説明

電磁式アクチュエータとそれを用いた能動型制振器

【課題】部品点数や重量の増加を抑えつつ、制御ユニットをコイルの近くに配置することができる、新規な構造の電磁式アクチュエータと、それを用いた能動型制振器を提供すること。
【解決手段】コイル20を備えた固定子12と、固定子12に対する相対変位を許容された可動子14とを備えており、コイル20への通電によって可動子14が加振変位されるようにした電磁式アクチュエータ11において、コイル20を支持して固定子12を構成するベース部材18が設けられており、ベース部材18の取付部材32には当接によって可動子14の変位量を制限するストッパ部42が設けられていると共に、取付部材32には制振対象部材に固定される取付片44が設けられている一方、ベース部材18には収容空所96が設けられていると共に、収容空所96に対してコイル20への通電を制御する制御ユニット82が収容配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子を構成するコイルへの通電を制御することで、コイルに対する相対変位を許容された可動子が加振変位されて、目的とする加振力が発揮される電磁式アクチュエータと、それを用いた能動型制振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベース部材で支持されたコイルを有する固定子と、固定子に対する相対変位を許容された可動子とを備えて、コイルへの通電を制御することによって可動子が加振変位される電磁式アクチュエータが知られており、能動型制振器や能動型エンジンマウント等への適用が検討されている。例えば、特開2004−297870号公報(特許文献1)に示されているのが、それである。
【0003】
ところで、電磁式アクチュエータにおいて、コイルへの通電は制御ユニットによって制御されるが、この制御ユニットは、水の付着等による故障の発生を防ぐといった目的で、制御対象である電磁式アクチュエータとは別の場所に配設される場合がある。特に、特許文献1に示されているように、電磁式アクチュエータが、エンジンルーム等の雰囲気や雨水の影響を受け易い場所に配設される場合には、一般的に、制御ユニットを電磁式アクチュエータから離して車室内等に配設することで、耐久性の確保が図られる。
【0004】
しかし、このように、制御ユニットが電磁式アクチュエータとは別の場所に配設されていると、電磁式アクチュエータのコイルと制御ユニットとを電気的に接続するために、長い接続用配線が必要となって、重量やコストの増加が問題になり易い。なお、制御ユニットをケースに収容する等して、外部空間に対するシール性を確保することも可能であるが、シール構造を有するケースが必要となることから、重量や部品点数の増加を避け難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−297870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部品点数や重量の増加を抑えつつ、制御ユニットをコイルの近くに配置することができる、新規な構造の電磁式アクチュエータを提供することにある。
【0007】
また、本発明は、電磁式アクチュエータを用いた新規な構造の能動型制振器を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第1の態様は、コイルを備えた固定子と、該固定子に対する相対変位を許容された可動子とを備えており、該コイルへの通電によって該可動子が加振変位されるようにした電磁式アクチュエータにおいて、前記コイルを支持して前記固定子を構成するベース部材が設けられて、該ベース部材が制振対象部材に取り付けられる取付部材を含んで構成されており、該取付部材には前記可動子との当接によって該可動子の該固定子に対する相対変位量を制限するストッパ部が設けられていると共に、該取付部材には該制振対象部材に固定される取付片が設けられている一方、該ベース部材には収容空所が設けられていると共に、該収容空所に対して該コイルへの通電を制御する制御ユニットが収容配置されていることを、特徴とする。
【0009】
このような第1の態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータによれば、制御ユニットがベース部材に設けられた収容空所に配設されていることによって、コイルと制御ユニットが近い位置に配置される。それ故、コイルと制御ユニットを繋ぐ接続用配線を短くすることができて、軽量化が図られると共に、接続用配線の取回しを容易にすることができる。
【0010】
また、制御ユニットは、収容空所に収容配置されることによって、ベース部材で外部空間から隔てられており、水や塵埃等の異物が制御ユニットに付着して故障の原因になるのを防ぐことができる。しかも、制御ユニットがコイルを支持するベース部材によって保護されていることから、制御ユニットを保護するための特別なケース等を設ける必要がなく、部品点数の少ない軽量且つ簡易な構造で制御ユニットの保護が実現される。
