説明

電磁波シールド材、及びその製造方法

電磁波シールド材は透明基材11と、透明基材11の一方の面に接着剤13を介して設けられ開口部105を形成するライン部107を有するメッシュ状金属層21とを備えている。メッシュ状金属層21のライン部107の透明基材11側の面に、第1黒化層25Aと防錆層23Aとが順次設けられている。メッシュ状金属層21のライン部107の透明基材11と反対側の面およびライン部107の側面に、第2黒化層25Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極線管(以下CRTともいう)、プラズマディスプレイパネル(以下PDPともいう)などのディスプレイから発生するEMI(Electro Magnetic Interference;電磁(波)障害)をシールドする電磁波シールド材に関し、さらに詳しくは、ディスプレイの表示画像の明所での視認性に優れ、また、製造工程においては、少ない製造工程で製造できる電磁波シールド材、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「NIR」は「近赤外線」及び「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」で、略語、同意語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(技術の背景)近年、電気電子機器の機能高度化と増加利用に伴い、電磁気的なノイズ妨害が増え、CRT、PDPなどのディスプレイから電磁波が発生する。PDPは、データ電極と蛍光層を有するガラス基板と透明電極を有するガラス基板との組合体であり、作動すると画像を構成する可視光線以外に、電磁波、近赤外線、及び熱が大量に発生する。
通常、電磁波を遮蔽するためにPDPの前面に、電磁波シールド材を含む前面板を設ける。ディスプレイ前面から発生する電磁波の遮蔽性は、30MHz〜1GHzに於いて30dB以上の機能が必要である。
さらに、ディスプレイの表示画像を視認しやすくするため、外光(日光、電燈光等)の入射する明所に於いても電磁波シールド材の部分が見えにくく(非視認性が高いという)、また、全体としては適度な透明性(可視光透過性、可視光透過率)を有することが求められている。
また、製造工程においては、短い工程数で、生産性よく生産できる電磁波シールド材の製造方法が求められている。
【0004】
(先行技術)従来、メッシュ状の金属層を有する電磁波シールド材の製造方法は、通常、次の方法が用いられる。
透明基材へ、黒色色素を含む黒色導電インキを凹版オフセット印刷法でメッシュ状とした後に、該メッシュの上へ金属メッキする方法が知られている(例えば、特許文献1〜2参照。)。しかしながら、透明基材面と反対側及びメッシュの側面の金属層が外光を反射して光る為画像が白化したり、メッシュの非視認性が低下するという欠点がある。メッシュの白化防止や非視認性を確保する為に黒色導電インキのメッシュのみで電磁波シールド機能を発現させようとすると、今度は電磁波シールド性が不十分となる。また、製造工程では、導電インキでは該導電インキの電気抵抗が高いために、メッキ時間が長くかかり、生産性が低いという問題点がある。
また、PETフィルム(透明基材)上に接着剤層を介して銅層を積層し、該銅層をフォトエッチング法により、多数の開口部とこれを囲むライン部とから成るメッシュ状に形成し、この銅層パターンのライン部の全露出面(表裏両面及び側面のすべて)に黒化処理を施したものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、斯かる仕様は、電磁波シールド性能は十分有り、又金属層が露出した特許文献1、2の仕様に比べ、明所での非視認性、白化防止性は向上する。しかしながら、黒化処理は化成処理により行なわれ、針状結晶が生成されるために黒化層を形成した銅層をPETフィルムに積層する迄の間に黒化層が脱落又は変形したり、更には黒化度も変化乃至は低下しやすく、また高温処理をするためにカールしやすく、外観性が低下するという欠点がある。
また、透明基材上に、パラジウム触媒を含有する親水性樹脂層を形成し、その上に銅又はニッケルから成る金属を無電解メッキすることで、裏面側の黒化層及び金属層を積層した後、該黒化層及び金属層をフォトリソグラフィー法によりメッシュ化し、その後電解メッキ法により、該メッシュの表面及びライン部側面に黒色ニッケルによる黒化層を形成してライン部の全露出面に黒化処理を施す方法も開示されている。この方法では透明基材上に、直接連続して黒化層及び金属層を形成する為、製造工程中に於いて、黒化層が脱落変質し難くなる。但し、親水性樹脂の強度及び接着力が高くない為、金属層、黒化層及び透明基材間が剥離し易いこと、及び、メッキ法により電磁波遮蔽に十分な厚さ(数10μm)の金属層を形成するのに時間を長く要することが欠点であった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−13088号公報
【特許文献2】特開2000−59079号公報
【特許文献3】特開2002−9484号公報
【特許文献4】特開2000−77887号公報
【発明の開示】
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、メッシュ化した金属層の全露出面を、黒くすることで、明所に於いても、適度な透明性、高電磁波シールド性、メッシュの非視認性、及び良好な外観を有し、ディスプレイの表示画像の視認性に優れる電磁波シールド材に於いて、黒化層の製造時の脱落損傷、変質を防ぎ、又各層の接着を向上させ、少ない工程時間と製造工程数で製造できる電磁波シールド材、およびその製造方法を得ることである。
【0007】
