説明

電磁気ノイズ除去のための超音波法及び探触子

【課題】超音波データから電磁気ノイズを除去する。
【解決手段】超音波撮像システム(100)は、複数のトランスジューサ素子(104)を含んだ超音波探触子(109)と、ディスプレイ(118)と、該超音波探触子(109)及びディスプレイ(118)に接続されたプロセッサ(116)と、を含む。プロセッサ(116)は、複数のトランスジューサ素子(104)によって複数の信号を備えた超音波データを収集するように構成されている。プロセッサ(116)は、超音波データを解析して電磁気ノイズ信号の推定値を決定するように構成されている。プロセッサ(116)は電磁気ノイズ信号推定値に基づいて複数の信号を修正し複数のノイズ除去済み信号を生成するように構成されている。プロセッサ(116)は複数のノイズ除去済み信号に基づいて画像を作成し該画像をディスプレイ(118)上に表示するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的には超音波撮像に関し、また具体的には超音波データから電磁気ノイズを除去するための方法及び超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波撮像システムは、超音波ビームを送信しかつ検査中の対象から反射超音波ビームを受信するためのトランスジューサ素子のアレイを備える。印加する電圧の位相遅延及び振幅を選択することによって、好ましいベクトル方向に沿って伝播すると共にそのビームに沿った選択した点に集束するように組み合わせて正味の超音波が形成される超音波を発生させるような個々のトランスジューサ素子の制御が可能である。同じ解剖情報を表したデータを収集するような複数の発射を用いることがある。例えば同じラインに沿った連続するビームの送信を各ビームの焦点が直前のビームの焦点に対してシフトさせることによって、発射の各々に関するビーム形成パラメータは、焦点の変化を提供するかさもなければ各発射に関する受信データの内容を変化させるように様々とさせることがある。トランスジューサ素子に提供される入力電圧の位相回転及び振幅を変化させることによって、対象を走査するように超音波ビームを動かすことができる。
【0003】
この同じ原理は、アレイが反射させた超音波エネルギーを受信する際にも利用される。受信ビーム形成器は典型的には、超音波エネルギーの受信の間にアレイ内のトランスジューサ素子をある焦点上に集束させる。送信モードの場合と同様に、超音波エネルギーに対するこの集束性の受信は、受信するトランスジューサ素子の各々からの信号に対して別々の位相遅延及びゲインを付与することによって実現される。
【0004】
Bモード撮像の場合などにおける超音波データの収集の際に、従来の超音波撮像システムは典型的には、ラインに沿って位置決めされた単一の焦点に集束するような超音波ビームを送信している。次いでトランスジューサ素子は反射される超音波信号を検出する。超音波ビームを送信した後にトランスジューサ素子は、反射超音波ビームのサンプルを異なる時点で検出するために用いられる。サンプルの各々の収集ではトランスジューサ素子のうちの一部を用いることも、全部を用いることもある。さらに、サンプルの各々は、異なる時点またはラインに沿った深度に対応する。従来の超音波システムのトランスジューサ素子は、超音波エネルギーを電気信号に変換するのが典型的である。この電気信号は一方、受信超音波信号に関する正しい深度にトランスジューサアレイを「集束(focus)」させるために電気信号の各々に適当な位相遅延及びゲインを印加している受信ビーム形成器に送られる。ビーム形成器は典型的には、トランスジューサ素子が収集中のサンプルに適した深度上に集束するようにアレイの焦点を調整する。ビーム形成の後で、ある具体的な点またはサンプルで収集した電気信号は、ラインに沿った指定の点における対象の音響反射率を示す信号になるように合成される。画像を作成するためにプロセッサは、モニターその他の表示デバイス上に表示させるようにビーム形成器からの信号の振幅をグレイスケールにマッピングするのが典型的である。
【0005】
従来の超音波撮像システムに関する問題点の1つは、これが電磁気ノイズに対して特に敏感であることにある。外部と内部のいずれの電磁気ノイズも、トランスジューサ素子及び/またはビーム形成器からの電気信号を変化させることがある。電磁気ノイズは、補正しないままであると、超音波画像内にアーチファクトを生じさせることがある。例えばチャンネル間でコヒーレントであるような外部電磁気ノイズでは、中央領域で画素強度の上昇を示すような画像となることが多い。画素強度が上昇したこの領域のことを、その輝度領域が懐中電灯のビームに類似するため「懐中電灯(flashlight)アーチファクト」と呼ぶことがある。ランダムノイズ(すなわち、短時間で大きく変化するノイズ)の影響は特徴付けがより困難であり、さらには画素値が受信超音波信号を示さないような画像となる可能性もあり得る。
