説明

電磁加速装置用加速管

【課題】容易に組立/分解可能とする。電機子が通過する空間の寸法を正確に規定可能とする。
【解決手段】一対のレール(1T,1B)と絶縁体(2L,2R)とは、互いに密に当接した状態において、電機子が通過する所定寸法の空間を形成しうる組合せ形状とする。油圧シリンダ(5T)を伸ばした時、枠体(4)が上下方向に伸びるように弾性変形し、その結果、左右方向には縮まるように枠体(4)が弾性変形し、左絶縁体用スペーサ(3L)が左絶縁体(2L)を押し、右絶縁体用スペーサ(3R)が右絶縁体(2R)を押し、レール(1T,1B)と絶縁体(2L,2R)と枠体(4)と絶縁体用スペーサ(3L,3R)と油圧シリンダ(5T)と上レール用スペーサ(7T)と下レール用スペーサ(7B)とが一体になる。
【効果】レールと絶縁体とが互いに密に当接した状態になると、電機子が通過する空間が正確な寸法で形成される。油圧シリンダを縮めれば隙間が生じ、容易に組立/分解できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁加速装置用加速管に関し、さらに詳しくは、容易に組立/分解ができると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る電磁加速装置用加速管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電機子が通過する空間を隔てて左右方向に対向し且つ対向面の上縁部と下縁部が外側に開いた傾斜面になった左レール及び右レールと、前記左レール及び右レールの周りを囲む枠体と、前記左レールの背面と前記枠体の内面の間に介在する左スペーサと、前記右レールの背面と前記枠体の内面の間に介在する右スペーサと、前記左レール及び右レールの下縁部の傾斜面に適合する傾斜面を有し且つ前記左レール及び右レールの下縁部の傾斜面と前記枠体の内面の間に存在する下スペーサと、前記左レール及び右レールの上縁部の傾斜面に適合する傾斜面を有し且つ前記左レール及び右レールの上縁部の傾斜面と前記枠体の内面の間に存在する上スペーサと、前記上スペーサ及び前記下スペーサの少なくとも一方の傾斜面を対応する前記レールの傾斜面に押し付ける押付け機構とを具備し、前記押付け機構により前記上スペーサ及び前記下スペーサの少なくとも一方の傾斜面を対応する前記レールの傾斜面に押し付けた時は前記左レール、前記右レール、前記枠体、前記左スペーサ、前記右スペーサ、前記下スペーサ及び前記上スペーサが一体になり且つ押し付けない時は前記左レール、前記右レール、前記枠体、前記左スペーサ、前記右スペーサ、前記下スペーサ及び前記上スペーサの間に隙間が生じうる構成の電磁加速装置用加速管が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電磁加速装置用加速管では、押付け機構により下スペーサ及び上スペーサの傾斜面を左レール及び右レールの傾斜面に押しつけると、左レール,右レール,枠体,左スペーサ,右スペーサ,下スペーサ及び上スペーサが一体になり、押付け機構による押しつけを解除することにより左レール,右レール,枠体,左スペーサ,右スペーサ,下スペーサ及び上スペーサの間に隙間が生じ、容易に組立/分解ができる利点があった。
しかし、左レールおよび右レールの傾斜面と下スペーサおよび上スペーサの傾斜面の摺合では、左レールと右レールの間隔および下スペーサと上スペーサの間隔が正確に決まらないため、電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが難しいという問題があった。
そこで、この発明は、容易に組立/分解ができると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る電磁加速装置用加速管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、電機子が通過する空間を隔てて対向する平行な一対のレール(1T,1B)と、前記レール(1T,1B)と平行であり且つ前記レール(1T,1B)の対向方向と直交する方向に対向する一対の絶縁体(2L,2R)と、前記レール(1T,1B)および前記絶縁体(2L,2R)の周りを囲む枠体(4)と、前記絶縁体(2L,2R)の背面と前記枠体(4)の内面の間にそれぞれ介在する一対の絶縁体用スペーサ(3L,3R)と、前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第1の押圧力発生手段と、前記一対のレールの他方(1B)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在するレール用スペーサ(7B)とを具備し、前記一対のレール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)とは、互いに密に当接した状態において、電機子が通過する所定寸法の空間を形成しうる組合せ形状であり、前記第1の押圧力発生手段により前