電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート及び電磁波・音波吸収構造体
【課題】電磁波・音波吸収シートにおいて、優れた電磁波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備え、さらに極めて軽量で薄く、向こう側が見える透光性をも有すること。
【解決手段】有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を用いて織り目の粗い織物を織れば、電磁波・音波吸収能力の高い電磁波・音波吸収織物となり、電磁波・音波吸収織物を二枚の透明な薄いビニールシートで挟んで溶着すれば、透光性をも有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【解決手段】有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を用いて織り目の粗い織物を織れば、電磁波・音波吸収能力の高い電磁波・音波吸収織物となり、電磁波・音波吸収織物を二枚の透明な薄いビニールシートで挟んで溶着すれば、透光性をも有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波及び音波の吸収材として用いることができ、かつ必要に応じて透光性を有する電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート及び電磁波・音波吸収構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータ(以下、「パソコン」という。)を始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板の考案について開示している。
【0003】
また、特許文献2においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンの考案について開示している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【0005】
一方、高速道路や鉄道路線に沿った民家等への騒音公害の防止も重要な課題となっている。このため、種々の防音構造体・吸音構造体・防音壁等が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献4においては、外装板と多数の貫通穴を有した内装板とを対向配置して構成された多孔質防音構造体において、内装板には外装板側に頂部を位置させるように凸部が形成されており、凸部の頂部は振動を減衰させる制振部材を介して外装板に接合されている多孔質防音構造体の特許発明が開示されている。これによって、ヘルムホルツ共鳴原理の一般式における共鳴周波数だけでなく、広い周波数帯域の騒音に対して十分な防音性能を発揮するとされている。
【0007】
また、特許文献5においては、透明な板に多数の細孔を設けて多孔板とするとともに、吸音を目的とする周波数に対しての多孔板の表面インピーダンスが空気の密度と音速との積で定まるインピーダンスに近づくように、多孔板の表面に対する細孔の開口率を定めた吸音構造体の発明について開示している。これによって、十分な透視性を持たせることが可能で剛性等の面でも優れる吸音材を得ることができるとしている。
【0008】
さらに、特許文献6においては、透光性の膜状材料の両面または片面に孔径が3〜50mmである開口を設けて開口率を40%以上とした多孔板を配した透光性吸音材と、透光性遮音板と、これらを一定間隔に保持するパネル枠材とからなる透光性防音板の特許発明について開示している。これによって、透光性・透視性を有し、かつ吸音性・遮音性を備えた透光性防音板となるとしている。
【0009】
また、特許文献7においては、電波反射体と吸音部と電波吸収部と誘電体からなる板状の電波吸収部保護部とを積層してなる電波音波吸収体の発明について開示している。かかる構成の電波音波吸収体を用いることによって、電波吸収部保護部側から到来する電波及び音波を吸収する機能を兼ね備えるとともに、従来の電波音波吸収体では困難であった野外での使用が可能になり、道路等にも設置することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【特許文献4】特許第3661779号公報
【特許文献5】特開2003−41528号公報
【特許文献6】特許第3625392号公報
【特許文献7】特開2004−3259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHz(1GHz)で42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0013】
さらに、上記特許文献1乃至特許文献3に記載の考案または発明においてはある程度の電磁波遮蔽性能は得られるが、防音効果・吸音効果は殆ど具備していない。一方、上記特許文献4乃至特許文献6に記載の発明においては、防音効果・吸音効果は優れているが、電磁波遮蔽性能は全く有していない。このように、特許文献1乃至特許文献6に記載の考案または発明は、電磁波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備えたものではない。
【0014】
これに対して、上記特許文献7においては、電波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備えた電波音波吸収体の発明について記載されている。しかしながら、この電波音波吸収体を構成する電波反射体としては金属板が使用され、吸音部にはグラスウールまたは合成繊維からなる吸音材を含み、電波吸収部は連続気泡を有する導電性発泡体等で構成されているため、電波音波吸収体の全体として重く厚いものになってしまい、トンネル内壁等への取付け施工が容易でなく、より軽量で薄い電波音波吸収体が要望されていた。
【0015】
また、かかる構成の電波音波吸収体は光線を遮断してしまい、向こう側が見えないため、道路付帯設備として用いた場合には、自動車等の車両の運転者及び同乗者の視界を遮り閉塞感を与える。さらに、高速道路の料金所等に設けられるETC(Electronic Toll Collection)システムにおいて、隣り合うETCシステムのゲートの間を電磁波的に遮断するために使用する場合には、隣のゲートの車両の通過状況が見えないという問題点があった。
【0016】
そこで、本発明は、優れた電磁波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備え、さらに極めて軽量で薄く、必要に応じて向こう側が見える透光性をも有する電磁波・音波吸収シート及び電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体、及びそれらを製造するための電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物並びに同様の構造で電磁波をシールドすることができる電磁波シールド糸の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明にかかる電磁波・音波吸収糸は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0018】
ここで、「有機合成樹脂」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、「エラストマー」とは広義には「弾性の顕著な高分子物質」を言い、天然ゴムや合成ゴムも含まれるが(長倉三郎他編集、「岩波理化学辞典・第5版」153頁、発行所・株式会社岩波書店、発行日・1998年2月20日)、ここではゴムを含まない狭義のエラストマーを意味するものとする。
【0019】
また、フッ素樹脂をコーティングする方法としては、液状のフッ素樹脂をスプレーする方法や、フッ素樹脂溶液に浸漬する方法や、気体状のフッ素樹脂を焼き付ける方法等がある。
【0020】
請求項2の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなるものである。
【0021】
請求項3の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0022】
請求項4の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0023】
請求項5の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0024】
請求項6の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0025】
請求項7の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0026】
請求項8の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0027】
請求項9の発明にかかる電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは、前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であるものである。
【0028】
請求項10の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0029】
請求項11の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0030】
請求項12の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなるものである。
【0031】
請求項13の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなるものである。
【0032】
請求項14の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなるものである。
【0033】
請求項15の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなるものである。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明にかかる電磁波・音波吸収糸は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0035】
ここで、「有機合成樹脂」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、「エラストマー」とは広義には「弾性の顕著な高分子物質」を言い、天然ゴムや合成ゴムも含まれるが、ここではゴムを含まない狭義のエラストマーを意味するものとする。
【0036】
このように短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を練り込んだ有機合成樹脂繊維またはゴム繊維またはエラストマー繊維は、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含するため、優れた電磁波吸収特性を示し、また使用の方法によっては優れた音波吸収特性をも示す。そして、有機合成樹脂繊維またはゴム繊維またはエラストマー繊維であるため、通常の方法で織物を織ることができる。
【0037】
かかる構成の電磁波・音波吸収糸は、全長に亘って撥水性を有するフッ素樹脂によってコーティングされているため耐水性に優れ、かかる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物は、シールしなくてもそのまま屋外で使用することができる。
【0038】
このようにして、大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織物を織ることができる電磁波・音波吸収糸となる。
【0039】
請求項2の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなるものである。
【0040】
上述の如く、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸は、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含するため、その短い金属線材または短いカーボン繊維の長さに応じた周波数の電磁波を強力に吸収することができるとともに、空気を分散させて音波を放散させる作用を有するので、音波吸収糸としても機能する。
【0041】
また、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成しても、大きな電磁波・音波吸収性能が劣化することはなく、屋内のカーテン等に使用する場合には、通常の可紡性繊維を混合して織成した方が低コストでできて遮光効果も得られる。
【0042】
このようにして、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成することによって、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成することによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0043】
更に、本発明者は、鋭意実験研究の結果、電磁波・音波吸収織物における電磁波・音波吸収糸の織り目の大きさに応じて、吸収できる電磁波の波長(即ち、周波数)のピークが変化することを見出した。そこで、吸収しようとする電磁波の波長(周波数)に合わせて電磁波・音波吸収織物における電磁波・音波吸収糸の織り目の大きさを設定することによって、1枚でも目的とする波長(周波数)の電磁波を強力に吸収することができる電磁波・音波吸収織物を得ることができる。
【0044】
このようにして、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を目的とする電磁波の波長に合わせた織り目の大きさに織成することによって、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して目的とする電磁波の波長に合わせた織り目の大きさに織成することによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0045】
請求項3の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0046】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物は耐水性がない。そこで、この電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングすることによって、耐水性を付与して屋外での使用に耐え得るようにしたものである。
【0047】
このようにして、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含する電磁波・音波吸収糸を織成してなるとともにフッ素樹脂でコーティングすることによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0048】
請求項4の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0049】
これによって、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。また、二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着する際に、下に電磁波・音波吸収糸がある部分においては、電磁波・音波吸収糸に薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが接着しないために、薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートに微小な孔が開いて空気の通り道が形成され、このような微小な孔が電磁波・音波吸収シートの全面に多数形成されるため、電磁波・音波吸収性能を損なうことがない。
【0050】
このようにして、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0051】
請求項5の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0052】
電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0053】
そして、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。また、二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着する際に、下に電磁波・音波吸収糸がある部分においては、電磁波・音波吸収糸に薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが接着しないために、薄い有機合成樹脂シートに微小な孔が開いて空気の通り道が形成され、このような微小な孔が電磁波・音波吸収シートの全面に多数形成されるため、電磁波・音波吸収性能を損なうことがない。
【0054】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0055】
請求項6の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0056】
孔径が100nm〜1mmの範囲内の貫通孔であれば、空気は通過するが水分等は通過しないので、音波吸収特性を損なうことなく、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。そして、開口率が5%〜30%の範囲内であれば二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが破れることもなく、加熱圧着でなく接着することによって有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートに大きな孔が開くことも防止することができる。
【0057】
このようにして、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0058】
請求項7の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0059】
このように、間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで互いに織り目の粗さの異なる電磁波・音波吸収織物を重ねることによって、互いに吸収する電磁波の波長のピークが異なる電磁波・音波吸収織物を、所定間隔をおいて配置することができ、強力な電磁波吸収性能を有することとなる。
【0060】
即ち、電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0061】
そして、本発明者は、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することによって、より優れた電磁波・音波吸収性能を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、間に誘電率に応じた所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟むことによって、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することができ、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0062】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0063】
請求項8の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0064】
このように、間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで互いに織り目の粗さの異なる電磁波・音波吸収織物を重ねることによって、互いに吸収する電磁波の波長のピークが異なる電磁波・音波吸収織物を、所定間隔をおいて配置することができ、強力な電磁波吸収性能を有することとなる。
【0065】
即ち、電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0066】
