電磁波シールド織物、電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシング
【課題】電磁波シールド織物において表面に露出する金属線材及び導電性のカーボン繊維の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができること。
【解決手段】電磁波シールド織物6の縦糸を構成する混合糸2は複数本のポリエステル繊維の束3に太さは約80μmのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成され、横糸としてはカーボン繊維7が用いられる。ステンレス線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とできる。この電磁波シールド織物6の遮蔽性能を測定したところ、周波数0.1MHz〜1GHzの広い周波数範囲で60dB以上、周波数0.1MHz〜約40MHzでは70dB以上という高い値を示した。
【解決手段】電磁波シールド織物6の縦糸を構成する混合糸2は複数本のポリエステル繊維の束3に太さは約80μmのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成され、横糸としてはカーボン繊維7が用いられる。ステンレス線材4は必要な太さのナイロン繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とできる。この電磁波シールド織物6の遮蔽性能を測定したところ、周波数0.1MHz〜1GHzの広い周波数範囲で60dB以上、周波数0.1MHz〜約40MHzでは70dB以上という高い値を示した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波遮蔽材として用いることができる電磁波シールド織物及びそれを応用した電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングに関するもので、特に電磁波遮蔽性能の大幅な向上を可能とする電磁波シールド織物、電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータ(以下、「パソコン」という。)を始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1に記載の考案においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板について提案している。
【0003】
また、特許文献2に記載の考案においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンについて提案している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHz(1GHz)で42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0007】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0008】
電磁波シールド用織物の電磁波シールド性能を最も容易に向上させるには、金属線材のみで織物を織るのが理想的であるが、金属線材は強度に劣るために織機でそのまま織ろうとしても切れてしまったり、絡まってしまったりという不具合が起こる。
【0009】
そこで、本発明は、表面に露出する金属線材及び導電性のカーボン繊維の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を応用した電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。
【0011】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「Z撚り及び/またはS撚りして」とは、Z撚りのみをする場合と、S撚りのみをする場合と、Z撚り及びS撚りを両方する場合とを全て含む意味である。
【0012】
請求項2の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなるものである。
【0013】
請求項3の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1または請求項2の構成において、前記金属線材は30μm〜120μmの範囲内の太さを有するものである。
【0014】
請求項4の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記金属線材は銅線材またはメッキした銅線材であるものである。
【0015】
請求項5の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記金属線材はステンレス線材であるものである。
【0016】
請求項6の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1または請求項2の構成において、前記金属線材は導電性を有する磁性体であるものである。
【0017】
ここで、磁性体としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0018】
請求項7の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記カーボン繊維は高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有するものである。
【0019】
請求項8の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたものである。
【0020】
請求項9の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項8の構成において、前記電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明であるものである。
【0021】
請求項10の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたものである。
【0022】
請求項11の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたものである。
【0023】
請求項12の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、前記1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されているものである。
【0024】
請求項13の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたものである。
【0025】
請求項14の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたものである。
【0026】
請求項15の発明にかかる電磁波シールドケーシングは、電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、前記ケーシングの全面に亘って前記電磁波シールド織物が張り巡らされているものである。
【0027】
ここで、「電子機器」とは、パソコン、コピー機、ファックス機、テレビ等の家電機器を始めとして、自動車等のECU(Electronic Control Unit)、或いはECUを中心として構成された電子制御システム、等をも含むものである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0029】
これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物は表面に露出している金属の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた電磁波シールド織物となる。
【0030】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物となる。
【0031】
請求項2の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなる。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0032】
これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有し、またカーボン繊維は充分な強度と柔軟性を有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0033】
そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されており、カーボン繊維は導電性を有するので、織成された織物は表面に露出している導電性材料の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた電磁波シールド織物となる。
【0034】
さらに、本発明者が実験を行った結果、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸のみで電磁波シールド織物を織った場合と、同一の混合糸を縦糸または横糸にして、カーボン繊維を横糸または縦糸にして電磁波シールド織物を織った場合とを比較すると、後者の方がより電磁波遮蔽性に優れていることを知見した。
【0035】
このようにして、表面に露出する導電性材料の面積の割合をより大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物となる。
【0036】
請求項3の発明にかかる電磁波シールド織物は、金属線材が30μm〜120μmの範囲内の太さを有する。
【0037】
本発明者は、本発明にかかる電磁波シールド織物を構成する金属線材として、どの程度の太さを有するものが最も適しているかについて鋭意実験研究の結果、30μm〜120μmの太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0038】
即ち、金属線材の太さが30μm未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに切れる可能性が高くなり、また電磁波シールド織物としたときに表面に露出する金属線材の割合が小さくなるため、大きな電磁波遮蔽性能が得られない。一方、金属線材の太さが120μmを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに柔軟性が不足してうまく混合糸を紡糸することができない。したがって、金属線材の太さを30μm〜120μmの範囲内とすることによって、容易に混合糸を紡糸することができ、また電磁波シールド織物としたときに表面に露出する金属線材の割合が大きくなるため、大きな電磁波遮蔽性能を得ることができる。
【0039】
このようにして、表面に露出する金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0040】
請求項4の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材として銅線材を用いているから、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの効果に加えて、銅線材は導電性に優れており極めて電磁波遮蔽性能が高く、柔軟性も兼ね備えており、任意の太さのものが容易に入手できるので、本発明の電磁波シールド織物における金属線材として適している。銅線材が錫やニッケル等でメッキされていれば、耐候性にも優れるのでより好ましい。
【0041】
このようにして、金属線材として銅線材を用いて、表面に露出する銅線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0042】
請求項5の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材としてステンレス線材を用いているから、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの効果に加えて、ステンレス線材は導電性に優れ電磁波遮蔽性能が高く、任意の太さのものが容易に入手できるばかりでなく、錆び難く耐候性に優れているので、本発明の電磁波シールド織物における金属線材として適している。
【0043】
このようにして、金属線材としてステンレス線材を用いて、表面に露出するステンレス線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0044】
請求項6の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材が導電性を有する磁性体である。ここで、磁性体としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0045】
電磁波シールドにおいて、電気的な遮蔽のみでなく磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。したがって、磁性体である金属線材を用いることによって、磁界も遮蔽することができるため、より良好な電磁波シールド特性を有する電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0046】
請求項7の発明にかかる電磁波シールド織物は、カーボン繊維が高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有する。
【0047】
カーボン繊維(炭素繊維ともいう。)には、製法によってPAN系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、等の種類があるが、PAN系炭素繊維は原料であるPANの分子構造を制御し、紡糸または不融化処理の段階で延伸を加え、高度に軸配向した組織とすることによって、高い引っ張り強度をもつ炭素繊維が作られる(高強度タイプ)(「化学便覧・応用編」第6版663頁、平成15年1月30日発行、編者・社団法人日本化学会、発行所・丸善株式会社)。
【0048】
したがって、かかる高強度タイプのPAN系カーボン繊維を用いることによって、高い引っ張り強度を有するため、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして巻き付けて混合糸を製造したり、織機で織ったりしても切れることがなく、極めて効率良く、強度的にも優れた電磁波シールド織物を製造することができる。
【0049】
また、本発明者は、本発明にかかる電磁波シールド織物を構成するカーボン繊維として、どの程度の太さを有するものが最も適しているかについて鋭意実験研究の結果、150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0050】
即ち、カーボン繊維の太さが150デニール未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして巻き付けて混合糸を製造するときや混合糸とともに織成するときに切れる可能性が高くなり、一方カーボン繊維の太さが1800デニールを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして混合糸を製造するときや混合糸とともに織成するときに柔軟性が不足してうまく製造・織成することができない。したがって、カーボン繊維の太さを150デニール〜1800デニールの範囲内とすることによって、容易に混合糸を製造すること及び混合糸とともに織成することができる。
【0051】
請求項8の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたものである。
【0052】
これによって、用いられる金属線材が錆び易いものである場合でも、屋外での用途に使用しても長期間錆びることがなく、電磁波遮蔽性能を発揮することができる。特に、銅線材等の極めて優れた電磁波遮蔽性能を有するが錆び易い金属線材を用いる場合に有効である。
【0053】
このようにして、用いられる金属線材が錆び易いものである場合でも、屋外での用途に使用しても長期間錆びることがなく、電磁波遮蔽性能を発揮することができる電磁波シールドシートとなる。
【0054】
請求項9の発明にかかる電磁波シールドシートは、電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明である。
【0055】
このように織り目が粗い電磁波シールド織物は、1枚の場合は勿論、2枚・3枚と重ねても向こう側が透けて見える。そして、かかる電磁波シールド織物を二枚の透明な薄い有機合成樹脂シートで挟んで電磁波シールドシートを構成することによって、電磁波遮蔽性能を発揮しながら向こう側が透けて見えるため、向こう側が見える方が好都合な用途に最適な電磁波シールドシートとなる。
【0056】
請求項10の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたものである。
【0057】
即ち、本発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長い筒状にして、少なくとも両端をプラスチック製の結束バンドで留めるようにしたもの、またはケーブルに巻き付けた時に重なり合う部分に1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布(即ちマジックテープ(登録商標))を貼り付けたものである。結束バンドは、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートにその一部を接着する等によって取付けられていても良いし、別々の部材としても良い。
【0058】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、結束バンドで締付けて留め、または1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を接着して留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物または電磁波シールドシートの電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0059】
