説明

電磁ソレノイド装置

【課題】第1磁石6および第2磁石7が初期位置Tと作動位置Sとの間を往復変位する際、支軸コア2に対する第1磁石6および第2磁石7の電磁駆動力に変動が少なくて低下が生じない電磁ソレノイド装置1を提供する。
【解決手段】初期位置Tから作動位置Sへの往路では、漸減する電磁反発力は漸増する電磁吸引力により補われるため、第1磁石6および第2磁石7を変位させるに要する電磁駆動力は、漸減する電磁反発力と漸増する電磁吸引力となり、電磁駆動力に低下が生じない。作動位置Sから初期位置Tへの復路でも、漸減する電磁反発力は漸増する電磁吸引力により補われるため、電磁駆動力に低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られ、誤作動や作動障害がなく、電磁ソレノイド装置1として良好な駆動機能を長期にわたって維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の電装部品などの駆動に使用される電磁ソレノイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁ソレノイド装置の往復動機能は、各種のバルブ開閉機構をはじめ、ディスチャージ形前照灯のロー・ハイを配光制御するシェード、照射方向を上下調節するレベライザー、照射方向を左右に調整するAFS、および自動変速機を搭載した車両(AT車)のシフトレバーロック装置などに適用されている。
【0003】
往復動機能を有する機構の一例として、特許文献1には蒸発燃料処理システムに用いられる電磁弁装置が記載されている。この電磁弁装置では、コイルの上方に磁石収容部材に配置された永久磁石を備え、第1流路口側の圧力が第2流路口側よりも所定圧力以上に高くなると、第1弁部材はガスケットから離座して第1流体室を介して第1流路口と第2流路口とを連通する。
【0004】
永久磁石の磁束と反発する方向にコイルを通電すると、永久磁石とコイルの電磁相互作用により、永久磁石が磁石収容部材とともに上方に離間変位し、作動位置で第1弁部材がガスケットに対して当接状態に押し付けられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−48258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の電磁弁装置では、上方に変位する永久磁石がコイルから離れるに連れて、両者間に働く電磁駆動力としての反発力は急激に低下する(図3(a)における曲線Cの電磁駆動力R参照)。このため、ガスケットに対する第1弁部材の押付け力が低下し、作動位置においてガスケットに対する第1弁部材の保持力が不安定となる。
【0007】
この状態で、車両の走行時に電磁弁装置が振動を受けると、第1弁部材の保持力が不安定のため、揺動により第1弁部材がガスケットから離れ易くなり、誤作動や作動障害を生じて電磁弁装置の良好な機能を維持できなくなる虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、第1磁石および第2磁石が初期位置と作動位置との間を往復変位する際、支軸コアに対する第1磁石および第2磁石の電磁駆動力に変動が少なくて低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られ、初期位置における第1磁石の保持力および作動位置における第2磁石の保持力を十分な値に設定できて誤作動や作動障害を生じず、初期の良好な駆動機能を長期にわたって維持できる電磁ソレノイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1について)
電磁ソレノイド装置において、非磁性材製のプランジャーシャフトは、中空の支軸コア内に軸方向に往復変位可能に挿通されている。コイル体は、支軸コアの外周囲に設けられ、ヨークは、磁性材により筒状に形成されてコイル体の外周囲に配置されている。
【0010】
第1磁石はプランジャーシャフトの一端部に取り付けられて、第1磁石の外側面部がヨークの一端側と第1微小空隙を介して対向する。第2磁石は、プランジャーシャフトの他端部に取り付けられて、第2磁石の外側面部がヨークの他端側と第2微小空隙を介して対向する。
