電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法
【課題】電磁波によるイメージングを高速に行うための電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法を提供する。
【解決手段】電磁波10に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子1であって、半導体23と、当該半導体23上に形成される絶縁体22と、当該絶縁体22上にアレイ状に形成される複数の電極21と、前記複数の電極21と前記半導体23との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段3と、を具備し、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生する電磁波10の放射強度を制御する。
【解決手段】電磁波10に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子1であって、半導体23と、当該半導体23上に形成される絶縁体22と、当該絶縁体22上にアレイ状に形成される複数の電極21と、前記複数の電極21と前記半導体23との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段3と、を具備し、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生する電磁波10の放射強度を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波波面を制御しながら電磁波を放射するための電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)周波数帯を利用する技術の急速な発展に伴い、多岐にわたる産業分野へのテラヘルツ波を応用した技術開発が進展しており、同時に様々なTHzコンポーネントへの需要が拡大している。例えば、テラヘルツ波の優れた透過性を利用したものとして、空港等のセキュリティチェックで使用される荷物検査装置やテラヘルツ波(テラヘルツ光)を分光計測に応用して物質の特定や薬品・食品検査に使用するなどの用途開発が期待されている。また、そのような技術としては、非特許文献1に開示されているテラヘルツ波を利用するイメージング装置があり、このようなイメージング装置においては、発生したテラヘルツ波を波面整形(変調)するためにマスク(メタルメッシュのホールフィルター:金属板に穴を開口形成したフィルター。図15参照)が一般的に用いられている。
【0003】
また、非特許文献1に記載のイメージング装置は、前記マスクにより試料に変調されたテラヘルツ波を照射することで、試料に含まれる物質の空間分布と分光特性をマップとして一度に取得することできるものである。すなわち、このようなテラヘルツ波を用いたイメージング装置では、試料の非破壊検査が可能であり、例えば、試料として内容物が不明である梱包物に対して、テラヘルツ波の照射を行い、梱包物を透過したテラヘルツ波を解析することで、内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状をマップや画像として取得することが可能である。
【0004】
一方、特許文献1には、テラヘルツ波を利用した技術として、電磁波変調装置が記載されている。この電磁波変調装置は、電磁波(テラヘルツ波)の波面を受ける面を含む電波経路において、波面内の少なくとも1つの方向にプラズマの電子密度が変化する空間的な電子密度分布を形成して電磁波の伝播状態(伝播方向)を変化させるものである。また、当該電磁波変調装置は、プラズマを発生させる発生手段と、プラズマの空間的な電子密度分布を調節する電子密度分布調節手段を有する。具体的には、特許文献1に記載の電磁波変調装置は、実施例7(特許文献1における図12)に記載されているように固定された対象物体にテラヘルツ波光源から出射されたテラヘルツ波を集光して、この集光ビームの方向を右から左へと偏向(走査)させることで、テラヘルツ波によるイメージングを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151619号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.C.Shen他、APPLIED PHYSICS LETTERS 95,231112(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載のイメージング装置においては、試料にテラヘルツ波を放射するに際し、異なる波面(変調)パターンを得るためには、マスクを機械的に交換する必要がある。そのため、イメージングによる計測速度が低下するという問題点がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の電磁波変調装置は、走査の際に用いるテラヘルツ波自体は別の装置により発生させる必要があるため、装置構成が複雑になってしまう。さらに、特許文献1に記載の電磁波変調装置においては、テラヘルツ波光源から出射されたテラヘルツを変調装置内を通過させることで偏向を行うのでテラヘルツ波の減衰が起こると考えられ、対象物体に対するテラヘルツ波の出射効率が悪化してしまう。