ここで、1対の接着布を用いた場合には、接着部分の厚さだけ電磁波シールド織物または電磁波シールドシートを重ね合わせた部分に隙間ができることになるが、この接着部分は金属コーティングされているか金属線からなるため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0060】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0061】
請求項11の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたものである。
【0062】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、金属製のファスナーを噛み合わせて引き上げることによって留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物または電磁波シールドシートの電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0063】
ここで、金属製のファスナーのファスナー生地が通常の布製の生地であると、その部分から電磁波が透過してしまうことになるが、本発明においてはファスナー生地として請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を用いているため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0064】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0065】
請求項12の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されている。
【0066】
このように、1対のプラスチック・ファスナーを用いることによって、電磁波シールド材の両端を容易かつ確実に隙間なく留めることができる。そして、1対のプラスチック・ファスナーには電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されているので、電力線または通信線を包んで留めた場合にプラスチックのみの部分がなくなって、全周が電磁波シールド織物で包まれるため、プラスチックのみの部分から電磁波が透過するという恐れもなく、確実に電磁波をシールドすることができる。
【0067】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0068】
請求項13の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたものである。即ち、本発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長い筒状にして、ケーブルに巻き付けた時に重なり合う部分に複数の金属製ボタンとそれに対応する位置にボタンホールを設けている。
【0069】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、金属製ボタンをボタンホールにかけて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物の電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0070】
ここで、ボタンが金属製であるため、ボタンホールの隙間から電磁波が透過するのを確実に防止することができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる。
【0071】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0072】
請求項14の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたものである。
【0073】
したがって、かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに接着剤を塗布した面、または両面接着テープを貼り付けた面を貼り付けながら、包帯を巻くように隙間ができないように巻き付けて行くことによって、容易に電力線・通信線等のケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる。
【0074】
ここで、接着剤としては屋外で使用する場合にも剥がれることのない耐候性を有する耐候性接着剤が好ましい。この場合には、耐候性を有する接着剤を用いているため、屋外のケーブルに適用した場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。
【0075】
また、かかる電磁波シールド材を自動車内の配線に巻き付けることによって、自動車内の配線を電磁波による影響から守ることができる。このような車内に用いる場合には、外気に曝される部分を除いて、通常の接着剤を用いた場合でも、また両面接着テープを用いた場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。さらに、本発明にかかる電磁波シールド材は極めて薄いため、スペースに制限のある自動車内の配線等を電磁波シールドするのに最も適している。
【0076】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルや自動車内の配線等に巻き付けることができ、確実に電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0077】
請求項15の発明にかかる電磁波シールドケーシングは、電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、ケーシングの全面に亘って電磁波シールド織物が張り巡らされている。
【0078】
したがって、例えばパソコンを操作する人が、パソコン本体から発せられる電磁波によって人体に有害な影響を受けることを防ぐことができるとともに、パソコン本体に外部からの電磁波が干渉することによってパソコンが誤作動等をするという不具合も防止することができる。
【0079】
また、近年は、自動車等においても電子制御・自動制御が進み、エンジンの電子制御システムを始めとして、至るところにECUを中心として構成された電子制御システムが用いられている。このような電子制御システムが電磁波の影響によって誤作動するのを防止するために、また熱の影響を防ぐためにアルミニウムを始めとする金属筐体で覆われている場合が多い。しかし、本発明にかかる電磁波シールドケーシングを用いれば、コストも低減できるとともに省スペースにもなり、製造工程も短縮することができる。
【0080】
このようにして、表面に露出する金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物を用いることによって、低コストで省スペースにもなり製造工程も短縮できる電磁波シールドケーシングとなる。
【0081】
このようにして、大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例2の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の接続部分の内部構成を示す部分断面図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図、(c)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の構造を示す断面図である。
【図13】図13(a)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの使用状態を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図、(c)は本発明の実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0084】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0085】
図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。図3(a)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図4は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【0086】
図1(a)に示されるように、本実施の形態1の電磁波シールド織物1を構成する混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ステンレス線材4の太さは、約80μmである。これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0087】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図1(b)に示されるような電磁波シールド織物1を製造した。織り目の密度は、縦横ともインチ間88本の平織りである。図1(b)に拡大して示されるように、この電磁波シールド織物1の表面にはステンレス線材4がかなりの割合で露出している。したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この電磁波シールド織物1の電磁波遮蔽性能を、社団法人関西電子工業振興センター生駒試験所において、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0088】
その測定結果を、図2に示す。図2に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、全周波数に亘って電界のシールド値が60dB以上という高い値を示した。なお、図2に示されるように、0.1MHz〜0.3MHzの間においてはシールド値が60dBを下回っているが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜0.3MHzの間においても電界のシールド値は60dB以上である。
【0089】
さらに、この電磁波シールド織物1は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着、ケーブル線遮蔽材等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って100dB以上という大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0090】
また、実験として、携帯電話を用いて、電波遮蔽試験を行った。予め、携帯電話が通話できる場所であることを確認した後に、電磁波シールド織物1で携帯電話を完全に包み(一重)、当該携帯電話に固定電話から電話をかけたところ、携帯電話の呼び出し音は鳴らず、固定電話の受話器には「電波の届かない場所にあるか、電源が切られている」という応答メッセージが流れた。2種類の携帯電話(電波周波数1.5GHz及び2.0GHz)で実験したが、同様な結果が得られた。したがって、電磁波シールド織物1によって、周波数1.5GHz及び2.0GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0091】
このようにして、本実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1においては、表面に露出する金属線材としてのステンレス線材4の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波シールド用カーテンや電磁波シールド用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに電磁波シールド織物1を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0092】
また、このようにして製造された電磁波シールド織物1は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体(例えば、電力線・通信線のようなケーブルや自動車内の配線等)に巻き付け、ポリエステル繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0093】
このように、本実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1は、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)という広い周波数帯に亘って60dB以上という優れた電磁波シールド効果を発揮するために比較的密に織られているが、電磁波シールド効果がそれほど必要でない場合には、より粗い(具体的には織り目が1mm以上20mm以下、例えば、3mmピッチの)織り方で織った電磁波シールド織物であっても使用することができ、このような粗い織り方で織った電磁波シールド織物はほぼ透明であるため、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0094】
粗い織り方で織った電磁波シールド織物の具体例としては、図3に示される本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を挙げることができる。図3(a)に示されるように、本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を構成する混合糸2は、図1(a)と同様の構成を有している。即ち、複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。
【0095】
ステンレス線材4の太さは、約80μmである。これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0096】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図3(b)に示されるような織り目の粗い電磁波シールド織物5を製造した。織り目の密度は、縦横ともインチ間18本(織り目のピッチが約3mm)の平織りである。製造された電磁波シールド織物5はメッシュ状であり、完全に向こう側が透けて見えるものである。この電磁波シールド織物5の電磁波遮蔽性能を、上記電磁波シールド織物1と同様に、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0097】
その測定結果を、図4に示す。図4に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、電磁波シールド織物5が1枚の場合には、全周波数に亘って電界のシールド値が約20dBという値であった。そこで、電磁波シールド織物5を2枚重ねた場合及び3枚重ねた場合についても、測定を行った。
【0098】
その結果、図4に示されるように、電磁波シールド織物5を2枚重ねた場合には全周波数に亘って電界のシールド値が30dB以上、3枚重ねた場合には全周波数に亘って電界のシールド値が40dB以上、という優れた値が得られた。電磁波シールド織物5は、極めて織り目が粗いため、3枚重ねた場合でも向こうが良く透けて見える。なお、図4に示されるように、0.1MHz〜0.3MHzの間においてはシールド値が低下しているように見えるが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜0.3MHzの間においても電界のシールド値はほぼ同一である。
【0099】
このような織り目が粗い本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5についても、上述したような携帯電話を用いた電波遮断試験を行った。携帯電話としては、電波周波数が1.5GHzのものを用いた。結果は、一重に包んだ場合、二重に包んだ場合には固定電話からの電話が通じたが、三重に包んだ場合には固定電話からの電話は通じなかった。三重に包んだ場合でも、中の携帯電話ははっきり透けて見える。したがって、中が透けて見える状態であっても、1.5GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0100】
さらに、混合糸2の中心となる通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3の代わりに、透明な繊維例えば透明なポリエステル繊維を用いることによって、比較的密に織った場合でも、向こうが透けて見えるために、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0101】
本実施の形態1においては、金属線材としてステンレス線材4を用い、通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3を用いた場合について説明したが、これらに限られるものではなく、金属線材としては銅線材、錫やニッケル等でメッキされた銅線材を始めとして、種々の金属線材を用いることができ、通常の可紡性繊維としては木綿、絹、麻、羊毛、ビニロン、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維を用いることができ、またはこれらの繊維を混用することができる。
【0102】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド織物となる。
【0103】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図5及び図6を参照して説明する。
【0104】
図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【0105】
図5(a)に示されるように、本実施の形態2の電磁波シールド織物6を構成する混合糸4は、実施の形態1と同様に、中心に複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ステンレス線材4の太さは、実施の形態1と同じく約80μmである。
【0106】
これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0107】
図5(b)に示されるように、この混合糸2を縦糸として、そして同様の太さのカーボン繊維7を横糸として織られた本実施の形態2の電磁波シールド織物6は、図5(b)に拡大して示されるように、縦糸側にはステンレス線材4がかなりの割合で露出しており、横糸のカーボン繊維7も導電性を有している。なお、カーボン繊維7としては、太さ600デニールの高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維を用いている。
【0108】
したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この電磁波シールド織物6の電磁波遮蔽性能を、社団法人関西電子工業振興センター生駒試験所において、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0109】
その測定結果を、図6に示す。図6に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、全周波数に亘って電波のシールド値が60dB以上であり、特に周波数0.1MHz〜約40MHzの周波数帯においては70dB以上という高い値を示した。なお、図6に示されるように、0.1MHz〜2MHzの間においてはシールド値が70dBを下回っているが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜2MHzの間においても電波のシールド値は70dB以上である。
【0110】
さらに、この電磁波シールド織物6は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着、ケーブル線遮蔽材等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って100dB以上という大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0111】
また、本実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6についても、上述したような携帯電話を用いた電波遮断試験を行った。携帯電話としては、電波周波数が1.5GHzのものを用いた。結果は、一重に包んだ場合、二重に包んだ場合には固定電話からの電話が通じたが、三重に包んだ場合には固定電話からの電話は通じなかった。したがって、混合糸2を縦糸として、カーボン繊維7を横糸として織られた本実施の形態2の電磁波シールド織物6においても、1.5GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0112】
このようにして、本実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6においては、表面に露出する金属線材としてのステンレス線材4の面積の割合をできるだけ大きくするとともに、導電性を有するカーボン繊維を用いることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波シールド用カーテンや電磁波シールド用シート、エプロン型の衣服の前面だけに電磁波シールド織物6を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0113】
また、このようにして製造された電磁波シールド織物6は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体(例えば、電力線・通信線のようなケーブルや自動車内の配線等)に巻き付け、ポリエステル繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0114】
なお、混合糸2の中心となる通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3の代わりに、透明な繊維例えば透明なポリエステル繊維を用いることによって、比較的密に織った場合でも、向こうが透けて見えるために、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0115】
本実施の形態2においては、金属線材としてステンレス線材4を用い、通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3を用いた場合について説明したが、これらに限られるものではなく、金属線材としては銅線材、錫やニッケル等でメッキされた銅線材を始めとして、種々の金属線材を用いることができ、通常の可紡性繊維としては木綿、絹、麻、羊毛、ビニロン、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維を用いることができ、またはこれらの繊維を混用することができる。
【0116】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド織物となる。
【0117】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図7を参照して説明する。図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図である。
【0118】
図7(a)に示されるように、本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は、上述した実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1において、ステンレス線材4の代わりに銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで、平板上で加熱したアイロンで全面をプレスすることによって、上下のビニールシート15を銅線材を使用した電磁波シールド織物1Aに加熱圧着させることによって製造される。
【0119】
ここで、完成した電磁波シールドシート16全体としては、表面に銅線材が露出していないが、電磁波シールド織物1Aとしては表面に露出する銅線材の割合ができるだけ多くなるように製造されており、銅線材は電磁波シールドに極めて優れているため、電磁波シールド織物1Aそのものとしては、一枚で100dB以上の大きな電磁波シールド特性を示すものである。
【0120】
したがって、かかる電磁波シールド織物1Aを厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで電磁波シールドシート16としても、電磁波シールド特性は殆ど低下することがない。そして、このように電磁波シールド織物1Aを外部から保護することによって、錆び易い銅線材も錆びる恐れはなく、耐候性に優れた屋外でも使用できる電磁波シールドシート16となる。
【0121】
本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで構成しているが、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1或いは実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6を、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで構成しても良い。また、薄い有機合成樹脂シートとしても、厚さ約0.1mmのビニールシート15に限られるものではなく、種々の薄い有機合成樹脂シートを用いることができる。
【0122】
また、本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は、電磁波シールド織物1Aを厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで加熱圧着して製造しているが、接着剤を用いて接着することによってシート状にすることもできる。
【0123】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を挟んで構成した場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールドシートとなる。
【0124】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例2の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【0125】
図8(a)に示されるように、本実施の形態4の実施例1にかかる電磁波シールド材11Aは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、少なくとも両端をプラスチック製の結束バンド12で留めるようにしたものである。これらの結束バンド12は、電磁波シールド織物1にその一部を接着する等によって取付けられていても良いし、別々の部材としても良い。
【0126】
図8(b)に示されるように、かかる電磁波シールド材11Aを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、結束バンド12で締付けて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0127】
また、図8(c)に示されるように、本実施の形態4の実施例2にかかる電磁波シールド材11Bは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、ケーブル10に巻き付けた時に重なり合う部分に、1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布(即ちマジックテープ(登録商標))13A,13Bを貼り付けたものである。したがって、電磁波シールド織物1を拡げた場合には、一方の辺の表側に沿って接着布の硬い側13Aが貼り付けられており、この辺と相対する他方の辺の裏側に沿って接着布の軟らかい側13Bが貼り付けられている。
【0128】
これによって、かかる電磁波シールド材11Bを、図8(b)に示されるように電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて行く際には、実施例1にかかる電磁波シールド材11Aに比較してより迅速に取付けることができ、短時間で取付け作業を完了することができる。そして、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0129】
ここで、1対の接着布13A,13Bを用いた場合には、接着部分の厚さだけ電磁波シールド織物1を重ね合わせた部分に隙間ができることになるが、この接着部分は金属コーティングされているか金属線からなるため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0130】
このようにして、本実施の形態4の実施例1にかかる電磁波シールド材11A及び実施例2にかかる電磁波シールド材11Bは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0131】
本実施の形態4においては電磁波シールド織物1に結束バンド12または1対の接着布13A,13Bを組み合わせて電磁波シールド材を構成しているが、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6に結束バンド12または1対の接着布13A,13Bを組み合わせて電磁波シールド材を構成しても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0132】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0133】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図9を参照して説明する。図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図である。
【0134】
図9(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、長手方向の両端の一方に金属製ファスナー23の一方のファスナー生地24Aを縫付け、長手方向の他端に金属製ファスナー23の他方のファスナー生地24Bを縫付けてなるものである。ここで、金属製ファスナー23のファスナーむし部分23A,23Bが取付けられているファスナー生地24A,24Bはいずれも電磁波シールド織物1を用いて製造されている。
【0135】
図9(b)に示されるように、かかる構造の電磁波シールド材11Cを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、ファスナーむし部分23Bをファスナーむし部分23Aに噛み合っているファスナー移動体23Dに噛み合わせて、ファスナー引き手23Cを持って引き上げることによってファスナーむし部分23A,23Bを噛み合わせて閉じることによって、電磁波シールド材11Cを電力線・通信線等のケーブル10に迅速かつ容易に留めることができる。
【0136】
これによって、かかる電磁波シールド材11Cを、図8(b)に示されるように電力線・通信線等のケーブル10に端が重なるように次々と巻き付けて行く際には、上記実施の形態8にかかる電磁波シールド材11Aに比較してより迅速に取付けることができ、短時間で取付け作業を完了することができる。そして、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0137】
ここで、ファスナー生地24A,24Bが通常の金属製ファスナーのように通常の布地で作られていると、その布地の部分から電磁波が透過してしまうが、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cにおいては、ファスナー生地24A,24Bがいずれも電磁波シールド織物1を用いて製造されているので、電磁波が透過する恐れはない。
【0138】
このようにして、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも迅速かつ容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、短時間で確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0139】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図10を参照して説明する。図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の接続部分の内部構成を示す部分断面図である。
【0140】
図10(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる電磁波シールド材11Dは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、長手方向の両端に雄部22Aと雌部22Bとからなる1対のプラスチック・ファスナー22を取付け、この1対のプラスチック・ファスナー22を嵌め込むことによって、留めるようにしたものである。ここで、後述するようにこの1対のプラスチック・ファスナー22を構成する雄部22Aと雌部22Bとの内部には、電磁波シールド織物1が全長に亘ってインサート成形されている。
【0141】
図10(b)に示されるように、かかる電磁波シールド材11Dを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、プラスチック・ファスナー22を閉じて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0142】
そして、図10(c)の断面図に示されるように、プラスチック・ファスナー22を構成する雄部22Aと雌部22Bとの内部には、かかる電磁波シールド材11Dを巻き付けて留めたときにプラスチックのみの部分が生じないように、電磁波シールド織物1がインサート成形されている。これによって、電磁波シールド材11Dの全周に亘って隙間なく電磁波シールド織物1が張り巡らされた状態とすることができ、洩れなく電磁波シールド効果を発揮させることができる。
【0143】
このようにして、本実施の形態6にかかる電磁波シールド材11Dは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0144】
本実施の形態6においては電磁波シールド織物1に1対のプラスチック・ファスナー22を一体にインサート成形することによって電磁波シールド材11Dを構成しているが、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6に1対のプラスチック・ファスナー22を一体にインサート成形して電磁波シールド材を構成しても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0145】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0146】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図11を参照して説明する。図11(a)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図、(c)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【0147】
図11(a)に示されるように、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシート14は、図7(a)に示される実施の形態3の電磁波シールドシート16と同様に、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1において、ステンレス線材4の代わりに銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで、平板上で加熱したアイロンで全面をプレスすることによって、上下のビニールシート15を銅線材を使用した電磁波シールド織物1Aに加熱圧着させることによって製造される。
【0148】
