説明

電磁放射により生物的サンプルを均等に処理する方法

【課題】電磁放射により混合を受ける流体、例えば血液及び血液成分を含む生物的流体を均等に処理するための方法、装置、装置コンポーネントを提供する。
【解決手段】連続的な流体混合を受ける流体110の電磁放射による処理において、必要な正味の放射エネルギを流体の体積、質量または混合レートに基づいて、またはこれらの変数の任意の組合わせに基づいて計算し、必要な正味の放射エネルギ、放射パワーおよび/または照射時間をアルゴリズムに基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射により生物的サンプルを均等に処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国特許法第119条(e)の規定により、その全体がここで参考文献として含まれる2004年3月15日出願の米国暫定特許出願第60/553,686号明細書に対する優先権を主張している。
【0003】
生物的サンプルの集収、処理、純化は医学的な治療および手順の範囲で重要なプロセスである。治療および/または再注入剤として重要な生物的サンプルには、血液全体および赤血球、血小板、白血球、血漿のような純化された血液成分が含まれている。輸血薬の分野では、1以上の血液成分全体が直接的に、患者の血流に導入され、枯渇または欠損した成分を置換する。血液の蛋白質のような血漿誘導材料の注入もまた、多数の再注入プロセスまたは他の重要な治療で臨界的な役目を果たしている。例えば、血漿誘導の免疫グロブリンは共通して患者の危険にさらされている免疫システムを補充するために与えられる。輸血、注入および移植治療用の純化された生物的サンプルの需要の増加によって、実質的な研究の努力は治療おまび再注入剤として使用される生物的サンプルの有用性、安全性、純化を改良することに向けられている。
【0004】
再注入またはその他の目的に使用される生物的サンプルは現在では過去よりも安全であるが、人間の血液サンプル中の病原体への露出の危険度は依然として大きい。多数の有害な汚染物質が人間の血液の細胞内および細胞外の小部分で検出されている。例えば、34,000件のうち約1件の献血または血液成分のサンプルが、ヒト免疫欠損ウイルスI/II型(HIV)、肝炎BおよびC(HVBおよびHVC)またはヒトTリンパ球向性ウイルスI/II型(HTLV I/II)のようなウイルスの汚染物質で汚染されている。バクテリアの汚染物質は献血または血液成分のサンプルではウイルスの汚染物よりもさらに普通であり、2000件のサンプルのうち約1件程の高さの汚染発生率に達する可能性がある。ドナーの白血球による献血された血液成分の汚染は別の頻繁に遭遇する問題である。
【0005】
これらの既知の危険性に加えて、人間の血液の保管所は、輸血で感染されたウイルス、肝炎Gウイルス、ヒトヘルペスウイルス8、HTLV−2、肝炎A、TTウイルス、SEN−Vマラリア、バべシア、トリパノソーマ、パルボB19ウイルスを含む、通常の血液分離プロトコルで検定されないその他の病原体で日常的に汚染されていることも例証されている。
【0006】
過去10年間にわたって、生物的サンプル、特に献血の血液成分における病原体汚染物に関する危険性を減少するための多くの方法が開発された。これらの材料の汚染に関する危険性を減少するための1つの有望な方法は、生物的サンプル中に存在する病原体の生物的活動を減少させるか、これらの複製を不能にするための化学的または物理的経路を使用することである。過去10年間にわたって、直接的な光還元、脂質膜を有するウイルスを不活性にするための洗剤の使用、化学的処理方法、光の作用で誘起された化学還元技術を含む、生物的流体中の病原体の生物的活動を減少させる種々の方法が開発された。それらが高体積の病原体の不活性、効率及び例証された効能と両立するために、光の作用で誘起された化学的還元および直接的な光還元は生物的サンプルを処理するための特に有望な技術として出現した。米国特許第6,277,337号、第5,607,924号、第5,545,516号、第4,915,683号、第5,516,629号、第5,587,490号明細書は、血液中の病原体を減少するための光の作用で誘起された化学的還元方法および直接的な光還元方法の例示的な応用を記載している。
【0007】
光の作用で誘起された化学的還元方法では、1以上の光増感剤の効率的な量が生物的流体に付加され、これはその後、混合され、電磁放射で照射される。照射は光増感剤を活性化し、それによって化学的反応および/または物理的プロセスを開始して、サンプル内に存在する病原体を殺し、又は実質的に病原体が繁殖するのを防止する。直接的な光還元方法では、選択された波長を有する電磁放射による照射は直接的に病原体の減少を生じる。
【0008】
光の作用で誘起された化学的還元及び直接的な光還元方法における重要な考察は、幾らかの血液成分の電磁放射に対する露出が生物的活動および活力に悪影響を与える可能性があることである。電磁放射に対する露出による生物的活動及び活力の減少は、治療および/または再注入剤としてのこれらの材料の効力を減少する可能性がある。それ故、光の作用で誘起された化学的還元および直接的な光還元方法には、病原体が減少する程度の最適化と、治療および/または再注入剤を含む血液成分に対する損傷の最小化との間にしばしば妥協が存在する。
【0009】
光の作用で誘起された化学的還元及び直接的な光還元方法における別の重要な考察は、サンプルの質量、容積、ドナーのアイデンティティ、細胞および非細胞成分の濃度のようなバリエーションを共通して受ける特性を有する流体サンプルに対して均等な処理を行うことのできるこれらの方法の能力である。例えば、照射される区域当り同一の正味の放射エネルギを全ての処理された血液および血液成分に放出する通常の病原体の減少手順は、処理される血液または血液製剤の容積により体系的に変化する非均等な処理を生じる可能性がある。血液及び血液成分サンプルは典型的に、ドナーの物理的属性および、集収と処理に使用される手順に応じて、サンプルの容積の範囲を示すので、この実際の照射は、非常に変化する病原体の濃度および治療品質を有する血液製剤を生じる。このような望ましくない変化は品質制御の努力を無効にし、製品の保証及び調整確認に悪影響を与える恐れがある。
【0010】
先の説明から、電磁放射により均等に生物的流体を処理するための方法及び装置に対する明白な要求が存在することが認識されるであろう。特に、サンプルの容積または質量のようなバリエーションを受けるサンプルの特性にかかわりなく、電磁放射による流体サンプルの等価処理を行う方法及び装置が必要とされている。さらに、病原体の比較可能なレベルと、比較可能な生物的活動および活力を示す治療および/または再注入剤を有する成分とを含む処理されたサンプルを生成するための、電磁放射により流体サンプルを処理する方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、特に入射電磁放射を効率的に散乱および/または吸収する材料を含む流体を処理するのに有効な、電磁放射により混合を受ける流体を均一に処理するための方法、装置、装置コンポーネントを提供する。本発明の方法は、処理される流体サンプルの体積及び質量のようなバリエーションを共通して受けるサンプルの物理的特性にかかわりなく、電磁放射により流体サンプルを均等に処理することができる。本発明は流体サンプルの体積全体を通して電磁放射を均等に与える再生可能な手段を提供し、それによって、処理されたサンプルは、後に選択された応用で使用するのに適した組成を有する。
【0012】
この説明における均等性は、本発明の方法の2つの有益な属性に関係する。第1に、均等性は、流体を構成する実質的に全ての粒子が等しい実効的な正味の放射エネルギに露出されるように、流体の全体積へ電磁放射を放出することを意味している。第2に、均等性は、処理期間中のそれらのそれぞれの体積、質量、および混合レート中の差のような、物理的特性の差にかかわりなく、各流体サンプルが等価に処理されるように、電磁放射による複数の流体サンプルを処理することを意味している。この文脈では、等価な処理は、異なるサンプルの全体積を通して比較可能なレベルまで病原体を減少するような、処理プロセスの等価の最終結果を意味し、或いは処理期間中に、複数のサンプルの実質的に全ての粒子が等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される処理を意味することができる。
【0013】
本発明の1特徴では、混合される流体サンプルの全容積は、サンプルの特性に基づいて選択される実質的な放射エネルギ、放射パワーまたはその両者を有する電磁放射と、照射時に形成される光の作用で誘起された層を通過する、流体を構成する粒子の放射速度を決定する処理技術とにより処理される。例えば、本発明の幾つかの方法における実質的な放射エネルギおよび/または放射パワーは、流体サンプルの体積、質量および/または混合レートに基づいて、またはこれらの変数の任意の組合わせに基づいている。本発明のこの特徴の別の実施形態では、電磁放射と同時の混合および処理される流体サンプルのサンプル攪拌速度は、サンプルの体積および/または質量に基づいて選択され、それによって異なるサンプルを構成する粒子は、処理期間中に、等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される。
【0014】
別の特徴では、本発明は電磁放射による処理によって、複数の流体サンプル中の病原体の生物的活動を均等に減少させる方法、装置、装置コンポーネントを提供する。本発明のこの特徴の例示的な方法では、流体サンプルは少なくとも部分的に透明な容器中に与えられ、処理期間中に混合される。各サンプルに放出される正味の放射エネルギは、処理される個々の流体サンプルの体積、質量および/または混合レートに基づいて、またはこれらの変数の任意の組合わせに基づいて決定される。複数の流体サンプル中の病原体を均等に減少するのに有効な本発明の方法の1実施形態では、各サンプルに与えられる正味の放射エネルギは、サンプルの体積、質量および/または混合レートに基づいて選択され、それによって各流体サンプルの実質的に全ての粒子は等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される。
【0015】
処理期間中、選択された放射パワーを有する電磁放射は、選択された照射時間、容器の1以上の少なくとも部分的に透明な表面に導かれる。本発明のこの実施形態では、放射パワーと照射時間は可変であり、これは電磁放射による均等な処理を行うのに必要な適切な正味の放射エネルギを各流体サンプルに与えるように選択される。電磁放射に対する流体の露出は、電磁放射により照射される流体の表面近くに位置される光の作用で誘起された層で生じる。この光の作用で誘起された層では、電磁放射は流体中の粒子と相互作用し、それによって病原体の減少を生じる化学的および/または物理的変化を誘起させる。容器中の流体の混合は、放出された電磁放射を全容積に均等に分配する手段を提供する光の作用で誘起された層を通って流体を放射させ、それによってサンプルの全容積を通じて病原体を減少させる。随意選択的に、本発明のこの特徴の方法はさらに、光増感剤、増強剤、安定剤、抗凝血剤、希釈剤、保存剤、および全てのこのような組合わせのような、流体に対する1以上の添加物の効率的な量を流体へ付加するステップを含んでいる。添加物は電磁放射による処理の前、処理中、または処理の後に、処理される流体に対して付加されることができる。
【0016】
本発明のこの特徴の1実施形態では、流体は、サンプルの全容積を通して病原体の生物的活動を直接減少させる波長、強度および/または放射パワーを有する電磁放射に露出される。その代わりに、本発明は、光増感剤が処理される流体サンプルの全体積に対して与えられ、電磁放射に対して露出される方法を含んでおり、この電磁放射はサンプルの全体積にわたって病原体の生物的活動を減少させる光増感剤を含む光の作用で誘起された反応を開始する波長、強度および/または放射パワーを有している。
【0017】