本発明は、透明基材と、透明基材の一方の面に接着剤を介して設けられ、開口部を形成するライン部を有するメッシュ状金属層と、メッシュ状金属層のライン部の透明基材側表面に、順次設けられた第1黒化層及び層錆層と、メッシュ状金属層のライン部の透明基材と反対側表面、およびライン部側面に設けられた第2黒化層とを備えたことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、第2黒化層はニッケル合金を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、第1黒化層はニッケルクロム合金を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、第1黒化層は銅−コバルト合金を含み、第2黒化層はニッケル合金を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、防錆層はクロム化合物を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、防錆層はクロム及び/又は亜鉛を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、防錆層はクロム以外の金属を含むことを特徴とする電磁波シールド材である。
本発明は、透明基材と、透明基材の一方の面に接着剤を介して設けられ開口部を形成するライン部を有するメッシュ状金属層と、を有する電磁波シールド材の製造方法において、透明基材と、金属層とを準備する工程と、金属層の一方の面に第1黒化層および防錆層を順次形成する工程と、金属層、第1黒化層および防錆層を防錆層側から透明基材に接着剤を介して積層する工程と、透明基材に積層された防錆層、第1黒化層、および金属層をフォトリソグラフィー法を用いてメッシュ状に形成して、金属層に開口を有するライン部を形成する工程と、金属層のライン部の透明基材と反対側の表面、およびライン部側面に第2黒化層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法である。
本発明は、第1黒化層を形成する工程は、電解メッキによる銅−コバルト合金を形成する工程を含み、第2黒化層を形成する工程は、電解メッキによるニッケル合金を形成する工程を含むことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法である。
本発明は、防錆層を形成する工程は、クロメート処理工程を含むことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法である。
本発明は、透明基材はポリエチレンテレフタレートフィルムを含み、防錆層と透明基材とを積層する工程はドライラミネート法を含むことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法である。
【0008】
本発明によれば、電磁波シールド材が適度な透明性、高電磁波シールド性を有すると共に、ライン部の全露出面に黒化層が形成される。このためメッシュの非視認性及び外光存在下に於ける画像のコンラストに優れ、ディスプレイの表示画像の視認性に優れた電磁波シールド材が提供される。さらに、透明基材側の黒化層上に防錆層が形成されるため、透明基材と金属層との積層工程の際に、透明基材側の黒化層の脱落、黒化度の低下乃至変化も防止される。また外光存在下での性能を確実に得られると共に接着剤により、金属層及び黒化層と、透明基材とが強固に接着した電磁波シールド材が提供される。
本発明によれば、メッシュの黒化度が良好でメッシュの非視認性及び外光存在下に於ける画像のコンラストが優れ、ディスプレイの表示画像の視認性が優れた電磁波シールド材が提供される。
本発明によれば、金属層が錆び難く、耐久性に優れる電磁波シールド材が提供される。
本発明によれば、防錆層と黒化層との良好な密着性を確実に確保できる電磁波シールド材が提供される。
本発明によれば、黒化層をメッシュライン部のすべての面に容易に形成でき、少ない時間及び製造工程数で電磁波シールド材が製造できる電磁波シールド材の製造方法が提供される。
本発明によれば、より黒く、かつ、黒化層が脱落しにくい電磁波シールド材の製造方法が提供される。
本発明によれば、容易に製造でき、かつ、防錆効果に優れる電磁波シールド材の製造方法が提供される。
本発明によれば、薄い透明基材へ既存の技術及び装置で容易に製造でき、近赤外線シールド材、反射防止材及び/又は防眩性などの他の光学部材と組み合わせて、PDP前面板とすることのできる電磁波シールド材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による電磁波シールド材の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1のメッシュ部の斜視図である。
【図3】本発明による電磁波シールド材の一実施の形態を示すメッシュ部の断面図である。
【図4】本発明による電磁波シールド材の製造方法のフローを説明する断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明による電磁波シールド材の平面図である。
図2は、図1のメッシュ部の拡大斜視図である。
図3は、本発明による電磁波シールド材のメッシュ部の断面図である。
図4は、本発明による電磁波シールド材の製造方法のフローを説明する断面図である。
【0011】