【0009】
つまり、非特許文献1に記載されたイメージング装置では、機械的動作による時間的遅延を伴うため、リアルタイムに検出結果が要求されるような医療現場での検査や交通機関等で行われる荷物のセキュリティチェックに適用するには十分でない。また、特許文献1のようにテラヘルツ波の偏向手段とテラヘルツ波光源とを別々に構成するのではなく、ひとつの素子や装置としてまとめて構成ができないかということが課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電磁波によるイメージングを高速に行うための電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波波面整形素子である。
【0013】
請求項2においては、
請求項1に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射して、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有する電磁波イメージング装置である。
【0014】
請求項3においては、
請求項2に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波制御工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有する電磁波イメージング方法である。
【0015】
請求項4においては、
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有する電磁波イメージング方法である。
【0016】
請求項5においては、
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向する電磁波波面整形素子である。
【0017】
請求項6においては、
前記電圧印加手段は、
前記複数の電極への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向する電磁波波面整形素子である。
【0018】
請求項7においては、
請求項5または請求項6に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射するとともに、前記発生する電磁波の放射方向を偏向することで検査対象物を走査し、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有する電磁波イメージング装置。
【0019】
請求項8においては、
請求項7に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向し、前記検査対象物を走査する電磁波走査工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有する電磁波イメージング方法。
【0020】
請求項9においては、
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有する電磁波イメージング方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
素子自体がアレイ状になり、電磁波を発生しながら波面整形を行うことができるため、波面整形用のフィルターを通過させる必要がない。また、発生する電磁波の放射強度や放射方向を電気的に制御することが可能であるため、リアルタイムに波面整形を行いながら検査対象物への走査をすることが可能となり、電磁波可視化速度を飛躍的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置の概略図。
【図2】図1における電磁波波面整形素子のA矢視図。
【図3】同じく側面概略図。
【図4】本発明に係る電磁波波面整形素子のエネルギーバンド分布の模式図。
【図5】電磁波強度制御の原理を説明するための説明図。
【図6】電磁波イメージング方法のフローを示す図。
