説明

電磁波シールド材の製造方法

【課題】透明基材及びその上に形成された細線パターンからなる電磁波シールド材を提供する。
【解決手段】透明基材上に予め物理現像核層を設け、次いで、ハロゲン化銀乳剤層を塗布し、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順序で有する感光材料を任意の細線からなるパターンで露光し、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中にて物理現像処理を行い、前記物理現像核層上に任意の細線からなるパターンで金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核層の上に設けられた層を除去して物理現像された金属銀細線を表面に露出させた後、前記物理現像された金属銀細線を触媒核として金属を電解めっきまたは電解めっきと無電解めっきを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、通信装置、たとえばディスプレイ装置などを備えた装置に取り付けられ、良好な透光性と電磁波シールド性を併せ持つ電磁波シールド材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会が急速に発達するに伴って、情報関連機器に関する技術が急速に進歩し普及してきた。各種電子機器、通信装置、たとえばCRT、液晶、EL、PDP、FEDなどのディスプレイ装置は、テレビジョン用、パーソナルコンピューター用、駅や空港などの案内表示用、その他各種情報提供用に用いられている。
【0003】
これらの電子機器やパチンコ、スロットマシーンなどの電子制御遊技機、携帯電話などの通信装置から放射される、あるいはこれらの機器に与える電磁波の影響が心配されている。例えば、この電磁波が周囲の機器を誤作動させる問題、また人体への悪影響などが考えられており、電磁波シールド材に対する要求はますます高くなってきている。このような要求に対して様々の透明導電性フィルム(電磁波シールド材)が開発されている。例えば、特開平9−53030号、同平11−126024号、特開2000−294980号、同2000−357414号、同2000−329934号、同2001−38843号、同2001−47549号、同2001−51610号、同2001−57110号、同2001−60416号公報等に開示されている。
【0004】
これらの電磁波シールド材の製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属又はそれらの導電性金属化合物をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって透明樹脂フィルム基材上に金属薄膜を形成させる方法が一般的に用いられているが、透明性が保持できる程度の膜厚やパターン細線幅にすると、導電層の表面抵抗が大きくなりすぎるためシールド効果が小さくなり、例えば、300MHz以上の高い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を得ることが困難になるという問題がある。従って、透明性が高くかつ高周波帯域においてもシールド効果に優れた電磁波シールド材が求められている。また近年、電磁波シールド材の需要が拡大する中にあって、低コストで生産性が高い製造法が求められている。
【0005】
特公昭42−23745号公報には、ハロゲン化銀乳剤層とハロゲン化銀溶剤(銀錯塩形成材)を応用し、銀錯塩拡散転写現像法(DTR現像法)により物理現像銀からなる導電性層を形成する技術が記載されている。しかしながら、上述したように近年の電磁波シールド材に要求される、全光線透過率50%以上の透光性と表面抵抗10オーム/□(10Ω/square)以下の導電性とを同時に満足させるには、上記特許公報に記載された技術だけでは達成することが出来なかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、開口率が高くなる細い線幅の細線パターンを設けても導電性及び全光線透過率が高い電磁波シールド材を提供することにある。本発明の他の目的は、導電性及び全光線透過率が高く、しかも低コストで生産性の高い電磁波シールド材の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の上記目的は、物理現像された金属銀を触媒核として金属をめっきした電磁波シールド材によって基本的に達成された。
【0008】
本発明の電磁波シールド材の基本的な製造法は、写真現像法で知られているDTR現像法を応用し、ハロゲン化銀を可溶性銀錯塩形成剤で溶解して可溶性銀錯塩にし、同時にハイドロキノン等の還元剤(現像主薬)で還元して物理現像核上に任意の細線パターンの物理金属銀を析出させ、かかる物理現像銀を触媒核として、銅やニッケル等の金属でめっきすることからなる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の電磁波シールド材は、透明基材及びその上に形成された細線パターンからなる電磁波シールド材であって、前記細線パターンが、物理現像による金属銀を触媒核とする金属めっき膜から成ることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の電磁波シールド材の製造方法は、全光線透過率が70%以上の透明基材上に予め物理現像核層を設け、次いで、ハロゲン化銀乳剤層を塗布し、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順序で有する感光材料を任