【0011】
コイル体に対する正方向の通電時、第1磁石の磁束と支軸コアからの磁束との間に生じる電磁反発力により、第1磁石が支軸コアの一端面から離間してプランジャーシャフトとともに初期位置から作動位置に変位し、作動位置で第2磁石が支軸コアの他端面に対して電磁吸引力を働かせる。
【0012】
コイル体に対する逆方向の通電時、第2磁石の磁束と支軸コアからの磁束との間に生じる電磁反発力により、第2磁石が支軸コアの他端面から離間してプランジャーシャフトとともに作動位置から初期位置に戻り、初期位置で第1磁石が支軸コアの一端面に対して電磁吸引力を働かせる。
【0013】
第1磁石および第2磁石が初期位置から作動位置に到る往路では、第1磁石が電磁反発力により支軸コアの一端面から離間して電磁反発力が漸減するものの、第2磁石が支軸コアの他端面に漸増する電磁吸引力を働かせるようになる。
【0014】
すなわち、往路では、漸減する電磁反発力は漸増する電磁吸引力により補われるため、第1磁石および第2磁石を変位させるに要する電磁駆動力は、漸減する電磁反発力と漸増する電磁吸引力との総和で変動の少ない略一定の値となって、電磁駆動力に低下が生じない。
【0015】
第1磁石および第2磁石が作動位置から初期位置に戻る復路では、第2磁石が電磁反発力により支軸コアの他端面から離間して電磁反発力が漸減するものの、第1磁石が支軸コアの一端面に漸増する電磁吸引力を働かせるようになる。
【0016】
すなわち、復路でも、漸減する電磁反発力は漸増する電磁吸引力により補われるため、電磁駆動力が変動の少ない略一定の値となって、電磁駆動力に低下が生じない。
【0017】
この結果、第1磁石および第2磁石が初期位置と作動位置との間を往復変位する際、支軸コアに対する第1磁石および第2磁石の電磁駆動力の低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られ、初期位置における第1磁石の保持力および作動位置における第2磁石の保持力を十分な値に設定することができて誤作動や作動障害を生じず、電磁ソレノイド装置として初期の良好な駆動機能を長期にわたって維持することができる。
【0018】
しかも、良好な駆動機能の実現のためには、第1磁石および第2磁石を設けるといった簡素な構造でよく、構造が複雑化せずコスト的にも有利である。
(請求項2について)
ヨークは円筒状を成し、第1磁石および第2磁石は円盤状に形成されている。第1磁石は、第1微小空隙を介してヨークの一端側に形成された第1内周環端部と同芯的に配置されている。第2磁石は、第2微小空隙を介してヨークの他端側に形成された第2内周環端部と同芯的に配置されている。
【0019】
この場合、第1磁石および第2磁石の各外径寸法又はコの字状をなすヨークの各外径寸法を変更することにより、第1微小空隙および第2微小空隙の各幅寸法を微調整することができる。
【0020】
このため、第1磁石および第2磁石が初期位置と作動位置との間を往復変位する過程で、第1磁石と支軸コアとの間に働く電磁吸引力(電磁反発力)、および第2磁石と支軸コアとの間に働く電磁吸引力(電磁反発力)を微調整することが可能となる。
【0021】
これにより、第1磁石および第2磁石の各変位量と電磁吸引力(電磁反発力)との間に、所望の電磁駆動特性を得ることが可能となり、初期位置(作動位置)における第1磁石(第2磁石)の保持力、および作動位置(初期位置)における第2磁石(第1磁石)の保持力を被駆動体の要求に応じて所望に設定することができる。
(請求項3について)
第1磁石の外側面部はヨークの内部に向かって窄む第1テーパ外面部を形成し、第2磁石の外側面部はヨークの内部に向かって窄む第2テーパ外面部を形成している。
【0022】
第1内周環端部は第1テーパ外面部に対応して傾斜する第1テーパ内面部を設け、第2内周環端部は第2テーパ外面部に対応して傾斜する第2テーパ内面部を設けている。
【0023】