【0011】
さらに、ベース部材は、制御ユニットを保護するためのケースとしての機能に加えて、可動子の変位量を当接によって制限するストッパ部を備えており、可動子と固定子の相対変位量がストッパ部によって制限されることで耐久性の向上や安定した作動が実現される。加えて、ベース部材に取付片が設けられていることによって、各種の制振対象部材への取り付けに際して対応の自由度が向上されると共に、部品点数の削減も図られ得る。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された電磁式アクチュエータにおいて、前記コイルと前記制御ユニットを電気的に接続する接続用配線が設けられていると共に、前記ベース部材には該コイルを支持する支持部材が設けられており、該接続用配線の配設孔が該支持部材を貫通して形成されているものである。
【0013】
第2の態様によれば、配設孔がコイルを支持する支持部材を貫通して設けられており、配設孔に接続用配線が挿通されることによって、より短い長さの接続用配線でコイルと制御ユニットを接続することが可能となる。しかも、接続用配線が支持部材によって囲まれて保護されることから、耐久性の確保も容易に実現される。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された電磁式アクチュエータにおいて、前記ベース部材に形成された凹所が、カバー部材で覆蓋されることによって前記収容空所が形成されているものである。
【0015】
第3の態様によれば、ベース部材とカバー部材によって、制御ユニットを収容する収容空所が容易に形成されて、制御ユニットがベース部材とカバー部材によって水や砂塵等から保護される。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された電磁式アクチュエータにおいて、前記制御ユニットに給電する給電配線を用いて、前記ベース部材の接地回路が設けられているものである。
【0017】
第4の態様によれば、ベース部材の接地回路が設けられていることによって、コイルへの通電に起因するノイズが、外部の機器(ラジオ等)に悪影響を及ぼすのを防止することができる。しかも、ベース部材の接地回路が制御ユニットに給電する給電配線を用いて構成されていることから、接地回路の配線を簡略化して、軽量化等を実現することができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、能動型制振器において、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された電磁式アクチュエータの前記固定子と前記可動子が支持ゴム弾性体によって弾性連結されていることを、特徴とする。
【0019】
第5の態様によれば、制御ユニットが収容空所に収容配置されていることから、能動的な制振効果を発揮する能動型制振器が、配線の短い軽量且つコンパクトな構造で実現される。
【0020】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載された能動型制振器において、筒状部を有する前記可動子に対して前記コイルを支持する前記ベース部材が挿入されており、それら可動子とベース部材が前記支持ゴム弾性体によって弾性連結されているものである。
【0021】
第6の態様によれば、可動子が固定子のコイルに対して外周側に配設されて、可動子がコイルよりも大径とされることから、可動子自体の質量が大きく確保され易くなって、特別な質量体(マス部材)等を設けることなく、可動子自体の質量によって能動的な制振効果を有効に得ることができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、第5又は第6の態様に記載された能動型制振器において、前記ベース部材が前記固定子を制振対象部材に取り付けるための取付部材を含んで構成されているものである。
【0023】
第7の態様によれば、固定子の制振対象部材への取付部材を利用してベース部材が形成されていることから、より部品点数の少ない簡易な構造の能動型制振器を実現することができる。
【0024】
本発明の第8の態様は、第5〜第7の何れか1つの態様に記載された能動型制振器において、前記固定子が車両の車室を形成する部材に固定されているものである。
【0025】
