説明

電磁気遮蔽素材

紙繊維層と、当該紙繊維層の表面に接着された電導層とを有する電磁気遮蔽素材を提供する。これらの構成要素は積層体を形成し、RFIDスマートチップの受信アンテナと、信号生成器の送信アンテナとの間に挟まれるように配置されると、当該チップの信号読み取りを阻害する。また、1以上の電導層とそれに接するように配置された1以上の基板とを有する電磁気遮蔽素材を含み、RFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽可能なセキュリティ用品を提供する。また、電磁気遮蔽素材を準備し、RFIDスマートチップに隣接する位置に、望ましくは当該RFIDスマートチップとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に、当該電磁気遮蔽素材を配置するステップを備えるRFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは電磁気を透過しにくい素材、より具体的には電波式個体識別(RFID)のような特定周波数の電磁波を読み取り可能な装置に対する電磁気の遮蔽を行うことを可能とする素材の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID技術の採用されたシステムとして、広く知られるものに、専用の読み取り装置を用いてデータの読み取りを可能とするRFID「タグ」と呼ばれるものがある。そのようなタグは、1以上のコンピュータチップ(「スマートチップ」)と、スマートチップにおいてエンコードされている情報を読み取り装置に送信するためにスマートチップに接続されているアンテナを備えている。使用されるスマートチップの小型化に伴い、RFID技術はより多様な装置に採用されるようになってきており、特に消費財産業においてそれが顕著である。さらに、RFID技術が商品の保管、発送および追跡を要する様々なタイプのビジネスにおいて費用効率を高めているため、RFIDシステムは日常生活においてより一般的になってきている。
【0003】
さらに、人々の追跡と識別という分野においても、FRID技術の利用が普及しつつある。例えば、人々が所定の通過点を通過する際に、より効率的に人々の識別処理を行うためと言われているが、パスポート、個人識別カード、銀行カードおよび通行定期券にRFIDタグを組み込むことが検討されている。実際、現在では、空港において、クレジットカードを航空会社のサービスボックスで端末装置に通すことにより出発前の航空機に対する搭乗手続が可能となっており、航空券の購入のために銀行カードを用いる必要もなくなっている。
【0004】
RFIDシステムによりもたらされる「効率性」は、往々にして、取り扱いに注意すべき情報の誤解や誤用、そして場合によっては明かな窃盗目的での使用をもたらす。もし、スマートチップ内蔵のカードやスティックを単にRFID読み取り装置の手前表面にかざすだけで銀行カードの口座に対し課金を行うことが可能であるならば、ユーザが個人的にRFID読み取り装置のそのような表面のすぐ近くにうっかり小銭入れや財布を置いてしまうことにより意図せぬ読み取りが行われる危険性が増す。また、ある銀行カードを課金の了承のために用いる際に、スマートチップ内蔵の他の銀行カードも(意図するか否かにかかわらず)読み取られる可能性があり、その結果、1つの購入に関し複数の課金が行われる危険性が生じる。
【0005】
さらに、数多くの読み取り装置が出回り、それらの利用が容易になると、悪徳な誰かがカードの所有者に知られないように、スマートチップ内蔵カードに記録されている注意すべき情報を読み出すことができてしまう可能性も生じる。例えば、PINを入力する人物をビデオ撮影するために、自動出納機(ATM)に小型カメラを設置することはよく知られている。同様に、チップにエンコードされ記録されている情報を読み取るために、小型の読み取り装置を設置することが行われる可能性がある。例えば、多くの人は自分の財布や小銭入れを開きそれらの中を覗き込む際、ATMに向かって立つことにより後の人に財布や小銭入れの中身を覗き見られないようにしている。ところが、ATM付近のどこか目立たない場所に配置され、遠隔操作される読み取り装置があれば、その人は他人の覗き見る目から自分の所持品をうまく保護していると思っていても、保護されていないエンコードされた情報は直接かつ容易に読み取られてしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、RFID技術を用いたチップにエンコードされた情報の読み取りをユーザが自由に妨害もしくは回避することでその情報を管理可能とする手段が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例として、本発明は、電磁気遮蔽素材を提供する。この素材は、第1の紙繊維層と、当該第1の紙繊維層に接するように配置された導電層とを備える。重合フィルムが当該導電層の表面に接するように配置されてもよい。このような配置により、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置されるとRFIDスマートチップの読み取りを防止可能な積層構造物が得られる。
【0008】
他の一実施例として、本発明は、金属化重合フィルムとそれを挟み込む第1の紙繊維層および第2の紙繊維層とを有する積層体を含む電磁気遮蔽素材を提供する。この積層体もまた、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置されるとRFIDスマートチップの読み取りが防止される。