【図7】テラヘルツ波放射強度を制御する実験の結果を示す図であり、(a)は印加電圧パターンを示す図、(b)の左図は印加電圧が10V時のイメージングを示す図、(b)の右図は印加電圧が10V時から0V時を差分したイメージングを示す図。
【図8】テラヘルツ波強度と印加電圧の関係を示す図。
【図9】電磁波イメージング装置の別実施例を示す図。
【図10】電磁波イメージング装置の別実施例を示す図。
【図11】テラヘルツ波の放射方向の制御方法を説明する説明図であり、(a)は印加電極が横長型の場合を示す図、(b)は印加電極が縦長型の場合を示す図。
【図12】シミュレーション条件を説明する説明図。
【図13】シミュレーション結果を示す図。
【図14】シミュレーション結果を示す図。
【図15】従来のマスクを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1に、本発明の電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置の実施例を示す。
電磁波イメージング装置20は、検査対象物30に対してパルス電磁波10を放射し、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10の解析を行うことで検査対象物30の非破壊検査・計測を行う装置であり、例えば、検査対象物30に含まれる内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状等をマップや画像として取得すること(イメージング)が可能である。電磁波イメージング装置20は、電磁波波面整形素子1、照射装置(光学系)、検出・変換装置4、及び制御・解析装置8等を備える。以下、装置構成の詳細及び測定原理について説明する。
【0026】
電磁波波面整形素子1は、パルス電磁波10に対して波面整形を行うための素子であり、図2に示すように、正方形状(本実施例においては、15mm×15mm)である。電磁波波面整形素子1は、電極21と、絶縁体22と、半導体23と、透明基板24と、電圧印加手段3(図1参照)とを主に具備する。すなわち、電磁波波面整形素子1は、絶縁体22と、該絶縁体22の一端面(図3においては右端面)に当接するように形成され、所定の厚さを有する半導体23と、該半導体23の一端面(図3においては右端面)に当接するように形成される透明基板24、前記絶縁体22の他端面(図3においては左端面)に当接するように形成される電極21と、を有する。電磁波波面整形素子1は、当該電磁波波面整形素子1が有する半導体23の一端面である入射面23aに前記透明基板24を介してパルスレーザー光9が入射された際に、パルス電磁波10を放射するものである。また、電磁波波面整形素子1の作製方法としては、先ず、透明基板24(膜厚:600μm)上に半導体23(本実施例においては、Si)を蒸着により薄膜形成(膜厚:150nm)し、当該半導体23上に絶縁体22(本実施例においては、SiO2)を熱酸化または蒸着により薄膜形成(膜厚:275nm)し、さらに、当該絶縁体22上に電極21(本実施例においては、Au)を蒸着によりアレイ状に薄膜形成(膜厚:200nm)することにより作製するものである。すなわち、プレート状薄膜である透明基板24に半導体23(Si)、絶縁体22(SiO2)、金属部(Metal部)である電極21(Au)と順に積層することで、いわゆるMOS構造チップを構成している。
【0027】
また、本実施例では、絶縁体22としては酸化シリコン(SiO2)を用いたが、他には窒化シリコン等を用いることが可能である。前記絶縁体22の厚さを約275ナノメートル、半導体23の厚さを約150ナノメートルとしたが、半導体23の厚さは、パルス電磁波10の大きな振幅強度を得るために、パルスレーザー光9の波長と半導体23の種類によって決定される光侵入長と同等の大きさとするのが望ましい。尚、光侵入長は、半導体23についての光吸収係数の逆数である。例えば、パルスレーザー光9の波長が790ナノメートルであり、半導体23の種類が高抵抗のシリコンである場合、半導体23の厚さは約2ミクロン程度とすることで、効率よくパルス電磁波10を発生させることができる。
【0028】
電極21は、図2、3に示すように、絶縁体22上にアレイ状に薄膜形成される複数の金属(通電可能な金属、本実施例ではAu薄膜を使用)である。電極21は、電極数が横4列×縦4列の合計16個から構成される。電極21、21、・・・は、所定間隔にて区画されており、当該電極21、21、・・・の各端部にAlボンディング(図示せず)が施され、当該Alボンディングと前記半導体23であるSi膜の基板外側にコーティングされたAgペーストを介して接続される複数の配線と、の間に電圧印加手段3(図1参照)を介装している。
【0029】