第8の態様によれば、外部からの異物の侵入が生じ難い車両の乗員室や荷物室(トランクルーム)等の車室空間に、能動型制振器が配設されることによって、制御ユニットが収容空所に配設されて能動型制振器に内蔵されていても、異物の付着等による故障の発生が防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、コイルへの通電を制御する制御ユニットが、ベース部材の収容空所に収容配置されていることにより、コイルと制御ユニットが近い位置に配置されて、それらコイルと制御ユニットを繋ぐ配線を短縮することができる。それ故、軽量化やコストの低減、配線の取回しの容易化等が図られ得る。また、制御ユニットがベース部材によって外部の異物から保護されることにより、制御ユニットを保護するための特別なケース等を設けたり、制御ユニット自体に耐水性等を付与することなく、目的とする耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1実施形態としての能動型制振器を示す平面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】図1のIII−III断面図。
【図4】図1のIV−IV断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1〜図4には、本発明の1実施形態として、能動型制振器10が示されている。能動型制振器10は、電磁式アクチュエータ11を備えており、その電磁式アクチュエータ11が、制振対象部材としての車両ボデーに固定される固定子12と、固定子12に外挿された可動子14とを、含んで構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図2中の上下方向を言う。
【0030】
より詳細には、固定子12は、コイル部材16とベース部材18を備えており、コイル部材16がベース部材18によって支持されている。コイル部材16は、全体として略円筒形状であって、コイル20に上ヨーク22と下ヨーク24を取り付けたものを、上下二段に重ね合わせた構造とされている。
【0031】
コイル20は、非磁性の合成樹脂で被覆されて絶縁されていると共に、後述する制御ユニット82を介して外部の電源装置80(後述)に電気的に接続されており、制御ユニット82によって通電を制御されるようになっている。また、上ヨーク22と下ヨーク24は、何れも略円環板形状を有する鉄等の強磁性体で形成されており、上ヨーク22がコイル20に対して上方から重ね合わされると共に、下ヨーク24がコイル20に対して下方から重ね合わされる。更に、上ヨーク22の外周端部には下方に突出する上側磁極部26が形成されていると共に、下ヨーク24の外周端部には上方に突出する下側磁極部28が形成されている。それら上側磁極部26と下側磁極部28は、上下に離間して位置しており、上側磁極部26と下側磁極部28の間に磁気ギャップが形成されている。これにより、コイル20への通電時に、それら上側磁極部26と下側磁極部28には、互いに異なる磁極が形成されるようになっている。
【0032】
ベース部材18は、支持部材30と取付部材32を含んで構成されている。支持部材30は、略円柱形状を呈する高剛性の部材であって、中央部分には上下に貫通する挿通孔34が形成されている。そして、支持部材30は、コイル部材16に対して上方から重ね合わされて配設されており、挿通孔34およびコイル部材16の中心孔に挿通されるボルト36によって相互に連結固定されることで、コイル部材16を支持している。
【0033】
また、支持部材30には、取付部材32が固定されている。取付部材32は、アルミニウム合金や鉄等の導電性材料で形成された略矩形皿形状を有する高剛性の部材であって、上方に開口する凹所38を備えている。そして、取付部材32は、支持部材30の上面に重ね合わされて、3つのねじ40によって支持部材30に固定されている。更に、取付部材32の一対の短辺には、下方に延び出すと共に下端が短辺の対向方向で内側に突出したストッパ部42が設けられている(図3参照)。更にまた、図4に示されているように、取付部材32の一対の長辺の中央部分には、上方に延び出すと共に上端が長辺の対向方向で外側に突出した一対の取付片44,44が一体形成されており、この取付片44がボルトによって図示しない制振対象部材としての車両ボデーに固定されるようになっている。また、取付部材32の開口部には、上方に突出する複数の係止爪46が一体形成されている。
【0034】
また、固定子12を構成するコイル部材16および支持部材30には、可動子14が外挿配置されている。可動子14は、可動子本体48と、可動子本体48を支持するハウジング50とを含んで構成されている。
【0035】
可動子本体48は、永久磁石52と、上下の磁路形成部材54,56とを含んで構成されている。永久磁石52は、略円環板形状を有する磁性材料で形成されたものであって、上下面に磁極が形成されるように着磁されている。また、永久磁石52の上面に上側磁路形成部材54が重ね合わされていると共に、永久磁石52の下面に下側磁路形成部材56が重ね合わされている。磁路形成部材54,56は、何れも略円環板形状を呈する鉄等の強磁性体で形成されており、その内外径寸法が永久磁石52の内外径寸法と略同じにされている。そして、上側磁路形成部材54と下側磁路形成部材56が永久磁石52を上下に挟み込んで重ね合わされることによって、上側磁路形成部材54および下側磁路形成部材56の内周端面に磁極が形成されている。
【0036】