【0006】
従来の超音波撮像システムは、超音波撮像システムを電磁気ノイズから隔絶させるためのステップを取ってきた。例えば、超音波撮像システム内の電磁気ノイズを最小限にしようとする試みにおいてファラデーケージを含む様々なタイプの遮蔽が利用されてきた。しかし、こうした隔絶技法は完全には至らないのが一般的であり、また雑音の多い環境では依然としてシステム内まで大きな電磁気ノイズが侵入することがある。電磁気ノイズは、RF(または、Bowie)ナイフなどの強力な電磁気源を超音波撮像システムのごく近傍で動作させるときは特に問題となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第20050131299号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの理由や別の理由から超音波撮像に関する改良型の方法及び超音波探触子が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の短所、欠点及び問題点に対して、ここでは本明細書の以下を読みかつ理解することによって了解されるようにして対処している。
【0010】
一実施形態による超音波撮像の方法は、複数のトランスジューサ素子によって超音波データを収集するステップを含む。この超音波データは複数の信号を含む。本方法は、電磁気ノイズ信号の推定値を決定するように超音波データを解析するステップを含む。本方法はさらに、複数のノイズ除去済み信号を生成するためにこの電磁気ノイズ信号推定値に基づいて複数の信号を修正するステップを含んでおり、ここで複数のノイズ除去済み信号が包含する電磁気ノイズは該複数の信号より少ない。
【0011】
別の実施形態による超音波撮像の方法は、複数のトランスジューサ素子によって超音波データを収集するステップを含む。この超音波データは複数の信号を含む。本方法は、超音波データを収集する過程においてセンサによって電磁気ノイズ信号を検出するステップを含む。本方法は、複数のノイズ除去済み信号を生成するためにこの電磁気ノイズ信号に基づいて複数の信号を修正するステップを含んでおり、ここで複数のノイズ除去済み信号が包含するノイズは該複数の信号より少ない。
【0012】
別の実施形態による超音波探触子は、ハウジングと、該ハウジングに対して取り付けられたトランスジューサ素子と、を含む。トランスジューサ素子は、超音波エネルギーを受信しかつ該超音波エネルギーに基づいて信号を生成するように適応させている。さらに探触子は、ハウジングに取り付けられたセンサを含む。センサは、電磁気ノイズを検出し該検出した電磁気ノイズに基づいて電磁気ノイズ信号を送信するように適応させている。
【0013】
本発明に関する様々な別の特徴、目的及び利点については添付の図面及びその詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態による超音波撮像システムの概要図である。
【図2】一実施形態による超音波探触子を表した概要図である。
【図3】一実施形態による超音波探触子の断面を表した概要図である。
【図4】一実施形態による方法を表した流れ図である。
【図5】一実施形態による方法を表した流れ図である。
【図6】一実施形態によるセンサを表した概要図である。
【図7】一実施形態によるセンサを表した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、実施し得る特定の実施形態を一例として示している説明の一部を形成する添付の図面を参照している。これらの実施形態は当業者による該実施形態の実施を可能とさせるように十分詳細に記述していると共に、別の実施形態も利用し得ること並びに該実施形態の趣旨を逸脱することなく論理的、機械的、電気的及び別の変更を実施し得ることを理解されたい。以下の詳細な説明はしたがって、本発明の範囲の限定と見なすべきではない。
【0016】