そして、本発明者は、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することによって、より優れた電磁波・音波吸収性能を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、間に誘電率に応じた所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟むことによって、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することができ、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0067】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0068】
請求項9の発明にかかる電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは、前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であるものである。
【0069】
このように電磁波・音波吸収織物の織り目が1mm以上200mm以下と粗く、有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートが透明であることによって、構成される電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは透光性を有し、向こう側が見えるものとなる。従って、透光性を要求される用途にも、極めて適したものとなる。
【0070】
このようにして、優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0071】
請求項10の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0072】
これによって、織機で織物を織らないでも、電磁波・音波吸収糸を吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定間隔を空けて張り渡すことによって、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収構造体となる。そして、電磁波・音波吸収糸のみを所定間隔を空けて張り渡しているため、透光性に優れ、向こう側が良く見える電磁波・音波吸収構造体となる。また、請求項1の電磁波・音波吸収糸を枠体に張り渡しており、この電磁波・音波吸収構造体は、耐水性に優れているので屋外での使用にも適したものとなる。
【0073】
このようにして、簡単な構造で優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0074】
請求項11の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0075】
これによって、織機で織物を織らないでも、電磁波・音波吸収糸を吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定間隔を空けて張り渡すことによって、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収構造体となる。そして、電磁波・音波吸収糸のみを所定間隔を空けて張り渡しているため、透光性に優れ、向こう側が良く見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0076】
このようにして、簡単な構造で優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0077】
請求項12の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなるものである。
【0078】
これによって、電磁波・音波吸収織物側または電磁波・音波吸収構造体側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によってその一部が吸収され、金属製の網で反射されて再び電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体を通過する際に吸収される。ここで、金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間隔が吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波と金属製の網で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0079】
そして、金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体とを枠体に固定してなる電磁波・音波吸収構造体は、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によって優れた音波吸収特性が発揮される。また、本発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、透光性を有しており、向こう側を見ることができる。更に、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物は耐水性を有するため、ETCシステム間の電波遮蔽用等の屋外での使用に適している。
【0080】
このようにして、優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見え、かつ軽量な電磁波・音波吸収構造体となる。
【0081】
請求項13の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなるものである。
【0082】
これによって、電磁波・音波吸収織物側または電磁波・音波吸収構造体側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によってその一部が吸収され、薄い金属板または金属製の網で反射されて再び電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体を通過する際に吸収される。ここで、薄い金属板または金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間隔が、金属製のチャンネル材によって吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波と薄い金属板または金属製の網で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0083】
そして、壁面に固定された薄い金属板または金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間には所定の間隔の隙間があり、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によって優れた音波吸収特性が発揮される。更に、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物は耐水性を有するため、トンネル内壁等の屋外での使用に適している。
【0084】
請求項14の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなるものである。
【0085】
かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体に入射した電磁波は、まずプラスチック製パイプの外周面の電磁波・音波吸収糸によって一部が吸収され、プラスチック製パイプの内部の金属製の棒またはパイプによって反射されて、再び外周面の電磁波・音波吸収糸によって吸収される。これによって、電磁波・音波吸収構造体に対してどの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、プラスチック製パイプの外周面の電磁波・音波吸収糸によって音波が吸収されるため、優れた電磁波・音波吸収性能を示す。
【0086】
プラスチック製パイプの所定の内径(正確には、内部の金属製の棒またはパイプの表面から外周面の電磁波・音波吸収糸までの距離)及び電磁波・音波吸収糸を巻き付ける所定のピッチは、吸収しようとする電磁波の波長に合わせて設定することによって、効率良く目的の波長の電磁波を吸収することができる。また、プラスチック製パイプとして透明なものを用いれば、透光性をも有する電磁波・音波吸収構造体となる。
【0087】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収性能を有し、所定の波長の電磁波を特に強力に吸収することができる電磁波・音波吸収構造体となる。
【0088】
請求項15の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなるものである。
【0089】
これによって、広い面積に亘って電磁波・音波を吸収することができ、所定間隔を吸収しようとする電磁波の波長に対応させることによって、より強力な電磁波吸収能力が発揮される。また、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔を空けて配置しているので、プラスチック製パイプとして透明なものを用いていない場合であっても、向こう側を見ることができる。
【0090】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収性能を有し、所定の波長の電磁波を特に強力に吸収することができる電磁波・音波吸収構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の製造過程を示す説明図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の構造を示す部分拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の構造を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの構造を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの構造を示す断面図、(b)は全体構造を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収シートのトンネル内壁への施工状態を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収シートのトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレートの高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体を形成するための電磁波・音波吸収糸の製造方法を示す拡大図、(b)は電磁波・音波吸収糸の完成状態を示す拡大図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態4及び本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図14】図14(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図15】図15(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体のトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態7にかかる電磁波・音波吸収糸の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図17】図17は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド糸を高圧電線に巻き付けた状態を示す部分斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、実施の形態2以降において、実施の形態1の部分と同一記号及び同一符号は、実施の形態1と同一または相当する機能を意味する部品であるから、ここでは重複する説明を省略する。
【0093】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0094】
図1は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の製造過程を示す説明図である。図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の構造を示す部分拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の構造を示す斜視図である。図3は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の電磁波吸収特性を示すグラフである。図4(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの構造を示す斜視図である。
【0095】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸は、通常の可紡性繊維としての透明なポリエステル繊維1とカーボン繊維2とを複数本ずつ鎖縫いで編み込みながら、鎖縫いの2回〜5回ごとにカーボン繊維2を透明なポリエステル繊維1を1本とばして編み続けるという製造方法を採っている。このように2回〜5回ごとに透明なポリエステル繊維1を1本とばすことを繰り返して編み上げた後に、透明なポリエステル繊維1の間で透明なポリエステル繊維1に沿ってカーボン繊維2を切断する。
【0096】
これによって、図2(a)に示されるように、透明なポリエステル繊維1とカーボン繊維2とが鎖縫いされたものに短いカーボン繊維のヒゲ状の突出部分2Aが形成された構造の電磁波・音波吸収糸3を容易に作製することができる。このヒゲ状の突出部分2Aがカーボン繊維であって導電性を有するため、そのカーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さに応じた周波数の電磁波を強力に吸収することができる。
【0097】
また、カーボン繊維の突出部分2Aは剛性を有するため、空気を分散させて音波を放散させる作用を有するので、音波吸収糸としても機能する。従って、かかる電磁波・音波吸収糸3を用いて織物を織れば、電磁波・音波吸収能力の高い電磁波・音波吸収織物となる。
【0098】
本実施の形態1においては、図2(b)に示されるように、電磁波・音波吸収糸3を用いて、織り目が約10mmと粗い電磁波・音波吸収織物5を織っている。これによって、強力な電磁波・音波吸収性能を有しながら、向こうが良く透けて見える電磁波・音波吸収織物5となる。
【0099】
次に、この電磁波・音波吸収織物5の電磁波吸収特性について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、本実施の形態1における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を90度、即ち試料面に対して垂直としている。金属反射板においては、測定範囲である1.0GHz〜15.0GHzに亘るいずれの周波数帯においても電波が全反射されるため、電波吸収はほぼ0dB(デシベル)である。
【0100】
ここで、厚さ10mmの発泡スチロールプレートを金属反射板の上に載せ、その上に20mmの長さに切ったカーボン繊維を多数本散布したものについて、電磁波吸収特性測定試験を行ったところ、図3に示されるように、ETCシステムに使用される電波の周波数である5.8GHz近傍に大きなピークを有する電波吸収特性を示した。
【0101】
これによって、周波数5.8GHzの電波を吸収するためには、20mmの長さのカーボン繊維が有効であることが判明したため、電磁波・音波吸収織物5を構成する電磁波・音波吸収糸3のカーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを約20mmとして電磁波・音波吸収織物5を織成し、電磁波吸収特性測定試験を行ったところ、図3に示されるように、5.8GHz近傍において約20dBの電波吸収特性を示した。
【0102】
従って、短いカーボン繊維全体の長さが約20mmである電磁波・音波吸収糸3を織成してなる電磁波・音波吸収織物5は、5.8GHzを中心とする周波数帯の電波の吸収能力に優れていることが判明した。
【0103】
次に、この電磁波・音波吸収織物5を用いて製造される電磁波・音波吸収シートについて、図4を参照して説明する。
【0104】
図4(a)に示されるように、本実施の形態1においては、電磁波・音波吸収織物5の上下を薄い有機合成樹脂シートとしての透明な全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設されたビニールシート6(厚さ約0.1mm)で挟んで、耐候性接着剤を用いて上下のビニールシート6を電磁波・音波吸収織物5に接着させている。このようにして、図3(b)に示されるように、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シート8が得られる。
【0105】
ここで、電磁波・音波吸収織物5は、透明なポリエステル繊維1に短いカーボン繊維2Aが絡みついた構造の電磁波・音波吸収糸3を用いて、しかも織り目が約10mmと粗いものであるため、向こう側が透けて見える。さらに、その上下を挟む薄い有機合成樹脂シートとしても全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が穿設された透明なビニールシート6を用いているため、空気が通過することができて音波吸収効果を発揮できるとともに、透光性を有する。
【0106】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収効果を有しながら、かつ向こう側が透けて見える電磁波・音波吸収シート8となる。従って、透明若しくは半透明であることが必要とされる電磁波・音波吸収の用途には、特に適した電磁波・音波吸収シートとなる。
【0107】
本実施の形態1においては、通常の可紡性繊維としての透明なポリエステル繊維1に短いカーボン繊維2Aが巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸3について説明したが、短いカーボン繊維2Aに限られるものではなく、銅線材、ステンレス線材を始めとする短い金属線材が巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸や、紙・布・プラスチックフィルム等の基材に金・銀・銅等の金属やカーボン等の導電性材料をコーティングして細く裁断して短く切断したものが巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸とすることもできる。
【0108】
また、通常の可紡性繊維も透明なポリエステル繊維1に限られるものではなく、透明なナイロン繊維や不透明なナイロン繊維を始めとして、透明な或いは不透明な合成繊維等のその他の通常の可紡性繊維を用いることもできる。
【0109】
さらに、薄い有機合成樹脂シートとして全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設された透明なビニールシート6を用いているが、音波吸収特性が不要な場合には貫通孔がないものでも良く、透明或いは半透明の要請がない場合には、半透明若しくは不透明なその他の薄い有機合成樹脂シートを用いることもできる。
【0110】
また、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シート8は、電磁波・音波吸収織物5を厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしての透明なビニールシート6で挟んで耐候性接着剤を用いて接着して製造しているが、多数の貫通孔が穿設されたものでない場合には、加熱圧着することによってシート状にすることもできる。
【0111】
ここで、高速道路等の通常の防音壁は吸音性或いは音波反射性の厚い素材を用いて作られているため、外部を全く見ることができず、運転者が閉塞感を感じるとともに同乗者が景色を楽しむことも妨げられていた。しかし、本発明の実施の形態1にかかる音波吸収シート8は、1枚でも数枚重ねた場合でも向こう側が透けて見えるため、閉塞感を与えることもなく景色を楽しむことも妨げない、優れた防音壁を構成することができる。
【0112】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図5及び図6を参照して説明する。図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの構造を示す断面図、(b)は全体構造を示す斜視図である。図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの電磁波吸収特性を示すグラフである。
