説明

電磁レールガン

【課題】電磁レールガンにおいて、各絶縁レールを金属板とセラミックス板の組合せとすることにより、発射時における煤の発生を抑える構成を提供する。
【解決手段】一対の導体レール5,5A間に設けられた各絶縁レール4,4aがセラミックス板40と金属板41とを積層させた構成よりなる。前記セラミックス板40の前記金属板41と接する面は予めメタライズされたメタライズ面よりなり、前記金属板41とセラミックス板40はロウ付けにより一体接合した構成よりなることにより、電磁レールガンの飛翔体と接する絶縁レール4,4aの表面の一部を形成する絶縁部分を煤の出ないセラミックスからなる無機質系耐熱材で構成しているため、飛翔体発射時の熱による煤の発生及び炭化等を完全に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁レールガンに関し、特に、各絶縁レールを金属板とセラミックス板の組合せとすることにより、発射時における煤の発生を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の電磁レールガンとしては、例えば、特許文献1及び2に記載の構成を挙げることができる。
すなわち、図3及び図4で示される特許文献1の構成の場合(尚、符号は公開公報と同一とする)、電磁加速管用絶縁素材から加工した絶縁レールを図4(a),(b)に示す。(a)は四角形状断面のセラミックス(アルミナ:Al)芯材1の外面に、(b)は丸形形状断面のセラミックス(アルミナ:Al)芯材2の外面にFW(フィラメントワインディング)法によりグラスファイバーを巻いてエポキシ樹脂で固め製作した絶縁素材3から加工した絶縁レール4aである。
【0003】
図3の電磁加速管は、ボアーコンポーネント6、絶縁材7a、絶縁材8及びアンビル9,10から構成されている。ボアーコンポーネント6は一対の導電レール5と一対の絶縁レール4aから成り、導電レール5は互いに短絡しないように絶縁レール4aによって区切られている。また、導電レール5と外側のアンビル9,10の間には、絶縁材7a,8を挿入し、一対の導電レール5が外側のアンビル9,10を通じて短絡しないようにしている。さらに、導電レール5と絶縁レール4aとの接触面にはOリング13が配設されている。ボアーコンポーネント6は上下アンビル9,10でボルト11,12によって強力に締めつけられている。なお、導電レール5は電磁加速管20外の電源に接続されている。
【0004】
次に、図5から図7で示される特許文献2の構成の場合(尚、符号は公開公報と同一とする)、図5において符号1で示されるものは多数の薄鋼板2がその厚さ方向に積層されると共に、その中央部に開口2Aを有するレール収納容器であり、この開口2A内には一対のレール押え部材20,21を介して第1、第2レール5,5Aが互いに間隔を設けて配設されていると共に薄鋼板2の板面に対してその長手方向が直交するように設けられている。なお、前記各薄鋼板2はその表面が塗料等の電気絶縁性材料でコーティングされて積層されている。
【0005】
前記各レール5,5Aと各レール押え部材20,21との具体的構成は、第1形態として図6、第2形態として図7に示される通りである。すなわち、図6の第1形態の場合、各レール5,5Aの第1面5a,5Aaと第2面5b,5Abと開口2Aとの間には、一対の側面絶縁板3及び第1、第2固定用絶縁板4,4Aが設けられ、各固定用絶縁板4,4Aと開口2Aとの間には一対の板状の第1、第2レール押え部材20,21が設けられている。
【0006】
前記各レール押え部材20,21は、その表面が電気絶縁性材料でコーティングされた多数の細い細鋼線30が絶縁性の接着剤等にて一体状でかつ板状に形成され、各細鋼線30の長手方向は前記薄鋼板2の板面2aと直交する方向へ配設されているため磁力線と交叉する導電性面を有しておらず、磁気的に透明なレールガンが構成されている。
【0007】
従って、各レール押え部材20,21を構成する細鋼線30の表面も電気絶縁性のコーティングをしているため、細鋼線30間を通過する電流は阻止され、各レール押え部材20,21の両端には電圧が発生するが電気的開放端として電流路を断ち切ることができる。また、このレール押え部材20,21を横切った磁力線はレール収納容器1に到達するが、レール押え部材20,21の厚みがレール5,5A間隔と同程度であれば、レール押え部材20,21の透磁率は、この表面でかなり回復しレール収納容器1に対し磁気シールド材として働くようになり、薄鋼板2に流れる電流の効果は、無視できる程度となる。その結果、各レール5,5A及び電機子10の発生する磁場は、レール収納容器1に有害な電流を誘起することがなくなる。従って、各レール5,5Aの長手方向に沿う長い細鋼線30の束で構成されるレール押え部材20,21を導入することによりレール収納容器1内の磁力線は、丈夫な金属製容器で囲まれているにも拘わらず、電機子10と殆んど相互作用のない磁気的に透明な容器となるので、電機子10に働く力Fは周知の
F=L’I/2 ・・・・・(1)式
と書くことができる。ここに、Iは、レール5,5Aに流れる電流値、L’はレール5,5Aの単位長さ当りのインダクタンスである。なお、レール押え部材20,21の厚みは細鋼線30の透磁率を考慮の上、レール押え部材20,21を横切ってレール収納容器1に侵入する電機子10からの磁力線がレール収納容器1の薄鋼板2に誘導する電流が無視できるように選ばれ、実用上、その厚みは前述のようにレール5,5A間隔と同程度が好都合である。
