説明

電磁トランスポンダの結合係数の抵抗性評価

【課題】本発明は、トランスポンダが存在する端末の磁場内におけるトランスポンダと端末との結合係数を評価できる方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電磁トランスポンダと端末との結合係数を評価する方法によれば、前記トランスポンダの抵抗性負荷の2つの値に関して得られる前記トランスポンダの発振回路の電圧の比率を、一又は複数の閾値と比較し、比較結果に基づき、前記結合係数を評価する。更に本発明では、前記発振回路の両端間に設けられている整流器によって与えられる直流電圧を、前記抵抗性負荷の前記2つの値の夫々に関して測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、電子システムに関し、より具体的には、電磁トランスポンダ、すなわち、読出し及び/又は書込み端末によって非接触且つ無線で応答され得るトランシーバを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの通信システムは、端末によって生成される電磁場の変調に基づいている。前記通信システムは、盗難防止装置として使用される最も簡素な電子タグから、トランスポンダが端末の電磁場内に存在するときに端末と通信するためのトランスポンダが、計算機能(例えば、電子財布)又はデータ処理機能を備えているより複雑なシステムまで多岐にわたっている。
【0003】
電磁トランスポンダを備えたシステムは、アンテナを形成する巻線を備えた発振回路のトランスポンダ側及び端末側での使用に基づいている。このような発振回路は、トランスポンダが端末の電磁場内に入ったとき、近傍の磁場によって結合される。端末の発振回路及びトランスポンダの発振回路は、一般的には、端末の発振回路の励起周波数に相当する同一の周波数に同調される。
【0004】
トランスポンダは、ほとんどの場合、自己電源を有しておらず、端末のアンテナによって発せられる高周波磁場から自身の回路に必要な電力を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0857981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通信の品質及び電力伝送の品質は、端末とトランスポンダとの結合により決まる。端末及びトランスポンダ間の距離に(非線形に)反比例するこの結合は、トランスポンダによって回収される電圧の振幅を調節する。従って、トランスポンダが存在する端末の磁場内におけるトランスポンダと端末との結合係数を評価できることが必要である。
【0007】
トランスポンダと端末との結合係数を評価できることが好ましい。
【0008】
また、通信中に前記結合係数の変動を評価できることが好ましい。
【0009】
また、端末及びトランスポンダ間でデータの交換を必要とすることなく、結合係数を評価できることが好ましい。
【0010】
また、前記評価をトランスポンダ側で行え得ることが好ましい。
【0011】
更に、その磁場内にトランスポンダを有する端末のタイプとは無関係に解決法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的及び他の目的の全て又は一部を達成するために、本発明は、電磁トランスポンダと端末との結合係数を評価する方法であって、前記トランスポンダの抵抗性負荷の2つの値に関して得られる前記トランスポンダの発振回路の電圧の比率を、一又は複数の閾値と比較し、比較結果に基づき、前記結合係数を評価することを特徴とする方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、前記発振回路の両端間に設けられている整流器によって与えられる直流電圧を、前記抵抗性負荷の前記2つの値の夫々に関して測定する。
【0014】
本発明によれば、前記抵抗性負荷の2つの値の内の一方に関する最適結合係数に基づき、前記結合係数を評価する。
【0015】
本発明によれば、前記閾値は、前記抵抗性負荷の2つの値の関数である。
【0016】
本発明によれば、前記抵抗性負荷の前記2つの値間の変動を、前記トランスポンダに備えられているプロセッサの消費を変更することにより得る。
【0017】
本発明によれば、前記抵抗性負荷の前記2つの値間の変動を、前記トランスポンダに備えられている切替可能な抵抗性逆変調要素を切替えることにより得る。
【0018】
本発明は、更に、前記評価された結合係数に基づいて、電磁トランスポンダを過熱から保護する方法であって、前記結合係数と最適結合係数との比率が、2つの閾値の範囲内にあるか否かを判断し、前記比率が2つの閾値の範囲内にあるとき、前記発振回路を離調して、前記トランスポンダを過熱から保護することを特徴とする方法を提供する。
【0019】