図1は、超音波撮像システム100の概要図である。超音波撮像システム100は、超音波探触子109と、ユーザインタフェース115と、プロセッサ116と、メモリ120と、ディスプレイ118と、を含む。超音波探触子109は、トランスジューサアレイ106の形に配列させた複数のトランスジューサ素子104と、探触子/サブアパーチャプロセッサ(SAP)電子回路107(以下では、探触子/SAP電子回路107と呼ぶ)と、を含む。図1の概要図ではトランスジューサアレイ106の形にした10個のトランスジューサ素子104だけを図示しているが、別の実施形態はこれよりかなり多くのトランスジューサ素子を備えたトランスジューサアレイを有し得ることを理解されたい。さらに、多種多様な幾何学形状のトランスジューサアレイを用いることができる。探触子/SAP電子回路107は、素子104の切替えを制御するために用いられることがある。探触子/SAP電子回路107はさらに、素子104を1つまたは複数のサブアパーチャにグループ分けするために用いられることがある。一実施形態ではそのプロセッサ116は、トランスジューサアレイ106に送られる信号に対する送信ビーム形成を実行することがある。この送信ビーム形成は、超音波ビームを意図した箇所に集束させるためにトランスジューサアレイ内のトランスジューサ素子104に対して適当な時間遅延を付与する。プロセッサ116はさらに、トランスジューサアレイ106からの信号に対する受信ビーム形成を実行することがある。別の実施形態では、送信ビーム形成と受信ビーム形成のうちの一方または両方を実行するような単独で専用の構成要素を用いることがある。トランスジューサアレイ106内のトランスジューサ素子104は、検査中の患者の組織内に超音波信号を送出する。この超音波信号は、血球や筋肉組織など身体内の構造で後方散乱を受け、素子104に戻されるエコーが生成される。このエコーは素子104によって電気信号(すなわち、超音波データ)に変換され、またこの電気信号はプロセッサ116により受け取られる。本開示の目的において超音波データという用語は、超音波撮像システムにより収集された処理済みまたは未処理のデータを含むことがある。この電気信号はプロセッサ116によって電磁気ノイズを除去するように処理されて、ノイズ除去済み信号を形成することがある。次いでプロセッサ116はこのノイズ除去済み信号に対してビーム形成を適用する。電磁気ノイズの除去に関する詳細については以下で詳細に検討することにする。ユーザインタフェース115は、患者データの入力の制御、走査用または表示パラメータの変更、その他を含む超音波撮像システム100の動作の制御のために使用されることがある。
【0017】
プロセッサ116はさらに、超音波データの処理並びにディスプレイ118上に表示させる超音波情報フレームの作成のために使用されることがある。プロセッサ116は、選択可能な複数の超音波モダリティに従って超音波情報に対して1つまたは複数の処理操作を実行するように適応させることがある。この超音波情報は、エコー信号が受信されるに連れて走査セッション中にリアルタイムで処理されることがある。本開示の目的において「リアルタイム」という語は、意図的な遅延を全く伴わずに実行される手続きを含むものと規定される。追加としてあるいは別法として、超音波情報は走査セッション中にバッファ(図示せず)内に一時的に保存されており、ライブ動作またはオフライン動作でリアルタイム性がより低い処理を受けることがある。本発明の幾つかの実施形態は、タスクの処理を扱うために複数のプロセッサ(図示せず)を含むことがある。例えば第1のプロセッサが超音波信号の復調及びデシメーション(decimate)のために利用されることがある一方、第2のプロセッサはそのデータを画像の表示前にさらに処理するために使用されることがある。別の実施形態では異なる配列のプロセッサを用い得ることを理解されたい。
【0018】
一実施形態では、超音波撮像システム100の超音波探触子109は任意選択でセンサ121を含む。別の実施形態は、複数のセンサを有する探触子を含むことがある。センサ121は、電気接続122によってプロセッサ116に接続されることがある。センサ121は、トランスジューサアレイ106が超音波エネルギーを検出している間に電磁気ノイズ信号を検出するように適応させている。センサ121はプロセッサ116に接続されており、これによりプロセッサ116はトランスジューサアレイ106からの信号を処理する際に電磁気ノイズ信号に関する情報を用いることができる。センサ121はトランスジューサアレイ104の近傍に来るように図示している。しかし別の実施形態ではそのセンサ121は超音波探触子上のどこに配置させることもあり得る。センサ121については以下でさらに詳細に記載することにする。
【0019】
さらに図1を参照すると、超音波撮像システム100はあるフレームレート(例えば、20Hz〜60Hz)で超音波情報を連続して収集することがある。しかし別の実施形態は、超音波情報を異なるレートで収集することがある。例えば幾つかの実施形態は、超音波情報を20Hz未満の低いレートで収集することがあり、また別の実施形態は超音波情報を60Hzを超える速いレートで収集することがある。収集した超音波情報の処理済みフレームのうち即座に表示させる予定がいないフレームを保存するためにメモリ120が含まれている。例示的な一実施形態ではそのメモリ120は、少なくとも数秒分の超音波情報フレームを保存するのに十分な容量を有する。この超音波情報フレームは、その順序または収集時刻に従ったその取り出しを容易にするような方式で保存される。メモリ120は周知の任意のデータ記憶媒体を備えることがある。
