説明

電磁操作器

【課題】高圧開閉装置に付ける電磁操作器は、大きな投入及び引きはずし操作力が必要であったため投入又は引きはずしコイルが大形化するという課題があった。
【解決手段】開閉装置の遮断又は投入方向に移動可能に保持されたシャフト1に接続されるプランジャ10と、投入コイル6と、引きはずしコイル7と、ヨーク9と、呼び鉄2と、複数のスプリング11と、永久磁石5と、プランジャ10の周囲を取り囲み、投入及び引きはずしコイル6、7の間に配置され、かつ、ヨーク9及び/又はプランジャ10との間にギャップを有するリング状磁性体16であって、引きはずし動作開始時に、引きはずしコイル7の起磁力により生じる磁束の経路をプランジャ10、ヨーク9と共に構成し、かつ、この磁束の影響を受けて永久磁石5が生ずる磁束の経路をプランジャ10、ヨーク9、呼び鉄2と共に構成するリング状磁性体16とを有する電磁操作器30を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置用電磁操作器に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器、断路器、開閉器等の開閉装置には、遮断又は投入動作をするための操作器が備え付けられており、その操作器には、電動バネ、油圧式及び空気式などの種類がある。
【0003】
これらの操作器は、部品数が多く、リンク機構が複雑になるために製造コストが高い。そのため、リンク機構を簡素化した操作器として、例えば、投入動作と同時に蓄積された遮断バネを、励磁コイルを貫通するプランジャ(可動鉄芯)により開放して接点を解離する電磁操作器が提案されている(特許文献1)。また、投入動作用コイル及び遮断動作用コイルを貫通するプランジャにより、投入及び遮断動作を行うプランジャ型電磁操作器が提案されている(特許文献2)。このように、励磁コイルとプランジャとから構成され、かつ、励磁コイルが生じる磁束と、プランジャ内の渦電流により生じる磁束との反発によりプランジャを移動させることを原理とするプランジャ型電磁石は、励磁コイルとプランジャとの間のギャップが長い状態で大きな磁力を有する。
【0004】
さらに、この長ギャップ状態で大きな磁力を発生するプランジャ型電磁石を、動作開始直後の長ギャップ状態で利用し、短ギャップ状態で大きな磁力を発生する平板型電磁石を、動作完了直前の短ギャップ状態で利用する電磁操作器が提案されている(特許文献3)。
【0005】
また、プランジャ動作開始時に、遅延励磁コイルを用いて、吸引励磁コイルが発生する磁束を打ち消す磁束を発生させ、吸引励磁コイル内に配置されるプランジャに飽和磁束密度近傍まで磁束を溜め込むことで、吸引励磁コイルの小型化を図る遅延型電磁石装置が提案されている(特許文献4)。図1に示すように、この吸引励磁コイル101は、このコイル101の最大磁気力(飽和磁束密度近傍で発生する磁気力)を発生させるために遅延励磁コイル102により吸引励磁コイル101の移動を妨げ、プランジャ103の吸引動作を遅延させ、吸引励磁コイル101の最大磁気力でプランジャ103を吸引するものである。
【0006】
さらに、開路バネ201と、開路コイル202、閉路コイル203、アーマチュア204、及び永久磁石205を用いた電磁アクチュエータが提案されている(特許文献5及び6)。図2に示すように、この電磁アクチュエータは、開路時には、アーマチュア204の位置を開路バネ201で保持しているが、閉路コイル203が励磁すると、閉路コイル203及び永久磁石205の磁気力により、アーマチュア204が移動し、閉路状態となり、永久磁石205で閉路状態を維持する。
【0007】
【特許文献1】特開平5−234475号公報
【特許文献2】特表平10−505940号公報
【特許文献3】特開2002−217026号公報
【特許文献4】特開2005−353321号公報
【特許文献5】特開2002−270423号公報
