説明

電磁波抑制紙

【課題】本発明の目的は、優れた電磁波吸収性能を有し、耐熱性に優れ、電磁波抑制効果を低下させることのない用途に使用でき、更に難燃性に優れ、ハロゲンフリーの電磁波抑制紙を提供する。
【解決手段】本発明の電磁波抑制紙は、銅合金とTgが50℃以下で分子量が30万〜100万の超高分子量のアクリル系樹脂AとTgが50℃以上のアクリル系樹脂Bとを含有し、アクリル系樹脂Bが、銅合金及びアクリル系樹脂Aの合計固形分換算100質量部に対し、5〜50質量部混合された導電性樹脂層が難燃紙基材の少なくとも片面に20〜100μmで塗工され、その上にノンハロゲン系難燃剤を含んだオーバーコート層が設けられ、この層とは反対面にノンハロゲン系難燃剤を含んだ粘着剤層が設けられている。そして、UL94VTM−0を満足し、所定条件の加熱処理後の2.4543GHzでの電波吸収率及び回路への影響度が−6dB以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリーであって、加工、取扱いが容易で電磁波抑制性(電磁波シールド性)に優れ、アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)規格においてUL94VTM−0の高度の難燃性を有し、かつ、85℃の使用温度においても性能を維持する電磁波抑制紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でデジタル化が進み、身の回りにおいて、各種の情報通信、医療機器、精密機器などの制御分野において、また、電化製品、自動車などの日常生活品の分野においても高速高集積化された電子機器が広く使用されている。特にコンピュータや携帯電話、薄型テレビなど電子機器の性能が飛躍的に向上するにつれて、各種電子機器から漏洩する電磁波は他の電子機器の誤作動だけでなく、人々の健康にも悪影響を与えていると言われており、電磁波障害対策が必要不可欠となってきている。
【0003】
この対策として、従来、これらの電波や電磁波の反射を防ぎ、電磁波のエネルギーを熱のエネルギーにかえる多種多様な電磁波吸収材が用いられてきた。なお、金属板は、厚みの如何に拘らず一般にその表面で電磁波を反射してしまい、吸収能力はない。その中で、シート状の電磁波吸収体がデジタル機器などに多く使われている。
【0004】
電磁波吸収体の基材(母材)には、プラスチック、金属、ゴム、フィルム、繊維、それらの複合体などが使用されているが、重い・厚い・加工が困難などの問題点がある。そこで出願人は、紙をベースとし、紙の表面に銅系導電性塗料を塗布した軽い・薄い・加工性の良好な電磁波抑制体を検討している。
【0005】
導電性塗料としては、超高分子量の特殊ポリマーを主体に、銅及び特殊合金粒子を混合した導電性材料がある。しかしながら、銅系導電性塗料は、熱、温度などの環境で酸化されやすく、このため、耐環境性及び導電性の劣化(電磁波吸収性能の低下)を起こしやすいという問題点がある。かかる問題点は、電磁波吸収体の使用される温度が予期しなかった高い温度に達し、常温では高かった吸収性能を低下させる。例えば、パソコンのような電子機器類において、処理データ量の増大に伴うCPUの負荷増大時にCPUの発熱量が増加する。自動車の制御系統に多用されているマイコンなどは、使用されているところの温度そのものが上昇する。高温での電磁波吸収性能の低下は、マイコンの正常な動作を危うくするから安全上深刻な問題である。
【0006】
そこで、耐環境性及び導電性の劣化(電磁波吸収性能の低下)を起こしにくい電磁波抑制体が求められている。例えば、紙基材の表面に、金属フィラーと超高分子量のポリエステル系共重合体を主体として含有する導電性塗料層を有し、前記導電性塗料層の上にオーバーコート層を有することを特徴とする全体の厚さが0.3mm以下である電磁波抑制紙が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、難燃剤を含有した基材の少なくとも片面に、金属フィラーと超高分子量のポリエステル系共重合体を主体として含有する導電性塗料層を有し、前記導電性塗料層の上に、耐熱性又は難燃性を有するオーバーコート層が設けられ、かつ、全体の厚さが0.3mm以下である電磁波抑制紙が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。また、ゴムのマトリクス中に軟磁性材料の粉末を分散させるとともにハロゲンフリー難燃剤を添加した難燃性電磁波抑制シートが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。また、有機系結合剤に、扁平軟磁性金属が分散状態で内包されていることを特徴とする難燃性磁性シートがある(例えば、特許文献4を参照。)。また、有機系結合剤とカーボン粉末と難燃剤とからなることを特徴とする電磁波吸収体が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。さらに、有機系結合剤中にホウ素固溶カーボンブラックと軟磁性材料とを含有することを特徴とする電磁波吸収体が提案されている(例えば、特許文献6を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2006‐222197号公報
