説明

電磁放射に基づく熱伝達システムと熱伝達システム用の箔

本発明は、電磁放射に基づく熱伝達システムに関し、熱伝達システムは、オーブンキャビティと、少なくとも2層を有する箔とを含み、箔の少なくとも2層は放射吸収層を含み、放射吸収層の電磁放射の波長スペクトルとオーブンキャビティの電磁放射の波長スペクトルは互いに合わされている。本発明は、また、熱伝達システムに使用するための箔に関し、箔は少なくとも2層からなり、箔の電磁放射の波長スペクトルは、熱源の波長スペクトル、例えばオーブンの電磁放射の波長スペクトルに合わされる。箔は、放射吸収面を備え、放射吸収面は、可撓性箔として及び放射吸収面は金属か、ポリマー、紙、ボール紙又は木に基づく他の材料のいずれかのものである不撓性ホイルとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射に基づく熱伝達システムに関し、この熱伝達システムは、オーブンキャビティと少なくとも2層の箔を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、また、熱伝達システム用の箔に関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、オーブンの高温面からの赤外線放射/放射熱による急速加熱に関して特有の特性を有する面を得るために食品産業で主に使用するための、例えばアルミニウム包装やアルミニウム箔を適用するための、電磁放射に基づく熱伝達システム及び箔又はコーティングを提供することにある。これは、箔の面が面の内部から放射を可能な最も広い範囲まで吸収することができる材料で作られる。
【0004】
したがって、新規な熱伝達システムは、赤外線吸収面の波長が、熱源、例えばオーブンの内面から放出される赤外放射に適合される、或いは調和するように構成されている。かくして、オーブンキャビティをコーティングするために最も頻繁に用いられる材料の一つであるエナメルがオーブンに塗布されるので、8,000乃至10,000ナノメートルの範囲で、最大強度をもつ赤外放射を放出するコーティングに関心がある。かくして、新規な赤外線面は、放射熱による加熱が急速に且つ効率的に行われることになる場合、同じ波長の放射を主に吸収することができることにある。
【0005】
放射熱は、熱伝達の相当部分となり、すでに、200℃のオーブン壁温度では、60%以上となり、したがって、対流熱よりも大きな寄与をなすから、オーブン壁から放出された赤外放射を吸収するためのアルミニウム面をパッケージングに適合させることは、最大の関心があることである。
【0006】
アルミニウムの未処理面が考慮される場合、放射熱からの寄与は約7%だけとなる。
【0007】
塗布されたコーティングは、印刷技術により塗布され、黒ではないが、軽くて視覚的にアルミニウムに似て見える鉱物からなる。鉱物は、高温オーブン壁からの放射を特徴付ける所定の波長の赤外放射を吸収する能力のために特に選択される特性を有する。かくして、第一層が赤外放射を吸収するように構成され、第二層が箔で包まれた加熱された要素から放出される熱の放射を反射させるように構成される、サンドイッチ層としてコーティングを塗布することによって、要素からの熱はその要素に反射して戻される。
【0008】
この理由は、底部層と頂部層の間のいわゆる内部反射で見出されることである。かくして、調和するコーティングと内部反射を改善する頂部層を最適に組み合わせることによって、黒い面(黒体)によって得られる温度より高い温度が、箔の内側で測定された。
【0009】
放射及び対流オーブンで加熱されるための、アルミニウム包装内の完成食品の生産の必要性が、増大している。この理由は、調理に費やされる時間を短くし、エネルギーを節約したいとの望みである。
【0010】
アルミ箔での食品の包装に続いて、従来のオーブンで加熱を行うことは、赤外線熱放射に対するアルミニウム材料の良好な反射特性により調理時間を長くする。例えば、アルミ箔に鈍い側と光沢のある側の両方をつくることが試みられたが熱伝達特性を著しく改善しなかった。これは理論的な観点からも驚くべきことではない。
【0011】