また、可動子本体48は、ハウジング50に嵌着されている。このハウジング50は、好適には鉄等の導電性材料で形成されており、ハウジング本体58を備えている。ハウジング本体58は、薄肉大径の略有底円筒形状を有する高剛性の部材であって、開口部にはフランジ状の段差部60を介して上方に突出する筒状のかしめ片62が一体形成されている。
【0037】
そして、ハウジング本体58に可動子本体48が挿入配置されて、可動子本体48がハウジング本体58によって支持されている。また、可動子本体48およびハウジング本体58には、コイル部材16および支持部材30が挿入されており、可動子14と固定子12が微小隙間を有する内外挿状態で配置されている。更に、固定子12と可動子14は、可動子本体48を挟み込んで上下に配設された一対の板バネ64,64によって相互に弾性連結されており、軸方向での相対変位が許容されていると共に、軸直角方向での相対変位が制限されて相対的に位置決めされている。
【0038】
なお、可動子本体48は、磁力によって、コイル部材16に対して上下方向で中立位置に位置合わせされている。要するに、可動子本体48の上側磁路形成部材54は、上側のコイル20に取り付けられた上下ヨーク22,24の磁気ギャップの上下中央に位置していると共に、下側磁路形成部材56は、下側のコイル20に取り付けられた上下ヨーク22,24の磁気ギャップの上下中央に位置している。
【0039】
そして、コイル20への通電によって、上ヨーク22の上側磁極部26と、下ヨーク24の下側磁極部28にそれぞれ磁極が形成されて、それら上下ヨーク22,24と上下の磁路形成部材54,56との間に磁気的な吸引力又は反発力が作用する。これにより、可動子14が固定子12に対して相対的に上下に加振変位されるようになっており、目的とする加振力を発生する電磁式アクチュエータ11が構成されて、能動型制振器10を構成している。なお、上下のコイル20,20は、線材の巻回方向が相互に逆向きとされており、各コイル20への通電によって可動子14に対して同一方向の力が及ぼされて、出力が効率的に得られるようになっている。
【0040】
また、ハウジング本体58の開口部には、支持片68が固定されている。支持片68は、略円環板形状を有しており、径方向中間部分に設けられた段差を挟んで内周部分が外周部分よりも上方に位置する段付き形状とされている。そして、支持片68の外周部分が、かしめ片62によってハウジング本体58の開口部にかしめ固定されることによって、ハウジング50が構成されている。なお、支持片68の内周部分は、ハウジング本体58の開口部上に突出して、上側磁路形成部材54の外周部分と上下に対向している。また、支持片68は、内周部分が周上の複数箇所に断続的に設けられており、外周部分と段差だけで構成された部分が周上に存在している(図3参照)。
【0041】
さらに、支持片68をかしめ固定されたハウジング本体58の上端部には、ストッパゴム72が取り付けられている。ストッパゴム72は、略円環形状とされており、かしめ片62の上面に重ね合わされる部分と、段差部60の下面を覆う部分とが、周上で交互に設けられている。
【0042】
また、支持片68と上側磁路形成部材54の上下方向間には、支持ゴム弾性体74の外周端部が挟持されている。支持ゴム弾性体74は、略円環板形状のゴム弾性体であって、外周側に向かって次第に薄肉となっていると共に、外周端部には上下に突出する環状乃至は筒状の挟持部76が一体形成されている。そして、支持ゴム弾性体74は、挟持部76が支持片68と上側磁路形成部材54の間で挟持されていると共に、内周端面が支持部材30の外周面に重ね合わされて加硫接着されている。換言すれば、支持ゴム弾性体74は、支持部材30を備えた一体加硫成形品として形成されて、外周端部が非接着でハウジング50に固定されており、もって、固定子12を構成する支持部材30と、可動子14を構成するハウジング50が、支持ゴム弾性体74によって弾性連結されている。
【0043】
なお、支持ゴム弾性体74に設けられた挟持部76の下端部は、規制金具78によって内周側への変位や変形が制限されている。この規制金具78は、略円環形状で内周端部から上方に突出する筒状の当接片を備えた部材であって、上側磁路形成部材54に重ね合わされた板バネ64の外周端部上に配設されている。そして、規制金具78の当接片が、挟持部76の下端部の内周面に重ね合わされることによって、挟持部76の下端部の内周側への変位や変形が制限されている。
【0044】
さらに、支持片68の内周端部には、下方に凸となる係止部が設けられており、挟持部76の上端部の内周面に係止部が当接されることによって、挟持部76の上端部の内周側への変位や変形が制限されている。換言すれば、挟持部76を規制金具78との間で挟み込む支持片68の内周部分には、下方に開口して周方向に延びる凹部が設けられており、その凹部に対して挟持部76の上端部が嵌め込まれている。
【0045】