(基本の方法)本発明の電磁波シールド材の製造方法は、電磁波シールド材を製造するものであり、電磁波シールド材は透明基材11の少なくとも一方の面へ、接着剤層を介して、多数の2次元配列した開口部105を形成するライン部107からなるメッシュ状の金属層21を設ける。金属層21のライン部107の表裏両面及び側面の全露出面が黒化処理されている。このような製造方法は図4(a)−(e)に示すように、(1)金属層21を準備する工程と、(2)該金属層21の一方の面へ第1黒化層25A、及び防錆層23Aを形成する工程と、(3)該防錆層23A面と透明基材11とを接着剤層13を介して積層する工程と、(4)透明基材11に積層されている防錆層23A、第1黒化層25A、金属層21を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンとする工程と、(5)該メッシュ状パターンを黒化処理して、第2黒化層25Bを形成する工程からなる。
【0012】
(基本の物)図1乃至図3に示すように、電磁波遮蔽用シート1は、透明基材11と、透明基材11の一方の面に接着剤層13を介して設けられたメッシュ状金属層21とを有している。このうちメッシュ状金属層21は開口部105を形成するライン部107を有している。またメッシュ状金属層21のライン部107の透明基材11側表面に第1黒化層25A及び防錆層23Aが順次設けられ、ライン部107の透明基材11と反対側表面およびライン部107の側面には第2黒化層25Bが設けられている。
なお、透明基材11上にはメッシュ103と、このメッシュ部103を囲む額縁部101とが形成されている。このうちメッシュ部103は防錆層23A/第1黒化層25A/メッシュ状金属層21/第2黒化層25Bの積層構造により形成され、額縁部101は防錆層23A/第1黒化層25A/平板状金属層21/第2黒化層25Bの積層構造により形成されている。
またメッシュ部103には、メッシュ状金属層21の開口部およびライン部に対応して、開口部105を形成するライン部107が設けられている。
【0013】
(第1工程)金属層を準備する工程(図4(a))。
【0014】
(金属層)金属層21の材料としては、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウムなど充分に電磁波をシールドできる程度の導電性を持つ金属が適用できる。金属層は単体でなくても、合金あるいは多層であってもよく、鉄の場合には低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金が好ましく、また、黒化処理としてカソーディック電着を行う場合には、電着の容易性から銅又は銅合金箔が好ましい。
銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔が使用できるが、厚さの均一性、黒化層との密着性、及び10μm以下の薄膜化ができる点から、電解銅箔が好ましい。該金属層21の厚さは1〜100μm程度、好ましくは5〜20μmである。これ以下の厚さでは、フォトリソグラフイ法によるメッシュ加工は容易になるが、金属の電気抵抗値が増え電磁波シールド効果が損なわれる。これ以上では、所望する高精細なメッシュの形状が得られず、その結果、実質的な開口率が低くなり、光線透過率が低下し、さらに視角も低下して、画像の視認性が低下する。
【0015】
金属層21の表面粗さとしては、Rz値で0.5〜10μmが好ましい。これ以下では、黒化処理しても外光が鏡面反射して、画像の視認性が劣化する。これ以上では、接着剤やレジストなどを塗布する際に、表面全体へ行き渡らなかったり、気泡が発生したりする。なお、表面粗さRzは、JIS−B0601に準拠して測定した10点平均粗さ値である。
【0016】
(第2工程)該金属層21の一方の面へ第1黒化層25A及び防錆層23Aを形成する工程。
また、必要に応じて、金属層21の第1黒化層25A及び防錆層23Aと反対面に、第2防錆層23Bを形成してもよい(図4(b))。
【0017】
(第1黒化層)第1黒化層25Aの形成即ち、黒化処理は予め製膜された金属層21を透明基材11上に接着剤層13を介して積層する製法を用いる場合には、積層後に第1黒化層23Aを形成することができないため、金属層21単層の状態で行う。該黒化処理としては、金属層の表面を粗化及び/又は黒化すればよく、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の形成や種々の手法が適用できる。好ましい黒化処理としてはメッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法等であり、該メッキ法によれば、金属層への密着力に優れ、金属層の表面へ均一、かつ容易に黒化することができる。該メッキの材料としては、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、若しくはクロムから選択された金属の少なくとも1種、又は該金属を含む化合物を用いる。他の金属又は化合物では、黒化が不充分、又は金属層との密着に欠け、例えばカドミウムメッキでは顕著である。
【0018】
積層工程(第3工程)前の段階で金属層21の裏面にのみ黒化層(第1黒化層25A)を形成する理由は、以下の通りである。即ち、金属層21の裏面(透明基材11側)は、透明基材11と接着した状態で、メッシュ状パターンに加工する為、メッシュ状パターンに加工する工程(第4工程)の後で第1に黒化層25Aを形成することは不可能である。それ故、積層工程前の段階で、第1黒化層25Aを形成完了しておく必要が有る。金属層21の表面(透明基材11と反対側)の黒化層形成は、積層工程前に行なうことも、積層工程後に行なうことも共に可能ではある。但し、ライン部107側面の黒化層形成は、金属層を透明基材に積層し、メッシュ状パターンに加工(此の段階で始めて開口部105と共にライン部107側面が出現する)した後に行なうしか有り得ないことを考慮すると、)若し、金属層表面の黒化層形成を積層工程前に行なってしまうと、黒化層形成は3回(裏面、表面、側面)必要となる。一方、金属層表面の黒化層形成を、メッシュ状パターンに加工後に行なえば、黒化層形成は2回のみ(裏面、表面と側面同時)で済む。従って、積層工程前の段階では金属層21の裏面のみに第1黒化層25Aを設けることが工程短縮、簡略化の点で好ましい。
