説明

電磁波検知装置、携帯機器、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法並びにプログラム

【課題】高価なインフラ設備を必要とすることなく、電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知することができる電磁波検知装置、携帯機器、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法並びにプログラムを提供すること。
【解決手段】電磁波検知装置100は、車両から発生する電磁波を検知するアンテナ/センサ部110、第1の演算処理部120、及び判定部140を備える。周波数解析部123は、アンテナ/センサ部110からの出力信号にフィルタ部121で帯域制限し、AD変換部122でアナログ・デジタル変換した信号に対して、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する。判定部140は、第1の演算処理部120の演算処理結果に基づいて、電磁波の発生主体が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知する電磁波検知装置、携帯機器、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
COが温暖化に及ぼす影響が明確になるにつれ、地球環境保護の観点からガソリンエンジンのCO排出量が大きな問題になっている。このため、近年、CO排出量が少ないハイブリッド車に人気が集まり、将来的には電気自動車が主流になるであろうと思われる。
【0003】
ハイブリッド車が一般に普及に伴い、新たな問題が発生している。歩行者等は、多くは車両音(走行音、エンジン音など)により車両の接近を認知している。ところが、ハイブリッド車は、低速モードでは、エンジンではなく、モータの動力で走行する。この場合、車両音はきわめて低く、周囲の騒音が比較的静かな時でも、歩行者等が気づかない場合がある。ハイブリッド車は、電気自動車の音が静か過ぎて危険との声が歩行者等、特に視覚障害者などから聞かれるようになっている。
【0004】
このような問題点を解決するため、従来、以下のような3つの方法が提案されている。
【0005】
(1)静音走行時に、音などで周囲の人に車両の接近を知らせる(特許文献1参照)。
【0006】
(2)警報音が対象とする歩行者等の存在する方向のみに聞こえるように、指向性のある警報音を用いる(特許文献2参照)。
【0007】
(3)車両から電波などを発信し、それを歩行者等の携帯機器で受信し、携帯機器が振動、音などで歩行者等に危険を知らせる(特許文献3参照)。
【0008】
また、特許文献4乃至6には、車両間の衝突防止システムが記載されている。特許文献4乃至6に記載のシステムは、交差点において右折車両から死角となる死角移動体の情報を検知して運転者に提供する。このシステムは、右折車両の運転者が死角移動体を正確に把握できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−120283号公報
【特許文献2】特開2008−114613号公報
【特許文献3】特開2008−129631号公報
【特許文献4】特開2008−305151号公報
【特許文献5】特開2008−041058号公報
【特許文献6】特開2006−215911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の衝突防止システムにあっては、以下の課題がある。
【0011】
(1)特許文献1記載の報知装置では、閾値以上の走行速度で走行している高速走行時に録音された環境音が、走行速度が閾値未満である走行中に再生出力される。警報音が対象とする歩行者等が限定されず、必要が無い歩行者等までに不要な音が届き、不快感を与えてしまう可能性がある。
【0012】
(2)特許文献2記載のクラクション制御装置では、車両の運転者により指向性クラクションの鳴動指示がされると、車両の周辺状況に基づいて警報音の対象を特定し、特定された対象が存在する方向のみに指向性クラクションが鳴動される。T字路や十字路の建物の影から歩行者等が飛び出してくるような場合に対しては、この方法では有効性が十分でない可能性がある。T字路や十字路の建物の影から飛び出してくる歩行者等はハイブリッド車、電気自動車の音が静かなため、設置されているミラーを見ずに飛び出してくる可能性がある。
【0013】
(3)特許文献3記載の車載用走行安全システムでは、警報出力を行うべき場所あるいは相手である歩行者等に確実に警報トリガ電波を発信可能にしようとする。しかし、この車載用走行安全システムは、歩行者等全員に携帯機器を持たせる必要があり、インフラコストが膨大になる。また、全国の「注意対象道路区間」を検討して、車載用ナビゲーション装置向けのデータベースを構築する必要があり、データベースを構築が膨大である。さらに、歩行者等の進行方向1つをとっても、歩行者等の行動は気まぐれであり、判断するのは難しい。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高価なインフラ設備を必要とすることなく、電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知することができる電磁波検知装置、携帯機器、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電磁波検知装置は、車両から発生する電磁波を検知する電磁波検知手段と、検知された電磁波に、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する周波数解析手段と、前記周波数解析手段による解析結果に基づいて、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定する判定手段と、を備える構成を採る。
【0016】
本発明の携帯機器は、上記電磁波検知装置と、前記電磁波検知装置が、電気自動車又はハイブリッド車であると判定したとき、警報を発する警報装置と、を備える構成を採る。
【0017】
本発明の電気自動車及びハイブリッド車の判定方法は、車両から発生する電磁波を検知するステップと、検知された電磁波に、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析するステップと、前記解析結果に基づいて、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定するステップとを有する。
【0018】
また他の観点から、本発明は、上記電気自動車及びハイブリッド車の判定方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高価なインフラ設備を必要とすることなく、電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知することができ、移動体との衝突を防ぎ、交通事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電磁波検知装置の構成を示すブロック図
【図2】電気自動車の電波ノイズのスペクトルを示す図
【図3】電気自動車の電波ノイズの減衰特性を示す図
【図4】電気自動車の強度平面分布を示す図
【図5】電気自動車の電波ノイズのスペクトルの測定結果を示す図
【図6】本発明の実施の形態2に係る電磁波検知装置の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態3の電磁波検知装置の第1の演算処理部の演算処理結果を示す図
【図8】本発明の実施の形態4に係る電気自動車とハイブリッド車を見分ける機能を有する電磁波検知装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態5に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図
【図10】本発明の実施の形態6に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図
【図11】上記実施の形態6に係る報知システムの警報機の構成図
【図12】本発明の実施の形態7に係る電磁波検知装置を内蔵した携帯機器の構成を示すブロック図
【図13】上記実施の形態7に係る電磁波検知装置を内蔵した携帯電話機(携帯機器)の使用形態の一例を示す図
【図14】上記実施の形態7に係る電磁波検知装置を内蔵した携帯電話機(携帯機器)の使用形態の別の例を示す図
【図15】本発明の実施の形態8の電磁波検知装置の一本道に歩行者等と車両が存在する場合を示す図
【図16】上記実施の形態8に係る電磁波検知装置のカーブしている道に歩行者等と車両が存在する場合を示す図
【図17】上記実施の形態8に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図
【図18】上記実施の形態8に係る報知システムの横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合を示した図
【図19】上記実施の形態8に係る報知システムの路側機の構成を示すブロック図
【図20】上記実施の形態8に係る報知システムの表示機の構成を示すブロック図
【図21】上記実施の形態8に係る報知システムの表示機の路上に埋め込むタイプの表示機の外形を模式的に示す図
【図22】上記実施の形態8に係る報知システムの路上周辺に設置されるタイプの表示機の外形を模式的に示す図
【図23】上記実施の形態8に係る報知システムの路側機のカメラ部の設置例を示す図
【図24】上記実施の形態8に係る報知システムの第1のカメラにより車両が第1のラインに差し掛かったことを撮影した瞬間の映像を示す図
【図25】上記実施の形態8に係る報知システムの路面に埋め込んだ表示機を路面一杯に光らせる場合を示す図
【図26】本発明の実施の形態9における表示機の構成を示すブロック図
【図27】本発明の実施の形態10に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図
【図28】本発明の実施の形態11に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図
【図29】上記実施の形態11に係る電磁波検知装置の報知システムの注意報知装置の構成を示す図
【図30】本発明の実施の形態12に係る車両向け注意報知装置の使用形態を示す図
【図31】上記実施の形態12に係る車両向け注意報知装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電磁波検知装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、電気自動車及びハイブリッド車とそれ以外の車両とを検知する電磁波検知装置に適用した例である。
【0023】
図1に示すように、電磁波検知装置100は、アンテナ/センサ部110、BPF/LPFなどで構成されるフィルタ部121、AD変換部122、DSP(Digital Signal Processor)などで構成された周波数解析部123、メモリ部130、判定部140、送信部150、及び電源部160を備える。上記フィルタ部121、AD変換部122、及び周波数解析部123は、第1の演算処理部120を構成する。
【0024】
アンテナ/センサ部110は、ダイポールアンテナ、ループアンテナ又は電磁波センサから構成され、車両から発生する電磁波を検知する。
【0025】
第1の演算処理部120は、アンテナ/センサ部110からの出力信号に対して演算処理を施す。
【0026】
フィルタ部121は、アンテナ/センサ部110からの出力信号を帯域制限する。
【0027】
AD変換部122は、フィルタ部121で帯域制限したアンテナ/センサ部110からの出力信号をアナログ・デジタル変換する。
【0028】
周波数解析部123は、周波数解析演算を実施する。具体的には、周波数解析部123は、帯域制限及びアナログ・デジタル変換した信号に対して、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する。
【0029】
判定部140は、第1の演算処理部120の演算処理結果に基づいて、電磁波の発生主体(すなわち、対象車両)が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定する。
【0030】
以下、上述のように構成された電磁波検知装置100の動作を説明する。
【0031】
まず、本発明の基本的な考え方について述べる。
【0032】
バッテリを電源とする電気自動車及びハイブリッド車は、例えばモータ、インバータや電流制御回路などから電磁波が発生することが知られている。これらの電気自動車及びハイブリッド車に発生する電磁波は、車体に装備される各種の電気部品に影響を与える懸念がある。このため、従来は、電磁波の影響を受けるおそれのある電気部品、あるいは電磁波発生源となる電装品に関して、様々な電磁シールド対策を講じられている。しかし、モータ、インバータや電流制御回路などを完全に密閉することが難しく、このような対策にもかかわらず電磁波が電気自動車外に放出される。
【0033】
電気自動車及びハイブリッド車のモータを制御するには、インバータを用いてPWM(Pulse Width Modulation)パルスをモータに印加する。このPWMパルスにより、モータの回転が制御される。このとき電気自動車及びハイブリッド車のモータに大電流が流れ、これに伴ってその回転及び回転制御による固有周波数の電磁波を発生している。この固有の周波数は、大きくは以下の2つである。
【0034】
(1)200Hz以下 モータの回転周期に比例した周波数(電磁誘導など)
(2)1MHz〜10MHz PWMパルス生成用の基本クロック周波数と高周波成分
上記(1),(2)は、「電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因した固有の周波数の電磁波」である。これらの電磁波スペクトルに対する検知環境・検知装置の状況によって、(1),(2)とも検知できる場合もあるが、(1)又は、(2)のいずれかしか検知できない場合もある。上記(2)しか検知できない場合が多いであろう。どの程度まで検知できれば、車両を電気自動車及びハイブリッド車であるかを判定できるかを具体的な検知環境、検知装置において十分検討することは、この技術を活用する上から重要である。
【0035】
また、車載の電子機器も電子ノイズを発生している。このことは、同様にモータ、インバータと電子機器を搭載しているハイブリッド車にも当てはまる。通常のガソリン車も電子機器を搭載しているのでそこから発生する電子ノイズは存在するものの、上記モータ、インバータに起因する電磁波は発生しない。
【0036】
そこで、電気自動車及びハイブリッド車からの電磁波をダイポールアンテナやループアンテナ、電磁センサなどのアンテナやセンサで受信して、その信号を周波数解析することにより、電気自動車及びハイブリッド車の電波ノイズのスペクトルを得ることができる。すなわち、電気自動車及びハイブリッド車のモータ、インバータから発せられる特有の電磁波スペクトルを検知することにより、道路上を車両が走行しているのを認識できるだけでなく、走行している車両が電気自動車及びハイブリッド車であることまで判定することができる。
【0037】
図2乃至図5は、電気自動車の電波ノイズの特性図であり、図2は電気自動車の電波ノイズのスペクトル、図3は電気自動車の電波ノイズの減衰特性、図4は電気自動車の強度平面分布を示す。図2乃至図4の出典は、「電気自動車用パワーエレクトロニクスの現状と動向 電気学会技術報告 第589号 P.56〜57」である。
