説明

電磁波吸収性熱伝導シート及び電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法

【課題】 シートの柔軟性が良好である電磁波吸収性熱伝導シートを提供する。
【解決手段】 シリコーンゴムと、カップリング剤と、カップリング剤で表面処理された磁性金属粉末とを含有し、磁性金属粉末の体積率が50〜80vol%であり、カップリング剤は、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有し、かつ、磁性金属粉末の表面にカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性や電磁波抑制特性が良好な電磁波吸収性熱伝導シート及び電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、小型化の傾向をたどる一方、アプリケーションの多様性のために電力消費量をそれほど変化させることができないため、機器内における放熱対策がより一層重要視されている。
【0003】
上述した電子機器における放熱対策として、銅やアルミなどといった熱伝導率の高い金属材料で作製された放熱板やヒートパイプ、あるいはヒートシンクなどが広く利用されている。これらの熱伝導性に優れた放熱部品は、放熱効果又は機器内の温度緩和を図るため、電子機器内における発熱部である半導体パッケージなどの電子部品に近接するようにして配置される。また、これらの熱伝導性に優れた放熱部品は、発熱部である電子部品から低温場所へ亘って配置される。
【0004】
電子機器内における発熱部は、電流密度が高い半導体素子などの電子部品である。電流密度が高いということは、不要輻射の成分となりうる電界強度又は磁界強度が大きい。このため、金属で作製された放熱部品を電子部品の近辺に配置すると、熱とともに電子部品内を流れる電気信号の高調波成分をも拾ってしまうことがある。具体的には、放熱部品は、金属材料で作製されているため、それ自体が高調波成分のアンテナとして働いてしまったり、高調波ノイズ成分の伝達経路として働いてしまう。
【0005】
このような背景により、熱伝導性シートは、放熱部品がアンテナとして働いてしまうのを抑制するため、すなわち、磁界のカップリングを断ち切るために、磁性材料を含有するものがある。このような電磁波吸収性熱伝導シートは、例えば、フェライトなどの高透磁率を有する磁性材料を、シリコーン系やアクリル系などの高分子材に含有させることにより、熱伝導特性と電磁波抑制特性の両者の機能を実現している。
【0006】
ところで、電磁波吸収性熱伝導シートの熱伝導性及び電磁波抑制特性(磁界のデカップリング効果)は、それぞれの目的粉末の材料物性値も因子の一つであるが、母材となる高分子剤に含まれる目的粉末の充填量を大きくすることが重要となる。
【0007】
ここで、目的粉末と高分子剤との濡れ性が悪いと目的粉末を高充填できず、成型品の柔軟性も悪化してしまう。そこで、母材と粉末との濡れ性を改善するために、一般にカップリング剤と称する粉末の表面処理剤を加える方法が知られている(特許文献1〜特許文献4)。
【0008】
特許文献1には、シリコーンゴムに対して、ソフトフェライトの充填性を改善して柔軟性を持たせるために、無官能基のシラン化合物で表面処理をする技術が記載されている。また、特許文献2には、シリコーンゴムと、磁性金属粉末との組み合わせには、チタネート系又はアルミニウム系のカップリング剤で表面処理する技術が記載されている。さらに、特許文献3には、シリコーンゴムと酸化物粉末との組み合わせで、特定構成のシランカップリング剤が効果的であることが記載されている。さらにまた、特許文献4には、酸化物フィラーに対して、シリコーン元素に直接結合するアルキル基の炭素数が4個のシランカップリング剤を0.2〜10重量%とする技術が記載されている。
【0009】
しかしながら、粉末の表面改質を目的としたカップリング剤は、必要以上に添加すると、時間の経過に伴って未反応部分で反応が緩やかに進行し、長時間経過後にシリコーン成型品であるシートの柔軟性が悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−286190号公報
【特許文献2】特許第3719382
【特許文献3】特許第3290127
【特許文献4】特許第3535805
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、シートの柔軟性が良好である電磁波吸収性熱伝導シート及び電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電磁波吸収性熱伝導シートは、シリコーンゴムと、カップリング剤と、カップリング剤で表面処理された磁性金属粉末とを含有し、磁性金属粉末の体積率が50〜80vol%であり、カップリング剤は、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有し、かつ、磁性金属粉末の表面にカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている。
【0013】
本発明に係る電磁波吸収性熱伝導シートは、シリコーンゴムと、カップリング剤と、カップリング剤で表面処理されたアモルファス金属粉末とを含有し、アモルファス金属粉末の体積率が50〜80vol%であり、カップリング剤は、メタクリロキシ基を有機官能基として有し、かつ、アモルファス金属粉末の表面にカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている。
【0014】