電圧印加手段3は、前記複数の電極21と前記半導体23との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するものである。
すなわち、電圧印加手段3は、電極21、21、・・・に対して所定の電圧をそれぞれ印加する(バイアスの制御をする)ことが可能であり、必要に応じて電極21、21、・・・と半導体23との間に電圧をそれぞれ印加することができるようになっている。これにより、電極21、21、・・・の直下となる半導体23内の空乏層の幅を制御することができる。
なお、電極の数、形状、配置パターンは、特に本実施例に限定するものではなく、検査対象物の組成・形状・大きさ等により適宜変更してもかまわない。
ここで、図2に示すように、電極21、21、・・・の横方向における配列番号を1〜4とし、縦方向の配列記号をA〜Dと便宜上定める。
【0030】
前記透明基板24は、電極21、21、・・・、絶縁体22及び半導体23を保持するための保持部材であり、半導体23と絶縁体22と電極21、21、・・・を積層状に作製する際に必要である。さらに、電磁波波面整形素子1の機械強度を保つためにも必要である。本実施例では、透明基板24としてサファイアが用いられている。
【0031】
ここで、レーザーパルス照射による電磁波の発生原理を説明する。半導体中の電場Eが存在する場所に、バンドギャップよりも大きなエネルギーをもつレーザー光を照射すると、光励起による電子・正孔対が生成し、その電子・正孔対が電場Eによって加速されるために電流が発生する。レーザー光が連続光の場合は、定常的な電流が流れるが、レーザー光がパルス光の場合には、励起された電子・正孔対はある一定の時間で緩和し、電流も流れなくなるため、光パルスの幅と緩和時間に依存して、パルス状の電流が流れる。古典電磁気学のMaxwellの方程式から導出される下記(1)式によれば、半導体に流れる電流に時間変化が発生した場合、該半導体より電磁波が放射される。
【0032】
【数1】
【0033】
上記(1)式において、Eemissionは、電磁波の電界ベクトル、Jは、光電流密度ベクトル、nは、光励起された電子・正孔対の密度、eは、素電荷量、vは、光が照射された位置における半導体中の電場Elocalによって加速された電子・正孔対のドリフト速度、μは、電荷の移動度である。
【0034】
(1)式からわかるように、発生する電磁波の振幅強度は、光が照射された位置における半導体中の電場Elocalに比例する。
【0035】
図4は、電磁波波面整形素子1のエネルギーバンド分布の模式図であり、横軸は、位置を示しており、縦軸はエネルギーを示している。また、図中のECは伝導帯であり、EVは価電子帯である。絶縁体22と半導体23の境界には、空乏層が形成される。空乏層とは、キャリアが存在しない領域であり、該空乏層には局所電界Eが形成されている。したがって、外部から電圧を印加しなくても、空乏層には定常的に電界が存在していることになる。この空乏層に光を照射し、電子・正孔対を生成すると、(1)式にしたがって、電磁波が発生する。
【0036】
ここで、局所電界Eの向き及び大きさは、絶縁体22と半導体23の境界の状態や、半導体23の特性によって変わることがある。しかしながら、電磁波発生の原理において特に重要な点は、局所電界Eが形成されていることである。
【0037】
また、本実施例においては、電極21に電圧印加手段3により所定の印加電圧を付与することで、前記電場Elocalを制御するものであり、当該前記電場Elocalの制御により発生する電磁波の振動強度(放射強度)を制御することができる。
つまり、本実施例のMOS構造を有する電磁波波面整形素子1による電磁波強度制御の原理について図5を用いて順に説明すると、1)電圧印加手段3によりmetal−Si(電極21−半導体23)間にバイアス電圧を印加する(金属膜の仕事関数の変化が起こる)、2)半導体23(Si層)における空乏層電界が変化する、3)瞬時電流が変化、4)発生する電磁波(テラヘルツ波)の電界強度も変化、という流れに従って電磁波の放射強度を制御することを可能とするのである。
【0038】
照射装置(光学系)は、電磁波波面整形素子1が有する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aにパルスレーザー光9を照射する手段であり、パルスレーザー光源2、ビームスプリッタ14、時間遅延手段15、光チョッパー16、複数の鏡等から主に構成される。照射装置(光学系)は、電磁波波面整形素子1の半導体23に所定の波長を有するパルスレーザー光9を照射する機能を主に有する。
なお、パルスレーザー光9の方向を変更するために使用した鏡等の構成は、本実施形態に限定するものではなく、各構成部品の配置を考慮して、例えば更に鏡の数を増やす等適宜構成を変更してもかまわない。
