説明

電磁波シールド性複合成形体とその製造方法

【課題】家庭用の電気・電子機器等から発生させる低周波の磁界波と電磁波のシールド性が優れた電磁波シールド性複合成形体と、その製造方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む第1樹脂組成物からなる第1成形体層と、メジアン径(d50)が5〜100μmで、アスペクト比が10以上である扁平軟磁性粉末及び熱可塑性樹脂を含む第2樹脂組成物からなる平板状の射出成形体層とを有する電磁波シールド性複合成形体であって、前記平板状の射出成形体層中において前記扁平軟磁性粉末が厚み方向と直交する方向に配向された状態で含有されており、前記平板状の射出成形体層が、縦120mm、横120mm及び厚み2mmの平板であるときの周波数0.1〜100MHzの範囲の磁界波シールド効果が8dB以上であり、かつ前記周波数領域の電磁波シールド効果が25dB以上である、電磁波シールド性複合成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性複合成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の電気・電子機器のハウジングには、前記機器から発生する電磁波(磁界波)のシールド性能が要求される。
【0003】
特許文献1は、携帯機器用筺体等に使用することができる電磁波シールド成形品の製造方法の発明であり、射出成形により、導電性充填材を表面に偏在させる製造方法が記載されている。
しかし、この発明で製造された成形体の電磁波シールド性は、800MHzにおける電磁波シールド性を基準としており(段落番号0060)、実施例においては100〜1000MHzの電磁波シールド性を評価した(段落番号63)ことが記載されているが、結果を示す表1からは、前記した範囲における電磁波シールド性を確認することができない。
【0004】
特許文献2には、軟磁性金属磁性粉と結合剤を含む半導電性のシート状複合磁性体の発明が開示されている。このシート状複合磁性体は、基材となるプラスチックシートに、軟磁性金属磁性粉と結合剤複合磁性材ペーストを塗布・乾燥して製造されるものである(段落番号0023)。このため、電気・電子機器のハウジングには適用することができない。
【0005】
特許文献3は、結合材(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)40〜70体積%と、軟磁性粉末30〜60体積%からなる軟磁性体組成物の発明が開示されている。
軟磁性粉末としてケイ素鋼フレーク(Fe−6.0Si;粒径約30μm、アスペクト比約3.0)を40体積%含有する試料1のシールド効果(段落番号0031及び図2)は、400〜100MHzの範囲で高いことが示されており、200MHz以下の低周波領域における電磁波シールド効果は低くなっている。
【0006】
特許文献4は、導電層を形成するシートと樹脂成形体からなり、電磁波シールド性と制振性が良い樹脂製筺体の発明が記載されている。
導電層は、ニッケル、アルミニウム、銀、金、ステンレス、真鍮等の金属蒸着層、アルミ箔、銅箔等の金属箔が好適に用いられると記載されている(段落番号0020)。
実施例では、500MHzの電磁波シールド性が試験されているのみである(表1)。
【0007】
特許文献5は、アスペクト比が5〜50の扁平な軟磁性合金粉末を含む電磁波吸収体に関する発明である。実施例では、扁平な軟磁性合金粉末としては、鉄、クロム、アルミニウム、ケイ素からなる合金とナイロン12からなるペレットを用いて、射出成形することで板状成形品(板厚4mm)を製造しているが、具体的な射出成形条件は不明である。
【0008】
特許文献6は、軟磁性金属扁平粉末と樹脂バインダーを配合した軟磁性樹脂組成物と、その成形体に関する発明である。
請求項5には、射出圧縮成形機を用いて成形することで、扁平金属粉を一定方向に配向させる発明が記載されている。請求項5の発明の詳細については、段落番号0027において「本発明の軟磁性樹脂組成物は射出圧縮成形機を用いて成形することで、軟磁性金属扁平粉末の配向性を高め、透磁率を向上させることができる。射出圧縮成形機は通常の射出成形機に圧縮機能を持たせたものであり、金型を閉じた状態から一定距離開いてから溶融した樹脂組成物を注入し、金型を閉じて10〜100MPaの圧力で樹脂組成物を圧縮するものである。この圧縮により、軟磁性金属扁平粉末を圧縮方向に垂直に、物理的に配向させることができる。」と記載されている。