【0113】
図5(a)に示されるように、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10は、互いに織り目の粗さの異なる3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cを用いて製造されている。電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cを織成するために用いられる電磁波・音波吸収糸は、実施の形態1と同一の電磁波・音波吸収糸3である。
【0114】
電磁波・音波吸収織物5Aは、この電磁波・音波吸収糸3を40mmメッシュの粗さの格子状に織成してなり、電磁波・音波吸収織物5Bは、この電磁波・音波吸収糸3を30mmメッシュの粗さの格子状に織成してなり、電磁波・音波吸収織物5Cは、この電磁波・音波吸収糸3を20mmメッシュの粗さの格子状に織成してなるものである。
【0115】
図5(a)に示されるように、これら3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cの間に、有機合成樹脂プレートとしての厚さ10mmの発泡スチロールプレート11を挟んで、図5(b)に示されるように、周囲を枠12で留めることによって、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10が製造される。
【0116】
次に、かかる構成を有する本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10の電磁波吸収特性について、図6を参照して説明する。図6に示されるように、本実施の形態2における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を75度(即ち、垂直90度から15度傾いた角度)としている。金属反射板においては、いずれの周波数帯においても電波が全反射されるため、電波吸収はほぼ0dB(デシベル)である。
【0117】
これに対して、電磁波・音波吸収糸3を20mmメッシュの粗さの格子状に織成してなる電磁波・音波吸収織物5Cを厚さ10mmの発泡スチロールプレートを介して金属反射板に載せて測定した場合には、図6に示されるように、周波数5.8GHzにおいて20dB以上の電波吸収が観測された。
【0118】
さらに、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10を厚さ10mmの発泡スチロールプレートを介して金属反射板に載せて測定した場合には、図6に示されるように、周波数5.8GHzにおいて25dB以上、周波数6.0GHzにおいて30dB近くの電波吸収が観測された。
【0119】
これらの測定結果を、表1にまとめて示す。
【表1】
表1に示されるように、電磁波・音波吸収プレート10の周波数5.8GHzにおける電波吸収量は、26.5dBと大きい値を示している。本実施の形態2における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を75度としているため、垂直入射する電波のみでなく、斜めに入射する電波をも強力に吸収することが判明した。従って、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10は、周波数5.8GHzの電波を使用するETCシステムの隣り合うゲートの間を電磁波的に遮断するために、極めて有効であることが分かった。
【0120】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図7及び図8を参照して説明する。図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収シートのトンネル内壁への施工状態を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収シートのトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。図8は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレートの高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0121】
図7(a)に示されるように、本実施の形態3にかかるトンネル内壁への施工用の電磁波・音波吸収シートとしては、上記実施の形態1で説明した電磁波・音波吸収シート8が用いられる。
【0122】
この電磁波・音波吸収シート8は上記実施の形態1で説明したように、電磁波・音波吸収糸3を用いて織り目が約10mmと粗い電磁波・音波吸収織物5を織って、この電磁波・音波吸収織物5の上下を厚さ約0.1mmの透明な全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設されたビニールシート6で挟んで、耐候性の接着剤を用いて上下のビニールシート6を電磁波・音波吸収織物5に接着させてなるものである。
【0123】
従って、この電磁波・音波吸収シート8は、優れた電磁波吸収性能及び音波吸収性能を有するとともに、極めて軽量で薄く、トンネルTの内壁への取付け施工が極めて容易である。
【0124】
従来、図7(a)に示されるような自動車道路のトンネルT内においては、自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音がトンネルTの内壁で反響して増幅され、より大きな騒音を生じていた。また、カーナビゲーションシステム(以下、「カーナビ」という。)についても、衛星からの電波がトンネルTの内壁や道路面で反射を繰り返すことによって乱反射ノイズを生じて、カーナビがトンネルT内では使用不能になるという事態も起こっていた。
【0125】
しかし、この電磁波・音波吸収シート8をトンネルTの内壁全面に取付け施工することによって、図7(b)に示されるように、実線の矢印で示される自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音は、電磁波・音波吸収シート8で吸収されて反響することなく、より大きな騒音を生じることもない。また、破線の矢印で示されるカーナビのための衛星からの電波も、電磁波・音波吸収シート8で吸収されて乱反射ノイズを生ずることがなく、トンネルT内でも通常通りカーナビを使用することができる。
【0126】
次に、本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15について、図8を参照して説明する。本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15は、上記実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10において、有機合成樹脂プレートとして発泡スチロールプレート11の代わりに透明なアクリル樹脂プレートを用いたものである。
【0127】
近年は、ETCの普及に伴ってETC車載器を搭載している自動車Vが増加しているため、図8に示されるように、料金所TGにおいてETCゲート16Gが複数設けられるようになってきている。ここで、隣接したETCゲート16G間の電波の混線を防止するため、隣接したETCゲート16G間に電磁波遮断プレートが設けられているが、従来の電磁波遮断プレートは不透明であったため、隣接したETCゲート16Gを通過する他の自動車Vの動きを確認することができないという問題点があった。
【0128】
しかし、本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15は、透明なアクリル樹脂プレートを間に挟んで、織り目の粗い40mmメッシュ・30mmメッシュ・20mmメッシュの3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cから構成されているため、向こう側が透けて見えるので、隣接したETCゲート16Gを通過する他の自動車Vの動きを確認することができるとともに、電波の混線を確実に防止することができる。
【0129】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図9乃至図13を参照して説明する。
【0130】
図9(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体を形成するための電磁波・音波吸収糸の製造方法を示す拡大図、(b)は電磁波・音波吸収糸の完成状態を示す拡大図である。図10(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【0131】
図11(a)は本発明の実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。図12(a)は本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。図13は本発明の実施の形態4及び本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0132】
図9(a),(b)に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収糸9は、上記実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けた後に、全長に亘って有機合成樹脂としてのポリエチレン7をコーティングしてなるものである。ポリエチレン7をコーティングする方法としては、ポリエチレン7を有機溶媒に溶解させた溶液、またはポリエチレン7を加熱して融解させた融液に、図9(a)に示される電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けたものを浸漬する方法等によれば良い。
【0133】
ポリエチレン溶液に浸漬する方法を採った場合には、引き上げて乾燥して有機溶媒を除去することによって、またポリエチレン融液に浸漬する方法を採った場合には引き上げて冷却することによって、図9(b)に示される電磁波・音波吸収糸9を得ることができる。ここで、図9(a)に示されるように、まず電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けているために、高温のポリエチレン融液に浸漬しても、通常の可紡性繊維1としての透明のポリエステル繊維が融解したりすることはない。
【0134】
かかる構成の電磁波・音波吸収糸9は、全長に亘ってポリエチレン7によってコーティングされているため耐水性に優れ、かかる電磁波・音波吸収糸9を織成してなる電磁波・音波吸収織物は、シールしなくてもそのまま屋外で使用することができる。このように、通常の可紡性繊維1にカーボン繊維2のヒゲ状の突出部分2Aを多数設けた電磁波・音波吸収糸3をポリエチレン7でコーティングすることによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織物を織ることができる。
【0135】
次に、かかる構成の電磁波・音波吸収糸9を用いた電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図10を参照して説明する。
【0136】
図10(a)に示されるように、細いステンレス製パイプからなる枠体17に電磁波・音波吸収糸9を20mmの間隔を空けて平行に張ったものを2枚作製する。そして、枠体17に張った電磁波・音波吸収糸9の向きが互いに垂直になるように、間にガラス繊維からなる誘電体シート18を挟んで、これら2枚を接着する。
【0137】
こうして製造された電磁波・音波吸収構造体を、図10(b)に示されるように、強化プラスチック製の枠体24の上面に固定し、図10(a)に示される金属製の網としてのステンレス製の金網23を、枠体24の底面に固定する。これによって、図10(b)に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20が完成する。
【0138】
なお、電磁波・音波吸収糸9を20mmの間隔を空けて張ったのは、ETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためであり、枠体24の厚さは10mmであるため上面の電磁波・音波吸収構造体と底面のステンレス製の金網23との間には約10mmの間隔が生ずるが、これもETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためである。このようにして製造された電磁波・音波吸収構造体20は、電磁波・音波吸収糸9を用いているために耐水性に優れ、屋外でも問題なく使用することができる。
【0139】
次に、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図11を参照して説明する。
【0140】
図11(a)に示されるように、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体に使用される電磁波・音波吸収織物21は、上記実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングした電磁波・音波吸収糸22を用いて、20mm間隔の格子状に織成されたものである。ここで、フッ素樹脂をコーティングする方法としては、電磁波・音波吸収糸3をフッ素樹脂溶液中に浸漬してから引き上げて溶媒を除去する方法でも良いし、気体状のフッ素樹脂を焼き付ける方法によっても良い。
【0141】
更に、図11(a)に示されるように、電磁波・音波吸収織物21と同一の寸法の金属製の網としてのステンレス製の金網23を用意する。ここで、ステンレス製の金網23は、電磁波・音波吸収織物21と重ねた場合に優れた透光性を有し、向こう側が良く見えるようにするために、できるだけ細いステンレス線からなるものが好ましい。また、電磁波を反射する役割を果たすものであるため、金網23の網目は細かい方が好ましい。本実施の形態4の第1変形例においては、太さ0.5mmのステンレス線からなり、網目が2mm〜3mmのステンレス製の金網23を用いた。
【0142】
図11(b)に示されるように、これらの電磁波・音波吸収織物21とステンレス製の金網23とを、強化プラスチックの枠体24の両面にそれぞれ取付けて、枠体24の厚さ(10mm)だけの間隔を空けて対向するように構成する。これによって、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25が完成する。
【0143】
このような構成を有する本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25は、主として屋内用に用いられる。例えば、電磁波・音波吸収構造体25の上面の電磁波・音波吸収織物21の上に薄い木板を貼って、家屋の壁面の構造材(壁面パネル)として応用することができる。
【0144】
次に、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図12を参照して説明する。
【0145】
図12(a)に示されるように、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体に使用される電磁波・音波吸収構造体21Aは、上述した細いステンレス製パイプからなる枠体17に上述した電磁波・音波吸収糸9を、20mmの間隔を空けて縦横に張ったものである。
【0146】
図12(b)に示されるように、かかる電磁波・音波吸収構造体21Aと上述したステンレス製の金網23とを、上述した強化プラスチックの枠体24の両面にそれぞれ取付けて、枠体24の厚さ(10mm)だけの間隔を空けて対向するように構成する。これによって、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aが完成する。
【0147】
ここで、ステンレス製の金網23は、電磁波・音波吸収構造体21Aと重ねた場合に優れた透光性を有し、向こう側が良く見えるようにするために、できるだけ細いステンレス線からなるものが好ましい。また、電磁波を反射する役割を果たすものであるため、金網23の網目は細かい方が好ましい。本実施の形態4の第2変形例においては、太さ0.5mmのステンレス線からなり、網目が2mm〜3mmのステンレス製の金網23を用いた。
【0148】
なお、本実施の形態4の第2変形例においては、枠体24の厚さを10mmとしたが、これは電磁波・音波吸収構造体21Aの目を20mmにした理由と同様であり、ETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためである。
【0149】
次に、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20及び本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aの使用例について、図13を参照して説明する。
【0150】
図13に示されるように、高速道路の料金所TGにおいて、2基のETCゲート16Gが隣り合って設置されている。本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aは、これら2基のETCゲート16Gの間に設置されて、電波の混線を防ぐ働きをする。上述のごとく、電磁波・音波吸収構造体25Aは透光性に優れており、向こう側が良く見えるため、自動車V1の運転者と自動車V3の運転者は互いの車の動きが良く見え、ETCゲート16Gを安心して通過することができる。
【0151】
また、図13に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20は、ETCゲート16Gの電波発信部の斜め上方に、料金所TGの屋根に対して斜めに取付けられている。これによって、ETCゲート16Gの電波発信部から発信された電波が、ETCゲート16Gを通過しようとしている自動車V1,V3のみに届き、それより後方に向かう電波は電磁波・音波吸収構造体20によって吸収されるため、後続の自動車V2,V4と自動車V1,V3との間で混線が起こる事態を防止することができる。
【0152】
このようにして、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20及び本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aは、ETCゲート16Gにおける電波の混線を確実に防止することができる。
【0153】
そして、電磁波・音波吸収構造体20はポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9とステンレス製パイプからなる枠体17とステンレス製の金網23と強化プラスチックからなる枠体24から構成されており、電磁波・音波吸収構造体25Aも同様に、ポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9とステンレス製パイプからなる枠体17とステンレス製の金網23と強化プラスチックからなる枠体24から構成されているため、いずれも耐水性に優れており屋外での使用に耐えることができる。
【0154】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図14を参照して説明する。図14(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0155】
図14(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体26は、プラスチック製パイプとしての塩化ビニルパイプ27の外周面に、上記実施の形態4にかかるポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9を、Z方向及びS方向に一定のピッチPで巻き付けて固定し、塩化ビニルパイプ27の内部には金属製のパイプとしてのアルミニウムパイプ28を通して、塩化ビニルパイプ27の両端に嵌めるキャップ29に差し込むことによって、塩化ビニルパイプ27の中心線に沿って位置するように支持されたものである。
【0156】
かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体26に入射した電磁波は、まず塩化ビニルパイプ27の外周面の電磁波・音波吸収糸9によって一部が吸収され、塩化ビニルパイプ27の内部のアルミニウムパイプ28によって反射されて、再び外周面の電磁波・音波吸収糸9によって吸収される。これによって、電磁波・音波吸収構造体26に対してどの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、塩化ビニルパイプ27の外周面の電磁波・音波吸収糸9によって音波が吸収されるため、優れた電磁波・音波吸収性能を示す。
【0157】