【0019】
金属層21として銅箔を用いる場合、好ましい第1黒化層25Aの例としては銅−コバルト合金、或いはニッケル−クロム合金が挙げられる。銅−コバルト合金の場合、メッキ法にて形成し、粒子状に形成する。メッキ法としては、銅箔を硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中で、陰極電解処理を行って、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着メッキが挙げられる。カチオン性粒子を設けることにより、粗化し、かつ黒色の第1黒化層25Aが得られる。記カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅‐コバルト合金の粒子が挙げられ、銅‐コバルト合金粒子の平均粒子径は0.1〜1μmが好ましい。カソーディック電着によれば、粒子を平均粒子径0.1〜1μmに揃えて好適に付着することができる。また、銅箔表面に高電流密度で処理することにより、銅箔表面がカソーディックとなり、還元性水素を発生して活性化し、銅箔と粒子との密着性が著しく向上する。
【0020】
銅‐コバルト合金粒子の平均粒子径がこの範囲外の場合、例えば銅‐コバルト合金粒子の粒子径をこれを超えて大きくすると、黒化度が低下し、また粒子が脱落(粉落ちともいう)しやすくなる。また、密集粒子の外観の緻密さが欠けて、外観及び光吸収のムラが目立ってくる。銅−コバルト合金粒子の平均粒子径が、この範囲未満でも、黒化度が不足ととなり、外光の反射を抑えきれ無いので、画像の視認性が悪くなる。また、黒色クロム、黒色ニッケルによる黒化処理も、導電性と黒色度合いが良好で、粒子の脱落もなく好ましい。
ニッケル−クロム合金は、メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法で形成できる。ニッケル−クロム合金は銅との密着も良好な上、導電性も高い為、電磁波シールド性の点でも好ましい。
【0021】
(防錆層)次に、第1黒化層25A面へ防錆層23Aを形成する。防錆層23Aは、金属層21面及び第1黒化層25A面の防錆機能を持ち、かつ、黒化処理が粒子であれば、その脱落や変形を防止し、さらにまた、第1黒化層25Aの黒化度をより黒くすることができる。該防錆層を此の様に形成する理由は以下の通りである。即ち、防錆層23Aについては、第1黒化層25Aを透明基材11と接着する迄の間に第1黒化層25Aが脱落したり、変質することから保護する意味で積層工程(第3工程)前に形成しておく必要がある。
【0022】
該防錆層23Aとしては、公知の防錆層が適用できるが、クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅などの金属もしくはそれらの合金、または前記金属の酸化物、或いはクロム化合物の層が好適であり、好ましくは、亜鉛をめっきしたのちクロメート処理したクロム化合物層が用いられる。また、該防錆層23Aは、エッチングや酸洗浄時の耐酸性をより強くするために、珪素化合物を含有することが好ましく、珪素化合物としてはシランカップリング剤が挙げれらる。防錆層23Aは第1黒化層25A(特に銅−コバルト合金粒子層)との密着性、及び接着剤層13(特に2液硬化型ウレタン系樹脂の接着剤)との密着性にも優れる。防錆層23Aがニッケルを含む場合、ニッケルが不動体化すると防錆層23Aと第2黒化層25Bとの接着が弱くなり黒化層25Bが剥脱し易くなる場合がある。クロム、亜鉛、ニッケル、スズ、銅などの金属もしくはそれらの合金、または前記金属の酸化物は、公知のメッキ法で形成できる。又クロム化合物の形成としては、公知のメッキ法、或いはクロメート(クロム酸塩)処理等が用いられる。該防錆層の厚さとしては、0.001〜10μm程度、好ましくは0.01〜1μmとなっている。
【0023】
また、クロメート処理による防錆層23Aの形成方法は、塗布法やかけ流し法が用いられ、防錆層を金属層21の片面に設けてもよく、ディッピング法で金属層21の両面に設けてもよい。金属層21の両面に同時に設けた場合、第1黒化層25A面の防錆層を防錆層23A、金属層21面の防錆層を第2防錆層23Bと呼ぶ。但し、一般に防錆層をディッピング法で両面に形成した場合、第2防錆層23Bはニッケルを含まない組成となっているが、第2黒化処理に先だって、金属層21面の第2防錆層23Bを酸水溶液などで除去することが好ましい。
すなわち、第2防錆層23B表面が化学的に不活性乃至は表面への金属酸化物層析出阻害性のために、第2黒化層25Bの密着力が低下するので第2防錆層23Bを除去する必要がある。
【0024】
(クロメート処理)クロメート処理は、被処理材へクロメート処理液を塗布し処理するものである。塗布方法としては、ロールコート、カーテンコート、スクイズコート、静電霧化法、浸漬法などが適用でき、塗布後は水洗せずに乾燥すればよい。クロメート処理液としては、通常クロム酸を含む水溶液を使用する。具体的には、アルサーフ1000(日本ペイント社製、クロメート処理剤商品名)、PM−284(日本パ−カライジング社製、クロメート処理液商品名)などが例示できる。また、クロメート処理に先だって、亜鉛メッキを施すのが好ましく、第1黒化層/防錆層(亜鉛/クロメート処理の2層)の構成が、層間密着、防錆及び黒化度の効果をより高めることができる。
【0025】
(第3工程)該防錆層23A面と透明基材11とを接着剤で積層する工程(図4(c))。
【0026】