【0009】
他の一実施例として、本発明は、積層構造の電磁気遮蔽素材を提供する。この積層構造は、紙、重合フィルム、および/もしくは電導体の組み合わせにより構成され、RFIDスマートチップの読み取りを防止する。この実施例では、本発明の他の実施例の場合と同様に、紙の上には、レーザープリンター、インクジェットプリンター、オフセット印刷機、デジタルプリンター、フレキソ印刷機、もしくは筆記具を用いた手書きといった適当な方法により、印刷もしくは書き込みがおこなわれてもよい。
【0010】
さらに他の一実施例として、本発明は、RFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽することが可能なセキュリティ用品を提供する。このセキュリティ用品は、1以上の電導層とそれに接する1以上の基板とを有する電磁気遮蔽素材を備える。その器具は封筒、ホルダー、シャーシ、スリーブ、紙・カード入れ、壁紙、その他それに類するものなど、いずれの形態をとってもよい。この器具は、財布、小銭入れ、ハンドバッグ、旅行カバン、コンピュータ用バッグ、ポケットの当て材、その他それに類するものなど、持ち運び可能な器具に統合されてもよい。電磁気遮蔽素材がRFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置されると、その電磁気遮蔽素材によりRFIDスマートチップの読み取りが防止される。
【0011】
さらに他の一実施例として、本発明は、RFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽する方法を提供する。この方法において、少なくとも電導体を有する電磁気遮蔽素材が準備され、RFIDスマートチップに隣接するように、そして望ましくはRFIDスマートチップとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に、その電磁気遮蔽素材が配置される。その結果、電磁気遮蔽素材により、信号生成器からRFIDスマートチップの受信アンテナに対し発信されるRFID信号が妨害、阻害、もしくは中止され、RFIDスマートチップが電磁気的に遮蔽される。
【0012】
本発明の一効果として、RFID経由で読み取り可能な装置(すなわちRFIDスマートチップ)にエンコードされている個人情報がその個人情報の所有者の了承を得ないでは読み取りができなくなる。具体的には、スマートチップに隣接して配置された電磁気遮蔽素材は、平面波により電磁界伝播する信号の送信および受信を著しく妨げ、読み取り装置がスマートチップに記録されている情報を確実に読み出す能力を無効にする。この能力の無効化により、RFIDスマートチップが内蔵されている器具(例えば、パスポート、個人識別カード、クレジットカード、通行定期券やプリペイドカード、ギフトカード、その他それに類するもの)を持ち運ぶ人は、その器具にエンコードされている自分の情報が自分の了承なく読み出されることがない、という安心感を持つことができる。コードや情報は、ユーザの明示的な許可がなくては、読み出されることがなくなる。
【0013】
スマートチップがユーザに持ち運ばれる小さな器具(例えば、印刷された資料など)に含まれる場合、本発明にかかる電磁気遮蔽素材がRFIDスマートチップを含む器具を保持する、封筒、ホルダー、スリーブ、その他それに類似の紙製品の形態をとってもよい。それに加え、もしくはそれに代えて、電磁気遮蔽素材がシートの形態をとって、スマートチップに隣接する位置に置かれるようにしてもよい。いずれの具体例においても、封筒、ホルダー、スリーブ、その他それに類似の紙製品に対し、様々な形態の印刷、エンボス加工、着色、裁断、穴開け、および/もしくは折り畳みといった加工が施されてもよい。また、紙に対し被膜処理が施されてもよいし、そのような処理が施されていなくてもよい。軽量という紙の特性を持つ限り、ほとんどの紙が本発明において利用可能である。電磁気遮蔽素材が封筒やその他の資料ホルダーの形態で利用される場合、透明もしくは半透明の小窓をその封筒やその他の資料ホルダーに設けることにより、開封されなくとも資料の内容が目で読まれることを可能としてもよい。
【0014】
比較的大きく容易に持ち運びができない装置にスマートチップが含まれている場合、本発明にかかる電磁気遮蔽素材はその装置の筐体や、その装置が配置される部屋全体を遮蔽するために利用されてもよい。例えば、コンピュータのハードドライブや記録媒体、その他のそれに類する電子機器の場合、それらの電子機器の筐体が電磁気遮蔽素材で裏打ちされたり、外側から覆われたり、もしくは統合されていたりしてもよい。そのような筐体の具体例として、例えば、コンピュータケース、コンピュータボックス、その他それに類するものが考えられる。その他の筐体として、ドラム型バッグ、大型バッグ、パレット梱包された器具、その他それに類するものも考えられる。電磁気遮蔽素材は、さらに、壁紙、断熱材、その他の天井や床に裏打ちされる紙製品として提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施例にかかる電磁気遮蔽素材の分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材の分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示される他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材の側断面図である。