塩化ビニルパイプ27の内径(正確には、内部のアルミニウムパイプ28の表面から外周面の電磁波・音波吸収糸9までの距離)及び電磁波・音波吸収糸9を巻き付けるピッチPは、吸収しようとする電磁波の波長に合わせて設定することによって、効率良く目的の波長の電磁波を吸収することができる。本実施の形態5においては、ピッチP=20mmとし、アルミニウムパイプ28の表面から外周面の電磁波・音波吸収糸9までの距離は10mmとなるように設定している。
【0158】
次に、かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体26の使用例について、図14(b)を参照して説明する。図14(b)に示されるように、高速道路の料金所TGにおいて、2基のETCゲート16Gが隣り合って設置されている。これら2基のETCゲート16Gの間には、本実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体26を水平方向に複数本一定間隔で配置してなる本実施の形態5の変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体30が設置されて、電波の混線を防ぐ働きをする。
【0159】
この本実施の形態5の変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体30は、1対の支柱31が底板32に立設されており、これらの1対の支柱31の間に複数本の電磁波・音波吸収構造体26が、上下方向に一定間隔をおいて水平に支持されてなるものである。かかる電磁波・音波吸収構造体30は、複数本の電磁波・音波吸収構造体26からなるため、どの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、上下方向に間隔が空いているため、ETCゲート16Gを通過する自動車Vの運転者は、隣のETCゲート16Gを通過する自動車Vの動きが良く見える。
【0160】
なお、本実施の形態5においては電磁波・音波吸収構造体26を構成するプラスチック製のパイプとして不透明な塩化ビニルパイプ27を用いているが、プラスチック製のパイプとして透明アクリル樹脂パイプのような透明なものを用いることによって、更に隣のETCゲート16Gを通過する自動車Vの動きが良く見えるようになる。
【0161】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図15を参照して説明する。図15(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体のトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【0162】
図15(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体35は、設置したい壁面としてのトンネルTの内壁面に、金属製の網としてのステンレス製の金網23を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材36を介して、上述したように細いステンレス製パイプからなる枠体17に電磁波・音波吸収糸9を、20mmの間隔を空けて縦横に張った電磁波・音波吸収構造体21Aを取付けてなる。
【0163】
これによって、電磁波・音波吸収構造体21A側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収構造体21Aによってその一部が吸収され、ステンレス製の金網23で反射されて再び電磁波・音波吸収構造体21Aを通過する際に吸収される。
【0164】
ここで、ステンレス製の金網23と電磁波・音波吸収構造体21Aとの間隔が、金属製のチャンネル材36によって吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波とステンレス製の金網23で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0165】
そして、壁面に固定されたステンレス製の金網23と電磁波・音波吸収構造体21Aとの間には所定の間隔の隙間があり、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収構造体21Aによって優れた音波吸収特性が発揮される。更に、上述したように、電磁波・音波吸収構造体21Aは耐水性を有するため、トンネル内壁での使用に適している。
【0166】
従来、図15(b)に示されるような自動車道路のトンネルT内においては、自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音がトンネルTの内壁で反響して増幅され、より大きな騒音を生じていた。また、カーナビについても、衛星からの電波がトンネルTの内壁や道路面で反射を繰り返すことによって乱反射ノイズを生じて、カーナビがトンネルT内では使用不能になるという事態も起こっていた。
【0167】
しかし、この電磁波・音波吸収構造体35をトンネルTの内壁全面に取付け施工することによって、図15(b)に示されるように、実線の矢印で示される自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音は、電磁波・音波吸収構造体35で吸収されて反響することなく、より大きな騒音を生じることもない。また、破線の矢印で示されるカーナビのための衛星からの電波も、電磁波・音波吸収構造体35で吸収されて乱反射ノイズを生ずることがなく、トンネルT内でも通常通りカーナビを使用することができる。
【0168】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図16を参照して説明する。図16は本発明の実施の形態7にかかる電磁波・音波吸収糸の電磁波吸収特性を示すグラフである。本実施の形態7においては、図9(a),(b)に示されるように、電磁波・音波吸収糸3にガラス繊維4を巻き付けて、更にその上から有機合成樹脂7をコーティングして作製される電磁波・音波吸収糸9において、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さをほぼ一定に統一すると、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域が非常に狭くなってしまうという問題点があるため、それを解決する方法を示すものである。
【0169】
即ち、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを一定にせずに、例えば25mm±(1mm〜5mm)とすることによって、即ち20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとすることによって、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域を拡げることができる。カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを、20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとした電磁波・音波吸収糸3にガラス繊維4を巻き付けて、更にその上から有機合成樹脂7をコーティングして作製した電磁波・音波吸収糸9について、電磁波吸収特性を測定した結果を図16に示す。なお、巻き付ける繊維としては、ガラス繊維4以外にも、綿等の絶縁体繊維を始めとしてその他の繊維でも良い。
【0170】
図16に示されるように、本実施の形態7における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を90度、即ち試料面に対して垂直としている。そして、曲線S1,S2は測定箇所を変えて測定した結果である。測定箇所を変えたことによってピークの位置はずれているが、曲線S1,S2のいずれについても電磁波吸収特性を示す周波数帯域は大きく拡がっている。また、曲線S3は、測定箇所を変えてもピークの位置がずれないように、本実施の形態7に係る電磁波・音波吸収糸9をベニヤ板で押さえつけて測定したものである。電磁波吸収のピークは低くなっているが、電磁波吸収特性を示す周波数帯域は更に拡がっている。
【0171】
このように、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを一定にせずに、例えば25mm±(1mm〜5mm)とすることによって、即ち20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとすることによって、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域を拡げることができる。
【0172】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図17を参照して説明する。図17は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド糸を高圧電線に巻き付けた状態を示す部分斜視図である。図17に示されるように、本実施の形態8においては、電磁波シールド糸として、上記実施の形態1と同一の製造方法で製造した電磁波・音波吸収糸3を使用している。
【0173】
この実施の形態1の電磁波・音波吸収糸と同一の構造を有する電磁波シールド糸3を、電磁波シールドしようとする対象に所定のピッチで巻き付けることによって、電磁波をシールドすることができる。具体的な用途としては、例えば、高速電力線通信(Power Line Communication,PLC)において通常の電力線を通信に使用する場合に、電力線からの電波の漏洩が問題となるが、電力線に電磁波シールド糸3を巻き付けることによって、このような電波の漏洩を確実に防止することができる。
【0174】
ここで、電磁波シールド糸3は、基本的構成が電磁波・音波吸収糸3と相違するものでないので、同一符号で表現することとする。
【0175】
本実施の形態8においては、図17に示されるように、高圧電線40に電磁波シールド糸3を所定のピッチで巻き付けることによって、高圧電線40をPLCの通信線として使用した場合に、高圧電線40からの電波の漏洩を確実に防止することができる。ここで、高圧電線40を始めとする電力線は平板ではなく、長い円柱状の立体的形状を有するものである。平板状のものの場合には、例えば金属箔を細く切ったものを貼り付けても電磁波をシールドすることができるが、電力線のような立体的形状を有するものの場合には、本実施の形態8に係る電磁波シールド糸3のような、切断された導電体を配置したものでなければ、電磁波をシールドすることはできない。
【0176】
本実施の形態8においては、電磁波シールド糸として、通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維1を互いに間隔を開けてカーボン繊維2と鎖編みで編み上げる際に2回〜5回ごとにカーボン繊維2をポリエステル繊維1の隣り合う1本に移動することを繰り返して編み上げた後に、複数本のポリエステル繊維1の間でカーボン繊維2を切断してなる電磁波シールド糸3を用いた例について説明したが、これ以外にも様々な電磁波シールド糸を使用することができる。
【0177】
例えば、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなるもの、電磁波シールド糸3の全長に亘ってガラス繊維を巻き付けた後に全長に亘って有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーをコーティングしてなるもの、電磁波シールド糸3の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるもの、等である。即ち、上述した電磁波・音波吸収糸9,22もそのまま電磁波シールド糸として用いることができる。
【0178】
上記各実施の形態においては、通常の可紡性繊維としての透明ポリエステル繊維1とカーボン繊維2とを複数本ずつ鎖縫いで編み込んだ後に、カーボン繊維2を切断して電磁波・音波吸収糸3及び電磁波シールド糸3を形成する例について説明したが、通常の可紡性繊維としてはこの他にも、不透明なポリエステル繊維、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0179】
また、カーボン繊維以外にも、銅線材、メッキした銅線材、ステンレス線材を始めとする金属線材を用いることもできる。ここで、金属線材の太さは30μm〜120μmの範囲内であることが好ましい。更に、紙・布・プラスチックフィルム等の基材に、金・銀・銅等の金属やカーボン等の導電性材料をコーティングして細く裁断して短く切断したものを用いることもできる。
【0180】
また、電磁波・音波吸収糸及び電磁波シールド糸としては、これら以外にも、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなるものを用いることもできる。
【0181】
更に、上記各実施の形態においては、電磁波・音波吸収織物を透明な二枚の薄い有機合成樹脂シートとしての厚さ約0.1mmのビニールシート6で挟んでなる電磁波・音波吸収シート8、3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cの間に有機合成樹脂プレートとしての厚さ10mmの発泡スチロールプレート11を挟んでなる電磁波・音波吸収プレート10、及び透明なアクリル樹脂プレートを挟んでなる電磁波・音波吸収プレート15、等について説明したが、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体としては、二枚の薄いゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着したものや、間に所定厚さのゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着したもの等、これら以外にも多様な構成を取ったものを用いることができる。
【0182】
例えば、電磁波・音波吸収織物を透明な二枚の薄いゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着したものや、間に所定厚さのゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着したもの、電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んでなる電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収織物の互いに織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んでなる電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて全面に多数の貫通孔が穿設された二枚の有機合成樹脂プレートで挟んでなる電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収織物の互いに織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて全面に多数の貫通孔が穿設された二枚の有機合成樹脂プレートで挟んでなる電磁波・音波吸収プレート、等である。
【0183】
電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体及び電磁波シールド糸のその他の部分の構成、形状、数量、材質、太さ、厚さ、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0184】
1 可紡性繊維
2 カーボン繊維
2A 突出部分
3 電磁波・音波吸収糸、電磁波シールド糸
4 ガラス繊維
5,5A,5B,5C,21 電磁波・音波吸収織物
6 有機合成樹脂シート
7 有機合成樹脂
8 電磁波・音波吸収シート
9,22 電磁波・音波吸収糸
10 電磁波・音波吸収プレート
11 有機合成樹脂プレート
20,21A,25,25A,26,30,35 電磁波・音波吸収構造体
23 金属製の網
24 枠体
27 プラスチック製パイプ
28 金属製のパイプ
29 キャップ
36 チャンネル材
40 高圧電線
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電磁波及び音波の吸収材として用いることができ、かつ必要に応じて透光性を有する電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート及び電磁波・音波吸収構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(情報技術)の発達によって、パーソナル・コンピュータ(以下、「パソコン」という。)を始めとするIT機器・OA機器が急速に普及し、通常の家庭環境や職場環境においても、これらのIT機器・OA機器から放射される電磁波が人体にもたらす影響が問題にされるようになってきた。そこで、特許文献1においては、上記機器類の電磁波遮蔽用キャビネット等への応用を目的として、弾性繊維の周囲に金属繊維を螺旋状に巻き付けた複合弾性糸で構成された織布を熱可塑性合成樹脂シートで挟んだ電磁波遮蔽用合成樹脂板の考案について開示している。
【0003】
また、特許文献2においては、より広い範囲で電磁波を遮蔽できるようにするために、アルミ箔をステープル繊維状に微細に裁断して得られたアルミニウム繊維と通常の可紡性繊維との混紡糸を用いて織成された織地により形成された電磁波シールド用カーテンの考案について開示している。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、人体をより確実に電磁波から守ることを目的として、電磁波遮蔽作業服等を縫製するために、導電性金属線材と撚り糸またはフィラメント糸とを平行に引き揃えて芯糸を形成し、この芯糸の周囲に撚り糸またはフィラメント糸をZ撚り、S撚りして導電性金属線材が露出しないようにして、電磁波遮蔽編織用複合糸を形成している。
【0005】
一方、高速道路や鉄道路線に沿った民家等への騒音公害の防止も重要な課題となっている。このため、種々の防音構造体・吸音構造体・防音壁等が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献4においては、外装板と多数の貫通穴を有した内装板とを対向配置して構成された多孔質防音構造体において、内装板には外装板側に頂部を位置させるように凸部が形成されており、凸部の頂部は振動を減衰させる制振部材を介して外装板に接合されている多孔質防音構造体の特許発明が開示されている。これによって、ヘルムホルツ共鳴原理の一般式における共鳴周波数だけでなく、広い周波数帯域の騒音に対して十分な防音性能を発揮するとされている。
【0007】
また、特許文献5においては、透明な板に多数の細孔を設けて多孔板とするとともに、吸音を目的とする周波数に対しての多孔板の表面インピーダンスが空気の密度と音速との積で定まるインピーダンスに近づくように、多孔板の表面に対する細孔の開口率を定めた吸音構造体の発明について開示している。これによって、十分な透視性を持たせることが可能で剛性等の面でも優れる吸音材を得ることができるとしている。
【0008】
さらに、特許文献6においては、透光性の膜状材料の両面または片面に孔径が3〜50mmである開口を設けて開口率を40%以上とした多孔板を配した透光性吸音材と、透光性遮音板と、これらを一定間隔に保持するパネル枠材とからなる透光性防音板の特許発明について開示している。これによって、透光性・透視性を有し、かつ吸音性・遮音性を備えた透光性防音板となるとしている。
【0009】
また、特許文献7においては、電波反射体と吸音部と電波吸収部と誘電体からなる板状の電波吸収部保護部とを積層してなる電波音波吸収体の発明について開示している。かかる構成の電波音波吸収体を用いることによって、電波吸収部保護部側から到来する電波及び音波を吸収する機能を兼ね備えるとともに、従来の電波音波吸収体では困難であった野外での使用が可能になり、道路等にも設置することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平3−40595号公報
【特許文献2】実公平3−36538号公報
【特許文献3】特開2004−11033号公報
【特許文献4】特許第3661779号公報
【特許文献5】特開2003−41528号公報
【特許文献6】特許第3625392号公報