【特許文献2】特開2007‐059795号公報
【特許文献3】特開2003‐324299号公報
【特許文献4】特開2006‐37078号公報
【特許文献5】特開2006‐41344号公報
【特許文献6】特開2006‐245472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属フィラーと耐熱性又は難燃性を有するオーバーコート層に前述のような処理を施すことによって、耐熱性、耐環境性及び導電性の劣化の防止についてある程度の効果を得ることができる。しかしながら、難燃剤の効果が少なく、銅粉の酸化による防錆性が良好でなく、難燃性、導電性塗料の導電性及び耐熱性が十分でない。特に難燃性と電磁波吸収性能の低下が著しかった。
【0009】
本発明の課題は、電磁波抑制紙が通常所望されるレベルの電磁波吸収性能を有していて、85℃の環境条件下での耐熱性に優れ、しかもその電磁波抑制効果を低下させることのない用途に使用できる上、更に電磁波抑制紙の難燃性がUL規格においてUL94VTM−0の高度のレベルに達し、かつ、ハロゲンフリーである電磁波抑制紙を提供することにある。すなわち、本発明は、前述の背景に基づきなされたものであり、その目的とするところは、コンピュータをはじめとする各種電子機器などに使用される電磁波抑制紙を対象とし、通常の紙の製造と同様の工程によって加工することができ、電子部品のクリアランスに差し込むことができるほど薄く、かつ、軽量で、その一方で電磁波に対して所定以上の優れた電磁波抑制効果を併せもつとともに、前記機器部品に不可欠な難燃性を有した電磁波抑制紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題に着目し、紙基材に導電性塗料を塗工し、更にオーバーコート層と粘着剤層にハロゲンフリーの難燃剤を含有させるという検討を重ね、前記課題を解決しようとするものである。すなわち、本発明に係る電磁波抑制紙は、次に示す構成をとる。
【0011】
本発明に係る電磁波抑制紙は、銅を主成分とした銅合金と、ガラス転移温度(以下、「Tg」とも表記する。)が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂と、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂とを含有し、かつ、該ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、前記銅合金及び前記ガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、5〜50質量部混合された導電性樹脂層が、難燃紙基材の少なくとも片面に塗工されており、前記導電性樹脂層上に、ノンハロゲン系難燃剤を含んだオーバーコート層が設けられており、該オーバーコート層を設けた表面の裏側にノンハロゲン系難燃剤を含んだ粘着剤層が設けられており、かつ、UL規格においてUL94VTM−0を満足し、かつ、近傍界用電波吸収材料測定装置であるネットワークアナライザーで求めた85℃、1000時間加熱処理後の周波数2.4543GHzでの電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]が−6dB以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電磁波抑制紙では、前記オーバーコート層は、ガラス転移温度が−20℃以下のポリウレタン系樹脂100質量部に対して、硬化剤を5〜30質量部、ノンハロゲン系難燃剤を50〜300質量部含有しており、かつ、前記オーバーコート層の塗工量が乾燥質量として20g/mを超えて50g/m以下であることが好ましい。高度な難燃性を有すると共に折れ割れの発生がしがたい。
【0013】
本発明に係る電磁波抑制紙では、前記粘着剤層は、粘着剤100質量部に対して、ノンハロゲン系難燃剤を50〜300質量部を含有しており、かつ、前記粘着剤層の塗工量が乾燥質量として10〜50g/mであることが好ましい。高度な難燃性を有する。
【0014】
本発明に係る電磁波抑制紙では、前記粘着剤層の表面に剥離紙が貼付されていることが好ましい。剥離紙を貼付することで、ラベル用紙の形態で電磁波抑制紙を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電磁波抑制紙は、通常所望されるレベルの電磁波吸収性能を有し、同時に85℃の環境条件下での耐熱性に優れ、しかもその電磁波抑制効果を低下させることのない用途に使用できる。さらに、UL規格においてUL94VTM−0の高度のレベルの難燃性を有し、かつ、ハロゲンフリーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、実施形態は本発明の構成の例であり、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。また、発明の効果を奏する限り、実施形態を変形してもよい。