この段落番号0027の記載から明らかなとおり、請求項5の発明は、射出成形操作自体で軟磁性金属扁平粉末を配向させるものではなく、金型に溶融した軟磁性樹脂組成物を注入した後、金型を閉じて10〜100MPaの圧力で樹脂組成物を圧縮することにより配向させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−261100号公報
【特許文献2】特開2006−60008号公報
【特許文献3】特開2003−332784号公報
【特許文献4】特開2005−175243号公報
【特許文献5】特開2000−68117号公報
【特許文献6】特開2003−209010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、家庭用の電気・電子機器等から発生される低周波の磁界波と電磁波のシールド性が優れた電磁波シールド性複合成形体と、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、課題の解決手段として、
炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む第1樹脂組成物からなる第1成形体層と、
メジアン径(d50)が5〜100μmで、アスペクト比が10以上である扁平軟磁性粉末及び熱可塑性樹脂を含む第2樹脂組成物からなる平板状の射出成形体層とを有する電磁波シールド性複合成形体であって、
前記平板状の射出成形体層中において前記扁平軟磁性粉末が厚み方向と直交する方向に配向された状態で含有されており、
前記平板状の射出成形体層が、縦120mm、横120mm及び厚み2mmの平板であるときの周波数0.1〜100MHzの範囲の磁界波シールド効果が8dB以上であり、かつ前記周波数領域の電磁波シールド効果が25dB以上である、電磁波シールド性複合成形体を提供する。
【0012】
本発明は、他の課題の解決手段として、
上記の電磁波シールド性複合成形体の製造方法であって、
第2樹脂組成物を射出成形するとき、射出速度を制御して樹脂のゲート通過線速度が100〜5,000cm/secの範囲になるように射出成形して平板状の射出成形体層を製造する、電磁波シールド性複合成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電磁波シールド性複合成形体は、磁界波と電磁波のシールド性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電磁波シールド性複合成形体は、第1成形体層と平板状の射出成形体層(第2成形体層)を有するものである。
【0015】
<第1成形体層>
第1成形体層は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む第1樹脂組成物からなるものである。
【0016】
炭素繊維は公知のものであり、ピッチ系、PAN系、レーヨン系等を用いることができる。
第1成形体層に含まれている炭素繊維の繊維長及び繊維径は特に制限されるものではなく、繊維長0.05〜0.5mm、繊維径5〜20μmのものを用いることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂から選ばれる1種、同じ種類の樹脂から選ばれる2種以上の組み合わせ又は異なる種類の樹脂から選ばれる2種以上の組み合わせが好ましい。
【0018】
ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドを使用することができる。
脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1212、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1112、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド69、ポリアミド810等を使用することができる。
芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミン又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンから得られるもの、例えば、ポリアミドMXD(メタキシリレンジアミンとアジピン酸)、ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸)、ポリアミド6I(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸)、ポリアミド9T(ノナンジアミンとテレフタル酸)、ポリアミドM5T(メチルペンタジアミンとテレフタル酸)、ポリアミド10T(デカメチレンジアミンとテレフタル酸)等を使用することができる。