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間隔を広げる押圧力を発生した時、前記一対のレールの一方(1T)が前記絶縁体(2L,2R)に押し付けられ、前記絶縁体(2L,2R)が前記一対のレールの他方(1B)に押し付けられ、前記レールの他方(1B)が前記レール用スペーサ(7B)に押し付けられ、前記レール用スペーサ(7B)が前記枠体(4)の内面に押し付けられて、前記一対のレール(1T,1B)が対向する方向に伸びるように前記枠体(4)が弾性変形し、その結果、前記一対の絶縁体(2L,2R)が対向する方向には縮まるように前記枠体(4)が弾性変形し、前記一対の絶縁体(2L,2R)の間隔を縮める押圧力が発生して前記絶縁体(2L,2R)を前記レール(1T,1B)に押し付け、前記レール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)と前記枠体(4)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)と前記押圧力発生手段と前記レール用スペーサ(7B)とが一体になり、前記第1の押圧力発生手段により前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間隔を広げる押圧力を発生しない時は、前記枠体(4)の内面と前記押圧力発生手段と前記レール用スペーサ(7B)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間および前記レール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)の間および前記絶縁体(2L,2R)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間に隙間が生じうることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第1の観点による電磁加速装置用加速管では、第1の押圧力発生手段により押圧力を発生しない時は、前記枠体(4)の内面と前記押圧力発生手段と前記レール用スペーサ(7B)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間および前記レール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)の間および前記絶縁体(2L,2R)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間に隙間が生じうるため、容易に組立/分解できる。一方、組立後、第1の押圧力発生手段により押圧力を発生した時は、その押圧力と枠体(4)の弾性力とによってレール(1T,1B)と絶縁体(2L,2R)と枠体(4)と絶縁体用スペーサ(3L,3R)と押圧力発生手段とレール用スペーサ(7B)とが一体になる。そして、レール(1T,1B)と絶縁体(2L,2R)とが互いに密に当接した状態になるため、電機子が通過する所定寸法の空間を正確に形成できる。
なお、上記構成において、レール(1T,1B)の対向方向は、上下方向でもよいし、水平方向でもよいし、斜め方向でもよい。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による電磁加速装置用加速管において、前記一対のレール(1T,1B)は、対向面の両縁部に前記絶縁体(2L,2R)の角部が嵌る切欠き部を有する断面凸字形状であり、前記絶縁体(2L,2R)は、断面長方形であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第2の観点による電磁加速装置用加速管では、金属製のレール(1T,1B)を複雑形状にし、例えばセラミックスと金属薄板の積層物製の絶縁体(2L,2R)を単純形状にするので、製造しやすい。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点による電磁加速装置用加速管において、前記第1の押圧力発生手段が、油圧装置(5T)およびスペーサ(7T)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第3の観点による電磁加速装置用加速管では、油圧を高めることにより各部品を強固に一体性できる。また、油圧を小さくすることにより分解できるようになる。また、油圧を制御することにより、加速管の一体性を安定に制御・維持できる。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点による電磁加速装置用加速管において、前記第1の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(7Ta,7Tb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第4の観点による電磁加速装置用加速管では、楔部材(7Ta,7Tb)を打ち込むことにより各部品を強固に一体性できる。また、楔部材(7Ta,7Tb)を抜くことにより分解できるようになる。また、油圧装置に比べて構成が簡単になり、軽量化できる。