意の細線からなるパターンで露光し、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中にて物理現像処理を行い、前記物理現像核層上に任意の細線からなるパターンで金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核層の上に設けられた層を除去して物理現像された金属銀細線を表面に露出させた後、前記物理現像された金属銀細線を触媒核として金属を電解めっきまたは電解めっきと無電解めっきを施し、40μm以下の線幅の細線パターンを有する金属めっき膜を形成して、全光線透過率50%以上の透光性と前記細線パターンの表面抵抗10オーム/□以下の導電性とを同時に満足する電磁波シールド材を得ることを特徴とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される透明基材としては、可視領域で透明であり、またフレキシブル性を有し、好ましくは耐熱性の良好なプラスチック樹脂フィルムが挙げられる。透明性としては全光線透過率が70〜90%程度の透明性であればよいが、電磁波シールド材としたときの全光線透過率を高く保持する観点からは、透明基材の全光線透過率は高い程好ましい。このような透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等からなり、厚さが10〜600μmの単層または複合フイルムが挙げられる。
【0012】
透明基材には、予め物理現像核層が設けられる。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法等によって透明基材上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0013】
透明基材には、塩化ビニリデンやポリウレタン等のポリマーラテックス層の接着層を設けることができ、また接着層と物理現像核層との間にはゼラチン等の親水性バインダーからなる中間層を設けることもできる。
【0014】
物理現像核層は、親水性バインダーを含有することが好ましい。親水性バインダーの量は物理現像核に対して10〜300質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。物理現像核層は親水性バインダーの架橋剤を含有することもできる。
【0015】
物理現像核層や中間層等の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。本発明において物理現像核層は、上記したコーティング法によって、通常連続した均一な層として設けることが好ましい。
【0016】
本発明において、物理現像核層に金属銀を析出させるためのハロゲン化銀の供給方法としては、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に一体的に設ける方法、あるいは別の紙やプラスチック樹脂フィルム等の基材上に設けられたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する方法がある。コスト及び生産効率の面からは前者の物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を一体的に設ける方法が好ましい。
【0017】
本発明において使用するハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化銀写真感光材料の分野における一般的なハロゲン化銀乳剤の製造方法に従って製造することができる。ハロゲン化銀乳剤は、通常、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウムや臭化ナトリウム等のハロゲン化物水溶液をゼラチンの存在下で混合熟成することによって作られる。
【0018】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀組成は、塩化銀を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。塩化銀含有率を高くすることによって形成された物理現像銀の導電性が向上する。
【0019】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤層は、各種の光源に対して感光性を有している。電磁波シールド材を作製するための1つの方法として、例えば網目状などの細線パターン形状を有する物理現像銀を形成する方法が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は細線パターン状に露光されるが、露光方法として、細線パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して紫外光で露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。前者の紫外光を用いる密着露光は、ハロゲン化銀の感光性は比較的低くても可能であるが、レーザー光を用いた走査露光の場合は比較的高い感光性が要求される。従って、後者の露光方法を用いる場合は、ハロゲン化銀の感光性を高めるために、ハロゲン化銀には化学増感あるいは増感色素による分光増感を施してもよい。化学増感としては、金化合物や銀化合物を用いた金属増感、硫黄化合物を用いた硫黄増感、あるいはこれらの併用が挙げられる。好ましくは、金化合物と硫黄化合物を併用した金−硫黄増感である。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長を持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることによって、明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