この場合、第1磁石における第1テーパ外面部の傾斜角、第2磁石における第2テーパ外面部の傾斜角、第1テーパ内面部の傾斜角、および第2テーパ内面部の傾斜角を適宜に変更することができる。これにより、第1磁石と支軸コアとの間に働く電磁反発力(電磁吸引力)、および第2磁石と支軸コアとの間に働く電磁吸引力(電磁反発力)を微調整することが可能となり、電磁駆動特性を所望に応じて修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)はコイル体に対する無通電時の電磁ソレノイド装置を示す概略的縦断面図、(b)はコイル体に対して正方向への通電時の電磁ソレノイド装置を示す概略的縦断面図である(実施例1)。
【図2】(a)は第1磁石および第2磁石が作動位置に変位して、コイル体への通電を止めた時の電磁ソレノイド装置を示す概略的縦断面図、(b)はコイル体に対して逆方向への通電時の電磁ソレノイド装置を示す概略的縦断面図である(実施例1)。
【図3】(a)は第1磁石および第2磁石の変位量(ストローク)と電磁駆動力との関係を示す電磁駆動特性図(但し、曲線Cの電磁駆動力Rを従来として記している)、(b)は初期位置と作動位置との間の変位量(ストローク)が大小変わる場合を比較して示す電磁駆動特性図である(実施例1)。
【図4】コイル体に対する無通電時の電磁ソレノイド装置を示す概略的縦断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明では、第1磁石および第2磁石が初期位置と作動位置との間を往復変位する際、支軸コアに対する第1磁石および第2磁石の電磁駆動力が変動の少ない略一定の値となって電磁駆動力に低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られ、初期位置における第1磁石の保持力、および作動位置における第2磁石の保持力を十分な値に設定できて誤作動や作動障害を生じず、電磁ソレノイド装置として初期の良好な駆動機能を長期にわたって維持できる。
【実施例1】
【0026】
図1ないし図3は本発明の実施例1による電磁ソレノイド装置1を示す。電磁ソレノイド装置1は、各種のバルブの開閉を行うアクチュエータをはじめ、ディスチャージ形前照灯のロー・ハイを配光制御するシェード、照射方向を上下調節するレベライザー、照射方向を左右に調整するAFS、および自動変速機を搭載した車両(AT車)のシフトレバーロック装置などの被駆動体(図示せず)の作動に使用される。
【0027】
電磁ソレノイド装置1の中心部には、図1(a)に示すように、中空に形成されて内部を挿通孔2cとする磁性材製の支軸コア2が配置されている。支軸コア2内には、非磁性材製のプランジャーシャフト5が軸方向に往復変位可能に挿通されている。
【0028】
支軸コア2の外周囲には、筒状に形成されたコイル体3が配置されている。コイル体3の外周囲には、中心軸に沿って断面略コ字状をなす円筒状のヨーク4が配置されている。ヨーク4は磁性材により形成され、一端側に第1内周環端部4aを設け、他端側に第2内周環端部4bを設けている。
【0029】
プランジャーシャフト5の一端部には、例えば円盤状をなす第1磁石6が取り付けられている。プランジャーシャフト5の他端部には、第1磁石6と同様な形状で同一の磁気力を有する第2磁石7が取り付けられている。
【0030】
第1磁石6の外側面部6aは、ヨーク4の第1内周環端部4aと同芯的で、第1微小空隙G1を介して第1内周環端部4aに対向するように配置されている。第2磁石7の外側面部7aは、ヨーク4の第2内周環端部4bと同芯的で、第2微小空隙G2を介して第2内周環端部4bに対向するように配置されている。
【0031】
第1磁石6および第2磁石7は、例えば、ネオジウム磁石により形成されており、第1磁石6からの磁束Jは、支軸コア2の長手方向に沿って中心に向かって流れ、第2磁石7からの磁束Kは、支軸コア2の長手方向に沿って磁束Jと対向するように流れている。
【0032】
図1(a)の状態で、コイル体3を正方向に通電すると、図1(b)に示すように、コイル体3による磁束L1がヨーク4の内周環端部4bから第2微小空隙G2、支軸コア2、第1微小空隙G1およびヨーク4の内周環端部4aを順に介してヨーク4に循環する第1磁気回路を形成する。
【0033】
