説明

電磁波イメージング装置

【課題】測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングする。
【解決手段】構造物の曲面に電磁波を複数の送信アンテナからそれぞれ放射する複数の送信回路と、構造物の構造物物の曲面で反射した電磁波を複数の受信アンテナでそれぞれ受信する複数の受信アンテナとを有し、送受信アンテナ13aと送受信回路13bとが一体化された複数のミリ波モジュール13をコンクリートポールCPの曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波帯の電磁波を用いて構造物の表面状態(曲面状態)をイメージングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電柱や鉄道の架線柱等に利用されているコンクリートポールCPには、製造過程や歳月の経過に伴って腐朽や欠陥が生じることが少なくない。このような腐朽や欠陥はコンクリートポールCPの強度を著しく劣化させ、電線や架線を危険な状態に陥らせる。例えば、コンクリートポールCPの内部でクラックや剥離が発生すると、構造の強度が低下し、ついには倒壊する危険性が生じることがある。
【0003】
このような事故を未然に防止するためには、コンクリートポールCPの内部のクラックや剥離を早期の段階で検知することが必要になる。簡易な手段としてはコンクリートポールCPの劣化を外部から目視によって検査する方法が考えられるが、目視ではクラックや剥離している位置や形状を正確に記録できない。また、実際にはコンクリートポールCPの側面の表面は貼紙防止シートSTによって覆われている場合が多く、過去に設置された全てのコンクリートポールCPについて貼紙防止シートSTを一旦剥がし、検査後に再び被覆するには手間がかかる。
【0004】
これに対し、従来のX線CTや超音波イメージングを、コンクリートポールCPの内部の非破壊検査に応用することが考えられる。
【0005】
X線CTは、X線の透過能が高いことを利用して、X線発生装置とX線検知装置を対向して配置し、測定対象を透過して検知されたX線のデータから測定対象内部を映像化する技術である。
【0006】
超音波イメージングは、パルス状に超音波を測定対象の表面から入射させ、測定対象中を伝搬する弾性波を検知し、腐朽や欠陥を見通す技術である。この場合も、基本的には超音波発生装置と超音波検知装置とを測定対象を挟んで対向配置させる。
【0007】
しかしながら、一般的なコンクリートポールCPは地面に対して水平にひび割れが入るため、超音波イメージングにおいては、超音波発生装置と超音波検知装置をひび割れを挟んで上下に対向して配置する必要がある。検知能としては、上下に挟み込んだどこかにあるという程度であり、正確な位置を確認することは困難である。また、超音波発生装置と超音波検知装置は振動子を用いて超音波を入射するため、表面反射を低減するためにグリースを塗布する必要がある。1本のコンクリートポールCPに対して300mgのグリースを一本使用する割合であり、完全なる非破壊、非接触ではないため、環境負荷が大きくなる。
【0008】
また、現行のX線CTにおいては、測定対象の後ろ側に検知装置を配置する必要があり、実際のコンクリートポールCPには塀や壁などの障害物が近接しているため、X線発生装置とX線検知装置の両方を設置可能なスペースを確保することは困難である。特にX線については、その電離作用による人体への影響により使用ライセンスの取得が必要であることから、公の場に設置されたコンクリートポールCPの点検をX線CTを用いて実施することは困難である。
【0009】
このような問題を解消するため、特許文献1、2には、ミリ波帯の電磁波を利用して測定対象を検査する技術が開示されている。ミリ波帯の電磁波を1つの送信アンテナから測定対象に放射し、その測定対象で反射した電磁波をアレイ化された複数の受信アンテナでそれぞれ受信し、受信した電磁波の反射強度に基づいて画像を描画することを測定対象に沿って繰り返すことにより、測定対象の表層内部の2次元透視画像をリアルタイムイメージングしている。これにより、測定対象の表面が貼紙防止シートSTで被覆されている場合であっても、その表面状態を容易に2次元画像として記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4288265号公報
【特許文献2】特許第4369915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、複数の受信アンテナが直線状に配置されているため、コンクリートポールCPのように測定表面が曲面状態(湾曲状態)である場合には、その曲面(側面)に対して垂直に放射されない電磁波の反射波を確実に受信することは困難である。また、外側に位置する受信アンテナは内側の受信アンテナよりもコンクリートポールCPの曲面(側面)からの距離が大きいため、反射波の受信強度は小さい。
【0012】
従って、コンクリートポールCPに発生したクラックや剥離の検出感度や空間分解能が低下するという問題があった。また、このような問題を避けるため、検出感度や空間分解能のより高い内側の受信アンテナで得られた測定データのみを使用することも考えられるが、コンクリートポールCPの撮像範囲が小さくなるという問題がある。
【0013】