図11(b)に示されるように、この電磁波シールドシート14の長手方向の両端の一方に複数の金属製ボタン18を縫い付けて、長手方向の両端の他方の複数の金属製ボタン18と対応する位置に複数のボタンホール19を設ける。これによって、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材11Eが完成する。
【0149】
この電磁波シールド材11Eの使用方法は、図11(c)に示されるように、実施の形態7の電磁波シールド材11A,11Bと同様に筒状に丸めることによって、図8(b),図10(b)に示されるのと同様に電磁波シールド材11Eを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、複数の金属製ボタン18を複数のボタンホール19にかけて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、電磁波シールドシート14の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0150】
ここで、ボタン18が金属製であるため、ボタンホール19の隙間から電磁波が透過するのを確実に防止することができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0151】
このようにして、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材11Eは、電磁波シールドシート14が非常に安価に製造できるため、低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0152】
特に、本実施の形態7においては電磁波シールド織物1Aとして金属線材に銅線を用いたものを使用しているため、電磁波シールド効果が高く、しかも電磁波シールド織物1Aが二枚のビニールシート15で挟まれているために、屋外で使用しても金属線材としての銅線が錆びる恐れはなく、半永久的に使用することができる。
【0153】
さらに、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0154】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図12を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の構造を示す断面図である。
【0155】
図12(a),(b)に示されるように、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は、図7に示される実施の形態3の電磁波シールドシート16を細長いテープ状に形成し、片面に耐候性接着剤17を塗布することによって構成されている。実施の形態3の電磁波シールドシート16は、図12(b)に示されるように、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで製造されたものであるため、可とう性に富み、自在に曲げることができる。
【0156】
したがって、図12(a)に示されるように、電力線・通信線等のケーブル20の電磁波シールドを行う場合には、ケーブル20に耐候性接着剤17を塗布した面を接着させながら、包帯を巻くようにして隙間ができないように巻き付けて行くことによって、容易にケーブル20の電磁波シールドを行うことができる。そして、耐候性接着剤17を用いているため、屋外のケーブル20に適用した場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。
【0157】
そして、上述した電磁波シールドシート16の電磁波シールド効果によって、ケーブル20が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル20が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0158】
このようにして、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は、電磁波シールドシート16が非常に安価であるため低コストで、誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル20に巻き付けることができ、確実にケーブル20の電磁波シールドを行うことができる。
【0159】
また、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は可とう性に富み、ケーブル20に限らずどんな物にも巻き付けることができるため、種々の製品の電磁波シールド材として応用することが可能である。
【0160】
例えば、かかる電磁波シールド材21を自動車内の配線に巻き付けることによって、自動車内の配線を電磁波による影響から守ることができる。このような車内に用いる場合には、外気に曝される部分を除いて、耐候性接着剤17の代わりに通常の接着剤を用いても、また両面接着テープを用いても、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。さらに、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は極めて薄いため、スペースに制限のある自動車内の配線等を電磁波シールドするのに最も適している。
【0161】
本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21においては、電磁波シールドシート16の片面に耐候性接着剤17を塗布することによって構成しているが、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aのみの片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成しても良いし、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1或いは実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6の片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成することもできる。
【0162】
また、その他の構成にかかる電磁波シールド織物の片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成することもでき、電磁波シールドシート16以外の構成を有する電磁波シールドシートの片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成しても良い。
【0163】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0164】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9について、図13を参照して説明する。図13(a)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの使用状態を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図、(c)は本発明の実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図である。
【0165】
図13(a)に示されるように、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27は、電子機器としてパソコン25のパソコン本体26を電磁波シールドするために、パソコン本体26のケーシング27として適用した場合を示している。本実施の形態9にかかるパソコン25は、パソコン本体26にそれぞれケーブルで接続された液晶ディスプレイ25A,キーボード25B,マウス25Cによって構成されているが、これらのケーシングとしても、電磁波シールドケーシングを用いても良い。
【0166】
本実施の形態9においては、内部から電磁波を出す電子機器としても、外部からの電磁波によって誤作動する可能性のある電子機器としても、最も電磁波の影響が大きいパソコン本体26に電磁波シールドケーシング27を適用した場合について、説明する。
【0167】
図13(b)に示されるように、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27は、プラスチック28からなる筐体の内面全面に、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが張り巡らされている。このような構造は、プラスチック28からなる筐体を射出成形法等によって金型で成形する際に、金型の内型に電磁波シールド織物1Aを貼り付けておくことによって、溶融したプラスチック28が硬化する際に電磁波シールド織物1Aと密着して一体化することによって、製造することができる。
【0168】
このような構造の電磁波シールドケーシング27を用いることによって、パソコン本体26の内部で発生する電磁波は電磁波シールド織物1Aの電磁波シールド効果によって遮断され、外部に出ることがないため、パソコン25を操作する人に悪影響を与える恐れはない。また、外部からの電磁波も電磁波シールド織物1Aの電磁波シールド効果によって遮断されるため、パソコン本体26が誤作動を起こす等の不具合が起こる心配もない。
【0169】
また、図13(c)に示されるように、本実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシング29は、プラスチック28からなる筐体の内部に銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが取り込まれた構造となっている。これによって、電磁波シールドケーシング29の内面に導電性を有する電磁波シールド織物1Aが露出していないため、パソコン本体26の内部でショートや漏電等が起こる心配もなくなる。
【0170】
さらに、図13には示されていないが、プラスチック28からなる筐体の外面全面に、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが張り巡らされている構造の電磁波シールドケーシングとしても良い。このような構造は、プラスチック28からなる筐体を射出成形法等によって金型で成形する際に、金型の外型に電磁波シールド織物1Aを貼り付けておくことによって、溶融したプラスチック28が硬化する際に電磁波シールド織物1Aと密着して一体化することによって、製造することができる。
【0171】
本発明にかかる電磁波シールド織物は、電磁波シールド織物1Aに限らず、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1も、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6も、1枚で充分な電磁波シールド特性を有し、極めて薄いものであり淡い色の織物となるため、パソコン本体26の外面に張り巡らされても美観を損なうことはない。
【0172】
このようにして、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27,29は、表面に露出する銅線材の面積の割合をできるだけ大きくして大きな電磁波遮蔽性能を有しながら通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物1Aを用いることによって、見栄えも良く低コストで省スペースにもなり製造工程も短縮できる。
【0173】
本実施の形態9においては、プラスチック28からなる筐体と一体化させる電磁波シールド織物として銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを用いているが、これに限られるものではなく、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を用いても良いし、実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を数枚重ねて用いても良いし、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6を用いても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0174】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールドケーシングとなる。
【0175】
また、本実施の形態9においては、電子機器としてパソコン本体26を電磁波シールドする場合について説明したが、他の電子機器、特に自動車に搭載されているECUまたはECUを中心として構成された電子制御システムを電磁波シールドするのに適用することも可能であり、電磁波シールド織物は薄いためスペースに制限のある自動車内部の電磁波シールドには最も適している。
【0176】
上記各実施の形態においては、混合糸を形成する際に金属線材をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の金属線材をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって混合糸を形成しても良い。
【0177】
電磁波シールド織物、電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングのその他の部分の構成、形状、数量、材質、太さ、厚さ、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0178】
1、1A、5、6…電磁波シールド織物、
2…混合糸、
3、30…可紡性繊維、
4…金属線材(ステンレス線材)、
7…カーボン繊維、
11A、11B、11C、11D、11E、21…電磁波シールド材、
12…結束バンド、
13A、13B…1対の接着布、
15、33…有機合成樹脂シート、
14、16、35…電磁波シールドシート、
17…耐候性接着剤、
18…金属製ボタン、
19…ボタンホール、
22…プラスチック・ファスナー、
23…金属製ファスナー、
24…ファスナー生地、
25、26…電子機器、
27、29…電磁波シールドケーシング。
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波遮蔽材として用いることができる電磁波シールド織物及びそれを応用した電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングに関するもので、特に電磁波遮蔽性能の大幅な向上を可能とする電磁波シールド織物、電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータ(以下、「パソコン」という。)を始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1に記載の考案においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板について提案している。
【0003】
また、特許文献2に記載の考案においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンについて提案している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHz(1GHz)で42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0007】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0008】
電磁波シールド用織物の電磁波シールド性能を最も容易に向上させるには、金属線材のみで織物を織るのが理想的であるが、金属線材は強度に劣るために織機でそのまま織ろうとしても切れてしまったり、絡まってしまったりという不具合が起こる。
【0009】
そこで、本発明は、表面に露出する金属線材及び導電性のカーボン繊維の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を応用した電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなるものである。
【0011】
ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。また、「Z撚り及び/またはS撚りして」とは、Z撚りのみをする場合と、S撚りのみをする場合と、Z撚り及びS撚りを両方する場合とを全て含む意味である。
【0012】
請求項2の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなるものである。
【0013】
請求項3の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1または請求項2の構成において、前記金属線材は30μm〜120μmの範囲内の太さを有するものである。
【0014】
請求項4の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記金属線材は銅線材またはメッキした銅線材であるものである。
【0015】
請求項5の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記金属線材はステンレス線材であるものである。
【0016】
請求項6の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1または請求項2の構成において、前記金属線材は導電性を有する磁性体であるものである。
【0017】
ここで、磁性体としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0018】
請求項7の発明にかかる電磁波シールド織物は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記カーボン繊維は高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有するものである。
【0019】
請求項8の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたものである。
【0020】