【0017】
本実施形態に係る電磁波抑制紙は、難燃紙基材の少なくとも片面に、銅を主成分とした銅合金と、ガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂と、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂とを含有する導電性樹脂層が塗工されている。その上にノンハロゲン系難燃剤を含んだオーバーコート層を塗工し、反対面にノンハロゲン系難燃剤を含んだ粘着剤層を塗工した電磁波抑制紙である。
【0018】
(難燃紙基材)
本実施形態に用いられる紙基材としては、広葉樹材若しくは針葉樹材を蒸解して得られる未晒若しくは晒化学パルプ、若しくは、GP、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、若しくは、脱墨古紙パルプから選ばれたパルプを単独で又は複数のパルプを混合し、公知の湿式抄紙機において単層又は多層で抄紙された通常坪量が30〜250g/m程度の紙が用いられる。抄紙方法は、特に限定されず酸性紙、中性紙又はアルカリ性紙のいずれであってもよい。これらの紙基材にノンハロゲン系難燃剤を塗工又は含浸したものが本実施形態で用いられる難燃紙基材である。例えば、リン酸グアニジンなどのグアニジン系難燃剤を塗工又は含浸する。その塗工量又は含浸量は、乾燥質量換算で10〜30g/mである。さらには、不燃紙、ガラスペーパー(ガラス繊維による紙状構造体)なども、本実施形態のための紙基材として使用することができる。
【0019】
(導電性樹脂層の形成)
導電性樹脂層を形成するための導電性塗料は、銅を主成分とした銅合金とガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂を主体とした導電性塗料にガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂を混合した塗工液である。
【0020】
銅を主成分とした銅合金は、金属フィラーの形態で導電性塗料に含まれている。銅を主成分とした銅合金の組成は、主成分である銅に対し、アルミニウムを2〜10質量%、ニッケルを2〜5質量%、ボロンを0.001〜0.5質量%、鉄を0.5〜5質量%、マンガンを0.1〜3質量%、チタンを0.001〜1質量%を含有した組成である。
【0021】
導電性塗料に含有されるアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万の超高分子量を有する。ガラス転移温度が50℃を超えると、塗工層が硬くなり、折り曲げると割れてしまうという問題がある。また、分子量が30万未満であると、金属フィラーがリビングポリマーの立体規則性をもった3次元のグラフト型に取り込まれにくくなり、酸化や劣化されやすくなるという問題があり、一方、分子量が100万を超えるとレオロジー的な性能が劣り、導電性塗料の流動性が悪化するという問題もある。
【0022】
導電性塗料に更に添加することとなるアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が50℃以上である。前記の導電性塗料に、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂を混合することによって、導電性樹脂層の耐熱温度が改善され、銅を主成分とした銅合金を梯子状の高機能構造に取り込み、酸化や劣化を防止している。ガラス転移温度が50℃未満のアクリル系樹脂を混合しても、これらの効果は不十分となる。
【0023】
導電性塗料中の金属含有量は、ガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂100質量部に対し、50〜500質量部が好ましい。金属含有量が500質量部を超えると、柔軟性が阻害され、50質量部未満では電磁波抑制効果が十分に発揮されない場合がある。
【0024】
導電性樹脂層は、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂を固形分換算5〜50質量部添加した組成からなる。導電性樹脂層の導電性と耐熱性のいずれも十分に満足させることができる。ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂を5質量部未満混合しても、耐熱性が十分に得られない。ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂を、50質量部を超えて混合しても、電磁波抑制効果が十分に得られない。
【0025】