【0009】
第5の観点では、本発明は、前記第1から第4のいずれかの観点による電磁加速装置用加速管において、前記レール用スペーサ(7B)の代わりに、前記一対のレールの他方(1B)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第2の押圧力発生手段を具備したことを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第5の観点による電磁加速装置用加速管では、一方のレール(1T)を第1の押圧力発生手段が押し、他方のレール(1B)を第2の押圧力発生手段が押すので、電機子が通過する空間の中心軸の位置を調整することが出来る。例えば、電機子が通過する空間の中心軸の位置を枠体(4)の中心軸に一致させ、対称性を向上させることが出来る。
【0010】
第6の観点では、本発明は、前記第5の観点による電磁加速装置用加速管において、前記第2の押圧力発生手段が、油圧装置(5B)およびスペーサ(7B)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第6の観点による電磁加速装置用加速管では、油圧を制御することにより、加速管の一体性を安定に制御・維持できる。
【0011】
第7の観点では、本発明は、前記第5の観点による電磁加速装置用加速管において、前記第2の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(7Ba,7Bb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第7の観点による電磁加速装置用加速管では、油圧装置に比べて構成が簡単になり、軽量化できる。
【0012】
第8の観点では、本発明は、前記第1から第7のいずれかの観点による電磁加速装置用加速管において、前記一対の絶縁体用スペーサ(3L,3R)の代わりに、前記一対の絶縁体(2L,2R)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第3の押圧力発生手段および第4の押圧力発生手段を具備したことを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第8の観点による電磁加速装置用加速管では、第1の押圧力発生手段(または第1の押圧力発生手段および第2の押圧力発生手段)による押圧力による枠体(4)の変形が小さく、発生する一対の絶縁体(2L,2R)の間隔を縮める押圧力が弱い場合でも、第3の押圧力発生手段および第4の押圧力発生手段により絶縁体(2L,2R)をレール(1T,1B)に押し付けることが出来る。従って、第1の押圧力発生手段(または第1の押圧力発生手段および第2の押圧力発生手段)による押圧力が小さい場合や、枠体(4)の剛性が高い場合にも対応できる。
【0013】
第9の観点では、本発明は、前記第8の観点による電磁加速装置用加速管において、前記第3の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(3La,3Lb)であり、前記第4の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(3Ra,3Rb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管を提供する。
上記第9の観点による電磁加速装置用加速管では、押圧力発生手段に油圧装置を用いる場合に比べて構成が簡単になり、軽量化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電磁加速装置用加速管によれば、容易に組立/分解ができると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す横断面図である。なお、電機子が通過する空間の中心軸に垂直な断面を横断面とする。
【図2】実施例1に係る電磁加速装置用加速管(一体化後)を示す横断面図である。
【図3】実施例2に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す横断面図である。
【図4】実施例3に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す横断面図である。
【図5】実施例3に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す縦断面図である。なお、電機子が通過する空間の中心軸を含み且つ一対のレールが対向する方向の断面を縦断面とする。
【図6】実施例3に係る電磁加速装置用加速管(一体化後)を示す横断面図である。
【図7】実施例3に係る電磁加速装置用加速管(一体化後前)を示す縦断面図である。
【図8】実施例4に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す横断面図である。
