説明

電磁弁

【課題】電磁弁の小型化及び省エネルギーを確保しつつ、高水圧条件下でも円滑に開弁動作することのできる流体の流路の開閉制御用の電磁弁を提供する。
【解決手段】軸心方向に突出する形状の環状の弁座12と、閉弁位置と開弁位置との間で移動可能に設けられた可動鉄芯から成るプランジャ弁体18と、プランジャ弁体18を電磁吸引力にて吸引する電磁コイル36と、を備えた電磁弁16において、弁座12の側に且つ弁座12より外周側の位置に、プランジャ弁体18の閉弁時にパッキン24に当接してストッパ作用をなす、弁座12よりも突出高さの低いストッパ突起46を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流体の流路を開閉制御する電磁弁に関し、特に流体としての水の流路の開閉制御用に好適な電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器の自動洗浄装置や自動水栓その他において、水の流路(流体の流路)を開閉制御するための弁として以下の構成を有する電磁弁、即ち(a)軸心方向に突出する形状で環状に設けられた弁座と、(b)先端部に装着された弾性材から成るパッキンを弁座に押し付けて流路を遮断する閉弁位置と、パッキンを弁座から離間させて流路を開放する開弁位置との間で軸心方向に移動可能に設けられた磁性材から成るプランジャ弁体と、(c)閉弁位置にあるプランジャ弁体を開弁位置に向けて電磁吸引力にて吸引する電磁コイルと、を備えた電磁弁が広く用いられている。
【0003】
図5はその具体例を示している。
図において200は水(ここで水は冷水,温水,熱水等各種温度の水を含む)の流路で、200a,200bは弁座202の上流側である1次側流路,下流側である2次側流路をそれぞれ表している。
弁座202は流路200、詳しくは2次側流路200bを軸心周りに環状に取り囲み且つ軸心方向に突出する形状で設けられている。
【0004】
204は電磁弁206におけるケーシングで、その内部に可動鉄芯(磁性材)から成るプランジャ弁体208が、図中上下方向に移動可能に設けられている。
ここでプランジャ弁体208の図中下端部には、ゴム等の弾性材から成るパッキン210が装着されており、閉弁時においてかかるパッキン210が、弁座202に対し図中下向きに押し付けられるようになっている。
【0005】
このプランジャ弁体208は、スプリング212によって常時図中下向きに即ち閉弁方向に付勢されており、このスプリング212の付勢力によって、プランジャ弁体208が閉弁状態に状態保持されるようになっている。
ケーシング204の内部にはまた、プランジャ弁体208を取り巻くようにして電磁コイル214が設けられている。
プランジャ弁体208は、この電磁コイル214への通電により発生した電磁吸引力により、スプリング212の付勢力に抗して図中上向きに即ち開弁方向に引き上げられる。
【0006】
216はプランジャ弁体208のパッキン210とは反対側の面に軸方向に対向して設けられたラッチマグネットで、218はこのラッチマグネット216に接して固定状態に設けられた固定鉄芯である。
この固定鉄芯218とプランジャ弁体208との間には、プランジャ弁体208の閉弁時において微小な隙間Sが生ぜしめられ、また開弁状態でこの隙間Sは消失してプランジャ弁体208と固定鉄芯218とが接触した状態となる。
【0007】
この電磁弁206では、通常時はプランジャ弁体208がスプリング212の図中下向きの付勢力で閉弁状態、即ちパッキン210を弁座202に押し付ける状態に保持され、流路200を遮断した状態にある。
この状態で電磁コイル214への通電を行うと、電磁コイル214による吸引力によってプランジャ弁体208が図中上向きに引き上げられて開弁し、流路200を開放して流路200に水の流れを生ぜしめる。
ここで開弁したプランジャ弁体208は固定鉄芯218に接触した状態となり、この状態で電磁コイル214への通電を停止しても、プランジャ弁体208はラッチマグネット216による吸着力によって開弁状態に状態保持される。