随意選択的に、本発明の方法は、選択された実質的な放射エネルギによる処理の前に、流体サンプルの容積および/または質量を決定するステップを含むことができる。1実施形態では、流体サンプルの容積は照射前に、直接測定される。その代わりに、本発明は、流体サンプルの容積が、流体サンプルの質量を測定し、流体の密度またはその評価によって測定された質量を除算することにより、決定される方法を含んでいる。本発明の方法はさらに、測定された体積または質量に対応する出力信号を発生し、この出力信号を、流体サンプル中の病原体の減少を実現するために必要な正味の放射エネルギ、放射パワー、照射時間を決定するアルゴリズムの実行が可能な電磁放射源制御装置のような装置、または装置コンポーネントへ送信するステップを含むことができる。
【0018】
本発明のこの特徴の1実施形態では、電磁放射による流体の処理方法が提供され、その方法ではサンプルに与えられる正味の放射エネルギは、処理される流体サンプルの流体混合レートに逆相関される。本発明のこの特徴では、例えば少ない正味の放射エネルギが、低い流体混合レートで混合される流体ではなく高い流体混合レートで混合される流体に対して与えられる。本発明では、正味の放射エネルギと混合レートは、線形または実質的に線形の方法、指数関数的または実質的な指数関数的方法、対数的または実質的に対数的な方法、二次的または実質的な二次的方法、またはこれらの関数関係の任意の組合わせを含むがそれに限定されない電磁放射による流体の効率的な処理を行う任意の方法で逆に関連されることができる。
【0019】
本発明のこの特徴の別の実施形態では、電磁放射による流体の処理方法が提供され、この方法ではサンプルに放射される正味の放射エネルギは、処理される流体サンプルの体積または質量に正相関(即ち比例)する。本発明の方法のこの応用の文脈では、用語“流体の体積”と“流体の質量”は照射期間中に、容器中に存在する流体の体積及び質量を指し、照射前または照射期間中に与えられる任意の添加物を含んでいる。例えば、大きい体積および/または質量を有する流体は、小さい体積および/または質量を有する流体よりも大きい正味の放射エネルギに露出される。幾つかの実施形態では、処理される流体サンプルの体積または質量に正相関される正味の放射エネルギを使用する利点は、等しい固定した体積の容器中に保持される流体サンプルの混合に関係する混合の考察から生じる。サンプルの攪拌技術による流体の混合では、例えば大きい体積を有する流体は、類似の固定した体積の容器中に保持されるもっと小さい体積を有する流体よりも小さい流体の混合レートを受ける傾向がある。本発明の正味の放射エネルギおよび流体の体積および/または質量は、線形または実質的に線形の方法、指数関数的または実質的な指数関数的方法、対数的または実質的に対数的な方法、二次的または実質的な二次的方法、またはこれらの関数関係の任意の組合わせを含むがそれに限定されない電磁放射による流体の効率的な処理を行う任意の方法において正関連されることができる。
【0020】
電磁放射により流体を均等に処理する本発明の能力は特に、流体の病原体の減少のために本発明を使用するのに特に有効である。電磁放射による流体サンプルの均等な処理による病原体の減少は、効率的な病原体減少に必要な正味の放射強度よりも大きい正味の放射強度に対して、小さい体積および/または質量を有するサンプルを露出するのを避け、および/または効率的な病原体減少に必要な放射強度よりも小さい正味の放射強度に対して、大きい体積および/または質量を有する流体サンプルを露出するのを避けるのに有効である。本発明により与えられる電磁放射によるサンプルの均等な処理はまた、処理される流体サンプルの全体積が、例えば処理された流体サンプルのその後の使用のために有効な病原体の減少を達成し、治療および/または再注入剤としてその後、使用するのに十分な電磁放射の放射エネルギを提供されることを確実にする。それ故、本発明のこの特徴の病原体減少方法は、良好に規定された予め定められたレベルより下の病原体濃度を有する処理された流体を生成することを可能にする。さらに、電磁放射による流体サンプルの均等な処理による病原体の減少は、流体サンプル中に治療、再注入または診断剤を含んでいる処理された流体コンポーネントに損失または損傷を生じる電磁放射強度に対して、これらのコンポーネントを過剰に露出せずに、それらの生物的活動及び活力を維持し、場合によってはそれを最適化することができる。
【0021】
別の特徴では、本発明は電磁放射による流体サンプルの処理に有効な照射パラメータを計算するためのアルゴリズムを提供する。本発明のこの特徴のアルゴリズムは、電磁放射による流体サンプルの均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギ、放射パワーおよび/または照射時間を決定するために、流体サンプルについての測定され、計算され、又は評価された体積、質量および/または混合レートを使用する。異なる体積を有する複数の流体サンプル中の病原体を減少させるのに有効な1実施形態では、例えば本発明は、流体サンプルに与えられる正味の放射エネルギが、流体の容積と光を流体へ透過する容器の表面面積との比を、ゼロよりも大きい値を有する比例定数によって乗算することにより決定されるアルゴリズムを提供する。光が一定の放射パワーを使用してサンプルに放射される実施形態では、本発明のアルゴリズムは、複数の流体サンプルを均等に処理するのに必要な照射時間を決定するために流体サンプルの容積および/または質量を使用することができる。本発明の方法で有効なアルゴリズムは、多数の他の変数を含むことができ、それには流体の密度、光を流体へ透過する容器または流体反応装置の表面面積、流体を保持する容器の容積、容器の攪拌レート、電磁放射を吸収および/または散乱する粒子の濃度及びアイデンティティ、血液成分の濃度及びアイデンティティを含む流体の組成、流体に付加される光増感剤の濃度及び組成、流体に放射される光の波長分布、照射中に使用される放射パワー、使用される流体混合方法、電磁放射による処理前の流体の希釈状態、又は任意のこれらの変数の組合わせが含まれているがそれらに限定されない。本発明のこの特徴のアルゴリズムは、マイクロコンピュータ、汎用目的のコンピュータ、またはアプリケーションソフトウェアを動作できる処理システムを含めた種々のプロセッサ、装置、装置の制御装置によって行われることができる。
【0022】
別の特徴では、本発明は固定した体積を有し、攪拌を受ける少なくとも部分的に透明な容器中の流体サンプルを処理する方法を提供し、それにおいて使用される攪拌レートは流体の容積に基づいて決定される。この説明の文脈では、攪拌レートは、容器が周期的な変位サイクルを受けるレートを指し、単位時間当りの攪拌サイクル数(例えば毎分当りのサイクル)に関して量的に特徴付けされることができる。1実施形態では、使用される攪拌レートはサンプルの容積とは独立して、処理される複数の流体サンプル中に等しい流体混合レートを与えるように選択される。例えば容器の攪拌レートは、処理される容器中の流体の容積に正相関されることができる。本発明で有効な容器の攪拌レートと流体の容積に関する例示的なアルゴリズムは、実質的な線形の相関、実質的な指数関数的な相関、実質的な対数の相関、実質的な二次的相関または任意のこれらの組合わせを含むが、それらに限定されない。
【0023】
本発明の方法及び装置は、任意のプロセスに広く応用可能であり、それによって処理される流体は電磁放射に露出される。本発明の方法は特に、選択された放射エネルギに対する流体の粒子の均等な処理が望ましい流体処理プロセスに適用可能である。本発明は、赤血球の細胞を含む血液成分、血小板を含む血液成分、血漿を含む成分、白血球を含む成分、血液から得られる1以上の蛋白質を含む溶液のような血液または血液成分を含んだ生物的流体と、静脈薬または腹膜溶剤のような治療および/または再注入剤として与えられる流体における病原体の生物的活動を減少する方法を提供する。本発明の方法は、組換え型発現システムのような発現システムから発生された流体中の病原体の効率的な減少も行う。この説明の文脈では、用語“組換え型表現システム”は大規模の発酵システムを含む細胞または組織の培養システムを指している。本発明の方法のその他の例示的な応用は、生物的流体を含む流体中の白血球の生物的活動の減少、流体純化方法、流体中の光化学反応のレート及び程度を制御する方法、光重合技術、流体の化学的合成反応を調節する方法を含んでいるが、それらに限定されない。
【0024】
別の特徴では、本発明は流体中の病原体を減少させる方法を提供し、この方法は、(1)少なくとも部分的に透明な容器中に保持され、粒子を含んでいる流体を提供し、(2)流体の体積を決定し、(3)少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている流体を随意選択的に選択された混合レートで混合し、(4)流体の体積および/または混合レートを使用して、流体中の病原体を減少させるための正味の放射エネルギを計算し、(5)正味の放射エネルギを有する電磁放射を流体に与え、それによって流体中に光反応層を生成するステップを含んでおり、電磁放射は粒子と相互作用し、容器内の流体の混合は粒子を光反応層を通して放射させ、それによって流体中の病原体を減少させる。随意選択的に、本発明のこの特徴の方法は、さらに光増感剤のような添加物を流体に付加するステップを含むことができる。
【0025】
別の特徴では、本発明は電磁放射により複数の流体サンプルを均等に処理する方法を提供し、この方法は、(1)それぞれ粒子を含んでいる複数の流体サンプルを提供し、(2)少なくとも部分的に透明の容器中に保持されている各流体サンプルの体積を決定し、(3)少なくとも部分的に透明の容器中に保持されている各流体サンプルを提供し、(4)少なくとも部分的に透明の容器中に保持されている各流体サンプルを、随意選択的に選択された混合レートで混合し、(5)各流体サンプルの体積および/または混合レートを使用して、各流体サンプルの正味の放射エネルギを計算し、(6)正味の放射エネルギを有する電磁放射を各流体サンプルに与え、それによって各流体中に光反応層を生成するステップを含んでおり、電磁放射は各流体サンプルの光反応層の粒子と相互作用し、流体サンプルの混合は粒子を光反応層を通して放射し、それによって電磁放射による複数の流体サンプルを均等に処理する。随意選択的に、本発明のこの特徴の方法は、さらに光増感剤のような添加物を各流体サンプルに付加するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】連続的な混合を受ける流体中の病原体の生物的活動を減少するための例示的な装置の概略図。
【図2A】電磁放射による処理を受ける流体中に発生された光反応層に対する選択された波長における電磁放射プロフィールを示し、光強度が流体の照射表面からの距離に対して示されている概略図。
【図2B】波長(X軸)の関数としての貫通深さ(Y軸、ミリメートル)のグラフ(A)と、波長(X軸)の関数としての電磁放射(Y軸)の例示的なソースの放射出力のグラフ(B)を示し、グラフの右側のY軸上に示されているスケールはグラフ(A)に対応し、グラフの左側のY軸上に示されているスケールはグラフ(B)に対応し、X軸はナノメートルの単位であるグラフ。
【図3】個々の流体サンプルに露出される正味の放射エネルギがそれらの計算された体積に基づいて決定される、複数の流体サンプルを均等に処理する例示的な方法のプロセスステップを示すフロー図。
【図4】非透過性ラベルを有する容器中に保持されている2つの異なる体積を有し、3ジュールcm−2に等しい固定された正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルのBVDV病原体の平均減少を示す棒グラフと、非透過性ラベルをもたない容器中に保持されている2つの異なる体積を有し、3ジュールcm−2に等しい固定された正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルのBVDV病原体の平均減少を示す棒グラフであり、示されているエラーバーは各容積における6つの独立した測定に対応する標準偏差(1σ)に対応している棒グラフ。
【図5】体積に基づいて計算された正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルの体積の関数として、人の血小板と血漿を含んでいるサンプル中のブタパルスボウイルス(PPV)病原体の平均の減少を示すグラフ。
