説明

電磁波シールドガスケット

【課題】メタル・ラバー複合材料からなるガスケットにおいて、ガスケットの幅の増大や圧縮反力の増大を来たすことなく電磁波シールド性を与える。
【解決手段】一対の導電性部材2,3間に介在されるガスケット1であって、導電性金属からなる基板11の厚さ方向両面に、それぞれゴム状弾性材料からなり導電性部材2,3の対向面2b,3bと密接可能な弾性膜12,13が被着された構造を備え、基板11の外縁部11bが一方の導電性部材2側へ屈曲されてこの一方の導電性部材2の外側面2aに沿って延びる外側遮蔽縁1fと、基板11の内縁部11aが他方の導電性部材側3へ屈曲されてこの他方の導電性部材3の内側面3aに沿って延びる内側遮蔽縁1eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波シールドガスケットに係り、詳しくは、導電性部材の間隙に介在されて流体の漏れや異物の侵入を防止するガスケットにおいて、前記間隙を通過しようとする電磁波ノイズを遮蔽する機能を与えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば図3に示すように、内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロック、あるいはシリンダブロックとオイルパンなど、互いに結合される第一部材110と第二部材120の間に気密性の維持のために介装されるガスケット100は、弾性変形可能な金属製の基板101の両面を、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなる弾性膜102,103でコーティングしたメタル・ラバー複合材料からなるものが使用されている。
【0003】
この種のガスケット100は、塑性加工によって厚さ方向両側へ交互に突出形成された、連続した複数のシールビード100a〜100dを有し、このシールビード100a〜100dが弾性膜102,103で第一部材110と第二部材120に密接されることによって、密封機能を発揮するものである(例えば下記の特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで近年は、ハイブリッド自動車や電気自動車の普及に伴い、自動車には多くの電子機器や電気機器が搭載されているが、この電子機器等から発生する電磁波ノイズEMI(electro-magnetic interference)の放射強度が大きい場合は、周囲の機器の電子回路の破壊や誤動作などの悪影響を及ぼすおそれがあるので、電子機器等のケーシングに用いられるガスケットには、ダストや水等に対する密封性に加えて、良好な電磁波シールド性が求められる。
【0005】
しかしながら、図3に示すようなガスケット100では、例えば第一部材110が電子機器を収納する筐体、第二部材120がこの第一部材110の開口部を塞ぐように結合される蓋体である場合、第一部材110と第二部材120及びガスケット100の基板101が導電性を有する金属からなるものであっても、シールビード100a〜100dは、第一部材110と第二部材120に対して電気絶縁性の弾性膜102,103で密接しており、すなわちシールビード100a〜100dでは、第一部材110と第二部材120と基板101の間に、内部空間Sに収納された電子機器から発生する電磁波ノイズEMIの透過を許容する弾性膜102,103による電磁的隙間が存在しており、このため電磁波シールド性に乏しいものであった。
【0006】
またこの種のメタル・ラバー複合材料からなるガスケットにおいて、下記の特許文献3のように、ダストや水等に対するシール部にのみ弾性膜を形成し、他の部分では導電性金属からなる基板を、導電性金属からなる相手部材に金属接触させて電気的に導通させることによって電磁波シールド性を確保したものがあるが、弾性膜の接触によるシール部と基板の金属接触による電磁波シールド部の双方を形成する必要があるため、ガスケットの幅が広くなってしまうことは避けられず、しかも、螺子などの締結力による厚さ方向の圧縮反力も大きくなってしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−223952号公報
【特許文献2】特開2005−290359号公報