【0008】
ところでこのような電磁弁206にあっては、従来、高水圧条件下で電磁弁206が円滑に開弁動作しないケースが生じるといった問題があった。而して電磁弁206が円滑に開弁動作しないと水が出てこないといった問題が生ずる。
【0009】
このように電磁弁206が円滑に開かないケースが生じるのは次のような理由によるものである。
電磁弁206のプランジャ弁体208には、その後面即ち上面を受圧面として1次側流路200aの1次圧が図中下向き即ち閉弁方向の力として作用するとともに、その前面即ち下面を受圧面として、同じく1次側流路の200aの1次圧が図中上向きに作用するが、弁座202の内側の部分においては閉弁状態の下でプランジャ弁体208に対し図中上向きの開弁方向の力は作用しない。
即ちプランジャ弁体208の上面と下面とには受圧面積の差があり、その受圧面積の差に基づいて、プランジャ弁体208は1次側流路200aの1次圧により図中下向きに、即ちパッキン210を弁座202に押し付ける方向に力を受ける。
【0010】
而して高水圧条件下では、この受圧面積の差に基づいてプランジャ弁体208を図中下向きに押す力が大きくなり、これに伴ってパッキン210の撓み量、即ちパッキン210の弁座202への食込量が大となって、その分プランジャ弁体208の閉弁時の位置が図中下側に移行する。
この結果、電磁コイル214によってプランジャ弁体208を引き上げる際のストロークが大きくなる。
【0011】
このストロークの大小は、電磁コイル214による図中上向きの吸引力の大小に直接関係し、ストロークが大となるほど吸引力は低下し、またストロークが小であるほど吸引力は大となる。
特に閉弁時における固定鉄芯218とプランジャ弁体208との間の隙間Sの大小はその吸引力の強弱に大きく影響し、ストロークが大のときには隙間Sが大きくなることによってプランジャ弁体208に対する引上げ力は低下し、逆に隙間Sが小さいほどプランジャ弁体208に対する引上げ力は大となる。
【0012】
因みに図6はプランジャ弁体208を図中上向きに、即ち開弁方向に引き上げるときのストロークと、電磁コイル214に一定の電流を通電したときに得られる電磁吸引力との関係を表したもので、例えば電磁コイル214に700mAの電流を通電したとき、ストローク0.65mmがストローク0.8mmまで大きくなると、電磁吸引力は約50g程低下してしまう。
【0013】
以上のように高水圧条件下ではプランジャ弁体208を引き上げる際のストロークが大となり、このことによってプランジャ弁体208に対する引上げ力が弱くなることが、高水圧条件下でプランジャ弁体208を閉弁方向に押す力が強くなることと相俟って電磁弁206が円滑に開弁しなくなることの理由である。
これを防止する手段として、電磁コイル214による吸引力即ちそのパワーを高めることが考えられるが、製品の小型化や省エネルギーが求められる昨今にあって、そうした解決方法は時代に逆行するものであり、得策とは言えない。
【0014】
以上水の流路を開閉する電磁弁且つラッチ式の電磁弁を例にとって説明したが、こうした問題は非ラッチ式の電磁弁であっても、また水以外の流体の流路の開閉制御用の電磁弁にあっても共通して生じる問題である。
尚、下記特許文献1には、プランジャ弁体の下端をパッキンよりもわずかに下向きに突出させた形態のものが図示されているが、この特許文献1に開示のものでは上記の問題点を解決することはできない。
【0015】
【特許文献1】特開平6−117571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、電磁弁の小型化及び省エネルギーを確保しつつ、高水圧条件下でもプランジャ弁体を円滑に開弁動作させることのできる、流体の流路の開閉制御用の電磁弁を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、(a)軸心方向に突出する形状で環状に設けられた弁座と、(b)先端部に装着された弾性材から成るパッキンを該弁座に押し付けて流路を遮断する閉弁位