【図9】実施例5に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す横断面図である。
【図10】実施例5に係る電磁加速装置用加速管(一体化前)を示す縦断面図である。
【図11】実施例5に係る電磁加速装置用加速管(一体化後)を示す横断面図である。
【図12】実施例5に係る電磁加速装置用加速管(一体化後)を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る電磁加速装置用加速管10の一体化前の状態を示す横断面図である。
【0018】
この電磁加速装置用加速管10は、電機子が通過する空間を隔てて上下方向に対向する平行な上レール1Tおよび下レール1Bと、レール1T,1Bと平行であり且つレール1T,1Bの対向方向と直交する左右方向に対向する左絶縁体2Lおよび右絶縁体2Rと、レール1T,1Bおよび絶縁体2L,2Rの周りを囲む枠体4と、左絶縁体2Lの背面と枠体4の内面の間に介在する左絶縁体用スペーサ3Lと、右絶縁体2Rの背面と枠体4の内面の間に介在する右絶縁体用スペーサ3Rと、上レール1Tの背面と枠体4の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる油圧シリンダ5Tおよび上レール用スペーサ7Tと、下レール1Bの背面と枠体4の内面の間に存在する下レール用スペーサ7Bとを具備している。
【0019】
上レール1Tは、下面縁部に絶縁体2L,2Rの対向面側の上角部が嵌る切欠き部を有する断面凸字形状であり、例えば銅製である。上レール1Tの切欠き部は、絶縁体2L,2Rの対向面側の上角部が密に当接しうる垂直面1Ta,1Tbおよび水平面1Tc,1Tdを有している。
下レール1Bは、上面縁部に絶縁体2L,2Rの対向面側の下角部が嵌る切欠き部を有する断面凸字形状であり、例えば銅製である。下レール1Bの切欠き部は、絶縁体2L,2Rの対向面側の下角部が密に当接しうる垂直面1Ba,1Bbおよび水平面1Bc,1Bdを有している。
【0020】
左絶縁体2Lおよび右絶縁体2Rは、それぞれ断面長方形であり、例えば非炭化レールのセラミックス製あるいはセラミックスと金属薄板の積層物製あるいはガラスエポキシ樹脂製である。
【0021】
枠体4は、継ぎ目のない円筒状体であり、例えば鋼製である。
【0022】
左絶縁体用スペーサ3Lおよび右絶縁体用スペーサ3Rは、それぞれ蒲鉾形であり、例えば非炭化レールのセラミックス製あるいはセラミックスと金属薄板の積層物製あるいはガラスエポキシ樹脂製である。
【0023】
上レール用スペーサ7Tは、断面長方形であり、例えば非炭化レールのセラミックス製あるいはセラミックスと金属薄板の積層物製あるいはガラスエポキシ樹脂製である。
下レール用スペーサ7Bは、上面が平面であり、底面が枠体4の内面に密に当接しうる凸状面であり、例えば非炭化レールのセラミックス製あるいはセラミックスと金属薄板の積層物製あるいはガラスエポキシ樹脂製である。
【0024】
図1に示すように、油圧シリンダ5Tを縮めている時は、枠体4の内面と油圧シリンダ5Tの間、枠体4の内面と下レール用スペーサ7Bの間、枠体4の内面と絶縁体用スペーサ3L,3Rの間、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rの間、および、絶縁体2L,2Rと絶縁体用スペーサ3L,3Rの間に隙間が生じうる。従って、容易に分解したり、組み立てたり出来る。
【0025】
図2に示すように、油圧シリンダ5Tを伸ばした時は、油圧シリンダ5Tが枠体4の内面および上レール用スペーサ7Tを押し、上レール用スペーサ7Tが上レール1Tを押し、上レール1Tが絶縁体2L,2Rを押し、絶縁体2L,2Rが下レール1Bを押し、下レール1Bが下レール用スペーサ7Bを押し、下レール用スペーサ7Bが枠体4の内面を押す。これにより、枠体4が上下方向に伸びるように弾性変形する結果、左右方向には縮まるように枠体4が弾性変形するので、左絶縁体用スペーサ3Lが左絶縁体2Lを押し、右絶縁体用スペーサ3Rが右絶縁体2Rを押し、絶縁体2L,2Rの間隔を縮める押圧力が発生して絶縁体2L,2Rをレール1T,1Bに押し付ける。かくして、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rと枠体4と絶縁体用スペーサ3L,3Rと油圧シリンダ5Tと上レール用スペーサ7Tと下レール用スペーサ7Bとが一体になる。
【0026】
レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rとが互いに密に当接した状態になると、電機子が通過する空間が正確な寸法で形成される。
電機子が通過する空間の高さ=「絶縁体2L,2Rの上下方向の長さ」−「上レール1Tの切欠き部の垂直面1Taの高さ」−「下レール1Bの切欠き部の垂直面1Baの高さ」である。なお、「上レール1Tの切欠き部の垂直面1Taの高さ」=「上レール1Tの切欠き部の垂直面1Tbの高さ」である。また、「下レール1Bの切欠き部の垂直面1Baの高さ」=「下レール1Bの切欠き部の垂直面1Bbの高さ」である。