本発明は、更に、電磁トランスポンダが端末の磁場内にあるとき、直流電圧を与えることが可能な整流器の上流側に設けられた発振回路と、前記評価方法又は保護方法を実施すべくプログラミングされた少なくとも1つのプロセッサとを備えていることを特徴とする電磁トランスポンダを提供する。
【0020】
本発明によれば、前記トランスポンダは、前記発振回路と機能的に並列に接続され得る少なくとも1つの切替可能な抵抗性要素を更に備えている。
【0021】
本発明によれば、前記切替え可能な抵抗性要素は、前記整流器の出力端子に接続されている。
【0022】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない特定の実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が一例として適用されるタイプの電磁トランスポンダ通信システムを非常に簡略化して示す図である。
【図2】電磁トランスポンダ通信システムの端末及びトランスポンダを示すブロック略図である。
【図3】結合係数に応じたトランスポンダの発振回路の電圧の変動の一例を示す図である。
【図4】結合係数を評価するための方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】端末との結合係数を評価することが可能なトランスポンダの実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同一の構成要素は、異なる図面において同一の参照番号で示されている。明瞭化のために、本発明の理解に有用なステップ及び構成要素のみが示され、説明されている。具体的には、トランスポンダと端末との通信については詳述されておらず、本発明は、あらゆる通常の通信に適合する。更に、トランスポンダによる結合係数の判断以外の端末又は前記トランスポンダによって実施され得る機能も詳述されておらず、本発明は、ここでもまた、端末又はトランスポンダのあらゆる通常の機能に適合する。
【0025】
図1は、電磁トランスポンダ通信システムのブロック図である。端末1は、(例えば、近距離無線通信(NFC:near field communication)プロトコルに応じて、離れた構成要素、すなわち、トランスポンダと近距離で通信することが可能である。
【0026】
端末1は、様々な形態、例えば、輸送チケット確認端末、電子パスポートリーダ、ラップトップ型コンピュータ、移動通信機器(GSM電話、PDA等)、自動車を始動させる電子制御ユニット等の形態から構成され得る。
【0027】
同様に、トランスポンダ2は、様々な形態、例えば、チップカード、電子輸送チケット、電子パスポート、通信端末(GSM電話、PDA等)、電子タグ等の形態から構成され得る。
【0028】
図2は、端末1及びトランスポンダ2の実施例を非常に概略的に示す。
【0029】
端末1は、コンデンサ(容量性素子)C1及び抵抗器R1と直列のインダクタンス(誘導性素子)L1から構成された一般的には直列の発振回路L1−C1を備えている。図2に示された実施例では、この直列発振回路は、増幅器すなわちアンテナカプラ14の出力端子12と、基準電圧を有する端子13(一般的には、アース)との間に接続されている。発振回路内の電流を測定する測定素子15が、例えば、容量性素子C1とアース13との間に設けられている。測定素子15は、後述する位相調整ループに属している。増幅器14は変調器(MOD)16から与えられる高周波伝送信号を受取り、変調器16は、例えば、水晶発振器(図示せず)から基準周波数信号(OSC)を受取る。変調器16は、必要に応じて、伝送を制御して利用するための回路11から与えられる信号Txを受取る。回路11は、一般的には、制御及びデータ処理マイクロプロセッサを備えており、図示しない様々な入力/出力回路(キーボード、ディスプレイ、サーバと通信する要素等)及び/又は処理回路と通信する。端末1の構成要素は、ほとんどの場合、その動作に必要な電力を電源回路(図示せず)から取り出しており、電源回路は、例えば、電源供給ライン配電システム(コンセント)又はバッテリ(例えば、自動車、携帯電話又はコンピュータのバッテリ)に接続されている。変調器16は、(例えば、13.56MHzの)高周波搬送波(信号)Txを、直列発振回路L1−C1に供給し、該発振回路は磁場を生成する。
【0030】
容量性素子C1は、例えば、信号CTRLにより制御可能な可変容量性素子である。この容量性素子C1は、基準信号に関するアンテナ(インダクタンス)L1の電流I1の位相調整に関与する。この調整は、高周波信号の調整、すなわち、送信されるべきデータTxがないとき増幅器14に与えられる信号に相当する搬送波の信号の調整である。該調整は、基準信号と一定の位相関係でアンテナL1の電流I1を維持するように、端末1の発振回路のキャパシタンスを変化させることによって行われる。この基準信号は、例えば、変調器16に供給される基準周波数信号OSCに相当する。信号CTRLは、比較器17から与えられる。比較器17は、前記基準信号に関する位相間隔を検出する機能と、検出に応じて、容量性素子C1のキャパシタンスを変更する機能とを有する。この比較器17は、測定素子15(例えば、強度変圧器又は抵抗器)によって検出される発振回路の電流I1に関するデータMESを受取る。