置と、該パッキンを弁座から離間させて流路を開放する開弁位置との間で軸心方向に移動可能に設けられた磁性材から成るプランジャ弁体と、(c)前記閉弁位置にあるプランジャ弁体を開弁位置に向けて電磁吸引力にて吸引する電磁コイルと、を備えた電磁弁において、前記弁座の側に且つ該弁座より外周側の位置に、前記プランジャ弁体の閉弁時に前記パッキンに当接してストッパ作用をなす、該弁座よりも突出高さの低い且つ該弁座との突出高さの差が、該パッキンの開閉方向の厚みよりも小さいストッパ突起を設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記ストッパ突起を前記弁座周りに不連続を成す形態で設けてあることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、(a)軸心方向に突出する形状で環状に設けられた弁座と、(b)先端部に装着された弾性材から成るパッキンを該弁座に押し付けて流路を遮断する閉弁位置と、該パッキンを弁座から離間させて流路を開放する開弁位置との間で軸心方向に移動可能に設けられた磁性材から成るプランジャ弁体と、(c)前記閉弁位置にあるプランジャ弁体を開弁位置に向けて電磁吸引力にて吸引する電磁コイルと、を備えた電磁弁において、前記プランジャ弁体の側に、該プランジャ弁体の閉弁時に前記弁座周りの当り面に当接してストッパ作用を成すストッパ突起を、前記パッキンの該弁座への接触面よりも該弁座側に突出し且つ該接触面からの突出高さが、該突出高さに該パッキンの開閉方向の厚みを加えた寸法が、該弁座の前記当り面からの突出高さよりも大となるように設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0020】
以上のように請求項1は、弁座の側に且つ弁座より外周側の位置に、プランジャ弁体の閉弁時にプランジャのパッキンに当接してストッパ作用を成す、弁座よりも突出高さの低い且つ弁座との突出高さの差が、パッキンの開閉方向の厚みよりも小さいストッパ突起を設けたもので、本発明によれば、閉弁時においてプランジャ弁体のパッキンが弁座に当たって撓むときの撓み量を、設定した撓み量以下に規制することができる。
即ちプランジャ弁体の閉弁時の押出ストロークを一定以下に規制することができ、高水圧条件下でプランジャ弁体のストロークが一定以上に大きくなってしまうのを確実に防止することができる。
従ってプランジャ弁体のストロークが一定以上に大きくなることによって、開弁時における電磁コイルによる吸引力が弱くなって開弁が円滑に行なわれないといった問題を解決でき、高水圧条件下でも確実にプランジャ弁体を開弁させることが可能となる。
【0021】
本発明では、電磁コイルによる吸引のパワーを一定に維持しつつプランジャ弁体に対する吸引力を高く保持することができるため、特に電磁弁の大型化やエネルギー消費が大となる問題は生じず、電磁弁を小型且つ省エネルギーに保持しつつ開弁を確実に行うことが可能となる。
【0022】
また本発明によれば、閉弁時におけるパッキンの撓み量即ち弁座への食込量を小さく規制することができるため、プランジャ弁体の開閉の繰り返しによって、パッキンの食込部分の劣化を抑制することができる効果も得られる。
【0023】
尚、かかるストッパ突起を弁座周りに環状に形成すると、その環状のストッパ突起の内側において、プランジャ弁体に対し1次圧が引込方向(図5中上向き)の力として作用しなくなる。即ち1次圧がプランジャ弁体を押出方向(図5中下向き)に押すときの受圧面積と、引込方向に押すときの受圧面積の差が大となり、その分プランジャ弁体が開弁し難くなってしまう。
従ってこの場合には、環状を成すストッパ突起の内側に1次側流路と連通した1次圧空間を形成することが必要となって、そのために構造が複雑化してしまう。
【0024】
それ故本発明ではかかるストッパ突起を、弁座周りに不連続を成す形態で設けておくことが望ましい(請求項2)。