【0020】
本発明において、物理現像核層が設けられる透明基材上の任意の位置、たとえば接着層、中間層、物理現像核層あるいはハロゲン化銀乳剤層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層にハレーションないしイラジエーション防止用の染料もしくは顔料を含有させてもよい。
【0021】
物理現像核層の上に直接にあるいは中間層を介してハロゲン化銀乳剤層が塗設された感光材料を用いて電磁波シールド材を作製する場合は、網目状パターンのような任意の細線パターンの透過原稿と上記感光材料を密着して露光、あるいは、任意の細線パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記感光材料に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより銀錯塩拡散転写現像(DTR現像)が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して細線パターンの物理現像銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、あるいは必要に応じて設けられた保護層は水洗除去されて、細線パターンの物理現像銀薄膜が表面に露出する。
【0022】
DTR現像後、物理現像核層の上に設けられたハロゲン化銀乳剤層等の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。
【0023】
一方、物理現像核層が塗布された透明基材とは別の基材上に設けたハロゲン化銀乳剤層から可溶性銀錯塩を供給する場合、前述と同様にハロゲン化銀乳剤層に露光を与えた後、物理現像核層が塗布された透明基材と、ハロゲン化銀乳剤層が塗布された別の感光材料とを、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で重ね合わせて密着し、アルカリ液中から取り出した後、数十秒〜数分間経過した後に、両者を剥がすことによって、物理現像核上に析出した細線パターンの物理現像銀薄膜が得られる。
【0024】
次に、銀錯塩拡散転写現像のために必要な可溶性銀錯塩形成剤、還元剤、及びアルカリ液について説明する。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物であり、これらの反応はアルカリ液中で行われる。
【0025】
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、アルカノールアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる還元剤としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、p−メチルアミノフェノール、p−アミノフェノール、p−ヒドロキシフェニルグリシン、p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0027】
上記した可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤は、物理現像核層と一緒に透明基材に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ液中に添加してもよく、更に複数の位置に添加してもよいが、少なくともアルカリ液中に添加するのが好ましい。
【0028】
アルカリ液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0029】
アルカリ液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、第三燐酸ナトリウム、アミノアルコール等が使用できる。現像時間は5〜60秒が好ましく、更に好ましくは7〜45秒位である。現像温度は10〜40℃が好ましく、更に好ましくは15〜35℃位である。本発明において銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流されたアルカリ液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた透明基材を浸漬しながら搬送するものである。また、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0030】
ところで、前述したように、細線パターンとしては、たとえば10〜100μm程度の線幅の細線を縦横に格子状に設けた物がある。細線幅を小さくして開口率を大きくすると透光性は上がるが導電性は低下し、逆に細線幅を大きくすると透光性は低下して導電性は高くなる。全光線透過率が70〜90%程度の透明基材に設けた場合、透明基材上に形成された任意の細線パターンの物理現像銀のみでは、全光線透過率50%以上の透光性と表面抵抗10オーム/□以下の導電性とを同時に満足させることは困難である。その理由は、この物理現像銀は、表面固有抵抗50オーム/□以下、好ましい状態では20オーム/□以下の導電性を有しているが、細線幅40μm以下、たとえば細線幅20μmのパターンで、全光線透過率50%以上とした場合には、表面抵抗は数百オーム/□〜千オーム/□以上にもなってしまうからである。しかしながら、この物理現像銀自身は、しっかりした銀画像が形成されて通電性を有している。そのため、銅やニッケルなどの金属によるめっき、特に電解めっきを施すことにより、細線パターンが15μm以下の厚み及び40μm以下の線幅の細線パターンを全光線透過率が70〜90%程度の透明基材に設けた場合、全光線透過率50%以上、好ましくは60%以上の透光性であっても、表面抵抗10オーム/□以下、好ましくは7オーム/□以下〜0.001オーム/□の導電性を保持することができる。