【0019】
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0020】
オレフィン系樹脂は、ポリプロピレン、高密度、低密度及線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(原料としてのジエン成分が10質量%以下)、ポリメチルペンテン、エチレン又はプロピレン(50モル%以上)と他の共重合モノマー(酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル等)とのランダム、ブロック、グラフト共重合体等を用いることができる。
【0021】
スチレン系樹脂は、ポリスチレン、スチレンと、アクリロニトリル、アクリル酸並びにメタクリル酸のようなビニル化合物及び/又はブタジエン、イソプレンのような共役ジエン化合物の単量体から構成される共重合体も含まれる。例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)等を挙げることができる。
【0022】
第1樹脂組成物中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の含有割合は、炭素繊維が10〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%であり、熱可塑性樹脂は合計を100質量%とする残部割合である。
【0023】
第1成形体層の厚み、形状及び大きさは、電磁波シールド性複合成形体の用途に応じて、適宜決定されるものである。
第1成形体層の厚みは、平板状の射出成形体層の厚みと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
本発明の課題を解決する観点から、第1成形体層の厚みと関連して炭素繊維の繊維長及び含有量を調整することが好ましい。
第1成形体層の厚みが5mm以下であるとき、繊維長400μm以上の炭素繊維を10質量%以上含有していることが好ましい。
【0025】
第1樹脂組成物は、本発明の課題を解決できる範囲内において、公知の各種樹脂添加剤を含有することができる。
樹脂添加剤としては、各種有機又は無機充填材((A)成分の扁平軟磁性粉末は除く)、難燃剤、発泡剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、結晶核剤、着色剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0026】
<平板状の射出成形体層>
平板状の射出成形体層(第2成形体層)は、メジアン径(D50)が5〜100μmで、アスペクト比が10以上である扁平軟磁性粉末及び熱可塑性樹脂を含む第2樹脂組成物からなるものである。
【0027】
扁平軟磁性粉末としては、鉄、鉄−シリコン合金、鉄−シリコン−アルミ合金(センダスト合金)、鉄−クロム合金、鉄−ニッケル合金等の各種金属磁性材料を用いることができる。これらの中でもセンダスト合金が好ましい。
【0028】
扁平軟磁性粉末は、メジアン径(d50)(実施例に記載の方法により測定される)が10〜80μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
扁平軟磁性粉末は、アスペクト比(実施例に記載の方法により測定される)が10〜70が好ましく、20〜50がより好ましい。
【0029】
第2樹脂組成物で用いる熱可塑性樹脂は、上記した第1樹脂組成物で用いることができる熱可塑性樹脂から選ばれるものを用いることができる。第1樹脂組成物と第2樹脂組成物で用いる熱可塑性樹脂は、同じものでもよいし、異なるものでもよい。
第2樹脂組成物は、必要に応じて、上記した第1樹脂組成物において例示した公知の樹脂添加剤を含有することができる。
【0030】
平板状の射出成形体層中においては、扁平軟磁性粉末が厚み方向と垂直な方向(但し、面に沿う一方向)に配向された状態で含有されている。
平板状の射出成形体層は、扁平軟磁性粉末が厚み方向と垂直な方向(但し、面に沿う一方向)に配向されていることから、縦120mm、横120mm及び厚み2mmの平板であるときの周波数0.1〜100MHzの範囲の磁界波シールド効果が8dB以上(好ましくは10dB以上)であり、かつ前記周波数領域の電磁波シールド効果が25dB以上(好ましくは27dB以上、より好ましくは30dB以上)である。
【0031】