電機子が通過する空間の幅=「上レール1Tの切欠き部の垂直面1Taと垂直面1Tbの間隔」である。なお、「上レール1Tの切欠き部の垂直面1Taと垂直面1Tbの間隔」=「下レール1Bの切欠き部の垂直面1Baと垂直面1Bbの間隔」である。
【0027】
実施例1の電磁加速装置用加速管10によれば、組立/分解が容易に出来ると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る。
【0028】
−実施例2−
図3は、実施例2に係る電磁加速装置用加速管20を示す横断面図である。
この電磁加速装置用加速管20は、実施例1の下レール用スペーサ7Bに代えて、油圧シリンダ5Bおよび下レール用スペーサ7B’を用いる以外は実施例1の電磁加速装置用加速管10と同様の構成である。
【0029】
実施例2の電磁加速装置用加速管20によれば、上レール1Tを第1の油圧シリンダ5Tが押し、下レール1Bを第2の油圧シリンダ5Bが押すので、電機子が通過する空間の中心軸の位置を調整することが出来る。すなわち、電機子が通過する空間の中心軸の位置を枠体4の中心軸に一致させ、対称性を向上させることが出来る。
【0030】
−実施例3−
図4は、実施例3に係る電磁加速装置用加速管30を示す横断面図である。
この電磁加速装置用加速管30は、実施例1の油圧シリンダ5Tおよび上レール用スペーサ7Tに代えて、一対の上レール用楔部材7Ta,7Tbを用いる以外は実施例1の電磁加速装置用加速管10と同様の構成である。
【0031】
図5は、図4のA−A’断面図である。
枠体4の両側から、上レール1Tの背面と枠体4の内面の間の空隙に、楔部材7Ta,7Tbを挿入する。
楔部材7Ta,7Tbは、レール1T,1Bが延びる方向のテーパ面を有し、両者のテーパ面同士を摺合させたときは楔部材7Ta,7Tbの外面はレール1Tの背面および枠体4の内面に平行になる。
【0032】
図5の状態では、枠体4の内面と楔部材7Tbの間、枠体4の内面と下レール用スペーサ7Bの間、枠体4の内面と絶縁体用スペーサ3L,3Rの間、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rの間、および、絶縁体2L,2Rと絶縁体用スペーサ3L,3Rの間に隙間が生じうるので、容易に分解したり、組み立てたり出来る。
【0033】
図6および図7に示すように、楔部材7Ta,7Tbを打ち込んだ時は、楔部材7Ta,7Tbが枠体4の内面および上レール1Tを押し、上レール1Tが絶縁体2L,2Rを押し、絶縁体2L,2Rが下レール1Bを押し、下レール1Bが下レール用スペーサ7Bを押し、下レール用スペーサ7Bが枠体4の内面を押す。これにより、枠体4が上下方向に伸びるように弾性変形する結果、左右方向には縮まるように枠体4が弾性変形するので、左絶縁体用スペーサ3Lが左絶縁体2Lを押し、右絶縁体用スペーサ3Rが右絶縁体2Rを押し、絶縁体2L,2Rの間隔を縮める押圧力が発生して絶縁体2L,2Rをレール1T,1Bに押し付ける。かくして、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rと枠体4と絶縁体用スペーサ3L,3Rと楔部材7Ta,7Tbと下レール用スペーサ7Bとが一体になる。
【0034】
レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rとが互いに密に当接した状態になると、電機子が通過する空間が正確な寸法で形成される。
【0035】
実施例3の電磁加速装置用加速管30によれば、組立/分解が容易に出来ると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る。また、油圧装置を用いるよりも構成を簡単化・軽量化できる。
【0036】
なお、一対の楔部材7Ta,7Tbは、両者のテーパ面同士を摺合させたときは楔部材7Ta,7Tbの外面は上レール1Tの背面および枠体4の内面に平行になるので、楔部材7Taの外面と上レール1Tの背面の間および楔部材7Tbの外面と枠体4の内面の間に空隙を生じず、電機子を加速する際に生じるレール1T,1B間の反発力に耐える上での支障は生じない。
【0037】
−実施例4−
図8は、実施例4に係る電磁加速装置用加速管40を示す横断面図である。
この電磁加速装置用加速管40は、実施例3の下レール用スペーサ7Bに代えて、一対の楔部材7Ba、7Bbを用いる以外は実施例3の電磁加速装置用加速管30と同様の構成である。
【0038】
実施例4の電磁加速装置用加速管40によれば、上レール1Tを第1の楔部材7Ta,7Tbが押し、下レール1Bを第2の楔部材7Ba,7Bbが押すので、電機子が通過する空間の中心軸の位置を調整することが出来る。すなわち、電機子が通過する空間の中心軸の位置を枠体4の中心軸に一致させ、対称性を向上させることが出来る。
【0039】
−実施例5−
図9は、実施例5に係る電磁加速装置用加速管50を示す横断面図である。