【0031】
端末1と協働可能なトランスポンダ2は、発振回路を備えており、該発振回路は、例えば、2つの端子21及び端子22間のコンデンサ(容量性素子)C2と並列なインダクタンス(誘導性素子)L2から並列に構成されている。(受信共振回路と呼ばれる)並列発振回路L2−C2は、端末1の発振回路L1−C1によって生成される磁場を取り込むように設けられている。発振回路L2−C2及び発振回路L1−C1は、同一の共振周波数(例えば、13.56MHz)に同調される。端子21及び端子22は、(ほとんどの場合、全波の)整流ブリッジ23の2つの交流入力端子に接続されている。整流ブリッジ23の整流出力端子が、正端子24及び基準端子25を夫々画定する。コンデンサCaが、整流電圧を平滑化するために、端子24及び端子25間に接続されている。回収された電力が、図示しないバッテリを再充電するために用いられる。
【0032】
トランスポンダ2が端末1の磁場内にあるとき、高周波電圧が、共振回路L2−C2に生成される。整流ブリッジ23によって整流されてコンデンサCaによって平滑化されるこの電圧は、電圧調整器(REG)26を介してトランスポンダ2の電子回路に供給電圧として与えられる。このような電子回路は、一般的には、記憶装置(図示せず)と関連付けられた処理部(例えば、マイクロコントローラμC、プロセッサ)27と、端末1から受信される信号を復調する復調器(DEM)28と、データを端末1に送信するための変調器(MOD)29とを含んでいる。トランスポンダ2は、一般的には、整流前に端子21及び端子22の一方から回収される高周波信号から回路20によって取り出されるクロック(CLK)を用いて同期される。ほとんどの場合、トランスポンダ2の全ての電子回路は、同一のチップにまとめられている。
【0033】
端末1からトランスポンダ2にデータを送信するために、変調器16は、信号Txに応じて搬送波の信号(OSC)を変調(一般に、振幅変調)する。トランスポンダ2側では、これらのデータは、電圧VCaに基づいて復調器28によって復調される。復調器28は、復調されるべき信号を整流ブリッジ23の上流側でサンプリングする。
【0034】
トランスポンダ2から端末1へデータを送信するために、変調器29は、端末1により生成される磁場内でトランスポンダの回路によって形成される負荷の変調(逆変調)段30を制御する。この変調(逆変調)段30は、一般的には、端子24及び端子25間で直列な電子スイッチK30(例えば、トランジスタ)及び抵抗器R30(又は、コンデンサ)から構成されている。スイッチK30は、端末1の発振回路の励起信号の周波数より十分低い(一般的には、少なくとも10分の1の)いわゆる副搬送波周波数(例えば、847.5kHz)で制御される。スイッチK30がオンのとき、トランスポンダ2が高周波磁場から大量の電力をサンプリングするように、トランスポンダ2の発振回路は、回路20、調整器26、処理部27、復調器28及び変調器29によって形成される負荷に対して追加的な減衰を受ける。端末1側では、増幅器14は高周波励起信号の振幅を一定に維持する。その結果、トランスポンダ2の電力変動が、アンテナL1の電流I1の振幅及び位相変動として変換される。この変動は、端末1の振幅又は位相復調器によって検出される。図2に示された実施形態では、比較器17は、トランスポンダ2から与えられる信号を復調するためにも用いられる位相復調器と一体化されている。従って、比較器17は、回路11に返す信号Rxに、トランスポンダ1から受信したデータの起こり得る逆変調をもたらす。他の復調回路、例えば、コンデンサC1の電圧の測定を利用する回路を設けてもよい。
【0035】
トランスポンダと端末との通信を符号化/復号して変調/復調するための多くの変形例が存在する。
【0036】
位相調整ループの応答時間が、トランスポンダからの起こり得る逆変調の妨害を避けるために十分長く、且つトランスポンダが端末の磁場内を通過する速度と比較して十分短い。これは、変調周波数(例えば、遠隔電力供給搬送波の13.56MHzの周波数、及びトランスポンダから端末へデータを送信するために用いられる847.5kHzの逆変調周波数)に対する静的調整ということもできる。
【0037】
位相調整端末の一例が、欧州特許出願公開第0857981号明細書に記載されている。
【0038】
端末側で位相が調整されることにより、トランスポンダが端末の磁場内にあるとき、トランスポンダの発振回路における電流及び電圧を測定して、測定結果から、トランスポンダの結合に関する情報を導き出すことが可能になる。端末の発振回路とトランスポンダの発振回路との結合係数は、実質的には、トランスポンダと端末との距離によって決まる。kで示される結合係数は、常に0と1との間にある。結合係数は、次の式で定義され得る。
【0039】
【数1】