なお、本実施形態の電磁波抑制紙は、前記塗工液を用いる方法のほか、次の形態であってもよい。すなわち、導電性樹脂層は、基材の少なくとも片面に、銅を主成分とした銅合金とガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂とを主体とした導電性塗料を塗工して乾燥した後、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂の含有液を更に塗工して乾燥することによって形成された形態である。このとき、二つの乾燥工程のいずれも、後述する塗工液の塗工後の乾燥方式の場合と同様に、乾燥温度は電磁波抑制効果を考慮すると20〜70℃であることが好ましく、50〜60℃であることが更に好ましい。70℃を超えると、超高分子量のアクリル系樹脂が分解するので電磁波抑制効果が悪化する。20℃未満では、乾燥時間がかかり生産性が劣る。また、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂の含有液は、前記導電性塗料の塗工量を固形分換算で100質量部とすると、固形分換算で5〜50質量部を塗工することが好ましい。
【0026】
本実施形態では、前記のような塗布組成物の導電性塗料を紙基材上へ塗工するには公知のコーター、例えばパイプコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、スプレーコーターなどから選ばれたコーターを用いて、一層又は多層に分けて塗工される。なお、導電性樹脂層は、難燃性基材の少なくとも片面に設けられる。
【0027】
導電性樹脂層の厚さは、好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは50〜80μmであり、さらに好ましくは60〜70μmである。20μm未満であると、電磁波抑制効果が劣る場合がある。100μmを超えると、生産性、コスト的に好ましくない。
【0028】
(オーバーコート層の形成)
本実施形態では導電性樹脂層面のざらつき、折れ割れ性、耐熱性及び難燃性の改善の目的で、導電性樹脂層上に難燃剤を含有したオーバーコート層を設ける。本実施形態で導電性樹脂層上に塗工されるオーバーコート層用の塗布組成物に含ませる樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シアリルフタレート樹脂、フラン樹脂などである。より好ましくは耐熱性を有しているものが好ましい。オーバーコート層用の塗布組成物に、シリカなどの無機系化合物を含ませてもよい。
【0029】
本実施形態でオーバーコート層用の塗料に添加する難燃剤としては、臭素、塩素などのハロゲン化合物からなる難燃剤では、燃焼条件によってはダイオキシンなどの有害物を発生する可能性があるので、ノンハロゲン系難燃剤が使用される。ノンハロゲン系難燃剤としては、無機系化合物又はリン及び/又は窒素含有の有機系化合物である一般に市販されているものであり、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、亜リン酸アルミニウムなどの金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸亜鉛などのホウ素系化合物等の無機化合物、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、アミノ基変性リン酸エステル、又は水酸基含有リン酸エステルなどのリン系化合物、メラミン又はメラミンシアヌレート化合物、メラミンリン酸塩、メラミンボレートなどのメラミン系誘導体、グアニジン若しくはスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジンなどのグアニジン系誘導体などのリン及び/又は窒素含有の有機系化合物が挙げられるが、これら例示化合物に限定されるものではない。これらのノンハロゲン系難燃性化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
オーバーコート層中の難燃剤配合量は、塗工層中のバインダー(例えば、Tg=−20℃以下のポリウレタン系樹脂)100質量%(乾燥質量)に対し、50〜300質量%(乾燥質量)が好ましく、より好ましくは100〜200質量%(乾燥質量)である。難燃剤配合が300質量%(乾燥質量)を超えると、コストアップとなる。また、50質量%未満であると、難燃効果が十分に発揮されない。
【0031】
オーバーコート層中の硬化剤配合量は、塗工層中のバインダー(例えば、Tg=−20℃以下のポリウレタン系樹脂)100質量%(乾燥質量)に対し、5〜30質量%(乾燥質量)が好ましく、より好ましくは5〜20質量%(乾燥質量)である。硬化剤配合が30質量%(乾燥質量)を超えると、コストアップとなる。また、5質量%未満であると、耐熱効果が十分に発揮されない。
【0032】
本実施形態では、前記のような塗布組成物のオーバーコート用樹脂を導電性樹脂層上へ塗工するには、導電性樹脂層形成の塗工方式と同様である。
【0033】
オーバーコート層の塗工量は、20g/mを超えて50g/m以下であることが好ましい。オーバーコート層の塗工量が乾燥質量として20g/m以下であると、導電性樹脂層が燃えて、難燃性の改善効果がないという問題がある。50g/mを超えると、必要以上の添加量となってコストアップの問題がある。
【0034】
オーバーコート層用の塗布組成物の乾燥方式は、特に限定されるものではなく、次に示す乾燥方式、すなわち、熱風乾燥、赤外乾燥、常温乾燥などが挙げられるが、その乾燥効率から赤外乾燥、熱風乾燥が好ましい。なお、乾燥温度は、電磁波抑制効果を考慮すると20〜70℃であることが好ましく、50〜60℃であることがさらに好ましい。70℃を超えると、超高分子量のアクリル系樹脂が分解されて電磁波抑制効果が悪化する。20℃未満であると、乾燥時間がかかり生産性が悪い。