総熱伝達に関しては、耐熱包装内の食物の加熱と関連した問題の複雑さを、対流と赤外線熱放射の合計として計算することができる。図1は、オーブンの温度の関数として熱伝達を示すグラフである。図は、Tオーブン=200℃で、黒い要素上の熱放射が、約66%だけ総熱伝達を支配することを示す。これはアルミ箔での熱放射にはない。熱放射は、総熱伝達の約7%だけをなす。
【0012】
図1から、Tオーブン=200℃で、黒い要素での熱放射が、約66%だけ総熱伝達を支配することを示している。これはアルミ箔での熱放射にはない。総熱伝達の約7%だけが熱放射によるものである。
【0013】
何年もの間、アルミニウム箔の付いたグラファイトが、赤外放射の極めて効率的な吸収材であることが知られており、何年にもわたって、いくつかの試みが、そのアイデアを有利に用いる目的にかなってこの分野内でなされてきた。かくして、この問題は、赤外放射を100%吸収する黒体から知られている効果を利用することにある。
【0014】
米国特許第4,220,134号明細書は、”赤外線熱放射の吸収を確保するためのアルミニウム面上の黒いテフロン(登録商標)”の使用を開示する。他の米国特許公開第2006/153952号A1明細書(アルミニウムで作られたアロマバッグ及びアロマ箔)は、また、放射熱をアルミニウム面に最適に伝達するために黒い面を有利に使用する。食品の用途に関しては、アルミ箔上の黒い面は、美的な観点から特に魅力的ではなく、これが、この種類の箔がなぜ家庭向きの使用を見出していない最もありそうな理由である。
【0015】
本発明は、最初に、黒く見えず、食品産業によって美的でないと考えられる外観面を与えない面に出発点を取り、同時に、それは、グラファイトに匹敵する性質、すなわち、放射測定値が5,768W/m2K4である場合できるだけ黒体に近い非常に高い放射率(放射測定値)を有する。オーブンキャビティに標準コーティングとして使用されるエナメル面の放射測定値は、5.3W/m2K4の範囲のものであり、アルミニウムの放射測定値は、0.22W/m2K4である。この状況は、また、何故、過去60年にわたり、エナメルが、オーブンキャビティを腐蝕から安全にするその面の能力と組合される、オーブンキャビティでの好ましいコーティングであったかという理由である。
【0016】
その上、アルミ箔上のコーティングは毒性の又は有害な特性を有してはならず、また、コーティングは300℃まで熱的に安定であるべきであり、14ミクロンより薄く、適用状況で十分な機械的な特性を表すべきである。これによって意図されるのは、アルミ箔が使用中の状況で取り扱われる通常のやり方である。
【0017】
その上、コーティングは、放射放出面(オーブン壁)及び放射吸収面(箔)からの波長が調和するような方法で設計される。
【0018】
これは、一方の面の電磁放射の波長スペクトルが他方の面の波長スペクトルに合わされ、それによって、オーブン面は放射熱を箔に効率的に伝達することができることを意味する。
【0019】
かくして、保たれた利益は、例えば区間の下半分内に含まれる電磁波長スペクトルをもった材料を、例えば区間の上半分内にある電磁波長スペクトルをもった他の材料と共に使用することの利益であり、それによって、この区間の全てを有利に使用する電磁波長スペクトルを有する面を箔に果す。
【0020】
その上、箔の面は、アルミニウム面からの赤外線放射熱の反射を減少させ、同時に赤外線放射を通過させる頂部被覆層を備える。そのような2重コーティングの利用が、上述したよく周知の”カーボンブラック”面よりもよい値を示した驚きの測定結果をもたらすことを試験が示している。
【0021】
これによって、際立ってもっと効率的な熱伝達が得られ、これに関連して、調理温度を下げることができるので、より短い調理時間及び/又はエネルギーの節約を可能にする。
【0022】
本発明の目的は、電磁放射に基づく熱伝達システムによって達成され、熱伝達システムは、オーブンキャビティと、少なくとも2層の箔とを含み、箔の少なくとも2層は放射吸収層からなり、放射吸収層の電磁放射の波長スペクトルとオーブンキャビティの電磁放射の波長スペクトルは互いに合わされる。
【0023】