本発明に係る電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法は、シリコーンゴムと、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するカップリング剤と、磁性金属粉末とを混合して攪拌する攪拌工程と、攪拌工程で攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる硬化工程とを有し、攪拌工程では、磁性金属粉末の体積率が50〜80vol%となるように磁性金属粉末を含有させるとともに、磁性金属粉末の表面にカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量のカップリング剤を含有させる。
【0015】
本発明に係る電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法は、シリコーンゴムと、メタクリロキシ基を有機官能基として有するカップリング剤と、アモルファス金属粉末とを混合し、混合した混合物を攪拌する攪拌工程と、攪拌工程で攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる硬化工程とを有し、攪拌工程では、アモルファス金属粉末の体積率が50〜80vol%となるようにアモルファス金属粉末を含有させるとともに、アモルファス金属粉末の表面にカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量のカップリング剤を含有させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁性金属粉末を高充填することができるため、シートの柔軟性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る電磁波吸収性熱伝導シートに用いられるアモルファス金属粉末のSEM画像を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る電磁波吸収性熱伝導シートに用いられる結晶質の金属粉末のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した電磁波吸収性熱伝導シート及び電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法の具体的な実施の形態の一例について、以下の順序で説明する。
1.電磁波吸収性熱伝導シート
1−1.磁性金属粉末
1−2.カップリング剤
1−3.熱伝導性充填剤
1−4.シリコーンゴム
2.電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法
3.他の実施の形態
4.実施例
【0019】
(1.電磁波吸収性熱伝導シート)
本実施の形態に係る電磁波吸収性熱伝導シートは、磁性金属粉末と、カップリング剤と、熱伝導性充填剤と、シリコーンゴムとを含有する。
【0020】
(1−1.磁性金属粉末)
磁性金属粉末としては、電子部品から放出される電磁波を吸収するための電磁波吸収材料が用いられる。このような磁性金属粉末としては、アモルファス金属粉末や、結晶質の金属粉末を用いることができる。アモルファス金属粉末としては、例えば、Fe−Si−B−Cr系、Fe−Si−B系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系のもの等が挙げられる。結晶質の金属粉末としては、例えば、純鉄、Fe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系のもの等が挙げられる。また、結晶質の金属粉末としては、結晶質の金属粉末に、N(窒素)、C(炭素)、O(酸素)、B(ホウ素)等を微量加えて微細化させた微結晶質金属粉末を用いてもよい。また、磁性金属粉末としては、材料が異なるものや、平均粒径が異なるものを2種以上混合したものを用いてもよい。
【0021】
磁性金属粉末としては、充填性を高くする観点から、粒径が数μm〜数十μmであって、球状であるものが好ましい。このような磁性金属粉末は、例えばアトマイズ法により製造することができる。アトマイズ法とは、球状の粉末が作りやすい利点を有し、溶融金属をノズルから流出させ、流出させた溶融金属に空気、水、不活性ガス等のジェット流を吹き付けて液滴として凝固させて粉末を作る方法である。アトマイズ法により磁性金属粉末を製造する際には、溶融金属が結晶化しないようにするために、冷却速度を10―6(K/s)程度にすることが好ましい。
【0022】
上述したアトマイズ法により、アモルファス金属粉末を製造した場合には、例えば図1に示すように、アモルファス金属粉末の表面を滑らかな状態とすることができる。このように表面凹凸が少なく、比表面積が小さいアモルファス金属粉末を磁性金属粉末として用いるとともに、後に詳述するように最適なカップリング剤を用いることにより、ごく少量のカップリング剤でもシリコーンゴムとの親和性を改善し、シリコーン成型品、すなわち、シートの柔軟性を向上させることができる。また、このようなアモルファス金属粉末を用いることにより、過度にカップリング剤を用いなくても、シートを長期保存した場合において、シートの柔軟性が劣化してしまうのを防止することができる。
【0023】
また、上述したアトマイズ法により、結晶質の金属の一例であるFe−Si合金粉末を製造した場合には、Fe−Si合金粉末は、例えば図2に示すように、球状を呈しながらも表面に微小な凹凸を生じ、比表面積が大きくなる。このようなFe−Si合金粉末を磁性金属粉末として用いる場合には、Fe−Si合金粉末の充填量を減らし、比表面積の増加に対応するようにカップリング剤の量を増やすことが好ましい。これにより、アモルファス金属粉末を磁性金属粉末として用いたときと同様に、シートの柔軟性を向上させることができる。