【0035】
(粘着シートの形成)
粘着剤層は、導電性樹脂層を設けた表面の裏面側に設けられ、粘着シートであることが好ましい。粘着シートは、家庭用、商業用、工業用など、非常に広範囲に使用される。本実施形態の具体的な利用方法としては、各種電気機器への電磁波抑制ラベルなどである。粘着シートの構成は、支持体と剥離紙との間に粘着剤層を設けたものであり、支持体には本実施形態の、導電性樹脂層及びオーバーコート層を設けた紙基材が使用される。
【0036】
一方、本実施形態において、粘着剤層の表面に剥離紙が貼付されていることが好ましい。剥離紙としては、上質紙などの非塗工紙、一般コート紙、アート紙などの塗工紙、グラシン紙、ポリエチレン樹脂若しくはポリエチレンテレフタレート樹脂などを用いたフィルム又はフィルムラミネート紙が使用される。目的に応じて、剥離剤としてシリコーン樹脂、フッ素樹脂などを、乾燥重量で0.1〜3g/m程度を塗工し、乾燥したものを使用できる。
【0037】
本実施形態における粘着剤層に使用される粘着剤ポリマーとしては、天然ゴム系、合成ゴム系、ポリウレタン系、アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル‐アクリル酸エステルコポリマー、酢酸ビニル‐エチレンコポリマーなどの各種粘着剤が目的に応じて使用される。粘着剤層に含まれる難燃剤は、ノンハロゲン系難燃剤が好ましい。
【0038】
粘着剤層中の難燃剤配合量は、塗工層中のバインダー(例えば、Tg=−20℃以下のポリウレタン系樹脂)100質量%(乾燥質量)に対し、50〜300質量%(乾燥質量)が好ましく、より好ましくは100〜150質量%(乾燥質量)である。難燃剤配合が300質量%(乾燥質量)を超えると、コストアップとなる。また、50質量%未満であると、難燃効果が十分に発揮されない。粘着剤層の塗工量は、10〜50g/mであることが好ましい。粘着剤層の塗工量が乾燥質量として10g/m未満であると、粘着強度が弱いという問題がある。また、50g/mを超えると、コストアップの問題がある。
【0039】
本実施形態に係る電磁波抑制紙は、UL規格においてUL94VTM−0を満足し、かつ、近傍界用電波吸収材料測定装置(Sパラメーター法(S−21)に従う。)であるネットワークアナライザー(例えば、アンリツ社製37シリーズ)で求めた85℃、1000時間加熱処理後の周波数2.4543GHzでの電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]が−6dB以下である。−6dBを超えると、電磁波抑制率が75%未満となるので効果が薄い。また、基材、オーバーコート層、粘着剤層及び剥離紙層が設けられた全層の厚さが0.3mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。なお、物性の測定方法は、次のとおりである。
【0041】
(実施例1)
(難燃紙基材の作製)
ベーキングペーパー原紙(北越製紙社製:坪量49.9g/m、厚さ0.081mm、密度0.62g/cm)に難燃剤としてリン酸グラニジン誘導体(商品名:ビゴールNo.415、大京化学社製)を基材絶乾重量100質量部に対して15質量部含浸後、熱風乾燥機にて120℃で2分乾燥した。
【0042】
(導電性樹脂層の形成)
その後、含浸基材の片面に導電性塗料(商品名:エコゴールドPLS−200−US、固形分濃度62%、ヘルツ化学社製)とアクリル系樹脂(商品名:アルマテックスL1092‐1、Tg=60℃、固形分濃度50.8%、三井化学社製)とを80:20(荷姿質量比)の配合割合で混合し、乾燥後の導電性樹脂層の膜厚が70μmになるように塗工後、熱風乾燥機にて60℃で1分乾燥した。なお、前記導電性塗料は、銅を主成分とした銅合金とガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂とを主体としている。なお、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、20.5質量部混合されている。
【0043】
(オーバーコート層の形成)
さらに、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:18.56:51.6の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として30g/mとなるように塗工後、熱風乾燥機にて60℃で1分乾燥した。ここで酢酸エチルは、オーバーコート層用塗料の粘度調節剤である。
【0044】