【0020】
任意選択では、本発明の実施形態をコントラスト剤を利用して実現させることがある。コントラスト撮像によれば、マイクロバブルを含む超音波コントラスト剤を用いた場合に身体内の解剖学構造や血流に関する強調画像が作成される。コントラスト剤を用いながら超音波データを収集した後の画像解析は、高調波成分と線形成分を別々に含んでおり、これにより高調波成分を強調すると共にこの強調した高調波成分を利用して超音波画像を作成することができる。受信信号からの高調波成分の分離は適当なフィルタを用いて実行される。超音波撮像に関するコントラスト剤の利用については当業者によく知られており、したがってこれ以上詳細に記載しないことにする。
【0021】
本発明の様々な実施形態では超音波情報は、フレームデータの2Dや3D画像組その他を形成するように、別のまたは異なるモード関連のモジュール(例えば、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、スペクトルドプラ解剖学的Mモード、歪み、歪み率、その他)によって処理されることがある。例えば1つまたは複数のモジュールは、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、解剖学的Mモード、歪み、歪み率、スペクトルドプラ画像フレーム、及びこれらを組み合わせたもの、その他を作成することがある。画像フレームは保存されており、また各画像フレームと一緒にその画像フレームがメモリ内に収集された時点を示すタイミング情報が記録されることがある。このモジュールは例えば、画像フレームを極座標からデカルト座標に変換するための走査変換演算を実行するための走査変換モジュールを含むことがある。患者に対して手技を実施しながらメモリから画像フレームを読み取りその画像フレームをリアルタイムで表示するようなビデオプロセッサモジュールを設けることがある。ビデオプロセッサモジュールはこの画像フレームを、そこから画像を読み出し表示させる画像メモリ内に保存することがある。
【0022】
図2を参照すると、一実施形態による超音波探触子の概要図を示している。超音波探触子200はハウジング204内に配置させたトランスジューサアレイ202を含む。ハウジング204に対してはコード206が取り付けられている。
【0023】
図3は、一実施形態による線A−A’に沿った超音波探触子200の断面の概要図を示している。図2と図3の両図では同じ構成要素には同じ参照番号のラベルを付けることにする。
【0024】
図2と図3の両図を参照すると、トランスジューサアレイ202は192個のトランスジューサ素子208からなる線形アレイとすることがある。一実施形態ではそのトランスジューサ素子208は、トランスジューサ素子の幅が6素子分でありかつトランスジューサ素子の高さが32素子分であるような格子形に配列させることがある。当業者であれば追加の実施形態が異なる配列のトランスジューサアレイを含むことがあり得ることを理解されよう。例えば追加的な実施形態は、探触子の使用目的に応じて湾曲トランスジューサアレイ、マトリックストランスジューサアレイ及び機械的3Dトランスジューサアレイを含むトランスジューサアレイを用いることがある。
【0025】
トランスジューサアレイ202は、トランスジューサアレイ202から放出される超音波の成形を支援するために使用される音響レンズ210の後ろ側に位置決めされる。トランスジューサ素子208は中央領域212と1対のエッジ領域214とに分割される。図示した実施形態では、中央領域212はその中心に12の素子横列を含んでおり、またエッジ領域214は中央領域212の両側に10の素子横列を含んでいる。フェーズドアレイ探触子に関する大部分の撮像モードでは、中央領域212にあるトランスジューサ素子に対して付与される位相遅延はすべて概ね同様である。これに対してエッジ領域214にあるトランスジューサ素子は、その中央領域212からの距離のために素子のそれぞれからの信号に付与される位相遅延が大幅に異なることがある。エッジ領域214の正確なサイズはトランスジューサのタイプ並びに選択した撮像モードに応じて様々となり得ることは当業者であれば理解されよう。本開示の目的におけるエッジ領域は、トランスジューサアレイの中心から離して位置決めされた1つまたは複数の領域を含むことがある。エッジ領域はさらに中央領域により互いに分離された2つ以上の領域を含むこともあり、あるいはエッジ領域はマトリックス探触子の中央領域の周りに連続したリングまたは矩形フレームを形成することもある。