請求項9の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項8の構成において、前記電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明であるものである。
【0021】
請求項10の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたものである。
【0022】
請求項11の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたものである。
【0023】
請求項12の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、前記1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されているものである。
【0024】
請求項13の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたものである。
【0025】
請求項14の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたものである。
【0026】
請求項15の発明にかかる電磁波シールドケーシングは、電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、前記ケーシングの全面に亘って前記電磁波シールド織物が張り巡らされているものである。
【0027】
ここで、「電子機器」とは、パソコン、コピー機、ファックス機、テレビ等の家電機器を始めとして、自動車等のECU(Electronic Control Unit)、或いはECUを中心として構成された電子制御システム、等をも含むものである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなる。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0029】
これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に導電性金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されているので、織成された織物は表面に露出している金属の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた電磁波シールド織物となる。
【0030】
このようにして、表面に露出する導電性金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物となる。
【0031】
請求項2の発明にかかる電磁波シールド織物は、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなる。ここで、「通常の可紡性繊維」としては、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0032】
これによって、金属線材は必要な太さの通常の可紡性繊維を中心に撚られているために伸縮性に富み、金属線材を太くしても形成された混合糸が強度と柔軟性を充分に有し、またカーボン繊維は充分な強度と柔軟性を有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0033】
そして、混合糸は中心に通常の可紡性繊維を配置し、周囲に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成されており、カーボン繊維は導電性を有するので、織成された織物は表面に露出している導電性材料の割合が際立って多くなり、したがって、より電磁波遮蔽性に優れた電磁波シールド織物となる。
【0034】
さらに、本発明者が実験を行った結果、1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸のみで電磁波シールド織物を織った場合と、同一の混合糸を縦糸または横糸にして、カーボン繊維を横糸または縦糸にして電磁波シールド織物を織った場合とを比較すると、後者の方がより電磁波遮蔽性に優れていることを知見した。
【0035】
このようにして、表面に露出する導電性材料の面積の割合をより大きくすることによってさらに大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物となる。
【0036】
請求項3の発明にかかる電磁波シールド織物は、金属線材が30μm〜120μmの範囲内の太さを有する。
【0037】
本発明者は、本発明にかかる電磁波シールド織物を構成する金属線材として、どの程度の太さを有するものが最も適しているかについて鋭意実験研究の結果、30μm〜120μmの太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0038】
即ち、金属線材の太さが30μm未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに切れる可能性が高くなり、また電磁波シールド織物としたときに表面に露出する金属線材の割合が小さくなるため、大きな電磁波遮蔽性能が得られない。一方、金属線材の太さが120μmを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚り及び/またはS撚りして混合糸を形成するときに柔軟性が不足してうまく混合糸を紡糸することができない。したがって、金属線材の太さを30μm〜120μmの範囲内とすることによって、容易に混合糸を紡糸することができ、また電磁波シールド織物としたときに表面に露出する金属線材の割合が大きくなるため、大きな電磁波遮蔽性能を得ることができる。
【0039】
このようにして、表面に露出する金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0040】
請求項4の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材として銅線材を用いているから、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの効果に加えて、銅線材は導電性に優れており極めて電磁波遮蔽性能が高く、柔軟性も兼ね備えており、任意の太さのものが容易に入手できるので、本発明の電磁波シールド織物における金属線材として適している。銅線材が錫やニッケル等でメッキされていれば、耐候性にも優れるのでより好ましい。
【0041】
このようにして、金属線材として銅線材を用いて、表面に露出する銅線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0042】
請求項5の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材としてステンレス線材を用いているから、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの効果に加えて、ステンレス線材は導電性に優れ電磁波遮蔽性能が高く、任意の太さのものが容易に入手できるばかりでなく、錆び難く耐候性に優れているので、本発明の電磁波シールド織物における金属線材として適している。
【0043】
このようにして、金属線材としてステンレス線材を用いて、表面に露出するステンレス線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0044】
請求項6の発明にかかる電磁波シールド織物においては、金属線材が導電性を有する磁性体である。ここで、磁性体としては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が使用できる。
【0045】
電磁波シールドにおいて、電気的な遮蔽のみでなく磁気的遮蔽を行う場合には、磁性体であることも必要であり、好ましくは、強磁性体であることが必要である。したがって、磁性体である金属線材を用いることによって、磁界も遮蔽することができるため、より良好な電磁波シールド特性を有する電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【0046】
請求項7の発明にかかる電磁波シールド織物は、カーボン繊維が高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有する。
【0047】
カーボン繊維(炭素繊維ともいう。)には、製法によってPAN系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、等の種類があるが、PAN系炭素繊維は原料であるPANの分子構造を制御し、紡糸または不融化処理の段階で延伸を加え、高度に軸配向した組織とすることによって、高い引っ張り強度をもつ炭素繊維が作られる(高強度タイプ)(「化学便覧・応用編」第6版663頁、平成15年1月30日発行、編者・社団法人日本化学会、発行所・丸善株式会社)。
【0048】
したがって、かかる高強度タイプのPAN系カーボン繊維を用いることによって、高い引っ張り強度を有するため、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして巻き付けて混合糸を製造したり、織機で織ったりしても切れることがなく、極めて効率良く、強度的にも優れた電磁波シールド織物を製造することができる。
【0049】
また、本発明者は、本発明にかかる電磁波シールド織物を構成するカーボン繊維として、どの程度の太さを有するものが最も適しているかについて鋭意実験研究の結果、150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有するものが最も適していることを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。
【0050】
即ち、カーボン繊維の太さが150デニール未満であると、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして巻き付けて混合糸を製造するときや混合糸とともに織成するときに切れる可能性が高くなり、一方カーボン繊維の太さが1800デニールを超えると、通常の可紡性繊維にZ撚りまたはS撚りして混合糸を製造するときや混合糸とともに織成するときに柔軟性が不足してうまく製造・織成することができない。したがって、カーボン繊維の太さを150デニール〜1800デニールの範囲内とすることによって、容易に混合糸を製造すること及び混合糸とともに織成することができる。
【0051】
請求項8の発明にかかる電磁波シールドシートは、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたものである。
【0052】
これによって、用いられる金属線材が錆び易いものである場合でも、屋外での用途に使用しても長期間錆びることがなく、電磁波遮蔽性能を発揮することができる。特に、銅線材等の極めて優れた電磁波遮蔽性能を有するが錆び易い金属線材を用いる場合に有効である。
【0053】
このようにして、用いられる金属線材が錆び易いものである場合でも、屋外での用途に使用しても長期間錆びることがなく、電磁波遮蔽性能を発揮することができる電磁波シールドシートとなる。
【0054】
請求項9の発明にかかる電磁波シールドシートは、電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明である。
【0055】
このように織り目が粗い電磁波シールド織物は、1枚の場合は勿論、2枚・3枚と重ねても向こう側が透けて見える。そして、かかる電磁波シールド織物を二枚の透明な薄い有機合成樹脂シートで挟んで電磁波シールドシートを構成することによって、電磁波遮蔽性能を発揮しながら向こう側が透けて見えるため、向こう側が見える方が好都合な用途に最適な電磁波シールドシートとなる。
【0056】
請求項10の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたものである。
【0057】
即ち、本発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長い筒状にして、少なくとも両端をプラスチック製の結束バンドで留めるようにしたもの、またはケーブルに巻き付けた時に重なり合う部分に1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布(即ちマジックテープ(登録商標))を貼り付けたものである。結束バンドは、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートにその一部を接着する等によって取付けられていても良いし、別々の部材としても良い。
【0058】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、結束バンドで締付けて留め、または1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を接着して留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物または電磁波シールドシートの電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0059】
ここで、1対の接着布を用いた場合には、接着部分の厚さだけ電磁波シールド織物または電磁波シールドシートを重ね合わせた部分に隙間ができることになるが、この接着部分は金属コーティングされているか金属線からなるため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0060】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0061】
請求項11の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたものである。
【0062】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、金属製のファスナーを噛み合わせて引き上げることによって留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物または電磁波シールドシートの電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0063】
ここで、金属製のファスナーのファスナー生地が通常の布製の生地であると、その部分から電磁波が透過してしまうことになるが、本発明においてはファスナー生地として請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を用いているため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0064】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0065】
請求項12の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されている。
【0066】
このように、1対のプラスチック・ファスナーを用いることによって、電磁波シールド材の両端を容易かつ確実に隙間なく留めることができる。そして、1対のプラスチック・ファスナーには電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されているので、電力線または通信線を包んで留めた場合にプラスチックのみの部分がなくなって、全周が電磁波シールド織物で包まれるため、プラスチックのみの部分から電磁波が透過するという恐れもなく、確実に電磁波をシールドすることができる。
【0067】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0068】
請求項13の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたものである。即ち、本発明にかかる電磁波シールド材は、請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長い筒状にして、ケーブルに巻き付けた時に重なり合う部分に複数の金属製ボタンとそれに対応する位置にボタンホールを設けている。
【0069】
かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに巻き付けて、金属製ボタンをボタンホールにかけて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物の電磁波シールド効果によって、ケーブルが電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブルが通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0070】
ここで、ボタンが金属製であるため、ボタンホールの隙間から電磁波が透過するのを確実に防止することができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる。
【0071】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルに巻き付けることができ、確実にケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0072】
請求項14の発明にかかる電磁波シールド材は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたものである。
【0073】
したがって、かかる電磁波シールド材を電力線・通信線等のケーブルに接着剤を塗布した面、または両面接着テープを貼り付けた面を貼り付けながら、包帯を巻くように隙間ができないように巻き付けて行くことによって、容易に電力線・通信線等のケーブルの電磁波遮蔽を行うことができる。
【0074】
ここで、接着剤としては屋外で使用する場合にも剥がれることのない耐候性を有する耐候性接着剤が好ましい。この場合には、耐候性を有する接着剤を用いているため、屋外のケーブルに適用した場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。