【0039】
また、図1に示すごとく、本実施例では、パルスレーザー光9とパルス電磁波10の経路によってなす面を略水平面、即ち、図1は上面視の構成であり、この構成を側面から見た場合に、前記パルスレーザー光9とパルス電磁波10が略水平面をなすような配置構成としているが、各装置の形状及び固定方法によって適宜設定することが望ましく、前記略水平面を構成する必要はない。
【0040】
パルスレーザー光源2は、パルスレーザー光9を照射する手段である。パルスレーザー光源2は、前記電磁波波面整形素子1にパルスレーザー光9を前記半導体23のレーザー光入射面23aに照射することで、当該照射位置の直上にある電極21への印加電圧の量に依存する振幅強度を持ったパルス電磁波10を発生させる手段である。また、本実施例におけるパルスレーザー光源2としては、フェムト秒チタンサファイアレーザー(繰り返し周波数82MHz、出力890MHz、中心波長780nm、パルス幅100fs)を用いる。
【0041】
また、パルスレーザー光源2は、本実施例の如く、パルスレーザー光9を発生可能なモード同期チタンサファイアレーザー、又はフェムト秒ファイバーレーザであるのがよい。
また、このパルスレーザー光9の波長は、300ナノメートル(300nm=0.3μm)以上、2ミクロン(2μm)以下の範囲に含まれるものであり、時間平均のエネルギーが0.1mW以上、10W以下であり、パルス幅が1フェムト秒(1fs=0.001ps)以上、10ピコ秒(10ps)以下であるのがよい。
すなわち、電磁波の励起に際しては、光源として時間の幅の小さなパルスレーザー光9を用いることにより、半導体23に大きな影響を及ぼさない状態で、電磁波の励起ができる。また、特にパルスレーザー光9としてフェムト秒レーザー光を使用することで、高い時間分解能による時間分解計測が可能となり、検査対象物30をリアルタイムで観測可能となる。なお、半導体23に熱的影響を及ぼさない最大光パルス幅は、約10ピコ秒と見積ることができる。また、フェムト秒レーザーを使用することで、レーザーによる加熱の悪影響を最小限に抑えることができるという効果がある。
【0042】
また、図3に示すごとく、前記パルスレーザー光9は、前記電磁波波面整形素子1の前記電極21、21、・・・、が作製される面(絶縁体22上面)の反対側から照射されるものである。換言すれば、パルスレーザー光9は、電極21、21、・・・、に対応する前記半導体23、すなわち、図3中における電極21、21、・・・、直下の半導体23の入射面23a全体に亘って照射されるものである。このために、電磁波波面整形素子1に設けられる半導体として、前記パルスレーザー光9を透過する絶縁体基板(透明基板24)上に、半導体膜(半導体23)を作製したものが使用される。
【0043】
ビームスプリッタ14は、入射するパルスレーザー光9をプローブ光L1とポンプ光L2とに分割する手段であり、本実施例においては、直進するポンプ光L2に対してプローブ光L1を垂直方向に分割可能であるハーフミラーを用いている。また、プローブ光L1は検査対象物30の検査の際の同期を取得するために用いられる光であり、ビームスプリッタ14から鏡、時間遅延手段15、鏡、レンズ35を介して前記検出・変換装置4(後述する検出素子19)に照射される。また、ポンプ光L2は、ビームスプリッタ14から光チョッパー16、鏡を介して半導体23の入射面23aに照射される。
【0044】
前記ポンプ光L2の半導体23の入射面23aへの入射角は、パルスレーザー光9(ポンプ光L2)の有する波長が、電磁波波面整形素子1の半導体23へ最も吸収される角度とすることが好ましい。ただし、各装置の形状及び固定方法によっては、この角度に限定する必要はなく、特に限定されるものではない。
【0045】
時間遅延手段15は、前記プローブ光L1の光路に配置され、前記検出・変換装置4にて振幅強度が検出される時間を周期的に遅延可能である手段である。時間遅延手段15は、図示しない駆動手段により周期的に所定方向に移動可能である可動鏡15aと、当該可動鏡15aを保持するステージ15bとを備える。時間遅延手段15は、当該時間遅延手段15に入射されるプローブ光L1を、当該プローブ光L1の入射方向に対して、平行かつ反対方向に反射することができる。こうして、時間遅延手段15は、駆動手段により可動鏡15aをプローブ光L1の入射方向に対して平行かつ周期的に往復移動することによりプローブ光L1の光路長を調節し、光学的に時間遅延することが可能である。また、駆動手段は、制御・解析装置8により制御される。
すなわち、時間遅延手段15は、前記プローブ光L1の光路長を調整するための可動鏡15aを周期的に移動させることで所定時間間隔の時間遅延量を付与したプローブ光L1を前記検出・変換装置4(後述する検出素子19)に入射することができる。