【図4】図4は、図2に示される他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材の側断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材の斜視図である。
【図6】図6は、導電体層が重合フィルムを挟み込む3層構造の電磁気遮蔽素材の側面図である。
【図7】図7は、図6に示される電磁気遮蔽素材において、3層構造をなす重合フィルムに電導体層が統合されている場合の側面図である。
【図8】図8は、本発明にかかる電磁気遮蔽素材により遮蔽されるRFIDの読み取りを示した概略図である。
【図9】図9は、本発明にかかる電磁気遮蔽素材の用いられた器具を示した概略図である。
【図10】図10は、本発明にかかる電磁気遮蔽素材の用いられた他の器具を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照しつつ、以下に符号10で識別する電磁気遮蔽素材の一具体例につき説明する。電磁気遮蔽素材10は、第1の紙繊維層12、重合フィルム14、電導層16および第2の紙繊維層18からなる4層の積層体である。第1の紙繊維層12、重合フィルム14、電導層16および第2の紙繊維層18の各々は、その表面が隣接する他の層と互いに接するように接着剤20で接着されている。
【0017】
第1の紙繊維層12と第2の紙繊維層18はともに、繊維素材である。一実施例として、そのような繊維素材は、(綿のような)自然繊維、合成繊維、および/もしくは再生繊維のうちの1以上で作られるが、それに限定されるものではない。また、そのような繊維素材に、少なくとも望ましい不透明性をもたせるために、充填剤を含ませるようにしてもよい。必要に応じて、第1の紙繊維層12および第2の紙繊維層18の一方もしくは両方に、着色が行われてもよい。ここで、紙は合成紙や人工的な紙、その他それに類するものを含む。紙は被膜処理を施されていてもよいし、そのような処理が施されていなくてもよい。
【0018】
重合フィルム14には適当ないかなる重合素材が用いられてもよい。例えば、重合フィルム14として、ポリ乳酸(ポリラクチド)(トウモロコシのD形グルコースから作られるポリマーで、PLAとして知られる)や、ポリエステル、ポリプロピレン、これらの組み合わせ、およびそれらに類するものを用いることができるが、それらに限定されるものではない。
【0019】
紙繊維と重合フィルムの素材の例は、ロルディを発明者とする米国特許第6,673,465号と同じくロルディを発明者とする米国特許第6,926,968号に記載されており、本願は、これらの特許の内容の全体を参照情報として取り込む。
【0020】
電導層16には適当ないかなる電導素材が用いられてもよい。一実施例において、電導層16はその近隣の電波信号の妨害、阻害、もしくは障害を引き起こすように厚さ調節のなされた金属箔である。また、金属箔は電磁気遮蔽素材10に対しある程度の不透明性を与える点にも貢献する。そのような実施例において、金属としては、例えばアルミニウムが用いられるが、その他の金属(例えば、元素もしくは合金の形態における銅、銀、ニッケル、その他のそれに類するもの)が本発明において採用されてもよい。金属箔として金属が用いられることにより、電磁気遮蔽素材10を折り畳み成形しやすくなる。
【0021】
他の実施例において、電導層16は重合フィルム14および第2の紙繊維層18の少なくとも一方に付着された金属粒子である。金属粒子はアルミニウム(例えば、元素アルミニウム)、アルミニウム合金、もしくはアルミニウム混合物のいずれかであってもよいし、他の金属(例えば、銅、銀、ニッケル、その他それに類するもの)であってもよい。さらに他の実施例において、電導層16は織り加工のされた、もしくは織り加工のされていない、金属繊維である。
【0022】
さらに他の実施例において、電導層16には、カーボン、カーボン担持マトリクス材、グラファイト、それらの組み合わせ、もしくはそれに類するものといった非金属が用いられてもよい。また、カーボン・ナノチューブが一層壁もしくは二重壁のいずれの形態で用いられてもよい。電導層16としてカーボン・ナノチューブが用いられる場合、カーボン・ナノチューブは、化学蒸着やその類のものなど、電導層の厚さを正確に調整可能であれば、適当ないかなる技術により付着されてもよい。
【0023】
さらに他の実施例において、接着剤20がそれ自体、電導体であってもよい。その場合、接着剤には適当な電導素材が混合されたものが用いられる。そのような混合物としては、例えば微粒体、粉体、顆粒体、珠粒体、それらの組み合わせ、もしくはそれらに類する形態の金属が用いられるが、それらに限定されることはない。金属としては、アルミニウム(例えば、元素アルミニウム)、アルミニウム合金、もしくはアルミニウム混合物のいずれかが採用されてもよいし、他の金属(例えば、銅、銀、ニッケル、その他それに類するもの)が採用されてもよい。
【0024】