【0024】
磁性金属粉末は、シリコーンゴムとカップリング剤と磁性金属粉末と熱伝導性充填剤とを含有するシリコーンゴム組成物全量(以下、単に「組成物全量」という)に対して、体積率が50〜80vol%であることが好ましい。磁性金属粉末の体積率を組成物全量に対して50vol%以上とすることにより、熱伝導特性と電磁波抑制特性とを良好にすることができる。また、磁性金属粉末の体積率を組成物全量に対して80vol%以下とすることにより、シートの柔軟性を良好にすることができる。
【0025】
(1−2.カップリング剤)
カップリング剤は、磁性金属粉末とシリコーンゴムとの濡れ性を良好にして磁性金属粉末の充填性を良好とし、シートの柔軟性を良好にする目的で用いられる。カップリング剤としては、例えば、一般式X−Si−ME(OR)3−n(n=0、1)で表されるシランカップリング剤や、一般式X−R−Si−(OR)3−n(n=0、1)で表されるシランカップリング剤を用いることができる。これらの一般式において、「X」は有機官能基を示し、「ME」はメチル基を示し、「OR」は加水分解基を示し、「R」はアルキル基を示している。上記一般式X−Si−ME(OR)3−nにおいて、n=1のときの加水分解基としては、例えばトリメトキシ基やトリエトキシ基が挙げられ、n=2のときの加水分解基としては、例えばメチルジメトキシ基やメチルジエトキシ基が挙げられる。
【0026】
一般式X−Si−ME(OR)3−n(n=0、1)で表されるシランカップリング剤としては、炭素数10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するものが好ましい。また、一般式X−R−Si−(OR)3−n(n=0、1)で表されるシランカップリング剤としては、メタクロキシ基を有機官能基として有するものが好ましい。このようなシランカップリング剤を用いることにより、磁性金属粉末とシリコーンゴムとの濡れ性を良好にして磁性金属粉末の充填性を良好とし、シートの柔軟性を良好にすることができる。ここで、炭素数10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤において、長鎖アルキル基の炭素数を10以上とすることにより、磁性金属粉末とシリコーンゴムとの濡れ性を良好にしてシートの柔軟性を向上させることができる。また、長鎖アルキル基の炭素数を18以下とすることにより、長鎖アルキル基の沸点が高くなりすぎてシランカップリング剤の構造が不安定となり、磁性金属粉末とシリコーンゴムとの濡れ性が悪くなることを防止することができる。
【0027】
炭素数10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤としては、例えば、炭素数10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するとともに、メトキシ基やエトキシ基を加水分解基として有するものが好ましい。具体的には、n−デシルトリメトキシシラン(n−C1021Si(OCH)、n−デシルメチルジメトキシシラン(n−C1021SiCH(OCH)、オクタデシルトリエトキシシラン(CH(CH17Si(OCHCH)、オクタデシルメチルジメトキシシラン(CH(CH17SiCH(OCH)等が挙げられる。
【0028】
また、メタクロキシ基を有機官能基として有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
シランカップリング剤の使用量は、磁性金属粉末の比表面積と、シランカップリング剤の分子量とによって変化させることが好ましく、磁性金属粉末の表面にシランカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な添加量(以下、「単分子層形成必要量」という)の0.5〜5倍の重量とすることが好ましい。シランカップリング剤の量を単分子層形成必要量の0.5倍以上とすることにより、シランカップリング剤による表面処理効果、すなわち、磁性金属粉末とシリコーンゴムとの濡れ性の効果が薄れるのを防止することができる。また、シランカップリング剤の量を単分子層形成必要量の5倍以下とすることにより、シートを長期保存した場合に、シランカップリング剤の未反応部での反応が進行して、シートの硬度が増加してしまうことを防止することができる。すなわち、シートの柔軟性を長期に亘って良好に維持することができる。ここで、シートの硬度とは、例えば、JISK6301Aに準拠して測定した値をいう。
【0030】
シランカップリング剤の単分子層形成必要量は、例えば、下記(1)式により求められる。
単分子層形成必要量(g)=対象フィラーの重量(g)×対象フィラーの比表面積(m/g)/シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)(1)
【0031】
上記(1)式において、対象フィラーとは、上述した磁性金属粉末又は熱伝導性充填剤のことを示す。また、(1)式において、シランカップリング剤の最小被覆面積は、次の(2)式により求めることができる。
最小被覆面積(m/g)=6.02×1023×13×10−20/シランカップリング剤の分子量 (2)
【0032】