この時、第1磁石6の磁束Jと支軸コア2を流れる磁束L1との間に電磁反発力が生じ、第1磁石6を支軸コア2の一端面2aから離間させてプランジャーシャフト5とともに、長手方向に沿って初期位置Tから作動位置Sに変位させる{図1(b)の矢印E参照}。この変位に伴い、第2磁石7の磁束Kと支軸コア2を流れる磁束L1との相互作用により、第2磁石7が支軸コア2の他端面2bに対して電磁吸引力を働かせて作動位置Sに保持される。
【0034】
コイル体3への通電を止めても、図2(a)に示すように、支軸コア2に対する第2磁石7の磁気吸引力により、第1磁石6および第2磁石7に対する作動位置Sへの保持は続行する。この状態で、コイル体3を逆方向に通電すると、図2(b)に示すように、コイル体3による磁束L2がヨーク4の第1内周環端部4aから第1微小空隙G1、支軸コア2、第2微小空隙G2およびヨーク4の第2内周環端部4bを順に介してヨーク4に循環する第2磁気回路を形成する。
【0035】
この時、第2磁石7の磁束Kと支軸コア2を流れる磁束L2との間に電磁反発力が生じ、第2磁石7を支軸コア2の他端面2bから離間させてプランジャーシャフト5とともに、長手方向に沿って作動位置Sから初期位置Tに戻らせる{図2(b)の矢印F参照}。
【0036】
この変位に伴い、第1磁石6の磁束Jと支軸コア2を流れる磁束L2との相互作用により、第1磁石6が支軸コア2の一端面2aに対して電磁吸引力を働かせて元の初期位置Tに保持される。コイル体3への通電を止めても、第1磁石6が支軸コア2の一端面2aに対して磁気吸引力を働かせるので、第1磁石6および第2磁石7に対する初期位置Tへの保持は続行する。
【0037】
上記構成では、第1磁石6および第2磁石7が初期位置Tから作動位置Sに変位する往路では、図3(a)の曲線Dで示すように、第1磁石6を支軸コア2の一端面2aから離間させる電磁反発力M1が漸減するものの、第2磁石7は、図3(a)の曲線Bで示すように、支軸コア2の他端面2bに近づくにつれて漸増する電磁吸引力M2が働くようになる。
【0038】
これにより、漸減する電磁反発力M1は、漸増する電磁吸引力M2で補われるようになり、これら両者の総和(M1+M2)が、図3(a)の曲線Aで示すように、第1磁石6および第2磁石7を初期位置Tから作動位置Sに変位させる電磁駆動力F1(M1+M2)となる。すなわち、往路では第1磁石6および第2磁石7の変位に要する電磁駆動力F1が変動の少ない略一定の値となって、電磁駆動力F1に低下が生じない。
【0039】
次に、第1磁石6および第2磁石7が作動位置Sから初期位置Tに戻る復路について説明する。第1磁石6と第2磁石7とは同じ大きさの磁気力を有することから、初期位置Tから作動位置Sへの往路と作動位置Sから初期位置Tへの復路とは、同様の変位経路を辿る。このため、復路については、往路と同一の図3(a)を用いて初期位置Tから作動位置Sに変位する場合と同様に考えられる。
【0040】
すなわち、第1磁石6および第2磁石7が作動位置Sから初期位置Tに戻る復路では、図3(a)の曲線D1で示すように、第2磁石7が電磁反発力N1により支軸コア2の他端面2bから離間させる電磁反発力N1が漸減するものの、第1磁石6は、図3(a)の曲線B1で示すように、支軸コア2の一端面2aに近づくにつれて漸増する電磁吸引力N2が働くようになる。このため、第1磁石6および第2磁石7が作動位置Sから初期位置Tに戻る復路でも、図3(a)の曲線A1で示すように、電磁駆動力F2(N1+N2)が変動の少ない略一定の値となって、電磁駆動力F2に低下が生じない。
【0041】
この結果、第1磁石6および第2磁石7が初期位置Tと作動位置Sとの間を往復変位する際、支軸コア2に対する第1磁石6および第2磁石7の電磁駆動力に低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られる。これに伴い、初期位置Tにおける第1磁石6の保持力および作動位置Sにおける第2磁石7の保持力を十分な値に設定することができて誤作動や作動障害を生じず、電磁ソレノイド装置として初期の良好な駆動機能を長期にわたって維持することができる。
【0042】