第1の紙繊維層12、重合フィルム14、電導層16および第2の紙繊維層18を接着し積層体に形成するために用いられる接着剤20は、例えば100%の固形接着剤である。ただし、本発明はこの点に関し限定されず、他の種類の接着剤が本発明において用いられてもよい。例えば、接着剤20には、溶剤型接着剤、水性接着剤、熱溶融性接着剤、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤、それらの組み合わせ、もしくはそれに類するもののいずれが採用されてもよい。
【0025】
100%の固形接着剤が第1の紙繊維層12、重合フィルム14、電導層16および第2の紙繊維層18を積層するために用いられる場合、紙繊維層と重合フィルムとの間に破壊接着が行われる。破壊接着とは、硬化後にT字剥離接着試験を行った場合、紙繊維層と重合フィルムが、紙繊維層の損傷を伴うことなく重合フィルムから紙繊維層を剥離できないような接着のことをいう。
【0026】
100%の固形接着剤の例として、低温タイプ(約華氏100度の室温で流動性を有する)で、2液混合型のものがある。また、それに代えて、高温タイプ(室温でゲル状であり、流動性を与えるために加熱を要する)で、1液型のものが用いられてもよい。接着剤は、使用される紙繊維の接着剤浸透率や強度(接着に耐えうる力)に応じて選択される。一般的に、高温タイプの接着剤は紙の浸透率や強度に不安がある場合に使用され、低温タイプの接着剤は浸透率や強度はさほど問題とされない場合に使用される。100%の固形接着剤が利用される場合、積層化の処理は通常の積層技術により行われる。
【0027】
図2に、符号110で識別される他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材を示す。電磁気遮蔽素材110は第1の紙繊維層112、重合フィルム114、電導体116および第2の紙繊維層118からなる積層体である。第1の紙繊維層112と重合フィルム114は互いに接するように接着剤120により接着されている。電導体116は重合フィルム114に含浸もしくは統合されて金属化された重合フィルムを形成し、そのため、重合フィルムに電導体を付着させる必要はない。第2の紙繊維層118は接着剤120により重合フィルム114(電導体116を含む)に接着されている。
【0028】
電磁気遮蔽素材110において、第1の紙繊維層112と第2の紙繊維層118はいずれも、(前述の実施例の場合と同様に)繊維素材であり、重合フィルム114は、十分な寸法安定性、収縮特性、均質性、紙繊維層に対する接着性、そして耐熱性を備える素材であるポリエステル、ポリプロピレン、その他それに類するものが用いられる。
【0029】
電磁気遮蔽素材110における電導体116には、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、それらの合金、その他それに類する金属の粉体のような適当な電導体の粒状物が用いられる。電導体116として、カーボン、カーボン担持マトリクス材、グラファイトもしくはカーボン・ナノチューブといった非金属、それらの組み合わせ、それらに上記の金属を組み合わせたもの、もしくはそれに類するものが用いられてもよい。この実施例において、電導体116は、図3に示すように重合フィルム114の全体に渡り均一に分散配置されてもよいし、図4に示すように重合フィルムの一方の面側に偏って配置されてもよい。
【0030】
図5に、符号210で識別される他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材を示す。電磁気遮蔽素材210は、紙繊維層212、重合フィルム214および電導層216の3層の積層体である。電導層216は紙繊維層212と重合フィルム214に挟み込まれている。しかしながら、本発明はこの点において限定されず、紙繊維層212もしくは電導層216が他の2つの層に挟み込まれていてもよい。電磁気遮蔽素材210のこれらの3層は接着剤により貼り合わせられている。電導層216には、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、それらの合金、その他それに類する金属が用いられる。電導層216として、カーボン、カーボン・ナノチューブ、カーボン担持マトリクス材、グラファイト、それらの組み合わせ、それらに上記の金属を組み合わせたもの、もしくはそれに類するものが用いられてもよい。
【0031】
続いて、図6および図7に、符号310で識別される他の実施例にかかる電磁気遮蔽素材を示す。電磁気遮蔽素材310は、第1の電導体316と第2の電導体317と、それらに挟み込まれた重合フィルム314との3層の積層体である。電磁気遮蔽素材310において、第1の電導体316および第2の電導体317はともにアルミニウム箔である。しかしながら、本発明はこの点について限定されず、第1の電導体316および第2の電導体317の少なくとも一方が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、それらの合金、もしくはそれらに類する金属の粉体からできていてもよい。さらに、カーボン、カーボン担持マトリクス材、グラファイト、カーボン・ナノチューブ、それらの組み合わせ、もしくはそれに類する非金属が用いられてもよい。電磁気遮蔽素材310において、第1の電導体316と第2の電導体317は、図6に示すように、各々、重合フィルム314の異なる面に接着されているか、もしくは図7に示すように、重合フィルムに統合され、重合フィルムの外表面近くに偏った位置に配置されている。
【0032】