上述の如く、図1に示すように表面凹凸が少なく、比表面積が小さいアモルファス金属粉末を磁性金属粉末として用いた場合には、最適なシランカップリング剤を用いることにより、ごく少量のシランカップリング剤でもシリコーンゴムとの親和性を改善し、シリコーン成型品であるシートの柔軟性を向上させることができる。例えば、比表面積が小さいアモルファス金属粉末を磁性金属粉末として用いた場合には、メタクロキシ基を有機官能基として有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0033】
また、図2に示すようにFe−Si合金粉末を磁性金属粉末として用いた場合には、Fe−Si合金粉末の充填量を減らし、比表面積の増加に対応するようにシランカップリング剤の量を増やすことが好ましい。これにより、アモルファス金属粉末を磁性金属粉末として用いたときと同様に、シートの柔軟性を向上させることができる。
【0034】
(1−3.熱伝導性充填剤)
本実施の形態に係る電磁波吸収性熱伝導シートは、シートの熱伝導率をより向上させるために、熱伝導性充填剤を含有してもよい。熱伝導性充填剤としては、磁性金属粒子よりも熱伝導率が高い熱伝導性粒子、例えば、高熱伝導性セラミックスや、銅やアルミニウムなどに絶縁体をコーティングした粉末等を用いることができる。高熱伝導性セラミックスとしては、アルミナ、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素等が挙げられる。
【0035】
熱伝導性充填剤は、磁性金属粉末と粒径が同程度のものを用いてもよいが、シート中における磁性金属粉末の充填率をさらに向上させる観点から、磁性金属粉末よりも粒径が小さいものが好ましい。例えば、熱伝導性充填剤は、平均粒径が、磁性金属粉末に対して1/3〜1/30程度のものを用いることが好ましい。
【0036】
また、熱伝導性充填剤は、体積率が組成物全量に対して30vol%以下であることが好ましい。これにより、シートの柔軟性を損なわずに、シートの熱伝導率を向上させることができる。
【0037】
また、熱伝導性充填剤は、上述したものに限定されず、磁性金属粉末よりも熱伝導率が高い材料であればよく、特に、平均粒径が磁性金属粉末に比べて小さいものであれば、高充填化を実現することができる。
【0038】
(1−4.シリコーンゴム)
シリコーンゴムとしては、特に限定されず、例えば二液型や一液型の液状タイプのシリコーンゲルやシリコーンゴム、熱加硫型のシリコーンゴム等を使用することができる。
【0039】
(2.電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法)
本実施の形態に係る電磁波吸収性熱伝導シートは、例えば、シリコーンゴムと、シランカップリング剤と、磁性金属粉末と、熱伝導性充填物とを混合し、混合物を攪拌させ、シランカップリング剤で磁性金属粉末を表面処理する攪拌工程と、攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる硬化工程とを有する。
【0040】
攪拌工程において、上述の如く、磁性金属粉末の体積率が組成物全量に対して50〜80vol%となるように磁性金属粉末を含有させるとともに、磁性金属粉末の表面にシランカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量のシランカップリング剤を含有させることが好ましい。
【0041】
また、攪拌工程において、シリコーンゴムと、シランカップリング剤と、磁性金属粉末と、熱伝導性充填物との混合物の攪拌は、例えば、真空乾燥機を用いて真空状態で行うことが好ましい。
【0042】
攪拌工程において、磁性金属粉末や熱伝導性充填物へのカップリング処理方法としては、例えば、直接処理法やインテグラルブレンド法が用いられる。直接処理法としては、例えば、乾式処理法や湿式処理法が挙げられる。乾式処理法とは、シランカップリング剤を水又はアルコール水溶液で希釈した状態で、対象粉末に滴下やスプレー噴霧して攪拌する方法である。湿式処理法とは、対象粉末を水又はアルコール水溶液を加えてスラリー状にしたものに、シランカップリング剤原液を添加して攪拌する方法である。インテグラルブレンド法とは、シランカップリング剤と、シリコーンゴムと、磁性金属粉末とを加えて一度に処理する方法である。
【0043】
攪拌工程において、特に、シランカップリング剤と磁性金属粉末や熱伝導性充填物との馴染みがよい場合には、シランカップリング剤の原液を磁性金属粉末に直接滴下する方法や、磁性金属粉末にシランカップリング剤処理を予め施して、順次他の材料を加えていく方法や、インテグラルブレンド法で処理することが好ましい。
【0044】
また、攪拌工程において、磁性金属粉末や熱伝導性充填物の種類及び粒径によって、最適なシランカップリング剤やカップリング処理の方法が異なるため、シランカップリング剤やカップリング処理方法を組みわせることが好ましい。
【0045】
硬化工程では、攪拌工程で攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる。例えば、硬化工程では、攪拌工程で攪拌された混合物を所定の大きさのシート形状に成型し、100℃、30分の環境下で硬化させることにより、電磁波吸収性熱伝導シートを製造することができる。
【0046】
(3.他の実施の形態)
上述した説明では、1種類のシランカップリング剤を用いた場合について説明したが、2種類以上のシランカップリング剤を混合してもよい。このように、複数のシランカップリング剤を混合して用いる場合には、各シランカップリング剤において、平均炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有することが好ましい。
【0047】
上述した説明では、熱伝導性充填物に対してカップリング処理を行うものとして説明したが、この例に限定されず、熱伝導性充填物に対するカップリング処理を省略してもよい。