【図6】体積に基づいて計算された正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルの体積の関数として、人の血小板と血漿を含んでいるサンプル中の肝炎Aウイルス(HAV)病原体の平均の減少を示すグラフ。
【図7】等式5を使用して体積に基づいて計算された正味の放射エネルギに露出される210mLおよび390mLの体積を有する流体サンプルの黄色ブドウ球菌バクテリアの平均の減少を示し、エラーバーは各体積における4つの独立した測定に対応する標準的な時間偏差(1σ)に対応している棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照すると、同じ参照符号は、2以上の図面で見られる同一の素子及び同一の符号が同一の素子を指すことを示している。さらに、以後、次の定義を適用する。
【0028】
用語“電磁放射”と“光”は本発明では同義語として使用され、電気及び磁気フィールドの波を指している。本発明の方法で有用な電磁放射は、紫外線光、可視光、赤外線光または任意のそれらの組合わせを含んでいるがそれらに限定されない。本発明の方法で使用される電磁放射の波長分布の選択は、処理される流体に与えられる1以上の光増感剤の吸収スペクトル、波長の関数として、処理される流体の粒子の消滅係数、又はこれらの組合わせを含んでいるが、これらに限定されない。例示的な流体処理方法は、実質的に流体に添加される光増感剤によって吸収される波長の分布により特徴付けされた電磁放射を使用することができる。血液成分を含む赤血球の細胞を処理するのに有効な本発明の例示的な方法及び装置は、電磁スペクトルの可視領域の波長を有する電磁放射を使用する。例えば、流体を含む赤血球の細胞の処理と、電磁スペクトルの可視領域の光を吸収する材料のような光増感剤を使用するのに有効な本発明の1特徴では、約400nmから約800nmの範囲にわたって選択される波長分布を有する電磁放射が使用されることができる。血漿および血液成分を含む血小板の処理に有効な本発明の例示的な方法及び装置は、電磁スペクトルの紫外線領域の波長を有する電磁放射を使用することができる。例えば、血小板と、血漿を含む血液成分の処理に有効である本発明の1特徴では、約300nmから約400nmの範囲にわたって選択された波長の分布を有する電磁放射が使用されることができる。当業者により理解されるように、光増感剤の吸収スペクトルは、蛋白質のようなある粒子が存在するとき変化する可能性があり、本発明の方法は光増感剤の吸収スペクトルにおけるこの変化を、処理される流体に与えられる電磁放射の波長の適切な分布の選択において考慮することができる。
【0029】
“正味の放射エネルギ”は、流体処理プロセス中または流体の処理プロセスの組合わせにおいて流体に放出される放射エネルギの総量を指している。正味の放射エネルギはパワー、露出時間、照射される表面面積に関して次の式により表されることができる。
【数1】

【0030】
ここで、Enetは放出される正味の放射エネルギであり、P(t)は時間および面積の関数として、流体に露出される電磁放射のパワーであり、tは照射の時間間隔であり、tは時間であり、Aは面積であり、Aは流体を保持する容器の照射される面積である。実質的に一定のパワーを使用する本発明の方法では、正味の放射エネルギは放射パワーと露出時間に関して次の式により表されることができる。
【0031】
net=Pxt; (2)
ここで、Enetは正味の放射エネルギであり、Pは電磁放射の一定の放射パワーであり、tは照射の時間間隔である。正味の放射エネルギはまた単位面積当りまたは単位体積当りで表されることもできる。
【0032】
“電磁放射による流体の処理”は、流体または流体を構成する粒子の組成において所望の変化を得るために、および/または流体中の1以上の粒子の生物的活性を変化するために、電磁放射が流体に放出されるプロセスを指している。1特徴では、本発明の方法は、流体中に存在する病原体の生物的活性を均等に減少するために、電磁放射により複数の流体を均等に処理することができる。
【0033】
“実質的な線形方法”は、線形の関係により表されることのできる1以上の変数の変化を指している。実質的な線形方法でのパラメータの変化は、絶対的な線形の変化からのある程度の偏差を含むことが意図されている。1実施形態では、実質的な線形方法でのパラメータの変化は、値の関連範囲にわたって10%よりも少なく、幾つかの流体処理応用では好ましくは5%を下回る絶対的な線形性からの偏差を含んでいる。
【0034】
用語“強度”は1つの電磁波または複数の電磁波の振幅の2乗を指している。この文脈での用語“振幅”は電磁波の振動の大きさを指している。その代わりに、用語“強度”は1つの電磁放射のビームまたは複数の電磁放射のビームの時間平均エネルギ束、例えば1つの電磁放射のビームまたは複数の放射のビームの単位時間当りの1平方センチメートル当りの光子の数を指すことができる。
【0035】
“実質的な指数関数的方法”は、指数関数的関係により正確に表されることのできる1以上の変数の変化を指している。実質的な指数関数的方法におけるパラメータの変化は絶対的な指数関数変化からのある程度の偏差を含むことを意図されている。1実施形態では、実質的な指数関数的方法におけるパラメータの変化は、値の関連範囲にわたって10%よりも少なく、幾つかの流体処理応用では好ましくは5%を下回る純粋に指数関数的な特性からの偏差を含んでいる。
【0036】
“混合レート”は、流体を構成する粒子が電磁放射による処理期間中に内部で循環または放射されるレートを指している。本発明の1特徴では、流体の混合レートは、流体を構成する粒子が電磁放射により照射されるときに形成される1以上の光反応層中へまたは光反応層から放射されるレートに関する。
【0037】
“流体を構成する粒子”は、処理される流体を構成する材料を指している。流体の粒子は、分子イオン、細胞、細胞の一部、血漿、蛋白質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、生重合体、溶剤、添加物、水、光増感剤、病原体、分子と複合体の凝集体、病原体の凝集体、白血球またはこれらの任意の組合わせを含むが、これらに限定されない。本発明の幾つかの実施形態では、等価の有効的な正味の放射エネルギが、処理される流体を構成する実質的に全ての粒子に与えられる。本発明のこの特徴の文脈では、“実質的に全ての流体粒子”とは少なくとも99%を超える流体を構成する粒子を指しており、好ましくは幾つかの応用では、少なくとも99.5%を越える流体の体積を指している。
【0038】
“光増感剤”は適切な波長または波長範囲における電磁放射を吸収し、吸収されたエネルギを所望の化学的および/または物理的プロセスを行うために使用する材料を指している。血液の処理の応用のための光増感剤は、電磁放射の吸収時に流体中に存在する病原体の生物的活性における減少を開始することができる。本発明の幾つかの応用で有効な光増感剤は、核酸を吸収するか核酸に挿入し、それによって病原体の微生物のような微生物にそれらの光力学効果を集中するように優先的に結合される化合物を含んでいる。本発明の方法で有効な例示的な光増感剤は、アロキサジン化合物、イソアロキサジン化合物、7,8−ジメチル−10リビチルイソアロキサジン、ポルフィリン、ソラレン、例えばニュートラルレッドとメチレンブルーとアクリジンとトルイジンとフラビン(アクリフラビン塩酸塩)のような染料、フェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、キノン、アントロキノンを含んでいるが、それらに限定されない。ある応用で有効な光増感剤は、患者に投与する前に、治療および/または再注入剤を含む生物的流体からの除去を必要としない非毒性で内因性の光増感剤である。光増感剤はイオン化された、又は部分的にイオン化されたおよび/または中性状態で流体に存在することができる。光増感剤は化合物および分子の複合体の凝集体として流体中に存在してもよい。
【0039】
用語“内因性”は、身体による合成の結果として、または基本食品(例えばビタミン)としての摂取によるか、生体内の代謝物質および/または副産物の形成のいずれかにより、人間または哺乳類の身体で自然に発見されることを意味する。用語“非内因性”は、身体による合成の結果として、または基本食品の摂取によるか、生体内の代謝物質および/または副産物の形成のいずれかのために人間または哺乳類の身体で自然に発見されないことを意味する。
【0040】
“増強剤”は所望の処理プロセスをさらに効率的で選択的にするために、処理される流体に付加される材料である。増強剤には、治療および/または再注入剤を構成する流体コンポーネントの劣化を阻止するために付加される酸化防止剤その他の薬剤を含んでいる。さらに、増強剤は病原体および/または白血球の生物的活動の減少レートを改良する材料が含まれている。例示的な増強剤には、アデニン、ヒスチジン、システイン、プロピルガレート、グルタチオン、メルカプトプロピオニルグリシン、ジチオトレイトール、ニコチンアミド、BHT、BHA、リシン、セリン、メチオニン、グルコース、マンニトール、トロロックス(trolox)、グリセリン、及び化合物の任意の組合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
“流体”はそれが保持されている容器の形状に適合することのできる任意の材料である。本発明の方法で使用可能な流体には、液体、2以上の液体の混合物、コロイド、泡、エマルジョン、ゾル、任意のこれらの組合わせが含まれているが、それに限定されない。流体は粒子からなる。本発明の方法で使用可能な例示的な流体には、血液全体と、血液成分と、血液のサブ成分と、血漿を含む血液成分と、血小板を含む血液成分と、赤血球の細胞を含む血液成分と、白血球の細胞を含む血液成分と、血液から得られる1以上の蛋白質を含む溶液と、任意のこれらの組合わせのような生物的流体が含まれている。例示的な流体には、また腹膜の透析に使用される腹膜の溶液、静脈内薬品、注入可能な薬品、栄養流体、食品、組換え方法から生成される発酵媒体、治療および診断材料を含む組換え技術により生成される材料、治療および診断材料を含む遺伝子導入動物及び植物から生成される材料、乳汁および乳製品、水、果汁、ブイヨン、スープ、飲料、化学及び医薬品、ワクチンが含まれているが、それらに限定されない。
【0042】
ここで使用されている“血液”、“血液製剤”、“血液成分”には、血液全体、血液成分、および血液全体からまたはその血液成分から得られることのできる材料が含まれている。ここで使用されている“血液”、“血液製剤”、“血液成分”には、血液全体、血液成分、および/または抗凝血剤、増強剤、光増感剤、保存剤または希釈液のような1以上の添加物で処理される血液製剤も含まれている。“血液”、“血液製剤”、“血液成分”はさらに、光増感剤、増強剤、安定剤、抗凝血剤、保存剤のようなこれらの材料及び添加物の混合物を指している。細胞血液成分は、赤血球(赤血球の細胞)、白血球(白血球の細胞)、血小板(血小板)、好酸球、単球、リンパ球、グラニュラクテ(granulacyte)、好塩基球、血漿、血液幹細胞を含んでいるが、それらに限定されない。非細胞の血液成分には、因子III、フォン・ヴィレブランド因子、因子IX、因子X、因子XI、ハーゲマン因子、プロトビン、アンチトロビンIII、フィブロネクチン、プラスミノゲン、血漿蛋白質フラクション、免疫血清グロブリン、変質免疫グロブリン、アルブミン、血漿成長ホルモン、ソマトメジン、プラスミノゲン、ストレプトキナーゼコンプレックス、セルロプラスミン、トランスフェリン、ハプトグロビン、抗トリプシン、及びプレカリクレインを含むが、それらに限定されない血漿、血液サンプルから隔離される血液蛋白質が含まれている。
【0043】
“実質的な対数的方法”とは、対数的関係(即ちy=ae)により正確に表されることのできる1以上の変数の変化を指している。実質的な対数的方法におけるパラメータの変化は絶対的な対数的変化からのある程度の偏差を含むことが意図されている。1実施形態では、実質的な対数的方法におけるパラメータの変化は、値の関連範囲にわたって10%よりも少ないか、幾つかの流体処理応用では好ましくは5%を下回る純粋に対数的態様からの偏差を含んでいる。