図8に、RFIDからの電波に関する電磁気遮蔽素材10の遮蔽能力を説明するための図を符号40として示す。以下、電磁気遮蔽素材は重合フィルムと電導層とそれらを覆うように挟み込む2つの紙繊維層との4層の積層体であるものとするが、本発明はこの点に関し限定されず、本願において開示される他のいずれの電磁気遮蔽素材が以下の説明における装置において用いられてもよい。
【0033】
電磁気遮蔽素材10は、遮蔽能力を高めるために、送信アンテナ42と受信アンテナ44との間に挟まれるように配置される。信号生成器46は無変調の正弦波のRF信号を所定の周波数でパワーアンプ48に対し出力する。信号生成器46で生成される信号は所定の周波数(13.56 MHz)においてパワーアンプ48に予め設定された増幅率に従い増幅され、送信アンテナ42から送信される。その結果、平面波信号が電磁気遮蔽素材10に電磁界伝播する。電磁気遮蔽素材10が組み込まれる器具の仕様に応じて、伝播する信号が、チップ内に配置されたプリアンプ52およびアナライザ54を有するRFID受信部50に取り付けられた受信アンテナ44により受信されないことが望ましい。
【0034】
続いて、図9および図10においては、本発明にかかる電磁気遮蔽素材10が組み込まれるセキュリティ用品が符号60で示されている。図9において、セキュリティ用品60は封筒(例えば、安全郵便用封筒、到着確認郵便用封筒、その他それに類するもの)、保護機能付きスリーブ、シャーシ、ホルダー、壁紙、機械読取可能なRFIDカード(例えば、銀行カード、通行券、テレフォンカード、その他それに類するもの)、包装医薬品、その他それに類するものである。セキュリティ用品60が封筒、保護機能付きスリーブ、ホルダー等である場合、それは電磁気遮蔽素材10のシート片を適当に切断、折り畳み、糊付け等により加工して作成される。
【0035】
セキュリティ用品は、電磁気遮蔽素材10に加え、それに接するように配置された基板62を備えている。基板62は、RFIDシステムのスマートチップ66を収納もしくは遮蔽する封筒、スリーブ、シャーシ、ホルダー、壁紙、その他それに類するものを構成する紙、厚紙、ポリマー、その他の素材である。セキュリティ用品60が壁紙の場合、壁紙はビニルやその類の素材により補強されてもよい。
【0036】
図10に示されるように、他の実施例において、基板62はRFIDシステムのスマートチップ66に直接統合される機械読取可能なRFIDカード、もしくはそれに類するものである。いずれの実施例においても、基板62はまた別の物品70の構造と統合されていてもよい。物品70は例えば、小銭入れ、財布、ハンドバッグ、ポケットの当て材、衣料品、スーツケース、コンピュータ用バッグである。また、物品70は部屋もしくは建物全体であってもよい。さらに、いずれの実施例においても、スマートチップ66の近傍に電磁気遮蔽素材10を配置すれば、スマートチップに対する遮蔽効果が得られる。
【0037】
例−電磁気遮蔽素材の構造および遮蔽性能
異なる組成の紙繊維層、重合フィルム、金属(金属箔もしくは重合フィルムへ含有)を種々組み合わせ、その遮蔽性能を試験した。
【0038】
【表1】

【0039】
上記においては、本発明をその具体的な実施例を示して説明したが、本発明の技術的思想の範囲内において、様々な変形が行われてもよいし、ある要素が他の代替可能な要素により代替されてもよいことが、当業者により理解されるべきである。加えて、本発明の技術的思想の範囲内において、本発明の技術を適用する個々の状況や素材に応じて、必要な変形が行われてもよい。従って、本発明は詳細な説明において上述した具体的な実施例の記載に限定されず、請求の範囲に入る全ての実施例が本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10…電磁気遮蔽素材、12…第1の紙繊維層、14…重合フィルム、16…電導層、18…第2の紙繊維層、20…接着剤、42…送信アンテナ、44…受信アンテナ、46…信号生成器、48…パワーアンプ、50…RFID受信部、52…プリアンプ、54…アナライザ、60…セキュリティ用品、62…基板、66…スマートチップ、70…物品、110…電磁気遮蔽素材、112…第1の紙繊維層、114…重合フィルム、116…電導体、118…第2の紙繊維層、120…接着剤、210…電磁気遮蔽素材、212…紙繊維層、214…重合フィルム、216…電導層、310…電磁気遮蔽素材、314…重合フィルム、316…第1の電導体、317…第2の電導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の紙繊維層と、
前記第1の紙繊維層の表面に接するように接着された電導層と
を備える電磁気遮蔽素材。
【請求項2】
前記電導層の表面に接するように接着された重合フィルムを備え、
前記第1の紙繊維層、前記電導層および前記重合フィルムは積層体を形成し、当該積層体は、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置された場合に、前記RFIDスマートチップによる信号の読み取りを阻害する能力を備える
請求項1に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項3】
前記電導層と前記第1の紙繊維層との間と、前記重合フィルムと前記電導層との間とを接着するための接着剤を備える
請求項2に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項4】