更にまた、支持ゴム弾性体74の内周端部は、支持部材30の外周面に重ね合わされて加硫接着されていると共に、上端部が支持部材30の上面の外周縁部に固着されて上方に突出しており、支持部材30と取付部材32の重ね合わせ面間を封止するシール構造が設けられている。換言すれば、支持ゴム弾性体74の内周端部の上端には、シール突起79が一体形成されて、支持部材30の外周端部の上端に設けられた切欠部に固着されており、支持部材30と取付部材32の間で挟圧されてそれら支持部材30と取付部材32の部材間を封止している。
【0046】
そして、コイル20に対して外部の電源装置80から通電されることにより、各ヨーク22,24の上下の磁極部26,28にそれぞれ磁極が形成されて、上下の磁極部26,28と上下の磁路形成部材54,56との間に磁気的な吸引力又は反発力が作用する。これにより、可動子14が板バネ64,64および支持ゴム弾性体74の弾性力に抗して、固定子12に対して上下に加振変位されるようになっている。なお、本実施形態では、可動子14が固定子12に対して外挿配置されて大径とされていることにより、可動子14の質量が大きくされており、特別なマス部材を設けることなく、可動子14自体がマス部材として機能するようになっている。
【0047】
また、取付部材32のストッパ部42と、ハウジング50の段差部60とが、上下に所定距離を隔てて対向配置されており、それらストッパ部42と段差部60がストッパゴム72を介して当接することで、可動子14の下方への変位量を制限するバウンドストッパが構成されている。また、支持ゴム弾性体74の挟持部76は、周上の複数箇所で上方への突出高さが大きくされて、支持片68の内周部分を省略された部分において上方に突出しており、取付部材32と可動子本体48が挟持部76を介して当接することにより、可動子14の上方への変位量を制限するリバウンドストッパが構成されている。
【0048】
また、電源装置80からコイル20への通電は、制御ユニット82によってコントロールされている。本実施形態の制御ユニット82は、通電制御手段としての制御基板84と、制御基板84に対して加速度の検出信号を送信する加速度センサ86とを含んで構成されている。制御基板84は、樹脂製のプレート上に電子部品やプリント配線を実装したものであって、コイル20に接続するための内部コネクタ87と、外部の電源装置80等に接続するための外部コネクタ88とを備えている。外部コネクタ88は、電源装置80に対して給電配線90aと給電配線90b(接地側給電配線)を介して接続されていると共に、エンジンコントロールユニット92や図示しないエアーコンディショナの制御装置等に信号配線93を介して接続されている。そして、制御基板84は、電源装置80から外部コネクタ88を介して供給された電力をコイル20に供給するタイミング等を、エンジンコントロールユニット92等から信号配線93を通じて送信されて外部コネクタ88から制御基板84に入力される参照信号に応じて制御するようになっている。
【0049】
また、加速度センサ86は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型の加速度センサが好適に採用されて、本実施形態では制御基板84とは別体で設けられている。加速度センサ86には、駆動用の電力が、電源装置80から制御基板84を通じて電線108a,108bにより給電される。また、加速度センサ86の検出信号が出力線110を通じて制御基板84に出力される。なお、加速度センサ86の検出方式は、特に限定されるものではなく、静電容量検出方式やピエゾ抵抗方式、熱検知方式等の各種公知の方式が採用され得る。
【0050】
これら制御基板84と加速度センサ86を含んで構成された制御ユニット82は、ベース部材18に収容配置されている。即ち、加速度センサ86が皿形状とされた取付部材32の底面上に配設されていると共に、制御基板84の外周部分が取付部材32の開口周縁部に上方から重ね合わされて支持されている。更に、取付部材32には、上方から逆向きの略矩形皿形状を呈するカバー部材94が取り付けられており、カバー部材94によって取付部材32に設けられた凹所38の開口が覆蓋されることによって、収容空所96が凹所38を利用して形成されている。なお、カバー部材94は、取付部材32と同様に、導電性材料で形成されている。
【0051】
なお、制御基板84の外周端部が、取付部材32の開口周縁部とカバー部材94の開口周縁部との間で挟持されている。また、カバー部材94の下端部には、外周側に突出する係止部98が一体形成されており、取付部材32の上端部に突設された複数の係止爪46が、突出先端部分を内周側に曲げられて、係止部98の上面に重ね合わされることによって、カバー部材94が取付部材32に対して固定されている。
【0052】
また、制御基板84と取付部材32およびカバー部材94との重ね合わせ面間には、ゴム弾性体等で形成された第1シール部材100が配設されており、制御基板84と取付部材32およびカバー部材94との重ね合わせ面間が封止されている。
【0053】