【0044】
“実効的な正味の放射エネルギ”は電磁放射による流体の処理中に、混合される流体の粒子に露出される正味の放射エネルギを指している。1実施形態では、粒子に与えられる実効的な正味の放射エネルギは、電磁放射による流体の照射期間中に、それが光反応層へまたは光反応層から放射されるときに粒子に与えられる積分された放射エネルギである。“等しい実効的な正味の放射エネルギ”には絶対的な等価からのある程度の偏差が含まれている。例示的な実施形態では、例えば、等しい実効的な正味の放射エネルギに対する露出は照射および混合条件に対応し、それによって流体の粒子は、20%よりも少ないか、好ましくは幾つかの応用では10%を下回り、さらに好ましくは幾つかの応用では5%に満たない絶対的な等価からの偏差を有する、電磁放射による処理中にほぼ同一の実効的な正味の放射エネルギに露出される。
【0045】
“病原体の汚染物”および“病原体”は同義語で使用され、ウイルス、バクテリア、バクテリオファージ、菌類、原生動物門、血液が伝播する寄生体を指している。例示的なウイルスには、後天性免疫不全症(HIV)ウイルス、肝炎A、B、C、Gウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ヘルペス単体ウイルス、ヒトT細胞白血球レトロウイルス、HTLV−II、リンパ節炎ウイルスLAV/DAV、パルボウイルス輸血(TT)ウイルス、エプスタインーバーウイルス、西ナイルウイスル、技術で知られているその他のウイルスが含まれている。例示的なバクテリオファージにはΦX174、Φ6、λ、R17、T4、T2を含んでいるがそれに限定されない。例示的なバクテリアは、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、単球増加症(L.monocytogenes)菌、Eコリシン、K 肺炎、B.セレウス、エンビニア症腸炎(Y.enterocolitica)、S.凋萎(marcescens)が含まれている。例示的な寄生体にはマラリア、バベシア、シャガス、トリパノソーマが含まれている。
【0046】
“生物的活動”とは、組成、材料、細胞、微生物または病原体が生きた細胞またはその成分中で変化を及ぼす能力を指している。
【0047】
“核酸”はリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の両者を含んでいる。
【0048】
“部分的に透明”とは照射されるとき、少なくとも入射電磁放射の一部を透過する材料、装置または装置コンポーネントの特性を示している。本発明で有効な部分的に透明な材料は、流体中の所望の化学的および/または物理的変化を誘起するのに十分な放射強度を光反応層中で提供するように、入射電磁放射を透過することができる。部分的に透明な材料は光増感剤と核酸によって吸収される波長を有する電磁放射の少なくとも一部を透過することができ、他の波長の電磁放射を吸収、透過および/または散乱させることができる。“部分的に透明”はまた、少なくとも1つの部分的に透過性の領域と、少なくとも1つの吸収または散乱領域とを有する材料を指している。例示的な部分的に透明の材料には、ポリカーボネート、ガラス、水晶、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリメトラメタクリレート、セルロースアセテートブチレート、グリコール変質ポリエチレンターフタレート、ポリクロロトリフロエチレン、又は任意のこれらの材料の組合わせが含まれているが、これらに限定されない。
【0049】
“病原体の減少”および“減少する病原体”は、本発明の説明では同義語として使用され、病原体が部分的または総合的に再生成するのを防止するプロセスを指している。病原体の減少は、直接的な病原体の致死、再生能力の妨害、または病原体の致死と再生能力の妨害との組合わせにより行われることができる。病原体の減少は流体中に存在する病原体の生物的活動を減少する。
【0050】
“実質的な二次的方法”は、二次的関係(即ちy=ax+bx+c)により正確に表されることのできる1以上の変数の変化を指している。実質的な二次的方法でのパラメータの変化は、絶対的な二次的変化からのある程度の偏差を含むことが意図されている。1実施形態では、実質的な二次的方法でのパラメータの変化は、値の関連範囲にわたって10%よりも少ないか、幾つかの流体処理応用では好ましくは5%を下回る純粋な二次的態様からの偏差を含んでいる。
【0051】
“光反応層”は、選択された流体処理応用において十分な大きさのレートで、流体中の化学的および/または物理的変化を開始するのに十分な電磁放射の強度を有する流体の照射される表面に近接して位置される層を示している。流体中の病原体を減少するのに有効な1実施形態では、光反応層は流体の照射される表面から流体中の1点までの距離に対応する貫通深さに等しい厚さを有しており、その場合に電磁放射の強度は流体の照射される表面における電磁放射の強度の10%に等しい。本発明は、流体の照射が流体の体積を通して部分的または十分に延在する光反応層を生成する方法を含んでいる。
【0052】
“光連通”は光が1つの素子から別の素子へ伝播できるような2以上の素子の方向付けを指している。素子は反射器、レンズ、光ファイバ結合器、導波体または任意のこれらの組合わせのような1以上の付加的な素子を介して光連通することができる。
【0053】
以下の説明では、本発明の装置、装置コンポーネント及び方法の多数の特別な詳細を、本発明の正確な特徴の徹底的な説明を行うために説明する。しかしながら、当業者には本発明がこれらの特別な詳細を使用せずに実施されることができることが明白であろう。
【0054】
本発明は、電磁放射により流体サンプルを均等に処理するための方法、装置、装置コンポーネントを提供する。特に、本発明は各サンプルが等しい処理を受けるように、生物的流体を含む複数のサンプルを均等に処理するための方法および装置を提供する。本発明の方法は流体の体積全体を通して病原体の生物的活動を減少するのに有効であり、それによって病原体の比較可能なレベルを有する処理された流体を生成し、比較可能な生物的活動および活力を有する治療および/または再注入剤を有するコンポーネントを有している。
【0055】
図1は、電磁放射により流体サンプルを均等に処理するための例示的な流体処理システム100を概略的に示している。図1を参照すると、流体110は少なくとも部分的に透明な容器120中に保持されている。容器120は、選択された一定の流体混合レートまたは照射中に選択的に調節される混合レートで、流体110を連続的に混合することのできる混合手段125に動作できるように接続されている。随意選択的に、容器120は、電磁放射による処理期間前、期間中または期間後に流体へ光増感剤のような添加物を導入するための流体弁124を介して、貯蔵器123に接続されて動作することができる。電磁放射源140が設けられ、流体110と光学的に連通する位置に配置されている。本発明は、装置構造のように、容器120の複数の異なる表面を照射するように配置されている複数の電磁放射源140を有する実施形態を含んでおり、ここでは容器120の上部116と下部117は同時に照射される。電磁放射源140は電磁放射源制御装置130に接続されて動作し、この制御装置130は異なる混合レートで混合される異なる体積および/または質量及び流体サンプルを有する流体サンプルを含んでいる複数の流体サンプルを均等に処理するために必要な正味の放射エネルギ、放射パワーおよび/または照射時間を決定することができる。電磁放射源制御装置130は、それが電磁放射源140の放射パワーを選択的に調節できるか、あるいは容器120が電磁放射に露出されている照射期間を調節できるように構成されることができる。
【0056】
随意選択的に、電磁放射源制御装置130はまた、時間の関数として、電磁放射源140により発生される正味の放射エネルギおよび/または放射パワーを測定できる検出器150に接続されて動作することができる。例示的な検出器150は電磁放射源140と光学的に連通しており、正味の放射エネルギおよび/または放射パワーに対応する測定を行う(図1の矢印により概略して表されている)出力信号を電磁放射源制御装置130に対して発生することができる。例示的な実施形態では、検出器150は照射中に流体に露出される正味の放射エネルギの測定を行うことができる。別の実施形態では、検出器150と電磁放射源制御装置130は選択された照射期間に一定の放射パワーを維持するか、および/または選択された正味の放射エネルギを流体サンプルに与えるのに必要な、電磁放射源140の閉ループフィードバック制御を行うように構成されている。
【0057】
流体処理システム100は流体の体積および/または質量を決定する手段127、および/または流体混合レートを決定する手段128を随意選択的に含んでいる。例示的な実施形態では、流体の体積および/または質量を決定する手段127、および/または流体混合レートを決定する手段128は随意選択的に電磁放射源制御装置130へ接続されている。この実施形態では、流体の体積および/または質量を決定する手段127および流体混合レートを決定する手段128は、(図1の矢印により概略して表されている)出力信号を発生することができ、この信号は、体積、質量および/または混合レートのような、流体サンプルの均等な処理に必要な正味の放射エネルギを決定するのに有効な入力パラメータを電磁放射源制御装置130へ提供する。流体処理システム100はさらに、容器120に接続されて動作し、選択された照射時間中に、流体の温度を予め定められた限度より下に維持することができる流体冷却システム151を随意選択的に含むことができる。例示的な流体冷却システム151は強制対流冷却システムを含んでいる。
【0058】
1実施形態では、電磁放射源制御装置130は、流体110の体積、流体110の質量、混合手段125により与えられる選択された混合レート、またはこれらのパラメータの任意の組合わせに基づいて、流体110の均等な処理のための正味の放射エネルギを決定する。電磁放射が一定の放射パワーを使用して流体110に与えられる本発明の1実施形態では、電磁放射源制御装置130は複数の流体サンプルの均等な処理を行うのに必要な照射時間を決定する。1実施形態では、電磁放射源制御装置130は流体の体積および/または質量を決定する手段127および/または流体の混合レートを決定する手段128から入力パラメータを受信し、それは電磁放射による均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギ、放射パワー、および照射時間を決定するアルゴリズムで使用される。その代わりに、電磁放射源制御装置130は、正味の放射エネルギ、放射パワー、照射時間を決定するのに使用される入力パラメータをオペレータまたはユーザから受信する。
【0059】
電磁放射源制御装置130は、電磁放射源140に送信される(図1の矢印により概略的に示されている)制御信号を発生する。制御信号は電磁放射源140により受信され、電磁放射源140は流体110を、電磁放射源制御装置130により計算された選択された正味の放射エネルギに対して露出させる。混合手段125は、選択された正味の放射エネルギに対して流体110を露出する期間中、選択された流体混合レートで、容器120内の流体110の連続的な流体混合を行う。例示的な実施形態では、電磁放射源140は、選択された照射時間だけ、選択された正味の放射エネルギを流体110へ与える。図1では、流体110に与えられる放射エネルギは矢印141により概略敵に示されている。流体110の電磁放射への露出は流体110の照射される表面の近くの(図1では実寸大で示されていない)光反応層160中で行われる。この光反応層160内で、電磁放射は流体110を構成する粒子と相互作用し、それによって流体110中で化学的および/または物理的変化を開始する。流体110の実質的に全ての粒子の等しい実効的な正味の放射エネルギへの露出は、混合により光反応層160を通じて、流体110を構成する粒子を放射することによって行われる。
【0060】