本発明の目的は、更に、熱伝達システムに使用するための箔によって達成され、箔は少なくとも2層を含み、箔の電磁放射の波長スペクトルは、熱源の波長スペクトル、例えばオーブンの電磁放射の波長スペクトルに合わされる。
【0024】
1つの実施形態によれば、箔は、可撓性箔として、又不撓性箔として構成される放射吸収面を備え、放射吸収面は金属、ポリマー、紙、ボール紙又は木を基本とした他の材料のいずれかで作られる。
【0025】
さらに、実施形態によれば、箔は、少なくとも5%の延性を有する放射吸収面を有する。
【0026】
この結果、この面は可撓性であり、材料特性を著しく悪化させることなしに少なくとも3時間300℃まで加熱できる高い耐熱性と安定性を有する。
【0027】
さらに、実施形態によれば、箔は、面に干渉性フィルムとして、又部分フィルムとして付けられる放射吸収面を有する。
【0028】
さらに、実施形態によれば、箔は、耐熱性有機マトリックスからなるコーティングが塗布された放射吸収面を有する。
【0029】
さらに、箔の実施形態によれば、コーティングは、二重コーティングとして塗布され、頂部層は白っぽいパールグレーのオパールのような光彩を放つ。
【0030】
さらに、箔の実施形態によれば、頂部層がTiO2である。
【0031】
さらなる実施形態によれば、箔は、好ましくは、高放射率を有する白色又は無色である鉱物、例えばCaSO4、MgCO3、SiO2又はTiO2からなる放射伝達面を含む。
【0032】
さらに、箔の実施形態によれば、箔の放射吸収面は黒みがかった鉱物からなる。
【0033】
さらに、箔の実施形態によれば、放射吸収面は、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷又は他の相応する印刷技術によって塗布することができる。
【0034】
さらに、箔の実施形態によれば、コーティングには、装飾的な適用を提供するために一部他のコーティングが塗布されてもよい。
【0035】
さらに、箔の実施形態によれば、放射伝達面は、下にある放射吸収層から反射する放射を減少させるように選択されてもよい。
【0036】
さらに、箔の実施形態によれば、放射伝達面は、TiO2又はアルミニウムフレークからなる。
【0037】
さらに、箔の実施形態によれば、放射吸収層は、2,500乃至10,000ナノメートルの区間内にある電磁放射の波長スペクトルを有する。
【0038】
さらなる箔の実施形態によると、放射吸収層が、8,000乃至10,000ナノメートルの区間内にある電磁放射の波長スペクトルを有する。
【0039】
図2は、石英/エナメル(SiO2)が示したIRスペクトルを理想的な黒体のスペクトルと比較して示す。図から、調和が適度であることが分かる。調和面を得るために、オーブンキャビティの面とアルミ箔のコーティング面の両方に関する電磁放射の波長スペクトル間で一致しなければならない。
【0040】
単一層コーティングの場合、多数の材料を試験した。図2では、選択された単一層コーティングは、オーブン壁が400℃に加熱された実験で”カーボンブラック”と比較される。6ミクロンの厚みを有するコーティングの場合、平衡で達した温度は、”カーボンブラック”では216℃、そしてTiO2では154℃と測定された。比較のために、温度はアルミニウム箔では約100℃と測定された。アルミ箔にアルミニウムフレークを塗布する効果は、アルミ箔と固定化されたフレークの下面の間の光子の内部反射による。”カーボンブラック”とSiO2の混合物の表面コーティングは、”カーボンブラック”よりもより効率的であることが同様に注目に値する。これは、例えば純粋なカーボンブラックを特徴とする例と比較して後者の場合に波長が調和されることを示す。
【0041】
図3は、6ミクロンの一層コーティングを有するサンプルの機能試験で観測された最大温度と関連した時間の例を示す。被覆箔と非被覆箔の間の温度上昇の差を表に示す。アルミニウムフレークに関する高い温度は、注目すべきであるが、アルミ箔と固定化されたアルミフレークの下面の間の光子の内部反射による。
【0042】