【特許文献6】特開2005−79009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような従来のプランジャ型、平板型、プランジャ平板併用型の電磁石、永久磁石、及びバネを採用した電磁操作器は、いずれも6kVクラス未満の真空遮断器用の操作器であり、投入又は引きはずし動作時に、10mm程度のストローク長を有するものである。しかし、例えばガス遮断器や6kVクラス以上の電圧階級の高い真空遮断器では、その特性から遮断部の極間を50mm以上とする必要がある。したがって、電磁操作器を、ガス遮断器や6kVクラス以上の電圧階級の高い真空遮断器に適用する場合、動作ストロークの延長や、操作力の増大が必要となるため、従来の電磁操作器には、以下のような課題がある。
【0009】
動作ストロークを延長し、かつ、引きはずし操作力を向上させるために、車のサスペンションのように引きはずしバネを大きくする必要があり、例えば、図2に示すような開路バネ201をさらに大型化する必要がある。しかし、このようなバネの大形化により、電磁操作器が大型化してしまい、電磁操作器を組み込む開閉装置の大形化の要因となる。
【0010】
また、このような引きはずしバネの大形化により、投入操作に大きな磁気力を必要とし、かつ、投入完了後の投入位置保持力を必要とする。このような投入位置保持のために、例えば、図2に示すような永久磁石を大形化する必要になる。投入位置保持のための永久磁石の大形化は、電圧階級の高い真空遮断器等に必要とされる大きな引きはずし操作力に加えて、永久磁石の磁気力を超える引きはずし操作力が必要になる。
【0011】
さらに、上述のような操作力の向上により、投入又は引きはずしで生じるプランジャのストッパ等への衝突に際して発生する衝撃力が、永久磁石を破損させ、永久磁石を減磁する。
【0012】
また、引きはずし操作に必要なバネの特性は、引きはずし開始時に大きな復元力が必要となるが、引きはずし終了時は、衝撃力の低減を図るために復元力を小さくする等のような特性が必要となり、そのような特性は、単なる線形のバネ係数を有するバネでは実現できない。
【0013】
投入位置保持のための永久磁石の大形化は、メンテナンス時に、各部品を永久磁石の磁力から引きはずすための大きな力が必要となる。そのような大きな力は、人力では不可能であるため、簡易にメンテナンスを行うことができなくなる。
【0014】
したがって、本発明は、上記課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するために、本発明に係る電磁操作器は、開閉装置の遮断又は投入方向に移動可能に保持されたシャフトに接続されるプランジャと、プランジャの周囲に配置され、かつ、プランジャを投入方向に電磁力で移動させる投入コイルと、プランジャの周囲及び投入コイルの遮断方向側に配置され、かつ、プランジャを投入位置に保持する永久磁石の磁気回路を切り替えることで遮断方向に移動させる引きはずしコイルと、投入及び引きはずしコイルの外周面を覆うヨークと、プランジャの投入方向の移動を止める呼び鉄と、プランジャに対して遮断方向に復元力を有し、かつ、ヨークの遮断方向の端部に配置される複数のスプリングと、ヨーク及び呼び鉄の間に配置される永久磁石であって、該永久磁石は、投入動作完了時にプランジャ、ヨーク、呼び鉄に投入動作完了時永久磁石磁束を生じる永久磁石と、プランジャの周囲を囲み、投入及び引きはずしコイルの間に配置され、かつ、ヨーク及び/又はプランジャとの間にギャップを有するリング状磁性体であって、該リング状磁性体は、引きはずし動作開始時に、引きはずしコイルの起磁力により生じる引きはずし開始時磁束の経路をプランジャ、ヨークと共に構成し、かつ、該引きはずし開始時磁束により、投入動作完了時永久磁石磁束から変更される引きはずし開始時永久磁石磁束の経路をプランジャ、ヨーク、呼び鉄と共に構成するリング状磁性体とを提供する。
【0016】
さらに、本発明に係る電磁操作器においては、リング状磁性体は、投入動作開始時に、投入コイルおよび永久磁石の起磁力によりプランジャ、リング状磁性体、ヨークを通る第1の投入開始時磁束の経路、および、プランジャ、リング状磁性体、ヨーク、呼び鉄を通る第2の投入開始時磁束の経路を構成することができる。
【0017】
また、本発明に係る電磁操作器においては、複数のスプリングは、同じバネ係数の組毎にシャフトの周囲に対向配置され、かつ、バネ係数は、2種類以上にすることができる。
【0018】