平板状の射出成形体層は、本発明の課題を解決する観点から、厚みが5mm以下、密度が1〜3g/cm3であり、扁平軟磁性粉末の含有量が5〜50体積%であることが好ましい。
【0032】
<電磁波シールド性複合成形体の製造方法>
本発明の第1成形体層と射出成形体層からなる電磁波シールド性複合成形体の製造方法は、ヒートサイクル成形、インモールド成形、二色成形、塗装法及び固着一体化法等を適用することができる。
第1成形体層の成形方法は特に制限されるものではないが、射出成形体層は、下記の方法により製造する。
【0033】
平板状の射出成形体層は、第2樹脂組成物を射出成形するとき、射出速度を制御して樹脂のゲート通過線速度が100〜5,000cm/secの範囲になるように射出成形して製造する。
【0034】
樹脂のゲート通過線速度を100〜5,000cm/secの範囲にするためには、スクリュー断面積が10.2cm2、ゲートサイズ7mm×2mm(最小断面積=0.14cm2)のとき、射出速度を1.4〜70cm/secの範囲に設定すればよい。
スクリュー断面積が0.5倍又は2倍で、ゲートサイズが同じ場合には、射出速度を2.8〜140cm/sec又は0.7〜35cm/secの範囲に設定すればよい。
スクリュー断面積が同じで、ゲートサイズが0.1倍又は2倍である場合には、射出速度を0.14〜7cm/sec又は2.8〜140cm/secの範囲に設定すればよい。
【0035】
ゲート通過線速度は、好ましくは300〜4,000cm/sec、より好ましくは400〜3,000cm/secの範囲、さらに好ましくは500〜3,000cm/secの範囲、特に好ましくは500〜2,000cm/secの範囲である。
このようにして樹脂のゲート通過線速度を所定範囲になるように調整することにより、射出成形体層中において、扁平軟磁性粉末をMD方向に配向させることができ、その結果、上記した所定の磁界波シールド効果及び電磁波シールド効果を得ることができる。
MD方向は、射出成形時の樹脂流れ方向であり、平板状の射出成形体層の厚み方向と直交する方向である。
ゲート通過線速度が低い場合は、磁性粉末の配向が不十分で所望のシールド効果が得られない。したがって、磁性粉末を成形体中で十分配向させるには、ゲート通過線速度ができるだけ高いことが望ましいが、高すぎる場合はせん断熱による樹脂焼けが生じ成形体の力学的物性や外観を悪くする。
本発明の製造方法は、上記のように射出成形操作のみで(A)成分の扁平軟磁性粉末をMD方向に配向させることができるものであり、特許文献6の発明に記載されている射出成形法(金型に溶融樹脂組成物を注入した後、金型と閉じた状態で圧縮して配向させる方法)とは全く異なるものである。
【0036】
本発明の電磁波シールド性複合成形体は、電気絶縁性を有するようにすることができる。
電気絶縁性を有するようにするときは、平板状の射出成形体層(第2樹脂組成物)に含まれる扁平軟磁性粉末に対して絶縁性材料で表面処理する方法、本発明の平板状の射出成形体表面に絶縁性材料からなる層(絶縁層)を形成する方法を適用することができる。
絶縁層は、平板状の射出成形体表面に樹脂塗料を塗布して絶縁性塗膜を形成する方法、樹脂フィルムや樹脂シートを貼り付ける(接着、融着、溶着)方法等を適用することができる。
【0037】
本発明の電磁波シールド性複合成形体は、磁界波及び電磁波を発生する各種の電気・電子機器のハウジング(筐体)用等として好適である。
【実施例】
【0038】
(1)扁平軟磁性粉末のメジアン径(d50)及びアスペクト比
磁性粉のメジアン径(d50)は、レーザー回折型粒度分布計(島津製作所(株)製、SALD−2000J)を用いて測定した。また、アスペクト比は、前記メジアン径と平均厚みの比(メジアン径/平均厚み)とした。平均厚みは、扁平粉体を走査型電子顕微鏡で観察し、視野内で厚みを確認できるもの20個程度について厚みを測定し、それらの平均値として求めた。
【0039】
(2)ゲート通過線速度
射出成形における「ゲート通過線速度」は、「射出率」と「ゲート最小断面積」の比(射出率/ゲート最小断面積)として求めた。「射出率」は「射出速度」と「スクリュー断面積」の積(射出速度×スクリュー断面積)として算出できる。したがって、「射出速度」を制御することによって、「ゲート通過線速度」を制御することができる。
【0040】
(3)電磁波シールド効果(KEC法/電界波、磁界波)
ANRITSU製のMA8602B測定器を用いて、KEC法により近傍界の電界/磁界シールド特性を周波数0.1MHz〜100MHzの範囲で測定した。数値が大きいほど、電磁波シールド性が良いことを示している。
【0041】
実施例及び比較例