【0038】
図5は、電気自動車の電波ノイズのスペクトルの測定結果を示す図であり、電気自動車のモータと車載電子機器による電磁波ノイズのスペクトルを0Hz〜100MHzの周波数帯で示す。
【0039】
図3及び図4に示すように、車内中央から側面方向に5m程度での空間の電界強度は、約45dBμV/mあり、この電界強度は市販されている電磁波測定器で測定可能である。電気自動車の電波ノイズを検知できる距離は、電磁波測定器の感度を上げることにより広がる。
【0040】
図5に示すように、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータ要因の電磁波101、並びに自動車に搭載したAV機器やネットワーク機器、制御用マイコン等の電子機器を主要因として、電磁波102が発生する。
【0041】
モータ又はインバータ要因の電磁波101は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布している。電気自動車及びハイブリッド車のモータ回転は、通常、15000rpm以下であり、せいぜい200Hz程度の回転数である。インバータによってモータ回転数やトルクを制御するにあたりPWM(Pulse Width Modulation)等の制御をするために、このような回転数より高い周波数の電磁波が発生している。
【0042】
電気自動車及びハイブリッド車以外の自動車においても、エンジン制御のためにインジェクション等の制御のために低域の電磁波が発生する。しかし、消費電流が電気自動車及びハイブリッド車に比べると微小であるために、電磁波の強度もモータやインバータに比較して微小となる。
【0043】
電子機器要因の電磁波102は、約20MHz近辺から周波数が高くなる方向に分布している。これは電子機器に内蔵されたマイコンのシステムクロック周波数やシステムクロックの高周波が電磁波要因となっているために、電気自動車及びハイブリッド車、それ以外の自動車でも発生する。
【0044】
次に、電磁波検知装置100の動作について説明する。
【0045】
図1に示すように、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータで発生した電磁波は、アンテナ/センサ部110で検知され、この信号は第1の演算処理部120に入力される。
【0046】
第1の演算処理部120のフィルタ部121は、10MHz以下の信号を抽出する。AD変換部122は、フィルタ部121により帯域制限された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。DSPなどで構成された周波数解析部123は、FFT(Fast Fourier Transform)演算により信号を時間軸から周波数軸の信号に変換し、判定部140に送る。
【0047】
電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータ要因の電磁波は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布している。したがって、電気自動車及びハイブリッド車のモータの回転に起因した固有の周波数の電磁波スペクトルを検知することにより、車両がガソリン車ではなく電気自動車及びハイブリッド車であることを判定することができる。
【0048】
この一連の動作はある一定の時間ごと、例えば、1秒ごとに周期的に実行される。電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータで発生した電磁波は、上記判定処理により周期的に判定処理され、車両がガソリン車ではなく電気自動車及びハイブリッド車であるかが判定される。また、上記判定処理は、一連の動作の開始時期においては、以前の判定結果をクリアする。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、電磁波検知装置100は、車両から発生する電磁波を検知するアンテナ/センサ部110、第1の演算処理部120、及び判定部140を備える。周波数解析部123は、アンテナ/センサ部110からの出力信号にフィルタ部121で帯域制限し、AD変換部122でアナログ・デジタル変換した信号に対して、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する。判定部140は、第1の演算処理部120の演算処理結果に基づいて、電磁波の発生主体が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定する。
【0050】
また、本実施の形態の電気自動車及びハイブリッド車の判定方法は、車両から発生する電磁波を検知するステップと、検知された電磁波に、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析するステップと、解析結果に基づいて、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定するステップとを有する。
【0051】
これにより、高価なインフラ設備を必要とすることなく、移動体との衝突を防止でき、交通事故を未然に防止することができる。例えば、T字路、十字路のような交差点において、交差点などに進入しようとしている車両などが、角地に建物などが建っているため死角になるような場合でも、さらに交差点などに進入しようとしている車両が電気自動車及びハイブリッド車のような走行音が静かなときでも、歩行者等が車両の存在とその交差点までのおおよその距離を知ることができる。したがって、死角移動体である車両との衝突を防ぐことができ、交通事故を未然に防止することができる。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態1の電磁波検知装置100は、DSPなどで構成された周波数解析部123が必要になる。特に周波数解析のためのFFT演算は、処理コストが掛かる演算になっている。DSPなどで構成された周波数解析部123を他の機能と兼用できるような場合はこの構成でもコスト的に問題ない場合もあるが、DSPが本機能だけのためにあるような場合には、より安価な処理構成が要望される。実施の形態2では、周波数解析部123の構成を簡略化した例である。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態2に係る電磁波検知装置の構成を示すブロック図である。図1と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、電磁波検知装置200は、アンテナ/センサ部110、BPF/LPFなどで構成されるフィルタ部121、AD変換部122、累積加算部223、メモリ部130、判定部140、送信部150、及び電源部160を備える。上記フィルタ部121、AD変換部122、及び累積加算部223は、第1の演算処理部220を構成する。
【0055】
電磁波検知装置200は、図1の電磁波検知装置100のDSPなどで構成された周波数解析部123を、累積加算部223に代えた構成となっている。
【0056】
電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータで発生した電磁波は、アンテナ/センサ部110で検知され、この信号は第1の演算処理部220に入力される。
【0057】
第1の演算処理部220のフィルタ部121は、アンテナ/センサ部110で検知された電磁波から、10MHz以下の信号を抽出する。AD変換部122は、フィルタ部121で帯域制限したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0058】
累積加算部223は、特有の周波数成分を累積加算し、累積加算された信号が所定閾値レベル以上であることを判定する。具体的には、累積加算部223は、10MHz以下の低域に分布している電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータの回転に起因した固有の周波数の電磁波成分を時間軸の値としてデジタル的に加算する。この信号は次に判定部140に送られる。電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータ要因の電磁波は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布している。フィルタ部121は、この成分の信号のみを抽出し、AD変換部122は、加算しやすいようにデジタル信号に変換する。累積加算部223は、上記帯域の信号をデジタル的に加算する。
【0059】
累積加算部223で加算した結果は、判定部140に送られ、判定部140は、累積加算部223で加算された値が所定閾値レベル以上の場合は電気自動車及びハイブリッド車であると判定し、累積加算部223で加算された値が所定閾値レベルより小さい場合は電気自動車及びハイブリッド車でないと判定する。
【0060】
上記一連の動作は、ある一定の時間ごと、例えば、1秒ごとに周期的に実行される。一連の動作の開始時期では、以前の判定結果はクリアされる。累積加算部223は、有限の累積期間を設定し、その累積期間においてAD変換部122から出力されるデジタル値を加算する。
【0061】
ここでは、AD変換部122から出力されるデジタル値を累積加算部223で加算する一例を述べたが、FIRフィルタやIIRフィルタを用いてこの動作を実施することもできる。
【0062】
本実施の形態の電気自動車及びハイブリッド車の判定方法は、実施の形態1の電気自動車及びハイブリッド車の判定方法と比較して、判定の精度は多少劣るものの、第1の演算処理部220における演算処理量を大幅に減少させることができる。
【0063】
ここで、第1の演算処理部220での演算処理量を削減する方法に、次のような方法がある。
【0064】
すなわち、第1の演算処理部220は、アンテナ/センサ部110からの出力信号をフィルタ部121で帯域制限し、判定部140は、フィルタ部121からのアナログ信号が、所定閾値レベル以上になったことを判定する。
【0065】
電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータ要因の電磁波は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布しているので、この成分の信号のみフィルタ部121で抽出し、このフィルタ部121で抽出したアナログ信号の大きさを直接に判定部140で判定するようにする。
【0066】
この方法では、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータが発生する特有の電磁波スペクトルを直接検知するものではないので、検知精度が劣ることはある。しかし、0Hz〜10MHzの帯域に電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータが発生する特有の電磁波しかないような状況においては、この方法でも走行している車両が、電気自動車及びハイブリッド車か、又はこれら以外のガソリン車かを判定することができる。このような簡便な方法でも用途によっては十分活用できる場合がある。なお、この方法は、実施の形態1の第1の演算処理部120にも同様に適用することができる。
【0067】
(実施の形態3)
ところで、電気自動車及びハイブリッド車が発生する電磁波を用いて、電気自動車及びハイブリッド車とガソリン車を見分ける方法は、今後重要な技術になると考えられる。但し、電磁波は、車体に装備される各種の電気部品に影響を与える懸念があるため、電磁波の影響を受けるおそれのある電気部品、あるいは電磁波発生源となる電装品に関して、電磁シールド対策を講じられている。また、モータからの電磁波を極力外部に漏れないようにする取り組みもされている。
【0068】
このような状況では、電気自動車及びハイブリッド車に発生する電磁波の検知感度を高める技術が重要となる。検知感度を高める技術について、実施の形態3で述べる。実施の形態3により、「電気自動車及びハイブリッド車に発生する電磁波を用いて、電気自動車及びハイブリッド車とガソリン車を見分ける方法」を、より活用することができる。
【0069】
実施の形態3は、実施の形態1の図1の構成のままでソフトウェアの変更により実現する。
【0070】
本発明の実施の形態3の電磁波検知装置のハード構成図は、図1と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
本実施の形態では、車両が走行していないときの電磁波を背景雑音として検知し、周波数解析部123は、車両が走行をしているときに車両が発生する電磁波を取り入れ、かつ、車両が走行をしているときに車両が発生する電磁波から前記背景雑音を減算して、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する。
【0072】
図7は、第1の演算処理部120の演算処理結果(電磁波の強度/周波数)を示す図であり、図7(a)は第1の演算処理結果を、図7(b)第2の演算処理結果を、図7(c)第3の演算処理結果をそれぞれ示す。
【0073】
電磁波検知装置100(図1参照。以下同様。)が検知できる範囲に車両が走行をしていないときに、アンテナ/センサ部110は、車両が走行していないときの背景雑音を取り入れる。
【0074】
第1の演算処理部120は、アンテナ/センサ部110からの出力信号をフィルタ部121で帯域制限し、その後にAD変換部122は、アナログ・デジタル変換する。
【0075】
周波数解析部123は、周波数解析演算を実施し、メモリ部130は第1の演算処理部120からの第1の演算処理結果を保持する。図7(a)に第1の演算処理結果を示す。
【0076】
次に、電磁波検知装置100が検知できる範囲に車両が走行をしているときに、アンテナ/センサ部110は、車両が走行しているときの電磁波を取り入れる。第1の演算処理部120は、アンテナ/センサ部110からの出力信号をフィルタ部121で帯域制限し、その後にAD変換部122でアナログ・デジタル変換する。
【0077】
周波数解析部123は、周波数解析演算を実施し、メモリ部130は第1の演算処理部120からの第2の演算処理結果を保持する。図7(b)に第2の演算処理結果を示す。
【0078】
さらに、第1の演算処理部120は、第2の演算処理結果から第1の演算処理結果を減算し、第3の演算処理結果を求める。図7(c)に第3の演算処理結果を示す。
【0079】
図7(c)に示すように、第3の演算処理結果では、車両周囲の背景雑音が削減され、電気自動車及びハイブリッド車のモータの回転に起因した固有の周波数の電磁波スペクトルが検知しやすくなっている。このため、電気自動車及びハイブリッド車に発生する電磁波を用いて、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法の検知感度を高めることができる。
【0080】
上記電磁波検知装置100が検知できる範囲に車両が走行をしていないとき、又は電磁波検知装置100が検知できる範囲に車両が走行をしているときの判定をどのように実施するかについて説明する。
【0081】
まず、電磁波検知装置100の工場出荷時に、類型データ等に基づいた「電磁波検知装置が検知できる範囲に車両が走行をしているとき」の標準的なスペクトラムと判定強度を設定する。次に、ユーザが電磁波検知装置を使用する時に、受信電磁波のスペクトラムが工場出荷時の判定強度を下回っている場合に、この受信スペクトラムを「電磁波検知装置が検知できる範囲に車両が走行をしていないとき」のデータとして記録する。さらに、最新の受信スペクトラムと、「電磁波検知装置が検知できる範囲に車両が走行をしていないとき」の受信スペクトラムの差分が一定値以上であれば「電磁波検知装置が検知できる範囲に車両が走行をしているとき」、つまり、電気自動車及びハイブリッド車の走行を検知したと判定する。