【特許文献3】特開平11−274783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、メタル・ラバー複合材料からなるガスケットにおいて、ガスケットの幅の増大や圧縮反力の増大を来たすことなく電磁波シールド性を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る電磁波シールドガスケットは、一対の導電性部材間に介在されるガスケットであって、導電性金属からなる基板の厚さ方向両面に、それぞれゴム状弾性材料からなり前記導電性部材の対向面と密接可能な弾性膜が被着された構造を備え、前記基板の外縁部が一方の導電性部材側へ屈曲されてこの一方の導電性部材の外側面に沿って延びる外側遮蔽縁と、前記基板の内縁部が他方の導電性部材側へ屈曲されてこの他方の導電性部材の内側面に沿って延びる内側遮蔽縁を有するものである。
【0010】
上記構成において、ゴム状弾性材料からなる弾性膜は、導電性部材の対向面と密接されることによって、ダストや水等に対する密封性を奏するものであり、基板は弾性変形によってその反力で前記導電性部材に対する弾性膜の密接力を与えるものであると共に、導電性金属からなることによって電磁波ノイズの透過を遮蔽するものである。また、外側遮蔽縁及び内側遮蔽縁は、導電性部材と基板の間に介在する電気絶縁性の弾性膜による電磁的隙間をその外側及び内側から覆うように延びる前記基板の一部によって、前記電磁的隙間を透過しようとする電磁波ノイズ又は前記電磁的隙間を透過した電磁波ノイズを遮蔽するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電磁波シールドガスケットによれば、電磁波ノイズの透過を遮蔽する基板の外縁部及び内縁部を互いに反対側へ屈曲して外側遮蔽縁及び内側遮蔽縁を形成した構成によって、ガスケットの幅の増大や圧縮反力の増大を来たすことなくシール性及び電磁波シールド性を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電磁波シールドガスケットの好ましい実施の形態を示す装着状態の断面図である。
【図2】本発明に係る電磁波シールドガスケットの好ましい他の実施の形態を示す装着状態の断面図である。
【図3】従来のガスケットの一例を示す装着状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電磁波シールドガスケットの好ましい実施の形態について、図1を参照しながら説明する。
【0014】
本実施例に係るガスケット1は、導電性を有する金属などからなり内部空間Sに不図示の電子機器などが収納された筐体などの第一導電性部材2と、導電性を有する金属などからなり前記第一導電性部材2の開口部を塞ぐように配置されて不図示の螺子などで結合される蓋体などの第二導電性部材3との間に介装されるものである。なお、第一導電性部材2は請求項1に記載された一方の導電性部材に相当するものであり、第二導電性部材3は請求項1に記載された他方の導電性部材に相当するものである。
【0015】
そしてこのガスケット1は、弾性変形可能な導電性金属からなる基板11の両面に、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなる弾性膜12,13がコーティングされた構造を備え、すなわちメタル・ラバー複合材料からなるものであって、塑性加工(プレス成形)によって厚さ方向両側へ交互に突出形成された、連続した複数のシールビード1a〜1dを有する。このうち、最も内側のシールビード1aと、内側から3番目のシールビード1cは第一導電性部材2側へ凸の屈曲形状、内側から2番目のシールビード1bと最も外側(内側から4番目)のシールビード1dは第二導電性部材3側へ凸の屈曲形状に形成されている。
【0016】
また、基板11の内縁部11aは、第二導電性部材3側へ屈曲されてこの第二導電性部材3の内側面3aに沿って延びることにより、内側遮蔽縁1eとなっており、基板11の外縁部11bは、第一導電性部材2側へ屈曲されてこの第一導電性部材2の外側面2aに沿って延びることにより、外側遮蔽縁1fとなっている。すなわち、内側遮蔽縁1eと外側遮蔽縁1fの間の内法の幅寸法wは、第一導電性部材2及び第二導電性部材3の厚さ寸法tと同等もしくはそれより僅かに大きく、また、内側遮蔽縁1e及び外側遮蔽縁1fの高さは、第一導電性部材2と第二導電性部材3の間の隙間Gより高いものとなっている。
【0017】
なお、この形態では、弾性膜12,13は内側遮蔽縁1e及び外側遮蔽縁1fを含む基板11の両面の全域に被着されている。
【0018】