また、コンクリートポールCPは上端ほど断面の半径が小さくて曲率が大きいため、その上端に向かって特許文献1、2に開示された従来の電磁波イメージングシステムを走査させると、直線状に配置された複数の受信アンテナのうち一部がコンクリートポールCPの曲面(側面)に接触し、その接触位置よりも高い位置では検査できないという問題もある。
【0014】
また、その従来の電磁波イメージングシステムで使用される送信アンテナ数は1つであるため、測定対象で反射した電磁波を直線状に配置された複数の受信アンテナで受信するには、放射する電磁波を測定対象に拡散放射可能な指向性の低いアンテナであることが求められる。
【0015】
すると、図10に示すように、送信アンテナの放射面中心から放射された電磁波と放射面周縁近傍から放射された電磁波とでは、各放射端から測定対象に到達するまでの距離が異なるため、測定対象に対する放射強度に大きな差が生じてしまう。また、送信アンテナの放射面中心から周縁近傍になるに従って放射される電磁波の測定対象への入射角が大きくなるため、外側の受信アンテナであっても反射された電磁波を確実に受信できない。
【0016】
従って、特許文献1、2に開示された従来技術では、測定対象の測定位置によって放射強度が異なり、送信アンテナの中心から離れた位置(即ち、2次元透視画像のエッジ画素に相当)での画素のSN比が低くなり、広範囲に渡って適切にイメージングできないという問題もある。
【0017】
また、そのような従来技術では、測定対象と受信アンテナとの間の撮像距離を放射する電磁波の波長以下にすることによって測定対象表面の微小変化により生じる散乱波の微小変化を捉えているが、例えば複数の受信アンテナとして平面スロットアンテナが使用されているため、撮像距離が確実に電磁波の波長以下となるように測定対象の表面形状に合わせて個々の受信アンテナをそれぞれ形成することは非常に難しいという問題もある。特に、測定対象がコンクリートポールCPである場合には、測定される表面は湾曲していることから、この問題は顕著に発生する。
【0018】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングする電磁波イメージング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の電磁波イメージング装置は、ミリ波帯の電磁波を放射しながら構造物の曲面を走査することにより前記曲面の表面状態をイメージングする電磁波イメージング装置において、前記構造物の曲面に前記電磁波を複数の送信アンテナからそれぞれ放射する複数の送信回路と、当該構造物の曲面で反射した電磁波を複数の受信アンテナでそれぞれ受信する複数の受信回路と、を有し、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナは、それぞれ、前記構造物の曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナが、それぞれ、構造物の曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置されているため、測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングすることができる。
【0021】
請求項2に記載の電磁波イメージング装置は、請求項1に記載の電磁波イメージング装置において、前記複数の送信アンテナが、各送信アンテナから放射される各電磁波が前記構造物の曲面に対して垂直に入射されるようにそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、複数の送信アンテナが、各送信アンテナから放射される各電磁波が構造物の曲面に対して垂直に入射されるようにそれぞれ配置されているため、構造物の曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能を均等化し、広範な撮像範囲を確保することができる。
【0023】
請求項3に記載の電磁波イメージング装置は、請求項1又は2に記載の電磁波イメージング装置において、前記複数の送信アンテナが、前記構造物の曲面に対して等しい距離となるようにそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、複数の送信アンテナが、構造物の曲面に対して等しい距離となるようにそれぞれ配置されているため、構造物の曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能をより確実に均等化し、より広範な撮像範囲を確保することができる。
【0025】
請求項4に記載の電磁波イメージング装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波イメージング装置において、前記送信アンテナ及び/又は前記受信アンテナの位置を変えることにより、前記送信アンテナ又は前記受信アンテナの電磁波放射端から前記構造物の曲面までの距離を調整するアンテナ調整機構を更に有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、送信アンテナ及び/又は受信アンテナの位置を変えることにより、送信アンテナ又は受信アンテナの電磁波放射端から構造物の曲面までの距離を調整するため、2次元透視画像の画素のSN比の低下を防止し、良好なイメージングを行うことができる。
【0027】