【0048】
また、上述した説明では、磁性金属粉末及び熱伝導性充填物に対して同じシランカップリング剤を用いる場合について説明したが、この例に限定されず、熱伝導性充填物に磁性金属粉末に対して用いるシランカップリング剤とは異なるシランカップリング剤を用いてもよい。
【0049】
また、上述した説明では、磁性金属粉末と、熱伝導性充填物と、シランカップリング剤と、シリコーンゴムとを用いて電磁波吸収性熱伝導シートを製造するものとしたが、特性に支障をきたさない範囲で、燃焼を抑えるための難燃材、着色材等をさらに含有させてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記の実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、分子鎖両末端にのみアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、側鎖にのみケイ素原子に直接結合した水素原子をもつメチルハイドロジェンポリシロキサン及び白金族系付加反応触媒を1%未満含んだシリコーン混合物と、磁性金属粉末と、シランカップリング剤とを混合して、真空乾燥機にて攪拌した。
【0052】
球状のアモルファス金属粉末は、組成物全量に対して体積率が70vol%となるように配合した。磁性金属粉末としては、平均粒径25μmであるFe−Si−B系の球状のアモルファス金属粉末を用いた。シランカップリング剤としては、球状のアモルファス金属粉末の重量に対して0.06wt%の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0053】
続いて、攪拌した混合物を、2mmのシート形状に成型し、100℃、30分の環境下で硬化させることにより電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0054】
(実施例2)
実施例2では、シランカップリング剤として、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0055】
(実施例3)
実施例3では、シランカップリング剤として、n−デシルトリメトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0056】
(実施例4)
実施例4では、シランカップリング剤として、n−デシルトリメトキシシランと、ジメトキシメチルオクタデシルシランとを当量配合したものを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0057】
(実施例5)
実施例5では、磁性金属粉末として平均粒径35μmであるFe−Si合金粉末を組成物全量に対して体積率が60vol%となるように配合した点、Fe−Si合金粉末の重量に対して0.08wt%のn−デシルトリメトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0058】
(実施例6)
実施例6では、磁性金属粉末としてアモルファス金属粉末を体積率が組成物全量に対して60vol%となるように配合した点、シランカップリング剤としてアモルファス金属粉末の重量に対して0.09wt%のn−デシルトリメトキシシランを用いた点、熱伝導性充填剤として平均粒径5μmのアルミナ粉を組成物全量に対して6vol%配合した点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0059】
(実施例7)
実施例7では、磁性金属粉末として、平均粒径25μmである球状のアモルファス磁性粉末を用いた点以外は、実施例3と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0060】
(実施例8)
実施例8では、磁性金属粉末として、平均粒径25μmである球状のアモルファス磁性粉末を用いた点、シランカップリング剤として、n−デシルメチルジメトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0061】
(実施例9)
実施例9では、磁性金属粉末として、平均粒径25μmである球状のアモルファス磁性粉末を用いた点、シランカップリング剤として、n−オクタデシルメチルジメトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0062】
(実施例10)
実施例10では、実施例5と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0063】
(実施例11)
実施例11では、シランカップリング剤として、n−デシルメチルジメトキシシランを用いた点以外は、実施例5と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0064】
(実施例12)
実施例12では、シランカップリング剤として、n−オクタルデシルメチルジメトキシシランを用いた点以外は、実施例5と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、シランカップリング剤として、n−オクチルトリエトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0066】
(比較例2)
比較例2では、シランカップリング剤として、n−ビニルトリエトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0067】
(比較例3)