【0008】
図7は他の形態で、レール押え部材20,21に前記細鋼線30を薄い鋼板60で置き換えてレール5.5Aの押え強度を増強した新たなレール押え部材20,21を採用している。なお、この薄い鋼板60も前記細鋼線30と同様にその表面が絶縁塗料等でコーティングされており、図6のレール押え部材20,21の場合と同じ磁気的作用を有しているが、第1形態に比してやや磁気的透明度が落ちる傾向があるので、採用する薄い鋼板60の厚みは充分に薄くすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−148296号公報
【特許文献2】特開2001−116491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の電磁加速管は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図3及び図4で示される第1従来構成においては、ポリカーボネートやFRPにより絶縁レールを構成し、セラミックス芯材の外面にグラスファイバーを巻き、エポキシ樹脂で固めて絶縁レールを構成しているため、発射時に、導電レール及び固体電機子から受ける放射熱やレールと固体電気子及び飛翔体との摩擦熱により、加速通路に面した絶縁レールの表面に、前述のポリカーボネート等の樹脂系材料の影響によって、煤が発生し、性能低下の原因となっていた。
【0011】
また、図5から図7の第2従来構成においては、磁性材の積層鋼板で磁力線の通り道を規定して、外側に配置された金属筐体に磁力線が交わって渦電流が流れないようにして加速効率を上げるもので、そのため、積層鋼板にも渦電流が流れないように表面を電気的に絶縁しなければならず、前述の第1従来構成と同様に、発射時の熱により煤が発生したり、炭化のおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による電磁レールガンは、一対の絶縁レールを介して互いに対向配置された一対の導体レールと、前記各絶縁レール及び導体レールにより囲まれて形成され飛翔体を発射するための加速空間とからなる電磁レールガンにおいて、前記絶縁レールは、金属板とセラミックス板を交互にサンドイッチ状に積層させてなり、前記セラミックス板の前記金属板と接する面は予めメタライズされたメタライズ面よりなり、前記金属板とセラミックス板はロウ付けにより一体接合した構成であり、また、前記各絶縁レールは、前記セラミックス板と金属板の高さ方向に沿って両端に形成された内端面と、外端面のうちの内端面同志が対向配置されている構成であり、また、前記金属板は、接合金属よりなり、前記セラミックス板は、ファインセラミックスよりなる構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による電磁レールガンは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、一対の絶縁レールを介して互いに対向配置された一対の導体レールと、前記各絶縁レール及び導体レールにより囲まれて形成され飛翔体を発射するための加速空間とからなる電磁レールガンにおいて、前記絶縁レールは、金属板とセラミックス板を交互にサンドイッチ状に積層させてなり、前記セラミックス板の前記金属板と接する面は予めメタライズされたメタライズ面よりなり、前記金属板とセラミックス板はロウ付けにより一体接合した構成よりなることにより、電磁レールガンの飛翔体と接する絶縁レールの表面の一部を形成する絶縁部分を煤の出ないセラミックスからなる無機質系耐熱材で構成しているため、飛翔体発射時の熱による煤の発生及び炭化等を完全に防止することができる。
また、絶縁レールは、セラミックス板と金属板のサンドイッチ構造であるため、耐摩耗性に優れ、高い靭性を有する絶縁レールを得ることができる。
また、前述のサンドイッチ構造においては、前記セラミックス板を導体レールの長さと同じ長さのものを作ることは難しいため、短いセラミックス板でも、これを多数密接に導体レールの長さ方向に沿って配設することにより長手形状を構成することができる。
また、前記各絶縁レールは、前記セラミックス板と金属板の高さ方向に沿って両端に形成された内端面と、外端面のうちの内端面同士が対向配置されていることにより、各導体レール間の絶縁を完全に行うことができる。
また、前記金属板は、接合金属よりなり、前記セラミックス板は、ファインセラミックスよりなることにより、発射時のプラズマ発生時においても各絶縁レールの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による電磁レールガンを示す概略斜視図である。
【図2】図1の各絶縁レールを具体的に示す斜視図である。
【図3】従来の電磁レールガンを示す断面図である。
【図4】図3の要部を示す拡大図ある。
【図5】従来の電磁レールガンを示す斜視図である。
【図6】図5の他の形態を示す正面図である。
【図7】図5の他の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、各絶縁レール金属板とセラミックス板の組合せとすることにより、発射時における煤の発生を防止するようにした電磁レールガンを提供することを目的とする。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明による電磁レールガンの好適な実施の形態について説明する。