【特許文献7】特開2004−3259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁波遮蔽用合成樹脂板においては、熱可塑性合成樹脂シートの間に金属繊維を用いて構成した織布を挟んでおり、表面には金属材料が露出していない。その結果、電磁波遮蔽性能も周波数30MHzで57dB、1000MHz(1GHz)で42dBと大きな値は得られていない。また、上記特許文献2に記載の電磁波シールド用カーテンにおいても、アルミニウム繊維の表面露出比率が少ないため、電磁波遮蔽性能も周波数10〜500MHzの電磁波に対して30〜50dBに留まっている。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の電磁波遮蔽編織用複合糸においては、着心地の良さを重視しているために金属線材が露出しないようにしていることから、具体的な測定データは記載されていないが、電磁波遮蔽性能はさらに小さいものと考えられる。
【0013】
さらに、上記特許文献1乃至特許文献3に記載の考案または発明においてはある程度の電磁波遮蔽性能は得られるが、防音効果・吸音効果は殆ど具備していない。一方、上記特許文献4乃至特許文献6に記載の発明においては、防音効果・吸音効果は優れているが、電磁波遮蔽性能は全く有していない。このように、特許文献1乃至特許文献6に記載の考案または発明は、電磁波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備えたものではない。
【0014】
これに対して、上記特許文献7においては、電波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備えた電波音波吸収体の発明について記載されている。しかしながら、この電波音波吸収体を構成する電波反射体としては金属板が使用され、吸音部にはグラスウールまたは合成繊維からなる吸音材を含み、電波吸収部は連続気泡を有する導電性発泡体等で構成されているため、電波音波吸収体の全体として重く厚いものになってしまい、トンネル内壁等への取付け施工が容易でなく、より軽量で薄い電波音波吸収体が要望されていた。
【0015】
また、かかる構成の電波音波吸収体は光線を遮断してしまい、向こう側が見えないため、道路付帯設備として用いた場合には、自動車等の車両の運転者及び同乗者の視界を遮り閉塞感を与える。さらに、高速道路の料金所等に設けられるETC(Electronic Toll Collection)システムにおいて、隣り合うETCシステムのゲートの間を電磁波的に遮断するために使用する場合には、隣のゲートの車両の通過状況が見えないという問題点があった。
【0016】
そこで、本発明は、優れた電磁波吸収特性と音波吸収特性とを兼ね備え、さらに極めて軽量で薄く、必要に応じて向こう側が見える透光性をも有する電磁波・音波吸収シート及び電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体、及びそれらを製造するための電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物並びに同様の構造で電磁波をシールドすることができる電磁波シールド糸の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明にかかる電磁波・音波吸収糸は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0018】
ここで、「有機合成樹脂」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、「エラストマー」とは広義には「弾性の顕著な高分子物質」を言い、天然ゴムや合成ゴムも含まれるが(長倉三郎他編集、「岩波理化学辞典・第5版」153頁、発行所・株式会社岩波書店、発行日・1998年2月20日)、ここではゴムを含まない狭義のエラストマーを意味するものとする。
【0019】
また、フッ素樹脂をコーティングする方法としては、液状のフッ素樹脂をスプレーする方法や、フッ素樹脂溶液に浸漬する方法や、気体状のフッ素樹脂を焼き付ける方法等がある。
【0020】
請求項2の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなるものである。
【0021】
請求項3の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0022】
請求項4の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0023】
請求項5の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0024】
請求項6の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0025】
請求項7の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0026】
請求項8の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0027】
請求項9の発明にかかる電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは、前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であるものである。
【0028】
請求項10の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0029】
請求項11の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0030】
請求項12の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなるものである。
【0031】
請求項13の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなるものである。
【0032】
請求項14の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなるものである。
【0033】
請求項15の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなるものである。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明にかかる電磁波・音波吸収糸は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0035】
ここで、「有機合成樹脂」としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂がある。また、「エラストマー」とは広義には「弾性の顕著な高分子物質」を言い、天然ゴムや合成ゴムも含まれるが、ここではゴムを含まない狭義のエラストマーを意味するものとする。
【0036】
このように短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を練り込んだ有機合成樹脂繊維またはゴム繊維またはエラストマー繊維は、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含するため、優れた電磁波吸収特性を示し、また使用の方法によっては優れた音波吸収特性をも示す。そして、有機合成樹脂繊維またはゴム繊維またはエラストマー繊維であるため、通常の方法で織物を織ることができる。
【0037】
かかる構成の電磁波・音波吸収糸は、全長に亘って撥水性を有するフッ素樹脂によってコーティングされているため耐水性に優れ、かかる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物は、シールしなくてもそのまま屋外で使用することができる。
【0038】
このようにして、大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織物を織ることができる電磁波・音波吸収糸となる。
【0039】
請求項2の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなるものである。
【0040】
上述の如く、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸は、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含するため、その短い金属線材または短いカーボン繊維の長さに応じた周波数の電磁波を強力に吸収することができるとともに、空気を分散させて音波を放散させる作用を有するので、音波吸収糸としても機能する。
【0041】
また、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成しても、大きな電磁波・音波吸収性能が劣化することはなく、屋内のカーテン等に使用する場合には、通常の可紡性繊維を混合して織成した方が低コストでできて遮光効果も得られる。
【0042】
このようにして、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成することによって、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成することによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0043】
更に、本発明者は、鋭意実験研究の結果、電磁波・音波吸収織物における電磁波・音波吸収糸の織り目の大きさに応じて、吸収できる電磁波の波長(即ち、周波数)のピークが変化することを見出した。そこで、吸収しようとする電磁波の波長(周波数)に合わせて電磁波・音波吸収織物における電磁波・音波吸収糸の織り目の大きさを設定することによって、1枚でも目的とする波長(周波数)の電磁波を強力に吸収することができる電磁波・音波吸収織物を得ることができる。
【0044】
このようにして、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を目的とする電磁波の波長に合わせた織り目の大きさに織成することによって、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して目的とする電磁波の波長に合わせた織り目の大きさに織成することによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の織物と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0045】
請求項3の発明にかかる電磁波・音波吸収織物は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるものである。
【0046】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物は耐水性がない。そこで、この電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングすることによって、耐水性を付与して屋外での使用に耐え得るようにしたものである。
【0047】
このようにして、内部に導電性を有する短いカーボン繊維、カーボン粉末、短い金属線材、または金属粉末を包含する電磁波・音波吸収糸を織成してなるとともにフッ素樹脂でコーティングすることによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織ることができる電磁波・音波吸収織物となる。
【0048】
請求項4の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0049】
これによって、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。また、二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着する際に、下に電磁波・音波吸収糸がある部分においては、電磁波・音波吸収糸に薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが接着しないために、薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートに微小な孔が開いて空気の通り道が形成され、このような微小な孔が電磁波・音波吸収シートの全面に多数形成されるため、電磁波・音波吸収性能を損なうことがない。
【0050】
このようにして、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0051】
請求項5の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0052】
電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0053】
そして、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。また、二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着する際に、下に電磁波・音波吸収糸がある部分においては、電磁波・音波吸収糸に薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが接着しないために、薄い有機合成樹脂シートに微小な孔が開いて空気の通り道が形成され、このような微小な孔が電磁波・音波吸収シートの全面に多数形成されるため、電磁波・音波吸収性能を損なうことがない。
【0054】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0055】
請求項6の発明にかかる電磁波・音波吸収シートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしてなるものである。
【0056】
孔径が100nm〜1mmの範囲内の貫通孔であれば、空気は通過するが水分等は通過しないので、音波吸収特性を損なうことなく、耐水性のない電磁波・音波吸収織物が雨等の水分に濡れることを防止して屋外での使用が可能な電磁波・音波吸収シートとなる。そして、開口率が5%〜30%の範囲内であれば二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートが破れることもなく、加熱圧着でなく接着することによって有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートに大きな孔が開くことも防止することができる。
【0057】
このようにして、どのような場所にも設置が可能で、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収シートとなる。
【0058】
請求項7の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0059】
このように、間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで互いに織り目の粗さの異なる電磁波・音波吸収織物を重ねることによって、互いに吸収する電磁波の波長のピークが異なる電磁波・音波吸収織物を、所定間隔をおいて配置することができ、強力な電磁波吸収性能を有することとなる。
【0060】
即ち、電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0061】
そして、本発明者は、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することによって、より優れた電磁波・音波吸収性能を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、間に誘電率に応じた所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟むことによって、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することができ、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0062】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0063】
請求項8の発明にかかる電磁波・音波吸収プレートは、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしてなるものである。
【0064】
このように、間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで互いに織り目の粗さの異なる電磁波・音波吸収織物を重ねることによって、互いに吸収する電磁波の波長のピークが異なる電磁波・音波吸収織物を、所定間隔をおいて配置することができ、強力な電磁波吸収性能を有することとなる。
【0065】
即ち、電磁波・音波吸収織物の織り目の粗さが異なる場合には、最も大きな電磁波吸収を示す周波数帯域が異なる。従って、このような電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねることによって、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0066】
そして、本発明者は、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することによって、より優れた電磁波・音波吸収性能を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、間に誘電率に応じた所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟むことによって、このような電磁波・音波吸収織物を所定間隔だけ離して設置することができ、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0067】
このようにして、より広い周波数帯域に亘って優れた電磁波吸収性能を有するとともに、より優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0068】
請求項9の発明にかかる電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは、前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であるものである。
【0069】
このように電磁波・音波吸収織物の織り目が1mm以上200mm以下と粗く、有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートが透明であることによって、構成される電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートは透光性を有し、向こう側が見えるものとなる。従って、透光性を要求される用途にも、極めて適したものとなる。
【0070】
このようにして、優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレートとなる。
【0071】
請求項10の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0072】
これによって、織機で織物を織らないでも、電磁波・音波吸収糸を吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定間隔を空けて張り渡すことによって、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収構造体となる。そして、電磁波・音波吸収糸のみを所定間隔を空けて張り渡しているため、透光性に優れ、向こう側が良く見える電磁波・音波吸収構造体となる。また、請求項1の電磁波・音波吸収糸を枠体に張り渡しており、この電磁波・音波吸収構造体は、耐水性に優れているので屋外での使用にも適したものとなる。
【0073】
このようにして、簡単な構造で優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0074】
請求項11の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなるものである。
【0075】
これによって、織機で織物を織らないでも、電磁波・音波吸収糸を吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定間隔を空けて張り渡すことによって、優れた電磁波・音波吸収性能を有する電磁波・音波吸収構造体となる。そして、電磁波・音波吸収糸のみを所定間隔を空けて張り渡しているため、透光性に優れ、向こう側が良く見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0076】
このようにして、簡単な構造で優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見える電磁波・音波吸収構造体となる。
【0077】