二重のシステムは、驚いたことに、はるかにより効率的な熱伝達特性を示した。この理由は、底部層と頂部層の間でのいわゆる内部反射の点に見いだされることにある。かくして、調和コーティングと内部反射を改善する頂部層を最適に組み合わせることによって、アルミニウム箔上の”カーボンブラック”単一層の温度より高い温度が測定された。
【0043】
かくして、底部層として”カーボンブラック”を、頂部層としてTiO2を有する二重システムを用いることによって、カーボンブラックの良好な吸収特性とTiO2の外観とを組み合わせることが可能である。加えて、底部層と頂部層の間の試料内の総内部反射がTiO2の高屈折率により改善されるので、赤外線放射の吸収特性が改善される。
【0044】
図4は、2層の試料の機能試験で観測された最大温度と関連した時間を示す。アルミ箔と試料の間の温度と時間の変化、及びアルミ箔と試料の温度比が表から明白である。表から、底部層のSiO2を有する”カーボンブラック”及びSiO2を有しない”カーボンブラック”を頂部層のTiO2と組合わせると最高温度を示し、非処理箔の表面温度よりも124℃高い232℃と測定されたことが明白である。
【0045】
かくして、なされた実験は、Tカーボンブラック-TiO2, max が、Tカーボンブラック, max よりも16℃以上高いことを示す(図4参照)。かくして、”カーボンブラック”の赤外線吸収特性をTiO2の高屈折率と組み合わせることが可能である。
【0046】
図5は、カーボンブラック、カーボンブラック/SiO2及び頂部被覆としてTiO2と組合わせたカーボンブラック/SiO2を有する、選択された二重コーティングの温度上昇率及び達成された最高温度を示す。3つの曲線からなる下側一組の曲線は、非処理アルミニウム箔の温度の増加を示す。
【0047】
全ての与えられた例では、表面に、例えば輪転グラビア印刷のような印刷技術によりアルミニウム箔がコーティングされる。輪転グラビア印刷は、非常に薄いコーティングの適切且つ費用効果のよい付着を可能にし、二重層の適用は標準技術である。したがって、印刷技術は、非常に大きい生産能力と6ミクロンほどの非常に薄いコーティングの適用の選択を可能にする大いに興味深い製造方法である。
【0048】
プロセスが適用できるために、放射を放出する面(オーブン壁)と放射吸収面(箔)からの波長に関して調和する特性を有する顔料を含有する特注印刷インクを、作らなければならない。その上、達成された温度に容易に耐えることができる有機結合剤を、選択しなければならず、アクリルスチレンポリマー及びニトロセルロースが明らかな選択肢である。
【0049】
以下では、本発明の実施形態を図面を参照して記述する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】自由対流、黒い要素上の熱対流及びアルミ箔上の熱放射からの寄与に従って分割される熱放射による熱伝達を示し、熱伝達をオーブン温度の関数として示すグラフである。
【図2】理想的な黒体のスペクトルと比較した石英/エナメル(SiO2)のIRスペクトルを示す。
【図3】一層コーティングを有するサンプルでなされた試験で観測された最大温度と関連した時間の表を示す。
【図4】二層を有するサンプルでなされた試験で観測された最大温度と関連した時間を示す。
【図5】選択された二重のコーティングに関して温度上昇と到達した最大温度の割合いを示す。
【図6】アルミ箔に最も近いカーボンブラック(carbon black)頂部被覆層としてコーティングするTiO2が続く二重のコーティングの電子顕微鏡イメージを示す。
【図7】アルミ箔に最も近いTiO2コーティングに頂部被覆層としてアルミニウムフレークが続く二重のコーティングの電子顕微鏡イメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明による熱伝達システムでは、赤外線(IR)吸収面は、その吸収波長が、熱源、例えばオーブンの内面から放出される赤外線放射に適合され、或いは調和するように構成される。かくして、8,000乃至10,000ナノメートルの範囲で、最大強度で赤外放射を放出する又は放射するコーティングにかかわることがオーブンキャビティのコーティングに最も広く用いられる材料の中のエナメルを塗布したオーブンに適用される。かくして、本発明による熱伝達システムの場合には、赤外線面は、もし放射熱による加熱が急速且つ効率的に行われるならば、主として、同じ波長領域内の放射を吸収するようになっている。しかしながら、通常の光沢のあるアルミ箔が使用された場合よりもより効率的である加熱を依然として成し遂げながら、オーブンがその最高放射強度を有する場合以外の波領域から放射熱を吸収する箔を製造することが可能である。