【0082】
このようにして、電磁波検知装置100が検知できる範囲に車両が走行をしていないとき、又は電磁波検知装置100が検知できる範囲に車両が走行をしているときの判定が可能になる。
【0083】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3では、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定することができた。
【0084】
実施の形態4は、電気自動車とハイブリッド車とを見分ける方法の構成例である。
【0085】
図8は、本発明の実施の形態4に係る電気自動車とハイブリッド車を見分ける機能を有する電磁波検知装置の構成を示すブロック図である。図1と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、電磁波検知装置300は、図1の電磁波検知装置100にさらに、マイク部310と、フィルタ部321、AD変換部322及び累積加算部323からなる第2の演算処理部320とを備える。
【0087】
すなわち、電磁波検知装置300は、図1の電磁波検知装置100にさらに、マイク部310と第2の演算処理部320を追加し、第2の演算処理部320からの信号を、電磁波検知装置100の判定部140に入力する構成になっている。
【0088】
マイク部310は、エンジン騒音を入力する。
【0089】
第2の演算処理部320は、マイク部310からの出力信号に対して演算処理する。
【0090】
フィルタ部321は、マイク部310からの出力信号に対して車両のエンジン騒音を抽出する。
【0091】
AD変換部322は、フィルタ部321からの信号をアナログ・デジタル変換する。
【0092】
累積加算部323は、AD変換器322からの出力信号を累積加算して判定部140に出する。
【0093】
判定部140は、累積加算部323から入力信号を基に、車両のエンジン騒音が特定の閾値レベル以上かどうかを更に判定する。
【0094】
車両が発生するエンジン音は、マイク部310に入力され、マイク部310からの信号は第2の演算処理部320で演算処理される。具体的には、第2の演算処理部320に入ったマイク部310からの信号は、アナログBPF/LPFなどで構成されるフィルタ部321で帯域制限される。その後、帯域制限されたマイク部310からの信号は、加算しやすいようにAD変換部322によりアナログ信号からデジタル信号に変換される。累積加算部323は、これらのデジタル信号を累積加算する。累積加算部323で加算されたた結果は、判定部140に送られる。
【0095】
判定部140では、累積加算部323で加算された値がある決められた閾値レベル以上であればエンジン部(図示略)を有するエンジン車かハイブリッド車であると判定し、累積加算部323で加算された値がある決められた閾値レベル以下であればエンジン車でもハイブリッド車でないと判定する。
【0096】
このように、電磁波検知装置300は、図1の電磁波検知装置100にマイク部310と第2の演算処理部320を追加し、判定部140が、累積加算部323から入力信号を基に、車両のエンジン騒音が特定の閾値レベル以上かどうかを判定する。これにより、電磁波検知装置300は、エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車の車両を判別することができる。電磁波検知装置300は、歩行者などに接近している車両があった場合、その車両が、エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車の3種類のうちどれであるかを区別することが可能となる。
【0097】
なお、本実施の形態では、図1の電磁波検知装置100に、マイク部310と第2の演算処理部320を追加する例について説明したが、図1の電磁波検知装置100に代えて、図6の電磁波検知装置200を適用してもよく、同様の効果を得ることができる。図6の電磁波検知装置200を適用した場合、実施の形態2で述べたように、演算処理量を大幅に減少させることができ、より安価な処理構成が可能になる。
【0098】
実施の形態1乃至4で説明してきた「電電気自動車及びハイブリッド車に発生する電磁波を用いて、電気自動車及びハイブリッド車とガソリン車を見分ける方法」の応用例について、実施の形態5乃至7で述べる。
【0099】
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図である。
【0100】
図9に示すように、報知システム400は、T字路に設置された第1の電磁波検知器421、第2の電磁波検知器422、及び第3の電磁波検知器423を備える。
【0101】
第1の電磁波検知器421、第2の電磁波検知器422、及び第3の電磁波検知器423は、同一構成であり、図1の電磁波検知装置100又は図6の電磁波検知装置200と同様に構成される。
【0102】
第1の電磁波検知器421は、T字路の基準線9aから第1の距離に設置される。
【0103】
第2の電磁波検知器422は、T字路の基準線9aから第2の距離に設置される。
【0104】
第3の電磁波検知器423は、T字路の基準線9aから第3の距離に設置される。
【0105】
なお、図9では、T字路の基準線9aを道路上に引いているが、T字路の真ん中を見積もりやすくするために描いているだけであり、実際の場合は道路上にT字路の基準線9aを描く必要はない。
【0106】
図9は、T字路に歩行者等と車両が存在する場合を示している。ここで交差点の中でも特にT字路に着目しているのは、以下の理由による。十字路の場合、出合い頭の交通事故が発生する危険性が高い場所にはすでに信号機が設置されていることが多い。このような状況では、車両と歩行者等との間の出合い頭の事故はT字路で発生する可能性が高くなるからである。そこで、以降、交差点の中でも、出合い頭の事故が最も多発しているT字路を例に挙げている。
【0107】
図9では、横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合を示している。T字路に進入しようとしている電気自動車が建築物などにより歩行者などにとって死角になる場合には、広い道の右側から電気自動車が進入してきても、車両の走行音はきわめて低いため、周囲の騒音が比較的静かなときでも、縦方向の狭い道を上方向に歩いている歩行者等が電気自動車に気づかない状況が発生する。このような場合に歩行者等が右からの車両に気がつかず広い道路に飛び出したりすると、出合い頭の事故が発生してしまう。特に、今後ハイブリッド車、電気自動車が本格的に普及し始めるので、このような交通事故が増加する可能性がある。
【0108】
但し、横方向の道も縦方向の道も広い道の場合においては、歩道や信号機なども整備されていることが多いので、出合い頭の事故もそれほど多く発生することは無い。
【0109】
また、図9において、横方向の広い道に車両が左から右に走行している場合は、歩行者等が縦方向の狭い道から飛び出したとしても、車両は左側通行のため、横方向の広い道に左から右に走行している車両と歩行者等には広い道の半分程の距離があるので、出合い頭の事故につながることは殆どない。また、建物が右側の角でなく左側の角に存在する場合には、右側から左側に走行している車両が死角になることはないので、このような場合も出合い頭の事故につながることは殆どない。
【0110】
したがって、横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合に、横方向の広い道の右側から左側に走行している車両と縦方向の狭い道を下から上方向に歩いている歩行者等に関してのみ、車両と歩行者等が出合い頭の衝突事故が発生する危険性が高い。
【0111】
このような考察をもとに、本発明では信号機が設置されていないケースのうち最も車両の静音性に起因した出合い頭の事故の危険性がある図9のケースを中心に説明する。但し、図9のケースでも広い道の右側から左側に走行している車両が直進するのか、左折するのかにより状況が異なる。そこで、特に、車両が直進する場合と車両が左折する場合を検討することにする。
【0112】
<車両が直進する場合>
図9において、道路1、車道と歩道の境界線2、歩行者3など、車両4、歩行者等3と車両4の間に存在し、両者の死角になる建物5など、横断歩道7、表示機8、T字路の基準線9aを表している。また、図9中矢印は、歩行者3などの歩行方向、車両4の走行方向を示している。
【0113】
車両4が横方向に走っている広い道路を右から左に走行し、T字路に進入しようとしている。一方、歩行者3などは、縦方向に伸びた狭い道を下から上に向かって歩いている。歩行者3などと車両4の間には、両者の死角になる建物5などが存在しているので、歩行者3などの位置からは車両4がT字路に進入しようとしていることは確認できない。
【0114】
車両4がエンジンで駆動される車両では、エンジン音が大きい場合、歩行者3などは横断歩道7に近づく頃には車両4のエンジン音が聞こえ、車両4がT字路に進入してきていることを確認できた。しかし、車両4がハイブリッド車や電気自動車である場合には、その車両のモータ駆動音も小さく、音だけからではその存在に気づかない可能性が大きくなる。
【0115】
報知システム400の説明に戻る。
【0116】
図9に示すように、第1の電磁波検知器421は、T字路の基準線9aから第1の距離、例えば100mの歩道の道路際に設置される。車両4が、第1の電磁波検知器421の脇を走行する場合、アンテナ/センサ部110(図1参照)は、車両4が第1の電磁波検知器421の右側5m程度に接近してきたときからその電磁波を受信し始める。車両4が、第1の電磁波検知器421の真横に来たときにその電磁波強度は最も強くなり、車両4が通過するにつれてその電磁波強度は弱くなる。第1の電磁波検知器421の第1の演算処理部120(図1参照)は、アンテナ/センサ部110からの信号に対してDSPなどを使用したFFT処理により周波数解析を行う。
【0117】
その結果、前記図2及び図5に示したような電気自動車の電波ノイズのスペクトルを得ることができる。第1の電磁波検知器421の判定部140(図1参照)は、第1の演算処理部120(図1参照)の周波数解析で取得したそのスペクトルの特徴から車両4が電気自動車か、又は、ハイブリッド車か、それともどちらでもないガソリン車かを判定する。
【0118】
第1の演算処理部120(図1参照)は、アンテナ/センサ部110(図1参照)が車両4からの電磁波が検知し始めた時点で、判定結果を第1の電磁波検知器421の送信部150(図1参照)から表示機8に送信する。この場合、第1の演算処理部120(図1参照)は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m以上、100m未満なため黄色の発光開始の指示信号を表示機8に送信する。
【0119】
第2の電磁波検知器422は、T字路の基準線9aから第2の距離、例えば30mの歩道の道路際に設置される。車両4が、第2の電磁波検知器422の脇を走行する場合、アンテナ/センサ部110(図1参照)は、車両4が第2の電磁波検知器422の右側5m程度に接近してきたときからその電磁波を受信し始める。車両4が、第2の電磁波検知器422の真横に来たときにその電磁波強度は最も強くなり、車両4が通過するにつれてその電磁波強度は弱くなる。第2の電磁波検知器422の第1の演算処理部120(図1参照)は、アンテナ/センサ部110からの信号に対してDSPなどを使用したFFT処理により周波数解析を行う。
【0120】
その結果、図2及び図5に示したような電気自動車の電波ノイズのスペクトルを得ることができる。第2の電磁波検知器422の判定部140(図1参照)は、そのスペクトルの特徴から車両4が、電気自動車か、又は、ハイブリッド車か、それともどちらでもないガソリン車かを判定する。
【0121】
第1の演算処理部120(図1参照)は、アンテナ/センサ部110(図1参照)が電磁波が検知し始めたときに、判定結果を第2の電磁波検知器422の送信部150(図1参照)から表示機8に送信する。この場合、第1の演算処理部120(図1参照)は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満なため赤色の発光開始の指示信号を表示機8に送信する。
【0122】
第3の電磁波検知器423は、T字路の基準線9aから第3の距離、例えば5mの歩道の道路際に設置される。車両4が、第3の電磁波検知器423の脇を走行する場合、アンテナ/センサ部110(図1参照)は、車両4が第3の電磁波検知器423の右側5m程度に接近してきたときからその電磁波を受信し始める。車両4が、第3の電磁波検知器423の真横に来たときにその電磁波強度は最も強くなり、車両4が通過するにつれてその電磁波強度は弱くなる。第3の電磁波検知器423の第1の演算処理部120(図1参照)は、アンテナ/センサ部110からの信号に対してDSPなどを使用したFFT処理により周波数解析を行う。
【0123】
その結果、図2及び図5に示したような電気自動車の電波ノイズのスペクトルを得ることができる。第3の電磁波検知器423の判定部140(図1参照)は、このようなスペクトルの特徴から車両4が電気自動車か、又は、ハイブリッド車か、それともどちらでもないガソリン車かを判定する。
【0124】
第1の演算処理部120(図1参照)は、この判定結果を電磁波が検知し終わったときに第3の電磁波検知器423の送信部150(図1参照)から表示機8に送信する。この場合、第1の演算処理部120(図1参照)は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aに差し掛かる頃なため赤色の発光の中止の指示信号を表示機8に送信する。
【0125】
歩行者3などは、歩行者3などと車両4の間に存在し、両者の死角になる建物5などのためと、横断歩道7に近づいてもハイブリッド車又は電気自動車の走行音は小さく、その存在に気がつかない。本実施の形態では、歩行者3などの進行方向の路上又は路上周辺に、表示機8を設置している。
【0126】
表示機8は、まず車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上の時には、LEDの光は青色、又はLEDを発光させない。しばらくして、表示機8は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m以上、100m未満になったときにLEDが黄色に色が変わり、さらに少しして、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満になった時にLEDが赤色に変わる。この時点で、歩行者3などは、自分の進行方向にあるT字路にハイブリッド車又は電気自動車である車両4が進行していること、しかも、T字路の基準線9aから僅か30m未満に来ていることを事前に知ることができる。
【0127】
歩行者3などに対して車両4がT字路に進入しようとしていることを報知する手段がLEDの発光であるため、夕方、夜間においてその効力を益々発揮する。一般にここで説明しているような出合い頭の事故は、昼間より、夕方、夜間に発生する可能性が高いので有効である。
【0128】
(実施の形態6)
図10は、本発明の実施の形態6に係る死角移動体を報知するための報知システムの構成を示す図である。図9と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0129】
図10に示すように、報知システム500は、T字路の基準線9aから第1の距離に設置された電磁波検知器521、及び警報機531,532を備える。
【0130】