請求項5に記載の電磁波イメージング装置は、請求項4に記載の電磁波イメージング装置において、前記アンテナ調整機構が、前記送信アンテナの向きを変えることにより、前記構造物の曲面に対する前記電磁波の入射角を調整することを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、送信アンテナの向きを変えることにより、構造物の曲面に対する電磁波の入射角を調整するため、2次元透視画像の画素のSN比の低下をより確実に防止し、より良好なイメージングを行うことができる。
【0029】
請求項6に記載の電磁波イメージング装置は、請求項5に記載の電磁波イメージング装置において、前記アンテナ調整機構が、前記構造物の曲面に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように前記送信アンテナの位置又は向きをそれぞれ個別に調整することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、構造物の曲面に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように送信アンテナの位置又は向きをそれぞれ個別に調整するため、2次元透視画像の画素のSN比の低下を更に確実に防止し、更に良好なイメージングを行うことができる。
【0031】
請求項7に記載の電磁波イメージング装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁波イメージング装置において、前記送信アンテナと前記受信アンテナとで構成される送受信アンテナと、前記送信回路と前記受信回路とで構成される送受信回路とを一体化して1つのモジュールとし、前記電磁波の放射を当該モジュール単位で切り替える制御回路を更に有することを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、送信アンテナと受信アンテナとで構成される送受信アンテナと、送信回路と受信回路とで構成される送受信回路とを一体化して1つのモジュールとするため、モジュール配置の自由度を高くすることができる。また、電磁波の放射をモジュール単位で切り替えるため、電磁波の放射をモジュール単位で行うことが可能となり、電磁波の送受信を画素毎に完結動作させることができる。
【0033】
請求項8に記載の電磁波イメージング装置は、請求項7に記載の電磁波イメージング装置において、前記制御回路が、前記送受信アンテナから放射される前記電磁波の強度を調整することを特徴とする。
【0034】
請求項9に記載の電磁波イメージング装置は、請求項7又は8に記載の電磁波イメージング装置において、前記制御回路が、前記構造物の曲面に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように各送受信アンテナから放射される各電磁波の強度をそれぞれ個別に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングする電磁波イメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】電磁波イメージング装置の外観を斜視方向から示す図である。
【図2】電磁波イメージング装置の利用状態を示す図である。
【図3】電磁波イメージング装置の内部構成を示す図である。
【図4】電磁波イメージング装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図5】ミリ波モジュールの回路構成を示す図である。
【図6】ミリ波モジュールの配置例を示す図である。
【図7】ミリ波モジュールの他の配置例を示す図である。
【図8】アンテナ調整機構の動作を説明する図である。
【図9】アンテナ制御及び電磁波の強度制御を説明する図である。
【図10】従来の電磁波イメージングシステムの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0038】
図1は、本実施の形態に係る電磁波イメージング装置の外観を斜視方向から示す図である。電磁波イメージング装置1は1つの筐体10により構成され、その筐体10の上部には利用者によって把持される把持部11が形成され、下部の四隅には電磁波イメージング装置1を前進又は後進させる車輪12が装着されている。なお、曲面(側面)上での走査を容易にするため、その曲面(側面)と平行になるように車輪軸が設計されている。
【0039】
図2は、電磁波イメージング装置の利用状態を示す図である。利用者は、測定対象のコンクリートポールCPの曲面(側面)に貼られた貼紙防止シートSTの表面に車輪12を接触させ、コンクリートポールCPの上端又は下端の一方向に向かって貼紙防止シートSTの表面で電磁波イメージング装置1を走査させる。
【0040】
その走査中、電磁波イメージング装置1は、下部(図1の下側)からミリ波帯の電磁波を貼紙防止シートSTを透過してコンクリートポールCPの曲面(側面)に放射し、その曲面(側面)で反射した電磁波を受信して、その反射した電磁波に係る測定データを通信線3を介してデータ処理装置5に送信する。
【0041】
データ処理装置5は、受信した測定データをイメージング処理(測定データに基づく画像処理)して、走査された走査領域でのコンクリートポールCPの曲面(側面)の表面状態を2次元透視画像として画面に表示出力し、その表示結果を記録する。これにより、利用者は、コンクリートポールCPの表面に発生したクラックや剥離を検知することができる。