本発明では、検出器150は照射中における選択された放射パワーの放出を監視し、助けるために使用されることができる。検出器150はまた、流体110の粒子を等しい実効的な正味の放射エネルギへ露出するのに必要とされる照射時間の決定に有効である現場における放射パワー測定を行うことができる。本発明は、検出器150により与えられる出力信号が、実際に流体110に露出される放射エネルギ及び放射パワーを表し、それ故、少なくとも部分的に透明な容器120による吸収及び散乱を考慮するための補正が含まれる。
【0061】
照射される流体は、電磁放射により照射された流体の表面からの距離の関数として、照射される流体の電磁放射の強度に対応する電磁放射強度プロフィールに関して特徴付けされることができる。図2Aは、流体サンプルを貫通する入射電磁放射の選択された波長における例示的な電磁放射強度プロフィールを示している。示されている電磁放射強度プロフィールは本発明の(160として図1で概略して示されている)光反応層を示している。図2Aで示されている特性では、光強度は流体の照射される表面からの距離に対して示されている。図2Aで示されている電磁放射強度プロフィールは、貫通深さの関数として減少する、流体の照射される表面の高放射強度により特徴付けられる。図2Aで示されている強度勾配は流体の粒子による光の吸収および/または散乱の結果である。赤血球細胞及び血小板のような濃縮された吸収および/または散乱材料を含む流体中の病原体の減少の場合には、観察される強度の減少はしばしば非常に迅速であり、したがって非常に薄い光反応層(厚さ<2mm)を生成する。しかしながら、本発明は、照射時に形成される光反応層が、血漿サンプルのような散乱または吸収が高くはない流体サンプルの体積全体を通して延在する強度勾配によって規定される方法を含んでいる。これらの実施形態では、混合は強度勾配の存在にかかわらず、流体の実質的に全ての粒子を等しい実効的な正味の放射エネルギに露出させるのに有効である。複数の照射される表面を与え、複数の光反応層を生じる光学的構造もまた本発明の方法で有効である。
【0062】
図2Bは、電磁放射により照射される血小板および血漿を含む流体に対する波長の関数としての貫通深さのグラフ(A)を示している。この説明の文脈では、“貫通深さ”は流体の照射される表面から、流体中の点までの距離を指しており、その点の光強度は表面の光強度の10%である。また、図2Bには、波長の関数として電磁放射源の例示的な放射出力のグラフが示されている。図2Bに示されているように、入射電磁放射の異なる波長は、その波長が流体を構成する粒子により処理される吸収及び散乱に依存するので、異なる貫通深さによって特徴付けされる。
【0063】
本発明の方法は流体の体積を決定するステップを随意選択的に含むことができる。技術で知られている体積を決定する任意の手段は本発明で使用可能である。例示的な実施形態では、流体サンプルの質量は、スケールまたはマスバランスのような、重量計量装置を使用して決定される。特に、流体110の質量が決定され、測定される質量は流体の体積を決定するために流体の密度により割算される、例えば、血液の血漿中に血小板の混合物を含む流体の容積は、次の式により、測定された流体質量から計算されることができる。
体積=(質量)/(密度)=質量(g)/1.026(g/ml)) (3)
体積計算で使用される密度は、液体の希釈と、光増感剤、増強剤、抗凝血剤、希釈剤および/または保存剤のような1以上の添加物の添加を含むステップを考慮することができる。本発明の体積計算で使用される密度は、流体110の近似的な密度であってもよく、例えば実際の密度の5%以内、または実際の密度の1%以内であってもよい。本発明は、正味の放射エネルギの計算に使用される体積が、処理される流体に対する添加物の付加を反映するために補正される方法を含んでいる。
【0064】
電磁放射による流体サンプルの均等な処理を行う本発明の1特徴では、病原体の減少を実現するために流体110に放射される正味の放射エネルギは、正味の放射エネルギを直接的に流体110の体積へ関連付けるアルゴリズムの演算により決定される。例示的な実施形態では、例えば正味の放射エネルギは次の式により、体積に線形に関連される。
正味の放射エネルギ=(Z)x(V/A)+(b) (4)
ここで、正味の放射エネルギは1平方センチメートル当りのジュール単位であり、Vは体積であり、Zは0よりも大きい単位体積当りジュールの単位の値を有する比例定数であり、Aは1以上の電磁放射源から電磁放射を流体へ透過する容器または流動反応装置の表面面積であり、bは1平方センチメートル当りジュールの単位の定数である。幾つかの実施形態では、電磁放射を流体(A)へ透過する容器または流動反応装置の表面面積は、光の透過を阻止するラベルその他の非透過素子の存在によって減少される。これらの実施形態では、それ故、式4のAの値はラベルの存在を考慮に入れている。本発明では、Zおよびbの値は、処理される流体の組成、流体中の病原体の量、病原体の所望の減少レベル/所望の光学的形状の減少、流体混合手段及び流体の混合、容器の透明度、形状、体積および/または表面面積、又は任意のこれらのパラメータの組合わせを含んでいるが、それらに限定されない多くの変数に依存することができる。1リットルの容器中に約200ミリリットルを超え、約400ミリリットルを下回る体積の流体を含んでいる血漿および血小板の処理に有効な例示的な実施形態では、Zは約6.24Jml−1の値を有し、bは約0の値を有している。
【0065】
本発明の方法は、処理される流体110に1以上の添加物の有効な量を付加するステップを随意選択的に含むことができる。本発明の文脈では、用語“添加物”は、光増感剤、増強剤、安定剤、抗凝血剤、希釈剤、保存剤、又はこれらの全ての組合わせを含んでいるが、それらに限定されない。本発明では、添加物は、水、食塩水または緩衝液のような適切なキャリア流体を使用して流体に導入されることができ、添加物は流体を容器120へ位置させる前に流体110に付加されてもよい。その代わりに添加物は貯蔵器123から容器120の流体110へ付加されてもよい。添加物は、流体を容器に位置付ける前に、処理される流体に付加されることができ、或いは電磁放射による照射前、照射中、照射後に容器中へ別々に流入されることができる。1実施形態では、光増感剤は抗凝血剤に付加され、光増感剤と抗凝血剤の混合物が流体110に付加される。例示的な実施形態では、本発明の光増感剤は電磁放射による照射前、照射中、照射後に流体110の体積全体を通して均等に混合される。
【0066】
本発明の方法は、電磁放射による処理前に流体110へ希釈剤を付加するステップをさらに含んでいてもよい。処理前の希釈は、処理される流体の光学的な深さを選択的に調節し、それによって照射時に形成される流体中の光反応層の厚さの制御に有効である。処理前の流体の希釈は、光増感剤、増強剤、保存剤、抗凝血剤のような流体中の添加物の濃度を選択的に調節するのにも有効である。
【0067】
図3は、個々の流体サンプルに露出される正味の放射エネルギがそれらの計算された体積にしたがって決定される、複数の流体サンプルを均等に処理する例示的な方法のプロセスのステップを示すフロー図である。図3に示されているように、少なくとも部分的に透明な容器中の流体サンプルは電磁放射による均等な処理をするために与えられる。随意選択的に、添加物が流体に与えられ、これは光増感剤および/または抗凝血剤の付加を含む。随意選択的に、流体は所望の光学的厚さを実現するために希釈される。再度図3を参照すると、任意の添加物が付加されるならばそれを含めた流体サンプルの質量が測定され、測定された質量を流体の評価された密度で割算することによって、流体の体積の計算に使用される。この計算で使用される評価された密度は、処理される流体に与えられる任意の添加物の量を考慮に入れる。
【0068】
図3のフロー図を再度参照すると、流体サンプルの均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギは、光増感剤、抗凝血剤および/または希釈剤のような流体に与えられる任意の添加物を含んでいる流体の計算された体積にしたがって決定される。混合物は選択された流体混合レートで連続して混合され、均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギに露出される。均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギにサンプルを露出するための2つの方法が図3に示されている。1実施形態では、流体に与えられる正味の放射エネルギパワーは時間の関数として監視される。流体に与えられる正味の放射エネルギパワーが均等な処理を行うための決定された正味の放射エネルギの特定の範囲に等しいかその範囲内であるとき、制御信号が発生され、それはサンプルの電磁放射への露出を停止する。その代わりに、均等な処理を行うのに必要な照射期間は、選択された一定の放射パワーに対して計算され、流体サンプルは計算された照射期間だけ、選択された一定の放射パワーに露出される。随意選択的に、閉ループフィードバック制御が、放射パワーの実時間測定に基づいて、選択された照射期間だけ一定の放射パワーを維持するために使用されることができる。両方法では、電磁放射へのサンプルの露出は、サンプルが電磁放射による均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギに露出されているとき、例えば電磁放射源をオフに切換えることにより停止される。図3のフロー図に示されているように、流体サンプルの処理後、新しい流体サンプルが与えられ、一連の処理ステップが電磁放射による均等な処理される全ての流体サンプルに対して反復される。
【0069】
所望される正味の放射エネルギを放射するのに必要な放射パワー及び照射時間の選択はまた放射エネルギが光反応層に導入されるレートを設定する。本発明は、流体混合レートおよび放射エネルギを光反応層に放射するレートが正相関され、それによって治療および/または再注入剤を有する流体成分への電磁放射に対する露出の露出不足および/または過剰露出を防止する方法を含んでいる。流体混合レート、流体の体積、流体の質量、または任意のこれらの組合わせに基づいて選択される放射パワーおよび照射時間を使用する本発明の方法は、流体中で生じる光化学的変化のレートを選択的に制御する方法を提供する。本発明の例示的な流体処理方法では、さらに大きな放射パワーとさらに短い照射時間が、光反応層へまたは光反応層からの粒子の迅速さが少ない循環を示すさらに大きい体積のサンプルよりも、光反応層へまたは光反応層からの粒子のさらに迅速な循環を示すさらに小さい体積のサンプルで使用される。もっと小さい放射パワー及びもっと長い照射時間が、光反応層へまたは光反応層からの粒子のさらに高速度の循環を示すさらに小さい体積のサンプルよりも、光反応層へまたは光反応層からの粒子のさらに低速度の循環を示すさらに大きい体積のサンプルで使用される。
【0070】
本発明の方法は少なくとも部分的に透明な固定した体積の容器内に含まれている流体の処理に良好に適している。この文脈では、用語“固定した体積の容器”は、剛性またはフレキシブルな材料から作られることができる閉じた空間を指している。本発明の方法で有効な容器は、任意の体積、寸法、表面面積、形状を有することができる。幾つかの応用で有効な容器は少なくとも1つの領域で透明度が高く、例えば流体内に存在する病原体の直接的な減少および/または光増感剤の励起が可能な波長を有する電磁放射に関して70%以上の割合の透過度を有する。本発明の方法及び装置で有効な容器は電磁放射を透過するための単一の透明な表面を有することができ、または複数の透明な表面を有することができる。容器を作る材料、容器の物理的寸法、容器の光学的な幾何学的形状、本発明で使用可能な電磁放射源は、過剰な実験をせずに当業者によって容易に決定されることができる。
【0071】