この電磁加速装置用加速管50は、実施例4の左絶縁体用スペーサ3Lおよび右絶縁体用スペーサ3Rに代えて、楔部材3La,3Lbおよび楔部材3Ra,3Rbを用いる以外は実施例4の電磁加速装置用加速管40と同様の構成である。
【0040】
図10は、図9のB−B’断面図である。
枠体4の両側から、左絶縁体2Lの背面と枠体4の内面の間の空隙に、楔部材3La,3Lbを挿入する。また、右絶縁体2Rの背面と枠体4の内面の間の空隙に、楔部材3Ra,3Rbを挿入する。
楔部材3La,3Lbは、レール1T,1Bが延びる方向のテーパ面を有し、両者のテーパ面同士を摺合させたときは楔部材3La,3Lbの外面は左絶縁体2Lの背面および枠体4の内面に平行になる。
また、楔部材3Ra,3Rbは、レール1T,1Bが延びる方向のテーパ面を有し、両者のテーパ面同士を摺合させたときは楔部材3Ra,3Rbの外面は右絶縁体2Rの背面および枠体4の内面に平行になる。
【0041】
図10の状態では、枠体4の内面と楔部材7Tbの間、枠体4の内面と楔部材7Bbの間、枠体4の内面と楔部材3Lbの間、枠体4の内面と楔部材3Rbの間、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rの間、楔部材3Laと楔部材3Lbの間、楔部材3Raと楔部材3Rbの間、および、絶縁体2L,2Rと楔部材3La,3Raの間に隙間が生じうるので、容易に分解したり、組み立てたり出来る。
【0042】
図11および図12に示すように、楔部材7Ta,7Tb,7Ba,7Bb,3La,3Lb,3Ra,3Rbを打ち込んだ時は、楔部材7Ta,7Tbが枠体4の内面および上レール1Tを押し、楔部材7Ba,7Bbが枠体4の内面および下レール1Bを押し、上レール1Tと下レール1Bが絶縁体2L,2Rを挟むように押す。さらに、楔部材3La,3Lbが枠体4の内面および左絶縁体2Lを押し、楔部材3Ra,3Rbが枠体4の内面および右絶縁体2Rを押し、絶縁体2L,2Rが上レール1Tと下レール1Bを挟むように押す。かくして、レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rと枠体4と楔部材7Ta,7Tb,7Ba,7BTb,3La,3Lb,3Ra,3Rbとが一体になる。
なお、枠体4は上下左右方向に伸びるように弾性変形するが、実施例1〜4に比較して変形は小さくてもよい。
【0043】
レール1T,1Bと絶縁体2L,2Rとが互いに密に当接した状態になると、電機子が通過する空間が正確な寸法で形成される。
【0044】
実施例5の電磁加速装置用加速管50によれば、組立/分解が容易に出来ると共に電機子が通過する空間の寸法を正確に規定することが出来る。また、油圧装置を用いるよりも構成を簡単化・軽量化できる。
【0045】
なお、一対の楔部材7Ta,7Tbは、両者のテーパ面同士を摺合させたときは楔部材7Ta,7Tbの外面は上レール1Tの背面および枠体4の内面に平行になるので、楔部材7Taの外面と上レール1Tの背面の間および楔部材7Tbの外面と枠体4の内面の間に空隙を生じない。同様に、楔部材7Baの外面と下レール1Bの背面の間および楔部材7Bbの外面と枠体4の内面の間に空隙を生じない。また、楔部材3Laの外面と左絶縁体2Lの背面の間および楔部材3Lbの外面と枠体4の内面の間に空隙を生じない。さらに、楔部材3Raの外面と右絶縁体2Rの背面の間および楔部材3Rbの外面と枠体4の内面の間に空隙を生じない。従って、電機子を加速する際に生じるレール1T,1B間の反発力に耐える上での支障は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電磁加速装置用加速管は、電磁加速装置に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1T 上レール
1B 下レール
2L 左絶縁体
2R 右絶縁体
3L 左絶縁体用スペーサ
3La,3Lb 楔部材
3R 右絶縁体用スペーサ
3Ra,3Rb 楔部材
4 枠体
5T,5B 油圧シリンダ
7B 下レール用スペーサ
7Ba,7Bb 楔部材
7T 上レール用スペーサ
7Ta,7Tb 楔部材
10〜50 電磁加速装置用加速管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子が通過する空間を隔てて対向する平行な一対のレール(1T,1B)と、前記レール(1T,1B)と平行であり且つ前記レール(1T,1B)の対向方向と直交する方向に対向する一対の絶縁体(2L,2R)と、前記レール(1T,1B)および前記絶縁体(2L,2R)の周りを囲む枠体(4)と、前記絶縁体(2L,2R)の背面と前記枠体(4)の内面の間にそれぞれ介在する一対の絶縁体用スペーサ(3L,3R)と、前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第1の押圧力発生手段と、前記一対のレールの他方(1B)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在するレール用スペーサ(7B)とを具備し、