【0031】
金属めっきした細線パターンの厚みは所望とする特性により任意に変えることができるが、好ましくは0.5〜15μm、更に好ましくは2〜12μmの範囲である。この範囲より薄いと所望の表面抵抗値が得られない場合があり、この範囲より厚くても問題はないが、めっき作業の効率を低下させるもかかわらず、表面抵抗値の低減効果を期待しにくい。また本発明の電磁波シールド材は、30MHz〜1,000MHzの広い帯域に亘って30dB以上のシールド効果、あるいはそれ以上の高い周波数帯に亘って良好なシールド効果を得ることができる。
【0032】
本発明においては、細線パターンの物理現像銀のめっきは、無電解めっき法、電解めっき法あるいは両者を組み合わせためっき法のいずれでも可能であるが、本発明の電磁波シールド材を製造するにあたり、透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を設けたロール状の長尺ウェブに、少なくとも細線パターンの露光、現像処理およびめっき処理という一連の処理を連続的に、またはロール状のままで施すことができる観点、およびめっきの作業効率の観点からも、電解めっきあるいはそれに無電解めっきを組み合わせた方法が好ましい。細線パターンの物理現像銀は通電性を有するので、電解めっきは容易である。
【0033】
本発明において、金属めっき法は公知の方法で行うことが出来る。たとえば電解めっき法は、銅、ニッケル、銀、金、半田、あるいは銅/ニッケル等の金属を用いて、これらの多層あるいは複合系などの電解めっき膜を形成する従来公知の方法を使用出来る。これらについては、「表面処理技術総覧;(株)技術資料センター、1987/12/21初版、281〜422頁」等の文献を参照することが出来る。
【0034】
めっきが容易で、かつ導電性に優れ、さらに厚膜にめっきでき、低コスト等の理由により、銅および/またはニッケルを用いることが好ましい。電解めっきの一例を挙げると、硫酸銅、硫酸等を主成分とする浴中に前述した物理現像銀が形成された透明基材を浸漬し、10〜40℃で、電流密度1〜20アンペア/dm2で通電することによりめっきすることが出来る。
【0035】
本発明の電磁波シールド材は、細線パターンが0.5〜15μmの厚み及び1〜40μmの線幅であるとき、全光線透過率50%以上、かつ表面抵抗が10オーム/□以下という優れた透光性能と導電性能を持ち、30MHz〜1,000MHzの広い帯域に亘って30dB以上のシールド効果、あるいはそれ以上の高い周波数帯に亘って良好なシールド効果を発揮することが出来る。そして、このシールド効果はさらに高い数10GHz帯の周波数帯についても充分効果が期待できる。
【0036】
本発明の電磁波シールド材は、電磁波遮蔽層を有する側あるいは基材の裏側に任意の層、たとえば保護層、近赤外線吸収層等を有することができ、これらの層は塗布あるいはフィルムの貼り合わせ等により設置することができる。
【0037】
また、視認性を高める目的で、めっき層の表面を酸やアルカリなどを用いて、あるいはめっきなどで黒化処理することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0039】
実施例1
透明基材として、全光線透過率が89%である厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。このフィルム基材は、塩化ビニリデンからなる下引き層、その上に50mg/m2のゼラチン層を有している。その上に、固形分で0.4mg/m2の硫化パラジウムのヒドロゾル液を塗布し、乾燥して物理現像核層を設けた。
【0040】
続いて、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造したハロゲン化銀乳剤層(塩化銀90モル%と臭化銀10モル%で、平均粒径が0.23μmになるように調製)を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤層の銀(硝酸銀)/ゼラチンの質量比は1.5で、ハロゲン化銀量(硝酸銀に換算)が4g/m2になるように塗布して感光材料を作製した。
【0041】
この感光材料を、水銀灯を光源とする明室用密着プリンターで細線パターンの透過原稿を介して露光し、続いて市販の銀錯塩拡散転写用現像液で、25℃で40秒間浸漬現像した後、続いてハロゲン化銀乳剤層を水洗除去して、細線幅20μmで細線厚みは0.05〜0.1μm及び細線間隔200μmの細線パターンの物理現像銀薄膜を形成させた。
【0042】
上記のようにして得られた細線パターン状銀薄膜が形成された電磁波シールド材(比較試料1)の全光線透過率は76%であった。この比較試料1の表面抵抗値をJIS K 7194の測定法に従って測定した。その結果、表面抵抗値は850オーム/□であった。また、比較試料1は、500MHzでは27dB、1,000MHzでは23dBのシールド性を示した。なお参考のために、上記感光材料を露光することなく、比較試料1と同様に現像して、全面に物理現像銀薄膜を形成した試料の表面固有抵抗値は13オーム/□であった。
【0043】