このようにすれば、ストッパ突起を設けることによってプランジャ弁体の押出方向の受圧面積と、引込方向の受圧面積との差が特に大きくなるといったことは無く、ストッパ突起を設けることによってプランジャ弁体が開弁し難くなるといった問題は引き起さない。
【0025】
次に請求項3はプランジャ弁体の側に、弁座周りの当り面に当接してストッパ作用を成すストッパ突起を、パッキンの弁座への接触面よりも弁座側に突出する形態で、且つその突出高さが、その突出高さにパッキンの厚み(開閉方向の厚み)を加えた寸法が、弁座の上記当り面からの突出高さよりも大となるように設けたもので、この請求項3においても、閉弁時のプランジャ弁体の押出しのストロークの増大を確実に一定以下に規制することができ、これにより開弁時における電磁コイルによる吸引力を一定以上に保持し得て、プランジャ弁体の円滑な開弁を確保することが可能となる。
【0026】
ストッパ突起の突出高さ、詳しくはパッキンの弁座への接触面からの突出高さが低いと、より具体的にはその突出高さにパッキンの厚みを加えた寸法が、弁座の当り面からの突出高さよりも小であると、閉弁時においてパッキンが最大まで撓んでも尚ストッパ突起が弁座側の当り面に当たらないこととなり、ストッパ突起としての働きをなし得なくなる。
しかるにストッパ突起の突出高さを請求項3に従って定めておくことで、閉弁時に確実にストッパ作用をなさしめることができる。
【0027】
本発明は、プランジャ弁体のパッキンとは反対側の面に対向してラッチマグネットが備えられ、開弁したプランジャ弁体をラッチマグネットの吸着力により開弁状態に状態保持するラッチ式の電磁弁に適用して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は水(ここで水は冷水,温水,熱水等各種温度の水を含む)の流路で、10a,10bは弁座12の上流側である1次側流路,下流側である2次側流路をそれぞれ表している。
ここで弁座12は、図2(イ)にも示しているように円環状をなしており、流路10詳しくは2次側流路10bを軸心周りに環状に取り囲み、且つ軸心方向に突出した形状で設けられている。
14は電磁弁16におけるケーシングで、その内部に可動鉄芯(磁性材)から成るプランジャ弁体18が、図中上下方向に移動可能に、詳しくはその前進位置である閉弁位置と後退位置である開弁位置との間で移動可能に設けられている。
【0029】
プランジャ弁体18は、その下面側に小径の突出部20と、突出部20の端部に形成された、突出部20よりも大径の円盤状の頭部22とを有しており、それら突出部20の一部及び頭部22を内部に埋め込む状態で、ゴム等の弾性材から成るパッキン24がプランジャ弁体18に装着されている。
ここでパッキン24は、平面形状が円形状をなしており且つ図中下面、即ち弁座12への接触面が軸心と直角方向の平坦面をなしている。
プランジャ弁体18は、閉弁時にこのパッキン24を弁座12の先端即ち図中上端に押し付けることによって、流路10の連通を遮断する。
【0030】
ケーシング14の内側には内筒部材26が設けられている。
この内筒部材26は、図中上下にフランジ部28,30を有しており、フランジ部30に当接する状態で環状をなす閉鎖部材32が設けられている。
閉鎖部材32の内周側には環状の凹部が形成されていて、そこにOリング34が保持されている。閉鎖部材32と内筒部材26との間は、このOリング34にて水密にシールされている。
【0031】
内筒部材26における一対のフランジ部28と30との間の環状の凹所には、電磁コイル36がプランジャ弁体18を取り巻く状態で保持されている。
プランジャ弁体18は、この電磁コイル36への通電による電磁吸引力によって、図1に示す閉弁位置から開弁位置まで図中上向きに引き上げられる。
【0032】
ケーシング14の内側且つ上部には、ラッチマグネット38が、プランジャ弁体18のパッキン24とは反対側の面に対向する状態で設けられており、更にこのラッチマグネット38に接する状態で、固定鉄芯40がケーシング14内部に設けられている。
そしてこの固定鉄芯40とプランジャ弁体18との間にスプリング(圧縮コイルスプリング)44が介装され、かかるスプリング44によって、プランジャ弁体18が図中下向き即ち閉弁方向に付勢されている。