請求項12の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなるものである。
【0078】
これによって、電磁波・音波吸収織物側または電磁波・音波吸収構造体側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によってその一部が吸収され、金属製の網で反射されて再び電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体を通過する際に吸収される。ここで、金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間隔が吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波と金属製の網で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0079】
そして、金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体とを枠体に固定してなる電磁波・音波吸収構造体は、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によって優れた音波吸収特性が発揮される。また、本発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、透光性を有しており、向こう側を見ることができる。更に、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物は耐水性を有するため、ETCシステム間の電波遮蔽用等の屋外での使用に適している。
【0080】
このようにして、優れた電磁波吸収性能を有し、優れた音波吸収性能を有するとともに、透光性を有し向こう側が見え、かつ軽量な電磁波・音波吸収構造体となる。
【0081】
請求項13の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなるものである。
【0082】
これによって、電磁波・音波吸収織物側または電磁波・音波吸収構造体側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によってその一部が吸収され、薄い金属板または金属製の網で反射されて再び電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体を通過する際に吸収される。ここで、薄い金属板または金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間隔が、金属製のチャンネル材によって吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波と薄い金属板または金属製の網で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0083】
そして、壁面に固定された薄い金属板または金属製の網と電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体との間には所定の間隔の隙間があり、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収織物または電磁波・音波吸収構造体によって優れた音波吸収特性が発揮される。更に、請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物は耐水性を有するため、トンネル内壁等の屋外での使用に適している。
【0084】
請求項14の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなるものである。
【0085】
かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体に入射した電磁波は、まずプラスチック製パイプの外周面の電磁波・音波吸収糸によって一部が吸収され、プラスチック製パイプの内部の金属製の棒またはパイプによって反射されて、再び外周面の電磁波・音波吸収糸によって吸収される。これによって、電磁波・音波吸収構造体に対してどの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、プラスチック製パイプの外周面の電磁波・音波吸収糸によって音波が吸収されるため、優れた電磁波・音波吸収性能を示す。
【0086】
プラスチック製パイプの所定の内径(正確には、内部の金属製の棒またはパイプの表面から外周面の電磁波・音波吸収糸までの距離)及び電磁波・音波吸収糸を巻き付ける所定のピッチは、吸収しようとする電磁波の波長に合わせて設定することによって、効率良く目的の波長の電磁波を吸収することができる。また、プラスチック製パイプとして透明なものを用いれば、透光性をも有する電磁波・音波吸収構造体となる。
【0087】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収性能を有し、所定の波長の電磁波を特に強力に吸収することができる電磁波・音波吸収構造体となる。
【0088】
請求項15の発明にかかる電磁波・音波吸収構造体は、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなるものである。
【0089】
これによって、広い面積に亘って電磁波・音波を吸収することができ、所定間隔を吸収しようとする電磁波の波長に対応させることによって、より強力な電磁波吸収能力が発揮される。また、請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔を空けて配置しているので、プラスチック製パイプとして透明なものを用いていない場合であっても、向こう側を見ることができる。
【0090】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収性能を有し、所定の波長の電磁波を特に強力に吸収することができる電磁波・音波吸収構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の製造過程を示す説明図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の構造を示す部分拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の構造を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの構造を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの構造を示す断面図、(b)は全体構造を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収シートのトンネル内壁への施工状態を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収シートのトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレートの高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図9】図9(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体を形成するための電磁波・音波吸収糸の製造方法を示す拡大図、(b)は電磁波・音波吸収糸の完成状態を示す拡大図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は本発明の実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図12】図12(a)は本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態4及び本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図14】図14(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【図15】図15(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体のトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態7にかかる電磁波・音波吸収糸の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図17】図17は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド糸を高圧電線に巻き付けた状態を示す部分斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、実施の形態2以降において、実施の形態1の部分と同一記号及び同一符号は、実施の形態1と同一または相当する機能を意味する部品であるから、ここでは重複する説明を省略する。
【0093】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0094】
図1は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の製造過程を示す説明図である。図2(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸の構造を示す部分拡大図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の構造を示す斜視図である。図3は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収織物の電磁波吸収特性を示すグラフである。図4(a)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの製造方法を示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シートの構造を示す斜視図である。
【0095】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸は、通常の可紡性繊維としての透明なポリエステル繊維1とカーボン繊維2とを複数本ずつ鎖縫いで編み込みながら、鎖縫いの2回〜5回ごとにカーボン繊維2を透明なポリエステル繊維1を1本とばして編み続けるという製造方法を採っている。このように2回〜5回ごとに透明なポリエステル繊維1を1本とばすことを繰り返して編み上げた後に、透明なポリエステル繊維1の間で透明なポリエステル繊維1に沿ってカーボン繊維2を切断する。
【0096】
これによって、図2(a)に示されるように、透明なポリエステル繊維1とカーボン繊維2とが鎖縫いされたものに短いカーボン繊維のヒゲ状の突出部分2Aが形成された構造の電磁波・音波吸収糸3を容易に作製することができる。このヒゲ状の突出部分2Aがカーボン繊維であって導電性を有するため、そのカーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さに応じた周波数の電磁波を強力に吸収することができる。
【0097】
また、カーボン繊維の突出部分2Aは剛性を有するため、空気を分散させて音波を放散させる作用を有するので、音波吸収糸としても機能する。従って、かかる電磁波・音波吸収糸3を用いて織物を織れば、電磁波・音波吸収能力の高い電磁波・音波吸収織物となる。
【0098】
本実施の形態1においては、図2(b)に示されるように、電磁波・音波吸収糸3を用いて、織り目が約10mmと粗い電磁波・音波吸収織物5を織っている。これによって、強力な電磁波・音波吸収性能を有しながら、向こうが良く透けて見える電磁波・音波吸収織物5となる。
【0099】
次に、この電磁波・音波吸収織物5の電磁波吸収特性について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、本実施の形態1における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を90度、即ち試料面に対して垂直としている。金属反射板においては、測定範囲である1.0GHz〜15.0GHzに亘るいずれの周波数帯においても電波が全反射されるため、電波吸収はほぼ0dB(デシベル)である。
【0100】
ここで、厚さ10mmの発泡スチロールプレートを金属反射板の上に載せ、その上に20mmの長さに切ったカーボン繊維を多数本散布したものについて、電磁波吸収特性測定試験を行ったところ、図3に示されるように、ETCシステムに使用される電波の周波数である5.8GHz近傍に大きなピークを有する電波吸収特性を示した。
【0101】
これによって、周波数5.8GHzの電波を吸収するためには、20mmの長さのカーボン繊維が有効であることが判明したため、電磁波・音波吸収織物5を構成する電磁波・音波吸収糸3のカーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを約20mmとして電磁波・音波吸収織物5を織成し、電磁波吸収特性測定試験を行ったところ、図3に示されるように、5.8GHz近傍において約20dBの電波吸収特性を示した。
【0102】
従って、短いカーボン繊維全体の長さが約20mmである電磁波・音波吸収糸3を織成してなる電磁波・音波吸収織物5は、5.8GHzを中心とする周波数帯の電波の吸収能力に優れていることが判明した。
【0103】
次に、この電磁波・音波吸収織物5を用いて製造される電磁波・音波吸収シートについて、図4を参照して説明する。
【0104】
図4(a)に示されるように、本実施の形態1においては、電磁波・音波吸収織物5の上下を薄い有機合成樹脂シートとしての透明な全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設されたビニールシート6(厚さ約0.1mm)で挟んで、耐候性接着剤を用いて上下のビニールシート6を電磁波・音波吸収織物5に接着させている。このようにして、図3(b)に示されるように、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シート8が得られる。
【0105】
ここで、電磁波・音波吸収織物5は、透明なポリエステル繊維1に短いカーボン繊維2Aが絡みついた構造の電磁波・音波吸収糸3を用いて、しかも織り目が約10mmと粗いものであるため、向こう側が透けて見える。さらに、その上下を挟む薄い有機合成樹脂シートとしても全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が穿設された透明なビニールシート6を用いているため、空気が通過することができて音波吸収効果を発揮できるとともに、透光性を有する。
【0106】
このようにして、優れた電磁波・音波吸収効果を有しながら、かつ向こう側が透けて見える電磁波・音波吸収シート8となる。従って、透明若しくは半透明であることが必要とされる電磁波・音波吸収の用途には、特に適した電磁波・音波吸収シートとなる。
【0107】
本実施の形態1においては、通常の可紡性繊維としての透明なポリエステル繊維1に短いカーボン繊維2Aが巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸3について説明したが、短いカーボン繊維2Aに限られるものではなく、銅線材、ステンレス線材を始めとする短い金属線材が巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸や、紙・布・プラスチックフィルム等の基材に金・銀・銅等の金属やカーボン等の導電性材料をコーティングして細く裁断して短く切断したものが巻き付いた構造の電磁波・音波吸収糸とすることもできる。
【0108】
また、通常の可紡性繊維も透明なポリエステル繊維1に限られるものではなく、透明なナイロン繊維や不透明なナイロン繊維を始めとして、透明な或いは不透明な合成繊維等のその他の通常の可紡性繊維を用いることもできる。
【0109】
さらに、薄い有機合成樹脂シートとして全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設された透明なビニールシート6を用いているが、音波吸収特性が不要な場合には貫通孔がないものでも良く、透明或いは半透明の要請がない場合には、半透明若しくは不透明なその他の薄い有機合成樹脂シートを用いることもできる。
【0110】
また、本実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収シート8は、電磁波・音波吸収織物5を厚さ約0.1mmの薄い有機合成樹脂シートとしての透明なビニールシート6で挟んで耐候性接着剤を用いて接着して製造しているが、多数の貫通孔が穿設されたものでない場合には、加熱圧着することによってシート状にすることもできる。
【0111】
ここで、高速道路等の通常の防音壁は吸音性或いは音波反射性の厚い素材を用いて作られているため、外部を全く見ることができず、運転者が閉塞感を感じるとともに同乗者が景色を楽しむことも妨げられていた。しかし、本発明の実施の形態1にかかる音波吸収シート8は、1枚でも数枚重ねた場合でも向こう側が透けて見えるため、閉塞感を与えることもなく景色を楽しむことも妨げない、優れた防音壁を構成することができる。
【0112】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図5及び図6を参照して説明する。図5(a)は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの構造を示す断面図、(b)は全体構造を示す斜視図である。図6は本発明の実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレートの電磁波吸収特性を示すグラフである。
【0113】
図5(a)に示されるように、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10は、互いに織り目の粗さの異なる3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cを用いて製造されている。電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cを織成するために用いられる電磁波・音波吸収糸は、実施の形態1と同一の電磁波・音波吸収糸3である。
【0114】
電磁波・音波吸収織物5Aは、この電磁波・音波吸収糸3を40mmメッシュの粗さの格子状に織成してなり、電磁波・音波吸収織物5Bは、この電磁波・音波吸収糸3を30mmメッシュの粗さの格子状に織成してなり、電磁波・音波吸収織物5Cは、この電磁波・音波吸収糸3を20mmメッシュの粗さの格子状に織成してなるものである。
【0115】
図5(a)に示されるように、これら3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cの間に、有機合成樹脂プレートとしての厚さ10mmの発泡スチロールプレート11を挟んで、図5(b)に示されるように、周囲を枠12で留めることによって、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10が製造される。
【0116】
次に、かかる構成を有する本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10の電磁波吸収特性について、図6を参照して説明する。図6に示されるように、本実施の形態2における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を75度(即ち、垂直90度から15度傾いた角度)としている。金属反射板においては、いずれの周波数帯においても電波が全反射されるため、電波吸収はほぼ0dB(デシベル)である。
【0117】
これに対して、電磁波・音波吸収糸3を20mmメッシュの粗さの格子状に織成してなる電磁波・音波吸収織物5Cを厚さ10mmの発泡スチロールプレートを介して金属反射板に載せて測定した場合には、図6に示されるように、周波数5.8GHzにおいて20dB以上の電波吸収が観測された。
【0118】
さらに、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10を厚さ10mmの発泡スチロールプレートを介して金属反射板に載せて測定した場合には、図6に示されるように、周波数5.8GHzにおいて25dB以上、周波数6.0GHzにおいて30dB近くの電波吸収が観測された。
【0119】
これらの測定結果を、表1にまとめて示す。
【表1】