比較例3では、シランカップリング剤として、n−ビニルトリメトキシシランを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0068】
(比較例4)
比較例4では、シランカップリング剤として、アルキルアルコキシシロキサンを用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0069】
(比較例5)
比較例5では、シランカップリング剤として、n−オクチルトリエトキシシランを用いた点、磁性金属粉末として平均粒径35μmであるFe−Si合金粉末を組成物全量に対して体積率が60vol%となるように配合した点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0070】
(比較例6)
比較例6では、シランカップリング剤を用いない点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0071】
(比較例7)
比較例7では、シランカップリング剤を用いない点、磁性金属粉末として平均粒径35μmであるFe−Si合金粉末を組成物全量に対して体積率が60vol%となるように配合した点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0072】
(比較例8)
比較例8では、熱伝導性充填剤として平均粒径3μmのアルミナ粉を組成物全量に対して体積率が6vol%となるように配合した点、球状のアモルファス金属粉末の重量に対して0.1wt%のn−オクチルトリエトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0073】
(比較例9)
比較例9では、シランカップリング剤として、球状のアモルファス金属粉末の重量に対して0.27wt%のn−オクチルトリエトキシシランを用いた点以外は、比較例8と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0074】
(比較例10)
比較例10では、シランカップリング剤として、球状のアモルファス金属粉末の重量に対して0.5wt%のn−オクチルトリエトキシシランを用いた点以外は、比較例8と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0075】
(比較例11)
比較例11では、シランカップリング剤として、球状のアモルファス金属粉末の重量に対して0.9wt%のn−オクチルトリエトキシシランを用いた点以外は、比較例8と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0076】
(比較例12)
比較例12では、シランカップリング剤を用いない点以外は、比較例8と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0077】
(比較例13)
比較例13では、磁性金属粉末に代えて、平均粒径5μmである球状のアルミナ粉末を組成物全量に対して体積率が65vol%となるように配合した点、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のビニルトリエトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、実施例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0078】
(比較例14)
比較例14では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0079】
(比較例15)
比較例15では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%の3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0080】
(比較例16)
比較例16では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のアルキルアルコキシシロキサンをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0081】
(比較例17)
比較例17では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のn−デシルトリメトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0082】
(比較例18)
比較例18では、シランカップリング剤を用いない点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0083】
(比較例19)
比較例19では、磁性金属粉末として、平均粒径25μmである球状のアモルファス磁性粉末を用いた点以外は、比較例1と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0084】
(比較例20)
比較例20では、比較例6と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0085】
(比較例21)
比較例21では、比較例5と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0086】
(比較例22)
比較例22では、比較例7と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0087】
(比較例23)
