説明

電磁波イメージング装置

【課題】電磁波をターゲットに集中させて照射でき、反射した電磁波も収束させて受信でき、もって良好な画像を得る。
【解決手段】 電磁波送信部3は、電磁波発振部6と、アレイ型送信アンテナ8と、アレイ型送信アンテナ8から放射された電磁波を所定の位置へ集中させるためのレンズ1と、を備える。電磁波受信部4は、検波器5と、アレイ型受信アンテナ7と、所定の位置から反射してくる電磁波を集中してアレイ型受信アンテナ7に入射させるためのレンズ2と、を備える。電磁波はアレイ型送信アンテナ8から放射され、レンズ1で電磁波を焦点ライン(狙い点)12へ集中させる。ターゲット面9からの反射波は、レンズ2によってアレイ型受信アンテナ7の開口部に集中される。そして、反射波はアレイ型受信アンテナ7に接続された検波器5によって検波され、電気信号に変換されてターゲット面9の2次元画像を描出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を送受信してターゲットの2次元画像を描出するための電磁波イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、電磁波イメージングとは、ターゲットの電磁波に対する応答性を2次元の画像によって可視化することが目的である。一般に市販されているデジタルカメラなどがその典型例である。2次元の画像は細かい画素の集合であり、縦横それぞれm、nの解像度を有する画像ならば、画素の総数はm×n個となる。
【0003】
もし単一の受光素子を用いて撮像するならば、m×n回受光素子を移動走査する必要があり、100×100画素程度の画像でも10000回もの移動走査回数となるゆえ、現実的な時間内に撮像を終えることができない。従って、m×n個の受光素子を予め2次元に配列したアレイが一般的に用いられている。
【0004】
また、m個の受光素子を一列に配列して、n回の移動走査を行う方式もある。この方式でも大幅に撮像時間を短縮することができる。オフィス機器として市販されているスキャナ装置などがその典型例である。
【0005】
一般に、マイクロ波帯やミリ波帯の電磁波を用いてイメージングを行う場合、ターゲットへ向けて電磁波を照射し、その反射波または透過波を検波するアクティブ方式か、またはターゲットから自発的に放射される電磁波を検波するパッシブ方式が取られる。
【0006】
アクティブ方式を採用した場合、ターゲットに対して直接電磁波を照射できるため、パッシブ方式よりも検知される反射または透過波の信号感度が良いという利点がある。マイクロ波帯やミリ波帯の電磁波発振器としては、GUNN発振器などが一般に用いられる。GUNN発振器より出力された電磁波をターゲットへ向けて照射するには、ホーン型アンテナ等の送信アンテナを用いて電磁波に指向性を持たせる必要がある。
【0007】
ここで送信アンテナによる電磁波照射の際に問題となるのが、自由空間における電磁波の拡散である。一般に、送信アンテナより自由空間に放射されたマイクロ波およびミリ波帯電磁波は近傍界において球面波となり、徐々に拡散して遠方界においては平面波となる(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】コンクリート床版検査用3次元映像化レーダの開発、小原治之、第7回地下電磁計測ワークショップ論文集、2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の技術においては、ターゲット面のある一点を狙って電磁波を照射しても、レーザー光のように電磁波を一点に集中させることは難しかった。
【0009】
また、その結果、検波器において計測される反射/透過波の強度は、ターゲット点の周辺領域における反射/透過波の強度が重畳したものとなる。このようなターゲット点周辺の電磁波重畳特性はPSF(Point Spread Function)と呼ばれ、電磁波イメージングで得られる画像の所謂ピンボケの主たる要因となっていた。
【0010】
また、このようなピンボケ画像に対して画像処理アルゴリズム等を適用して事後的にピンボケを修復する手法が取られているが、計算機による画像処理演算は時間が掛かる上、毎回確実に劣化修復に成功する保証もなかった。
【0011】
また、マイクロ波帯やミリ波帯の電磁波イメージング装置において、ターゲットの狙い点のみからの反射/透過波を抽出して信号強度を測定する技術が要求されているものの、その実現は困難であった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、電磁波をターゲットに集中させて照射し、反射した電磁波も収束させて受信し、もって良好な画像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、送信アンテナがターゲットに向けて放射して反射する電磁波を受信アンテナで受信して前記ターゲットの画像を得るための電磁波イメージング装置において、電磁波がターゲットにおいて焦点を結ぶためのレンズを前記前記送信アンテナの送信開口部に配置している。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1において、前記レンズは、前記受信アンテナの受信開口部にも配置されている。
【0015】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または2において、前記レンズは、凸レンズである。
【0016】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1または2において、前記レンズは、略円柱状である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電磁波をターゲットに集中させて照射でき、反射した電磁波も収束させて受信でき、もって良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、電磁波イメージング装置の実施の形態の構成図を示す。この図1には、電磁波を送信するための電磁波送信部3と、電磁波送信部3が送信して反射した電磁波を受信するための電磁波受信部4と、が示されている。
【0019】
電磁波送信部3は、電磁波を発振させるための電磁波発振部6と、電磁波発振部6で発振した電磁波を自由空間へ放射するためのアレイ型送信アンテナ8と、アレイ型送信アンテナ8から放射された電磁波を所定の位置へ集中させるためのレンズ1と、を備えている。
【0020】
電磁波受信部4は、受信した電磁波を電気信号に変換するための検波を行う検波器5と、電磁波を受信するためのアレイ型受信アンテナ7と、所定の位置から反射してくる電磁波を集中してアレイ型受信アンテナ7に入射させるためのレンズ2と、を備えている。