さらに、制御基板84に実装された外部コネクタ88は、図3に示されているように、取付部材32とカバー部材94の間から外部に突出しており、外部コネクタ88と取付部材32およびカバー部材94の間には、ゴム弾性体等で形成された第2シール部材102が配設されている。これにより、外部コネクタ88と取付部材32およびカバー部材94の間が、第2シール部材102によって封止されている。
【0054】
このように第1, 第2シール部材100,102によって封止されることで、ベース部材18に形成された収容空所96が、外部空間から密閉されている。そして、取付部材32とカバー部材94の間に形成された収容空所96に対して、制御ユニット82(制御基板84および加速度センサ86)が収容配置されている。要するに、制御ユニット82を外部空間から隔てるケースが、ベース部材18を利用して形成されている。
【0055】
また、ベース部材18の取付部材32および支持部材30には、配設孔104が形成されている。この配設孔104は、上下に直線的に延びる孔であって、取付部材32の底壁部と支持部材30を貫通して設けられている。更に、配設孔104には、コイル20と制御基板84とを電気的に接続する接続用配線106が挿通されている。この接続用配線106は、上下端部にそれぞれ接続用端子を備えており、上端部が制御基板84に実装された内部コネクタ87に接続されていると共に、下端部がコイル20に接続されている。そして、外部の電源装置80からの電力が、制御基板84からコイル20に対して接続用配線106を通じて供給されるようになっている。なお、上記の説明からも明らかなように、接続用配線106は、コイル20および制御基板84との接続部分を含んだ全体が、ベース部材18で囲まれた領域に位置しており、外部空間から隔てられている。
【0056】
また、図3に示されているように、制御基板84と加速度センサ86が電線108a,108bを介して電気的に接続されていると共に、接地側の電線108bがベース部材18に導通されており、ベース部材18が電線108bを介して加速度センサ86の図示しない接地端子に接続されている。これにより、ベース部材18は、加速度センサ86および制御基板84を介して、外部の電源装置80に電気的に接続されて接地されており、制御基板84と電源装置80を繋ぐ給電配線90を用いて、ベース部材18の接地回路が構成されている。なお、ベース部材18の表面には、耐久性等を考慮して、カチオン塗装等が施されることが望ましいが、ベース部材18における接地側の電線108bの接続部分は、カチオン塗装等が部分的に取り除かれている。尤も、このようなベース部材18の表面処理は必須ではなく、接地側の電線108bがベース部材18へ電気的に導通されていれば良い。また、本実施形態では、ベース部材18が加速度センサ86に対して接地側の電線108bで接続されているが、ベース部材18が制御基板84上の接地側の通電ラインに接続されることで、ベース部材18の接地回路が形成されていても良い。
【0057】
なお、能動型制振器10は、例えば、自動車の車室空間を構成する部材(制振対象部材)に取り付けられている。より詳細には、固定子12のベース部材18を構成する取付部材32が、自動車の荷物室の壁面を形成する部材にボルトによって固定されることにより、能動型制振器10の固定子12が車両に固定されている。このように、能動型制振器10が、外部からの異物の侵入が生じ難い車室空間に配設されることによって、制御ユニット82に対する異物の付着と、それに基づく制御ユニット82の故障が、より効果的に回避される。
【0058】
このような本実施形態に従う構造の能動型制振器10によれば、制御基板84と加速度センサ86で構成された制御ユニット82が、外部空間に対して密閉されたベース部材18の収容空所96に配設されている。それ故、制御ユニット82に水や塵埃等の異物が付着するのを防ぐことができて、故障の発生等の不具合を回避することができる。しかも、能動型制振器10の固定子12を車両に固定するために用いられるベース部材18を利用して、制御ユニット82のケースが構成されていることから、部品点数の増加や構造の複雑化も防止される。
【0059】
また、制御ユニット82が、ベース部材18の収容空所96に配設されて、能動型制振器10に内蔵されていることにより、制御ユニット82をコイル20の近くに配置することができる。それ故、制御ユニット82とコイル20を繋ぐ配線(接続用配線106)の長さを短くすることができて、配線の重量を軽減することで、能動型制振器10を装着された車両の軽量化が図られる。
【0060】
しかも、取付部材32および支持部材30を上下に直線的に貫通する配設孔104が形成されており、コイル20と制御基板84を繋ぐ接続用配線106が配設孔104を通じて延びている。それ故、接続用配線106の長さをより効果的に短くすることができて、軽量化等の効果を有利に得ることができる。
【0061】