【0040】
最適結合が、トランスポンダの発振回路の電圧VC2が最大である位置にあるとして定義される。kopt で示されるこの最適結合の係数は、以下に示すように表現されてもよい。
【0041】
【数2】

【0042】
換言すれば、抵抗R2は、コンデンサC2及びインダクタンスL2と(整流ブリッジ23の前又は後ろで)並列に配置されたトランスポンダ2の全ての回路の抵抗と等価な抵抗を示す。トランスポンダの回路によるコンダクタンスが、「抵抗性負荷」と呼ばれる。この負荷のレベルが、発振回路に並列な抵抗R2によって表される。式2では、インダクタンスL1(端末のアンテナ)の直列抵抗の値は無視されている。また、この直列抵抗の値が、簡素化のために、抵抗器R1の値に含まれているとみなされ得る。
【0043】
図3は、最適結合係数に関して標準化された結合係数k/kopt に応じてトランスポンダ側で回収される電圧VC2の変動の一例を示す。この曲線は、ゼロ結合に相当する座標軸の原点(ゼロ電圧)から開始する。これは、トランスポンダによって信号が検出されないようなトランスポンダから端末までの距離に相当する。電圧VC2は、最適結合係数Kopt のとき(k/kopt =1であるとき)最大値VC2opt に達し、その後、結合係数kが1に等しいとき中間値VC2(1) に減少する。
【0044】
【数3】

【0045】
トランスポンダの端末との結合を評価するために、トランスポンダの発振回路の容量性素子C2の電圧VC2の情報が用いられる。この電圧VC2は、以下の関係式により与えられる。
【0046】
【数4】

【0047】
電流I2は、以下の関係式により与えられる。
【0048】
【数5】

【0049】
トランスポンダのインピーダンスZ2は、以下の関係式により与えられる。
【0050】
【数6】

【0051】
更に、端末の発振回路の電流I1は、以下の関係式により与えられる。
【0052】
【数7】

【0053】
端末の発振回路の位相を調整することにより、トランスポンダに形成される負荷の虚数部を変調周波数に関して静的に変更する傾向がある全ての変動が、この位相調整ループによって補償され得る。従って、静的動作では、見掛けインピーダンスZ1app の虚数部は確実にゼロである。従って、見掛けインピーダンスZ1app は、見掛け抵抗R1app (インピーダンスの実数部)に等しくなり、以下に示すように表現されてもよい。
【0054】
【数8】

【0055】
発振回路は同調されるので、インピーダンスZ2の虚数部X2は、第一近似としてゼロに近いとみなされ得る。その結果、インピーダンスZ2の値は、以下の関係式により与えられる。
【0056】
【数9】

【0057】
この単純化した式8を式4及び式7に挿入し、式4を式3に挿入することにより、トランスポンダの発振回路で回収される電圧VC2について、以下の式が得られる。
【0058】
【数10】

【0059】
従って、最適結合係数kopt に関する位置では、最大電圧VC2opt は、(式2及び式9を組み合わせた)以下の式により与えられる。
【0060】
【数11】

【0061】
【数12】

【0062】
式9及び式10を組み合わせて、最適結合係数に関して標準化された結合係数(k/kopt )を表現することにより、電圧VC2に関して、以下の式が得られる。
【0063】
【数13】

【0064】
所与の結合係数kでは、端末の発振回路のインピーダンスが変動せず、発振回路は同調されたままであるとすると、結合係数kと、抵抗R2の抵抗値R20及び抵抗値R21に関する夫々の最適結合係数kopt]R20 及び最適結合係数kopt]R21 との比率が、式2に従って、以下の式により与えられる。
【0065】
【数14】