本発明の方法及び装置は、流体通過型反応装置を通して流れる流体の処理に対しても適用可能である。1実施形態では、流体は流体通過型反応装置を通して誘導され、それにおいて、流体は混合され、電磁放射による均等な処理を行うのに必要な正味の放射エネルギに露出される。1実施形態では、流体は、存在する病原体の生物的活動に所望の程度の減少を与えるための、流体通過型反応装置の照射される領域中の流体の停滞時間を設定するように選択された流速で、流体通過型反応装置を通って、流される。本発明の方法で有効な流体通過型反応装置は、そこでの流体の通過を可能にするための1以上の開口を有する開放または閉鎖容器を含むがそれに限定されない。例示的な流体通過型反応装置は、管、チャンネル、トラフ、マイクロチャンネル、薄膜の流体通過型および全ての等価の装置および技術で知られている装置コンポーネントを含んでいる。流体通過型処理応用における混合は、ステアリング装置、攪拌装置、静的ミキサ、流体循環装置または任意のこれらの装置の組合わせ及びそれぞれの流体混合方法を含むが、それらに限定されない技術で知られている任意の手段により行われることができる。流体の混合はまた、流体反応装置中に乱流状態を設けることによって行われることができる。当業者により理解されるように、本発明は広範囲の流体反応装置の幾何学形状、流体反応装置の体積、流体の流速および流体の停滞時間を使用して実施されることができる。
【0072】
本発明では、放射エネルギは技術で知られている任意の手段によって、処理される流体に対して与えられることができる。用語“電磁放射源”は電磁放射を発生することのできる任意の装置または材料、或いは電磁放射を発生することのできる複数の装置または材料を指している。本発明の方法及び装置で使用可能な例示的な電磁放射源は、処理される生物的サンプルに対して電磁放射、特に流体中に存在する1以上の光増感剤を励起するために選択された可視領域、紫外線領域またはその両者の波長の選択された分布を有する光を提供することができる。放射エネルギは電磁放射の単一のソースまたは電磁放射の複数のソースを使用して流体サンプルに与えられることができる。本発明で使用可能な例示的な電磁放射源は、蛍光灯、水銀蛍光灯、冷陰極蛍光灯、エクシマ灯、発光ダイオード、発光ダイオードのアレイ、アーク放電灯、タングステン電球または任意のこれらの組合わせを含んでいるが、これらに限定されない。本発明の電磁源は光導体、レンズ、光フィルタ、反射装置及び任意のこれらの組合わせを含んでいるが、これらに限定されない電磁放射を誘導し、減衰し、濾波し、焦点を結ぶための付加的な装置及び装置コンポーネントを含むことができる。例示的な電磁放射源は約200nmから約800nmの範囲にわたって選択される波長を有する光を提供する。
【0073】
技術で知られている流体を混合する任意の手段は本発明で使用可能であり、これらは固定した体積の容器または流体反応装置中の光反応層へ、及び光反応層から粒子を体系的に循環することができる。選択された一定の流体の混合レートまたは選択的に調節可能な流体の混合レートを与える混合手段は幾つかの応用に対して有効である。例示的な流体の混合手段には、攪拌装置、ステアリング装置、循環器、ミキサ、シェーカ、発振器、攪乳装置、発振器、静的ミキサ、又は任意のこれらの組合わせが含まれるがこれらに限定されない。例示的な混合手段にはまた、流体再循環装置も含まれ、これは容器または流体反応装置の異なる領域を通って粒子を再循環することにより、光反応層へのまたは光反応層からの粒子の放射を実現する。本発明で使用可能な例示的な静的ミキサは、ここでの説明と一貫しない程度で、その全体がここで参考文献として含まれる国際特許出願PCT/GB99/03082号、PCT/GB01/01426号、PCT/EP01/13058号、および米国特許出願第10/196,020号明細書に記載されている。本発明の文脈では、“攪拌装置”は例えば選択された攪拌レートで流体を含む容器を攪拌する装置を指している。例示的な攪拌装置は1以上の次元に関して容器を振り、または循環器を使用して、円、楕円またはその他の軌道運動で容器を回転させる。本発明で有効な例示的な攪拌装置にはヘルマーの血小板インキュベータ/攪拌装置(ヘルマー社、Noblesville、IN)が含まれている。
【0074】
技術で知られている電磁放射源制御装置が本発明で使用されることができ、これは流体体積、流体混合レート、又はその両者に基づいて、正味の放射エネルギ、放射パワー、照射時間またはこれらのパラメータの任意の組合わせを計算することができる。1実施形態では、電磁放射源制御装置はまた、選択された照射時間に対して約10%以内、およびさらに好ましくは本発明の方法の幾つかの応用では約5%以内で実質的に一定の放射パワーを設定し維持することができる。本発明の例示的な電磁放射源制御装置には、IBMパーソナルコンピュータまたはその適切な等価物のようなマイクロコンピュータのコンピュータ、ワークステーションコンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサ、調節可能な電流バラスト、全てのハードウェア等価物が含まれているがそれらに限定されない。
【0075】
本発明の方法及び装置はコンピュータ補助オートメーションおよび、したがって多数の流体サンプルの高い処理能力の処理に適するように修正が可能である。本発明の幾つかの応用では、コンピュータが本発明の方法の多数のステップを行うために使用されるルことが好ましいが、コンピュータは本発明の方法のあるステップのみ、または選択された一連のステップを行うために使用されてもよい。
【0076】
ここで使用されている用語及び表現は限定ではなく、説明の用語として使用されており、このような用語及び表現の使用には、示され説明されている特徴の任意の等価物およびその部分を除外する意図はなく、種々の変形は請求されている本発明の技術的範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および随意選択的な特徴により特別に説明したが、ここで説明されている概念の変形及び変化は当業者によって使用されることができ、このような変形および変化は特許請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲内であると考えられることを理解すべきである。ここで与えられている特定の実施形態は本発明の有効な実施形態の例示であり、当業者には本発明の説明で説明した装置、装置コンポーネント、方法ステップの多数の変形を使用して本発明が実行されることができることは明白であろう。本発明に有効な方法及び装置は、温度センサ、温度制御装置、光フィルタ、レンズ、反射装置、使い捨て容器及び管、弁及びポンプを含むが、それらに限定されない多数の随意選択的な装置素子及びコンポーネントを含むことができる。
【0077】
この明細書で述べた全ての引用文献と、これらの参考文献内で述べられている全ての引用文献は、これらが本出願の説明と矛盾しない範囲で、その全体がここで参考文献として含まれる。当業者には、特別にここで説明した以外の方法、装置、装置素子、材料、手順、技術が余分な実験に頼らずに、ここで広義で説明したように、本発明の実施に適用されることができることが明白であろう。特別にここで説明した方法、装置、装置素子、材料、手順、技術の全ての技術で知られた機能的等価物は、本発明により含まれることが意図される。
【0078】
[例1:血小板および血漿を含む血液成分を有する流体中の病原体の減少]
人間の血液成分中の病原体を減少するために、電磁放射により流体サンプルを均等に処理する本発明の方法及び装置の能力は実験的研究によって確認された。特に、本発明の目標は、電磁放射により、血液成分を含む流体サンプルを処理する方法を提供し、それによって処理されたサンプルが病原体の比較可能なレベル、好ましくは処理されたサンプルが治療および/または再注入剤として有効である程度に十分低いレベルを有するようにすることである。さらに、本発明の目標は、電磁放射により血液成分を処理する方法を提供することであり、これは高い生物的活動及び活力のような均等な特性を示す細胞及び非細胞の血液成分を提供する。
【0079】
前述の目標を達成するために、本発明の方法により処理される人間の血小板および血漿を含む血液成分における細胞品質と病原体減少の程度は種々の照射条件及び流体混合条件に対して決定された。約200ml乃至約400mlの範囲にわたって選択された体積を有する血小板および血漿を含んでいる流体サンプルは、1リットルの固定した体積で、部分的に透明な容器中で照射された。照射前に、ノーマルなセーライン中の7,8−ジメチル−10リビチルイソアロキサジンの5.00×10−4M溶液の約30ミリリットルが各血小板と血漿を含む流体に添加された。
【0080】
電磁放射は流体の容器の上方および下方に位置されている6個の水銀蛍光灯(品型XG25T8E;Ushio Nichia NP-803蛍光体により販売)の2つのバンクにより与えられた。この光学的幾何学形状は、流体の照射される表面の上部および下部に対応して約1ミリメートルに等しい厚さを有する2つの光反応層を形成する。蛍光灯の組合わせは、約7分から約10分間の範囲にわたる選択された照射時間で、1分当り約0.6Jcm−2の放射パワーを発生した。放射パワーはフォトダイオード光検出器によりその位置で監視され、定常状態に到達した後、選択された照射時間にわたって変化が約0.1%よりも小さいことが観察された。流体サンプルに与えられる電磁放射は約265nmから約375nmの範囲の波長分布と、最大強度を示す波長に対応する約306−308nmの中心波長を有している。約1.7Jcm−2から約3.5Jcm−2の範囲の正味の放射パワーが流体に露出された。容器の上方および下方に配置されている電磁放射源から電磁放射を受ける容器の表面面積は約584cmである。この実験で使用された容器は、電磁放射源からの電磁放射を透過しないラベルに対応する110cm領域を有している。前述した584cmの表面面積値は110cmの非透過ラベルの存在を考慮している(即ちそのラベルの面積を含まない)。
【0081】
この例では、2つのタイプの照射条件が使用され、相互に比較された。第1の1一連の実験では、血小板および血漿を含むサンプルは、各流体サンプルの体積にかかわりなく、約3Jcm−2に等しい一定の正味の放射エネルギに露出された。第2の一連の実験では、血小板および血漿を含んだサンプルは、次の式を使用して決定された正味の放射エネルギに露出された。
【数2】

【0082】
ここで、Enetは単位平方センチメートル当りの正味の放射エネルギであり、Vは流体サンプルの体積であり、584cmは2つの電磁放射源から電磁放射を受ける容器の表面面積である。
【0083】
血小板および血漿を含む流体は、毎分120攪拌サイクルの実質的に一定の容器攪拌レートを与えることにより、照射中に連続して混合された。別のセットの実験では、2つの容器攪拌レートが使用され、毎分120サイクルと毎分20サイクルに対応するレートが使用された。流体サンプルはこれらが約33℃の温度を超えないように、強制対流冷却により、照射期間中冷却された。
【0084】
ウシのウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ブタの不全角化症ウイルス(PPV)、肝炎Aウイルス(HAV)および黄色ブドウ球菌バクテリアがTCID50または平板培養方法を使用して、照射前及び照射後に分析され、病原菌の減少程度の量的測定が行われた。さらに、多数の細胞品質インジケータが、処理後の処理済み血液成分の品質を評価するために測定された。ここで使用されている“細胞品質インジケータ”とは、細胞の血液成分品質のインジケータを意味している。例示的な細胞品質インジケータは、細胞または細胞の血液成分を含む流体の物理的状態に対応するパラメータであり、後に治療応用で使用するための品質を評価するのに有効な測定を行う。
【0085】