【0042】
なお、この電磁波イメージング装置1は、電源線7を介して接続された外部の電源装置9により電力が供給されて動作するものとする。外部の電源装置9に代えて、電磁波イメージング装置1の内部にバッテリーを具備させることも可能である。
【0043】
また、コンクリートポールCPの一例としては電柱が挙げられるが、測定対象が表面形状に曲面を持つ構造体(例えば、円柱状、円筒状、円錐形状の構造体、又はそれらの形状の一部)であれば、本実施の形態に係る電磁波イメージング装置1を利用してクラックや剥離を検知することができる。
【0044】
また、貼紙防止シートSTの表面に車輪12を接触させるのに代えて、コンクリートポールCPの表面に車輪12を直接接触させても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
図3は、電磁波イメージング装置の内部構成を示す図である。図4は、電磁波イメージング装置の機能ブロック構成を示す図である。電磁波イメージング装置1は、ミリ波モジュール13と、ミリ波モジュール把持板14と、アンテナ調整機構15と、バイアス回路16と、ベースバンド回路17と、モジュール切替器18と、制御回路19と、マイコン20と、距離センサ21と、電源回路22と、車輪12とで構成されている。そして、それら全てが1つの筐体10の内部又は外部に具備されている。
【0046】
なお、ここで説明した内部構成は本発明の説明に必要な一部であって、電磁波イメージング装置1が装置として実現される際にはフィルタ回路等その他様々な回路や機構が具備される。
【0047】
ミリ波モジュール13は、電磁波放射端が電磁波イメージング装置1の下部(図3の下側)に向けて配置された送受信アンテナ13aと、その送受信アンテナ13aに接続されて電磁波を放射及び受信する送受信回路13bとが一体化された1つのモジュールとして構成されている。そして、測定対象であるコンクリートポールCPの曲面(側面)に電磁波を送受信アンテナ13aの電磁波放射端から放射して、その曲面(側面)で反射した電磁波を当該送受信アンテナ13aで受信する。
【0048】
ここで、ミリ波モジュール13の具体的な回路構成について説明する。図5は、ミリ波モジュールの回路構成を示す図である。ミリ波モジュール13は、バイアス回路16を通じて供給される電源電圧±5.2Vの電圧レベルを電源電圧±4.5Vに変換する電圧変換回路131と、電圧変換回路131により変換された電圧レベルを更に調整し、RF回路134で発生させる電磁波の周波数を調整する電圧調整器132と、バイアス回路16から供給される変調信号(100kHz、0−2Vの矩形波)から正パルス及び負パルスをそれぞれ生成する正負パルス生成回路133と、電圧変換回路131と電圧調整器132と正負パルス生成回路133とからそれぞれ出力された正パルス信号・負パルス信号や電源電圧を用いてミリ波帯の電磁波を発生するRF回路(高周波発生回路)134と、発生した電磁波をアンテナガイド135により導いて電磁波放射端から外部に放射する送受信アンテナ13aとで構成される。
【0049】
また、送受信アンテナ13aは、測定対象であるコンクリートポールCPの曲面(側面)で反射した電磁波を受信してRF回路134に導き、RF回路134は、その導かれた電磁波を受信してベースバンド回路17に送信する。
【0050】
なお、電圧変換回路131と、電圧調整器132と、正負パルス生成回路133と、RF回路134とは、前述した送受信回路13bに相当している。また、送受信回路13bと送受信アンテナ13aとの接続部にレール機構や回動機構を設け、送受信回路13bに対する送受信アンテナ13aの位置や向きを単独で可変させることも可能である。ミリ波帯の電磁波を放射可能な送受信アンテナとしては、例えば、ホーンアンテナ、パッチアンテナ、テーパスロットアンテナ、導波管端やロッドアンテナ等で実現可能である。
【0051】
ミリ波モジュール把持板14は、複数のミリ波モジュール13を一列に並べて配置し、固定する。ここで、ミリ波モジュール把持板14によって配置されるミリ波モジュール13の配置方法について説明する。図6は、ミリ波モジュールの配置例を示す図である。図6(a)は、ミリ波モジュール把持板14に配置されたミリ波モジュール群を斜視方向から見た図であり、図6(b)は、そのミリ波モジュール群を図3の右側から見た図である。
【0052】
この配置例では、複数のミリ波モジュール13(即ち、複数の送受信アンテナ13a)を、コンクリートポールCPの曲率に合わせて円弧状にアレイ化してミリ波モジュール把持板14の一面に配置する。これにより、測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングすることができる。また、電磁波イメージング装置1の走査中に送受信アンテナ13aがコンクリートポールCPに接触することを防ぐことができる。
【0053】
具体的には、コンクリートポールCPの半径が150mmの場合には、曲率が1/150となるように複数の送受信アンテナ13aを円弧状に並べ、並べられた各送受信アンテナ13aをそれぞれ有する各ミリ波モジュール13をミリ波モジュール把持板14にそれぞれ配置し、固定する。
【0054】