さらに、本発明に係る電磁操作器においては、プランジャの遮断方向側は平板部であり、投入動作完了時は、該平板部がヨークと接触することができ、また、電磁操作器は、ヨーク及び呼び鉄を固定する非磁性体の固定板と、ヨークと呼び鉄の間に挿入可能な引きはずしリングと、を有し、固定板および引きはずしリングは、永久磁石が形成する投入動作完了時永久磁石磁束を、固定板の周りのヨーク及び呼び鉄からなる引きはずしリング挿入時永久磁石磁束を構成することができる。
【0019】
また、本発明に係る電磁操作器においては、投入又は引きはずし動作終了時にプランジャが生ずる衝撃力を緩衝するための緩衝器を、シャフトの周囲に配置することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る電磁操作器においては、開閉装置の遮断又は投入方向に移動可能に保持されたシャフトに接続された補助プランジャと、補助プランジャに対して遮断方向に復元力を有する復帰スプリングと、補助プランジャを投入方向に電磁力で移動させるための投入補助コイルと、有することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電磁操作器において、ヨーク及び/又はプランジャとの間にギャップを有し、かつ、投入及び引きはずしコイルの間に配置されるリング状磁性体であって、該リング状磁性体は、引きはずし動作開始時に、引きはずしコイルの起磁力によりプランジャ、リング状磁性体、ヨークを通る引きはずし開始時磁束の経路、および、永久磁石の起磁力によりプランジャ、リング状磁性体、ヨーク、呼び鉄を通る引きはずし開始時永久磁石磁束の経路を構成するリング状磁性体と、を有するので、投入保持力の低下を生じさせ、遮断動作の迅速化、引きはずしバネ、引きはずしコイルの小型化を可能にする。
つまり、引きはずし時には、引きはずしコイル直下に該リングを有するため、引きはずしコイル周囲の磁気回路長が短くなり、引きはずしコイルの電流の立ち上がりが早くなるとともに、高速に磁気回路を引きはずし完了時磁束と、引きはずし終了時永久磁石磁束に切り分けすることができ、プランジャ平板部での永久磁石の磁束の打消しが効率化する。
【0022】
さらに、本発明によれば、リング状磁性体は、投入動作開始時に、投入コイルおよび永久磁石の起磁力によりプランジャ、リング状磁性体、ヨークを通る第1の投入開始時磁束の経路、および、プランジャ、リング状磁性体、ヨーク、呼び鉄を通る第2の投入開始時磁束の経路を構成するリング状磁性体であるので、投入開始時にリング状磁性体に形成される磁束経路により、磁気抵抗を低減することで、投入動作の迅速化と、投入コイルの小型化を可能にする。
【0023】
また、本発明によれば、引きはずし操作力を向上させるために、バネ係数の異なる複数のスプリングを有し、引きはずし開始時に大きな復元力を、引きはずし終了時に、衝撃力の低減を図るために復元力を小さくする特性を有することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、プランジャの遮断方向側は平板部であり、投入動作完了時は、該平板部がヨークと接触することで、磁気抵抗を下げることができる。
【0025】
電磁操作器は、さらに、投入又は引きはずし動作終了時にプランジャが生ずる衝撃力を緩衝するための緩衝器により、永久磁石への衝撃力を緩衝することができる。
【0026】
また、投入終了時に、永久磁石の起磁力によりヨークと呼び鉄の間に磁気回路を生じさせる引きはずしリングにより、各部品を永久磁石の磁気力から自由にすることで、人力でプランジャを引きはずすことができる。
【0027】
さらに、バネの小型化により長手方向の長さを最小限にすることで、この長手方向の短縮化によるスペースに、予備投入コイルを設けることで、投入又は引きはずし動作の信頼性を上げることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0029】
図3は、本発明の一実施形態による電磁操作器の断面図を示す。図3の左側は、投入状態にある電磁操作器を示し、右側は、遮断状態にある電磁操作器を示す。
【0030】