【0026】
図4は、一実施形態による方法250を表した流れ図である。方法250を実行するためには、超音波撮像システム100(図1参照)などの超音波撮像システムを利用することができる。個々のブロック252、254、256、258、260及び262は、方法250に従って実行し得る各ステップを表している。方法250の技術的効果は、電磁気ノイズを低減させた画像の表示にある。
【0027】
例示的な一実施形態では方法250は、超音波撮像システム100(図1参照)を用い、探触子109が図2及び3からの探触子200で置き換えられるように修正して実行されることがある。例示的な実施形態の超音波撮像システムは、探触子以外では超音波撮像システム100と同じ構成要素を含む。この例示的な実施形態で使用する超音波撮像システムと図1に示した超音波撮像システム100との間では、同じ構成要素を記載するために同じ参照番号を使用することにする。例示的な実施形態ではステップ252において、プロセッサ116(図1参照)により超音波データの収集が制御される。図3に示した実施形態では、超音波データを受信する際に各トランスジューサ素子208(図3参照)が単一のチャンネルにマッピングされることがある。しかし別の実施形態では、トランスジューサ素子208の群が各チャンネルに対してマッピングされることがある。さらに、別の実施形態は、様々なタスクを実行するために超音波撮像システム100において示したような単なるプロセッサ116ではなく複数のプロセッサを用いることがあることを理解されたい。超音波データを収集する処理については本明細書の上で記載しており、したがって再び詳細に記載しないことにする。
【0028】
図4を参照すると、ステップ254においてプロセッサ116(図1参照)は超音波データを解析する。一実施形態ではプロセッサ116は、電磁気ノイズなどのコヒーレントなノイズを特定するために超音波データを解析することがある。コヒーレントなノイズは箇所によって大きく変化しないため、コヒーレントなノイズはチャンネルの各々内の超音波データに対して実質的に同じ方式で影響を与えることになる。
【0029】
ここで図1、2及び3を参照すると、上述のようにコヒーレントなノイズ源からの信号部分はチャンネルのそれぞれにおいて実質的に同じと見なすことができる。しかし本明細書の上で記載したように、中央領域212にあるトランスジューサ素子からの信号は、受信ビーム形成中にこれらに付与される位相遅延が比較的小さいのが一般的である。これに対して、エッジ領域214にあるトランスジューサ素子からの信号に付与される位相遅延は、大部分の撮像モードにおいて変動が実質的により大きい。信号の位相遅延に関わらず、電磁気ノイズ信号などのコヒーレントなノイズ信号は、チャンネルのそれぞれに実質的に同じ時点で到達する。したがって、平均化などの相互相関技法の使用によって電磁気ノイズ成分を抽出することが可能である。例示的な一実施形態では、エッジ領域214にあるトランスジューサ素子のすべてからの信号を一緒に平均することがある。同じ位置からの超音波信号がエッジ領域214により大きな位相遅延差をもって到達するため、超音波信号成分は得られる平均値の中で脱落するか強く表出されないかのいずれかとなる。しかし上述のように、電磁気成分位相はチャンネルの各々において一般に同じであるため、得られた平均値は電磁気ノイズ信号を強く表している。プロセッサ116は次いで、この平均値信号を電磁気ノイズ信号の推定値として用いることがある。この例示の技法はコヒーレントなノイズ源に対してのみ十分に機能できることは当業者であれば理解されよう。さらに、別の実施形態は電磁気ノイズ信号推定値の特定のために、平均化以外の相互相関技法を用いることがある。さらに、別の実施形態は推定ノイズ信号の計算のためにエッジ領域214からのチャンネルのうちの全部を用いないことがあることも明らかとなろう。さらに幾つかの実施形態は、中央領域212にある素子に接続されたチャンネルのうちの幾つかからの信号を用いることがある。しかし相互相関技法として平均化を用いる実施形態では、その平均を中央領域からの信号に強く依存させないことが重要であり、さもないと超音波データが電磁気ノイズ信号推定値の一部として含まれるというリスクが存在することになる。
【0030】