(透明基材)透明基材11の材料としては、使用条件や製造に耐える透明性、絶縁性、耐熱性、機械的強度などがあれば、種々の材料が適用でき、例えば、ガラスや透明樹脂を用いることができる。ガラスとしては、石英ガラス、ほう珪酸ガラス、ソーダライムガラスなどが適用でき、好ましくは熱膨脹率が小さく寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスを用いることができ、透明基材11を電極基板と兼用してもよい。
【0027】
透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカ−ボネ−トなどの樹脂からなるシート、フィルム、板などが適用できる。
【0028】
透明樹脂から成る透明基材11は、これら樹脂を単独で用いる他、これらの樹脂2種以上の混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体からなっていてもよい。該透明基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましく用いられる。透明基材の厚さは、透明基材が透明樹脂から成る透明基材の場合は、通常、12〜1000μm程度が適用できるが、50〜700μmが好適で、100〜500μmが最適である。ガラスから成る透明基材の場合は、通常、1000〜5000μm程度が好適である。いずれも、これ以下の厚さでは、機械的強度が不足して反りやたるみ、破斷などが発生し、これ以上の厚さでは、過剰な性能となってコスト的にも無駄である。
【0029】
通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂、又はガラスの板が、透明性、耐熱性もよくコストも安いので好適に使用される。また割れ難いこと、軽量で成形が容易なこと等の点で、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムが最適に用いられる。また、透明性基材11の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光線透過率が80%以上となっている。
【0030】
透明基材11に対しては、接着剤層13の塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。透明基材11には、必要に応じて、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0031】
(積層方法)透明基材11と、前述の防錆層23A/第1黒化層25A/金属層21/からなる積層体の防錆層23A面と、が接着剤で積層される。積層(ラミネートともいう)法としては、透明基材11及び/又は防錆層23A面へ、接着剤又は粘着剤の樹脂、またはこれらの混合物を、加熱熔融物、未架橋重合物、ラテックス、水分散液、又は有機溶媒液等の流動体として、スクリーン印刷、グラビア印刷、コンマコート、ロールコートなどの公知の印刷又はコーティング法で、印刷または塗布し、必要に応じて乾燥した後に、他方の材料と重ねて加圧した後、該接着剤(粘着剤層)を固化すれば良い。接着層の膜厚としては、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmが好ましい。
【0032】
具体的な積層方法は通常、連続した帯状(巻取という)の状態で行われ、巻取りロールから巻きほぐされて伸張された状態で、金属層及び/又は基材フィルムへ、接着剤を塗布し乾燥した後に、他方の材料を重ね合わせて加圧する。好ましくは、当業者がドライラミネート法(ドライラミともいう)と呼ぶ方法である。さらに、紫外線(UV)や電子線(EB)などの電離放射線で硬化(反応)する電磁放射線硬化型樹脂も好ましく用いられる。
【0033】
(ドライラミネート法)ドライラミネート法とは、溶媒へ分散または溶解した接着剤を、乾燥後の膜厚が0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは1〜10μmとなるように、例えば、ロ−ルコ−ティング、リバースロ−ルコ−ティング、グラビアコ−ティングなどのコーティング法で塗布し、溶剤などを乾燥して、該接着層を形成したら直ちに、貼り合せ基材を積層した後に、30〜80℃で数時間〜数日間のエージングで接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。該ドライラミネーション法で用いる接着層としては、熱、または紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する接着剤が適用できる。熱硬化接着剤としては、具体的には、トリレンジイソシアネ−トやヘキサメチレンジイソシアネ−ト等の多官能イソシアネ−トと、ポリエ−テル系ポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる2液硬化型ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤などが適用できるが、2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
【0034】
(第4工程)透明基材11へ積層されている防錆層23A、第1黒化層25A、及び金属層21を、フォトリソグラフィー方でメッシュ状パターンとする工程(図4(d))。
【0035】
透明基材11/接着剤層13/防錆層23A/第1黒化層25A/金属層21からなる積層体中の、防錆層23A/第1黒化層25A/金属層21を、フォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンとする。
【0036】