図4の(A)は、非透過性ラベルを有する容器中に保持されている2つの異なる体積を有し、固定した正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルのBVDV病原体の平均の減少を示す棒グラフである。特に流体サンプルに与えられる正味の放射エネルギは、サンプルの体積にかかわりなく、3ジュールcm−2に等しかった(即ち電磁放射源からの電磁放射を受ける容器の表面面積当り3ジュール)。図4の(A)で示されているように、BVDV病原体の減少程度は、約230mlから約280mlへ流体サンプルの体積を増加するとき、約2.0ログから約1.4ログに減少する。図4の(A)のデータは学生のT検査により統計的に解析され、これは230mLから280mLのサンプルの病原体減少における観察された差が統計的に顕著であることを明らかにした(P値=0.004)。類似の実験が電磁放射源からの電磁放射を透過する異なる表面面積を有する容器を使用して行われた。これらの容器は非透過性ラベルをもたず、したがって電磁放射源からの電磁放射を透過するさらに大きな表面面積を有している。図4の(B)は非透過性ラベルをもたない容器中に保持されている2つの異なる体積を有し、3ジュールcm−2に等しい固定された正味の放射エネルギに露出されている流体サンプルに対するBVDV病原体の平均の減少を示す棒グラフである。図4の(B)に示されているように、BVDV病原体の減少の程度は、約230mlから約280mlへ流体サンプルの体積を増加するとき、約2.3ログから約1.9ログに減少している。図4の(B)のデータは学生のT検査により統計的に解析され、これは230mLから280mLのサンプルの病原体減少における観察された差が統計的に顕著であることを明らかにした(P値=0.008)。図4の(A)および(B)のデータは、大きい体積を有する血小板および血漿を含んでいる流体が、等しい正味の放射エネルギで照射されるとき、小さい体積を有する血小板及び血漿を含んでいる流体よりも、BVDV病原体において統計的に非常に小さい減少を受けることを示している。図4の(A)および(B)で示されているエラーバーは各容積における6つの独立した測定に対応する標準的な偏差(1σ)に対応している。
【0086】
図5は、式5を使用して、体積に基づいて計算された正味の放射エネルギに露出されている血小板及び血漿を含んだ流体の体積の関数として、PPV病原体の平均減少を示している。図6は、式5を使用して、体積に基づいて計算された正味の放射エネルギに露出されている血小板と血漿を含んでいる流体の容積の関数として示されているHAV病原体の平均減少を示している。図5及び6のグラフは、ゼロを含む勾配を有する基本的に平坦な線であり、そのうち、それぞれの線形の最小二乗の不確定が適合する。図7は、式5を使用して、体積を基づいて計算された正味の放射エネルギに露出された210mLおよび390mLの体積を有する流体サンプルに対する黄色ブドウ球菌バクテリアの平均減少を示す棒グラフを示している。図7に示されているエラーバーは各体積における4つの独立した測定に対応する標準的な時間偏差(1σ)に対応している。図7のデータは学生のT検査により統計的に解析され、これは210mLから390mLのサンプルの病原体減少における観察された差が統計的に顕著ではないことを明らかにした(P値=0.06)。図4の(A)および(B)のグラフと図5、6、7のグラフを比較すると、サンプルの体積に係わりなく、流体の容積から得られた正味の放射エネルギの使用は均等な病原体の減少を与えることを示している。
【0087】
式5により決定された正味の放射エネルギを使用して実現される病原体減少の程度はまた血小板濃度の範囲について測定された。これらの実験は、サンプルの体積から得られる正味の放射エネルギを使用して得られた病原体の減少程度が単位マイクロリットル当り約1000×10血小板から単位マイクロリットル当り約2000×10血小板の範囲の血小板濃度範囲にわたって血小板濃度とは独立していることを示している。
【0088】
グルコース消費のレート、乳酸生成のレート、およびpHは電磁放射により処理される処理済みの流体サンプルの品質を評価するために決定された。代謝期間中、細胞はグルコースを消費し、消費される各グルコース粒子に対して2つの乳酸粒子を生成する。形成される乳酸は血液成分サンプルのpHを低下させる効果を有する。有限量のグルコースが貯蔵期間中に細胞に与えられると、非常に迅速にグルコースを消費する貯蔵された細胞の血液成分は劣化される。さらに低いグルコース消費レートおよび乳酸生成レートは、貯蔵されるときに高い治療効率を維持する細胞の血液成分を示している。それ故、低いグルコース消費レートと乳酸生成レートは高い細胞品質のインジケータと考えられる。
【0089】
表1は3Jcm−2の固定した正味の放射エネルギに露出される200mlと250mlの体積を有する血漿および血小板を含むサンプルについてのpHと、グルコース消費レートおよび乳酸生成レートを示している。表1に示されているように、250mlの血漿および血小板を含むサンプルは200mlの血漿および血小板を含むサンプルよりも非常に低いグルコース消費レートおよび乳酸生成レートを示している。表2は式5を使用して決定される正味の放射エネルギに露出される200mlと225mlの間の体積を有する血漿および血小板を含むサンプルと、375mlと400mlの間の体積を有する血漿および血小板を含むサンプルにおけるpHと、グルコース消費レートおよび乳酸生成レートを示している。表1のデータと対照的に、表2のデータのサンプルの体積に関するグルコース消費レートおよび乳酸生成レートの傾向は識別されることができない。特に、検査された全てのサンプルはそれらのサンプルの体積に係わり無く、これらの測定の不確定範囲内にあるグルコース消費レートおよび乳酸生成レートを有している。さらに、表2に示されているグルコース消費レートおよび乳酸生成レートデータは、表1に示されているデータよりも約2倍大きな体積における変化を示している。表1と2のデータを組合わせると、サンプルの体積にかかわりなく、体積に基づいた正味の放射エネルギの使用が、実質的に均等な細胞品質インジケータを示す処理された血液成分を提供することを示している。
【表1】

【表2】

【0090】
貯蔵期間中の血小板の早過ぎる活性化は、その後それらが治療手順で使用される能力を劣化する可能性がある。GMP140としても知られているPセレクチンは細胞が活性化されるときに発現される蛋白質であり、したがって血小板を含むサンプルが長期間の貯蔵条件下での生存能力の量的な尺度となる。血小板を含むサンプル中の低いPセレクチンレベルは良好な貯蔵と結果的な治療品質を示していることが従来示されている(Transfusion, 42巻、847−854頁(2002年)とTransfusion, 42巻、1333−1339頁(2002年))。本発明の方法により処理された血小板と結晶の品質を評価するために、Pセレクチンを発現する細胞の割合は、電磁放射による流体サンプルの処理後に測定された。
【0091】
表1は、3Jcm-3の固定した正味の放射エネルギに露出される200mlのサンプルおよび250mlのサンプルにおけるPセレクチンを発現する細胞の割合を示している。表1に示されているように、固定した正味の放射エネルギによる照射において250mlのサンプルは200mlのサンプルよりも、Pセレクチンを発現する細胞の割合が非常に低いことを示している。表2は、式5を使用して計算された正味の正味の放射エネルギに露出された200ml乃至225mlの体積と375ml乃至400mlの体積を有するサンプルに対するPセレクチンを発現する細胞の割合を示している。表2に示されているように、200ml乃至225mlの体積を有するサンプルと、375ml乃至400mlの体積を有するサンプルはPセレクチンを発現する細胞の割合が実質的に同じであることを示している。さらに、表2に示されているPセレクチンの割合のデータは、表1に示されているデータよりも約2倍大きな体積における変化を示している。表1と2のデータの比較は、サンプルの体積から得られる放射エネルギによる血小板を含んだサンプルの処理が、サンプルの体積によってあまり変化しない均等な細胞品質インジケータを示す細胞の血液混合物を提供することを示している。
【0092】
本発明の方法により処理される血漿を含むサンプルの蛋白質組成物の均等さもまた定量的に確認された。これらの研究では、200mLと400mLのサンプルが式5を使用して決定された正味の放射エネルギにより処理され、その後、処理されたサンプル中の血漿蛋白質の数の濃度に関して評価された。表3は6つの処理された200mLのサンプルと6つの処理された400mLのサンプルで分析された蛋白質の平均濃度と、各体積に対応している6つの測定のセットにおける最高及び最低の測定に対応する値を示している。表3の蛋白質濃度の比較は、処理された200mLと400mLの血漿を含むサンプルについて分析された蛋白質の濃度が多くの場合、同一であり、常にそれらのそれぞれの高および低範囲内であることを示している。これらの結果は、本発明の方法が血漿を含む流体の電磁放射による均等な処理が可能であり、本発明の方法により処理されたサンプルが体積の関数としてあまり変化しない組成を有することを示している。
【表3】

【0093】
電磁放射による流体の処理で得られた病原体減少程度における攪拌レートの効果は、照射期間中にサンプル容器に与えられる攪拌レートを変化することによっても研究された。血小板及び血漿を含むサンプルは式5を使用して計算された正味の放射エネルギに露出された。サンプルは2つの異なる攪拌レート、即ち毎分120サイクルと、毎分20サイクルを使用して、照射期間中に混合された。毎分120サイクルの攪拌レートを使用して混合された血小板及び血漿を含むサンプルは、PPV病原体の生物的活動において4.65ログの減少を示し、毎分20サイクルの攪拌レートを使用して混合された血小板及び血漿を含むサンプルは、PPV病原体の生物的活動において0.72ログの減少を示した。これらの結果は、流体サンプルを通して効率的な病原体減少を行うためには、照射期間中の流体の混合レートは光反応層へおよび光反応層から光増感剤を効率的に転送するのに十分な大きさでなければならないことを示している。特に、流体が混合される時間スケールは、病原体の減少を最適化するために放射エネルギがサンプルに導入される時間スケールに整合されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持され、粒子を含んでいる流体を提供し、
流体の体積を決定し、
少なくとも部分的に透明な容器に保持されている流体を混合し、
流体に対して決定された容積を使用して、流体中の病原体を減少するための正味の放射エネルギを計算し、
前記正味の放射エネルギを有する電磁放射を流体に与え、それによって流体中に光反応層を生成するステップを含んでおり、
前記電磁放射は前記粒子と相互作用し、前記容器内の流体の混合は粒子を光反応層を通して放射し、それによって流体中の病原体を減少させる流体中の病原体の減少方法。
【請求項2】
計算された正味の放射エネルギは流体の体積に比例している請求項1記載の方法。
【請求項3】
計算された正味の放射エネルギは実質的に線形に、流体の体積に関連されている請求項1記載の方法。
【請求項4】
計算された正味の放射エネルギは式、Enet=Z×(V/A)+bを使用して決定され、ここでEnetは計算された正味の放射エネルギであり、Vは流体の体積であり、Zはゼロよりも大きい値を有する第1の定数であり、bは第2の定数であり、Aは電磁放射を流体に透過する容器の表面面積である請求項1記載の方法。
【請求項5】
流体の体積は約200mlから約400mlの範囲の値から選択される値であり、前記第1の定数(Z)は約6.24Jcm−3に等しく、前記第2の定数(b)は約0に等しい値を有している請求項4記載の方法。
【請求項6】
計算された正味の放射エネルギは、
実質的に対数方法と、
実質的な二次的方法と、
実質的な指数関数的方法とからなるグループから選択された方法で、前記流体の体積に関連される請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記流体の体積を決定するステップは、
流体の質量を測定し、
流体の密度により、前記流体の質量を割算し、それによって流体の体積を決定するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体を混合するステップは、前記光反応層を通って流体の全体積を放射し、それによって流体の全体積を通して病原体を減少させる請求項1記載の方法。
【請求項9】
さらに、光増感剤を流体に付加するステップを含み、前記流体の体積の決定ステップは前記光増感剤を有する流体の体積を決定するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記光増感剤は7,8−ジメチル−10リビチルイソアロキサジンである請求項9記載の方法。