【0021】
このような図1の構成において、電磁波発振部6は、例えばマイクロ波/ミリ波帯のGUNN発振器などを用いることができる。アレイ型送信アンテナ8は、例えば複数の平面型スロットアンテナを基板上に等間隔で整列配置した構成を備えている。レンズ1は、例えばマイクロ波/ミリ波帯電磁波の集光レンズとして作用するテフロン(登録商標)レンズ等を適用することができる。
【0022】
電磁波発振部6にて発振し出力される電磁波は分岐されてアレイ型送信アンテナ8の最終端辺に整列配置された複数のスロットアンテナから自由空間へ放射される。放射された電磁波は近接あるいは接触して配置されたレンズ1に入射する。
【0023】
レンズ1は入射した電磁波を内部で屈折させてターゲット面9へ照射し、焦点ライン(狙い点)12として電磁波を集中させる。焦点ライン12は、ターゲット面9上に電磁波がレンズ1によって集中させられることにより出現する特異点であり、電磁波強度は周囲に比して高まっている。
【0024】
なお、壁紙10はコンクリート壁などのターゲット面9の表面に貼付されている。クラック11は電磁波イメージング装置で映像化する対象物の一例である。このクラック11は壁紙10の下に存在するので、壁紙10を剥がさずに目視で確認することは不可能である。そして、電磁波はこの壁紙10を透過してターゲット面9や、クラック11へ到達している。
【0025】
一方、電磁波送信部4における検波器5は、例えばショットキーダイオードを用いることができる。アレイ型受信アンテナ7はアレイ型送信アンテナ8と同じく、例えば複数の平面型スロットアンテナを基板上に整列配置した構成を備えている。レンズ2はレンズ1と同じく、例えばマイクロ波/ミリ波帯電磁波の集光レンズとして作用するテフロン(登録商標)レンズ等を用いることができる。
【0026】
電磁波送信部3よりターゲット面9に照射された電磁波は、ターゲット面9で反射して反射波となり、レンズ2の内部において屈折してアレイ型受信アンテナ7の開口部に集中する。反射波が集中する開口部付近では反射波の強度は周囲に比して高くなっている。
【0027】
そして集中した反射波は、アレイ型受信アンテナ7に接続された検波器5によって検波され、電気信号に変換され、図示しない画像処理手段によりこの電気信号に基づいてターゲット面9の2次元画像を描出する。
【0028】
このような構成の電磁波送信部3と電磁波受信部4をターゲット面9に向けて、焦点ライン12をターゲット面9上にて走査させることにより、ターゲット面9の2次元画像を取得することができる。こうして取得した2次元画像には、例えば壁紙10の下にクラック11が存在している場合には、このクラック11を明瞭に描出することができる。すなわち自由空間において拡散した電磁波をレンズ1、2によって集中(収束)させることによって、所謂ピンボケを低減した画像を描出することができる。
【0029】
なお、レンズ1、2は好ましくは凸レンズを用い、凸レンズの断面形状は図1に示すような円柱状や、あるいは半円状、連続する任意の曲線断面等であってもよい。レンズ1、2を同時に用いることで電磁波の送信/受信の両方でレンズ効果を発揮できるが、例えば電磁波の送信側にのみレンズ(レンズ1)を配してもよく、あるいは受信側のみレンズ(レンズ2)を配してもよい。さらに、レンズ1、2はアレイ型送信アンテナ8とアレイ型受信アンテナ7の両者の長手方向に沿って配置されているが、このレンズ1、2に替えてアレイを構成する送信開口/受信開口のそれぞれに個別に独立した複数のレンズを配置してもよい。
【0030】
また、ターゲット面9からの反射波ではなく透過波を測定する場合には、ターゲット面9を間に挟んで、アレイ型送信アンテナ8とレンズ1の組合わせと、アレイ型受信アンテナ7とレンズ2の組合わせと、を対向させるように設置すればよい。こうすることにより、反射波測定の場合と同様に、レンズ1によりターゲット面9に集中した電磁波をレンズ2によりさらに集中して受信することができる。
【0031】
次の図2は、レンズによる電磁波の収束を説明するための説明図を示している。
【0032】
この図2において、電磁波を収束させるためのレンズには誘電率9.0のテフロン(登録商標)レンズを用い、電磁波は100GHz帯に設定した例を示している。誘電体レンズ15に入射する前の電磁波16は平行または拡散方向に放射されている。この電磁波16が誘電体レンズ15に入射すると、誘電体レンズ15と空気との境面で屈折する。誘電体レンズ15の凸レンズ形状により光学レンズによる集光と同じく、電磁波16は収束されて焦点17に集中し、この焦点17における電磁波強度を高めることができる。
【0033】
以上説明した本実施の形態によれば、電磁波をターゲットに集中させて照射でき、反射した電磁波も収束させて受信でき、もって良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態の電磁波イメージング装置の構成図を示す。
【図2】誘電体レンズによる電磁波の収束を説明するための説明図を示す。
【符号の説明】
【0035】
1、2 レンズ
3 電磁波送信部
4 電磁波受信部
5 検波器
6 電磁波発振器
7 アレイ型受信アンテナ
8 アレイ型送信アンテナ
9 ターゲット面
10 壁紙
11 クラック
12 焦点ライン
15 誘電体レンズ
16 電磁波
17 焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナがターゲットに向けて放射して反射する電磁波を受信アンテナで受信して前記ターゲットの画像を得るための電磁波イメージング装置において、
電磁波がターゲットにおいて焦点を結ぶためのレンズを前記前記送信アンテナの送信開口部に配置したことを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項2】
前記レンズは、
前記受信アンテナの受信開口部にも配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項3】
前記レンズは、凸レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項4】
前記レンズは、略円柱状であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波イメージング装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−124510(P2007−124510A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316775(P2005−316775)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】