表1に示すフィラー成分と熱可塑性樹脂を二軸押出機(HK25D、パーカーコーポレーション製)を用いて混練したものをペレタイザーに供給して、第1樹脂組成物(第1樹脂組成物−1と第1樹脂組成物−2)と第2樹脂組成物(第2樹脂組成物−1と第2樹脂組成物−2)の各ペレットを得た。フィラー成分は熱可塑性樹脂と一括で主フィーダーより供給した。二軸押出機による混練条件は、シリンダー温度230〜250℃、スクリュー回転数200rpm、フィード量6〜20kg/hであった。
【0042】
得られた各組成物のペレットを用いて、下記の条件で射出成形して、120mm×120mm×2mmの正方形板を得た。
次に表2に示す組み合わせで2枚の正方形板を組み合わせたものを複合成形体として、磁界波と電磁波のシールド効果を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
射出成形機:住友重機工業社製、型式:SH100−NIV
射出速度:8.5cm/sec
スクリュー断面積:10.2cm2
ゲートサイズ:2mm×7mm(最小断面積=0.14cm2
射出率:86.7cm3/sec
ゲート通過線速度:619cm/sec
【0044】
【表1】

【0045】
CF:東邦テナックス,TENAX−J HT C413 6MM
NiメッキCF:東邦テナックス ベスファイMC HTA−C6−US
扁平軟磁性粉末:山陽特殊製鋼(株)の品名PST−S−FM60(センダスト合金粉末,扁平状,メジアン径(d50)45μm,アスペクト比>20
ABS1:テクノポリマー社,テクノABS 0−T654
ABS2:テクノポリマー社,テクノABS DPT651
AS1:ダイセルポリマー(株),セビアン−N030SF
PA1:ポリアミド6 DCM ノバミッド1005PJ
PA2:ポリアミド6 DCM ノバミッド1007J
【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む第1樹脂組成物からなる第1成形体層と、
メジアン径(d50)が5〜100μmで、アスペクト比が10以上である扁平軟磁性粉末及び熱可塑性樹脂を含む第2樹脂組成物からなる平板状の射出成形体層とを有する電磁波シールド性複合成形体であって、
前記平板状の射出成形体層中において前記扁平軟磁性粉末が厚み方向と直交する方向に配向された状態で含有されており、
前記平板状の射出成形体層が、縦120mm、横120mm及び厚み2mmの平板であるときの周波数0.1〜100MHzの範囲の磁界波シールド効果が8dB以上であり、かつ前記周波数領域の電磁波シールド効果が25dB以上である、電磁波シールド性複合成形体。
【請求項2】
第1成形体層が、厚みが5mm以下で、繊維長400μm以上の炭素繊維を10質量%以上含有しており、
平板状の射出成形体層が、厚みが5mm以下、密度が1〜3g/cm3であり、扁平軟磁性粉末の含有量が5〜50体積%である、請求項1記載の電磁波シールド性複合成形体。
【請求項3】
第2樹脂組成物に含まれる扁平軟磁性粉末がセンダスト合金(Fe−Si−Al)からなるものである、請求項1又は2記載の電磁波シールド性複合成形体。
【請求項4】
第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂から選ばれる1種又は2種以上のものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の電磁波シールド性複合成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の電磁波シールド性複合成形体の製造方法であって、
第2樹脂組成物を射出成形するとき、射出速度を制御して樹脂のゲート通過線速度が100〜5,000cm/secの範囲になるように射出成形して平板状の射出成形体層を製造する、電磁波シールド性複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記第2樹脂組成物を射出成形するときの前記ゲート通過線速度が500〜3,000cm/secの範囲になるように射出速度を制御して射出成形する、請求項5記載の電磁波シールド性複合成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−151206(P2012−151206A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7601(P2011−7601)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】