(フォトリソグラフィー法)積層体中の金属層21表面上へ、レジスト層をメッシュパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分の金属層/第1黒化層/防錆層をエッチングにより除去した後に、レジスト層を除去して、メッシュ状パターンの電磁波シールド層を形成する。図1の平面図に図示するように、電磁波シールド層は、メッシュ部103と必要に応じてその周縁部に設ける額縁部101とからなり、図2の斜視図及び図3の断面図に示す如く、メッシュ部103は金属層が残ったライン部107によって複数の開口部105が形成され、額縁部101は開口部がなく全面にわたって金属層21が残されている。額縁部101は、必要に応じて設ければよく、メッシュ部101の全周に渡って設けるか、メッシュ部101の隣接する外部の少なくとも1部に設ければよい。
【0037】
この工程も、帯状で連続して巻き取られたロール状の積層体を加工する工程からなっている。積層体を連続的又は間歇的に搬送しながら、緩みなく伸張した状態で、マスキングし、エッチングし、レジスト剥離する。まず、マスキングは、例えば、感光性レジストを金属層21上へ塗布し、感光性レジストが乾燥した後に、所定のパターン(メッシュのライン部と額縁部)原版にて感光性レジストを密着露光し、水現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングする。レジストの塗布は、巻取りロール状の帯状の積層体を連続又は間歇で搬送させながら、その金属層21面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどのレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。
また、感光性レジストを塗布することなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、この場合は作業性が向上する。ベーキングはカゼインレジストの場合、通常100〜300℃で行う。
【0038】
(エッチング)マスキング後に積層体に対してエッチングを行う。エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明においては、循環使用が容易にできる塩化第二鉄、塩化第二銅の水溶液が好ましい。また、エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備と、基本的に同様の設備を用いて行なわれる。すなわち、シャドウマスクの既存の製造設備を流用でき、マスキングからエッチングまで一貫して連続生産できて、極めて効率が良い。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから積層体を乾燥する。
【0039】
(第2防錆層の除去)金属層21の第1黒化層非形成面に第2防錆層23Bを形成した場合は、防錆層23Bの材料如何においては、第2黒化層25Bの接着を阻害する場合がある。この場合は、レジスト剥離後、第2黒化層25B形成前に第2防錆層23Bを除去することが好ましい。第2防錆層23Bの除去は、酸やアルカリの溶液で除去することができる。
【0040】
(メッシュ)メッシュ部103は、額縁部101で囲まれた領域である。メッシュ部103は、複数の開口部105を形成するライン部107からなっている。開口部105の形状(メッシュパターン)は特に限定されず、例えば、正3角形等の3角形、正方形、長方形、菱形、台形などの4角形、6角形、等の多角形、円形、楕円形などが適用できる。これらの開口部105からメッシュを形成する。開口率及びメッシュの非視認性から、ライン部107の幅は50μm以下、好ましくは20μm以下が、好ましくはライン部107の間隔(ラインピッチ)は光線透過率から150μm以上、好ましくは200μm以上が好ましい。また、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波シールドシートの辺とのなす角度)は、モアレの解消などのために、ディスプレイの画素や発光特性を加味して適宜、選択すればよい。
【0041】
(第5工程)該メッシュ状パターンを黒化処理して、図4(e)に示すように、、金属層21の表面、並びに金属層21の側面、第1黒化層25Aの側面及び防錆層23Aの側面に渡って第2黒化層25Bを被覆形成する。
【0042】
(第2黒化層)第2黒化層25Bの材料及び形成方法としては、第1黒化層25Aの材料及び形成方法と同様でよい。好ましくは黒色クロム、黒色ニッケル、ニッケル合金が用いられ、ニッケル合金としては、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−スズ−銅合金が用いられる。特に、ニッケル合金は、導電性と黒色度合いが良好である。また、第2黒化層25Bは、黒化効果と同時に、金属層21の防錆機能をも合わせて持たせることができる。
さらに、通常、黒化層の粒子は、針状のために、外力で変形して外観が変化しやすいが、ニッケル合金では、粒子が変形しにくく、第2黒化層25B面が露出した状態で、その後の加工工程を容易に行なうことができ、さらに好ましい。ニッケル合金の形成方法としては、公知の電解または無電解メッキ法が用いられ、ニッケルメッキを行った後に、ニッケル合金を形成してもよい。
【0043】
(黒化処理)このように黒化処理をすることで、メッシュ状金属層21のライン部107の表面(土手の表面)及び側面(土手の側面)の部分まで黒化処理を行うことができる。この結果、メッシュ状金属層21のパターンの全面が黒化層で覆われるので、PDPから発生する電磁波をシールドし、かつ、電磁波シールド用の金属メッシュのライン部部分から、蛍光燈などの外部光、及びPDPからの表示光の両方の光反射が抑えられ、ディスプレイの表示画像をハイコントラストで、良好な状態で視認することができる。