尚、図3から図7における従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において符号20で示されるものは、電磁加速管であり、この電磁加速管20の互いに離間して配設された一対の第1、第2導体レール5,5A間には、第1、第2絶縁レール4,4aが設けられている。尚、各絶縁レール4,4aの幅方向Cの両端は、各導体レール5,5Aの段部5aに係合しており、電磁レールガンを構成するための周知の電機子及び電源等は図示を省略している。
【0017】
前記各絶縁レール4,4a及び各導体レール5,5Aによって囲まれて形成された四角柱状の加速空間2A内には、図示しない周知の電機子及び飛翔体が配設されるように構成されている。
【0018】
前記各絶縁レール4,4aは、具体的には、図2で示されるように構成されている。
すなわち、図2において第1、第2絶縁レール4,4aは、セラミックス板40と金属板41とをサンドイッチ状に交互に幅方向Cに沿って積層し、かつ前記各導体レール5,5Aの長手方向Aに沿って長手状をなすように構成されている。
【0019】
前記各絶縁レール4,4aは、前記各導体レール5,5Aの高さに沿う両端に位置し、各絶縁レール4,4aの高さ方向Bに沿って両端に形成され、かつ、この高さ方向Bと直交する面からなる内端面42と外端面43のうちの内端面42同志が対向する。すなわち、各導体レール5,5Aの高さ方向Dと前記絶縁レール4,4aの高さ方向Bを一致させることにより互いに離間して配設され、各導体レール5,5Aに流れる電流で発生する磁束による各絶縁レール4,4a内の金属板41に生じる渦電流損を抑えて効率よく飛翔体(図示せず)を加速させることができる。
尚、前記金属板41は、鉄ニッケル系、或いは、鉄ニッケルコバルト系の金属で構成されている接合金属よりなり、セラミックス板40はアルミナ等のファインセラミックスにより構成されていることが好適である。
【0020】
前記セラミックス板40の前記金属板41と接する面は、予めメタライズされたメタライズ面よりなり、前述の積層状の各絶縁レール4,4aのセラミックス板40と金属板41とは互いにロウ付けによって一体接合されている。
【0021】
前述の各セラミックス40に対してロウ付けにより接合された各金属板41は、各セラミックス板40の脆さを補強するために設けられたもので、各金属板41,41間にはセラミックス板40が挟まっているため、一方の金属板41から他方の金属板41方向への絶縁は完全に確保されている。
また、前記各導体レール5,5Aと各絶縁レール4,4aにより長手角柱状の加速空間2Aが形成されている。
従って、前述の各絶縁レール4,4aは、前記加速空間2A内に配設した周知の電機子(図示せず)により、飛翔体(図示せず)を発射した場合、各絶縁レール4,4aは、従来のように炭化することなく、耐久性に優れた特性を長期間にわたって維持することができるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明による電磁レールガンは、固定型及び可搬型の何れの構成にも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
2A 加速空間
A 長手方向
B,D 高さ方向
C 幅方向
4,4a 第1、第2絶縁レール
5,5A 第1、第2導体レール
5a 段部
40 セラミックス板
41 金属板
42 内端面
43 外端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の絶縁レール(4,4a)を介して互いに対向配置された一対の導体レール(5,5A)と、前記各絶縁レール(4,4a)及び導体レール(5,5A)により囲まれて形成され飛翔体を発射するための加速空間(2A)とからなる電磁レールガンにおいて、
前記絶縁レール(4,4a)は、金属板(41)とセラミックス板(40)を交互にサンドイッチ状に積層させてなり、前記セラミックス板(40)の前記金属板(41)と接する面は予めメタライズされたメタライズ面よりなり、前記金属板(41)とセラミックス板(40)はロウ付けにより一体接合した構成よりなることを特徴とする電磁レールガン。
【請求項2】
前記各絶縁レール(4,4a)は、前記セラミックス板と金属板の高さ方向に沿って両端に形成された内端面(42)と、外端面(43)のうちの内端面(42)同志が対向配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁レールガン。
【請求項3】
前記金属板(41)は、接合金属よりなり、前記セラミックス板(40)は、ファインセラミックスよりなることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁レールガン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−72985(P2012−72985A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219203(P2010−219203)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)