実際、図3(a)の曲線A(A1)に示すように、初期位置Tと作動位置Sとの区間では、電磁駆動力F1(F2)が変位量に対して略平行な直線となって概ね一定の値を維持する。このため、開閉弁などを制御する車両用の電磁ソレノイド装置として理想的な特性となる。
【0043】
しかも、良好な駆動機能の実現のためには、第1磁石6および第2磁石7を設けるといった簡素な構造でよく、全体の構造が複雑化せずコスト的にも有利である。
【0044】
また、実施例1では、第1磁石6および第2磁石7を円盤状に形成し、第1磁石6を第1微小空隙G1を介して第1内周環端部4aに配し、第2磁石7を第2微小空隙G2を介して第2内周環端部4bに配した。このため、第1磁石6および第2磁石7の各外径寸法を変更することにより、第1微小空隙G1および第2微小空隙G2の各幅寸法を微調整することができる。
【0045】
これに伴い、第1磁石6および第2磁石7が初期位置Tと作動位置Sとの間を往復変位する過程で、第1磁石6と支軸コア2との間に働く電磁反発力(電磁吸引力)および第2磁石7と支軸コア2との間に働く電磁吸引力(電磁反発力)を微調整することが可能となる。
【0046】
このため、第1磁石6および第2磁石7の各変位量(ストローク)と電磁反発力(電磁吸引力)との間に、所望の電磁駆動特性を得ることが可能となり、初期位置T(作動位置S)における第1磁石6(第2磁石7)の保持力、および作動位置S(初期位置T)における第2磁石7(第1磁石6)の保持力を被駆動体の要求に応じて所望に設定することができる。
【0047】
図3(b)は、初期位置Tと作動位置Sとの間の変位量(ストローク)が大小変わる場合を比較した電磁駆動特性を示す。この電磁駆動特性によれば、同図の曲線U、Vで示すように変位量が小さい場合は勿論、同図の曲線Wで示すように変位量が大きい場合でも、電磁駆動力の特性が良好に維持されて電磁駆動力に低下が生じないことが分かる。
【0048】
このため、例えば内燃機関における吸気系機構の吸気弁(図示せず)の開閉操作に大きな変位量を必要する場合にも、本発明の電磁ソレノイド装置1を支障なく適用することができる。
【実施例2】
【0049】
図4は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、第1磁石6の外側面部6aおよび第2磁石7の外側面部7aをテーパ状に形成したことである。
【0050】
すなわち、第1磁石6の外側面部6aは、ヨーク4の内部に向かって窄む第1テーパ外面部8を形成し、第2磁石7の外側面部7aは、ヨーク4の内部に向かって窄む第2テーパ外面部9を形成している。ヨーク4の内周環端部4aは、第1テーパ外面部8に対応して傾斜する第1テーパ内面部10を設け、ヨーク4の内周環端部4bは、第2テーパ外面部9に対応して傾斜する第2テーパ内面部11を設けている。
【0051】
この場合、第1テーパ外面部8の傾斜角θ1、第2テーパ外面部9の傾斜角θ2、第1テーパ内面部10の傾斜角φ1および第2テーパ内面部11の傾斜角φ2を適宜に変更することにより、第1磁石6と支軸コア2との間に働く電磁反発力(電磁吸引力)および第2磁石7と支軸コア2との間に働く電磁吸引力(電磁反発力)を微調整することが可能となり、電磁駆動特性を所望に応じて修正することができる。
(変形例)
(a)上記実施例1、2では、第1磁石6および第2磁石6はネオジウム磁石としたが、ネオジウム磁石に代わって、KS鋼、MK鋼、アルニコ磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ゴムをバインダーとしてフェライト粉末を配合分散させたゴム磁石、あるいは磁石と磁性体とを組み合わせた複合磁石を用いてもよい。
(b)ヨーク4は円筒状に限らず、4角筒状、5角筒状、あるいは多角筒状であってもよい。これに伴い、第1磁石6および第2磁石6も、ヨーク4の形状に応じて4角筒状、5角筒状、あるいは多角筒状に形成されるものである。