次に、上記比較試料1を次のようにして電解めっき処理した。電解銅めっき用処理液(硫酸銅75g/l、硫酸190g/l、塩素イオン50ppm)を用い、所定の方法(25℃、3A/cm2)に従って、物理現像銀膜上に膜厚5μmの銅めっきを施し、本発明の試料Aを作製した。比較試料1と同様に、全光線透過率および表面抵抗値を測定した結果、本発明の試料Aは、全光線透過率は73%で、表面抵抗値は0.5オーム/□であり、500MHzでは56dB、1,000MHzでは63dBのシールド性を示した。
【0044】
実施例2
銅のめっき液とニッケルのめっき液を使用し、全膜厚5μmの銅とニッケルの電解めっきを施した他は実施例1と同様にして、本発明の試料Bを作製した。全光線透過率および表面抵抗値を測定した結果、本発明の試料Bは、全光線透過率は71%で、表面抵抗値は0.3オーム/□であり、500MHzでは60dB、1,000MHzでは64dBのシールド性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、広い周波数帯に亘り、あるいは高い周波数帯において透光性とシールド性に優れた電磁波シールド材を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線透過率が70%以上の透明基材上に予め物理現像核層を設け、次いで、ハロゲン化銀乳剤層を塗布し、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順序で有する感光材料を任意の細線からなるパターンで露光し、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中にて物理現像処理を行い、前記物理現像核層上に任意の細線からなるパターンで金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核層の上に設けられた層を除去して物理現像された金属銀細線を表面に露出させた後、前記物理現像された金属銀細線を触媒核として金属を電解めっきまたは電解めっきと無電解めっきを施し、40μm以下の線幅の細線パターンを有する金属めっき膜を形成して、全光線透過率50%以上の透光性と前記細線パターンの表面抵抗10オーム/□以下の導電性とを同時に満足する電磁波シールド材を得ることを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
【請求項2】
塩化銀を80モル%以上含有するハロゲン化銀乳剤層を用いる請求の範囲第1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項3】
現像液1リットル当たり0.1〜5モルの可溶性銀錯塩形成剤と現像液1リットル当たり0.05〜1モルの還元剤の存在下でpHが10以上のアルカリ液中で物理現像処理を行う請求の範囲第1項または第2項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項4】
電解めっきが硫酸銅及び硫酸を主成分とする浴中に物理現像銀が形成された透明基材を浸漬し、10〜40℃で、電流密度1〜20アンペア/dm2で通電することにより行われる請求の範囲第1項〜第3項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項5】
電解めっきが銅及びニッケルから選択される少なくとも1種のめっきである請求の範囲第1項〜第4項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項6】
透明基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を設けたロール状の長尺ウェブを用い、少なくとも露光、物理現像処理および電解めっきをロール状のままで施す請求の範囲第1項〜第5項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項7】
電磁波シールド材の全光線透過率が60%以上である請求の範囲第1項〜第6項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項8】
前記細線パターンの表面抵抗が7オーム/□以下である請求の範囲第1項〜第7項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項9】
前記細線パターンの厚みが15μm以下である請求の範囲第1項〜第8項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項10】
前記細線パターンの厚みが2〜12μmである請求の範囲第1項〜第9項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項11】
前記細線パターンの線幅が1〜40μmである請求の範囲第1項〜第10項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。
【請求項12】
前記細線パターンの表面を酸、アルカリまたはめっきを用いて黒化処理する請求の範囲第1項〜第11項の何れか1項に記載の電磁波シールド材の製造方法。

【公開番号】特開2010−43358(P2010−43358A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228150(P2009−228150)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【分割の表示】特願2004−521193(P2004−521193)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】