比較例23では、比較例18と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0088】
(比較例24)
比較例24では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のn−オクチルトリエトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0089】
(比較例25)
比較例25では、比較例17と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0090】
(比較例26)
比較例26では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のn−デシルメチルジメトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0091】
(比較例27)
比較例27では、球状のアルミナ粉末の重量に対して0.09wt%のn−オクタデシルメチルジメトキシシランをシランカップリング剤として用いた点以外は、比較例13と同一の条件で電磁波吸収性熱伝導シートを作製した。
【0092】
以上の実施例1〜実施例12及び比較例1〜比較例27の結果を、表1〜表5にまとめる。実施例6、比較例8〜比較例12のエージング試験では、125℃の条件で300時間、各電磁波吸収性熱伝導シートのサンプルに対してエージング処理を行った。各実施例及び比較例において、シートの硬度はASKER社のアスカーゴム硬度計C型と定圧荷重器を使って求めており、シートを重ねて30×50×10mmの形状にして測定した。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例1〜実施例6で得られた電磁波吸収性熱伝導シートにおいて、磁性金属粉末は、体積率が組成物全量に対して50〜80vol%を満たしている。また、シランカップリング剤は、炭素数又は平均炭素数が10〜18の長鎖アルキル基、又はメタクリロキシ基を有機官能基として有する。さらに、シランカップリング剤は、磁性金属粉末の表面にシランカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている。そのため、実施例1〜実施例6で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、比較例6、7で得られた電磁波吸収性熱伝導シートよりも柔軟性が良好であった。
【0095】
また、実施例4で得られた電磁波吸収性熱伝導シートの結果から、2種類のシランカップリング剤を含有し、平均炭素数が14の長鎖アルキル基を有機官能基として用いた場合にも、シートの柔軟性が良好であることが分かる。
【0096】
さらに、実施例6で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、エージング試験前においてシートの柔軟性が良好であり、エージング試験後においてもシートの硬度の増加が抑えられ、柔軟性が良好であった。
【0097】
比較例1〜5で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、シランカップリング剤が、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有していないため、シートの柔軟性が良好ではなかった。また、比較例6及び比較例7で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、シランカップリング剤を含有させていないため、シートの柔軟性が良好ではなかった。
【0098】
【表2】

【0099】
比較例8〜比較例12のサンプルについてエージング前後のシートの硬度を調べた。その結果を表2に示す。カップリング剤が0.1wt%と少ないときは硬度がカップリング剤無しのものとほぼ同じで、カップリング剤の添加による硬化改善が見られない。カップリング剤の量を増やした場合は、硬度が低くなっていくが、高温保持試験後に硬くなっている。これらのサンプルに用いた球状アモルファス金属粉末の比表面積と、カップリング剤の分子量から計算した、アモルファス金属粉末の表面にその単分子層を形成するのに必要なカップリング剤の最低量は0.035wt%なので、理論最低添加量に比べ1桁大きい量のカップリング剤を加えないと柔軟性を改善できず、また、その場合、カップリング剤が過剰に含有されるため未反応部分が時間経過に対し緩やかに反応していくことにより、高温エージング後にシートの硬度が増した。
【0100】
比較例8〜11では、球状アモルファス金属粉末に対して炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤を用いていないため、シートの柔軟性改善と、長期保存での柔軟性の保持を両立することができず、カップリング剤を用いない比較例12と比べて特性の改善がみられない。
【0101】
【表3】

【0102】
比較例13〜比較例17で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、単分子層形成必要量の0.5〜5倍の重量のシランカップリング剤を含有するものの、磁性金属粉末を含有しないため、シートの柔軟性が良好ではなかった。
【0103】
【表4】

【0104】