【0075】
また、かかる電磁波シールド材を自動車内の配線に巻き付けることによって、自動車内の配線を電磁波による影響から守ることができる。このような車内に用いる場合には、外気に曝される部分を除いて、通常の接着剤を用いた場合でも、また両面接着テープを用いた場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。さらに、本発明にかかる電磁波シールド材は極めて薄いため、スペースに制限のある自動車内の配線等を電磁波シールドするのに最も適している。
【0076】
このようにして、本発明にかかる電磁波シールド材は、電磁波シールド織物または電磁波シールドシートが非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブルや自動車内の配線等に巻き付けることができ、確実に電磁波遮蔽を行うことができる電磁波シールド材となる。
【0077】
請求項15の発明にかかる電磁波シールドケーシングは、電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、ケーシングの全面に亘って電磁波シールド織物が張り巡らされている。
【0078】
したがって、例えばパソコンを操作する人が、パソコン本体から発せられる電磁波によって人体に有害な影響を受けることを防ぐことができるとともに、パソコン本体に外部からの電磁波が干渉することによってパソコンが誤作動等をするという不具合も防止することができる。
【0079】
また、近年は、自動車等においても電子制御・自動制御が進み、エンジンの電子制御システムを始めとして、至るところにECUを中心として構成された電子制御システムが用いられている。このような電子制御システムが電磁波の影響によって誤作動するのを防止するために、また熱の影響を防ぐためにアルミニウムを始めとする金属筐体で覆われている場合が多い。しかし、本発明にかかる電磁波シールドケーシングを用いれば、コストも低減できるとともに省スペースにもなり、製造工程も短縮することができる。
【0080】
このようにして、表面に露出する金属線材の面積の割合をできるだけ大きくすることによって大きな電磁波遮蔽性能を有しながら通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物を用いることによって、低コストで省スペースにもなり製造工程も短縮できる電磁波シールドケーシングとなる。
【0081】
このようにして、大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物及びその電磁波シールド織物を用いた電磁波シールドシート、電磁波シールド材または電磁波シールドケーシングとなる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例2の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の接続部分の内部構成を示す部分断面図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図、(c)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の構造を示す断面図である。
【図13】図13(a)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの使用状態を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図、(c)は本発明の実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0084】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0085】
図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。図3(a)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図4は本発明の実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【0086】
図1(a)に示されるように、本実施の形態1の電磁波シールド織物1を構成する混合糸2は、複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ステンレス線材4の太さは、約80μmである。これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0087】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図1(b)に示されるような電磁波シールド織物1を製造した。織り目の密度は、縦横ともインチ間88本の平織りである。図1(b)に拡大して示されるように、この電磁波シールド織物1の表面にはステンレス線材4がかなりの割合で露出している。したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この電磁波シールド織物1の電磁波遮蔽性能を、社団法人関西電子工業振興センター生駒試験所において、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0088】
その測定結果を、図2に示す。図2に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、全周波数に亘って電界のシールド値が60dB以上という高い値を示した。なお、図2に示されるように、0.1MHz〜0.3MHzの間においてはシールド値が60dBを下回っているが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜0.3MHzの間においても電界のシールド値は60dB以上である。
【0089】
さらに、この電磁波シールド織物1は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着、ケーブル線遮蔽材等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って100dB以上という大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0090】
また、実験として、携帯電話を用いて、電波遮蔽試験を行った。予め、携帯電話が通話できる場所であることを確認した後に、電磁波シールド織物1で携帯電話を完全に包み(一重)、当該携帯電話に固定電話から電話をかけたところ、携帯電話の呼び出し音は鳴らず、固定電話の受話器には「電波の届かない場所にあるか、電源が切られている」という応答メッセージが流れた。2種類の携帯電話(電波周波数1.5GHz及び2.0GHz)で実験したが、同様な結果が得られた。したがって、電磁波シールド織物1によって、周波数1.5GHz及び2.0GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0091】
このようにして、本実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1においては、表面に露出する金属線材としてのステンレス線材4の面積の割合をできるだけ大きくすることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波シールド用カーテンや電磁波シールド用シート、金属の感触が気にならないエプロン型の衣服の前面だけに電磁波シールド織物1を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0092】
また、このようにして製造された電磁波シールド織物1は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体(例えば、電力線・通信線のようなケーブルや自動車内の配線等)に巻き付け、ポリエステル繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0093】
このように、本実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1は、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)という広い周波数帯に亘って60dB以上という優れた電磁波シールド効果を発揮するために比較的密に織られているが、電磁波シールド効果がそれほど必要でない場合には、より粗い(具体的には織り目が1mm以上20mm以下、例えば、3mmピッチの)織り方で織った電磁波シールド織物であっても使用することができ、このような粗い織り方で織った電磁波シールド織物はほぼ透明であるため、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0094】
粗い織り方で織った電磁波シールド織物の具体例としては、図3に示される本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を挙げることができる。図3(a)に示されるように、本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を構成する混合糸2は、図1(a)と同様の構成を有している。即ち、複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。
【0095】
ステンレス線材4の太さは、約80μmである。これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0096】
このようにして形成された混合糸2を織機で織って、図3(b)に示されるような織り目の粗い電磁波シールド織物5を製造した。織り目の密度は、縦横ともインチ間18本(織り目のピッチが約3mm)の平織りである。製造された電磁波シールド織物5はメッシュ状であり、完全に向こう側が透けて見えるものである。この電磁波シールド織物5の電磁波遮蔽性能を、上記電磁波シールド織物1と同様に、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0097】
その測定結果を、図4に示す。図4に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、電磁波シールド織物5が1枚の場合には、全周波数に亘って電界のシールド値が約20dBという値であった。そこで、電磁波シールド織物5を2枚重ねた場合及び3枚重ねた場合についても、測定を行った。
【0098】
その結果、図4に示されるように、電磁波シールド織物5を2枚重ねた場合には全周波数に亘って電界のシールド値が30dB以上、3枚重ねた場合には全周波数に亘って電界のシールド値が40dB以上、という優れた値が得られた。電磁波シールド織物5は、極めて織り目が粗いため、3枚重ねた場合でも向こうが良く透けて見える。なお、図4に示されるように、0.1MHz〜0.3MHzの間においてはシールド値が低下しているように見えるが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜0.3MHzの間においても電界のシールド値はほぼ同一である。
【0099】
このような織り目が粗い本実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5についても、上述したような携帯電話を用いた電波遮断試験を行った。携帯電話としては、電波周波数が1.5GHzのものを用いた。結果は、一重に包んだ場合、二重に包んだ場合には固定電話からの電話が通じたが、三重に包んだ場合には固定電話からの電話は通じなかった。三重に包んだ場合でも、中の携帯電話ははっきり透けて見える。したがって、中が透けて見える状態であっても、1.5GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0100】
さらに、混合糸2の中心となる通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3の代わりに、透明な繊維例えば透明なポリエステル繊維を用いることによって、比較的密に織った場合でも、向こうが透けて見えるために、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0101】
本実施の形態1においては、金属線材としてステンレス線材4を用い、通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3を用いた場合について説明したが、これらに限られるものではなく、金属線材としては銅線材、錫やニッケル等でメッキされた銅線材を始めとして、種々の金属線材を用いることができ、通常の可紡性繊維としては木綿、絹、麻、羊毛、ビニロン、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維を用いることができ、またはこれらの繊維を混用することができる。
【0102】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド織物となる。
【0103】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図5及び図6を参照して説明する。
【0104】
図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物を構成する混合糸の構成を示す拡大図、(b)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の全体構成を示す斜視図である。図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波シールド織物の電波シールド試験の結果を示す図である。
【0105】
図5(a)に示されるように、本実施の形態2の電磁波シールド織物6を構成する混合糸4は、実施の形態1と同様に、中心に複数本の通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維の束3を中心にして、このポリエステル繊維3に金属線材としてのステンレス線材4をZ撚り(4a)及びS撚り(4b)して形成されている。ステンレス線材4の太さは、実施の形態1と同じく約80μmである。
【0106】
これによって、ステンレス線材4は必要な太さのポリエステル繊維3を中心に撚られているために伸縮性に富み、ポリエステル繊維3ができるだけステンレス線材4で覆われるようにしても形成された混合糸2が強度と柔軟性を充分に有するため、容易に通常の織機で織物とすることができる。
【0107】
図5(b)に示されるように、この混合糸2を縦糸として、そして同様の太さのカーボン繊維7を横糸として織られた本実施の形態2の電磁波シールド織物6は、図5(b)に拡大して示されるように、縦糸側にはステンレス線材4がかなりの割合で露出しており、横糸のカーボン繊維7も導電性を有している。なお、カーボン繊維7としては、太さ600デニールの高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維を用いている。
【0108】
したがって、電磁波遮蔽性能も大きいものと期待される。そこで、この電磁波シールド織物6の電磁波遮蔽性能を、社団法人関西電子工業振興センター生駒試験所において、KEC法によるシールド効果測定試験によって測定した。
【0109】
その測定結果を、図6に示す。図6に示されるように、本測定試験においては、周波数0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って測定を行ったが、全周波数に亘って電波のシールド値が60dB以上であり、特に周波数0.1MHz〜約40MHzの周波数帯においては70dB以上という高い値を示した。なお、図6に示されるように、0.1MHz〜2MHzの間においてはシールド値が70dBを下回っているが、これは測定限界のためであり、実際には0.1MHz〜2MHzの間においても電波のシールド値は70dB以上である。
【0110】
さらに、この電磁波シールド織物6は薄いため二重にしても電磁波遮蔽用カーテンや電磁波遮蔽作業着、ケーブル線遮蔽材等に応用することができるので、二重にした場合の電磁波遮蔽性能を測定したところ、0.1MHz〜1000MHz(1GHz)の広い周波数帯に亘って100dB以上という大きな電磁波遮蔽性能を示した。
【0111】
また、本実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6についても、上述したような携帯電話を用いた電波遮断試験を行った。携帯電話としては、電波周波数が1.5GHzのものを用いた。結果は、一重に包んだ場合、二重に包んだ場合には固定電話からの電話が通じたが、三重に包んだ場合には固定電話からの電話は通じなかった。したがって、混合糸2を縦糸として、カーボン繊維7を横糸として織られた本実施の形態2の電磁波シールド織物6においても、1.5GHzの電波を遮断できることが判明した。
【0112】
このようにして、本実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6においては、表面に露出する金属線材としてのステンレス線材4の面積の割合をできるだけ大きくするとともに、導電性を有するカーボン繊維を用いることによってより大きな電磁波遮蔽性能を有しながら、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる。したがって、電磁波シールド用カーテンや電磁波シールド用シート、エプロン型の衣服の前面だけに電磁波シールド織物6を縫付けた電磁波遮蔽作業着等に応用することができる。
【0113】
また、このようにして製造された電磁波シールド織物6は可撓性に優れているため、テープ状(包帯状)に裁断して、電磁波遮蔽したい部分または全体(例えば、電力線・通信線のようなケーブルや自動車内の配線等)に巻き付け、ポリエステル繊維3部分を溶融・固化させて止めることによって、様々な形状の部分または全体を容易に電磁波遮蔽することができる。
【0114】
なお、混合糸2の中心となる通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3の代わりに、透明な繊維例えば透明なポリエステル繊維を用いることによって、比較的密に織った場合でも、向こうが透けて見えるために、透明性・半透明性が必要な用途にも用いることができる。