【0044】
本明細書では、表面粗化及び可視光線波長全域の吸収性増加による黒色化を合わせて黒化処理という。黒化処理の好ましい反射Y値は15以下程度、好ましくは5以下、さらに好ましくは2.0以下である。なお、反射Y値の測定方法は、分光光度計UV−3100PC(島津製作所製)にて入射角5°(波長は380nmから780nm)で測定した。
【0045】
また、本発明の電磁波シールドシートは、他の光学部材を組み合わせて、好ましいPDP用の前面板として、用いることができる。例えば、近赤外線を吸収する機能を有する光学部材と組合わせると、PDPから放出される近赤外線を吸収されるので、PDPの近傍で使用する遠隔操査機器や光通信機器などの誤動作を防止できる。また、反射防止及び/又は防眩機能を有する光学部材と組合わせると、PDPからの表示光、及び外部からの外光の反射を抑制して表示画像の視認性を向上できる。
【0046】
額縁部101を設けた場合には、メッシュ部と同時に額縁部101も黒化処理を受けるのでより黒くなるので、ディスプレイ装置に高級感がでる。また、本発明の電磁波シールド材の電磁波シールド層は、両面が黒いので、いずれの面をPDPへ向けてもよい。
【0047】
さらに、透明基材11として可撓性の材料を用いた場合は、いずれの工程も帯状で連続して巻き取られたロール(巻取)状で、連続又は間歇的に搬送しながら加工できるので、複数工程をまとめた短い工程で、生産性よく製造することができる。
【0048】
(変形形態)本発明は、次のように変形して実施することを含むものである。
図3に図示の如き電磁波シールド材1を得た後、更に、開口部105の凹部を透明樹脂で充填して、メッシュ部103の表面凹凸(ライン部107の凸部及び開口部105の凹部から成る)を平坦化しても良い。この様にすることにより、後工程で該電磁波シールド材のメッシュ部上に、接着剤層を間に挾んで他の部材(透明基板、近赤外線吸収フィルター、反射防止フィルター等)を積層する際に、該凹部に気泡が残留することによって光散乱により画像の鮮明度を低下させることを防止出來る。
【0049】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
まず、金属層21として厚さ10μmの電解銅箔を用い、一方の面に銅‐コバルト合金粒子(平均粒子径0.3μm)をカソーディック電着させて黒化処理を行い、第1黒化層25Aを形成した。次いで、亜鉛メッキした後に、ディッピング法で公知のクロメート処理を行い、金属層21の表裏両面を防錆処理した。ここでは、第1黒化層25A面側の防錆層を防錆層23A、金属層面の防錆層を第2防錆層23Bと呼ぶ。
この第1黒化層25A面側の防錆層面23Aと、厚さ100μmのPETフィルムA4300(東洋紡績社製、ポリエチレンテレフタレートフィルムの商品名)から成る透明基材11とを、2液硬化型ウレタン系接着剤から成る接着剤層13でラミネートした後に、50℃で3日間エージングして積層体を得た。接着剤としてはポリエステルウレタンポリオールから成る主剤タケラックA−310とキシレンジイソシアネートから成る硬化剤タケネートA−10(いずれも武田薬品工業社製、商品名)を用い、塗布量は乾燥後の厚さで7μmとした。
該積層体の防錆層23A/第1黒化層25A/金属層21/第2防錆層をフォトリソグラフイ法によりメッシュ化し、パターンを形成した。
カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを流用して、連続した帯状(巻取)でマスキングからエッチングまでを行なった。まず、積層体の第2防錆層面の全体へ、カゼイン系の感光性レジストをディッピング法で塗布した。次のステーションへ間欠搬送し、開口部が正方形でライン幅22μm、ライン間隔(ピッチ)300μm、バイアス角度が49度のメッシュ部103及び該メッシュ部103を囲む幅が15mmの額縁部101のネガパターン版を用いて、水銀燈からの紫外線を照射して密着露光した。次々にステーションを搬送しながら、水現像し、硬膜処理し、さらに、加熱してベーキングした。さらに次のステーションへ搬送し、エッチング液として塩化第二鉄水溶液を用いて、スプレイ法で吹きかけてエッチングし、開口部を形成した。次々にステーションを搬送しながら、水洗し、レジストを剥離し、洗浄し、さらに温風で乾燥して、メッシュを形成した。
次にメッシュを第2黒化処理した。まず、積層体を3%硫酸水溶液浴に10秒間浸漬して、第2防錆層23Bを除去した後に、黒化処理メッキ浴として、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液と硫酸亜鉛水溶液とチオ硫酸ナトリウム水溶液との混合水溶液を用い、この混合水溶液に積層体を浸漬し、電解メッキを行って黒化処理し、ニッケル−亜鉛合金からなる第2黒化層25Bを形成した。第2黒化層25Bは図3の如く、金属層21表面から、金属層21側面、第1黒化層25A側面、及び防錆層23A側面に渡って被覆され、図3の断面図に示すような電磁波シールド材1を得た。
【実施例2】
【0051】
黒化処理メッキ浴として、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液と硫酸スズ水溶液とチオ硫酸ナトリウム水溶液との混合水溶液を用い、この混合水溶液に積層体を浸漬し、電解メッキを行って第2黒化層25Bをニッケル−スズ合金から形成する以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド材1を得た。
【実施例3】
【0052】