前記一対のレール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)とは、互いに密に当接した状態において、電機子が通過する所定寸法の空間を形成しうる組合せ形状であり、
前記第1の押圧力発生手段により前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間隔を広げる押圧力を発生した時、前記一対のレールの一方(1T)が前記絶縁体(2L,2R)に押し付けられ、前記絶縁体(2L,2R)が前記一対のレールの他方(1B)に押し付けられ、前記レールの他方(1B)が前記レール用スペーサ(7B)に押し付けられ、前記レール用スペーサ(7B)が前記枠体(4)の内面に押し付けられて、前記一対のレール(1T,1B)が対向する方向に伸びるように前記枠体(4)が弾性変形し、その結果、前記一対の絶縁体(2L,2R)が対向する方向には縮まるように前記枠体(4)が弾性変形し、前記一対の絶縁体(2L,2R)の間隔を縮める押圧力が発生して前記絶縁体(2L,2R)を前記レール(1T,1B)に押し付け、前記レール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)と前記枠体(4)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)と前記押圧力発生手段と前記レール用スペーサ(7B)とが一体になり、前記第1の押圧力発生手段により前記一対のレールの一方(1T)の背面と前記枠体(4)の内面の間隔を広げる押圧力を発生しない時は、前記枠体(4)の内面と前記押圧力発生手段と前記レール用スペーサ(7B)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間および前記レール(1T,1B)と前記絶縁体(2L,2R)の間および前記絶縁体(2L,2R)と前記絶縁体用スペーサ(3L,3R)の間に隙間が生じうることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁加速装置用加速管において、前記一対のレール(1T,1B)は、対向面の両縁部に前記絶縁体(2L,2R)の角部が嵌る切欠き部を有する断面凸字形状であり、前記絶縁体(2L,2R)は、断面長方形であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電磁加速装置用加速管において、前記第1の押圧力発生手段が、油圧装置(5T)およびスペーサ(7T)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電磁加速装置用加速管において、前記第1の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(7Ta,7Tb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁加速装置用加速管において、前記レール用スペーサ(7B)の代わりに、前記一対のレールの他方(1B)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第2の押圧力発生手段を具備したことを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項6】
請求項5に記載の電磁加速装置用加速管において、前記第2の押圧力発生手段が、油圧装置(5B)およびスペーサ(7B)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項7】
請求項5に記載の電磁加速装置用加速管において、前記第2の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(7Ba,7Bb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の電磁加速装置用加速管において、前記一対の絶縁体用スペーサ(3L,3R)の代わりに、前記一対の絶縁体(2L,2R)の背面と前記枠体(4)の内面の間に存在し両者の間隔を広げる押圧力を発生しうる第3の押圧力発生手段および第4の押圧力発生手段を具備したことを特徴とする電磁加速装置用加速管。
【請求項9】
請求項8に記載の電磁加速装置用加速管において、前記第3の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(3La,3Lb)であり、前記第4の押圧力発生手段が、前記レール(1T,1B)が延びる方向のテーパ面を有する楔部材(3Ra,3Rb)であることを特徴とする電磁加速装置用加速管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−88104(P2013−88104A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232393(P2011−232393)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)