前記接着剤は、100%固形接着剤、溶剤型接着剤、水性接着剤、熱溶融性接着剤、紫外線硬化型接着剤および電子線硬化型接着剤の中から選択された1もしくは2以上の組み合わせである
請求項3に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項5】
前記接着剤は電導体を含有する
請求項3に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項6】
前記第1の紙繊維層は、自然繊維、合成繊維および再生繊維の中から選択された繊維体を含む
請求項1に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項7】
前記重合フィルムは、ポリ乳酸、ポリエステルおよびポリプロピレンの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせを含む
請求項2に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項8】
前記電導層は、金属箔、金属粒、カーボンおよびカーボン・ナノチューブの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせを含む
請求項1に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項9】
前記金属箔および前記金属粒の少なくとも一方は、アルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、もしくはアルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上を含有する合金、を含む
請求項8に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項10】
前記重合フィルムの表面に接するように接着された第2の紙繊維層を備える
請求項2に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項11】
第1の紙繊維層と、
前記第1の紙繊維層の表面に接するように接着された金属化重合フィルムと、
前記金属化重合フィルムの表面に接するように接着された第2の紙繊維層と
を備え、
前記第1の紙繊維層、前記金属化重合フィルムおよび前記第2の紙繊維層は積層体を形成し、当該積層体は、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置された場合に、前記RFIDスマートチップによる信号の読み取りを阻害する能力を備える
電磁気遮蔽素材。
【請求項12】
前記金属化重合フィルムは前記第1の紙繊維層および前記第2の紙繊維層に対し、接着剤により接着されている
請求項11に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項13】
前記接着剤は電導性を有する
請求項11に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項14】
前記金属化重合フィルムは電導性素材の粒体を含有させた重合フィルムを含む
請求項11に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項15】
前記電導性素材の粒体は、アルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、もしくはアルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上を含有する合金である
請求項12に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項16】
紙繊維層と、
重合フィルムと、
前記紙繊維層と前記重合フィルムとの間に挟まれる電導体と
を備え、
前記紙繊維層、前記重合フィルムおよび前記電導体は積層体を形成し、当該積層体は、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置された場合に、前記RFIDスマートチップによる信号の読み取りを阻害する能力を備える
電磁気遮蔽素材。
【請求項17】
前記紙繊維層、前記重合フィルムおよび前記電導体を互いに接着する接着剤を備える
請求項16に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項18】
前記接着剤は電導体を含有する
請求項17に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項19】
前記電導体は、アルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、もしくはアルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上を含有する合金である
請求項16に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項20】
第1の電導体と、
第2の電導体と、
前記第1の電導体と前記第2の電導体と間に配置される重合フィルムと
を備え、
前記第1の電導体、前記第2の電導体および前記重合フィルムは積層体を形成し、当該積層体は、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置された場合に、前記RFIDスマートチップによる信号の読み取りを阻害する能力を備える