黒化処理メッキ浴として、硫酸ニッケルアンモニウム水溶液と硫酸スズ水溶液と硫酸銅水溶液とチオ硫酸ナトリウム水溶液との混合水溶液を用い、この混合水溶液に積層体を浸漬し、電解メッキを行って第2黒化層25Bをニッケル−スズ−銅合金から形成する以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド材1を得た。
【実施例4】
【0053】
亜鉛メッキ及びクロメート処理に代えて、メッキ法によるクロム−亜鉛合金から防錆層を形成する以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド材1を得た。但し、クロム−亜鉛からなる防錆層は、レジスト剥離時のアリカリ洗浄で亜鉛が溶出されて、第2防錆層の方は、クロムのみの層となっている。
【0054】
(比較例1)第2防錆層/金属層/第1黒化層/防錆層の積層体の第1防錆層面側でなく第2防錆層側を透明基材11に積層し、黒化層をライン部の表面のみに設け、ライン部の裏面及び側面には黒化層を設けない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド材を得た。
【0055】
(評価)評価は、視認性及び電磁波シールド性で行った。
PDP;WOOO(日立製作所社製、商品名)の前面に、透明基材側がPDP側を向く様に載置して、テストパターン、白、及び黒を順次表示させて、画面から50cm離れた距離で、視認角度0〜80度の範囲で、目視で観察し、視認性を確認した。このとき輝度、コントラスト、黒表示での外光の反射及びギラツキ、白表示での黒化処理のムラを観察した。実施例1〜4のいずれも視認性は良好であったが、比較例1の視認性は実施例1と比較して劣っていた。特に斜め方向から観察するとメッシュライン部の側面が光り画像のコントラストが低く、メッシュの非視認性が劣っていた。
【0056】
また、電磁波シールド(遮蔽)効果を、KEC法(財団法人関西電子工業振興センターが開發した電磁波測定法)により測定したところ、実施例1〜4、及び比較例1のいずれもが、周波数30MHz〜1000MHzの範囲に於いて、電磁場の減衰率は30〜60dBであり、電磁波シールド性も十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
透明基材の一方の面に接着剤を介して設けられ、開口部を形成するライン部を有するメッシュ状金属層と、
メッシュ状金属層のライン部の透明基材側表面に、順次設けられた第1黒化層及び防錆層と、
メッシュ状金属層のライン部の透明基材と反対側表面、およびライン部側面に設けられた第2黒化層とを備えたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項2】
第2黒化層はニッケル合金を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項3】
第1黒化層はニッケルクロム合金を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
第1黒化層は銅−コバルト合金を含み、第2黒化層はニッケル合金を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項5】
防錆層はクロム化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項6】
防錆層はクロム及び/又は亜鉛を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項7】
防錆層はクロム以外の金属を含むことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド材。
【請求項8】
透明基材と、透明基材の一方の面に接着剤を介して設けられ開口部を形成するライン部を有するメッシュ状金属層と、を有する電磁波シールド材の製造方法において、
透明基材と、金属層とを準備する工程と、
金属層の一方の面に第1黒化層および防錆層を順次形成する工程と、
金属層、第1黒化層および防錆層を防錆層側から透明基材に接着剤を介して積層する工程と、
透明基材に積層された防錆層、第1黒化層、および金属層をフォトリソグラフィー法を用いてメッシュ状に形成して、金属層に開口を有するライン部を形成する工程と、
金属層のライン部の透明基材と反対側の表面、およびライン部側面に第2黒化層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
【請求項9】
第1黒化層を形成する工程は、電解メッキによる銅−コバルト合金を形成する工程を含み、
第2黒化層を形成する工程は、電解メッキによるニッケル合金を形成する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項10】
防錆層を形成する工程は、クロメート処理工程を含むことを特徴とする請求項8記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項11】
透明基材はポリエチレンテレフタレートフィルムを含み、防錆層と透明基材とを積層する工程はドライラミネート法を含むことを特徴とする請求項8記載の電磁波シールド材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/060326
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516309(P2005−516309)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018631
【国際出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】