さらに、制御基板84およびコイル20との接続部分を含む接続用配線106の全体が、ベース部材18で囲まれた領域に配置されており、外部空間から隔てられていることから、接続用配線106にはシール性能等が必要とされない。それ故、簡単な構造によって接続用配線106の耐久性が確保されて、特に接続用配線106自体の構造の簡易化やコストの低減が図られる。
【0062】
また、制御ユニット82を収容する収容空所96は、ベース部材18に形成された凹所38がカバー部材94で覆われることによって、形成されている。これによれば、密閉された収容空所96を容易に形成することができて、制御ユニット82を異物の付着等から保護することができる。
【0063】
しかも、ベース部材18と制御基板84およびカバー部材94と制御基板84の重ね合わせ面間に、第1シール部材100が介装されると共に、ベース部材18およびカバー部材94と外部コネクタ88との重ね合わせ面間に、第2シール部材100が介装されることによって、収容空所96が外部空間に対して密閉されている。このように、ベース部材18およびカバー部材94と、制御基板84および外部コネクタ88との重ね合わせ面間に、シール部材100,102を配した簡単な構造によって、収容空所96の密閉性が確保される。
【0064】
また、制御ユニット82が、制御基板84と加速度センサ86を含んで構成されており、それら制御基板84と加速度センサ86が何れも収容空所96に配設されて、相互に近い位置に配設されている。それ故、制御基板84と加速度センサ86を繋ぐ配線の長さを短くすることができて、加速度センサ86から制御基板84に送られる信号の遅れや劣化が低減される。
【0065】
また、制御基板84を介して電源装置80に接続されて接地された加速度センサ86が、ベース部材18に対して接地側の電線108bで接続されることにより、ベース部材18の接地回路が構成されている。これにより、短い接地用の配線でベース部材18を接地することができて、コイル20への通電によって生じるノイズが外部の機器(ラジオ等)に悪影響を及ぼすのを、軽量且つ簡単な配線で防ぐことができる。
【0066】
また、ベース部材18およびカバー部材94と、ハウジング50が、何れも導電性材料で形成されていると共に、カバー部材94およびハウジング50が、接地されたベース部材18に導通されている。これにより、コイル20への通電に起因するノイズに対してシールド効果を有利に得ることができて、外部の機器への悪影響が回避される。
【0067】
また、可動子14が固定子12のコイル20に対して外挿されて大径とされていることから、可動子本体48およびハウジング50の質量を充分に大きく確保することができる。それ故、可動子14自体の質量によって、特別なマス部材を追加することなく、能動的な制振効果を有効に得ることができて、部品点数の削減や構造の簡易化が図られる。
【0068】
また、電磁式アクチュエータ11を制振対象部材に取り付けるための固定力を考慮して大きな強度が設定される取付部材32に対して、ストッパ部42および取付片44を設けたことにより、それらストッパ部42および取付片44における強度を容易に確保することができる。
【0069】
特に本実施形態では、取付部材32から電磁式アクチュエータ11側の下方に向かって突出してストッパ部42を形成する一方、取付部材32から電磁式アクチュエータ11と反対側の上方に向かって突出して取付片44を形成した。これにより、取付部材32の上側領域と下側領域をそれぞれ効率的に利用して、ストッパ部42や取付片44における形状や大きさ等の設計自由度を有利に確保することができる。
【0070】
さらに、取付部材32において、中心軸(加振軸)を挟んだ両側にそれぞれ対向位置するストッパ部42,42と、取付片44,44とが、各対向方向を互いに異ならせた状態で設けられている。特に本実施形態の構造では、ストッパ部42,42の対向方向と取付片44,44の対向方向とが互いに直交している。これにより、ストッパ部42,42と取付片44,44の形成スペースを一層有利に確保することができると共に、例えば取付片44,44における制振対象部材への固定作業等に際して、ストッパ部42,42が作業の邪魔になるといった不具合も回避され得る。
【0071】
また、本実施形態では、取付部材32において、中心軸を挟んだ両側で上方に向かって突出して形成された取付片44,44の間に制御ユニット82の収容空所96が形成されている。それ故、制御ユニット82の収容空所96が、上方に突出する取付片44,44間のスペースを効率的に利用して、且つ両側の取付片44,44によって保護された構造をもって、形成され得る。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、可動子14がマス部材とされていると共に、可動子14と固定子12が支持ゴム弾性体74で弾性連結されて、能動型制振器10が構成されていたが、本発明は、能動型制振器10を構成する電磁式アクチュエータ以外にも適用され得る。即ち、例えば、特開2009−92235号公報等に示された流体封入式防振装置に用いられる電磁式アクチュエータとして、制御ユニットを内蔵した本発明に従う構造の電磁式アクチュエータを採用することも可能である。