以上のように構成された本発明の実施の形態のガスケット1は、第一導電性部材2と第二導電性部材3の対向面2b,3b間に介装されると共に、前記第一導電性部材2と第二導電性部材3を不図示の螺子を介して結合することによって、前記対向面2b,3b間で圧縮され、すなわちシールビード1a〜1dが適当に変形を受けた状態で、その反力によって、最も内側のシールビード1aと3番目のシールビード1cが、これを覆う一方の弾性膜12において第一導電性部材2の対向面2bに密接し、内側から2番目のシールビード1bと最も外側のシールビード1dが、これを覆う他方の弾性膜13において第二導電性部材3の対向面3bに密接し、これによって外部(図1における右側)からのダストや水等が、電子機器などが収納された内部空間Sに浸入するのを防止する高い密封性を奏するものである。
【0019】
導電性金属からなる基板11は、第一導電性部材2と第二導電性部材3の対向面2b,3b間で圧縮方向へ弾性変形を受けることによって、その反力で弾性膜12,13に第一導電性部材2及び第二導電性部材3に対する密接力を与えるものであると共に、内部空間Sに存在する電子機器で発生する電磁波ノイズEMIの透過を遮蔽するものである。
【0020】
そして内側遮蔽縁1eは、シールビード1b,1dにおいて第二導電性部材3と基板11の間に介在する弾性膜13による電磁的隙間を、その内側から覆う壁のように延びる基板11の内縁部11aによって、内部空間Sに存在する電子機器で発生して前記弾性膜13による電磁的隙間を透過しようとする電磁波ノイズEMIを、シールビード1bの内側で遮蔽し、周囲の電子回路などへの悪影響を抑制するものである。
【0021】
また、内部空間Sに存在する電子機器で発生した電磁波ノイズEMIの一部は、シールビード1a,1cにおいて第一導電性部材2と基板11の間に介在する弾性膜12による電磁的隙間を透過するが、外側遮蔽縁1fは、この透過した電磁波ノイズΔEMIを、前記弾性膜12による電磁的隙間をその外側から覆う壁のように延びる基板11の外縁部11bによって遮蔽し、周囲の電子回路などへの悪影響を抑制するものである。
【0022】
しかも、図1に示す実施の形態によれば、外側遮蔽縁1fは、下側(筐体である第一導電性部材2側)へ向けて屈曲された形状であるため、もし外側遮蔽縁1fと第一導電性部材2の外側面2aの間に隙間があっても、外部(図1における右側)からのダストや水等が外側遮蔽縁1fの内側にたまってしまうことはない。
【0023】
なお、シールビード1a〜1dの断面形状は、図1に示す形状以外にも種々の変更が可能であり、本発明はシールビード1a〜1dが形成されていないものにも適用することができる。
【0024】
また、図1に示す実施の形態によれば、内側遮蔽縁1e及び外側遮蔽縁1fの両面は弾性膜12,13で覆われているが、図2に示す他の実施の形態のように、内側遮蔽縁1e及び外側遮蔽縁1fでは導電性を有する基板11の内縁部11a及び外縁部11bを弾性膜12,13から露出させ、板ばね状にして第二導電性部材3の内側面3a及び第一導電性部材2の外側面2aと弾性的に金属接触可能な構成とすることによって、基板11を第一導電性部材2及び第二導電性部材3と電気的に導通させれば、電磁波ノイズEMI,ΔEMIが基板11の内縁部11a及び外縁部11b(内側遮蔽縁1e及び外側遮蔽縁1f)を回折するのを防止して、電磁波シールド機能を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガスケット
11 基板
11a 内縁部
11b 外縁部
12,13 弾性膜
1a〜1d シールビード
1e 内側遮蔽縁
1f 外側遮蔽縁
2 第一導電性部材(一方の導電性部材)
2a 外側面
3 第二導電性部材(他方の導電性部材)
3a 内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導電性部材間に介在されるガスケットであって、導電性金属からなる基板の厚さ方向両面に、それぞれゴム状弾性材料からなり前記導電性部材の対向面と密接可能な弾性膜が被着された構造を備え、前記基板の外縁部が一方の導電性部材側へ屈曲されてこの一方の導電性部材の外側面に沿って延びる外側遮蔽縁と、前記基板の内縁部が他方の導電性部材側へ屈曲されてこの他方の導電性部材の内側面に沿って延びる内側遮蔽縁を有することを特徴とする電磁波シールドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21049(P2013−21049A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151643(P2011−151643)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】