【0033】
この例の電磁弁16にあっては、ラッチマグネット38による図中上向きの吸引力に加えて、電磁コイル36への通電により生じた電磁吸引力によりプランジャ弁体18がスプリング44の付勢力に抗して図中上向きに引き上げられ、パッキン24が弁座12から図中上向きに離間して開弁し、流路10を開放状態とする。
【0034】
この開弁状態において、プランジャ弁体18はその上端が固定鉄芯40に当った状態となって、閉弁時に固定鉄芯40とプランジャ弁体18との間に生じていた隙間Sが消失し、これによりラッチマグネット38による強い吸着力がプランジャ弁体18に作用して、プランジャ弁体18が電磁コイル36への通電を停止してもそのままラッチマグネット38による吸着力によって開弁状態に状態保持される。
【0035】
一方電磁コイル36に上記とは逆方向に通電を行うと、電磁コイル36による電磁的な反発力によりプランジャ弁体18が図中下向きに押し出され、図1に示す閉弁状態となる。
閉弁状態となったプランジャ弁体18は、その後スプリング44の付勢力によってそのまま閉弁状態に状態保持される。
【0036】
本実施形態では、弁座12の側に且つ弁座12の外周側の位置に、プランジャ弁体18の閉弁の際にパッキン24に対し当接してストッパ作用をなすストッパ突起46が設けられている。
このストッパ突起46は、プランジャ弁体18の閉弁時に弁座12に当接して撓み変形するパッキン24の閉弁方向の撓み量を一定以下に規制する働きをなすもので、弁座12よりも低い突出高さで設けられている。
またこのストッパ突起46と弁座12との突出高さの差Δh(図2(ロ)参照)は、パッキン24の上下方向の厚み(有効厚み)Tよりも小寸法とされている。より詳しくは、パッキン24の最大撓み量よりも小寸法とされている。
【0037】
尚、この実施形態ではストッパ突起46は、その上面が平坦面とされているとともに、弁座12周りに不連続をなす形態で設けられている。
ここではストッパ突起46は、弁座12周りに且つ所定角度ごとに隔たって複数個所(ここでは4個所)に設けられている。
この実施形態ではまた、ストッパ突起46が弁座12から径方向に離隔して設けられている。
ストッパ突起46は、上記のように弁座12周りに不連続な形態をなしており、この結果、ストッパ突起46と弁座12との間且つ弁座12周りの空間は、1次側流路10aに連通した1次圧空間とされている。
【0038】
この実施形態では、閉弁時にプランジャ弁体18に装着したパッキン24が撓み変形しながら(弁座12に食い込みながら)弁座12に図中下向きに押し付けられ、流路10を遮断する。
従来の電磁弁にあっては、高水圧条件下ではそのパッキン24の撓み量が大となり、これによりパッキン24の図中下向きの沈込み量、即ちプランジャ弁体18の下向きの沈込み量が大となって、固定鉄芯40とプランジャ弁体18との間の隙間Sの上下寸法、即ちエアギャップが大となる(プランジャ弁体18を開弁させる際のストロークが大となる)。
この結果、ラッチマグネット38によるプランジャ弁体18の図中上向きの吸引力及び電磁コイル36によるプランジャ弁体18の図中上向きの吸引力、つまり引き上げ力が大きく低下してしまう。
【0039】
しかるに本実施形態では、高水圧条件下でプランジャ弁体18に対する1次圧による下向きの力が大きい場合であっても、パッキン24の閉弁時の撓み量が、ストッパ突起46によるストッパ作用で一定以下に規制されるため、高水圧条件下であってもパッキン24の沈込み量(撓み量)、即ちプランジャ弁体18の沈込み量が一定以下に規制され、閉弁時における隙間Sの寸法の拡大が規制される。
そのため、開弁時においてラッチマグネット38及び電磁コイル36の電磁吸引力によってプランジャ弁体18を上向きに引き上げる際の力も強く保持し得、高水圧条件下でも円滑にプランジャ弁体18を開弁動作させることができる。
【0040】