警報機531は、電気自動車か、又は、ハイブリッド車である車両4が走行する横方向の広い道路のT字路近辺の歩道に設置され、警報機532は、縦方向の狭い道路のT字路近辺の歩道に設置される。
【0131】
電磁波検知器521は、図1の電磁波検知装置100又は図6の電磁波検知装置200と同様に構成される。
【0132】
図11は、上記警報機531,532の構成図である。警報機531,532は、同一構成を採るため、警報機531を代表して説明する。
【0133】
図11に示すように、警報機531は、受信部540、制御部541、警報音生成部542、指向性スピーカ部543、及び電源部544を備える。
【0134】
図10に示すように、電磁波検知器521は、T字路の基準線9aから第1の距離、例えば60mの歩道の道路際に設置される。車両4(図10参照。以下同様。)が、電磁波検知器521の脇を走行する場合、アンテナ/センサ部110(図1参照)は、車両4が電磁波検知器521の右側5m程度に接近してきたときからその電磁波を受信し始める。車両4が、電磁波検知器521の真横に来たときにその電磁波強度は最も強くなり、車両4が通過するにつれてその電磁波強度は弱くなる。
【0135】
電磁波検知器521の周波数解析部123(図1参照)は、アンテナ/センサ部110からの信号に対してDSPなどを使用したFFT処理により周波数解析を行う。
【0136】
その結果、図2及び図5に示したような電気自動車の電波ノイズのスペクトルを得ることができる。電磁波検知器521の判定部140(図1参照)は、そのスペクトルの特徴から車両4が電気自動車か、又は、ハイブリッド車か、それともどちらでもないガソリン車かを判定する。車両4からの電磁波が検知し始めた時点で、この判定結果を、電磁波検知器521の送信部150(図1参照)から指向性スピーカ部543(図11参照)を内蔵した警報機531,532に送信する。
【0137】
図11に示すように、警報機531,532は、T字路の基準線9aから第1の距離に設置される。受信部540は、電気自動車及びハイブリッド車である車両4が、電磁波検知器521の脇の道路を通過したとの信号を受信し、その信号を制御部541に送る。制御部541は、警報音生成部542に対し警報音の信号の作成を指示する。
【0138】
警報音生成部542は、歩行者等への警報音の信号を作成し、指向性スピーカ部543に送る。指向性スピーカ部543は、T字路近辺の歩行者のうち電気自動車及びハイブリッド車である車両4が接近したときに事故の危険性がある領域にいる歩行者等に対して、警報音を放射する。
【0139】
図10の破線で囲んだ部分は、警報機531の指向性スピーカ部543からの警報音が聞こえる可聴領域551、警報機532の指向性スピーカ部543からの警報音が聞こえる可聴領域552を示している。
【0140】
本実施の形態は、住宅密集地域内の道路で特に有効である。警報音が指向性スピーカ部543(図11参照)から発生されるために、道路の近隣住民には聞こえず騒音公害を招くことはない。
【0141】
また、警報音を例えばエンジン音とすることで、静寂な電気自動車及びハイブリッド車が接近した際に、歩行者が自動車として認識できやすい配慮にすることも可能である。
【0142】
また、本実施の形態では、電磁波検知器521は、「車両4が電気自動車か、又は、ハイブリッド車か、それともどちらでもないか」を判定する。これにより以下の対応が可能である。例えば、(1)電気自動車及びハイブリッド車では、警報機の音量を大きくし、電気自動車及びハイブリッド車以外では、警報機の音量を小さくする等の該当車両の種類による音量制御、(2)電気自動車及びハイブリッド車の場合に、警報機の音波周波数を上げて歩行者が感知しやすくする等の音質制御、(3)警報音や警報メッセージを変える等の切り替え制御である。
【0143】
なお、実施の形態5と実施の形態6では、電気自動車とハイブリッド車を検知するために、FFTを用いて自動車から発生する電磁波スペクトラムの特徴を判定した。これに限らず、低域周波数のみに反応する電磁波センサで低域周波数の電磁波のみを感知する方法や、低域周波数をバンドパスフィルタで検知する方法などで簡易に実現することも可能である。
【0144】
(実施の形態7)
ハイブリッド車や電気自動車の走行音の静音性に起因した衝突事故が発生するのは、歩道がはっきり引かれていない道において、ハイブリッド車や電気自動車が低速走行する場合であるとの指摘もある。
【0145】
このようなケースとして以下の2つの場合を説明する。
【0146】
(1)歩道がはっきり引かれていない街中の一本道
(2)横方向の道も縦方向の道も狭いT字路
まず、上記(1)の歩道がはっきり引かれていない街中の一本道について説明する。
【0147】
ある程度の速度で走行しているときには、ハイブリッド車や電気自動車でもタイヤ音がして歩行者はその音に気がつくが、低速走行しており、しかも、歩行者の背後から接近する場合は、歩行者はハイブリッド車や電気自動車の接近に殆ど気がつかない場合が多い。
【0148】
例えば、歩道がはっきり引かれていない街中の道において、ハイブリッド車や電気自動車の運転者が歩行者に警報を鳴らして驚かせることに気兼ねして警報を鳴らさず歩行者の脇を通り越そうとしている場合を想定する。この場合、歩行者がハイブリッド車や電気自動車が背後に直後まで接近した時点でその存在に気づき、思わず車両を避けようとして却ってハイブリッド車や電気自動車が通り抜けようとした方向に飛び出してしまうこともある。
【0149】
このような場合に有効な電磁波検知装置を内蔵した携帯機器について、実施の形態7で述べる。
【0150】
図12は、本発明の実施の形態7に係る電磁波検知装置を内蔵した携帯機器の構成を示すブロック図である。図1と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。電磁波検知装置を内蔵した携帯機器として、携帯電話機に適用した例である。
【0151】
図12に示すように、携帯電話機600は、携帯電話機能ブロック610と、電磁波検知機能ブロック620とを備える。電磁波検知機能ブロック620は、図1の電磁波検知装置100とほぼ同一構成である。なお、電磁波検知機能ブロック620に、図6の電磁波検知装置200を適用してもよい。
【0152】
携帯電話機能ブロック610は、携帯電話用アンテナ611、RF(Radio Frequency)部612、ベースバンド処理部/アプリケーション部/制御部613、マイク部614、及びスピーカ部615を備える。
【0153】
電磁波検知機能ブロック620は、電磁波検知部用アンテナ/センサ部621と、フィルタ部121、AD変換部122及び周波数解析部123からなる第1の演算処理部120と、判定部140と、送信部150とを備える。
【0154】
まず、携帯電話機能ブロック610の動作について説明する。
【0155】
アンテナ611により受信された高周波アナログ信号は、RF部612で受信処理を受けた後、RF部612からベースバンド処理部/アプリケーション部/制御部613へ信号の受け渡しを行うRFインターフェイス部(図示略)を介して受け渡される。この信号は、ベースバンド処理部/アプリケーション部/制御部613でアナログ信号から変換したデジタル信号の復調が行われる。さらに、オーディオ・インターフェース(図示略)でデジタル信号からオーディオ信号への変換された信号は、スピーカ部615から出力される。
【0156】
一方、マイク部614から入力されたアナログ信号は、オーディオ・インターフェース(図示略)でアナログ信号からデジタル信号に変換される。この信号は、ベースバンド処理部/アプリケーション部/制御部613で変調された後にRFインターフェイス部(図示略)を介してRF部612に渡される。この信号はRF部612で処理を受けた後高周波アナログ信号となり、アンテナ611を経て送信される。
【0157】
図13は、電磁波検知装置を内蔵した携帯電話機600(携帯機器)の使用形態の一例を示す図である。図13には、歩行者3など、車両4、携帯電話機600(携帯機器)が示されている。また、車両4からは、電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波605が発せられる。
【0158】
次に、電磁波検知機能ブロック620の動作について説明する。
【0159】
電気自動車及びハイブリッド車のモータで発生した電磁波605は、アンテナ/センサ部621(図12参照)で検知され、この信号は第1の演算処理部120に入力される。
【0160】
第1の演算処理部120のフィルタ部121は、100MHz以下の信号を抽出する。AD変換部122は、フィルタ部121で帯域制限した信号をデジタル信号に変換する。周波数解析部123は、帯域制限されデジタル信号に変換された信号を、時間軸から周波数軸の信号に変換する。以上が第1の演算処理部120の演算処理である。第1の演算処理部120の演算処理信号は、判定部140に送られる。
【0161】
判定部140は、電気自動車及びハイブリッド車である車両4の接近を判定する。
【0162】
電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布している。判定部140は、電気自動車及びハイブリッド車のモータの回転に起因した固有の周波数の電磁波スペクトルを検知することにより、車両がガソリン車ではなく電気自動車及びハイブリッド車であることを判定する。
【0163】
送信部150は、電気自動車及びハイブリッド車である車両4の接近判定結果を、携帯電話機能ブロック610に送る。携帯電話機能ブロック610は、図示しないバイブレータ、報知部などを備えており、携帯電話機能ブロック610は、振動、警報音又は警告メッセージの形で携帯電話機600を持った歩行者3などに電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知する。
【0164】
図12の場合、携帯電話機能ブロック610は、スピーカ615を有し、スピーカ615により警報音又は警告メッセージの形で電磁波検知部を内蔵した携帯電話600を持った歩行者3などに電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知する。
【0165】
次に、上記(2)の横方向の道も縦方向の道も狭いT字路の場合について説明する。
【0166】
図14は、電磁波検知装置を内蔵した携帯電話機600(携帯機器)の使用形態の別の例を示す図である。
【0167】
図14に示すように、横方向の道も縦方向の道も狭いT字路において、例えば電気自動車などの車両4は横方向の細い道を低速で右側から左側に走行しており、歩行者3などは縦方向の細い道を下から上に歩行している。しかも、電気自動車などの車両4と歩行者3などの間には死角となる建物5が建っている。図14のような場合は、歩行者3などは電気自動車などの車両4が殆ど音も立てず走行するため出合い頭の事故を起こしてしまうことがある。
【0168】
車両と路側機との通信によく使用されるDSRC(Dedicated Short Range Communication)は超高周波(例えば、5.8GHz)を使用しているため、障害物があると通信ができない。しかし、電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波は、約2.5MHzを中心に10MHz以下の低域に分布している低周波の電波なため、障害物があっても電磁波は回り込んで進むことができる。
【0169】
そのため、図14に示すように、電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波605は車両4と歩行者3などの間には死角となる建物5が存在しても、迂回して歩行者3などの保持している携帯電話機600まで届くことが可能である。勿論、電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波605が到達できる範囲は数メートルに限られているが、携帯電話機600のアンテナ/センサ部(図示略)の感度が向上している現在、歩行者3などが保持している携帯電話機600から、10メートル程度まで接近するとその存在を検知することができる。
【0170】
ところで、携帯電話機600は、電気自動車及びハイブリッド車以外の電磁波を拾ってしまうことは殆どない。電気自動車及びハイブリッド車のモータ要因の電磁波605のスペクトルは、特有のスペクトルを有するので、電気自動車及びハイブリッド車以外のスペクトルを電気自動車及びハイブリッド車のものと間違って判断することは非常に少ない。
【0171】
以上、実施の形態1乃至7では、電気自動車及びハイブリッド車の車両のモータで発生する電磁波を検知する電磁波検知装置と、それを用いた報知システム及び携帯機器について説明した。これらの車両のモータで発生する電磁波を検知する方法以外にも、車両を路側機に装備したカメラで認識することにより、電気自動車及びハイブリッド車の静音性による事故を防止する方法がある。以下にこの方法について実施の形態8乃至12により説明する。
【0172】
(実施の形態8)
歩行者などは、多くの場合、車両の走行音(エンジン音など)により車両の接近を認知している。しかし、ハイブリッド車が低速モードで走行し、エンジンではなくモータの動力で走行している場合、車両の走行音はきわめて低く、周囲の騒音が比較的静かな状況でも、歩行者等が気づかない場合がある。このような事態が発生する具体的な状況を考察する。
【0173】
[ケース1] 一本道の場合
図15は、一本道に歩行者等と車両が存在する場合を示す図である。
【0174】
図15は、道路1、車道と歩道の境界線2、歩行者3など、車両4を表している。歩行者3などと車両4には矢印でそれぞれ歩行方向、走行方向を示している。歩行者3などの中には、歩行者のほかに、一般的には自転車などに乗車している人も含まれる。
【0175】
田舎道の一本道などにおいては、車両も殆ど通らず、横断歩道も十分には整備されていない場合も多い。このような場合、歩行者等は車両の接近に注意を払っていないことが多い。例えば、電気自動車が走っている場合、車両4の走行音はきわめて低く、周囲の騒音が比較的静かなときでも歩行者3などがその音に気づかない状況が発生する。歩行者3などは背後から車両4が接近していることに気づかず、左右を十分確認せずに横断することがある。その結果、車両4との衝突事故が発生してしまう。この場合、歩行者3などと車両4とは建物などによる死角にあるわけではなく、車両音がきわめて低いため、単に歩行者等3が車両4の存在に気づかないだけである。このような場合は、下記の対策で対応可能である。
【0176】
(1)静音走行時に、音などで周囲の人に車両の接近を知らせる(特許文献1参照)。
【0177】
(2)警報音が対象とする歩行者等の存在する方向のみに聞こえるように、指向性のある警報音を用いる(特許文献2参照)。
【0178】
しかし、報知手段を設けたとしても、光の発光や警報音などであると錯覚したり、聞き漏らしたりすることがある。図15に示すような一本道の場合において、確実に歩行者3などに車両4の接近を知らせる方法については、実施の形態6で説明した。
【0179】
[ケース2] 道がカーブしている場合
図16は、カーブしている道に歩行者等と車両が存在する場合を示す図である。
【0180】
図16に示すように、道路1はカーブしている。また、カーブした道路1には視界を妨げる場所に、建物5がある。
【0181】
[ケース3] 道がT字路である場合
警察庁の調査に基づく交通事故類型によると、歩行者等と車両との交通事故は、下記の通りである。
【0182】
(1)出合い頭 26%
(2)右折/左折時衝突 14%
(3)追突 32%
上記(3)は車両同士の事故がメインであり、上記(1)は歩行者等と車両の事故がメインである。本発明では車両の静音性に起因する歩行者等と車両との交通事故を課題として採り上げているので、歩行者等と車両の交通事故がメインである「出合い頭の事故」に対する対策を検討する。