【0046】
光チョッパー16は、ポンプ光L2の光路に配置され、当該ポンプ光L2を所定の周波数にてチョッピングすることが可能である。
【0047】
検出・変換装置4は、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射して、当該検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10の振幅強度を計測(検出)する手段である。検出・変換装置4は、電磁波検出手段である検出素子19と、集光手段18と、変換手段と、から構成される。検出・変換装置4は、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10を集光手段18により集光し、この集光されたパルス電磁波10を検出して、パルス電磁波10の電場振幅の時間波形に対応した時間的に変化する電圧信号に変換するものである。
【0048】
検出素子19は、例えば光伝導アンテナ等であり、半導体23の入射面23aにおけるポンプ光L2照射位置から発生するパルス電磁波10を入射可能に配置され、当該パルス電磁波10の入射と同期させて、プローブ光L1を検出素子19の所定位置に照射すると、当該照射時に入射したパルス電磁波10の電界強度(振幅強度)に比例した電流が発生する。
【0049】
集光手段18は、一対からなる軸外し放物面鏡であり、検査対象物30を放物面鏡間に配置して、当該検査対象物30に対して半導体23の入射面23aから放射されたパルス電磁波10を集光して放射するとともに、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10を集光して検出素子19の一端に照射するものである。
【0050】
変換手段は、検出素子19に接続される電流アンプ27と、当該電流アンプ27に接続されるロックインアンプ28とを備える。また、ロックインアンプ28は光チョッパー16と接続されている。この変換手段では、上記検出素子19にて発生した電流を測定することにより、プローブ光L1が検出素子19に照射した時に入射したパルス電磁波10aの振幅強度を検出することが可能である。また、前記パルス電磁波10に含まれる周波数の成分は、10ギガヘルツから100テラヘルツまでの範囲に含まれることとし、これにより、一般的な構成の検出・変換装置4の利用が可能となる。また、本発明に係る電磁波イメージング装置20を構成する上で、利用するパルス電磁波10としては、ギガヘルツ領域よりもテラヘルツ領域が好ましい。テラヘルツ領域を利用する場合は、ギガヘルツ領域を利用する場合とは異なり、ミラーやレンズ等を使用した光学的な手法により、電磁波を検出器に容易に導くことが可能となる。一方、テラヘルツ領域よりも高周波領域は、いわゆる光になるが、光を利用する場合は、周囲の光と信号の光を区別する手段を備える必要があり、装置が複雑になるため光のようなテラヘルツ領域よりも高周波の電磁波よりもテラヘルツ領域の電磁波を利用することが好ましい。
【0051】
制御・解析装置8は、前記振幅強度より、検査対象物30を定性的もしくは定量的に計測して、例えば、検査対象物30に含まれる内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状等をマップや画像として取得して画像として解析結果を表示すること(イメージング)が可能である装置である。
すなわち、制御・解析装置8は、前記検出・変換装置4の変換手段にて変換した電圧信号から、検査対象物30に含まれる内容物(被検出物質)の有無の検出(定性的な測定)、内容物の定量的な測定、内容物の分光計測による物質の特定、並びに、検出されたパルス電磁波10の振幅強度(電圧値)の時系列波形を用いた所定の解析といった解析処理、当該解析処理結果に基づく画像処理、及び所定のフーリエ変換等の演算処理を行う装置である。また、本実施例では、制御・解析装置8は、本明細書中に説明する制御や解析の実行を可能とする画像表示部を有するコンピュータであり、図示せぬ制御信号線を介して、照射装置(光学系)、検出・変換装置4、パルスレーザー光源2及び、電極21に所定の電圧を付与するための電圧印加手段3の制御も併せて行うものである。
【0052】
