説明

電磁安全弁

【課題】従来の電磁安全弁では、コイルの一端をホルダに接続しているが、接続には溶接や半田付けが用いられる。そのため、目視では接続されているように見えても電気的に接続されていない場合が生じるおそれがあり、確実に接続するためには接続作業が繁雑になると共に、接続不良が生じれば不良品となる。
【解決手段】ボビンに1対の端子棒を保持させ、コイルの両端を各々端子棒に接続する。その接続作業はボビンを取り付ける前の段階、もしくは固定鉄心をホルダに保持させる前の段階で行う

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス通路に開設され、所定の場合にガス通路を閉鎖してガスの漏出等を防止する電磁安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスバーナにはガスを供給するガス通路であるガス供給管が接続されている。火力を調節するための火力調節装置がガス供給管に介設される場合があるが、さらに上流側に電磁安全弁が介設される。この電磁安全弁は例えばガスバーナが燃焼中に失火したり点火時に点火不良が生じた場合に、ガス通路を閉鎖したガスバーナから未燃焼のガスが両出することを防止する物である。
【0003】
このような電磁安全弁は従来より多数提案されており、例えば金属製のホルダにU字状の固定鉄心を保持させ、その固定鉄心の1対の磁極のうちの一方にボビンに巻回したコイルを装着する物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このものでは、コイルの一端をホルダに接続すると共に、他端を線材からなる端子に接続している。この端子はホルダの底部に設けた貫通孔を通って外部に延出される。ただし、その状態では貫通孔がシールされず、ガスがこの貫通孔を通って外部に漏出する。そこで、シールされたパイプをホルダに取り付け、このパイプ中に端子を通し、その後パイプの先端と端子の先端等を溶接等により気密に接合することにより、貫通孔のシールを行っている。
【0005】
なお、上記特許文献1に記載されたものではボビンを一方の磁極に装着しているが、そのような構成では磁極の長さが長くなり、電磁安全弁が大型化する場合がある。そこで、ボビンを固定鉄心の略中央部に装着して磁極の長さを短くした物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−18591号公報(図1,図2)
【特許文献2】特開2005−110385号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の電磁安全弁では、コイルの一端をホルダに接続しているが、接続には溶接や半田付けが用いられる。そのため、目視では接続されているように見えても電気的に接続されていない場合が生じるおそれがあり、確実に接続するためには接続作業が繁雑になると共に、接続不良が生じれば不良品となる。
【0007】
また、線材からなる端子とパイプとを相互に溶接等することにより気密性を確保しているが、やはりその溶接部分での気密性の信頼性が確保しづらいという不具合が生じる。
【0008】
なお、特許文献2に記載されているものでは、固定鉄心の略中央部分にボビンが装着されているので、ホルダに固定鉄心を収納する際、固定鉄心を直接ホルダの底部に当接させることができず、ボビンを介して固定鉄心がホルダに保持されることになる。すると、可動鉄片が固定鉄心に押接される際の応力はボビンを介してホルダに作用することになる。
【0009】
ボビンは一般に樹脂製であるため、このような応力がボビンに作用するとボビンが変形して固定鉄心の姿勢がずれて、可動鉄片を確実に吸着できないという不具合が生じる。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上述の不具合が生じない電磁安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明による電磁安全弁は、ホルダ内にU字状の固定鉄心とこの固定鉄心に装着されるボビンおよびボビンに巻回されたコイルとからなる電磁石を備えると共に、ガス通路を開閉する弁体およびこの弁体に連結された可動鉄片を有し、可動鉄片を固定鉄心に吸着させて弁体を開弁状態に保持する電磁安全弁において、コイルに接続される1対の端子棒を上記ボビンに保持させると共に、上記ホルダの底部に1対の貫通孔を形成して、この貫通孔に端子棒を挿通して端子棒の先端を外部に露出させた状態で、端子棒の先端側から装着したシール部材でホルダの底部の貫通孔を気密にシールしたことを特徴とする。
【0012】
従来であればコイルの少なくとも一端はホルダに接続されていたが、上記構成ではボビンに1対の端子棒を保持させたので、コイルの両端を各々端子棒に接続することができ、その接続作業はボビンを取り付ける前の段階、もしくは固定鉄心をホルダに保持させる前の段階で行うことができる。
【0013】
なお、上記固定鉄心の略中央部分にボビンを装着すると共に、固定鉄心をホルダに当接させ、可動鉄片が固定鉄心に押接される際の応力を、その当接部分で受けるように構成すれば、可動鉄片を固定鉄心に押接する際にボビンが変形することがなく、かつ固定鉄心の姿勢がずれることがない。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、ボビンを固定鉄心に装着する前や、固定鉄心をホルダに保持させる前に予めコイルを両端子棒に接続させておくことができるので、コイルと端子棒との接続を確実に、かつ安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明による電磁安全弁の一例である。この電磁安全弁1は上方に開口した有底のホルダ2を備えており、そのホルダ2の内部に固定鉄心3が保持されている。この固定鉄心3は磁性体材料で構成されており、略U字状に形成されている。そして、この固定鉄心3の1対の磁極31のうちの一方にボビン4が装着されている。このボビン4は樹脂製であり、コイル41が巻回されている。ボビン4には1対の端子棒5が保持されており、コイル41の両端は各々端子棒5に電気的に接続されている。