【0115】
本実施の形態2においては、金属線材としてステンレス線材4を用い、通常の可紡性繊維としてポリエステル繊維の束3を用いた場合について説明したが、これらに限られるものではなく、金属線材としては銅線材、錫やニッケル等でメッキされた銅線材を始めとして、種々の金属線材を用いることができ、通常の可紡性繊維としては木綿、絹、麻、羊毛、ビニロン、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維を用いることができ、またはこれらの繊維を混用することができる。
【0116】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド織物となる。
【0117】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図7を参照して説明する。図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図である。
【0118】
図7(a)に示されるように、本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は、上述した実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1において、ステンレス線材4の代わりに銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで、平板上で加熱したアイロンで全面をプレスすることによって、上下のビニールシート15を銅線材を使用した電磁波シールド織物1Aに加熱圧着させることによって製造される。
【0119】
ここで、完成した電磁波シールドシート16全体としては、表面に銅線材が露出していないが、電磁波シールド織物1Aとしては表面に露出する銅線材の割合ができるだけ多くなるように製造されており、銅線材は電磁波シールドに極めて優れているため、電磁波シールド織物1Aそのものとしては、一枚で100dB以上の大きな電磁波シールド特性を示すものである。
【0120】
したがって、かかる電磁波シールド織物1Aを厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで電磁波シールドシート16としても、電磁波シールド特性は殆ど低下することがない。そして、このように電磁波シールド織物1Aを外部から保護することによって、錆び易い銅線材も錆びる恐れはなく、耐候性に優れた屋外でも使用できる電磁波シールドシート16となる。
【0121】
本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで構成しているが、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1或いは実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6を、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで構成しても良い。また、薄い有機合成樹脂シートとしても、厚さ約0.1mmのビニールシート15に限られるものではなく、種々の薄い有機合成樹脂シートを用いることができる。
【0122】
また、本実施の形態3にかかる電磁波シールドシート16は、電磁波シールド織物1Aを厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15で挟んで加熱圧着して製造しているが、接着剤を用いて接着することによってシート状にすることもできる。
【0123】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を挟んで構成した場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールドシートとなる。
【0124】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例1の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波シールド材の実施例2の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【0125】
図8(a)に示されるように、本実施の形態4の実施例1にかかる電磁波シールド材11Aは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、少なくとも両端をプラスチック製の結束バンド12で留めるようにしたものである。これらの結束バンド12は、電磁波シールド織物1にその一部を接着する等によって取付けられていても良いし、別々の部材としても良い。
【0126】
図8(b)に示されるように、かかる電磁波シールド材11Aを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、結束バンド12で締付けて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0127】
また、図8(c)に示されるように、本実施の形態4の実施例2にかかる電磁波シールド材11Bは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、ケーブル10に巻き付けた時に重なり合う部分に、1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布(即ちマジックテープ(登録商標))13A,13Bを貼り付けたものである。したがって、電磁波シールド織物1を拡げた場合には、一方の辺の表側に沿って接着布の硬い側13Aが貼り付けられており、この辺と相対する他方の辺の裏側に沿って接着布の軟らかい側13Bが貼り付けられている。
【0128】
これによって、かかる電磁波シールド材11Bを、図8(b)に示されるように電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて行く際には、実施例1にかかる電磁波シールド材11Aに比較してより迅速に取付けることができ、短時間で取付け作業を完了することができる。そして、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0129】
ここで、1対の接着布13A,13Bを用いた場合には、接着部分の厚さだけ電磁波シールド織物1を重ね合わせた部分に隙間ができることになるが、この接着部分は金属コーティングされているか金属線からなるため、この部分から電磁波が透過することも確実に防止することができる。
【0130】
このようにして、本実施の形態4の実施例1にかかる電磁波シールド材11A及び実施例2にかかる電磁波シールド材11Bは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0131】
本実施の形態4においては電磁波シールド織物1に結束バンド12または1対の接着布13A,13Bを組み合わせて電磁波シールド材を構成しているが、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6に結束バンド12または1対の接着布13A,13Bを組み合わせて電磁波シールド材を構成しても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0132】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0133】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図9を参照して説明する。図9(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図である。
【0134】
図9(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、長手方向の両端の一方に金属製ファスナー23の一方のファスナー生地24Aを縫付け、長手方向の他端に金属製ファスナー23の他方のファスナー生地24Bを縫付けてなるものである。ここで、金属製ファスナー23のファスナーむし部分23A,23Bが取付けられているファスナー生地24A,24Bはいずれも電磁波シールド織物1を用いて製造されている。
【0135】
図9(b)に示されるように、かかる構造の電磁波シールド材11Cを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、ファスナーむし部分23Bをファスナーむし部分23Aに噛み合っているファスナー移動体23Dに噛み合わせて、ファスナー引き手23Cを持って引き上げることによってファスナーむし部分23A,23Bを噛み合わせて閉じることによって、電磁波シールド材11Cを電力線・通信線等のケーブル10に迅速かつ容易に留めることができる。
【0136】
これによって、かかる電磁波シールド材11Cを、図8(b)に示されるように電力線・通信線等のケーブル10に端が重なるように次々と巻き付けて行く際には、上記実施の形態8にかかる電磁波シールド材11Aに比較してより迅速に取付けることができ、短時間で取付け作業を完了することができる。そして、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0137】
ここで、ファスナー生地24A,24Bが通常の金属製ファスナーのように通常の布地で作られていると、その布地の部分から電磁波が透過してしまうが、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cにおいては、ファスナー生地24A,24Bがいずれも電磁波シールド織物1を用いて製造されているので、電磁波が透過する恐れはない。
【0138】
このようにして、本実施の形態5にかかる電磁波シールド材11Cは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも迅速かつ容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、短時間で確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0139】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図10を参照して説明する。図10(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の全体構成を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(c)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波シールド材の接続部分の内部構成を示す部分断面図である。
【0140】
図10(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる電磁波シールド材11Dは、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を細長い筒状にして、長手方向の両端に雄部22Aと雌部22Bとからなる1対のプラスチック・ファスナー22を取付け、この1対のプラスチック・ファスナー22を嵌め込むことによって、留めるようにしたものである。ここで、後述するようにこの1対のプラスチック・ファスナー22を構成する雄部22Aと雌部22Bとの内部には、電磁波シールド織物1が全長に亘ってインサート成形されている。
【0141】
図10(b)に示されるように、かかる電磁波シールド材11Dを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、プラスチック・ファスナー22を閉じて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、上述した電磁波シールド織物1の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0142】
そして、図10(c)の断面図に示されるように、プラスチック・ファスナー22を構成する雄部22Aと雌部22Bとの内部には、かかる電磁波シールド材11Dを巻き付けて留めたときにプラスチックのみの部分が生じないように、電磁波シールド織物1がインサート成形されている。これによって、電磁波シールド材11Dの全周に亘って隙間なく電磁波シールド織物1が張り巡らされた状態とすることができ、洩れなく電磁波シールド効果を発揮させることができる。
【0143】
このようにして、本実施の形態6にかかる電磁波シールド材11Dは、電磁波シールド織物1が非常に安価であるため低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0144】
本実施の形態6においては電磁波シールド織物1に1対のプラスチック・ファスナー22を一体にインサート成形することによって電磁波シールド材11Dを構成しているが、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6に1対のプラスチック・ファスナー22を一体にインサート成形して電磁波シールド材を構成しても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0145】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0146】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図11を参照して説明する。図11(a)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシートの製造方法を示す斜視図、(b)は完成した電磁波シールドシートを示す斜視図、(c)は本発明の実施の形態7にかかる電磁波シールド材の全体構成を中間部分を省略して示す斜視図である。
【0147】
図11(a)に示されるように、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材に用いられる電磁波シールドシート14は、図7(a)に示される実施の形態3の電磁波シールドシート16と同様に、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1において、ステンレス線材4の代わりに銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで、平板上で加熱したアイロンで全面をプレスすることによって、上下のビニールシート15を銅線材を使用した電磁波シールド織物1Aに加熱圧着させることによって製造される。
【0148】
図11(b)に示されるように、この電磁波シールドシート14の長手方向の両端の一方に複数の金属製ボタン18を縫い付けて、長手方向の両端の他方の複数の金属製ボタン18と対応する位置に複数のボタンホール19を設ける。これによって、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材11Eが完成する。
【0149】
この電磁波シールド材11Eの使用方法は、図11(c)に示されるように、実施の形態7の電磁波シールド材11A,11Bと同様に筒状に丸めることによって、図8(b),図10(b)に示されるのと同様に電磁波シールド材11Eを電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けて、複数の金属製ボタン18を複数のボタンホール19にかけて留め、端が重なるように次々と取付けることによって、電磁波シールドシート14の電磁波シールド効果によって、ケーブル10が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル10が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0150】
ここで、ボタン18が金属製であるため、ボタンホール19の隙間から電磁波が透過するのを確実に防止することができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0151】
このようにして、本実施の形態7にかかる電磁波シールド材11Eは、電磁波シールドシート14が非常に安価に製造できるため、低コストで誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル10に巻き付けることができ、確実にケーブル10の電磁波遮蔽を行うことができる。
【0152】
特に、本実施の形態7においては電磁波シールド織物1Aとして金属線材に銅線を用いたものを使用しているため、電磁波シールド効果が高く、しかも電磁波シールド織物1Aが二枚のビニールシート15で挟まれているために、屋外で使用しても金属線材としての銅線が錆びる恐れはなく、半永久的に使用することができる。
【0153】
さらに、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0154】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図12を参照して説明する。図12(a)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の使用状態を示す部分斜視図、(b)は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド材の構造を示す断面図である。
【0155】
図12(a),(b)に示されるように、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は、図7に示される実施の形態3の電磁波シールドシート16を細長いテープ状に形成し、片面に耐候性接着剤17を塗布することによって構成されている。実施の形態3の電磁波シールドシート16は、図12(b)に示されるように、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを、上下から薄い有機合成樹脂シートとしてのビニールシート15(厚さ約0.1mm)で挟んで製造されたものであるため、可とう性に富み、自在に曲げることができる。
【0156】