また、制御・解析装置8は、電極21、21、・・・への印加電圧の制御により半導体23内の空乏層の幅を制御し、当該電極21、21、・・・の存在する位置から発生するパルス電磁波10の振幅強度を変化させることができる。また、制御・解析装置8は、電圧印加手段3を介して、複数の電極21、21、・・・に印加する電圧をそれぞれ制御することで、各電極21、21、・・・からそれぞれ振動強度や位相差の異なる電磁波が発生し、これら異なる電磁波間による位相波の干渉効果を利用して電磁波の放射方向(伝播方向)を適宜制御することが可能となる。なお、位相波の干渉効果を利用した電磁波の伝播方向を制御する方法については後述する。こうして、電磁波波面整形素子1により発生させたパルス電磁波10を検査対象物30に放射し、検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10の振幅強度の変化を捉えて制御・解析装置8により解析後、この解析結果を画像化することによって、検査対象物30内の内容物や内容物の化学組成をイメージングできる。
具体的には、各電極21、21、・・・の印加電圧を変化させることで、絶縁体22表面の電荷が変化し、当該各電極21、21、・・・の存在する位置に対応する半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10の波面整形を行うことができる。当該波面整形(変調)されたパルス電磁波10を検査対象物30に照射し、検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出して、透過(もしくは反射)後のパルス電磁波10を制御・解析装置8内の記憶装置に記憶している物質固有の電磁波周波数データベース(例えば、テラヘルツ波振動数データベース)と照合し、内容物の物質を特定することが可能となる。このように、電磁波イメージング装置20を、いわゆる非破壊検査装置として利用可能となる。
以上の装置構成及び原理によって、検査対象物30のイメージングが行われる。
【0053】
次に、以上のように構成された電磁波イメージング装置20に適用する電磁波イメージング方法を説明する。
【0054】
本実施形態に係る電磁波イメージング方法は、図6に示すフローに従って進行するものであり、照射工程S10と、電磁波放射工程S20と、電磁波制御工程S30と、電磁波検出工程S40と、画像処理工程S50を主に有する。以下、各工程について、具体的に説明する。
【0055】
照射工程S10は、前記半導体23の入射面23aにパルスレーザー光9を照射する工程である。
【0056】
すなわち、照射工程S10では、検査対象物30を非破壊検査する際に、先ず、図1に示すごとく、検査対象物30を、装置内の規定の位置(本実施形態においては、集光手段18の対向する放物面鏡の間)にセットした後、前記制御・解析装置8の制御によって、パルスレーザー光源2から照射されたパルスレーザー光9をビームスプリッタ14(本実施形態においては、ハーフミラー)によってプローブ光L1とポンプ光L2とに2分割して(パルスレーザー光分割工程)、前記ポンプ光L2を電磁波波面整形素子1における半導体23の入射面23aに向けて照射するものである。
【0057】
電磁波放射工程S20は、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射する工程である。
【0058】
すなわち、電磁波放射工程S20では、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30の所定領域に放射する工程である。電磁波放射工程S20では、分割されたパルスレーザー光9の一方であるポンプ光L2を光チョッパー16を通過させ、当該光チョッパー16を通過したポンプ光L2は、前記半導体23の入射面23aに照射される。そうして、ポンプ光L2の照射位置である電極21、21、・・・に対応する前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射するものである。
【0059】
電磁波制御工程S30は、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射強度を制御する工程である。
【0060】
すなわち、電磁波制御工程S30では、アレイ状に配置された複数の電極21、21、・・・に対して、個々に電圧制御することにより、電極21、21、・・・の各位置に対応する半導体23のレーザー光入射面23aから個々に変調された複数のパルス電磁波10を放射するものである。
【0061】
電磁波検出工程S40は、前記検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出する工程である。
【0062】
すなわち、電磁波検出工程S40では、アレイ状に配置された複数の電極21、21、・・・の各位置に対応する半導体23のレーザー光入射面23aから放射された複数のパルス電磁波10の振幅強度が検出素子19により検出される。電磁波検出工程S40は、さらにプローブ光照射工程、時系列波形生成工程、を有する。
【0063】