また弁座12の突出高さとストッパ突起46の突出高さとの差Δhが、パッキン24の有効厚みTよりも小寸法且つパッキン24の最大撓み量よりも小寸法とされているため、プランジャ弁体18の閉弁時にパッキン24がある程度撓んだところで、確実にストッパ突起46をパッキン24の下面(弁座12への接触面)に当接させてストッパ作用を行わせることができる。
【0041】
以上のように本実施形態によれば、閉弁時にプランジャ弁体18のパッキン24が弁座12に当たって撓むときの撓み量を設定した一定の撓み量以下に規制することができる。
即ちプランジャ弁体18の閉弁時の押出ストロークを一定以下に規制することができ、高水圧条件下でプランジャ弁体18のストロークが一定以上に大きくなってしまうのを確実に防止することができる。
従ってプランジャ弁体18のストロークが一定以上に大きくなることによって、開弁時にプランジャ弁体18に作用する電磁コイル36の吸引力が弱くなって開弁が円滑に行なわれないといった問題を解決でき、円滑に且つ確実にプランジャ弁体18を開弁させることが可能となる。
【0042】
また本実施形態では電磁コイル36による吸引のパワーを一定に維持しつつ、プランジャ弁体18に対する吸引力を高く保持することができるため、特に電磁弁16の大型化やエネルギー消費が大となる問題は生じず、電磁弁16を小型且つ省エネルギーに保持しつつ、開弁を確実に行うことが可能となる。
【0043】
更に本実施形態ではストッパ突起46を弁座12周りに不連続を成す形態で設けてあるため、ストッパ突起46を設けることによって、プランジャ弁体18の押出方向の受圧面積と引込方向の受圧面積との差が特に大きくなるといったことはなく、ストッパ突起46を設けることによって、プランジャ弁体18が開弁し難くなるといった問題は生じない。
【0044】
次に、図3及び図4は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態は、これらの図に示しているようにプランジャ弁体18に断面円形の凹所48を設けて、そこに対応する断面形状のパッキン50を埋込状態に設け、そしてプランジャ弁体18の側に且つパッキン50よりも外周側の位置に、パッキン50の弁座12に対する接触面から図中下向きに突出するストッパ突起52を設けた例である。
【0045】
ここでストッパ突起52は、この実施形態では弁座12周りに連続した環状を成す形態で設けてある(ストッパ突起52が当り面54に当接したとき、その当接部分は非シール状態であるので)。
但しこの例においても、ストッパ突起52は弁座12周りに不連続をなす形態で設けておくこともできる。
【0046】
このストッパ突起52は、弁座12側の当り面54への当接によるストッパ作用で、パッキン50の一定量以上の撓み変形を防止する働きをなすもので、ここではストッパ突起52のパッキン50からの突出高さA(図4(ロ)参照)、詳しくはパッキン50の弁座12への接触面からの突出高さAが、弁座12の当り面54からの突出高さhよりも小寸法とされている。
更にこのストッパ突起52の突出高さAは、その突出高さAにパッキン50の有効厚みTを加えた寸法が、弁座12の当り面54からの突出高さhよりも大となるように定められている。
【0047】
即ち閉弁時にパッキン50が最大まで撓んでも、確実にストッパ突起52が当り面54に当接するように、ストッパ突起52の突出高さAが定めてある。
但し実際にはストッパ突起52の突出高さAは、閉弁時にパッキン50が許容撓み量、即ち許容沈込み量に達した段階で、ストッパ突起52が当り面54に当たるようにその突出高さAが定めてある。
【0048】
本実施形態によれば、閉弁時におけるプランジャ弁体18の押出しのストロークの増大を確実に一定以下に規制することができ、これにより開弁時の電磁コイル36による吸引力を一定以上に保持し得て、プランジャ弁体18の円滑な開弁を確保することが可能となる。
【0049】
