説明

電磁波シールド材

【課題】 航空・宇宙関連電子機器などの信号系及び電源系ワイヤーハーネスにおいて、シールド材の装着が容易でコストダウンを計ることができ、且つ確実にノイズを遮断することができる電磁波シールド材を提供する。
【解決手段】 複数本の絶縁被覆電線を束ねた電線の端末のコネクタとの結合部に被覆する電磁波シールド材1において、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛4と、絶縁性を有する樹脂皮膜又は絶縁性布帛5とを重ね合わせてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材に関するものであって、主として航空・宇宙関連電子機器の信号系及び電源系配線における、ワイヤーハーネスのノイズ対策用のシールド材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からワイヤーハーネスの電磁波シールド材としては、様々なものが使用されているが、その一例を挙げると例えば特開2003−110277号公報や特開2004−119047号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
これらのものは金属繊維を筒状に編んだ編組物であって、この編組物を電線の端末部に被せて覆い、この編組物で電線を流れる電流から生じる電磁波ノイズを遮断し、弱電回路を保護しようとするものである。
【0004】
しかしながら筒状の編組物は径や長さが不定であり、僅かの力で組織が変形する特性を有し、局部的に伸びたり縮んだり、径が変化したりする。しかも編組の組織が粗いと、この編組物に複数の電線などを挿通する際に引っ掛かり易く、挿通が困難であると共に組織が不用意に変化する恐れがある。
【0005】
またあらかじめ複数の電線の端末部にテープなどを巻回して纏めておくことにより挿通を容易ならしめることもできるが、テープなどを巻回するのに手間を要し、またテープの分だけ電線の径が大きくなるため、編組物の径を部分的に拡大縮小しながら挿通しなければならず、かえって挿通が困難になっていた。
【0006】
また特開2004−152871号公報に示されているように、電線の束に金属繊維を織成したテープを螺旋状に巻回することにより、電線から生じる電磁波をシールドすることも行われているが、テープがずれやすく、ずれを防止するためにその重なり部を半田付けする必要があった。
【0007】
このようにいずれの構造を採用するにしても、作業面で非常に手間が掛かりコストアップにつながると共に、設計変更などによる改修作業は通常作業以上に手間が掛かり、部材の再利用も出来ないという欠点があった。
【特許文献1】特開2003−110277号公報
【特許文献2】特開2004−119047号公報
【特許文献2】特開2004−152871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、航空・宇宙関連電子機器などの信号系及び電源系ワイヤーハーネスにおいて、シールド材の装着が容易でコストダウンを計ることができ、且つ確実にノイズを遮断することができる電磁波シールド材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して第一の発明の電磁波シールド材は、複数本の絶縁被覆電線を束ねた電線の端末のコネクタとの結合部に被覆する電磁波シールド材において、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛と、絶縁性を有する樹脂皮膜とを重ね合わせて接合してなることを特徴とするものである。
【0010】
また第二の発明は、複数本の絶縁被覆電線を束ねた電線の端末のコネクタとの結合部に被覆する電磁波シールド材において、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛と、絶縁性を有する繊維よりなる絶縁性布帛とを重ね合わせて接合してなることを特徴とするものである。
【0011】
以上の本発明においては、前記導電性布帛の素材としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、アルミナ、ステンレス、タングステン若しくはチタン又はそれらの合金からなるものとすることができる。当該導電性布帛の構造としては、前記金属繊維よりなる織物、編物、ブレード又は不織布とするのが適当である。
【0012】
また前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛の素材としては、アラミド樹脂、シリコン樹脂又はフッ素樹脂が適当である。また前記第一の発明においては、前記導電性布帛の表面に、前記樹脂皮膜を押し出しラミネーションにより被覆したものとすることができる。
【0013】
また前記第二の発明においては、絶縁性布帛としては前記絶縁性を有する繊維よりなる織物又は不織布であることが好ましい。また前記導電性布帛と前記絶縁性布帛とは、ニードルパンチ又はウォータージェットニードルにより、機械的に交絡させて接合したものが好ましい。