本発明の一実施形態による電磁操作器30は、投入コイル6と、引きはずしコイル7と、投入コイル6及び引きはずしコイル7を収納するボビン8と、投入コイル6と引きはずしコイル7の中間に配置される磁性体のリング16と、ボビン8の中心軸上に沿って磁気力により移動するプランジャ(可動鉄芯)10と、ボビン8の中心軸にあり開閉部と連結されるシャフト1と、シャフト1を中心に貫通させ磁気力によりプランジャ10の吸引を行う呼び鉄2と、投入コイル6及び引きはずしコイル7の上下面及び外周面を覆うように設けられるヨーク(固定鉄芯)9と、ヨーク上面に配置される引きはずしバネ11と、引きはずしバネ11をプランジャに固定するバネケース12と、呼び鉄2及びヨーク9の間に配置される永久磁石5と、プランジャ10を遮断位置に止めるためのストッパ14と、ストッパ14とヨーク9を連結するストッパ押さえ15と、を有する。
【0031】
また、電磁操作器30は、呼び鉄2及びヨーク9の間に、呼び鉄2とヨーク9を固定する固定板4と、永久磁石5を取り外すために使用する引きはずしリング3と、を有する。さらに、電磁操作器30は、引きはずし(遮断)時のプランジャ10がストッパ14に衝突する際の衝撃を緩衝するために、プランジャ10には緩衝器13が備え付けられる。
【0032】
図3の左側で示される投入状態の電磁操作器においては、プランジャ10は、呼び鉄2と接触して投入位置に配置される。このとき、永久磁石5の磁気力により、プランジャ10は呼び鉄2に引き付けられて、引きはずしバネ11は、縮められている。
【0033】
遮断時には、引きはずしコイル7が励磁することでプランジャ10内に発生する磁気力と、引きはずしバネ11の復元力により、プランジャ10が図3の右側に示すように遮断位置に移動する。
【0034】
また、投入状態に戻す場合は、永久磁石5の磁気力に加えて、引きはずしコイル7の巻線と逆方向に巻線した投入コイル6が励磁することでプランジャ10内に発生する磁気力により、プランジャ10を投入位置に戻す。
【0035】
ボビン8は、投入コイル6及び引きはずしコイル7が励磁することでプランジャ10内に発生する磁気力により、効率的にプランジャ10内の磁束を増加させるために、透磁率の高い物質で構成されるのが好ましい。例えば、そのような物質として、フェノール樹脂等のプラスチックがある。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態による電磁操作器の上面図を示す。図示のように、電磁操作器30は、6つの引きはずしバネ11と、2つの緩衝器13をそれぞれ対向配置でバネケース12に配置する。
【0037】
従来は、引きはずし操作力を向上させるために、車のサスペンションのように引きはずしバネを大きくする必要があったが、図示のように、復元力の小さな小型のバネ(従来使用されるバネに比べて長さ:1/4〜1/6、径:1/2〜1/4)を複数個有することにより、長手方向の長さを最小限にすると共に大きな引きはずし操作力を発生させることが可能となる。これにより、電磁操作器の小型化、ならびに、それを備える電圧階級の高い開閉装置の小型化も可能になる。
【0038】
また、6つの引きはずしバネ11は、バネ係数又は自由バネ長が異なる少なくとも2〜3種類のバネに分けられる。このように、線形のバネ係数を有するバネを複数種類備えることにより、引きはずし開始時や、引きはずし完了時に比較的バネ係数を大きくすることで、プランジャ10がストッパ14に当たる時の衝撃力の低減を図ること等が可能となり、これにより、投入又は引きはずしで生じるプランジャのストッパや呼び鉄等への衝突に際して生ずる衝撃力による永久磁石の減磁を回避することが可能となる。
【0039】
さらに、バネ係数の同じバネを複数個対向又は等配配置とすることで、異なるバネ係数のバネを配置した場合でも、バネの変位によるシャフトの水平方向への変位を抑えることも可能である。
【0040】
このように、複数のバネ11と緩衝器13がバネケース12によりプランジャ10と小型・一体(ユニット)化される。また、引きはずしバネ11は、異線形コイルスプリングを複数本使用することにより、短圧縮で高いバネ係数が得られる。さらに、バネの本数、バネ長、線径、巻径を個々に自由に組合せて、数本のバネをトータルに最適なバネ係数を容易に得ることができる。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態による電磁操作器における電磁操作器投入完了時又は電磁操作器投入開始時の磁束を示す図である。図5の左側は、電磁操作器投入完了時における投入コイル非励磁状態の磁束を示し、図5の右側は、電磁操作器投入開始時における投入コイル励磁状態の磁束を示す。