ストッパ突起52の突出高さA、詳しくはパッキン50の弁座12への接触面からの突出高さAが低いと、より具体的にはその突出高さAにパッキン50の有効厚みTを加えた寸法が、弁座12の当り面54からの突出高さよりも小であると、閉弁時にパッキン50が最大まで撓んでも、なおストッパ突起52が弁座12側の当り面54に当たらないこととなり、ストッパ突起52としての働きをなし得なくなるが、ストッパ突起52の突出高さAを上記のように定めておくことで、閉弁時に確実にストッパ突起52にストッパ作用をなさしめることができる。
【0050】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば第2の実施形態では、ストッパ突起52をパッキン50よりも外周側の位置に設けているが、場合によってストッパ突起をパッキン50に埋込状態に設けて、パッキン50の外周よりも内側の位置で下向きに突出する状態で設けることも可能である。
また本発明は、非ラッチ式の電磁弁或いは水以外の流体の流路開閉制御用の電磁弁に適用することも可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態である電磁弁の図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の他の実施形態である電磁弁の図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】従来の電磁弁の図である。
【図6】プランジャ弁体のストロークと電磁吸引力との関係を表した図である。
【符号の説明】
【0052】
10 流路
10a 1次側流路
10b 2次側流路
12 弁座
16 電磁弁
18 プランジャ弁体
24,50 パッキン
36 電磁コイル
38 ラッチマグネット
46,52 ストッパ突起
54 当り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)軸心方向に突出する形状で環状に設けられた弁座と
(b)先端部に装着された弾性材から成るパッキンを該弁座に押し付けて流路を遮断する閉弁位置と、該パッキンを弁座から離間させて流路を開放する開弁位置との間で軸心方向に移動可能に設けられた磁性材から成るプランジャ弁体と
(c)前記閉弁位置にあるプランジャ弁体を開弁位置に向けて電磁吸引力にて吸引する電磁コイルと、を備えた電磁弁において
前記弁座の側に且つ該弁座より外周側の位置に、前記プランジャ弁体の閉弁時に前記パッキンに当接してストッパ作用をなす、該弁座よりも突出高さの低い且つ該弁座との突出高さの差が、該パッキンの開閉方向の厚みよりも小さいストッパ突起を設けてあることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1において、前記ストッパ突起を前記弁座周りに不連続を成す形態で設けてあることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
(a)軸心方向に突出する形状で環状に設けられた弁座と
(b)先端部に装着された弾性材から成るパッキンを該弁座に押し付けて流路を遮断する閉弁位置と、該パッキンを弁座から離間させて流路を開放する開弁位置との間で軸心方向に移動可能に設けられた磁性材から成るプランジャ弁体と
(c)前記閉弁位置にあるプランジャ弁体を開弁位置に向けて電磁吸引力にて吸引する電磁コイルと、を備えた電磁弁において
前記プランジャ弁体の側に、該プランジャ弁体の閉弁時に前記弁座周りの当り面に当接してストッパ作用を成すストッパ突起を、前記パッキンの該弁座への接触面よりも該弁座側に突出し且つ該接触面からの突出高さが、該突出高さに該パッキンの開閉方向の厚みを加えた寸法が、該弁座の前記当り面からの突出高さよりも大となるように設けてあることを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−333194(P2007−333194A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169251(P2006−169251)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】