表1に示されるように、電磁波・音波吸収プレート10の周波数5.8GHzにおける電波吸収量は、26.5dBと大きい値を示している。本実施の形態2における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を75度としているため、垂直入射する電波のみでなく、斜めに入射する電波をも強力に吸収することが判明した。従って、本実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10は、周波数5.8GHzの電波を使用するETCシステムの隣り合うゲートの間を電磁波的に遮断するために、極めて有効であることが分かった。
【0120】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について、図7及び図8を参照して説明する。図7(a)は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収シートのトンネル内壁への施工状態を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収シートのトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。図8は本発明の実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレートの高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0121】
図7(a)に示されるように、本実施の形態3にかかるトンネル内壁への施工用の電磁波・音波吸収シートとしては、上記実施の形態1で説明した電磁波・音波吸収シート8が用いられる。
【0122】
この電磁波・音波吸収シート8は上記実施の形態1で説明したように、電磁波・音波吸収糸3を用いて織り目が約10mmと粗い電磁波・音波吸収織物5を織って、この電磁波・音波吸収織物5の上下を厚さ約0.1mmの透明な全面に孔径が500nm〜1μmの範囲内の多数の貫通孔が開口率20%で穿設されたビニールシート6で挟んで、耐候性の接着剤を用いて上下のビニールシート6を電磁波・音波吸収織物5に接着させてなるものである。
【0123】
従って、この電磁波・音波吸収シート8は、優れた電磁波吸収性能及び音波吸収性能を有するとともに、極めて軽量で薄く、トンネルTの内壁への取付け施工が極めて容易である。
【0124】
従来、図7(a)に示されるような自動車道路のトンネルT内においては、自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音がトンネルTの内壁で反響して増幅され、より大きな騒音を生じていた。また、カーナビゲーションシステム(以下、「カーナビ」という。)についても、衛星からの電波がトンネルTの内壁や道路面で反射を繰り返すことによって乱反射ノイズを生じて、カーナビがトンネルT内では使用不能になるという事態も起こっていた。
【0125】
しかし、この電磁波・音波吸収シート8をトンネルTの内壁全面に取付け施工することによって、図7(b)に示されるように、実線の矢印で示される自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音は、電磁波・音波吸収シート8で吸収されて反響することなく、より大きな騒音を生じることもない。また、破線の矢印で示されるカーナビのための衛星からの電波も、電磁波・音波吸収シート8で吸収されて乱反射ノイズを生ずることがなく、トンネルT内でも通常通りカーナビを使用することができる。
【0126】
次に、本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15について、図8を参照して説明する。本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15は、上記実施の形態2にかかる電磁波・音波吸収プレート10において、有機合成樹脂プレートとして発泡スチロールプレート11の代わりに透明なアクリル樹脂プレートを用いたものである。
【0127】
近年は、ETCの普及に伴ってETC車載器を搭載している自動車Vが増加しているため、図8に示されるように、料金所TGにおいてETCゲート16Gが複数設けられるようになってきている。ここで、隣接したETCゲート16G間の電波の混線を防止するため、隣接したETCゲート16G間に電磁波遮断プレートが設けられているが、従来の電磁波遮断プレートは不透明であったため、隣接したETCゲート16Gを通過する他の自動車Vの動きを確認することができないという問題点があった。
【0128】
しかし、本実施の形態3にかかる電磁波・音波吸収プレート15は、透明なアクリル樹脂プレートを間に挟んで、織り目の粗い40mmメッシュ・30mmメッシュ・20mmメッシュの3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cから構成されているため、向こう側が透けて見えるので、隣接したETCゲート16Gを通過する他の自動車Vの動きを確認することができるとともに、電波の混線を確実に防止することができる。
【0129】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について、図9乃至図13を参照して説明する。
【0130】
図9(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体を形成するための電磁波・音波吸収糸の製造方法を示す拡大図、(b)は電磁波・音波吸収糸の完成状態を示す拡大図である。図10(a)は本発明の実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。
【0131】
図11(a)は本発明の実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。図12(a)は本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法を示す斜視図、(b)は第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の完成状態を示す斜視図である。図13は本発明の実施の形態4及び本発明の実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0132】
図9(a),(b)に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収糸9は、上記実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けた後に、全長に亘って有機合成樹脂としてのポリエチレン7をコーティングしてなるものである。ポリエチレン7をコーティングする方法としては、ポリエチレン7を有機溶媒に溶解させた溶液、またはポリエチレン7を加熱して融解させた融液に、図9(a)に示される電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けたものを浸漬する方法等によれば良い。
【0133】
ポリエチレン溶液に浸漬する方法を採った場合には、引き上げて乾燥して有機溶媒を除去することによって、またポリエチレン融液に浸漬する方法を採った場合には引き上げて冷却することによって、図9(b)に示される電磁波・音波吸収糸9を得ることができる。ここで、図9(a)に示されるように、まず電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってガラス繊維4を巻き付けているために、高温のポリエチレン融液に浸漬しても、通常の可紡性繊維1としての透明のポリエステル繊維が融解したりすることはない。
【0134】
かかる構成の電磁波・音波吸収糸9は、全長に亘ってポリエチレン7によってコーティングされているため耐水性に優れ、かかる電磁波・音波吸収糸9を織成してなる電磁波・音波吸収織物は、シールしなくてもそのまま屋外で使用することができる。このように、通常の可紡性繊維1にカーボン繊維2のヒゲ状の突出部分2Aを多数設けた電磁波・音波吸収糸3をポリエチレン7でコーティングすることによって、より大きな電磁波・音波吸収性能を有しながら耐水性に優れ、通常の可紡性繊維と全く同じように織機で織物を織ることができる。
【0135】
次に、かかる構成の電磁波・音波吸収糸9を用いた電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図10を参照して説明する。
【0136】
図10(a)に示されるように、細いステンレス製パイプからなる枠体17に電磁波・音波吸収糸9を20mmの間隔を空けて平行に張ったものを2枚作製する。そして、枠体17に張った電磁波・音波吸収糸9の向きが互いに垂直になるように、間にガラス繊維からなる誘電体シート18を挟んで、これら2枚を接着する。
【0137】
こうして製造された電磁波・音波吸収構造体を、図10(b)に示されるように、強化プラスチック製の枠体24の上面に固定し、図10(a)に示される金属製の網としてのステンレス製の金網23を、枠体24の底面に固定する。これによって、図10(b)に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20が完成する。
【0138】
なお、電磁波・音波吸収糸9を20mmの間隔を空けて張ったのは、ETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためであり、枠体24の厚さは10mmであるため上面の電磁波・音波吸収構造体と底面のステンレス製の金網23との間には約10mmの間隔が生ずるが、これもETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためである。このようにして製造された電磁波・音波吸収構造体20は、電磁波・音波吸収糸9を用いているために耐水性に優れ、屋外でも問題なく使用することができる。
【0139】
次に、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図11を参照して説明する。
【0140】
図11(a)に示されるように、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体に使用される電磁波・音波吸収織物21は、上記実施の形態1にかかる電磁波・音波吸収糸3の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングした電磁波・音波吸収糸22を用いて、20mm間隔の格子状に織成されたものである。ここで、フッ素樹脂をコーティングする方法としては、電磁波・音波吸収糸3をフッ素樹脂溶液中に浸漬してから引き上げて溶媒を除去する方法でも良いし、気体状のフッ素樹脂を焼き付ける方法によっても良い。
【0141】
更に、図11(a)に示されるように、電磁波・音波吸収織物21と同一の寸法の金属製の網としてのステンレス製の金網23を用意する。ここで、ステンレス製の金網23は、電磁波・音波吸収織物21と重ねた場合に優れた透光性を有し、向こう側が良く見えるようにするために、できるだけ細いステンレス線からなるものが好ましい。また、電磁波を反射する役割を果たすものであるため、金網23の網目は細かい方が好ましい。本実施の形態4の第1変形例においては、太さ0.5mmのステンレス線からなり、網目が2mm〜3mmのステンレス製の金網23を用いた。
【0142】
図11(b)に示されるように、これらの電磁波・音波吸収織物21とステンレス製の金網23とを、強化プラスチックの枠体24の両面にそれぞれ取付けて、枠体24の厚さ(10mm)だけの間隔を空けて対向するように構成する。これによって、本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25が完成する。
【0143】
このような構成を有する本実施の形態4の第1変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25は、主として屋内用に用いられる。例えば、電磁波・音波吸収構造体25の上面の電磁波・音波吸収織物21の上に薄い木板を貼って、家屋の壁面の構造材(壁面パネル)として応用することができる。
【0144】
次に、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体の製造方法について、図12を参照して説明する。
【0145】
図12(a)に示されるように、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体に使用される電磁波・音波吸収構造体21Aは、上述した細いステンレス製パイプからなる枠体17に上述した電磁波・音波吸収糸9を、20mmの間隔を空けて縦横に張ったものである。
【0146】
図12(b)に示されるように、かかる電磁波・音波吸収構造体21Aと上述したステンレス製の金網23とを、上述した強化プラスチックの枠体24の両面にそれぞれ取付けて、枠体24の厚さ(10mm)だけの間隔を空けて対向するように構成する。これによって、本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aが完成する。
【0147】
ここで、ステンレス製の金網23は、電磁波・音波吸収構造体21Aと重ねた場合に優れた透光性を有し、向こう側が良く見えるようにするために、できるだけ細いステンレス線からなるものが好ましい。また、電磁波を反射する役割を果たすものであるため、金網23の網目は細かい方が好ましい。本実施の形態4の第2変形例においては、太さ0.5mmのステンレス線からなり、網目が2mm〜3mmのステンレス製の金網23を用いた。
【0148】
なお、本実施の形態4の第2変形例においては、枠体24の厚さを10mmとしたが、これは電磁波・音波吸収構造体21Aの目を20mmにした理由と同様であり、ETCシステムに用いられる5.8GHzの電波を吸収するためである。
【0149】
次に、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20及び本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aの使用例について、図13を参照して説明する。
【0150】
図13に示されるように、高速道路の料金所TGにおいて、2基のETCゲート16Gが隣り合って設置されている。本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aは、これら2基のETCゲート16Gの間に設置されて、電波の混線を防ぐ働きをする。上述のごとく、電磁波・音波吸収構造体25Aは透光性に優れており、向こう側が良く見えるため、自動車V1の運転者と自動車V3の運転者は互いの車の動きが良く見え、ETCゲート16Gを安心して通過することができる。
【0151】
また、図13に示されるように、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20は、ETCゲート16Gの電波発信部の斜め上方に、料金所TGの屋根に対して斜めに取付けられている。これによって、ETCゲート16Gの電波発信部から発信された電波が、ETCゲート16Gを通過しようとしている自動車V1,V3のみに届き、それより後方に向かう電波は電磁波・音波吸収構造体20によって吸収されるため、後続の自動車V2,V4と自動車V1,V3との間で混線が起こる事態を防止することができる。
【0152】
このようにして、本実施の形態4にかかる電磁波・音波吸収構造体20及び本実施の形態4の第2変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体25Aは、ETCゲート16Gにおける電波の混線を確実に防止することができる。
【0153】
そして、電磁波・音波吸収構造体20はポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9とステンレス製パイプからなる枠体17とステンレス製の金網23と強化プラスチックからなる枠体24から構成されており、電磁波・音波吸収構造体25Aも同様に、ポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9とステンレス製パイプからなる枠体17とステンレス製の金網23と強化プラスチックからなる枠体24から構成されているため、いずれも耐水性に優れており屋外での使用に耐えることができる。
【0154】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について、図14を参照して説明する。図14(a)は本発明の実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体の高速道路の料金所における使用例を示す斜視図である。
【0155】
図14(a)に示されるように、本実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体26は、プラスチック製パイプとしての塩化ビニルパイプ27の外周面に、上記実施の形態4にかかるポリエチレン7でコーティングされた電磁波・音波吸収糸9を、Z方向及びS方向に一定のピッチPで巻き付けて固定し、塩化ビニルパイプ27の内部には金属製のパイプとしてのアルミニウムパイプ28を通して、塩化ビニルパイプ27の両端に嵌めるキャップ29に差し込むことによって、塩化ビニルパイプ27の中心線に沿って位置するように支持されたものである。
【0156】
かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体26に入射した電磁波は、まず塩化ビニルパイプ27の外周面の電磁波・音波吸収糸9によって一部が吸収され、塩化ビニルパイプ27の内部のアルミニウムパイプ28によって反射されて、再び外周面の電磁波・音波吸収糸9によって吸収される。これによって、電磁波・音波吸収構造体26に対してどの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、塩化ビニルパイプ27の外周面の電磁波・音波吸収糸9によって音波が吸収されるため、優れた電磁波・音波吸収性能を示す。
【0157】
塩化ビニルパイプ27の内径(正確には、内部のアルミニウムパイプ28の表面から外周面の電磁波・音波吸収糸9までの距離)及び電磁波・音波吸収糸9を巻き付けるピッチPは、吸収しようとする電磁波の波長に合わせて設定することによって、効率良く目的の波長の電磁波を吸収することができる。本実施の形態5においては、ピッチP=20mmとし、アルミニウムパイプ28の表面から外周面の電磁波・音波吸収糸9までの距離は10mmとなるように設定している。
【0158】
次に、かかる構造を有する電磁波・音波吸収構造体26の使用例について、図14(b)を参照して説明する。図14(b)に示されるように、高速道路の料金所TGにおいて、2基のETCゲート16Gが隣り合って設置されている。これら2基のETCゲート16Gの間には、本実施の形態5にかかる電磁波・音波吸収構造体26を水平方向に複数本一定間隔で配置してなる本実施の形態5の変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体30が設置されて、電波の混線を防ぐ働きをする。
【0159】
この本実施の形態5の変形例にかかる電磁波・音波吸収構造体30は、1対の支柱31が底板32に立設されており、これらの1対の支柱31の間に複数本の電磁波・音波吸収構造体26が、上下方向に一定間隔をおいて水平に支持されてなるものである。かかる電磁波・音波吸収構造体30は、複数本の電磁波・音波吸収構造体26からなるため、どの方向から入射した電磁波をも強力に吸収することができる。そして、上下方向に間隔が空いているため、ETCゲート16Gを通過する自動車Vの運転者は、隣のETCゲート16Gを通過する自動車Vの動きが良く見える。
【0160】
なお、本実施の形態5においては電磁波・音波吸収構造体26を構成するプラスチック製のパイプとして不透明な塩化ビニルパイプ27を用いているが、プラスチック製のパイプとして透明アクリル樹脂パイプのような透明なものを用いることによって、更に隣のETCゲート16Gを通過する自動車Vの動きが良く見えるようになる。
【0161】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について、図15を参照して説明する。図15(a)は本発明の実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体の構造を示す斜視図、(b)は電磁波・音波吸収構造体のトンネル内における電磁波・音波吸収効果を示す説明図である。
【0162】
図15(a)に示されるように、本実施の形態6にかかる電磁波・音波吸収構造体35は、設置したい壁面としてのトンネルTの内壁面に、金属製の網としてのステンレス製の金網23を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材36を介して、上述したように細いステンレス製パイプからなる枠体17に電磁波・音波吸収糸9を、20mmの間隔を空けて縦横に張った電磁波・音波吸収構造体21Aを取付けてなる。