例えば、隣接する送受信アンテナ13aの間隔を全て等しく5mmとし、車輪12をコンクリートポールCPの曲面(側面)に接触させた状態で各送受信アンテナ13aの電磁波放射端からコンクリートポールCPの曲面(側面)までの距離が全て等しく5mmとなるように、その曲面(側面)に対する全ての送受信アンテナ13aの高さを調整して配置する。これにより、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の放射強度分布が一定になり、電磁波の検出感度や空間分解能を均等化し、広範な撮像範囲を確保することができる。
【0055】
特に、貼紙防止シートSTが張られたコンクリートポールCPを走査する場合には、その貼紙防止シートSTの最上部の曲率に合わせて円弧状にミリ波モジュール13を配置することが望ましい。コンクリートポールCPの断面の曲率は上端ほど大きいため、貼紙防止シートSTの最上部の曲率に合わせることにより、曲率の小さいコンクリートポールCPの下端を走査する場合であっても、送受信アンテナ13aが貼紙防止シートSTに接触することを確実に防止することができる。
【0056】
図7は、ミリ波モジュールの他の配置例を示す図である。図7(a)に示すように、当該他の配置例では、複数のミリ波モジュール13(即ち、複数の送受信アンテナ13a)を、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端から放射される各電磁波がコンクリートポールCPの曲面(側面)に対して垂直に入射されるようにそれぞれ配置する。特に、コンクリートポールCPの断面が真円である場合には、図7(b)に示すように、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端から放射される各電磁波の放射軸がコンクリートポールCPの断面中心で交わるようにそれぞれ配置することで、電磁波が曲面(側面)に対して垂直に入射されるようになる。これにより、コンクリートポールCPの曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能を均等化し、広範な撮像範囲を確保することができる。
【0057】
アンテナ調整機構15は、ミリ波モジュール把持板14やミリ波モジュール13の位置や方向を制御して、送受信アンテナ13aの位置(高さ)や方向(角度)を調整する。これにより、2次元透視画像の画素のSN比の低下を防止し、良好なイメージングを行うことができる。
【0058】
すなわち、図8に示すように、ミリ波モジュール把持板14を上下方向に駆動させる。これにより、複数の送受信アンテナ13aの各電磁波放射端からコンクリートポールCPの曲面(側面)までの距離Lを一度に調整する。又は、ミリ波モジュール把持板14に配置された各ミリ波モジュール13の固定位置をそれぞれ上下方向に変動させる。これにより、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端からコンクリートポールCPの曲面(側面)までの距離Lをそれぞれ個別に調整する。
【0059】
また、ミリ波モジュール把持板14を図8の回転方向に駆動させる。これにより、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対して複数の送受信アンテナ13aから放射される各電磁波の入射角θを一度に調整する。又は、ミリ波モジュール把持板14に配置された各ミリ波モジュール13の中心軸を回転方向にそれぞれ変化させ、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端の向きをそれぞれ変える。これにより、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対して各送受信アンテナ13aから放射される各電磁波の入射角θをそれぞれ個別に調整する。
【0060】
特に、図9に示すように、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように、ミリ波モジュール把持板14又は送受信アンテナ13aの位置及び向きを調整することが望ましい。
【0061】
なお、ミリ波モジュール把持板14やミリ波モジュール13の位置や方向の制御は、例えば、任意の位置(高さ)や方向(角度)でミリ波モジュール把持板14又はミリ波モジュール13を固定するネジや、ミリ波モジュール13を把持するジグに上下方向に沿って調整可能なレールを付設すること、等により実現可能である。
【0062】
また、上述した送受信回路13bと送受信アンテナ13aとの接続部にレール機構や回動機構が設けられることにより、送受信アンテナ13aが送受信回路13bから独立して位置や方向が調整可能な場合には、送受信アンテナ13aのみをアンテナ調整機構15による制御対象とすることも可能である。
【0063】
バイアス回路16は、電源回路22から供給される電源電圧を用いて電源電圧±5.2Vの電圧をミリ波モジュール13の電圧変換回路131に出力し、100kHz、0−2Vの矩形波の変調信号をミリ波モジュール13の正負パルス生成回路133に出力する。
【0064】
ベースバンド回路17は、ミリ波モジュール13のRF回路134から送信された反射電磁波を受け取り、その反射電磁波の強度値を検出する。
【0065】
モジュール切替器18は、制御回路19からの切替信号に基づいて、動作させるミリ波モジュール13を切り替える。このようなモジュール切替器18は、切替信号が印加されるゲート電極を有するトランジスタ等のスイッチ素子により実現可能である。
【0066】