【0016】
従って、端子棒5を介して外部からコイル41に通電すると、コイル41が発生する磁界によって固定鉄心3が励磁される。この固定鉄心3の上方には弁体11に連結された可動鉄片13が設けられており、弁体11をバネ12の付勢力に抗して下方に押しさせ、可動鉄片13を固定鉄心3の磁極31に押接させれば、可動鉄片13が固定鉄心3に吸着され、弁体11は開弁状態に保持される。なお、コイル41への通電を停止させれば固定鉄心3は励磁されなくなるので、可動鉄片13に作用していた吸着力は消滅する。その結果弁体11はバネ12の付勢力によって上方に押し上げられて閉弁状態になる。
【0017】
図2を参照して、本実施の形態体では、ボビン4を射出成形する際に両端子棒5をボビン4内に鋳込んでボビン4に両端子棒5を固定した。そして、ボビン4にコイル41を巻回した際にコイル41の両端を各々接続部51に巻き付けて電気的に接続しておく。
【0018】
このようにボビン4にコイル41を巻回しサブアッセンブリした状態でボビン4を一方の磁極31に上方から装着した。
【0019】
図3を参照して、ホルダ2の底部には端子棒5が挿通される貫通孔21が形成されており、端子棒5の先端はこの貫通孔21を通って外部に突出する。なお、その状態で端子棒5に対して下方からゴム製のパッキン6を装着して貫通孔21を気密にシールするようにした。そして、パッキン6が脱落しないようにカバー14をホルダ2に取り付け、パッキン6を貫通孔21に常時押す付けるようにした。
【0020】
上記図1から図3に示した実施の形態では、ボビン4を一方の磁極31に装着したが、そのように構成した場合には固定鉄心3の上下寸法が長くなり、電磁安全弁1の取り付け場所によっては不都合が生じる場合がある。
【0021】
そこで、図4に示すように、固定鉄心3’の両磁極31’に挟まれた両中央部分の連結部32’にボビン4’を装着することができる。このボビン4’は左右に2分割されており、連結部32’を挟むように左右両側から合わされた状態でコイル41が巻回される。なお、両ボビン4’には予め端子棒5が固定されており、コイル41が巻回されたあと、コイル41の両端を各々端子棒5に連結し、図4(b)に示すようなサブアッセンブリした状態にしておく。
【0022】
次に、図5に示すようにホルダ2’に固定鉄心3’と共にボビン4’およびコイル41をホルダ2’内にセットする。なお、ホルダ2’の底部には上述と同様の貫通孔21’を形成しており、端子棒5がこの貫通孔21’を通って外部に突出するようにした。そして、上述と同様にパッキン6を端子棒5に装着し、カバー14でパッキン6を押さえるようにした。
【0023】
ところで、固定鉄心3’はAに示す係合部分でホルダ2’に係合しており、可動鉄片13が強く固定鉄心3’に押接されても、その応力はこの係合部Aで受けるようにした。従ってボビン4’はホルダ2’に接触せず、従ってこの応力によってボビン4’が変形することはない。
【0024】
次に、図6を参照して、断面が円形の固定鉄心3”を曲げ加工により形成して、ボビン4”を射出成形する際にボビン4”内に固定鉄心3”を鋳込むようにした。なお、その際端子棒5もボビン4”に鋳込んでもよいが、本実施の形態ではボビン4”が射出成形されたあとに、端子棒5をボビン4”に圧入するようにした。そして、圧入された端子棒5にコイル41の両端を各々接続して、図6(b)に示すサブアッセンブリ状態にした。
【0025】
そして、図7に示すように、ホルダ2”内にサブアッセンブリされたボビン4”等をセットした。本実施の形態でも、ホルダ2”の底部には貫通孔21が形成されており、端子棒5はその貫通孔21を通って外部に突出している。
【0026】
本実施の形態では、両貫通孔21をシールするパッキン6’を一体に形成した。そしてカバーとして機能する押さえ板14’でパッキン6’が脱落しないようにした。
【0027】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】第1の実施形態での組み立て状態を示す図
【図3】第1の実施形態での構造を示す断面図
【図4】第2の実施形態での組み立て状態を示す図
【図5】第2の実施形態での構造を示す断面図
【図6】第3の実施形態での組み立て状態を示す図
【図7】第3の実施形態での構造を示す断面図
【符号の説明】
【0029】
1 電磁安全弁
2 ホルダ
3 固定鉄心
4 ボビン
5 端子棒
6 パッキン
11 弁体
13 可動鉄片
14 カバー
21 貫通孔
31 磁極
41 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ内にU字状の固定鉄心とこの固定鉄心に装着されるボビンおよびボビンに巻回されたコイルとからなる電磁石を備えると共に、ガス通路を開閉する弁体およびこの弁体に連結された可動鉄片を有し、可動鉄片を固定鉄心に吸着させて弁体を開弁状態に保持する電磁安全弁において、コイルに接続される1対の端子棒を上記ボビンに保持させると共に、上記ホルダの底部に1対の貫通孔を形成して、この貫通孔に端子棒を挿通して端子棒の先端を外部に露出させた状態で、端子棒の先端側から装着したシール部材でホルダの底部の貫通孔を気密にシールしたことを特徴とする電磁安全弁。
【請求項2】
上記固定鉄心の略中央部分にボビンを装着すると共に、固定鉄心をホルダに当接させ、可動鉄片が固定鉄心に押接される際の応力を、その当接部分で受けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電磁安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−14131(P2009−14131A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178209(P2007−178209)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】