実施例7〜実施例12で得られた電磁波吸収性熱伝導シートにおいて、磁性金属粉末であるアモルファス金属粉末又はFe−Si合金粉末は、体積率が組成物全量に対して50〜80vol%を満たしている。また、シランカップリング剤は、炭素数又は平均炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有する。さらに、シランカップリング剤は、磁性金属粉末の表面にシランカップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている。そのため、実施例7〜実施例12で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、比較例20又は比較例22で得られた電磁波吸収性熱伝導シートよりも柔軟性が良好であった。
【0105】
比較例19、比較例21で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するシランカップリング剤を用いていないため、比較例20又は比較例22で得られた電磁波吸収性熱伝導シートと比較して、硬度の改善が見られなかった。
【0106】
【表5】

【0107】
比較例24〜比較例27で得られた電磁波吸収性熱伝導シートは、単分子層形成必要量の0.5〜5倍の重量のシランカップリング剤を含有するものの、磁性金属粉末を含有しないため、シートの柔軟性が良好ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムと、カップリング剤と、該カップリング剤で表面処理された磁性金属粉末とを含有し、
上記磁性金属粉末の体積率が50〜80vol%であり、
上記カップリング剤は、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有し、かつ、上記磁性金属粉末の表面に該カップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項2】
上記磁性金属粉末は、アモルファス金属粉末である請求項1記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項3】
上記カップリング剤は、複数のカップリング剤を混合したものであり、有機官能基の平均炭素数が10〜18である請求項1又は2記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項4】
上記カップリング剤は、メトキシ基又はエトキシ基を加水分解基として有する請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項5】
上記カップリング剤は、ジメトキシ基又はジエトキシ基を加水分解基として有する請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項6】
上記磁性金属粉末は、結晶質の金属粉末である請求項1記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項7】
熱伝導性充填剤をさらに含有する請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項8】
シリコーンゴムと、カップリング剤と、該カップリング剤で表面処理されたアモルファス金属粉末とを含有し、
上記アモルファス金属粉末の体積率が50〜80vol%であり、
上記カップリング剤は、メタクリロキシ基を有機官能基として有し、かつ、上記アモルファス金属粉末の表面に該カップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量が含有されている電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項9】
上記カップリング剤は、メトキシ基又はエトキシ基を加水分解基として有する請求項8記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項10】
熱伝導性充填剤をさらに含有する請求項8又は9記載の電磁波吸収性熱伝導シート。
【請求項11】
シリコーンゴムと、炭素数が10〜18の長鎖アルキル基を有機官能基として有するカップリング剤と、磁性金属粉末とを混合して攪拌する攪拌工程と、
上記攪拌工程で攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる硬化工程とを有し、
上記攪拌工程では、上記磁性金属粉末の体積率が50〜80vol%となるように該磁性金属粉末を含有させるとともに、該磁性金属粉末の表面に該カップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量の該カップリング剤を含有させる電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法。
【請求項12】
シリコーンゴムと、メタクリロキシ基を有機官能基として有するカップリング剤と、アモルファス金属粉末とを混合し、混合した混合物を攪拌する攪拌工程と、
上記攪拌工程で攪拌された混合物をシート形状に成型して硬化させる硬化工程とを有し、
上記攪拌工程では、上記アモルファス金属粉末の体積率が50〜80vol%となるように該アモルファス金属粉末を含有させるとともに、該アモルファス金属粉末の表面に該カップリング剤の単分子層を形成するのに必要な量の0.5〜5倍の重量の該カップリング剤を含有させる電磁波吸収性熱伝導シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−44084(P2012−44084A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185890(P2010−185890)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】