【0163】
これによって、電磁波・音波吸収構造体21A側から入射した電磁波は、まず電磁波・音波吸収構造体21Aによってその一部が吸収され、ステンレス製の金網23で反射されて再び電磁波・音波吸収構造体21Aを通過する際に吸収される。
【0164】
ここで、ステンレス製の金網23と電磁波・音波吸収構造体21Aとの間隔が、金属製のチャンネル材36によって吸収しようとする電磁波の波長に合わせた所定の間隔となっているため、入射する電磁波とステンレス製の金網23で反射された電磁波が打ち消し合って、より効果的に電磁波を吸収することができる。
【0165】
そして、壁面に固定されたステンレス製の金網23と電磁波・音波吸収構造体21Aとの間には所定の間隔の隙間があり、空気が自由に通過することができるので、電磁波・音波吸収構造体21Aによって優れた音波吸収特性が発揮される。更に、上述したように、電磁波・音波吸収構造体21Aは耐水性を有するため、トンネル内壁での使用に適している。
【0166】
従来、図15(b)に示されるような自動車道路のトンネルT内においては、自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音がトンネルTの内壁で反響して増幅され、より大きな騒音を生じていた。また、カーナビについても、衛星からの電波がトンネルTの内壁や道路面で反射を繰り返すことによって乱反射ノイズを生じて、カーナビがトンネルT内では使用不能になるという事態も起こっていた。
【0167】
しかし、この電磁波・音波吸収構造体35をトンネルTの内壁全面に取付け施工することによって、図15(b)に示されるように、実線の矢印で示される自動車Vから発せられるエンジン音・走行音等の騒音は、電磁波・音波吸収構造体35で吸収されて反響することなく、より大きな騒音を生じることもない。また、破線の矢印で示されるカーナビのための衛星からの電波も、電磁波・音波吸収構造体35で吸収されて乱反射ノイズを生ずることがなく、トンネルT内でも通常通りカーナビを使用することができる。
【0168】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について、図16を参照して説明する。図16は本発明の実施の形態7にかかる電磁波・音波吸収糸の電磁波吸収特性を示すグラフである。本実施の形態7においては、図9(a),(b)に示されるように、電磁波・音波吸収糸3にガラス繊維4を巻き付けて、更にその上から有機合成樹脂7をコーティングして作製される電磁波・音波吸収糸9において、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さをほぼ一定に統一すると、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域が非常に狭くなってしまうという問題点があるため、それを解決する方法を示すものである。
【0169】
即ち、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを一定にせずに、例えば25mm±(1mm〜5mm)とすることによって、即ち20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとすることによって、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域を拡げることができる。カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを、20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとした電磁波・音波吸収糸3にガラス繊維4を巻き付けて、更にその上から有機合成樹脂7をコーティングして作製した電磁波・音波吸収糸9について、電磁波吸収特性を測定した結果を図16に示す。なお、巻き付ける繊維としては、ガラス繊維4以外にも、綿等の絶縁体繊維を始めとしてその他の繊維でも良い。
【0170】
図16に示されるように、本実施の形態7における電磁波吸収特性測定試験においては、電波の入射角を90度、即ち試料面に対して垂直としている。そして、曲線S1,S2は測定箇所を変えて測定した結果である。測定箇所を変えたことによってピークの位置はずれているが、曲線S1,S2のいずれについても電磁波吸収特性を示す周波数帯域は大きく拡がっている。また、曲線S3は、測定箇所を変えてもピークの位置がずれないように、本実施の形態7に係る電磁波・音波吸収糸9をベニヤ板で押さえつけて測定したものである。電磁波吸収のピークは低くなっているが、電磁波吸収特性を示す周波数帯域は更に拡がっている。
【0171】
このように、カーボン繊維の突出部分2Aを含む短いカーボン繊維全体の長さを一定にせずに、例えば25mm±(1mm〜5mm)とすることによって、即ち20mm〜30mmの範囲内でランダムな長さとすることによって、電磁波・音波吸収性能を示す周波数の帯域を拡げることができる。
【0172】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について、図17を参照して説明する。図17は本発明の実施の形態8にかかる電磁波シールド糸を高圧電線に巻き付けた状態を示す部分斜視図である。図17に示されるように、本実施の形態8においては、電磁波シールド糸として、上記実施の形態1と同一の製造方法で製造した電磁波・音波吸収糸3を使用している。
【0173】
この実施の形態1の電磁波・音波吸収糸と同一の構造を有する電磁波シールド糸3を、電磁波シールドしようとする対象に所定のピッチで巻き付けることによって、電磁波をシールドすることができる。具体的な用途としては、例えば、高速電力線通信(Power Line Communication,PLC)において通常の電力線を通信に使用する場合に、電力線からの電波の漏洩が問題となるが、電力線に電磁波シールド糸3を巻き付けることによって、このような電波の漏洩を確実に防止することができる。
【0174】
ここで、電磁波シールド糸3は、基本的構成が電磁波・音波吸収糸3と相違するものでないので、同一符号で表現することとする。
【0175】
本実施の形態8においては、図17に示されるように、高圧電線40に電磁波シールド糸3を所定のピッチで巻き付けることによって、高圧電線40をPLCの通信線として使用した場合に、高圧電線40からの電波の漏洩を確実に防止することができる。ここで、高圧電線40を始めとする電力線は平板ではなく、長い円柱状の立体的形状を有するものである。平板状のものの場合には、例えば金属箔を細く切ったものを貼り付けても電磁波をシールドすることができるが、電力線のような立体的形状を有するものの場合には、本実施の形態8に係る電磁波シールド糸3のような、切断された導電体を配置したものでなければ、電磁波をシールドすることはできない。
【0176】
本実施の形態8においては、電磁波シールド糸として、通常の可紡性繊維としてのポリエステル繊維1を互いに間隔を開けてカーボン繊維2と鎖編みで編み上げる際に2回〜5回ごとにカーボン繊維2をポリエステル繊維1の隣り合う1本に移動することを繰り返して編み上げた後に、複数本のポリエステル繊維1の間でカーボン繊維2を切断してなる電磁波シールド糸3を用いた例について説明したが、これ以外にも様々な電磁波シールド糸を使用することができる。
【0177】
例えば、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなるもの、電磁波シールド糸3の全長に亘ってガラス繊維を巻き付けた後に全長に亘って有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーをコーティングしてなるもの、電磁波シールド糸3の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなるもの、等である。即ち、上述した電磁波・音波吸収糸9,22もそのまま電磁波シールド糸として用いることができる。
【0178】
上記各実施の形態においては、通常の可紡性繊維としての透明ポリエステル繊維1とカーボン繊維2とを複数本ずつ鎖縫いで編み込んだ後に、カーボン繊維2を切断して電磁波・音波吸収糸3及び電磁波シールド糸3を形成する例について説明したが、通常の可紡性繊維としてはこの他にも、不透明なポリエステル繊維、木綿、絹、麻、羊毛、ナイロン、ビニロン、アクリル繊維、塩化ビニリデン繊維、アセテート、レーヨン等の有機質繊維、ガラス繊維等の無機質繊維またはこれらの繊維を混用することができる。
【0179】
また、カーボン繊維以外にも、銅線材、メッキした銅線材、ステンレス線材を始めとする金属線材を用いることもできる。ここで、金属線材の太さは30μm〜120μmの範囲内であることが好ましい。更に、紙・布・プラスチックフィルム等の基材に、金・銀・銅等の金属やカーボン等の導電性材料をコーティングして細く裁断して短く切断したものを用いることもできる。
【0180】
また、電磁波・音波吸収糸及び電磁波シールド糸としては、これら以外にも、有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなるものを用いることもできる。
【0181】
更に、上記各実施の形態においては、電磁波・音波吸収織物を透明な二枚の薄い有機合成樹脂シートとしての厚さ約0.1mmのビニールシート6で挟んでなる電磁波・音波吸収シート8、3枚の電磁波・音波吸収織物5A,5B,5Cの間に有機合成樹脂プレートとしての厚さ10mmの発泡スチロールプレート11を挟んでなる電磁波・音波吸収プレート10、及び透明なアクリル樹脂プレートを挟んでなる電磁波・音波吸収プレート15、等について説明したが、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体としては、二枚の薄いゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着したものや、間に所定厚さのゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着したもの等、これら以外にも多様な構成を取ったものを用いることができる。
【0182】
例えば、電磁波・音波吸収織物を透明な二枚の薄いゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着したものや、間に所定厚さのゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着したもの、電磁波・音波吸収織物を二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んでなる電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収織物の互いに織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートで挟んでなる電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて全面に多数の貫通孔が穿設された二枚の有機合成樹脂プレートで挟んでなる電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収織物の互いに織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて全面に多数の貫通孔が穿設された二枚の有機合成樹脂プレートで挟んでなる電磁波・音波吸収プレート、等である。
【0183】
電磁波・音波吸収糸、電磁波・音波吸収織物、電磁波・音波吸収シート、電磁波・音波吸収プレート、電磁波・音波吸収構造体及び電磁波シールド糸のその他の部分の構成、形状、数量、材質、太さ、厚さ、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0184】
1 可紡性繊維
2 カーボン繊維
2A 突出部分
3 電磁波・音波吸収糸、電磁波シールド糸
4 ガラス繊維
5,5A,5B,5C,21 電磁波・音波吸収織物
6 有機合成樹脂シート
7 有機合成樹脂
8 電磁波・音波吸収シート
9,22 電磁波・音波吸収糸
10 電磁波・音波吸収プレート
11 有機合成樹脂プレート
20,21A,25,25A,26,30,35 電磁波・音波吸収構造体
23 金属製の網
24 枠体
27 プラスチック製パイプ
28 金属製のパイプ
29 キャップ
36 チャンネル材
40 高圧電線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなることを特徴とする電磁波・音波吸収糸。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなることを特徴とする電磁波・音波吸収織物。
【請求項3】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなることを特徴とする電磁波・音波吸収織物。
【請求項4】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項5】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項6】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収プレート。
【請求項8】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収プレート。
【請求項9】
前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であることを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1つに記載の電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレート。
【請求項10】
請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項11】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項12】
請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項13】
設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項14】
所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項15】
請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項1】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸であって、当該電磁波・音波吸収糸の全長に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなることを特徴とする電磁波・音波吸収糸。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を織成してなる、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなることを特徴とする電磁波・音波吸収織物。
【請求項3】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の表裏全面に亘ってフッ素樹脂をコーティングしてなることを特徴とする電磁波・音波吸収織物。
【請求項4】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項5】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物において互いに前記電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものを二枚以上重ねて二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで加熱圧着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項6】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物を一枚または二枚以上重ねて、全面に孔径が100nm〜1mmの範囲内の多数の貫通孔が開口率5%〜30%の範囲内で穿設された二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシートで挟んで接着して薄くて柔軟性の高いシート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収シート。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収プレート。
【請求項8】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を織成してなる電磁波・音波吸収織物、または、前記電磁波・音波吸収糸と通常の可紡性繊維とを混合して織成してなる電磁波・音波吸収織物の互いに電磁波・音波吸収糸の織り目の粗さの異なるものの間に所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートを挟んで二枚以上重ねて接着若しくは加熱圧着して厚くて柔軟性の低いプレート状にしたことを特徴とする電磁波・音波吸収プレート。
【請求項9】
前記電磁波・音波吸収織物は織り目が1mm以上200mm以下と粗く、前記二枚の薄い有機合成樹脂シートまたはゴムシートまたはエラストマーシート或いは前記所定厚さの有機合成樹脂プレートまたはゴムプレートまたはエラストマープレートは透明であることを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1つに記載の電磁波・音波吸収シートまたは電磁波・音波吸収プレート。
【請求項10】
請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項11】
有機合成樹脂またはゴムまたはエラストマーに短いカーボン繊維若しくはカーボン粉末または短い金属線材若しくは金属粉末を練り込んで紡糸してなる電磁波・音波吸収糸を枠体に互いに平行に所定間隔を空けて張り渡してなるものを2枚間に誘電体シートを挟んで互いに張り渡した前記電磁波・音波吸収糸が垂直になるように重ねてなる、または、前記電磁波・音波吸収糸を枠体に縦横に張り渡してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項12】
請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体に対して所定間隔を空けて金属製の網を対向させて両者を枠体に固定してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項13】
設置したい壁面に薄い金属板または金属製の網を固定し、所定のチャンネル間隔を有する金属製のチャンネル材を介して請求項2または請求項3に記載の電磁波・音波吸収織物、または、請求項10または請求項11に記載の電磁波・音波吸収構造体を取付けてなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項14】
所定の内径を有するプラスチック製パイプの外周面に請求項1に記載の電磁波・音波吸収糸を所定のピッチでZ方向及びS方向に巻き付けて固定し、前記プラスチック製パイプの内部に金属製の棒または金属製のパイプを前記プラスチック製パイプの中心線に沿って前記プラスチック製パイプの両端に固定されるキャップに支持してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【請求項15】
請求項14に記載の電磁波・音波吸収構造体を所定間隔で複数本平行に配置してなることを特徴とする電磁波・音波吸収構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−180630(P2012−180630A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108974(P2012−108974)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2007−58032(P2007−58032)の分割
【原出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2007−58032(P2007−58032)の分割
【原出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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