電磁気遮蔽素材。
【請求項21】
前記第1の電導体と前記第2の電導体の少なくとも一方は、アルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、もしくはアルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上を含有する合金である
請求項20に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項22】
前記第1の電導体と前記第2の電導体の少なくとも一方は、カーボン、カーボン担持マトリクス材、グラファイトおよびカーボン・ナノチューブの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせである
請求項20に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項23】
前記第1の電導体と前記第2の電導体の少なくとも一方は、前記重合フィルムに接着されている
請求項20に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項24】
前記第1の電導体と前記第2の電導体の少なくとも一方は、前記重合フィルムの表面付近に含有されている
請求項20に記載の電磁気遮蔽素材。
【請求項25】
1以上の電導層を有する電磁気遮蔽素材と、
前記電磁気遮蔽素材に接するように配置された1以上の基板と
を備え
前記電磁気遮蔽素材は、RFIDスマートチップの受信アンテナとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に配置された場合に、前記RFIDスマートチップによる信号の読み取りを阻害する能力を備える
RFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽可能なセキュリティ用品。
【請求項26】
紙およびポリマーの中から選択された1もしくは2つの組み合わせを組成とする非電導層を備える
請求項25に記載のセキュリティ用品。
【請求項27】
前記1以上の電導層は、アルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、もしくはアルミニウム、銅、銀およびニッケルの中から選択された1もしくは2以上を含有する合金、もしくはカーボン、カーボン担持マトリクス材、グラファイトおよびカーボン・ナノチューブの中から選択された1もしくは2以上の組み合わせ、のいずれかを含む
請求項25に記載のセキュリティ用品。
【請求項28】
前記1以上の基板は、前記RFIDスマートチップを収容可能な紙製の封筒、スリーブ、シャーシおよびホルダーのいずれかである
請求項25に記載のセキュリティ用品。
【請求項29】
前記1以上の基板は、壁紙である
請求項25に記載のセキュリティ用品。
【請求項30】
前記基板は、財布、小銭入れ、ハンドバッグ、ポケットの当て材、衣料品、スーツケースおよびコンピュータ用バッグのいずれかに構成部として統合されている
請求項25に記載のセキュリティ用品。
【請求項31】
少なくとも電導体を含む電磁気遮蔽素材を準備するステップと、
RFIDスマートチップに隣接する位置に前記電磁気遮蔽素材を配置するステップと、
前記RFIDスマートチップとRFID信号生成器の送信アンテナとの間に前記電磁気遮蔽素材を挟むステップと
を備えるRFIDスマートチップを電磁気的に遮蔽する方法。
【請求項32】
前記電磁気遮蔽素材は、1以上の紙繊維層と1以上の重合フィルムとを有する積層体を備える
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電磁気遮蔽素材を準備するステップは、前記RFIDスマートチップの取り付けられた文書資料を収容する器具に、前記電磁気遮蔽素材を取り付けるステップを含む
請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記文書資料を収容する器具は、封筒、保護機能付きスリーブ、ホルダー、財布、小銭入れ、ハンドバッグおよび部屋の中から選択されたいずれかである
請求項33に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−508408(P2011−508408A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508557(P2010−508557)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/063595
【国際公開番号】WO2008/144336
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509316419)チェイス コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】CHASE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】500 Myles Standish Boulevard, Taunton, Massachusetts 02780, United States of America
【Fターム(参考)】