制御回路19は、電磁波を放射するミリ波モジュール13を選択して切り替えるための切替信号をモジュール切替器18に出力する。これにより、電磁波の放射をモジュール単位で行うことが可能となり、選択されたミリ波モジュール13からのみ電磁波が放射されるので、電磁波の送受信を画素毎に完結動作させることができる。
【0067】
また、制御回路19は、各ミリ波モジュール13から放射される電磁波の強度を調整する。例えば、ミリ波モジュール13のRF回路134で電磁波を生成する際に利用する電磁波強度設定値を制御する。特に、図9に示したように、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように各送受信アンテナ13aから放射される各電磁波の強度をそれぞれ調整することが望ましい。
【0068】
マイコン20は、制御回路19を経由してベースバンド回路17で検知された反射電磁波の強度を受信すると共に、距離センサ21で検知された電磁波イメージング装置1の移動距離を受信し、その移動距離に応じた各測定位置での反射電磁波の強度を通信線3を介してデータ処理装置5に送信する。
【0069】
距離センサ21は、電磁波イメージング装置1の移動距離を検知し、マイコン20に距離信号(移動距離情報)を伝送する。
【0070】
電源回路22は、電源線7を介して電源装置9から電源電圧を受け取り、電磁波イメージング装置1の各構成回路に供給する。
【0071】
なお、コンクリートポールCPの側面は湾曲しているため、車輪12の接地面がコンクリートポールCPの曲面に密着するように車輪の軸を調整可能な機構を車輪12に具備することが望ましい。例えば、車軸がベアリング等で接続される関節を複数有し、任意の角度の車軸においてもベアリングが車軸の回転を損なうことのないように円滑な動作を行うようにする。
【0072】
本実施の形態によれば、送受信アンテナ13aと送受信回路13bとが一体化された複数のミリ波モジュール13がコンクリートポールCPの曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置されているので、測定表面が曲面であっても確実にその表面状態をイメージングすることができる。また、電磁波イメージング装置1の走査中に送受信アンテナ13aがコンクリートポールCPに接触することを防止することができる。
【0073】
本実施の形態によれば、送受信アンテナ13aと送受信回路13bとが一体化された複数のミリ波モジュール13が、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端から放射される各電磁波がコンクリートポールCPの曲面(側面)に対して垂直に入射されるようにそれぞれ配置されているので、コンクリートポールCPの曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能を均等化し、広範な撮像範囲を確保することができる。
【0074】
本実施の形態によれば、送受信アンテナ13aと送受信回路13bとが一体化された複数のミリ波モジュール13が、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対して等しい距離となるようにそれぞれ配置されているので、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の放射強度分布が一定になり、コンクリートポールCPの曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能をより確実に均等化し、より広範な撮像範囲を確保することができる。
【0075】
本実施の形態によれば、コンクリートポールCPの断面が真円である場合には、各送受信アンテナ13aの電磁波放射端から放射される各電磁波の放射軸がコンクリートポールCPの断面中心で交わるようにそれぞれ配置されているので、コンクリートポールCPの曲面(側面)で反射した電磁波の検出感度や空間分解能をより確実に均等化し、より広範な撮像範囲を確保することができる。
【0076】
本実施の形態によれば、ミリ波モジュール13の位置(即ち、送受信アンテナ13aの位置)を変えることにより、送受信アンテナ13aの電磁波放射端からコンクリートポールCPの曲面(側面)までの距離を調整するので、2次元透視画像の画素のSN比の低下を防止し、良好なイメージングを行うことができる。
【0077】
本実施の形態によれば、ミリ波モジュール13の角度(即ち、送受信アンテナ13aの向き)を変えることにより、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の入射角を調整するので、2次元透視画像の画素のSN比の低下をより確実に防止し、より良好なイメージングを行うことができる。
【0078】
本実施の形態によれば、コンクリートポールCPの曲面(側面)に対する電磁波の放射強度分布が一定になるようにミリ波モジュール把持板14(即ち、送受信アンテナ13a)の位置又は向きをそれぞれ個別に調整するので、2次元透視画像の画素のSN比の低下を更に確実に防止し、更に良好なイメージングを行うことができる。
【0079】
本実施の形態によれば、送受信アンテナ13aと送受信回路13bとを一体化して1つのミリ波モジュール13とするので、ミリ波モジュール13の配置の自由度を高くすることができる。すなわち、コンクリートポールCPの形状に沿って各ミリ波モジュール13を最適な位置や方向にそれぞれ配置可能となり、局所的な電磁波の放射が可能となって、画素のSN比を改善して画素間のバラツキを抑えることができる。