【0042】
図5左側の電磁操作器投入完了時では、投入コイル6が非励磁であるため、永久磁石5の起磁力により、投入動作完了時永久磁石磁束17が流れる。この磁気回路では、プランジャ10の平板部分及びヨーク9の磁気抵抗は小さいが、リング16は、プランジャ10及びヨーク9に対してわずかなエアギャップがあるため、リング16を経由する経路の磁気抵抗は相対的に非常に高い。このため、投入動作完了時永久磁石磁束17は、リング16を流れずプランジャ10の平板部分、ヨーク9及び呼び鉄2を流れる。
【0043】
図5右側の電磁操作器投入開始時では、投入コイル6が励磁されているため、永久磁石5及び投入コイル6が起磁力を発生し、投入開始時磁束18が流れる。この磁気回路では、図5左側のようにプランジャ10の平板部分が呼び鉄2と接触する部分が無いため、エアギャップのあるリング16を介した磁気回路と、プランジャ10とヨーク9のみを介した磁気回路からなる回路を、投入開始時磁束18が流れる。この永久磁石5及び投入コイル6による磁気力が、引きはずしバネ11を縮めながら、プランジャ10を動かし、プランジャ10を投入位置に戻し、プランジャ10と呼び鉄2が接触すると、投入動作は完了し、図5左側に示すように投入コイル6を非励磁状態にする。
【0044】
従来は、例えば図1に示すように、投入コイル6と引きはずしコイル7の間の経路は、最大磁気力を発生させるため、互いの磁束を打ち消すために使用されており、そのため遮断又は投入動作に遅延を生じていた。しかし、本発明の電磁操作器では、リング16により、投入開始時にリング16を介した磁気回路を構成することにより、磁気抵抗を低減し、同じ起磁力でより大きな磁束及び磁気力を発生させることができ、結果として、投入速度の高速化が可能になる。
【0045】
また、図2に示すように、従来は、電圧階級の高い開閉装置に適用するために必要な操作力増大、スピードアップ、ストロークの増大にためには、引きはずしバネの大形化が必要となり、それにより投入操作力の向上が必要であったが、リング16により、投入開始時にリング16を介した磁気回路を構成することにより、磁気抵抗を低減し、同じ起磁力でより大きな磁束及び磁気力を発生させることができ、これにより、投入コイル6の小型化が可能になる。さらに、磁気抵抗の低減は、投入コイル6に流れる電流の立ち上がり時間を短縮化し、磁束漏れ等を最小限に抑えること等により、投入動作のためのエネルギーの低減にもなる。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態による電磁操作器における電磁操作器引きはずし開始時又は電磁操作器引きはずし完了時の磁束を示す図である。図6の左側は、電磁操作器引きはずし開始時における引きはずしコイル励磁状態の磁束を示し、図6の右側は、電磁操作器引きはずし完了時における引きはずしコイル励磁状態の磁束を示す。
【0047】
図6左側の電磁操作器引きはずし開始時では、引きはずしコイル7が励磁されるが、永久磁石5も磁気力を発生しているため、引きはずしコイル7はリング16を介した経路に、引きはずし開始時磁束19が発生する。一方、図5左側で示した電磁操作器投入完了時の永久磁石5が起磁力による投入動作完了時永久磁石磁束17は、引きはずし開始時磁束19の生成により、リング16を経由する引きはずし開始時永久磁石磁束20に変更される。この永久磁石の磁気回路は、エアギャップを介した回路となるため、磁気抵抗が大きく、そのため引きはずし開始時永久磁石磁束20は、投入動作完了時永久磁石磁束17と比べて磁束密度が低下し、それにより、投入位置保持の磁気力が低下する。よって、引きはずしコイル7の励磁により、引きはずしの磁気力が発生し、同時に、永久磁石5による投入位置保持の磁気力が低減することで、引きはずしコイル7による磁気力と、引きはずしバネ11の復元力により、引きはずし操作が開始する。そして、この開始時永久磁石磁束の経路は、引きはずし動作終了時においても同じ経路を通過する引きはずし終了時永久磁石磁束22となり、このとき、呼び鉄2とプランジャ10間の大きなエアギャップにより、永久磁石5の磁気力は、引きはずしバネ11の復元力と比較して十分に小さいため、引きはずし位置が引きはずしバネ11によって維持される。