【0066】
更に、所与の結合係数kでは、端末の発振回路のインピーダンスが変動せず、発振回路が同調されたままであるとすると、抵抗R2の抵抗値R21及び抵抗値R20に関する電圧VC2の夫々の値VC2]R21及び値VC2]R20の比率が、以下の式により与えられる。
【0067】
【数15】

【0068】
式13は、抵抗R2の値が、第1の抵抗値R20から、より大きな第2の抵抗値R21に増加した場合(これは、発振回路L2−C2におけるトランスポンダの負荷の減少を意味する)、電圧値VC2]R21が電圧値VC2]R20より大きくなることを示す。
【0069】
この特徴を利用することにより、第1の抵抗値R20に関する最適結合係数kopt]R20 に対する結合係数kの位置が評価される。
【0070】
実際には、抵抗値R20に関する最適結合に相当する結合係数kopt]R20 の位置では、式12により、電圧値VC2]R20が電圧値VC2opt]R20 に等しいとして以下に示すように表現され得る。
【0071】
【数16】

【0072】
これらの関係を利用することにより、既知の抵抗値R21及び抵抗値R20に関する電圧値VC2]R21及び電圧値VC2]R20の比率rに基づき、最適結合係数kopt]R20 に関するトランスポンダの位置が判断される。
【0073】
以下の式を満たす場合、電流結合係数kは、最適結合係数kopt]R20 より小さい。
【0074】
【数17】

【0075】
逆に、以下の式を満たす場合、電流結合係数kは、最適結合係数kopt]R20 より大きい。2つの値が等しい場合、これは、最適結合の位置に達していることを意味する。
【0076】
【数18】

【0077】
実際には、トランスポンダの発振回路の電圧VC2が直接測定されるわけではなく、整流ブリッジ23の出力におけるコンデンサCaの平滑化された電圧VCaが測定される。電圧VCaは、電圧VC2に比例する。電圧比が評価されるので、電圧VC2と電圧VCaとの比例定数を知る必要がない。特定の実施形態では、測定は、マイクロプロセッサによって行われる。測定された電圧値が、アナログ手段により、又は、選択的な数ビット以上のディジタル処理により記憶され、該ビット数は、所望の分析精度により決まる。
【0078】
最適結合係数に対する電流結合係数kの位置は、図3に示された曲線の変曲点に対する位置を推定することによって更に詳細に評価される。
【0079】
【数19】

【0080】
図4は、このような実施形態の実施を示す。図4に関する説明を簡略化するために、実際には、電圧VCaの値VCa]R20及び値VCa]R21を測定する方が容易であり、このことは、比率rの閾値との比較に対して何も変更がないことが分かっているので、値VCa]R21及び値VCa]R21について説明する。
【0081】
抵抗R2の抵抗値R20を関するコンデンサC2の電圧を測定して記憶することにより開始する(ステップ41)。次に、抵抗R2の抵抗値が、より大きな値に変更される(ステップ42)。
【0082】
次いで、電圧VC2が、抵抗値R21に関して測定されて記憶される(ステップ43)。
【0083】
【数20】