【0014】
本発明においては、前記導電性布帛及び、前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛の目付は、それぞれ10〜1000g/m2とするのが好ましい。前記導電性布帛においては特に100 〜500g/m2であることが好ましく、また前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛については、 形状の安定性、シールド特性、柔軟性、複層性、経済性の点から、50〜250g/m2 とするのが好ましい。
【0015】
またこれらのシールド材においては、前記絶縁性布帛の表面の一縁に、面ファスナーのフック側を取り付け、シールド材を電線に巻回した後、前記面ファスナーのフック側と導電性布帛とを接合することにより、シールド材の巻回状態を維持し得るようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明の電磁波シールド材はそれ自体が導電性布帛により電磁波をシールドする機能を有しており、これをワイヤーハーネスに巻回することにより、そこから生じる電磁波を遮断することができる。
【0017】
また金属繊維を筒状に編組した編組物にワイヤーハーネスを挿通する場合のように、手間がかかったり電線が編組物に引っ掛かったりすることはなく、またテープを巻回する場合のように、テープがずれてシールド性が損なわれることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図面は本発明の電磁波シールド材1の一例を示すものであって、テープ状のシールド材本体2の一端部に、面ファスナーのフック側3が貼着されている。
【0019】
シールド材本体2は図2に示すように、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛4と、絶縁性を有する樹脂皮膜又は、絶縁性を有する繊維よりなる絶縁性布帛5を重ねて接合したものである。
【0020】
導電性布帛4を構成する金属繊維としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、アルミナ、ステンレス、タングステン若しくはチタン又はそれらの合金の繊維を使用するのが適当であり、布帛の構造としては、これらの金属繊維の織物、編物、ブレード又は不織布とすることができる。
【0021】
また樹脂皮膜又は絶縁性布帛5の素材としては、アラミド樹脂、シリコン樹脂又はフッ素樹脂を使用するのが好ましい。樹脂皮膜の場合にはこれらの樹脂を導電性布帛4の表面に塗布して固化させ、皮膜を形成する。また絶縁性布帛5を使用する場合には、前記樹脂よりなる繊維の織物又は不織布を使用する。
【0022】
導電性布帛4と樹脂皮膜又は絶縁性布帛5とを接合するには、その両者を接着剤又はバインダーで接合することも可能であるが、電磁波シールド材1を柔軟に保つためには、ニードルパンチ又はウォータージェットニードルにより、機械的に交絡させて接合することが好ましい。
【0023】
前記導電性布帛4の目付は10〜1000g/m2、好ましくは100〜500g/m2であり、前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛5の目付は10〜1000g/m2、好ましくは5 0〜250g/m2である。電磁波シールド材1が過度に厚いと剛直になり、ワイヤーハ ーネスに巻回する作業が困難となり、また導電性布帛4が薄すぎると電磁波に対するシールド性が不足し、樹脂皮膜又は絶縁性布帛5が薄すぎると、ほとんど金属繊維のみになるため取り扱い性が悪くなる。
【0024】
面ファスナーは本発明において必須ではないが、シールド材本体2の樹脂皮膜又は絶縁性布帛5の表面に面ファスナーのフック側3を取り付けることにより、電磁波シールド材1をワイヤーハーネスに巻回した後フック側3を導電性布帛4の表面に圧着し、電磁波シールド材1の巻回状態を保持することができ、ワイヤーハーネスのシールド作業が大幅に改善される。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
絶縁性布帛5として、ポリテトラフルオロエチレン繊維(商品名:ポリフロンウエッブ、ダイキン工業株式会社製)の、平均繊維径10μmのステープルファイバーからなる、目付150g/m2の不織布層と、導電性布帛4として、ステンレス繊維(商品名:ナス ロンウエッブ、日本精線株式会社製)の平均繊維径8μmのステープルファイバーよりなる、目付200g/m2の不織布層とを、ウォータージェットニードル機にてニードリン グし、サクション装置で脱水・乾燥させ、厚さ1.0mm、目付350g/m2の電磁波シ ールド材1を作製した。
【0026】
[実施例2]