【0073】
また、前記実施形態では、コイル部材16が上下2段のコイル20を備えた構造とされていたが、コイル20は、1つだけでも良いし、3つ以上が上下に並んで配設されていても良く、可動子14側の永久磁石52および磁路形成部材54,56はコイル20の数に対応して配設される。
【0074】
また、前記実施形態では、可動子14側の質量を大きく確保する等の目的で、可動子14が固定子12のコイル20に対して外挿された構造とされているが、本発明は、例えば、特開2009−92235号公報等に示されているように、可動子14が固定子12のコイル20の中心孔に挿入配置された構造の電磁式アクチュエータにも、適用可能である。
【0075】
また、制御ユニットは、必ずしも制御基板84と加速度センサ86を含んで構成されていなくても良く、例えば、制御基板84だけで構成されて、加速度センサ86は収容空所96の外に配置されていても良い。更に、コイル20への通電を制御する通電制御手段として、基板上に電子部品が実装された制御基板84が例示されているが、通電制御手段は電子基板に限定されるものではない。
【0076】
また、前記実施形態では、取付部材32が略矩形皿形状とされており、ストッパ部42が一方の対向辺(一対の短辺)にそれぞれ形成されていると共に、取付片44が他方の対向辺(一対の長辺)にそれぞれ形成されているが、ストッパ部42や取付片44は、一対が対向して設けられている必要はなく、例えば3つ以上が設けられていても良いし、1つだけが設けられていても良い。
【0077】
また、本発明は、自動車用の電磁式アクチュエータおよび能動型制振器にのみ適用されるものではなく、例えば、自動二輪車や産業用車両、鉄道用車両等に用いられる電磁式アクチュエータおよび能動型制振器にも、適用され得る。
【符号の説明】
【0078】
10:能動型制振器、11:電磁式アクチュエータ、12:固定子、14:可動子、18:ベース部材、20:コイル、30:支持部材、32:取付部材、38:凹所、42:ストッパ部、44:取付片、74:支持ゴム弾性体、82:制御ユニット、84:制御基板(通電制御手段)、86:加速度センサ、90:給電配線、94:カバー部材、96:収容空所、104:配設孔、106:接続用配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを備えた固定子と、該固定子に対する相対変位を許容された可動子とを備えており、該コイルへの通電によって該可動子が加振変位されるようにした電磁式アクチュエータにおいて、
前記コイルを支持して前記固定子を構成するベース部材が設けられて、該ベース部材が制振対象部材に取り付けられる取付部材を含んで構成されており、該取付部材には前記可動子との当接によって該可動子の該固定子に対する相対変位量を制限するストッパ部が設けられていると共に、該取付部材には該制振対象部材に固定される取付片が設けられている一方、
該ベース部材には収容空所が設けられていると共に、該収容空所に対して該コイルへの通電を制御する制御ユニットが収容配置されていることを特徴とする電磁式アクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルと前記制御ユニットを電気的に接続する接続用配線が設けられていると共に、前記ベース部材には該コイルを支持する支持部材が設けられており、該接続用配線の配設孔が該支持部材を貫通して形成されている請求項1に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ベース部材に形成された凹所が、カバー部材で覆蓋されることによって前記収容空所が形成されている請求項1又は2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御ユニットに給電する給電配線を用いて、前記ベース部材の接地回路が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載された電磁式アクチュエータの前記固定子と前記可動子が支持ゴム弾性体によって弾性連結されている能動型制振器。
【請求項6】
筒状部を有する前記可動子に対して前記コイルを支持する前記ベース部材が挿入されており、それら可動子とベース部材が前記支持ゴム弾性体によって弾性連結されている請求項5に記載の能動型制振器。
【請求項7】
前記ベース部材が前記固定子を制振対象部材に取り付けるための取付部材を含んで構成されている請求項5又は6に記載の能動型制振器。
【請求項8】
前記固定子が車両の車室を形成する部材に固定されている請求項5〜7の何れか1項に記載の能動型制振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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