【請求項11】
実質的に全ての前記粒子が等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される請求項1記載の方法。
【請求項12】
流体は生物的流体である請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記生物的流体は、
血液全体と、
血液成分と、
赤血球の細胞を含む血液成分と、
血漿を含む血液成分と、
血小板を含む血液成分と、
白血球の細胞を含む血液成分と、
血液から得られる1以上の蛋白質を含む溶液と、
腹膜の溶液とからなるグループから選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
流体に与えられる前記電磁放射は、電磁放射スペクトルの紫外線領域の波長を有している請求項1記載の方法。
【請求項15】
流体に与えられる前記電磁放射は、電磁放射スペクトルの可視領域の波長を有している請求項1記載の方法。
【請求項16】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体を混合するステップは、少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている流体を攪拌するステップを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記正味の放射エネルギを有する電磁放射は、選択された照射期間にわたって、選択された放射パワーを与えることによって流体に与えられる請求項1記載の方法。
【請求項18】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持され、粒子を含んでいる流体を提供し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている流体を選択された混合レートで混合し、
選択された流体の混合レートを使用して、流体中の病原体を減少させるための正味の放射エネルギを計算し、
前記正味の放射エネルギを有する電磁放射を流体に与え、それによって流体中に光反応層を生成するステップを含んでおり、
前記電磁放射は前記粒子と相互作用し、前記容器内の流体の混合は前記粒子を前記光反応層を通して放射し、それによって流体中の病原体を減少させる流体中の病原体を減少する方法。
【請求項19】
計算された正味の放射エネルギは前記選択された混合レートに逆関連されている請求項18記載の方法。
【請求項20】
実質的に全ての前記粒子が等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される請求項18記載の方法。
【請求項21】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体を選択された混合レートで混合する前記ステップは、少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている流体を攪拌するステップを含んでいる請求項18記載の方法。
【請求項22】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体の混合するステップは、前記光反応層を通って流体の全体積を放射し、それによって流体の全体積を通して病原体を減少させる請求項18記載の方法。
【請求項23】
さらに、光増感剤を流体に付加するステップを含んでいる請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記光増感剤は7,8−ジメチル−10リビチルイソアロキサジンである請求項18記載の方法。
【請求項25】
それぞれ粒子を含む複数の流体サンプルを提供し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを提供し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルの体積を決定し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを混合し、
各流体サンプルに対して決定された体積を使用して、各流体サンプルの正味の放射エネルギを計算し、
前記正味の放射エネルギを有する電磁放射を各流体サンプルに与え、それによって各流体サンプル中に光反応層を生成するステップを含んでおり、
前記電磁放射は各流体サンプルの光反応層中の前記粒子と相互作用し、前記流体サンプルの混合は前記粒子を前記光反応層を通して放射し、それによって電磁放射により複数の流体サンプルを均等に処理する処理方法。
【請求項26】
各流体サンプルに与えられる計算された正味の放射エネルギは実質的に線形な方法で、各流体サンプルの体積に関連される請求項25記載の方法。
【請求項27】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体サンプルを混合するステップは、前記光反応層を通って流体サンプルの全体積を放射し、それによって流体サンプルの全体積を通して病原体を減少させる請求項25記載の方法。
【請求項28】
各流体サンプルに与えられる計算された正味の放射エネルギは式、Enet=Z×(V/A)+bを使用して決定され、ここでEnetは正味の放射エネルギであり、Vは前記流体サンプルの体積であり、Zはゼロよりも大きい値を有する第1の定数であり、bは第2の定数であり、Aは各流体サンプルに与えられる電磁放射を透過する容器の表面面積である請求項25記載の方法。
【請求項29】
流体サンプルの体積は約200mlから約400mlの範囲の値から選択され、前記第1の定数(Z)は約6.24Jcm−3に等しく、前記第2の定数(b)は約0に等しい値を有している請求項28記載の方法。
【請求項30】
全ての流体サンプルを構成する実質的に全ての前記粒子が、等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記各流体サンプルの体積を決定するステップは、
各流体サンプルの質量を測定し、
各流体サンプルの密度の評価により、前記各流体サンプルの質量を割算し、それによって各流体サンプルの体積を決定するステップを含んでいる請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記各流体サンプルを混合するステップは、少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを攪拌するステップを含んでいる請求項25記載の方法。
【請求項33】
それぞれ粒子で構成されている複数の流体サンプルを提供し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを提供し、
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを選択された流体混合レートで混合し、
各流体サンプルに対して選択された流体混合レートを使用して、各流体サンプルの正味の放射エネルギを計算するステップを含んでおり、
前記正味の放射エネルギを有する電磁放射を各流体サンプルに与え、それによって各流体サンプル中に光反応層を生成し、前記電磁放射は流体サンプルの光反応層の前記粒子と相互作用し、流体サンプルの混合は前記粒子を前記光反応層を通して放射し、それによって電磁放射により複数の流体サンプルを均等に処理する方法。
【請求項34】
計算された正味の放射エネルギは前記選択された混合レートに対して逆関連される請求項33記載の方法。
【請求項35】
全ての流体サンプルを構成する実質的に全ての前記粒子が、等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される請求項33記載の方法。
【請求項36】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている前記流体を混合する前記ステップは、前記光反応層を通って流体サンプルの全体積を放射し、それによって流体サンプルの全体積を通して病原体を減少させる請求項33記載の方法。
【請求項37】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを選択された混合レートで混合する前記ステップは、少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている各流体サンプルを攪拌するステップを含んでいる請求項33記載の方法。
【請求項38】
流体を保持するための部分的に透明な容器と、
選択された混合レートで、流体を混合する手段と、
流体中の病原体を減少させるための正味の放射エネルギを決定し、前記正味の放射エネルギを流体の体積、選択された混合レートまたはその両者に基づいて計算し、前記計算された正味の放射エネルギに対応する出力信号を発生する光源制御装置と、
前記光源制御装置に接続されて動作し、前記計算された正味の放射エネルギに対応する出力信号を受信し、前記正味の放射エネルギを有する電磁放射に対して流体を露出し、それによって流体中に光反応層を生成し、前記電磁放射は前記粒子と相互作用する電磁放射源とを具備し、
前記流体の混合は前記粒子を前記光反応層を通って循環させ、それによって流体の体積中の病原体を減少させるように構成されている粒子を含む流体中の病原体を減少させるシステム。
【請求項39】
光源制御装置は正味の放射エネルギを決定するアルゴリズムを実行し、正味の放射エネルギはアルゴリズムの演算により流体の体積に実質的に線形に関連されている請求項38記載のシステム。
【請求項40】
前記アルゴリズムは正味の放射エネルギを式、Enet=Z×(V/A)+bを使用して決定し、ここでEnetは正味の放射エネルギであり、Vは前記流体サンプルの体積であり、Zはゼロよりも大きい値を有する第1の定数であり、bは第2の定数であり、Aは流体サンプルに与えられる電磁放射を透過する容器の表面面積である請求項39記載のシステム。
【請求項41】
流体の体積は約200mlから約400mlの範囲の値から選択され、前記第1の定数(Z)は約6.24Jcm−3に等しく、前記第2の定数(b)は約0に等しい値を有している請求項40記載の方法。
【請求項42】
光源制御装置は、計算された正味の放射エネルギを決定するアルゴリズムを実行し、正味の放射エネルギはアルゴリズムの演算によって、流体の混合レートに対して逆関連されている請求項38記載のシステム。
【請求項43】
さらに、流体の体積を決定する手段を具備している請求項38記載のシステム。
【請求項44】
選択された混合レートで流体を混合する手段は、前記部分的に透明な容器に接続されて動作する攪拌装置である請求項38記載のシステム。
【請求項45】
少なくとも部分的に透明な容器中に保持されている流体の混合は、前記光反応層を通って流体の全体積を放射し、それによって流体の全体積を通して病原体を減少させる請求項38記載のシステム。
【請求項46】
流体を構成する実質的に全ての前記粒子が、等しい実効的な正味の放射エネルギに露出される請求項38記載のシステム。
【請求項47】
前記電磁放射源は電磁放射スペクトルの紫外線領域の波長、電磁放射スペクトルの可視領域の波長またはその両者を有する電磁放射を流体へ与える請求項38記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−172940(P2011−172940A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−61097(P2011−61097)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2007−504052(P2007−504052)の分割
【原出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(506313866)カリディアンビーシーティ バイオテクノロジーズ,エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】