【0048】
このように、引きはずしコイル7の起磁力は、リング16を介した引きはずし開始時磁束19により、磁気回路を短く構成し磁気抵抗を低減することで大きな引きはずしの磁気力を発生することに加え、永久磁石5によるプランジャ10のヨーク9への磁束経路を、投入動作完了時永久磁石磁束17から引きはずし開始時永久磁石磁束20へ変更させることで、永久磁石5による投入位置保持の磁気力を低減させる。
【0049】
これにより、図2に示すように、従来は、高圧の開閉装置に適用するために必要な操作力増大、スピードアップ、ストロークの増大のためには、引きはずしバネの大形化が必要となり、投入完了後の投入位置を保持する磁石の大形化と、それにより引きはずしの操作力の向上が必要であったが、リング16で発生する引きはずしコイル7の励磁による磁束19により、永久磁石5の磁束経路を変更することにより投入位置保持の磁気力を弱めることで、引きはずしの操作力を少なくすることが可能にする。
【0050】
また、図1に示すように、従来は、投入コイル6と引きはずしコイル7の間の経路は、最大磁気力を発生させるために、互いの磁束を打ち消すために使用されており、そのため遮断又は投入動作に遅延を生じていたが、本発明の電磁操作器では、リング16で発生する引きはずしコイル7の励磁による磁束19により、永久磁石5の磁束経路を変更することにより投入位置の操作力を瞬時に弱めることで、引きはずし動作時間を短くすることが可能になる。さらに、永久磁石5による磁気力の低減がもたらす動作時間の短縮化は、磁束漏れ等を少なくさせ、引きはずし動作のためのエネルギー低減にもなる。
【0051】
上述のように、リング16は、投入開始時に磁束経路を構成し、磁気抵抗を低減することで、投入動作の迅速化と、投入コイル7の小型化を可能にすると共に、遮断開始時には、永久磁石5による磁気回路を変更することで、投入保持力の低下を生じ、遮断動作の迅速化と、引きはずしコイル6の小型化を可能にする。
【0052】
さらに、これらの特徴は、リング16とヨーク9又はプランジャ10とのエアギャップの長さによって調整することも可能である。例えば、リング16とヨーク9又はプランジャ10とのエアギャップを大きくすれば、遮断動作においては、引きはずし開始時の永久磁石5の磁気抵抗が大きくなり必要な操作力は小さくなるが、引きはずしコイルの形成する磁気抵抗も大きくなるため、引きはずしコイルの発生する磁気力は低下する。また、投入動作においては、リング16とヨーク9又はプランジャ10とのエアギャップを大きくすれば、投入開始時の磁気回路の並列化による磁気抵抗の低減効果は小さくなる。
【0053】
したがって、取り付け対象となる開閉装置により電磁操作器30が必要となる操作力、操作速度、ストロークに基づいて、引きはずしバネ11、引きはずしコイル7、及び投入コイル6を小型化する最適なエアギャップが選択される。例えば、開閉装置に必要な操作力等に基づいて、まず、引きはずし時に、引きはずし時永久磁石磁束経路20の磁束密度の低下による、引きはずしバネ11、引きはずしコイル7の操作力の低下を実現するエアギャップを求め、次に、そのエアギャップによりリング16の磁気抵抗の低下が投入コイル6の小型化に影響しないか等の検討を行う。この検討結果を、電磁操作器全体の小型化、コスト、エネルギー消費量等から最適化することで、最適な引きはずしバネ11、引きはずしコイル7、及び投入コイル6が選定され得る。
【0054】
また、リング16とヨーク9又はプランジャ10とのギャップをどのように大きくしても、投入完了時の磁束17の経路は維持され、永久磁石5による投入位置保持力が変更されることは無いという特徴がある。
【0055】
図7は、本発明の一実施形態による引きはずしリング操作時の電磁操作器の磁束を示す図である。図7は、投入完了時の電磁操作器における永久磁石5が形成する磁束を表す。図7の左側は、引きはずしリング3を、電磁操作器から引きはずした場合に、永久磁石5による投入動作完了時永久磁石磁束17を表す。図7の右側は、引きはずしリング3を、電磁操作器にはめ込んだ場合に、永久磁石5による引きはずし時磁束23を表す。