次に、導電性樹脂層を設けた面の裏側にアクリル系粘着剤(商品名:BPW6111、固形分濃度%、東洋インキ社製)と硬化剤(商品名:BXX4867、固形分濃度%、東洋インキ社製)と難燃剤(商品名:ポリセーフNH−12B、窒素含有リン酸塩化合物、固形分濃度%、味の素ファインテクノ社製)と難燃剤(商品名:ビゴールFV−3020、リン・窒素系化合物、固形分濃度%、味の素ファインテクノ社製)と難燃剤(商品名:レオフォス65、リン酸トリアリールイソプロピル化物、固形分濃度85%、味の素ファインテクノ社製)とを100:2.5:30:70:10の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として23g/mとなるように塗工後、熱風乾燥機にて60℃で1分乾燥し、実施例1の電磁波抑制紙を得た。
【0045】
[電磁波抑制紙の物性評価]
このようにして得られた電磁波抑制紙において、導電性樹脂層の厚さ、電磁波抑制性、耐熱性の評価は、23℃、50%RHで調湿後、次の方法に準拠して行い、表1に示した。
【0046】
[電磁波抑制性]
近傍界用電波吸収材料測定装置であるネットワークアナライザー(アンリツ37シリーズ)を用いて、S−パラメーター法にて周波数2.4543GHzでの電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]を測定した。電波吸収率[dB]、回路への影響度[dB]ともに−6dB以下ならば、電磁波抑制紙として使えるレベルと判断される。また、−10dB(90%の電磁波抑制率)ならば、電波吸収率[dB]が良好であり、回路への影響度[dB]もないと判断される(90%の電磁波抑制率)。さらに、−20dBであれば、99%の、−30dBであれば、99.9%の電磁波抑制率となる。
評価基準は、次のとおりである。
×:電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]ともに−6dBより大きく、電磁波
抑制紙として不可。
△:電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]ともに−6dB〜−10dBであり、電磁波抑制紙として使えるレベルである。
○:電磁波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]ともに−10dB未満であり、電磁波抑制紙として極めて良好なレベルである。
【0047】
[耐熱性]
乾燥機中で85℃、1000時間加熱処理後の周波数2.4543GHzでの電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]を前記の測定法にて評価した。
【0048】
[難燃性]
安全規格UL(Underwriters Laboratories Inc.)94「Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances,fifth edition,(Edition Date October 29,1996)」薄手材料垂直燃焼試験(VTM−0〜VTM−2)によって評価した。難燃性が得られなかった場合は、表1において「×」と表記した。
【0049】
[オーバーコート層の塗工面の表面性]
オーバーコート層の塗工面を指で触り、触感を評価した。
○:塗工面にザラツキ感が無く、実用レベルである。
×:塗工面にザラツキ感が有り、実用に耐えない。
【0050】
[オーバーコート層の折れ割れ性]
オーバーコート層の塗工面を二つ折に折り曲げた後、元に戻して、オーバーコート層の折れ割れの発生の有無を調べた。
○:オーバーコート層の塗工面に折れ割れの発生が無く、実用レベルである。
×:オーバーコート層の塗工面に折れ割れの発生が有り、実用に耐えない。
【0051】
(実施例2)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:12.37:36.5の配合割合とした以外は実施例1と同様にして実施例2の電磁波抑制紙を得た。
【0052】
(実施例3)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:7.42:24.5の配合割合とした以外は実施例1と同様にして実施例3の電磁波抑制紙を得た。
【0053】
(実施例4)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:0.75:18.56:49.4の配合割合とした以外は実施例1と同様にして実施例4の電磁波抑制紙を得た。
【0054】
(実施例5)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.24:18.56:50.5の配合割合とした以外は実施例1と同様にして実施例5の電磁波抑制紙を得た。
【0055】
(実施例6)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上のポリウレタン系樹脂をTg=−50℃のニッポラン5120(日本ポリウレタン工業社製、固形分濃度30.1%、日本ポリウレタン工業社製)とした以外は実施例1と同様にして実施例6の電磁波抑制紙を得た。
【0056】
(実施例7)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:23.51:63.5の配合割合とした以外は実施例1と同様にして実施例7の電磁波抑制紙を得た。