絶縁性布帛5として、ポリテトラフルオロエチレン繊維(前記ポリフロンウエッブ)の平均繊維径10μmのステープルファイバーからなる、目付150g/m2の不織布層と 、導電性布帛4として、ステンレス繊維(前記ナスロンウエッブ)の平均繊維径8μmのステープルファイバーよりなる、目付300g/m2の不織布層とを、ウォータージェッ トニードル機にてニードリングし、サクション装置で脱水・乾燥させ、厚さ1.5mm、目付450g/m2の電磁波シールド材1を作製した。
【0027】
[比較例1]
樹脂層として難燃性ナイロン樹脂を使用し、金属層としてアルミ箔を使用した市販のハーネスシールド材を比較例1とした。
【0028】
[比較例2]
錫メッキ銅線をパイプ状に編み上げたカッパーブレードを比較例2とした。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2をそれぞれの項目に関して効果の確認を行ない表1に示した。
【0029】
【表1】

【0030】
以上述べたように、本発明の電磁波シールド材は、樹脂皮膜又は絶縁性布帛5と導電性布帛4とを重ねて接合したものであるので、フレキシブル性を有し且つワイヤーハーネスに装着する作業性が良好であり、また一旦使用したものを再利用することも可能な電磁波シールド素材として、極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の電磁波シールド材の斜視図
【図2】本発明の電磁波シールド材の一部を拡大して示した縦断面図
【符号の説明】
【0032】
1 電磁波シールド材
3 面ファスナーのフック側
4 導電性布帛
5 樹脂皮膜又は絶縁性布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の絶縁被覆電線を束ねた電線の端末のコネクタとの結合部に被覆する電磁波シールド材において、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛(4)と、絶縁性を有する樹脂皮膜とを重ね合わせて接合してなることを特徴とする、電磁波シールド材
【請求項2】
複数本の絶縁被覆電線を束ねた電線の端末のコネクタとの結合部に被覆する電磁波シールド材において、シールド特性を有する金属繊維よりなる導電性布帛(4)と、絶縁性を有する繊維よりなる絶縁性布帛(5)とを重ね合わせて接合してなることを特徴とする、電磁波シールド材
【請求項3】
前記導電性布帛(4)が、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、アルミナ、ステンレス、タングステン若しくはチタン又はそれらの合金からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁波シールド材
【請求項4】
前記導電性布帛(4)が、前記金属繊維よりなる織物、編物、ブレード又は不織布であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の電磁波シールド材
【請求項5】
前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛(5)が、アラミド樹脂、シリコン樹脂又はフッ素樹脂よりなることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の電磁波シールド材
【請求項6】
前記絶縁性布帛(5)が、前記絶縁性を有する繊維よりなる織物又は不織布であることを特徴とする、請求項2に記載の電磁波シールド材
【請求項7】
前記導電性布帛(4)の表面に、前記樹脂皮膜を押し出しラミネーションにより被覆したことを特徴とする、請求項1に記載の電磁波シールド材
【請求項8】
前記導電性布帛(4)と前記絶縁性布帛(5)とを、ニードルパンチ又はウォータージェットニードルにより機械的に交絡させて接合してなることを特徴とする、請求項2に記載の電磁波シールド材
【請求項9】
前記導電性布帛(4)及び、前記樹脂皮膜又は絶縁性布帛(5)の目付が、それぞれ10〜1000g/m2であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5 、6、7又は8に記載の電磁波シールド材
【請求項10】
前記絶縁性布帛(5)の表面の一縁に、面ファスナーのフック側(3)を取り付けたことを特徴とする、請求項2に記載の電磁波シールド材

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−147962(P2006−147962A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338240(P2004−338240)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000229863)アンビック株式会社 (35)
【出願人】(504433685)名古屋フエルト工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】