ステップ256において、プロセッサ116は超音波データから電磁気ノイズ信号推定値を除去する。例示的な一実施形態ではその電磁気ノイズ信号推定値は、プロセッサ116が超音波データから電磁気ノイズ信号推定値を除去する前に処理されることがある。例えば電磁気ノイズ信号推定値は、「より平滑な」波形を生成するようにフィルタ処理を受けかつ修正中のチャンネルに比例したスケール調整を受けることがある。例えば電磁気ノイズ信号推定値は指定した素子またはチャンネルからの信号に加えられるゲインに基づいてスケール調整を受けることがある。しかし別の実施形態では、電磁気ノイズ信号に対してそのチャンネルに特異的な位相遅延を付与することを含め、電磁気ノイズ信号推定値に対して追加の処理を実行することがある。しかしさらに別の実施形態では、プロセッサは超音波データから未処理の電磁気ノイズ信号推定値を除去することがある。
【0031】
さらに図1、2及び3を参照するとプロセッサ116は、トランスジューサアレイ202からの信号の各々から電磁気ノイズ信号推定値(未処理値のことも処理後の値のこともあり得る)を差し引くことがある。トランスジューサアレイ200(すなわち、中央領域212とエッジ領域214の両方)内の素子の各々からの超音波データから電磁気ノイズ信号推定値が差し引かれることもあることを理解されたい。プロセッサ116は、超音波データ内の複数の信号の各々から電磁気ノイズ信号推定値を除去することによってノイズ除去済み信号の群を作成することがある。
【0032】
図1及び4を参照すると、ステップ258においてプロセッサ116はノイズ除去済み信号をビーム形成する。ステップ260においてプロセッサ116は、ビーム形成したノイズ除去済み信号から画像を作成する。プロセッサ116は、ノイズ除去済み信号から任意のタイプの超音波画像を作成することがある。例えばプロセッサ116は、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、スペクトルドプラ、その他などの撮像モードを含むノイズ除去済み信号から1つまたは複数の画像を作成することがある。プロセッサ116はさらに、別の実施形態に従った波形の生成またはある定量計測値の計算の際にノイズ除去済み信号を用いることがある。ステップ262においてプロセッサ116はディスプレイ118上に画像を表示する。
【0033】
図5は、一実施形態による方法300を表した流れ図である。方法300は、超音波撮像システム100(図1参照)などの超音波撮像システムによって実現させることがある。個々のブロック302、304、306、308、310及び312は、方法300に従って実行し得る各ステップを示している。方法300の技術的効果は、電磁気ノイズを低減した信号からの画像が表示されることである。
【0034】
図5と図1の両方を参照すると、ステップ302においてプロセッサ116は、トランスジューサアレイ104を制御して超音波データを収集する。一実施形態ではその超音波データは、トランスジューサ素子104の各々から各1つとした複数の信号を備えることがある。ステップ304において、トランスジューサアレイ104が超音波データを収集している間に、センサ121を用いて電磁気ノイズ信号が検出される。ステップ306においてプロセッサ116は超音波データの複数の信号の各々から電磁気ノイズ信号を除去する。例えばプロセッサは複数の信号の各々から電磁気ノイズ信号を差し引くことがある。一実施形態ではプロセッサ116は、電磁気ノイズ信号に対するフィルタ処理、電磁気ノイズ信号のスケール調整、及び電磁気ノイズ信号に対する位相遅延の付与のうちの1つまたは幾つかによって電磁気ノイズ信号を処理することがある。追加の実施形態に従って、電磁気ノイズ信号に対して別の処理ステップが適用されることもある。超音波データから電磁気ノイズ信号を除去することによって、プロセッサ116は超音波データから複数のノイズ除去済み信号を作成する。
【0035】
ステップ308においてプロセッサ116は、ノイズ除去済み信号をビーム形成する。このビーム形成は、入力に関してノイズ除去済み信号が使用されることを除いて標準的な受信ビーム形成と同様とすることができる。ステップ310においてプロセッサ116は、ビーム形成したノイズ除去済み信号から画像を作成する。次いでステップ312において、プロセッサ116はディスプレイ118上に画像を表示する。
【0036】