【0052】
本発明による箔にかかわる場合、塗布されるコーティングは、1実施形態では、印刷技術により塗布され、黒くないが軽くてアルミニウムに視覚的に似ている鉱物からなってもよい。鉱物は、特に、高温オーブン壁から放出される放射に相当する所定の波長内の赤外放射を吸収することができるように選択される特性を有する。コーティングは、また、サンドイッチ層として塗布され、第一層は赤外線放射を吸収するように構成され、第二層は箔で包まれた加熱された要素からの熱がその要素に反射して戻される意味で加熱された要素から放出される放射熱を反射させるために構成される。
【0053】
材料は、材料が協同して一層のみがかかわる場合よりも広いスペクトルにわたって熱吸収を可能にするように選択される。
【0054】
かくして、1つの材料が、例えば、a-bからのスペクトル内の、他の材料はb-cからのスペクトル内の、選択的に、第3材料は、c-dからのスペクトル内の放射熱の良好な吸収を有する。それによって、a-dからのスペクトル内の良好な熱吸収をカバーする材料が成し遂げる。
【0055】
換言すれば、メリットは、例えば区間の下半分内にある電磁波長スペクトルを有する材料を、例えば区間の上半分内にある電磁波長スペクトルを有する他の材料と共に採用することができ、それによって、この区間の全てを利用する電磁波長スペクトルを有する箔面を達成する利点を十分に利用する。
【0056】
箔にアルミニウムフレークの層を設けることによって、いわゆる内部反射が底部層と頂部層の間に得られる。かくして、最適に調和するコーティングと内部反射を改善する頂部層とを組み合わせることによって、黒い表面(黒体)によって得られる温度と比較してより高い温度が、箔の内側で測定された。
【0057】
これは、人が箔を、例えば焼きポテトを作るために使用する場合に、放射熱が赤外線吸収層を通り抜けてポテトを加熱する。加熱されたとき、ポテトは熱を放出し、次いで熱は箔からポテトに向かって反射される。かくして、熱効果は、通常の箔と比較してもっと有利に用いられる。
【0058】
図1は、黒体上の放射熱が、Tオーブン=200℃で、総熱伝達を約66%だけ支配することを示す。これは、アルミ箔への放射熱の場合ではない。この場合に、総熱伝達の約7%だけが放射熱による。
【0059】
その上、箔表面に、アルミニウム表面からの赤外線放射熱の反射を減少させ、同時に赤外線放射を通過させる頂部被覆層を設ける。そのような2重コーティングの利用は、上述した周知の”カーボンブラック”面と比較して改善値を提供している驚きの測定結果を得ることが試験でわかった。
【0060】
これによって、際立ってもっと効率的な熱伝達が成し遂げられ、これに関連して、調理温度を下げることができるので、より短い調理時間及び/又はエネルギー節約を可能にする。
【0061】
図2は、石英/エナメル(SiO2)について述べられるIRスペクトルを理想的な黒体のスペクトルと比較して示す。図から、調和が適度であることが分かる。調和面を得るために、オーブンキャビティの面とアルミ箔のコーティング面との両方について電磁放射の波長スペクトル間に一致がなければならない。
【0062】
単一層コーティングの場合、多数の材料を試験した。図2では、選択された単一層コーティングは、オーブン壁を400℃まで加熱した実験で”カーボンブラック”と比較される。平衡で獲得された温度は、6ミクロンの厚みを有するコーティングの場合、”カーボンブラック”では216℃、そしてTiO2では154℃と測定された。比較のために、温度はアルミニウム箔では約100℃と測定された。アルミ箔へのアルミニウムフレークの塗布から由来する効果は、アルミ箔と固定化されたフレークの下面の間の光子の内部反射による。”カーボンブラック”とSiO2の混合物の表面コーティングは、”カーボンブラック”よりももっと効率的であることも同様に注目すべきである。しかしながら、またしても、観測が、純粋なカーボンブラックが使用された場合と比較して後者の場合には波長が調和される証明である。