【0183】
図17は、本発明の実施の形態8に係る死角移動体を報知するための報知システム700の構成を示す図であり、T字路に歩行者等と車両が存在する場合を示した図を示す。
【0184】
ここで交差点の中でも特にT字路に着目しているのは、以下の理由による。十字路の場合、出合い頭の交通事故が発生する危険性が高い場所にはすでに信号機が設置されていることが多い。このような状況では、車両4と歩行者3などとの間の出合い頭の事故はT字路で発生する可能性が高くなるからである。そこで、以降、交差点の中でも、「出合い頭の事故」が最も多発しているT字路を例に挙げて説明する。
【0185】
図17に示すように、横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合を示している。T字路に進入しようとしている電気自動車(車両4)が建築物(建物5)などにより歩行者3などにとって死角になる場合が問題となる。この場合には、広い道の右側から電気自動車が進入してきても、車両4の走行音がきわめて低いため、周囲の騒音が比較的静かなときでも、縦方向の狭い道を上方向に歩いている歩行者等が電気自動車に気づかない状況が発生する。歩行者3などが右からの車両に気がつかず広い道路に飛び出したりすると、出合い頭の事故が発生してしまう。特に、今後ハイブリッド車、電気自動車が本格的に普及し始めるので、このような交通事故が増加する可能性がある。
【0186】
但し、横方向の道も縦方向の道も広い道の場合においては、歩道や信号機なども整備されていることが多いので、出合い頭の事故もそれほど多く発生することは無い。
【0187】
また、図17において、横方向の広い道に車両が左から右に走行している場合は、歩行者3などが縦方向の狭い道から飛び出したとしても、車両は左側通行のため、横方向の広い道に左から右に走行している車両と歩行者などには広い道の半分程度の距離があるので、出合い頭の事故につながることは殆どない。
【0188】
また、建物5が右側の角でなく左側の角に存在する場合には、右側から左側に走行している車両が死角になることはないので、このような場合も出合い頭の事故につながることは殆どない。
【0189】
結局、横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合に、横方向の広い道の右側から左側に走行している車両と縦方向の狭い道を下から上方向に歩いている歩行者等に関してのみ、車両と歩行者等が出合い頭の衝突事故が発生する危険性が高い。
【0190】
図18は、横方向の広い道に縦方向の狭い道がT字型に接している場合を示した図である。
【0191】
図18に示すように、広い道の左側から右側に歩行者3などが歩いていて、縦方向の狭い道を下から上方向に車両が走行しているときには、車両4と歩行者3などが出合い頭の衝突事故を発生させる危険性がそれほど高くない。この場合には、車両4は優先道路を走行していないのでT字路に進入するときには、当然速度を落として、しかも、通常は停止線で一時停止をする。このため、図18のような場合は、図17ほどの出合い頭の衝突事故が発生する危険性は高くはない。
【0192】
このような考察をもとに、本実施の形態では、信号機が設置されていないケースのうち、最も車両の静音性に起因した出合い頭の事故の危険性がある図17の場合を中心に説明する。但し、図17の場合でも広い道の右側から左側に走行している車両が直進するのか、左折するのかにより状況が異なる。そこで、特に、車両が直進する場合と車両が左折する場合を検討することにする。
【0193】
再び、図17を参照する。図17には、道路1、車道と歩道の境界線2、歩行者3など、車両4、歩行者等3と車両4の間に存在し両者の死角になる建物5、路側機6、横断歩道7、表示機8、T字路の基準線9a、T字路の基準線9aから第1の距離に引かれた第1のライン9b、T字路の基準線9aから第2の距離に引かれた第2のライン9cが表されている。図17中矢印は、歩行者3などの歩行方向、車両4の走行方向を示している。
【0194】
表示機8は、歩行者等3の進行方向の路上又は路上周辺に設置される。
【0195】
車両4が横方向に走っている広い道路を右から左に走行し、T字路に進入しようとしている。一方、歩行者3などは縦方向に伸びた狭い道を下から上に向かって歩いている。歩行者3などと車両4の間には、両者の死角になる建物5などが存在しているので、歩行者3などの位置からは車両4がT字路に進入しようとしていることは確認できない。
【0196】
車両4がエンジンで駆動される車両であり、エンジン音が大きい場合は、歩行者3などは横断歩道7に近づく頃には車両4のエンジン音が聞こえ、車両4がT字路に進入してきていることを確認できた。しかし、車両4がハイブリッド車及び電気自動車である場合には、モータ駆動音も小さく、音だけからではその存在に気づかない可能性が大きくなる。
【0197】
本実施の形態の報知システム700は、路側機6を備える構成を採る。
【0198】
路側機6は、T字路に進入しようとしている車両4の映像を撮影し、その画像から車両4の距離を求める。
【0199】
図19は、上記路側機6の構成を示すブロック図である。
【0200】
図19に示すように、路側機6は、カメラ部11、演算処理部12、メモリ部13、送信部14、及び電源部15を備える。
【0201】
カメラ部11は、例えば、車両外部の画像を取得するCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサと、イメージセンサによって取得された画像を用いて例えばパターンマッチング等の手法を用いて歩行者等を特定する画像処理回路とを用いて実現することができる。
【0202】
カメラを用いてカメラから前方の車両までの距離を測定する方法は種々あり、一般にはステレオ法に基づいて2台のカメラで、その間の距離と、撮像された車両の映像の視差を用いて測距する方法が用いられている。しかし、ステレオ法に基づく測距装置は装置コストが高い。
【0203】
本実施の形態では、車両4までの測距は必ずしも必要ない。本実施の形態で必要とされるのは、車両4がT字路の基準線9aから例えば100m,30mに達したその瞬間を確認することである。
【0204】
図19の構成は、比較的安いインフラコストでこの瞬間を確認する方法を示している。
【0205】
本実施の形態では、路側機6のカメラの映像を画像認識することにより、車両4がT字路の基準線9aから例えば100m,30mに達したその瞬間を確認している。
【0206】
T字路の基準線9aから車両4に向けて第1の距離は、例えば、100mに引かれた第1のライン9bであり、T字路の基準線9aから車両4に向けて第2の距離は、例えば、30mに引かれた第2のライン9cである。
【0207】
路側機6は、反対車線を走行している車両に煩わされることなく車両4を直接撮影できるように、車両4が走行している車線側の歩道上に設置されている。このような位置にあるため、路側機6は反対車線を走行している車両に遮られることなく、カメラ部11により車両4が第1の距離に引かれた第1のライン9bに差し掛かるのを確認することができ、また第2の距離に引かれた第2のライン9cに差し掛かることも容易に確認することができる。
【0208】
第1のラインにおけるT字路の基準線9aから第1の距離が100mであり、第2のラインにおけるT字路の基準線9aから第2の距離が30mである場合、2つの距離に大きな差がある。このため、1つのカメラでそれぞれのラインに映像と焦点距離を合わせながら、正確に車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったのを画像処理で判定するのは難しい。勿論、路側機6のカメラ部11のカメラの映像と焦点距離を高速に変えて高速に撮影し、1つのカメラで、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったことを、その映像から高速に確認することも可能である。しかし、それぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに映像と焦点距離が合うように設定された2つのカメラで、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったことを撮影し、その映像から画像処理により判定させるほうが容易であることが多い。どちらのシステムを採用するかは、状況に基づいて適宜判断すればよい。
【0209】
以上のようにT字路の基準線9aから100mと30mの路上にラインを引いておき、そこに車両4が差し掛かることを路側機6のカメラ部11で監視することにより、車両4がT字路の基準線9aから100mと30mに到達している瞬間を正確に確認することができる。
【0210】
ところで、本実施の形態では、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったことを路側機6のカメラ部11の映像で確認している。この場合、T字路の基準線9a、T字路の基準線9aから第1の距離に引かれた第1のライン9b、T字路の基準線9aから第2の距離に引かれた第2のライン9cを道路の路面上に引いた例で説明している。
【0211】
公共性の高い路面にこれらのラインを引くことができない場合もある。このような場合には必ずしもT字路の基準線9a、T字路の基準線9aから第1の距離に引かれた第1のライン9b、T字路の基準線9aから第2の距離に引かれた第2のライン9cを道路の路面に引く必要はない。車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったことを路側機6のカメラ部11の映像で確認するには、次のような方法でも可能である。
【0212】
路側機6のカメラ部11は、複数のカメラを有し、そのうちの一台のカメラを第1のカメラ、他の一台のカメラを第2のカメラと呼ぶことにする。第1のカメラは、そのカメラのレンズを向ける方向を第1のライン9bにし、その倍率を調整して、そのカメラのレンズを通して撮影される映像を車両4の1台程度に設定する。しかも、その焦点距離を調節して、車両4が第1のライン9bに差し掛かったときに丁度ピントが合うようにする。このように設定された第1のカメラの映像から、車両4が第1のライン9bに差し掛かった瞬間をその映像の画像処理から確認することができる。
【0213】
同様に、第2のカメラは、そのカメラのレンズを向ける方向を第2のライン9cにし、その倍率を調整して、そのカメラのレンズを通して撮影される映像を車両4の1台程度に設定する。しかも、その焦点距離を調節して、車両4が第1のライン9cに差し掛かったときに丁度ピントが合うようにする。このように設定された第2のカメラの映像から、車両4が第2のライン9cに差し掛かった瞬間をその映像の画像処理から確認することができる。
【0214】
このように構成することにより、路上に第1のライン9b、第2のライン9cを引くことなく、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かったことを路側機6のカメラ部11の映像で確認するができる。
【0215】
路側機6のカメラ部11は、T字路に進入しようとしている車両4の映像を撮影する。演算処理部12は、これらの撮像画像を基に車両4がT字路の基準線9aからそれぞれ100mと30mに到達していることを画像認識により確認する。演算処理部12は、車両4のT字路の基準線9aまでの距離に応じて、前記複数の色を発光する発光体がどの色を発光させるかを決定する。路側機6は、この決定結果を送信部14から表示機8に対して送信する。
【0216】
例えば、路側機6は、演算処理部12での演算処理の結果により、下記指示を表示機8に送信する。
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満なら赤色
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから30m以上、100m未満なら黄色
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上なら青色、又は、色を発光させない。
【0217】
表示機8は、その指示に従って発光体の色を発光させる。
【0218】
上記、「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上なら青色、又は、色を発光させない」と該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上の場合に、「青色」と「色を発光させない」の2つの選択肢を設けたのには理由がある。「色を発光させない」の仕様にした方が消費電力の低減になり、かつ使用するLEDの数も少なくて済むので設備コストも若干安くなる。但し、「色を発光させない」の仕様の場合、表示機8が動作していない場合と、「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上」のために「色を発光させない」場合との区別がつかない。安全性を考慮すると、本実施の形態のように「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上なら青色」の仕様の方が好ましい。なお、LEDは「色を発光させない」ない仕様を選択しても、電源の電力の「有り無し」を別の方法で歩行者等3に知らせるような仕様にすればかかる不具合は発生しない。
【0219】
また、図19において、電源部15に如何に電力を常時供給するかが問題になる。一般的にはソーラーパネルを路側機6の一部に付属させ、そこで発生した電力をリチウムイオン蓄電池などで構成した電源部15に蓄電する方法が好ましい。しかし、この方法だけであると気象条件が悪く十分な電力が発電されない時に路側機6が機能しなくなってしまう。本実施の形態の報知システムは、歩行者3などの人命にかかわるシステムなので、このような事態は許されない。ソーラーパネルで発電する以外に、非常用の電池は別途内蔵する構成が好ましい。
【0220】
図20は、上記表示機8の構成を示すブロック図である。
【0221】
図20に示すように、表示機8は、受信部20、制御部21、発光部22、及び電源部25を備える。
【0222】
受信部20は、路側機6から送信される信号を受信する。
【0223】
制御部21は、受信部20からの信号をもとに制御信号を生成する。
【0224】
発光部22は、赤色のLED、黄色のLED、青色のLEDからなり、制御部21からの制御信号により発光する。発光部22は、例えば赤色のLED、黄色のLED、青色のLEDで構成されている。異なった数種の発光が実現できるものであれば、LEDに限定されるものではない。また、「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上なら色を発光させない」仕様を選択した場合は、青色のLEDは必要なくなる。
【0225】
電源部25は、受信部20、制御部21及び発光部22に電力を供給する。表示機8においても、電源部25に如何に電源を常時供給するかが問題になる。一般的にはソーラーパネルを表示機8の一部に付属させ、そこで発生した電流をリチウムイオン蓄電池などで構成した電源部25に蓄電する方法が好ましい。これだけであると気象条件が悪く十分な電流が発電されない時に表示機8が機能しなくなってしまう。本実施の形態の報知システムは、歩行者等の人命にかかわるシステムなのでこのような事態は許されない。ソーラーパネルで発電する以外も非常用の電池は別途内蔵する構成が好ましい。
【0226】
図21は、表示機8の路上に埋め込むタイプの表示機8の外形を模式的に示す図であり、図21(a)は歩行者3などから見た側面図、図21(b)はその上面図である。
【0227】