【0056】
図7の右側のように、引きはずしコイル3を呼び鉄2とヨーク9の間に入れ込むと、非磁性体からなる固定板4の周りに、永久磁石5を起磁力とする引きはずし時磁束23が流れる磁気回路が形成される。これは、プランジャ10を通る磁気回路と比べて、固定板4の周りの磁気回路は、磁気抵抗が低いためである。これにより、プランジャ10を呼び鉄2に吸引する磁気力がなくなり、プランジャ10を人力により取り外すことが可能になる。
【0057】
従来は、図2に示すように、電磁操作器に取付けられる永久磁石による磁気力のため、プランジャを人力で取り外すことは極めて困難であったが、本発明に係る電磁操作器においては、永久磁石5の磁気回路を引きはずしリング3により変えることで、プランジャ10を電磁操作器から人力で取り出すことが可能になる。
【0058】
図8は、本発明の一実施形態によるサブコイル付きの電磁操作器の断面図である。上述した電磁操作器は、さらに、補助呼び鉄24、補助投入コイル25、ボビン26、補助プランジャ27、復帰バネ28を備える補助ユニットを有することが可能である。この補助ユニットは、プランジャ10の投入又は引きはずし動作が所定の動作時間内に動作しない等の動作不良時の異常対応用として投入又は引きはずし動作を補助するために利用可能である。
【0059】
従来は、引きはずし操作力を向上させるために、車のサスペンションのように引きはずしバネを大きくする必要があったが、図示のように、復元力の小さなバネを複数個有することにより、長手方向の長さを最小限にすることが可能となる。この長手方向の短縮化による余剰スペースに、上述の補助ユニットを設けることで、投入又は引きはずし動作の信頼性を上げることも可能である。
【0060】
このように、本発明による電磁操作器は、従来よりも小型であり、かつ、投入又は引きはずし動作速度が速いので、電圧階級の高い開閉機器にも適用が容易であり、運転信頼性も向上させるものである。また、このような電磁操作器は、電圧階級の高い開閉機器に限定することなく電気関連設備に広範囲に適用されることが期待されることから、電気関連設備全体への信頼性向上に大きく貢献し、電力産業界において多大な利益をもたらす。
【0061】
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素を組合せること、その変形及びバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来の電磁操作器の回路図である。
【図2】従来の電磁操作器の回路図である。
【図3】本発明の一実施形態による電磁操作器の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による電磁操作器の上面図である。
【図5】本発明の一実施形態による電磁操作器における電磁操作器投入完了時又は電磁操作器投入開始時の磁束を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による引きはずしコイル励磁時の電磁操作器の磁束を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による引きはずしリング操作時の電磁操作器の磁束を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態によるサブコイル付きの電磁操作器の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 シャフト
2 呼び鉄
3 引きはずしリング
4 固定板
5 永久磁石
6 投入コイル
7 引きはずしコイル
8 ボビン
9 ヨーク
10 プランジャ
11 引きはずしバネ
12 バネケース
13 緩衝器
14 ストッパ
15 ストッパ押さえ
16 リング
17 投入動作完了時永久磁石磁束
18 投入開始時磁束
19 引きはずし開始時磁束
20 引きはずし開始時永久磁石磁束
21 引きはずし完了時磁束
22 引きはずし終了時永久磁石磁束
23 投入位置の永久磁石の磁束