【0057】
(実施例8)
導電性樹脂層の形成において、導電性塗料(商品名:エコゴールドPLS−200−US、固形分濃度62%、ヘルツ化学社製)とアクリル系樹脂(商品名:アルマテックスL1092‐1、Tg=60℃、固形分濃度50.8%、三井化学社製)とを90:10(荷姿質量比)の配合割合で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例8の電磁波抑制紙を得た。なお、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、9.1質量部添加されている。
【0058】
(実施例9)
導電性樹脂層の形成において、導電性塗料(商品名:エコゴールドPLS−200−US、固形分濃度62%、ヘルツ化学社製)とアクリル系樹脂(商品名:アルマテックスL1092‐1、Tg=60℃、固形分濃度50.8%、三井化学社製)とを65:35(荷姿質量比)の配合割合で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例9の電磁波抑制紙を得た。なお、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、44.1質量部添加されている。
【0059】
(比較例1)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:3.71:15.5の配合割合とした以外は実施例1と同様にして比較例1の電磁波抑制紙を得た。
【0060】
(比較例2)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:1.24:9.4の配合割合とした以外は実施例1と同様にして比較例2の電磁波抑制紙を得た。
【0061】
(比較例3)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:0.37:7.42:21.3の配合割合とした以外は実施例1と同様にして比較例3の電磁波抑制紙を得た。
【0062】
(比較例4)
導電性樹脂層を設けた側とは反対の裏面に、アクリル系粘着剤(商品名:商品名BPW6111、固形分濃度60.5%、東洋インキ社製)と硬化剤(商品名:商品名BXX4867、固形分濃度100%、東洋インキ社製)と難燃剤(商品名:ポリセーフNH−12B、窒素含有リン酸塩化合物、固形分濃度100%、味の素ファインテクノ社製)と難燃剤(商品名:ビゴールFV−3020、リン・窒素系化合物、固形分濃度45%、大京化学社製)と難燃剤(商品名:レオフォス65、リン酸トリアリールイソプロピル化物、固形分濃度85%、味の素ファインテクノ社製)とを100:2.5:10:10:10の配合割合とした以外は実施例1と同様にして比較例4の電磁波抑制紙を得た。
【0063】
(比較例5)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.24:18.56:50.5の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として20g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして比較例5の電磁波抑制紙を得た。
【0064】
(比較例6)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:18.56:52.0の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として60g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして比較例6の電磁波抑制紙を得た。
【0065】
(比較例7)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:1.85:23.51:63.5の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として10g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして比較例7の電磁波抑制紙を得た。
【0066】
(比較例8)
オーバーコート層の形成において、導電性樹脂層上にポリウレタン系樹脂(商品名:ニッポラン5196、Tg=−27℃、固形分濃度29.7%、日本ポリウレタン工業社製)と硬化剤(商品名:コロネートHL、固形分濃度74%、日本ポリウレタン工業社製)と難燃剤(商品名:SP703H、リン酸エステルアミド系、固形分濃度100%、四国化成工業社製)と酢酸エチルとを12.375:0:18.56:47.7の割合で混合し、塗工量が乾燥質量として30g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして比較例8の電磁波抑制紙を得た。
【0067】
(比較例9)