【0084】
【数21】

【0085】
【数22】

【0086】
【数23】

【0087】
これらの測定が、抵抗値R21に対して行われると、公称値であるとみなされている抵抗値R20に戻る。この公称値への戻りは、好ましくは、測定が行われてすぐに(ステップ44の前に)行われる。しかし、処理の後で、例えば、評価の終了の際であってもよい。
【0088】
従って、トランスポンダの発振回路の2つの抵抗値に関する2つの電圧測定により、前記トランスポンダに、最適結合に対する端末との電流結合を判断させることが可能になる。
【0089】
また、評価は、抵抗R2の抵抗値を減らすことによって行われてもよい。しかし、トランスポンダの回路に確実に電力を供給するために、抵抗R2の抵抗値が、電圧VC2の十分な値VC2]R21を維持するために十分であることを確認する必要がある。
【0090】
図5は、トランスポンダ2が端末(図示せず)の磁場内にあるとき、最適結合に対する電流結合を自動的に判断すべく設けられたトランスポンダ2の実施形態を示すブロック図である。図5の表示は、図2の表示と比べて簡略化されている。具体的には、復調及び逆変調の構成要素、並びにクロック周波数を得るための構成要素が図示されていない。
【0091】
前述したように、トランスポンダ2は、その端子21及び22が、整流ブリッジ23の入力端子に接続されている並列発振回路L2−C2に基づいている。整流ブリッジ23の端子24及び端子25間に、切替可能な抵抗性回路40が設けられている。例えば、2つの抵抗器R43及び抵抗器R45が並列に接続されており、夫々の抵抗器43、45は、夫々のスイッチK43、K45と直列に接続されている。スイッチK43及びスイッチK45(例えば、MOSトランジスタ)は、結合位置を判断する方法を実施するために切り替えられる。処理部(PU、プロセッサ)27は、入力MESで電圧VCaに関する情報を受取り、上述した方法を実施する。図5に示された実施例では、両方の抵抗器R43及び抵抗器R45が機能的に接続されているとき、抵抗R2(トランスポンダの回路の負荷)は抵抗値R20を示す。抵抗器R43及び抵抗器R45の内の一方(例えば、抵抗器R43)の接続が切られると、抵抗R2の抵抗値が抵抗値R21に増加する。前記方法の変形例に応じて他の接続及び切替が設定されてもよい。例えば、抵抗R2の2つの抵抗値の内の一方が、他のトランスポンダの回路の抵抗性負荷に相当するとみなすと、単一の切替可能な抵抗器が用いられてもよい。
【0092】
好適な実施形態によれば、切替可能な抵抗器は、抵抗性逆変調に用いられる抵抗器に相当する。逆変調抵抗器が回路で機能するように、逆変調抵抗器を切り替えること(図2に示された実施例におけるスイッチK30がオンの状態)により、電圧値VC2]R20が測定される。次に、スイッチK30がオフされて、電圧値VC2]R21が測定される。その結果、上述された方法の実施は、マイクロコントローラを備えたトランスポンダの構造的変更を必要としない。逆変調抵抗器も切り替えるように、このマイクロコントローラをプログラムするだけで十分である。
【0093】
最適結合に対する位置を判断するために用いられる閾値は、所与のトランスポンダで既知である抵抗値R20及び抵抗値R21のみによって決まる。従って、トランスポンダは、高度なマイクロプロセッサ型計算手段を必ずしも必要とはせず、単に電圧を測定し、比率を計算して、計算された比率を、例えば、抵抗性分圧ブリッジによって生成されるアナログ閾値と比較すればよい。別の実施例によれば、閾値は、予め計算されて、トランスポンダの不揮発性メモリに記憶されている。
【0094】
変形例として、等価な抵抗R2における増加又は減少が、トランスポンダの回路、一般的には、処理部27の消費の変動によって引き起こされる。例えば、抵抗R2の抵抗値を減少させるために(消費を増加させるために)、処理部27による計算又は処理の実行が引き起こされる。等価な抵抗R2における増加は、ある計算の割込みによって引き起こされる処理部27の消費の減少によって引き起こされてもよい。処理部27によって実行されるべき様々なタスクに関する消費が分かる時点から、抵抗R2における変動も分かり、一般的には、トランスポンダの設計の際に推定されるか、又は、端末とのテスト段階で得られてもよい。
【0095】
電流結合を評価するために必要な計算は、計算の実行時間が、端末の前方でのトランスポンダの変位速度(ひいては結合係数の変動速度)に対して無視し得る程十分に簡単である。更に、上述された実施形態は、トランスポンダが、端末の受信面に載置されて、トランスポンダと端末との結合が全ての通信中に変化しない場合にも適用可能である。
【0096】
最適結合係数に対する電流結合係数を知ることにより、複数の用途が可能になる。
【0097】
例えば、この情報は、トランスポンダの過熱の危険性を検出するために用いられてもよい。実際には、電流結合が最適結合に近い場合、トランスポンダによって回収される電力は最大である。従って、起こり得る過熱は、例えば、発振回路L2−C2の周波数を離調する切替可能な容量性素子を設けて、発振回路の周波数を離調することにより回避され得る。容量性素子は、最適結合係数に関して標準化された結合係数k/kopt が最適結合の位置に関する2つの閾値間にあるとき、発振回路L2−C2の周波数を離調するために設けられる。
【0098】
【数24】