24 補助呼び鉄
25 補助投入コイル
26 ボビン
27 補助プランジャ
28 復帰バネ
30 電磁操作器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置の遮断又は投入方向に移動可能に保持されたシャフトに接続されるプランジャと、
前記プランジャの周囲に配置され、かつ、前記プランジャを投入方向に電磁力で移動させる投入コイルと、
前記プランジャの周囲及び前記投入コイルの遮断方向側に配置され、かつ、前記プランジャを、投入位置保持磁束を打消す方向に電磁力を働かすことにより遮断方向に移動させる引きはずしコイルと、
前記投入及び引きはずしコイルの外周面を覆うヨークと、
前記プランジャを投入方向に吸引する呼び鉄と、
前記プランジャに対して遮断方向に復元力を有し、かつ、前記ヨークの遮断方向の端部に配置される複数のスプリングと、
前記ヨーク及び呼び鉄の間に配置される永久磁石であって、該永久磁石は、投入動作完了時に前記プランジャ、ヨーク、呼び鉄に投入動作完了時永久磁石磁束回路を構成する永久磁石と、
前記プランジャの周囲を囲み、前記投入及び引きはずしコイルの間に配置され、かつ、前記ヨーク及び/又は前記プランジャとの間にギャップを有するリング状磁性体であって、該リング状磁性体は、引きはずし動作開始時に、前記引きはずしコイルの起磁力により生じる引きはずし開始時磁束の経路を前記プランジャ、ヨークと共に構成し、かつ、該引きはずし開始時磁束により、前記投入動作完了時永久磁石磁束から変更される引きはずし開始時永久磁石磁束の経路を前記プランジャ、ヨーク、呼び鉄と共に構成するリング状磁性体と、
を有することを特徴とする電磁操作器。
【請求項2】
前記リング状磁性体は、投入動作開始時に、前記投入コイルおよび永久磁石の起磁力により前記プランジャ、リング状磁性体、ヨークを通る第1の投入開始時磁束の経路、および、前記プランジャ、リング状磁性体、ヨーク、呼び鉄を通る第2の投入開始時磁束の経路を構成するリング状磁性体である請求項1に記載の電磁操作器。
【請求項3】
前記複数スプリングは、同じバネ係数の組毎に前記シャフトの周囲に対向又は等配に配置され、かつ、前記バネ係数又は自由バネ長は、2種類以上である請求項1又は2に記載の電磁操作器。
【請求項4】
前記プランジャの遮断方向側は平板部であり、投入動作完了時は、該平板部が前記ヨークと接触する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁操作器。
【請求項5】
前記電磁操作器は、さらに、投入又は引きはずし動作終了時にプランジャが生ずる衝撃力を緩衝するための緩衝器を、前記シャフトの周囲に配置する請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁操作器。
【請求項6】
前記電磁操作器は、さらに、前記開閉装置の遮断又は投入方向に移動可能に保持されたシャフトに接続された補助プランジャと、前記補助プランジャに対して遮断方向に復元力を有する復帰スプリングと、前記補助プランジャを投入方向に電磁力で移動させるための投入補助コイルと、有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁操作器。
【請求項7】
前記電磁操作器は、さらに、前記ヨーク及び呼び鉄を固定する非磁性体の固定板と、前記ヨークと呼び鉄の間に挿入可能な引きはずしリングと、を有し、
前記固定板および引きはずしリングは、前記永久磁石が形成する投入動作完了時永久磁石磁束を、前記固定板の周りのヨーク及び呼び鉄からなる引きはずしリング挿入時永久磁石磁束を構成する請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁操作器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−53387(P2008−53387A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227135(P2006−227135)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】