【0063】
図3は、6ミクロンの一層コーティングを有するサンプルでなされた試験での観測された最大温度と関連した時間の表を示す。被覆箔及び非被覆箔を用いた試験の温度上昇の差を表に示す。アルミニウムフレークについて上昇した温度は、注目すべきであるが、アルミ箔と固定化されたフレークの下面の間の光子の内部反射による。
【0064】
二重のシステムは、驚くべきことにはるかにもっと効率的な熱伝達特性を持つことがわかった。この理由は、底部層と頂部層の間のいわゆる内部反射の点に見出されることである。かくして、調和コーティングと内部反射を改善する頂部層とを最適に組み合わせることによって、アルミニウム箔上の単一層”カーボンブラック”の温度よりも高い温度が測定された。
【0065】
かくして、底部層として”カーボンブラック”を、又頂部層としてTiO2を有する二重システムを用いることによって、カーボンブラックの良好な吸収特性とTiO2の外観とを組み合わせることが可能である。その上、底部層と頂部層の間の試料内で総内部反射がTiO2の高い屈折率により改善されるので、赤外線放射に関する吸収特性が改善される。
【0066】
図4は、2層の試料でなされる試験で観測された最大温度と関連した時間を示す。アルミ箔と試料の間の温度と時間の変化、及びアルミ箔と試料の温度比を表から明白である。表から、頂部層のTiO2と組合された底部層のSiO2を有するまた有しない”カーボンブラック”は、非処理箔の表面温度よりも124℃高い232℃と測定された最高温度を示すことが明らかである。
【0067】
かくして、実験(図4参照)は、Tカーボンブラック-TiO2, max は、Tカーボンブラック, max よりも16℃以上高い。かくして、”カーボンブラック”の赤外線吸収特性をTiO2の高屈折率と組み合わせることができる。
【0068】
図5は、カーボンブラック、カーボンブラック/SiO2及びカーボンブラック/SiO2を頂部被覆としてTiO2と組合せた、選択された二重のコーティングに関して温度上昇の割合い及び達成された最高温度を示す。3つの曲線からなる下側の一組の曲線は、非処理アルミニウム箔の温度の増加を示す。
【0069】
図6は、電子顕微鏡からのイメージを示す。イメージは、図4に関連して記載されたように二重コーティングの実施形態を示す。コーティングは、アルミ箔4に最も近いカーボンブラックフィルム3に頂部被覆としてTiO2コーティング2が続く。図の頂部に、成型化合物1が示される。コーティングは、印刷技術により塗布される。コーティングは、白く現われ、平衡で232℃の温度を示す。このタイプの箔は、例えば、中位のサイズの焼きポテトの調理時間の半分である。
【0070】
図7は、電子顕微鏡からのイメージを示す。イメージは、図4に関連して上述のように二重コーティングの他の実施形態を示す。コーティングは、アルミ箔4に最も近いTiO2コーティング2に頂部被覆として前述のアルミニウムフレーク5(アルミニウムフレークはくだかれた楕円で示される)が続く。図の頂部に、成型化合物1が見える。コーティングは、印刷技術により塗布される。このコーティングは、試験運転中199℃の温度に達し、純粋なTiO2コーティングは、154℃以上の温度に達しない。比較のために、非処理箔は、同じ処理で100℃に届かない。
【0071】
得られた例の全てにおいて、表面に、例えば輪転グラビア印刷のような印刷技術によりアルミニウム箔を付ける。輪転グラビア印刷は、非常に薄いコーティングの適切且つ費用効率のよい付着を可能にし、二重層の適用は標準技術である。したがって、印刷技術は、非常に大量生産能力と6ミクロンほどの非常に薄いコーティングの適用の選択を可能にする大いに興味深い製造方法である。
【0072】
プロセスが適用できるために、放射放出面(オーブン壁)及び放射吸収面(箔)からの波長に関して調和する特性を有する顔料を含有する特注の印刷インクを作られなければならない。その上、達成する温度に容易に耐えることができる、有機結合材を選択しなければならず、本発明ではアクリルスチレンポリマーとニトロセルロースが明らかな選択肢である。