図21に示すように、路上に埋め込むタイプの表示機8は、カバー部51、赤色のLED52、黄色のLED53、青色のLED54、及び本体部55を備える。本体部55は、発光部22以外の受信部20、制御部21、電源部25(いずれも図20参照)などを内蔵し、本体部55は通常設置された状態では道路の中に埋め込まれる。
【0228】
LEDの光は、歩行者3などのみから見えるように、歩行者3などの方向のみにLEDが存在する。
【0229】
カバー部51、本体部55は通常の道路鋲のようにアルミなどの強固な材料で構成されており、その上を車両などが通行したとしても破損しないように設計されている。
【0230】
図22は、路上周辺に設置されるタイプの表示機8Aの外形を模式的に示す図であり、歩行者3などからみた側面図である。
【0231】
図22に示すように、路上に埋め込むタイプの表示機8Aは、カバー部61、赤色のLED62、黄色のLED63、青色のLED64、及び支柱部65,66を備える。支柱部65,66は、発光部22以外の受信部20、制御部21、電源部25(いずれも図20参照)などを内蔵した本体部である。
【0232】
次に、本実施の形態の報知システム700の動作について説明する。
【0233】
図17及び図18に示すように、歩行者3などは、歩行者3などと車両4の間に存在し両者の死角になる建物など5のために、歩道7に近づいても、車両4がハイブリッド車又は電気自動車のためモータ音は小さくその存在に気がつかない。
【0234】
本実施の形態では、歩行者3などの進行方向の路上又は路上周辺に表示機8が設置されている。表示機8は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上の時には、青色のLED54を発光させるか又は全てのLEDを発光させない。車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m以上でかつ100m未満になった時に、黄色のLED53を発光させる。車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満になった時に赤色のLED52を発光させる。この時点で、歩行者3などは、自分の進行方向にあるT字路に車両4が進行しており、しかも、T字路の基準線9aから僅か30m未満に来ていることを事前に知ることができる。
【0235】
本実施の形態では、車両4がT字路に進入しようとしていることを、LEDの発光により報知しているため、夕方、夜間においてますます見やすくなる。一般にここで説明しているような出合い頭の事故は、昼間より、夕方、夜間に発生する可能性が高いので有効である。
【0236】
さらに、車両4がT字路の基準線9aを通過した場合、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満で発光していた赤色のLED52の発光を消す必要がある。車両4がT字路の基準線9aを通過したことにより危険は去ったので、そのことを歩行者等3に知らせる必要があるからである。このためには、車両4がT字路の基準線9aに差し掛かった瞬間を正確に知る必要がある。
【0237】
本実施の形態では、路側機6のカメラ部11(図19参照)は、第3のカメラとして、予めT字路の基準線9aに焦点を合わせておく。そして、路側機6のカメラ部11(第3のカメラ)は、車両4がT字路の基準線9aに差し掛かったことを撮影し、演算処理部12(図19参照)は、カメラ部11により撮影された映像で、車両4がT字路の基準線9aに差し掛かったことを判定する。路側機6の送信部14(図19参照)は、この判定結果を表示機8に送信する。表示機8は、受信部20(図20参照)により路側機6からの判定結果を受信し、制御部21(図20参照)は、赤色のLED52の発光を消す制御を行う。
【0238】
以下、報知システム700の動作を具体的に説明する。
【0239】
<車両が左折する場合>
歩行者3などと車両4の間に両者の死角になる建物5が存在し、車両4の走行音が静かなためその存在に気がつかず、交通事故が発生しやすいケースとしては、今まで説明してきたように車両4が直進する場合のほかに左折する場合がある。車両4が左折する場合は歩行者3などを巻き込んでしまう事故が発生する。この場合、横方向の広い道路の歩道を歩行する歩行者等も巻き込んでしまう可能性がある。しかし、これらの歩行者等は車両4の運転者から直接に見えるので、建物5により運転者から死角になっている歩行者等と比較して、巻き込み事故の発生する可能性は低い。
【0240】
そこで、車両4が縦方向の狭い道を下から上に歩行している歩行者等3を巻き込んでしまう事故に対する対策を検討する。
【0241】
通常、運転者は車両4がT字路の基準線9aから30m以内の距離に入った後にウインカーを出すので、この場合を例に挙げて説明する。
【0242】
本実施の形態では、路側機6のカメラ部11(図19参照)は、第4のカメラとして、予め車両4がT字路の基準線9aから30m以内の距離に入った箇所に焦点を合わせておく。そして、路側機6のカメラ部11(第4のカメラ)は、車両4がT字路の基準線9aから30m以内の距離に入った後において、車両4のウインカーを常時監視する。
【0243】
車両4が左折のためにウインカーを出した場合は、路側機6のカメラ部11(第4のカメラ)は、そのウインカーの映像を撮影する。演算処理部12(図19参照)は、ウインカーの映像から車両4が左折のためにウインカーを出したことを判定する。演算処理部12は、車両4の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満に発光させる赤色のLED52(図21参照)の信号に加えて、車両4が左折のためにウインカーを出したことを報知する信号を出力する。路側機6の送信部14(図19参照)は、演算処理部12により出力されたこれらの信号を、表示機8に送信する。表示機8の受信部20(図20参照)は、これらの信号を受信する。表示機8の制御部21(図20参照)は、赤色のLED52を発光に加えて、点滅させるための信号を作成して発光部22(図20参照)に送る。発光部22は、赤色のLED52を点滅発光させる。同様の方法により、車両4がT字路の基準線9aから30m以上離れた距離でウインカーを出した場合には、黄色のLED53を点滅させるようにする。
【0244】
このように、表示機8は、赤色のLED52の発光に加え、更に、それを点滅させる。これにより、歩行者3などは、T字路の右側から車両4が30m以内に差し迫っているだけでなく、車両4が左折しようとウインカーを出していることを知ることができる。歩行者3などは、左折してくる車両4に巻き込まれないように、下から上に走っている縦方向の狭い道の端に身を移動させる等の事前の対応が可能になる。
【0245】
以上に説明したこと以外にも、本実施の形態の死角移動体を報知するための報知システム700を構築するに際して注意すべき点がいくつか存在する。この内容を以下にまとめて説明する。
【0246】
まず、1つ目は、路側機6を設置する場所とそれぞれのカメラの高さに関することである。
【0247】
T字路に路側機6は、路側機6自身の設置場所、及び設置するカメラの高さ等を十分検討する。例えば、路側機6のカメラ部11は、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9aに差し掛かったことを他の車両の陰になることなく撮影できる必要がある。更に、車両が左折するに際してのウインカーをも同時に確認できる場所であることも必要となる。
【0248】
T字路の状況によっては、路側機6のカメラ部11は、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9aに差し掛かったことを撮影するカメラ群(第1のカメラ、第2のカメラ2、第3のカメラ)をそれぞれ別の高さ、別な方向に設置する場合がある。更に、車両が左折するに際して出すウインカーを確認するカメラ(第4のカメラ)を前記カメラ群と別の高さ、別な方向に設置する場合がある。路側機6は、これらのことを考慮して、それぞれのカメラの高さと方向を別々に変えられるような仕様にしておくことが重要である。
【0249】
図23は、上記路側機6のカメラ部11の設置例を示す図である。
【0250】
図23に示すように、路側機6のカメラ部11(図19参照)の適用対象として、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9aに差し掛かったことを撮影するカメラ群を、それぞれ第1のカメラ71、第2のカメラ72、第3のカメラ73とする。路側機6のカメラ部11(図19参照)の適用対象として、車両4がT字路の基準線9aから30m以内の距離に入った箇所に配置され、ウインカーを撮影するカメラを第4のカメラ74とする。
【0251】
上記、それぞれのカメラ71〜74は、第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9a、車両が左折時に出すウインカーを出すとしたらこの位置であろう想定される位置にカメラの方向と焦点距離が設定されている。
【0252】
また、第1のカメラ71、第2のカメラ72、第3のカメラ73、及び第4のカメラ74の筐体の右側の面には、カメラのレンズ(図示略)がある。図23の破線矢印は、それぞれのレンズから第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9a、車両が左折するに際して出すウインカーが確認できる位置を示している。
【0253】
図24は、第1のカメラ71により車両4が第1のライン9bに差し掛かったことを撮影した瞬間の映像を示す図である。
【0254】
第1のカメラ71は、車両4が第1のライン9bに差し掛かった場合、図24に示す映像70を撮影する。路側機6のカメラ部11の演算処理部12(図19参照)は、撮影された映像70に対して画像認識を行って車両4が第1のライン9bに差し掛かったことを判別する。
【0255】
2つ目は、2台の車が数メートルの距離の差で続けて来るような場合の対応の仕方である。基本的な考え方は、それぞれの時点で歩行者3などにとって最も危険な車両4に対する警報を表示機8で報知する。
【0256】
最も危険な車両4が、T字路の基準線9aを通過した場合、その時点で次に危険である車両の情報に基づいて適切な警報を表示機8で表示する。最も危険な車両4がT字路の基準線9aを通過した時点で次に危険である車両がT字路の基準線9aから30m以内にあるのであれば、最初の車両による赤色の発光が終わった後でも、引き続き次の車両による赤色の発光が続くことになる。
【0257】
このように路上の車両4がT字路に進入する場合の形態は様々である。どのような場合でも報知システム700が対応できるような仕様に設計する必要がある。そのための対処方法の一例を以下に説明する。
【0258】
車両4が第1のライン9bに差し掛かった時点でその車両に名称をつけ、その後、該当車両が第2のライン9cに差し掛かった事象、T字路の基準線9aに差し掛かった事象をそれぞれのカメラで撮影する。路側機6の演算処理部12(図19参照)は、撮影された映像に対して画像認識を行って車両4がT字路の基準線9aに差し掛かったことを判別する。メモリ部13は、この判別結果を記憶する。演算処理部12(図19参照)は、同様な処理を、車両4のような状況でT字路に進入したすべての車両に対して実施する。演算処理部12は、第1のカメラ71、第2のカメラ72、第3のカメラ73(いずれも図23参照)でそれぞれのラインの通過を確認した車両4についての情報を演算し、メモリ部13は、その演算結果を記憶する。演算処理部12は、T字路の該当領域の車両状況を把握することができる。
【0259】
これにより、演算処理部12は、複数の車両がT字路の該当領域に存在していても、どの車両がそれぞれの時点で歩行者3などにとって最も危険な車両4に相当するかを判断し、車両名に「最も危険な車両4に相当ことを表示するマーク」を施す。更に、演算処理部12は、次に危険な車両にも「次に危険な車両に相当することを表示するマーク」を施す。「最も危険な車両4に相当ことを表示するマーク」を施された車両もT字路の基準線9aを通過した時点でそのマークは外れ、次にT字路の基準線9aに近い車両、つまり、次に危険であった車両が最も危険な車両4として取り扱われる。
【0260】
次に危険であった車両が、T字路の基準線9aと第2のライン9cの間で、最も危険な車両4を追い越した場合でも、以下のようにして対処できる。
【0261】
演算処理部12は、本来なら最も危険な車両4がT字路の基準線9aに差し掛かるはずであったのに、次に危険であった車両が先にT字路の基準線9aに差しかかったことを確認した場合は、次に危険であった車両がT字路の基準線9aと第2のライン9cの間で最も危険な車両4を追い越したと判断する。そして、演算処理部12は、次に危険であった車両から、「次に危険な車両に相当することを表示するマーク」を外すと共に、「最も危険な車両4に相当ことを表示するマーク」を施された車両は依然として最も危険な車両であるので、そのマークを保持する。この時点で「次に危険な車両に相当することを表示するマーク」は、最も危険な車両の次に走行している車両に施される。これにより、第1のカメラ71、第2のカメラ72、第3のカメラ73(いずれも図23参照)でそれぞれのラインの通過を確認した車両4についての情報を演算処理部12とメモリ部13で演算、記憶し、T字路の該当領域の車両状況を把握する。
【0262】
3つ目は、タイムラグに関することである。
【0263】
路側機6のカメラ部11(図19参照)を「車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9aに差し掛かった」時点と、このことを路側機6の演算処理部12が画像処理により認識、判断し、送信部14(図19参照)からこれらに対応する信号を表示機8に送信し、表示機8の受信部20がこれらの信号を受信し、制御部21(図20参照)で対応する発光部の処理に変換し、発光部22で対応するLEDの発光動作が行われる時点までには若干のタイムラグがある。若干のタイムラグとはいえ人命にかかわることであるので、正確に、しかも、安全サイドに制御を行う必要がある。
【0264】
車両4の走行速度は、T字路の基準線9aから100m程度では時速を60km/h、T字路の基準線9aから30m程度では時速を30km/hと仮定する。車両4は、時速60kmとすると1秒間に16.7m程度走行し、時速30kmでも1秒間に8.3m程度走行する。したがって、前記タイムラグの最大値を算出し、このタイムラグを安全サイドに補正する必要がある。
【0265】
このタイムラグを補正する方法にもいろいろな方法がある。その一例を述べる。
【0266】
「車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9c、T字路の基準線9aに差し掛かった」時点から発光部22で対応するLEDの発光動作が行われるまでのタイムラグが、最大0.5秒であるとした場合、車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かる0.5秒前に「車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かった」と判断するように補正すればよい。車両4がそれぞれ第1のライン9b、第2のライン9cに差し掛かる0.5秒前の距離で、判断するようにする。
【0267】
第1のライン9bの場合では、0.5秒前の距離で、T字路の基準線9aから100mに到達したと判断し、第2のライン9cの場合では0.5秒前の距離で、T字路の基準線9aから30mに到達したと判断するようにする。第1のライン9bでの車両4の速度を60km/hと仮定すると、第1のライン9bの8.3m手前、つまり、T字路の基準線9aから108.3mに第1のライン9bを引いとけばよいことになる。同様に、第2のライン9cでの前記車両4の速度を30km/hと仮定すると、第2のライン9cの4.2m手前、つまり、T字路の基準線9aから34.2mに第2のライン9cを引いておけばよいことになる。