したがって、図12(a)に示されるように、電力線・通信線等のケーブル20の電磁波シールドを行う場合には、ケーブル20に耐候性接着剤17を塗布した面を接着させながら、包帯を巻くようにして隙間ができないように巻き付けて行くことによって、容易にケーブル20の電磁波シールドを行うことができる。そして、耐候性接着剤17を用いているため、屋外のケーブル20に適用した場合でも、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。
【0157】
そして、上述した電磁波シールドシート16の電磁波シールド効果によって、ケーブル20が電力線の場合には電力線から発せられる電磁波が他の電子機器等に影響を与えることを防ぐことができ、ケーブル20が通信線の場合には外部からの電磁波の影響によって通信データを示す通信信号が攪乱されるのを防止することができる。
【0158】
このようにして、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は、電磁波シールドシート16が非常に安価であるため低コストで、誰でも容易に電力線・通信線等のケーブル20に巻き付けることができ、確実にケーブル20の電磁波シールドを行うことができる。
【0159】
また、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は可とう性に富み、ケーブル20に限らずどんな物にも巻き付けることができるため、種々の製品の電磁波シールド材として応用することが可能である。
【0160】
例えば、かかる電磁波シールド材21を自動車内の配線に巻き付けることによって、自動車内の配線を電磁波による影響から守ることができる。このような車内に用いる場合には、外気に曝される部分を除いて、耐候性接着剤17の代わりに通常の接着剤を用いても、また両面接着テープを用いても、長期間剥がれることなく、電磁波シールド性を保つことができる。さらに、本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21は極めて薄いため、スペースに制限のある自動車内の配線等を電磁波シールドするのに最も適している。
【0161】
本実施の形態8にかかる電磁波シールド材21においては、電磁波シールドシート16の片面に耐候性接着剤17を塗布することによって構成しているが、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aのみの片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成しても良いし、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1或いは実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6の片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成することもできる。
【0162】
また、その他の構成にかかる電磁波シールド織物の片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成することもでき、電磁波シールドシート16以外の構成を有する電磁波シールドシートの片面に耐候性接着剤17や通常の接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けることによって構成しても良い。
【0163】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールド材となる。
【0164】
実施の形態9
次に、本発明の実施の形態9について、図13を参照して説明する。図13(a)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの使用状態を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図、(c)は本発明の実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシングの構造を示す断面図である。
【0165】
図13(a)に示されるように、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27は、電子機器としてパソコン25のパソコン本体26を電磁波シールドするために、パソコン本体26のケーシング27として適用した場合を示している。本実施の形態9にかかるパソコン25は、パソコン本体26にそれぞれケーブルで接続された液晶ディスプレイ25A,キーボード25B,マウス25Cによって構成されているが、これらのケーシングとしても、電磁波シールドケーシングを用いても良い。
【0166】
本実施の形態9においては、内部から電磁波を出す電子機器としても、外部からの電磁波によって誤作動する可能性のある電子機器としても、最も電磁波の影響が大きいパソコン本体26に電磁波シールドケーシング27を適用した場合について、説明する。
【0167】
図13(b)に示されるように、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27は、プラスチック28からなる筐体の内面全面に、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが張り巡らされている。このような構造は、プラスチック28からなる筐体を射出成形法等によって金型で成形する際に、金型の内型に電磁波シールド織物1Aを貼り付けておくことによって、溶融したプラスチック28が硬化する際に電磁波シールド織物1Aと密着して一体化することによって、製造することができる。
【0168】
このような構造の電磁波シールドケーシング27を用いることによって、パソコン本体26の内部で発生する電磁波は電磁波シールド織物1Aの電磁波シールド効果によって遮断され、外部に出ることがないため、パソコン25を操作する人に悪影響を与える恐れはない。また、外部からの電磁波も電磁波シールド織物1Aの電磁波シールド効果によって遮断されるため、パソコン本体26が誤作動を起こす等の不具合が起こる心配もない。
【0169】
また、図13(c)に示されるように、本実施の形態9の変形例にかかる電磁波シールドケーシング29は、プラスチック28からなる筐体の内部に銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが取り込まれた構造となっている。これによって、電磁波シールドケーシング29の内面に導電性を有する電磁波シールド織物1Aが露出していないため、パソコン本体26の内部でショートや漏電等が起こる心配もなくなる。
【0170】
さらに、図13には示されていないが、プラスチック28からなる筐体の外面全面に、銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aが張り巡らされている構造の電磁波シールドケーシングとしても良い。このような構造は、プラスチック28からなる筐体を射出成形法等によって金型で成形する際に、金型の外型に電磁波シールド織物1Aを貼り付けておくことによって、溶融したプラスチック28が硬化する際に電磁波シールド織物1Aと密着して一体化することによって、製造することができる。
【0171】
本発明にかかる電磁波シールド織物は、電磁波シールド織物1Aに限らず、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1も、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6も、1枚で充分な電磁波シールド特性を有し、極めて薄いものであり淡い色の織物となるため、パソコン本体26の外面に張り巡らされても美観を損なうことはない。
【0172】
このようにして、本実施の形態9にかかる電磁波シールドケーシング27,29は、表面に露出する銅線材の面積の割合をできるだけ大きくして大きな電磁波遮蔽性能を有しながら通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波シールド織物1Aを用いることによって、見栄えも良く低コストで省スペースにもなり製造工程も短縮できる。
【0173】
本実施の形態9においては、プラスチック28からなる筐体と一体化させる電磁波シールド織物として銅線材を使用して製造した電磁波シールド織物1Aを用いているが、これに限られるものではなく、実施の形態1にかかる電磁波シールド織物1を用いても良いし、実施の形態1の変形例にかかる電磁波シールド織物5を数枚重ねて用いても良いし、実施の形態2にかかる電磁波シールド織物6を用いても良いし、その他の構成を有する電磁波シールド織物を用いることもできる。
【0174】
特に、金属線材として磁性体であるニッケル線材,鉄線材,コバルト線材等を用いて製造した電磁波シールド織物を用いた場合には、電界のみでなく磁界のシールド効果も大きくなるため、より優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールドケーシングとなる。
【0175】
また、本実施の形態9においては、電子機器としてパソコン本体26を電磁波シールドする場合について説明したが、他の電子機器、特に自動車に搭載されているECUまたはECUを中心として構成された電子制御システムを電磁波シールドするのに適用することも可能であり、電磁波シールド織物は薄いためスペースに制限のある自動車内部の電磁波シールドには最も適している。
【0176】
上記各実施の形態においては、混合糸を形成する際に金属線材をZ撚り及びS撚りしているが、1本または複数本の金属線材をZ撚りのみまたはS撚りのみすることによって混合糸を形成しても良い。
【0177】
電磁波シールド織物、電磁波シールドシート、電磁波シールド材及び電磁波シールドケーシングのその他の部分の構成、形状、数量、材質、太さ、厚さ、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0178】
1、1A、5、6…電磁波シールド織物、
2…混合糸、
3、30…可紡性繊維、
4…金属線材(ステンレス線材)、
7…カーボン繊維、
11A、11B、11C、11D、11E、21…電磁波シールド材、
12…結束バンド、
13A、13B…1対の接着布、
15、33…有機合成樹脂シート、
14、16、35…電磁波シールドシート、
17…耐候性接着剤、
18…金属製ボタン、
19…ボタンホール、
22…プラスチック・ファスナー、
23…金属製ファスナー、
24…ファスナー生地、
25、26…電子機器、
27、29…電磁波シールドケーシング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなることを特徴とする電磁波シールド織物。
【請求項2】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなることを特徴とする電磁波シールド織物。
【請求項3】
前記金属線材は30μm〜120μmの範囲内の太さを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド織物。
【請求項4】
前記金属線材は銅線材またはメッキした銅線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項5】
前記金属線材はステンレス線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項6】
前記金属線材は導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド織物。
【請求項7】
前記カーボン繊維は高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたことを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項9】
前記電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明であることを特徴とする請求項8に記載の電磁波シールドシート。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項12】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、
前記1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項13】
請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項14】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項15】
電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、前記ケーシングの全面に亘って前記電磁波シールド織物が張り巡らされていることを特徴とする電磁波シールドケーシング。
【請求項1】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を織成してなることを特徴とする電磁波シールド織物。
【請求項2】
1本または複数本の通常の可紡性繊維に金属線材をZ撚り及び/またはS撚りして形成した混合糸を縦糸または横糸にし、カーボン繊維を横糸または縦糸にして織成してなることを特徴とする電磁波シールド織物。
【請求項3】
前記金属線材は30μm〜120μmの範囲内の太さを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド織物。
【請求項4】
前記金属線材は銅線材またはメッキした銅線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項5】
前記金属線材はステンレス線材であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項6】
前記金属線材は導電性を有する磁性体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波シールド織物。
【請求項7】
前記カーボン繊維は高強度タイプのPAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン繊維であって150デニール〜1800デニールの範囲内の太さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んで接着若しくは加熱圧着してシート状にしたことを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項9】
前記電磁波シールド織物は織り目が1mm以上20mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートは透明であることを特徴とする請求項8に記載の電磁波シールドシート。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるためのプラスチック製の結束バンドまたは1対の金属コーティングした若しくは接着部分が金属線からなる接着布を取付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項11】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートに、電力線または通信線を包んで留めるための金属製のファスナー(ファスナー生地が請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物からなるもの)を取付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項12】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートの両端に、電力線または通信線を包んで留めるための1対のプラスチック・ファスナーを取付けた電磁波シールド材であって、
前記1対のプラスチック・ファスナーには請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物が全面に亘ってインサート成形されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項13】
請求項8または請求項9に記載の電磁波シールドシートの短手方向の両端部の一方に複数の金属製ボタンを取付け、他方に複数のボタンホールを設けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項14】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物または請求項8若しくは請求項9に記載の電磁波シールドシートを細長いテープ状に形成して、片面に接着剤を塗布し、または両面接着テープを貼り付けたことを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項15】
電子機器のケーシングをプラスチックで成形する際に成形金型に請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の電磁波シールド織物をセットしておくことによって、前記ケーシングの全面に亘って前記電磁波シールド織物が張り巡らされていることを特徴とする電磁波シールドケーシング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−179162(P2011−179162A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118770(P2011−118770)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2005−365907(P2005−365907)の分割
【原出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2005−365907(P2005−365907)の分割
【原出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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