【0073】
さらなる他の実施形態によれば、放射吸収面はやや白いないしパールグレーのオパールのような光彩を放っている外観を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーブンキャビティと、少なくとも2層を有する箔とを含む電磁放射に基づく熱伝達システムにおいて、前記箔の前記少なくとも2層は放射吸収層を含み、前記放射吸収層の前記電磁放射の前記波長スペクトルと前記オーブンキャビティの前記電磁放射の波長スペクトルは互いに合わされる、ことを特徴とする、前記熱伝達システム。
【請求項2】
熱伝達システム用の箔であって、前記箔は少なくとも2層を含み、前記箔の前記電磁放射の波長スペクトルは、熱源の波長スペクトル、例えばオーブンの前記電磁放射の波長スペクトルに合わされることを特徴とする、前記箔。
【請求項3】
前記箔は、可撓性箔として、又金属か、ポリマー、紙、ボール紙又は木に基づく他の材料のいずれかのものである不可撓性箔として構成される、放射吸収面を備えることを特徴とする、請求項2に記載の箔。
【請求項4】
前記放射吸収面は少なくとも5%の延性を有することを特徴とする、請求項2又は3の何れかに記載の箔。
【請求項5】
前記放射吸収面は前記面上の干渉性のフィルムと部分フィルムの両方として付けられることを特徴とする、請求項2乃至4の何れかに記載の箔。
【請求項6】
前記放射吸収面には耐熱有機マトリックスからなるコーティングが塗布されることを特徴とする、請求項2に記載の箔。
【請求項7】
前記コーティングは、前記一番上の層(2)が白っぽいパールグレーのオパールのような光彩を放つ二重コーティングとして塗布されることを特徴とする、請求項6に記載の箔。
【請求項8】
前記一番上の層がTiO2(2)であることを特徴とする、請求項7に記載の箔。
【請求項9】
好ましくは、高放射率を有する白又は無色である、鉱物例えばCaSO4、MgCO3、SiO2又はTiO2(2)からなる放射伝達面を含むことを特徴とする、請求項6に記載の箔。
【請求項10】
前記放射吸収面は黒みがかった鉱物からなることを特徴とする、請求項7乃至9の何れかに記載の箔。
【請求項11】
前記放射吸収面は、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷又はそれに相応する印刷技術によって塗布することができることを特徴とする、請求項7又は8の何れかに記載の箔。
【請求項12】
前記コーティングには、装飾的な適用を提供する目的で他のコーティングが部分的に塗布されることを特徴とする、請求項7乃至9の何れかに記載の箔。
【請求項13】
前記放射伝達面は、下方にある放射吸収層から反射される放射を減少させるようなものであるように選択されることを特徴とする、請求項7乃至8の何れかに記載の箔。
【請求項14】
前記放射伝達面は、TiO2(2)又はアルミニウムフレーク(5)からなることを特徴とする、請求項13に記載の箔。
【請求項15】
前記放射吸収層が、区間2,500乃至10,000ナノメートル内にある電磁放射の波長スペクトルを有することを特徴とする、請求項2乃至14の何れかに記載の箔。
【請求項16】
前記放射吸収層が、区間8,000乃至10,000ナノメートル内にある電磁放射の波長スペクトルを有することを特徴とする、請求項2乃至14の何れかに記載の箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−531172(P2010−531172A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513652(P2010−513652)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000241
【国際公開番号】WO2009/000272
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(510000563)イノビック ホールディング アンパルツセルスカブ (1)
【Fターム(参考)】