図6は、図1に示したセンサ121に関する詳細概要図である。センサ121は、トランスジューサアレイ104(図1参照)で使用したトランスジューサ素子とそのサイズ及び材料が同じであるトランスジューサ素子152を含む。一実施形態ではそのトランスジューサ素子152は、チタン酸ジルコン酸鉛などの圧電材料を備えることがある。センサ121はさらに、最上層154及び気体層156を含む。最上層154は、電磁放射が実質的に透過可能な材料から製作される。例えば一実施形態ではセンサの最上層154として、RTV60やKE772Uなどの超音波探触子のレンズで一般に用いられる材料を用いることがある。電磁気エネルギーを実質的に減衰させることがなければその他の材料を選択することもできる。気体層156は、気体と圧電材料の間の音響インピーダンス差のために音波が実質的に反射されるため、これがトランスジューサ素子152を超音波エネルギーから遮蔽する役割をする。別の実施形態ではその気体層156を、圧電材料と大きく異なる音響インピーダンスを有する別の任意の材料で置き換えることがある。センサ121は、トランスジューサ素子152があらゆるバックグラウンド電磁気ノイズを検出する一方気体層156は撮像中の患者から反射されたあらゆる超音波エネルギーを阻止するように設計される。トランスジューサ素子152の電磁気ノイズに対する応答は、トランスジューサアレイ106(図1参照)内にある他のトランスジューサ素子の任意のものと全く同様である。センサ121は、コヒーレントな電磁気ノイズと非コヒーレントな電磁気ノイズの両方に対して感応性とすることができる。
【0037】
図7は、一実施形態に従ってセンサ121の代わりに使用することが可能なセンサ160を表した概要図である。センサ160は、抵抗器162及びコンデンサ164を含む。抵抗器162とコンデンサ164は、トランスジューサアレイ148(図6参照)内のトランスジューサ素子と同様の電気インピーダンスを有するように設計されたRC回路内で接続されている。一実施形態では、抵抗器162は概ね200オームの抵抗を有することがありかつコンデンサ164は概ね230pFのキャパシタンスを有することがある。極めて類似した電気インピーダンスを有する多くの異なる電気回路を設計することが可能であること、並びに抵抗器162とコンデンサ164の値が単に例示的な一実施形態に従った値であること、は当業者であれば理解されよう。別の実施形態では同様の電気インピーダンスを有する回路を複数の容量性素子及び/または複数の抵抗性素子を用いて作成し得ることを理解されたい。さらに、電磁気ノイズが存在するときに同様の挙動をするような別のタイプの回路を設計することが可能である。センサ160は、トランスジューサ素子104(図1参照)の電気インピーダンスを近似するように設計される。しかしセンサ160は、超音波エネルギーに対しては感応性でない。したがって、センサ160からの信号をトランスジューサアレイ148内のその他のトランスジューサ素子に影響を及ぼすことがない電磁気ノイズ信号推定値として使用することが可能である。
【0038】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0039】
(図1)
100 超音波撮像システム
104 複数のトランスジューサ素子
106 トランスジューサアレイ
107 探触子/サブアパーチャプロセッサ電子回路
109 超音波探触子
115 ユーザインタフェース
116 プロセッサ
118 ディスプレイ
120 メモリ
121 センサ
122 電気接続
(図2)
200 超音波探触子
202 トランスジューサアレイ
204 ハウジング
206 コード
210 音響レンズ
(図3)
200 超音波探触子
202 トランスジューサアレイ
208 トランスジューサ素子
212 中央領域
214 エッジ領域
(図4)
250 方法
252 ステップ
254 ステップ
256 ステップ
258 ステップ
260 ステップ
262 ステップ
(図5)
300 方法
302 ステップ
304 ステップ
306 ステップ
308 ステップ
310 ステップ
312 ステップ
(図6)
121 センサ
152 トランスジューサ素子
154 最上層
156 気体層
(図7)
160 センサ
162 抵抗器
164 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトランスジューサ素子(104)を備えた超音波探触子(109)と、
ディスプレイ(118)と、
前記超音波探触子及びディスプレイに接続されたプロセッサ(116)であって、
複数のトランスジューサ素子(104)によって複数の信号を備えた超音波データを収集すること、
前記超音波データを解析し電磁気ノイズ信号の推定値を決定すること、
前記電磁気ノイズ信号推定値に基づいて複数の信号を修正し、包含する電磁気ノイズが該複数の信号と比べてより少ない複数のノイズ除去済み信号を生成すること、
前記複数のノイズ除去済み信号に基づいて画像を作成すること、
前記画像をディスプレイ(118)上に表示すること、
を行うようにように構成されたプロセッサ(116)と、