(c)第1磁石6と第2磁石7とは、互いの磁気力が異なるように構成し、初期位置Tと作動位置Sとの間における往路と復路とで異なる電磁駆動特性となるようにしてもよい。また、電磁ソレノイド装置1の使用状態などによっては、第1微小空隙G1の幅寸法と第2微小空隙G2の幅寸法とを互いに異ならせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明では、第1磁石および第2磁石が初期位置と作動位置との間を往復変位する際、支軸コアに対する第1磁石および第2磁石の電磁駆動力が変動の少ない略一定の値となって電磁駆動力に低下が生じず、優れた電磁駆動特性が得られる。初期位置における第1磁石の保持力および作動位置における第2磁石の保持力を十分な値に設定できて誤作動や作動障害を生じず、電磁ソレノイド装置として初期の良好な駆動機能を長期にわたって維持できる。このため、車両搭載用の電磁ソレノイド装置として好適となり、車両関連事業の需要を喚起し、部品の流通を介して機械産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電磁ソレノイド装置
2 支軸コア
2a 支軸コアの一端面
2b 支軸コアの他端面
3 コイル体
4 ヨーク
4a ヨークの第1内周環端部
4b ヨークの第2内周環端部
5 プランジャーシャフト
6 第1磁石
6a 第1磁石の外側面部
7 第2磁石
7a 第2磁石の外側面部
8 第1磁石の第1テーパ外面部
9 第2磁石の第2テーパ外面部
10 第1内周環端部の第1テーパ内面部
11 第2内周環端部の第2テーパ内面部
G1 第1微小空隙
G2 第2微小空隙
J 第1磁石による磁束
K 第2磁石による磁束
L1、L2 コイル体による磁束
F1、F2 電磁駆動力
M1、N1 電磁反発力
M2、N2 電磁吸引力
T 初期位置
S 作動位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の支軸コア内に軸方向に往復変位可能に挿通された非磁性材製のプランジャーシャフトと、
前記支軸コアの外周囲に設けられたコイル体と、
前記コイル体の外周囲に配置され、磁性材により筒状に形成されたヨークと、
前記プランジャーシャフトの一端部に取り付けられて、外側面部が前記ヨークの一端側と第1微小空隙を介して対向する第1磁石と、
前記プランジャーシャフトの他端部に取り付けられて、外側面部が前記ヨークの他端側と第2微小空隙を介して対向する第2磁石とを備え、
前記コイル体に対する正方向の通電時、前記第1磁石の磁束と前記支軸コアからの磁束との間に生じる電磁反発力により、前記第1磁石が前記支軸コアの一端面から離間して前記プランジャーシャフトとともに初期位置から作動位置に変位し、前記作動位置で前記第2磁石が前記支軸コアの他端面に電磁吸引力を働かせるようにし、
前記コイル体に対する逆方向の通電時、前記第2磁石の磁束と前記支軸コアからの磁束との間に生じる電磁反発力により、前記第2磁石が前記支軸コアの前記他端面から離間して前記プランジャーシャフトとともに前記作動位置から前記初期位置に変位し、前記初期位置で前記第1磁石が前記支軸コアの前記一端面に電磁吸引力を働かせるようにしたことを特徴とする電磁ソレノイド装置。
【請求項2】
前記ヨークは円筒状を成し、前記第1磁石および前記第2磁石は円盤状に形成されており、前記第1磁石は、前記第1微小空隙を介して前記ヨークの一端側に形成された第1内周環端部と同芯的に配置され、前記第2磁石は、前記第2微小空隙を介して前記ヨークの他端側に形成された第2内周環端部と同芯的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁ソレノイド装置。
【請求項3】
前記第1磁石の外側面部は前記ヨークの内部に向かって窄む第1テーパ外面部を形成し、前記第2磁石の外側面部は前記ヨークの内部に向かって窄む第2テーパ外面部を形成し、前記第1内周環端部は前記第1テーパ外面部に対応して傾斜する第1テーパ内面部を設け、前記第2内周環端部は前記第2テーパ外面部に対応して傾斜する第2テーパ内面部を設けていることを特徴とする請求項2に記載の電磁ソレノイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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