【0099】
別の実施例によれば、最適結合に対する結合の位置を知ることにより、端末との通信における電力管理を最適化することが可能になる。従って、トランスポンダの処理部によって実行される機能が、利用可能な電力に応じて選択され得る。
【0100】
結合の評価は、切替中に周期的に行われてもよい。講じられるべき唯一の予防措置が、トランスポンダの逆変調中に、結合を評価しないことである。第1の評価が、例えば、トランスポンダによって回収される電力がトランスポンダの作動に十分であるとすぐに行われる。その後、切替中に周期的な測定が行われる。
【0101】
また別の実施例によれば、最適結合に対する電流結合の位置が端末に送信され、端末は、通信(端末がトランスポンダに送信するという要求)を、トランスポンダが利用可能な計算容量を調節する電力に適応させる。
【0102】
結合の判断は、端末との通信を確立する必要なしに行われることに留意すべきである。
【0103】
更に最適結合の値は、端末毎に変化する。上述したような最適結合に対する電流結合の評価により、所与の端末の特性に依存しないことが可能になり、端末とは無関係に評価が行われる。従って、本発明に係る結合評価手段を備えたトランスポンダは、既存のあらゆる端末とも作動することが可能である。
【0104】
異なる変形例を有する様々な実施形態について説明している。当業者は、あらゆる進歩性を示すことなく、様々な実施形態及び変形例の様々な構成要素を組み合わせることができることに留意すべきである。
【0105】
このような変更、調整及び改良は、本開示の一部であると意図されており、本発明の趣旨及び範囲内であると意図される。従って、上述した説明は単なる一例であり、本発明を制限することを意図していない。本発明は、以下の請求項及びその均等物に定義されているようにのみ制限されている。
【符号の説明】
【0106】
1 端末
2 トランスポンダ
23 整流器、整流ブリッジ
27 プロセッサ、処理部
30 抵抗性要素、抵抗性逆変調要素、変調(逆変調)段
40 抵抗性要素、抵抗性回路
C2 発振回路、コンデンサ、容量性素子
L2 発振回路、インダクタンス、誘導性素子
R2 抵抗性負荷、抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁トランスポンダと端末との結合係数を評価する方法であって、
前記トランスポンダの抵抗性負荷の2つの値に関して得られる前記トランスポンダの発振回路の電圧の比率を、一又は複数の閾値と比較し、
比較結果に基づき、前記結合係数を評価することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記発振回路の両端間に設けられている整流器によって与えられる直流電圧を、前記抵抗性負荷の前記2つの値の夫々に関して測定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抵抗性負荷の2つの値の内の一方に関する最適結合係数に基づき、前記結合係数を評価することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値は、前記抵抗性負荷の2つの値の関数であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抵抗性負荷の前記2つの値間の変動を、前記トランスポンダに備えられているプロセッサの消費を変更することにより得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抵抗性負荷の前記2つの値間の変動を、前記トランスポンダに備えられている切替可能な抵抗性逆変調要素を切替えることにより得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法に基づいて評価された結合係数に基づいて、電磁トランスポンダを過熱から保護する方法であって、
前記結合係数と最適結合係数との比率が、2つの閾値の範囲内にあるか否かを判断し、
前記比率が2つの閾値の範囲内にあるとき、前記発振回路を離調して、前記トランスポンダを過熱から保護することを特徴とする方法。
【請求項8】
電磁トランスポンダが端末の磁場内にあるとき、直流電圧を与えることが可能な整流器の上流側に設けられた発振回路と、
請求項1に記載の方法を実施すべくプログラミングされた少なくとも1つのプロセッサと
を備えていることを特徴とする電磁トランスポンダ。
【請求項9】
前記発振回路と機能的に並列に接続され得る少なくとも1つの切替可能な抵抗性要素を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載のトランスポンダ。
【請求項10】
前記切替え可能な抵抗性要素は、前記整流器の出力端子に接続されていることを特徴とする請求項9に記載のトランスポンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−4401(P2011−4401A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139733(P2010−139733)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(509096153)エス テ マイクロエレクトロニクス(ローセット)エス アー エス (15)
【Fターム(参考)】