【0268】
但し、「車両4がそれぞれT字路の基準線9aに差し掛かった」時点の判断が遅れることは、車両がT字路の基準線9aと30mに引かれた第2のライン9cとの間に存在するとして赤色のLEDの発光している時間が0.5秒延びるだけであるので、どちらかと言えば安全サイドに判断されるのでこれに関するタイムラグの補正は不要である。
【0269】
また、第1のライン9b、第2のライン9cがT字路の基準線9aからどの距離に引かれているかの情報を歩行者等に知らせない場合は、このタイムラグの内容も知らせる必要は無い。しかし、歩行者等の中には本発明の死角移動体を報知するための報知システムに関心を持ちこれらの情報を知りたがる人も多いので、タイムラグの補正をできるだけ正確に行うことは必要である。歩行者3などは、表示機8のLEDを観察していて、その発光色が黄色から赤色に変化したことにより、車両4がT字路の基準線9aから30mであると認識する。
【0270】
4つ目は、表示機8を歩行者3などにとってより目立たせることに関する。
【0271】
図25は、本実施の形態の報知システム800の路面に埋め込んだ表示機8を路面一杯に光らせる場合を示す図である。図17と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0272】
図25に示すように、図17の表示機8に代えて、路面一杯に光る表示機8Aを設置する。表示機8Aは、設置コストの増大につながるが、出合い頭の事故が特に多い場所のような特別なT字路のみに設置するようにすると効果が大きい。例えば、子供は注意力が十分でないので、路面一杯に光る表示機8Aを設置することで、子供の事故が多発するT字路などにおいて事故を未然に防ぐことが可能になる。
【0273】
5つ目は、路側機6のカメラ部11(図19参照)のカメラの追加的な使用方法に関する。
【0274】
路側機6のカメラ部11にT字路の基準線9a、第1のライン9b、第2のライン9c、それに車両4のウインカーのそれぞれに焦点を合わせたカメラを用いる場合、これらのカメラを上述した目的だけに限定する必要はない。特に、T字路の基準線9a、車両4のウインカーのそれぞれに焦点を合わせた第3のカメラ73及び第4のカメラ74(図23参照)は、例えば、常時1秒ごとに映像を撮影し、その映像を路側機6のメモリ部13(図19参照)に一日程度記録しておくような仕様にすることもできる。
【0275】
路側機6の演算処理部12(図19参照)は、これらのカメラの映像を常時解析し、通常の映像ではない場合、例えば、交通事故にかかわるような映像である場合、その保存期間を1週間程度保存するようにし、これらの映像を交通事故の原因究明にも役立てるようにすることも可能である。演算処理部12は、画像認識機能を有するので、通常の映像ではない、例えば交通事故にかかわるような映像を認識させることができる。このように、本実施の形態に使用しているカメラを、交通事故の監視用のカメラとしても兼用することができる。
【0276】
報知システム800の設置場所が、出合い頭の事故が多発する可能性がある場所であることから、このような場所に交通事故の監視用のカメラとしても利用できるカメラ(場合によってはビデオでもよい)を設置することは、発生した交通事故の原因究明にとって効果がある。さらに、これらのカメラの映像を演算処理部12で常時解析し、通常の映像ではない場合、例えば交通事故にかかわるような映像である場合、その発生情報を地域の警察に無線などで連絡するとともにその交通事故の映像を送るようにすると、交通事故への早期対応が可能になる。
【0277】
また、T字路の基準線9a、第1のライン9b、第2のライン9cを通過する車両4を常時監視しているのでカメラで、通過する車両4のナンバープレートを読み取るようにし、交通事故が発生したときに、その事故に関与した車両4を割り出すようにすることも有効である。
【0278】
6つ目は、路側機6のカメラ部11のカメラの別な追加的な使用方法に関する。
【0279】
路側機6のカメラ部11は、T字路の基準線9a、第1のライン9b、第2のライン9cを通過する車両4を常時監視しているので、これのカメラを活用して、交通量を把握することもできる。
【0280】
(実施の形態9)
実施の形態9は、視覚障害者を対象にして以下のような追加機能を持たせる。
【0281】
例えば、路側機6の演算処理部12(図19参照)は、下記の演算処理を行い、演算処理に基づく指示を表示機8に送信し、表示機8はその指示に従って警報音を発生する。
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから30m未満なら周期が0.1秒の音
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから30m以上、100m未満なら周期が1秒の音
・該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上なら周期が2秒の音、又は、音を発生しない。
【0282】
「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上」の場合に、「周期が2秒の音」と「音を発生しない」の選択になっている。T字路の交通量にも依存するが、通常は、多くの時間帯では「該当車両の現在の位置がT字路の基準線9aから100m以上」であろうと思われる。この場合に「周期が2秒の音」が鳴っていると歩行者3などにとってもわずらわしいので、「音を発生しない」ようにする仕様が好ましい。但し、その時には何らかの方法で、表示機8の電源の電力があることを歩行者等に知らせる必要がある。
【0283】
本実施の形態は、歩行者3などに警告する方法として警報音で説明しているが、警報音に限られるものではなく、適切な周期の振動でもよい。
【0284】
図26は、本発明の実施の形態9における表示機8Bの構成を示すブロック図である。図20と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0285】
図20に示すように、表示機8Bは、受信部20、制御部21、発光部22、警報部23、及び電源部25を備える。
【0286】
警報部23は、3つの周期の警報音を発生する。
【0287】
視覚障害者は、進行方向の路上又は路上周辺に設置された表示機8からの警報音により、車両4がT字路に進入しようとしていること、しかも、その音の周期で、車両4のT字路の基準線9aからどの位の距離に来ているかも知ることができる。
【0288】
警報部23は、歩行者3などに対して車両4がT字路に進入しようとしていることを報知する。報知手段が警報音であるため、昼間のみならず、夕方、夜間においてその効力を発揮する。
【0289】
表示機8Bは、視覚障害者の進行方向の路上又は路上周辺に設置され、表示機8Bの警報部23が警報音を発生する。視覚障害者の近くで警報音が発生されるので、視覚障害者にとって警報音を聞き取りやすくなっている。また、対象とする歩行者等にのみ聞こえるような指向性のある警報音を使用すると効果的である。
【0290】
(実施の形態10)
実施の形態10は、視覚障害者に以下のような機能を有する携帯機器を所持してもらい視覚障害者に対して優しいシステムにする。
【0291】
図27は、本発明の実施の形態10に係る死角移動体を報知するための報知システム900の構成を示す図であり、T字路に歩行者等、特に、視覚障害者と車両が存在する場合の例である。図17と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0292】
図27に示すように、報知システム900は、視覚障害者3Aが携帯機器10を所持する。携帯機器10は、図示しない通信機能と、GPS(Global Positioning System)機能と、警報音を発するスピーカとを有する。
【0293】
携帯機器10は、GPS機能により現在位置情報を取得し、送信機能により路側機6に自機の登録ナンバー及び取得した現在位置情報を送信する。
【0294】
路側機6は、携帯機器10から送信された上記情報を受信し、路側機6の演算処理部12(図19参照)は、受信した情報を基に携帯機器10を所持する視覚障害者3Aが、T字路のどこにいるか、さらに、どの方向に移動しているかを演算により算出する。
【0295】
例えば、携帯機器10は、GPS機能により取得した時刻T1(現在より数秒前)における位置情報(X1,Y1)と時刻T2(現在)における位置情報(X2,Y2)を取得し、通信機能によりこれら位置情報を路側機6に送信する。
【0296】
路側機6の演算処理部12(図19参照)は、現在の視覚障害者3Aの位置情報である携帯機器10の位置情報(X2,Y2)を、自分自身が保有するT字路の近辺の地図情報上に重ね合わせることにより、視覚障害者3AがT字路のどの位置にいるかを確認する。また、演算処理部12は、刻々と変化する携帯機器10の位置情報を取得し、視覚障害者3Aがどの方向に移動しようとしているか、つまり、視覚障害者3Aの移動方向を判定する。演算処理部12は、特に対応が必要である場合には、これらの情報を路側機6のメモリ部13(図19参照)に記憶する。特に対応が必要である場合は、例えば視覚障害者3Aが縦方向の狭い道の下から上に移動しており、しばらくするとT字路に進入する可能性がある場合などである。
【0297】
図27に示すように、視覚障害者3Aが縦方向の狭い道の下から上に移動し、車両4が横方向の広い道路の右側からT字路に進入してきている場合、路側機6は、視覚障害者3Aに対してその車両4の存在を報知する必要がある。
【0298】
しかし、視覚障害者3Aが縦方向の狭い道ではなく横方向の広い道の歩道を左側から右側に歩いている場合は、横方向の広い道を右側から左側に走行している車両4の運転者からその存在は十分視覚で確認できる。このような場合には、路側機6は、視覚障害者3Aに対して車両4の接近をかならずしも報知する必要はない。
【0299】
携帯機器10は、スピーカ(図示略)により警報音を発して視覚障害者3Aに報知する。視覚障害者3Aは、携帯機器10からの警報音により、車両4がT字路に進入しようとしていること、しかも、その音の周期で、車両4のT字路の基準線9aからどの位の距離に来ているかも知ることができる。報知手段が警報音であるため、昼間のみならず、夕方、夜間においてその効力を発揮する。また、視覚障害者3Aは、自らが携帯している携帯機器10の警報音により報知されるため、確実に警報音を聞き取ることができる。
【0300】
ところで、携帯機器10は、GPS機能により取得した位置情報が十分な精度を持たない場合がある。また、マルチパスなどの誤差要因からその取得した位置は数メートの誤差があることがある。このような場合、路側機6は、視覚障害者3Aの正確な位置情報が取得できないことにより、出合い頭の事故などを回避するための適切な情報を視覚障害者3Aに報知できない可能性が発生する。これに対処するために、取得した位置情報に補正を加える必要がある。以下にその補正の方法について説明する。
【0301】
まず、路側機6を設置する際には、専用の測量用の高精度のGPS機器を使用するなどして路側機6の正確な位置情報を求めた後で、路側機6を設置する。路側機6の正確な設置場所情報が分かっているので、その正確な位置情報とGPS機能を持った携帯機器10が持っている正確な絶対時間と、路側機6が持っている正確な絶対時間とから、以下のようにして路側機6とGPS機能を持った携帯機器10との正確な距離が求まる。
【0302】
GPSシステムにおいて、送信機側であるGPS衛星には原子時計を搭載し正確な時計を持っている。受信機側である携帯機器10の時計には、誤差が含まれる。4つのGPS衛星からの航法メッセージを受信できれば、携帯機器10の時計の誤差は補正でき、正確な絶対時間が求まる。路側機6を設置する際には、4つのGPS衛星からの航法メッセージが受信できる場所に設置するように設置場所を選定することができる。また、携帯機器10は、4つのGPS衛星からの航法メッセージが受信できる位置で取得し、補正した時計の時間で代用する。
【0303】
まず、携帯機器10は、GPS機能を用いて取得した位置情報と正確な絶対時間を自分の登録ナンバーとともに路側機6に送信する。路側機6は、携帯機器10から位置情報と正確な絶対時間と登録ナンバーを受け取るとともに、それらの情報を受け取った正確な絶対時間を記録する。次に、電波の速度が既知であるため、電波が携帯機器10から路側機6に届くのに要した時間から、その間の距離が求まる。携帯機器10の位置情報から視覚障害者3Aが狭い道路上にいることはすでに分かっているので、路側機6からの携帯機器10の距離が求まれば、視覚障害者3Aの狭い道路上での位置も周辺の地図を用いて1m以内の誤差で求まる。
【0304】
以上の位置情報の補正の仕方以外にも、次のような方法もある。
【0305】
路側機6も視覚障害者3Aと同じGPS機能を内蔵し、自らの位置情報をそのGPS機能を使用して求める。この情報は、マルチパスなどからその取得した位置は数メートの誤差があることがある。そこで、路側機6を設置する際に専用のGPS機器を使用して求めた正確な位置情報と視覚障害者3Aと同じGPS機能を使用して求めた位置情報との差分情報を算出する。この差分情報を用いて携帯機器10がGPS機能を用いて得た位置情報に補正をかける。この場合は、電波が携帯機器10から路側機6に届くのに要した時間の検出は不要になる。
【0306】
また、路側機6が算出した差分情報を、携帯機器10に送り、携帯機器10側で補正を行えば、携帯機器10側で自らの位置情報を正確に知ることができる。
【0307】
なお、本実施の形態では、携帯機器10を所持する対象を視覚障害者3Aとして説明したが、これに限定されるものではない。表示機8の発光や警報音では気づきづらい子供や老人の方にもこのような機器を所持してもらうことにより、T字路での出合い頭の事故を減少させるのに役立つであろう。
【0308】
また、歩行者3などが視覚障害者3Aでなく、聴覚障害者に優しいシステムも同様に拡張できる。
【0309】
例えば、携帯機器10から上記警報部を分離して補聴器型とし、携帯機器10と補聴器型の警報部とをBluetooth(登録商標)によって結ぶ。このような構成すれば、携帯機器10の警報部(図示略)では音が小さすぎて聞きづらいような聴覚障害者にとっても警報が聴き取り易い優しい報知システムを構築することができる。発光による表示機8が見落としやすい場合もあるので、補聴器型の警報部にすることは有効である。
【0310】
(実施の形態11)
図28は、本発明の実施の形態11に係る死角移動体を報知するための報知システム1000の構成を示す図である。図17と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0311】
図28に示すように、報知システム1000は、路側機の特別な形態である注意報知装置1006を備える。注意報知装置1006は、図17の路側機6に圧縮空気発生部1020が付加されている。図28中、T字路の第1の基準線9a、T字路の第2の基準線1011、第4のライン1012を表す。また、図28の太矢印は、圧縮空気発生部1020から歩行者3などに向かって発射された空気砲1010を表している。
【0312】
図28に示すように、車両4は、横方向に走っている広い道路を右から左に走行し、T字路に進入しようとしている。一方、歩行者3などは縦方向に伸びた狭い道を下から上に向かって歩いている。歩行者3などと車両4の間には、両者の死角になる建物など5が存在しているので、歩行者3などの位置からは車両4がT字路に進入しようとしていることは確認できない。
【0313】