を備える超音波撮像システム(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(116)はさらに複数の信号の1つの部分組を処理するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項3】
前記プロセッサ(116)はさらに前記複数の信号の部分組を平均するように構成されている、請求項2に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項4】
前記複数の信号の部分組は、トランスジューサアレイ(106)の1つまたは複数のエッジ領域(214)に配置されたトランスジューサ素子から創出されている、請求項2に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項5】
前記プロセッサ(116)は、電磁気ノイズ信号推定値を処理しかつ該電磁気ノイズ信号推定値を複数の信号のうちの1つから差し引くことによって複数の信号を修正するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項6】
前記プロセッサ(116)は、電磁気ノイズ信号推定値に対するフィルタ処理、電磁気ノイズ信号推定値のスケール調整、及び電磁気ノイズ信号推定値に対する位相遅延の付与のうちの少なくとも1つを行うことによって電磁気ノイズ信号推定値を処理するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項7】
複数のトランスジューサ素子(104)及びセンサ(121)を備えた超音波探触子(109)と、
ディスプレイ(118)と、
前記超音波探触子及びディスプレイに接続されたプロセッサ(116)であって、
複数のトランスジューサ素子(104)によって複数の信号を備えた超音波データを収集すること、
超音波データの収集過程においてセンサ(121)によって電磁気ノイズ信号を検出すること、
前記電磁気ノイズ信号に基づいて複数の信号を修正し、包含するノイズが該複数の信号と比べてより少ない複数のノイズ除去済み信号を生成すること、
前記複数のノイズ除去済み信号に基づいて画像を作成すること、
前記画像をディスプレイ(118)上に表示すること、
を行うようにように構成されたプロセッサ(116)と、
を備える超音波撮像システム(100)。
【請求項8】
前記プロセッサ(116)は、電磁気ノイズ信号を処理しかつ該電磁気ノイズ信号を複数の信号のうちの1つから差し引くことによって複数の信号を修正するように構成されている、請求項7に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項9】
ハウジング(204)と、
前記ハウジング(204)に取り付けられている、反射させた超音波エネルギーを受け取り該反射超音波エネルギーに基づいて信号を発生させるように適応させたトランスジューサ素子(208)と、
前記ハウジング(204)に取り付けられている、電磁気ノイズを検出し該検出電磁気ノイズに基づいて電磁気ノイズ信号を生成するように適応させたセンサ(121)と、
を備える超音波探触子(109)。
【請求項10】
前記センサ(121)は超音波エネルギーから実質的に遮蔽されたトランスジューサ素子を備える、請求項9に記載の超音波探触子(109)。
【請求項11】
前記センサ(121)は気体層(156)によって超音波エネルギーから実質的に遮蔽されている、請求項10に記載の超音波探触子(109)。
【請求項12】
前記センサ(121)は、トランスジューサ素子(152)の電気インピーダンスと同様の電気インピーダンスを有する1つまたは複数の電気的構成要素を備える、請求項9に記載の超音波探触子(109)。
【請求項13】
前記トランスジューサ素子(152)と前記センサ(121)とがアレイの形に配列されている、請求項9に記載の超音波探触子(109)。
【請求項14】
前記ハウジング(204)の近位端に配置させたプロセッサをさらに備えており、該プロセッサはノイズ除去済み信号をその信号及び電磁気ノイズ信号に基づいて生成するように適応させている、請求項9に記載の超音波探触子(109)。
【請求項15】
前記センサ(121)は、トランスジューサ素子(152)が反射超音波エネルギーを受信するのと同時に電磁気ノイズを検出するように適応させている、請求項9に記載の超音波探触子(109)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55692(P2012−55692A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194461(P2011−194461)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】