導電性樹脂層の形成において、導電性塗料(商品名:エコゴールドPLS−200−US、固形分濃度62%、ヘルツ化学社製)とアクリル系樹脂(商品名:アルマテックスL1092‐1、Tg=60℃、固形分濃度50.8%、三井化学社製)とを95:5(荷姿質量比)の配合割合で混合した以外は実施例1と同様にして、比較例9の電磁波抑制紙を得た。なお、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、4.3質量部添加されている。
【0068】
(比較例10)
導電性樹脂層の形成において、導電性塗料(商品名:エコゴールドPLS−200−US、固形分濃度62%、ヘルツ化学社製)とアクリル系樹脂(商品名:アルマテックスL1092‐1、Tg=60℃、固形分濃度50.8%、三井化学社製)とを60:40(荷姿質量比)の配合割合で混合した以外は実施例1と同様にして、比較例10の電磁波抑制紙を得た。なお、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、54.6質量部添加されている。
【0069】

【表1】

【0070】
実施例1〜9は、電磁波抑制性、その耐熱性、難燃性、オーバーコート層の表面性及び折れ割れ性のいずれも良好であった。しかし、比較例1及び2は、難燃剤の含有量が少なかったため、難燃性がVTM−0を満たさなかった。比較例3は、硬化剤の添加量が少なかったため、電磁波吸収率が悪く、耐熱性も劣った。比較例4は、粘着剤層の難燃剤が少なかったため、難燃性がVTM−0を満たさなかった。比較例5及び7は、オーバーコート層の塗工量が少ないため、電磁波吸収性が悪く、更に耐熱性及び難燃性も劣った。比較例7は、更にオーバーコート層の表面性が劣った。比較例6は、オーバーコート層の塗工量が多かったため、電磁波吸収性が悪く、更に耐熱性及び折れ割れ性も劣った。比較例8は、硬化剤を添加しなかったため、耐熱性が劣った。比較例9は、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、5質量部未満と少なく添加されているため、耐熱性が十分に得られなかった。比較例10は、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、銅合金及びガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、50質量部を超えて多く添加されているため、電磁波抑制効果が十分に得られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とした銅合金と、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂と、ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂とを含有し、かつ、該ガラス転移温度が50℃以上のアクリル系樹脂が、前記銅合金及び前記ガラス転移温度が50℃以下で分子量が30万〜100万である超高分子量のアクリル系樹脂の合計固形分換算100質量部に対して、5〜50質量部混合された導電性樹脂層が、難燃紙基材の少なくとも片面に塗工されており、
前記導電性樹脂層上に、ノンハロゲン系難燃剤を含んだオーバーコート層が設けられており、該オーバーコート層を設けた表面の裏側にノンハロゲン系難燃剤を含んだ粘着剤層が設けられており、かつ、アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)規格においてUL94VTM−0を満足し、かつ、近傍界用電波吸収材料測定装置であるネットワークアナライザーで求めた85℃、1000時間加熱処理後の周波数2.4543GHzでの電波吸収率[dB]及び回路への影響度[dB]が−6dB以下であることを特徴とする電磁波抑制紙。
【請求項2】
前記オーバーコート層は、ガラス転移温度が−20℃以下のポリウレタン系樹脂100質量部に対して、硬化剤を5〜30質量部、ノンハロゲン系難燃剤を50〜300質量部含有しており、かつ、前記オーバーコート層の塗工量が乾燥質量として20g/mを超えて50g/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制紙。
【請求項3】
前記粘着剤層は、粘着剤100質量部に対して、ノンハロゲン系難燃剤を50〜300質量部を含有しており、かつ、前記粘着剤層の塗工量が乾燥質量として10〜50g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波抑制紙。
【請求項4】
前記粘着剤層の表面に剥離紙が貼付されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電磁波抑制紙。


【公開番号】特開2009−267010(P2009−267010A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113626(P2008−113626)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(504452837)ナノジョイン株式会社 (11)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】