図29は、上記注意報知装置1006の構成を示す図である。図19と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0314】
図29に示すように、注意報知装置1006は、カメラ部11、演算処理部12、メモリ部13、圧縮空気発生部1020、及び電源部15を備える。
【0315】
圧縮空気発生部1020は、空気圧の衝撃波である空気砲1010(図28参照)を発射する。
【0316】
カメラ部11は、2台のカメラが内蔵されており、それぞれ第1のカメラ、第2のカメラと呼ぶことにする。
【0317】
T字路の第1の基準線9aから30mの路上に第2のライン9cを引いておく。注意報知装置1006は、T字路の第1の基準線9aから30mの路上に第2のライン9cに車両4が差し掛かることを監視し、車両4がT字路の第1の基準線9aから30mに到達している瞬間を正確に確認する。
【0318】
カメラ部11の第1のカメラは、交差点などに進入しようとしている車両4の映像を撮影し、演算処理部12は、これらの撮像画像を基に、車両4がT字路の基準線9aから30mの第2のライン9cに差し掛かったことを画像認識により確認する。
【0319】
一方、カメラ部11の第2のカメラは、縦方向に伸びた狭い道を下から上に向かって歩いている歩行者3などが交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在することを撮影している。
【0320】
演算処理部12は、歩行者3などが交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在する場合に、車両4がT字路の基準線9aから30mの第2のライン9cに差し掛かったことを画像認識により確認する。
【0321】
演算処理部12は、車両4がT字路の基準線9aから30mの第2のライン9cに差し掛かり、かつ、歩行者3などが交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在する場合に、制御信号を圧縮空気発生部1020に送る。圧縮空気発生部1020は、演算処理部12からの制御信号を受けて駆動し、歩行者3などに向けて空気砲1010を発射する。
【0322】
本実施の形態では、カメラ部11が路上に引かれたT字路の基準線9a、第2のライン9c、交差点の第2の基準線1011及び第4のライン1012を撮影し、演算処理部12が画像認識処理して、車両4が第2のライン9cに差し掛かったことや歩行者3などが交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在することを確認している。
【0323】
路上にT字路の基準線9a、第2のライン9c、交差点の第2の基準線1011及び第4のライン1012を引かずに済ませるには次のような方法がある。
【0324】
第1のカメラは、そのカメラのレンズを向ける方向を第2のライン9cにし、その倍率を調整して、そのカメラのレンズを通して撮影される映像を車両4の1台程度に設定する。しかも、その焦点距離を調節して、車両4が第2のライン9cに差し掛かったときに丁度焦点距離(ピント)が合うようにする。このように設定された第1のカメラの映像から車両4が第2のライン9cに差し掛かった瞬間をその映像の画像処理から確認することができる。
【0325】
また、歩行者3などが前記交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在することも、第2のカメラのレンズを向ける方向とその倍率を調整し、第2のカメラの映像の焦点距離(ピント)が前記交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域になるように設定する。交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域の映像に歩行者等が入っており、かつ、焦点距離(ピント)があっている場合に、歩行者3などが交差点の第2の基準線1011から第4のライン1012の間の領域に存在すると確認するようにする。
【0326】
このようにすることにより、路上にT字路の基準線9a、第2のライン9c、第2の基準線1011、第4のライン1012を引くことなくほぼ同様な効果を得ることができる。
【0327】
以上、カメラのレンズを向ける方向とカメラのレンズの焦点距離が合っているかによって、交差点の中央からある距離に車両4が到達したこと、及び交差点の中央からある距離に歩行者3などが存在することを確認する手法について説明した。
【0328】
上記手法は、道路上に引いたラインに車両が差し掛かった画像や、ライン間に歩行者等が存在することを画像認識で確認することと比較して正確さは多少劣るものの、公的な道路上にラインを引くことが禁じられているような場合にはこのような方法しか採用できない。
【0329】
また、指向性のある警報音を用いたとしても、その指向性は十分でなく、報知したい歩行者等以外にも音が漏れ、必要の無い歩行者等を驚かしてしまうことが考えられる。本実施の形態では、確実に報知したい歩行者3などだけに圧縮された空気を送ることができ、歩行者3などは、横方向の広い道路に車両4が、T字路の第1の基準線9aから30mの距離に来ていることを知ることができる。また、空気砲1010は、空気圧であるので、無害である。
【0330】
LEDの発光や警報音などであると見落としたり、聞き漏らしたりすることが発生しやすい。本実施の形態は、歩行者3などへの報知手段が空気砲1010であるため、報知が伝わらないことは少ない。
【0331】
ここで、歩行者3などに無用な驚きを与えないように、空気圧の強さを決定する。圧縮空気発生部1020から歩行者3などの距離により空気圧の強さは変わってくるので、対象の大まかな距離によりその空気圧を変えるような工夫が必要である。
【0332】
なお、本実施の形態では、圧縮空気発生部1020で作成した空気砲1010を用いる例について説明しているが、歩行者3などに車両4がT字路に進入しようとしている危険性を確実に報知できるものであれば、空気砲には限定されない。
【0333】
(実施の形態12)
実施の形態11では、道がT字路である場合を中心に説明した。車両がハイブリッド車や電気自動車である場合、これらの車両の走行音が静かなことに起因して歩行者等と車両がT字路において出合い頭の事故を起こす危険性がある。一本道の場合は、頻度は少ないものの、ハイブリッド車や電気自動車の走行音の静音性に起因した衝突事故は発生している。今後は、ハイブリッド車や電気自動車の台数が飛躍的に増加するので、一本道の場合でも、ハイブリッド車や電気自動車の走行音の静音性に起因した衝突事故は増加することが懸念される。
【0334】
このような状況を鑑みると、今後ハイブリッド車や電気自動車は、走行音の静音性に起因した衝突事故を回避する手段を標準として装備する必要がある。
【0335】
一本道でハイブリッド車や電気自動車の走行音の静音性に起因した衝突事故が発生する状況を再度確認すると以下のようである。
【0336】
田舎道などの一本道においては、車両も殆ど通らず、横断歩道も十分には整備されていない場合も多い。このような場合では通常、歩行者等は車両の接近に注意を払っていないことが多い。例えば、歩行者等は背後から車両が接近していることに気づかず、左右を十分確認せずに道路を横断することがある。その結果、車両と歩行者等との衝突事故が発生してしまう。
【0337】
実施の形態12は、実施の形態11で説明した注意報知装置を、一本道を走行している車両に適用した例について説明する。
【0338】
図30は、本発明の実施の形態12に係る車両向け注意報知装置の使用形態を示す図である。図15と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0339】
図30において、車両4は、車両向け注意報知装置1106を備える。
【0340】
車両向け注意報知装置1106は、圧縮空気発生部1020(後述図31参照)を有し、圧縮空気発生部1020は空気砲1110を発射する。
【0341】
図31は、上記車両向け注意報知装置1106の構成を示す図である。図26及び図29と同一構成部分には同一符号付して重複箇所の説明を省略する。
【0342】
図31に示すように、車両向け注意報知装置1106は、カメラ部11、演算処理部/制御部1112、メモリ部13、警報部1123、圧縮空気発生部1020、及び電源部15を備える。
【0343】
車両向け注意報知装置1106は、車両4のナンバープレートの上部近傍に装備される。
【0344】
警報部1123は、擬似エンジン音を発生する。
【0345】
カメラ部11は、車両4の前方100m程度までの車道、歩道を監視し、主には自車両4の走行車線の車道、歩道を監視している。しかし歩道から走行車線ではない車道を横断してくる歩行者3などもいるので、走行車線でない車道、歩道も怠ることはできない。
【0346】
演算処理部/制御部1112は、カメラ部11の映像を基に、歩行者3などの検出処理を行う。また、演算処理部/制御部1112は、歩行者3などを検出した場合、警報部1123から擬似エンジン音を発生させる。同時に、演算処理部/制御部1112は、カメラ部11が歩行者3などを追随しながらそのズーム倍率を上げて、該当歩行者3などの映像がカメラ画面の真ん中になるようにカメラ部11を制御する。
【0347】
車両4がさらに走行し、歩行者3などから約30mになるまでから接近した場合の歩行者3などの挙動は、以下が想定される。演算処理部/制御部1112は、そのための制御を行う。
【0348】
演算処理部/制御部1112は、歩行者3などが顔を車両4に向ける、歩行者3などが走行車線から遠ざかる、などの安全確保に向けた挙動が確認できた場合は、警報部1123から擬似エンジン音を発生するのみにとどめる。演算処理部/制御部1112は、車両4が約30mになるまでから接近しても、上記安全確保に向けた挙動が確認できない場合は、圧縮空気発生部1020から歩行者3などに向けて空気砲1110を発射する。ところで、車両向け注意報知装置1106から歩行者3などまでの距離により、歩行者3などが感じる空気圧の衝撃度は変わってくる。また、空気砲1110が歩行者3などのどの部分に当たるか、又は、歩行者3などが大人なのか子供なのかによっても、歩行者3などが感じる空気圧の衝撃度は変わってくる。
【0349】
そこで、演算処理部/制御部1112は、カメラ部11の映像を基に歩行者3などの検出処理を行う際、(1)歩行者3などまでの距離、(2)歩行者3などの歩行速度、(3)歩行者3などの性別、(4)歩行者3などが大人なのか子供なのか、(5)歩行者3などの服装などを検出する。この結果を踏まえ、歩行者3などの特性に合わせた空気砲1110を歩行者3などに被害の出ない部分に向けて発射する。
【0350】
歩行者3などに対する報知手段がLEDの発光や警報音などであると、見落としたり、聞き漏らしたりすることが発生しやすいが、空気砲1110であると歩行者3など気づかないことは少ないため、歩行者3などに確実に車両4の接近を報知することができる。ハイブリッド車や電気自動車は、走行音の静音性に起因した衝突事故を回避する手段として本実施の形態の車両向け注意報知装置1106を装備することが好ましい。
【0351】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0352】
例えば、上記各実施の形態において、他の警報手段、例えば音や音声情報、振動などと組み合わせた提示を行うことも可能である。また、メッセージ出力を併用可能である。
【0353】
また、上記各実施の形態では、電磁波検知装置、報知システム、携帯機器及び電気自動車及びハイブリッド車の判定方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置は車両判定装置、報知装置、携帯端末装置、方法は車両検知方法、報知方法等であってもよい。
【0354】
さらに、上記電磁波検知装置を構成する各構成部、例えば演算処理部の種類、警報部の警報方法などは前述した実施の形態に限られない。
【0355】
以上説明した電気自動車及びハイブリッド車の判定方法は、この車両用表示方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0356】
本発明に係る電磁波検知装置、携帯機器、電気自動車及びハイブリッド車の判定方法は、電気自動車及びハイブリッド車の接近を報知する電磁波検知装置とこれを用いて歩行者等に電気自動車やハイブリッド車の接近を報知する電磁波検知部内蔵の携帯機器に有用である。
【符号の説明】
【0357】
100,200,300 電磁波検知装置
110 アンテナ/センサ部
120,220 第1の演算処理部
121,321 フィルタ部
122,322 AD変換部
123 周波数解析部
130 メモリ部
140 判定部
150 送信部
160,544 電源部
223,323 累積加算部
320 第2の演算処理部
400,500,700,800,900,1000 報知システム
421 第1の電磁波検知器
422 第2の電磁波検知器
423 第3の電磁波検知器
521 電磁波検知器
531,532 警報機
540 受信部
541 制御部
542 警報音生成部
543 指向性スピーカ部
600 携帯電話機
610 携帯電話機能ブロック
620 電磁波検知機能ブロック
621 電磁波検知部用アンテナ/センサ部
1006 注意報知装置
1020 圧縮空気発生部
1106 車両向け注意報知装置
1123 警報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から発生する電磁波を検知する電磁波検知手段と、
検知された電磁波に、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段による解析結果に基づいて、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定する判定手段と、
を備える電磁波検知装置。
【請求項2】
前記周波数解析手段は、前記特有の周波数成分を累積加算し、前記累積加算された信号が所定閾値レベル以上であることを判定する請求項1記載の電磁波検知装置。
【請求項3】
前記電磁波検知手段は、車両が走行していないときの電磁波を背景雑音として検知し、
前記周波数解析手段は、車両が走行をしているときに車両が発生する電磁波を取り入れ、かつ、車両が走行をしているときに車両が発生する電磁波から前記背景雑音を減算して、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析する請求項1記載の電磁波検知装置。
【請求項4】
車両のエンジン音を検知するエンジン音検知手段を備え、
前記判定手段は、検知された前記エンジン音に基づいて、対象車両がエンジン車、ハイブリッド車、又は電気自動車の、いずれかの車両であるかを判定する請求項1記載の電磁波検知装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁波検知装置と、
前記電磁波検知装置が、電気自動車又はハイブリッド車であると判定したとき、警報を発する警報装置と、
を備える携帯機器。
【請求項6】
車両から発生する電磁波を検知するステップと、
検知された電磁波に、電気自動車及びハイブリッド車のモータ又はインバータに起因する特有の周波数成分のスペクトルが含まれることを解析するステップと、
前記解析結果に基づいて、対象車両が電気自動車及びハイブリッド車か、それ以外の車両であるかを判定するステップと
を有する電気自動車及びハイブリッド車の判定方法。
【請求項7】
請求項6記載の電気自動車及びハイブリッド車の判定方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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