円筒形状としたが、他の形状でもよく、また、ボビンを使用しないボビンレスの構成とすることも可能である。
【0017】
図2に示すように、サーミスタ30は、コイル部20の積層の途中の層間に配置されている。例えば、第5層の上、すなわち、第5層と第6層の層間にサーミスタ30が配置されている。
【0018】
図3は、図2で示すC部の拡大図である。第5層の被覆電線25は、被覆27が除去されて導体26が露出した状態となっている。サーミスタ30は、第5層の上に配置されるので、第1列から第N列までの被覆電線25は、それぞれ第5層の部分でサーミスタ30と電気的に接続している。第6層の被覆電線25は被覆されたままなので、サーミスタ30とは電気的に接続されない。
【0019】
なお、被覆電線25の被覆27の除去は、研削、切削等の機械的除去、又は溶解、エッチング等の化学的除去によることができる。また、サーミスタ30と導体26との接続は、オーミック性を担保した電気的接続が好ましい。
【0020】
図4は、図1のB−B断面図である。本発明の実施の形態では、例えば、サーミスタ30は、コイル部20の異なる層間に4箇所(30a、30b、30c、30d)配置される。この配置するサーミスタの数は、任意に設定でき、その数だけコイル部の有効巻数が増減することになる。
【0021】
サーミスタ30は、電気抵抗が温度で変化する可変抵抗素子であり、本発明の実施の形態では、温度の上昇で抵抗が大きくなる正特性温度係数を有するPTC(Positive Temperature Coefficient Thermistor)を使用する。このサーミスタ30は、図2、3、4に示すように、薄肉の断面矩形状で、必要な列数を接続する長尺形状とされている。PTCは、強誘電体であり正の温度依存を示すチタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分としイットリウムY,ランタンLaを配合してキューリー点を調整して形成される。
【0022】
図5は、コイル部の温度とサーミスタの抵抗値との関係を示す特性図である。PTC特性は、非発熱時(低温時)はサーミスタの抵抗値が低く、発熱時(高温時)は抵抗値が増大する。
【0023】
(電磁コイル10の動作)
図5において、非発熱時(低温時)は、P点において、温度T1、抵抗値R1とする。この状態では、サーミスタ30は抵抗値が低く、図2で示す第5層においては電流は抵抗値の低いサーミスタ30aを流れる。図4で示したサーミスタ30b、30c、30dも同様に電流が流れる。これにより、サーミスタ30a、30b、30c、30dと電気的に接続される各層の巻数は、磁界発生に寄与しないことになる。したがって、本発明の実施の形態では、有効巻数がM×Nから(M×N−4N)に減少する。この有効巻数の減少により定電圧駆動においてはコイルを流れる電流量が増加する。
【0024】
発熱時(高温時)は、P点からQ点まで抵抗値が増加し、温度T3で抵抗値R3となる。この状態では、サーミスタ30は抵抗値が高く、図2で示す第5層においては電流は抵抗値の低い被覆電線25を流れる。したがって、本発明の実施の形態では、有効巻数はM×Nであり、非発熱時(低温時)と比較して有効巻数は増加する。これにより定電圧駆動においてはコイルを流れる電流量が減少する。
【0025】
発熱によりコイルの有効巻数が増加することで電流量が減少し、発熱量は低下する。これにより、図5で示すように、P点からQ点まで増加した温度、抵抗値は、減少に転じ、温度及び抵抗値が平衡するS点に収束する。
【0026】
(本発明の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、次のような効果を有する。
(1)本発明の実施の形態に係る電磁コイル10は、被覆電線25を積層して巻回したコイル部20と、コイル部20の積層の途中の層間にあり、コイル部20の被覆電線25の導体26と並列に接続されるサーミスタ30と、を有して構成されている。サーミスタ30の特性を温度の上昇で抵抗が大きくなる正特性温度係数とすることで、非発熱(常温)時は抵抗値が低く有効巻数が減少し、発熱時はコイル部20の有効巻数が増加する。これにより、コイル部の温度変化に追従してコイル有効巻数の自動変更を可能とする電磁コイルを提供することができる。
(2)本発明の実施の形態では、サーミスタ30は、コイル部20の積層の途中の層間に配置される。従って、コイル部20の温度変化を遅延なく正確に検出し、その検出結果に基づいて電流量を調節することが可能となる。
(3)本発明の実施の形態に係る電磁コイル10を、例えば、ソレノイドに適用すれば、発熱時はソレノイド吸引後の状態と割り切り、保持分のみ確保できるコイル巻数を確保し、発熱前は巻数の減少に伴う電流増加で吸引力を確保することができる。
【0027】
以上、電磁コイルを上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。例えば、サーミスタ30をコイル部20の積層の途中の層間において、全列に電気的に接続する構成として説明したが、全列の一部に接続する構成としてもよい。これにより、有効巻数が4Nだけ減少するところを4N´(<4N)として有効巻数を細かく設定することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…電磁コイル
20…コイル部
25…被覆電線
26…導体
27…被覆
30、30a、30b、30c、30d…サーミスタ
40…ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線を積層して巻回したコイル部と、
前記コイル部の前記積層の途中の層間にあり、前記コイル部の前記被覆電線の導体と並列に接続されるサーミスタと、
を有することを特徴とする電磁コイル。
【請求項2】
前記サーミスタは、前記被覆電線の被覆を除去して露出した導体と接触した状態で、前記コイル部の層間に巻き込まれていることを特徴とする請求項1に記載の電磁コイル。
【請求項3】
前記サーミスタは、前記コイル部の異なる層間にそれぞれ巻き込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁コイル。
【請求項4】
前記サーミスタは、温度上昇により抵抗値が上昇する正特性温度係数を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の電磁コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93344(P2013−93344A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232602(P2011−232602)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)