【0080】
本実施の形態によれば、電磁波の放射をモジュール単位で切り替えるので、電磁波の放射をモジュール単位で行うことが可能となり、電磁波の送受信を画素毎に完結動作させることができる。
【0081】
最後に、本実施の形態では、送信機能と受信機能とを共に有する送受信アンテナ13aや送受信回路13bを用いて説明したが、送受信アンテナ13aに代えて、ホーンアンテナ等の送信アンテナや平面スロットアンテナ等の受信アンテナを用い、それら送信アンテナ及び受信アンテナを、それぞれ、コンクリートポールCPの断面の曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置した場合であっても、同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、同様に、送受信回路13bに代えて、送信機能と受信機能とをそれぞれ個別に行う送信回路や受信回路を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…電磁波イメージング装置
3…通信線
5…データ処理装置
7…電源線
9…電源装置
10…筐体
11…把持部
12…車輪
13…ミリ波モジュール
13a…送受信アンテナ
13b…送受信回路
14…ミリ波モジュール把持板
15…アンテナ調整機構
16…バイアス回路
17…ベースバンド回路
18…モジュール切替器
19…制御回路
20…マイコン
21…距離センサ
22…電源回路
131…電圧変換回路
132…電圧調整器
133…正負パルス生成回路
134…RF回路
135…アンテナガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波帯の電磁波を放射しながら構造物の曲面を走査することにより前記曲面の表面状態をイメージングする電磁波イメージング装置において、
前記構造物の曲面に前記電磁波を複数の送信アンテナからそれぞれ放射する複数の送信回路と、当該構造物の曲面で反射した電磁波を複数の受信アンテナでそれぞれ受信する複数の受信回路と、を有し、
前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナは、それぞれ、前記構造物の曲率に合わせて円弧状にアレイ化して配置されていることを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項2】
前記複数の送信アンテナは、
各送信アンテナから放射される各電磁波が前記構造物の曲面に対して垂直に入射されるようにそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項3】
前記複数の送信アンテナは、
前記構造物の曲面に対して等しい距離となるようにそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項4】
前記送信アンテナ及び/又は前記受信アンテナの位置を変えることにより、前記送信アンテナ又は前記受信アンテナの電磁波放射端から前記構造物の曲面までの距離を調整するアンテナ調整機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波イメージング装置。
【請求項5】
前記アンテナ調整機構は、
前記送信アンテナの向きを変えることにより、前記構造物の曲面に対する前記電磁波の入射角を調整することを特徴とする請求項4に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項6】
前記アンテナ調整機構は、
前記構造物の曲面に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように前記送信アンテナの位置又は向きをそれぞれ個別に調整することを特徴とする請求項5に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項7】
前記送信アンテナと前記受信アンテナとで構成される送受信アンテナと、前記送信回路と前記受信回路とで構成される送受信回路とを一体化して1つのモジュールとし、
前記電磁波の放射を当該モジュール単位で切り替える制御回路を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電磁波イメージング装置。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記送受信アンテナから放射される前記電磁波の強度を調整することを特徴とする請求項7に記載の電磁波イメージング装置。
【請求項9】
前記制御回路は、
前記構造物の曲面に対する電磁波の放射強度分布が一定になるように各送受信アンテナから放射される各電磁波の強度をそれぞれ個別に調整することを特徴とする請求項7又は8に記載の電磁波イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−117861(P2012−117861A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266244(P2010−266244)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】