プローブ光照射工程は、前記プローブ光L1を、前記時間遅延手段15を通過させ、前記ポンプ光L2により発生したパルス電磁波10の検出素子19への入射と同期させて前記検出素子19に照射する工程である。
【0064】
すなわち、プローブ光照射工程では、分割された一方のパルスレーザー光9であるプローブ光L1が鏡、時間遅延手段15、鏡、及びレンズ35を介して検出素子19の他端に照射される。この際、プローブ光L1は前記半導体23から発生するパルス電磁波10が検査対象物30を透過もしくは反射して前記検出素子19に入射するのに同期して照射される。
【0065】
時系列波形生成工程は、前記プローブ光L1と同期した、遅延時間の異なる複数の前記パルス電磁波10の振幅強度を取得して、前記検査対象物30の所定の領域を透過もしくは反射したパルス電磁波10の時系列波形を生成する工程である。
【0066】
すなわち、時系列波形生成工程では、ビームスプリッタ14により分けられたプローブ光L2が検出素子19に至る光路の途中にて時間遅延手段15を通過した際に、当該時間遅延手段15内においては、所定方向(本実施例ではプローブ光L2と平行方向)に可動自在に配置された可動鏡15aによりプローブ光L1が入射及び反射される。また、制御・解析装置8が当該可動鏡15aを所定方向に所定の周波数にて周期的に往復可動させることでプローブ光L1が検出素子19に到達する時間を光学的に時間遅延する。こうして、制御・解析装置8は、時間遅延手段15によりプローブ光L1が検出素子19へ到達する時間を周期的に変化させながら、検出素子19にプローブ光L1が入射する時間を遅延することで、プローブ光L1入射時のパルス電磁波10の振幅強度を所定の時系列で取得することが可能となる。
【0067】
具体的には、制御・解析装置8では、検出されるパルス電磁波10の振幅強度に基づいて振幅強度の時系列波形の生成が行われるが、その工程としては、まず、検出素子19に検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10が集光され、当該パルス電磁波10の入射と同期させて、プローブ光L1を検出素子19の所定位置に照射すると、当該照射時に入射したパルス電磁波10の電界強度(振幅強度)に比例した電流が発生する。当該電流は、電流アンプ27により電圧に変換後、ロックインアンプ28にて、光チョッパー16のチョッピングと同期してロックイン検出が行われる。そして、当該ロックイン検出の値はコンピュータ8に入力される。つまり、制御・解析装置8は、プローブ光L1が検出素子19に照射した時に入射したパルス電磁波10aの各振幅強度を検出することが可能である。
電磁波検出工程S40(プローブ光照射工程、時系列波形生成工程)が終了したら、次に画像処理工程S50に進む。
【0068】
画像処理工程S50は、前記電磁波検出工程S40により検出されたパルス電磁波10に基づいて画像処理をする工程である。
【0069】
すなわち、画像処理工程S50では、制御・解析装置8により前記パルス電磁波10の振幅強度より、検査対象物30を定性的もしくは定量的に計測し、所定の演算処理が行われて前記検査対象物30中の物質の分光分布等を得るものであり、前記検査対象物30を透過もしくは反射した電磁波における電磁波振幅強度の変化の有無や、電磁波振幅強度の変化の量を検出し、これらに基づいて検査対象物30中の物性・形状等の情報をイメージングとして画像取得するものである。
【0070】
以上のように、本発明に係る電磁波波面整形素子1及びそれを備えた電磁波イメージング装置20は、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光9の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射強度を制御することができる。また、本発明に係る電磁波イメージング装置20は、電磁波波面整形素子1の半導体23全体に、パルスレーザー光9を照射させ、このパルスレーザー光9の照射によって生じるパルス電磁波10をバイアス制御しつつ、検査対象物30に放射し、当該検査対象物30を通過(もしくは反射)したパルス電磁波10を検出して、この検出結果を解析することでイメージングを行うものである。
【0071】
さらに、以上の一連のイメージングの工程においては、検査対象物30を一度セットした後は、検査したい領域にパルス電磁波10を全面照射することで、検査したい領域全域の被検出物質についての解析を実施することができ、従来のように波面整形を行うためのフィルター交換の手間もかからないため作業性がよく、短時間で、効率良く多くの解析データを得ることが可能となる。すなわち、本実施例の電磁波波面整形素子1を備えた電磁波イメージング装置20では、フィルター交換が不要であり、検査対象物30の電磁波イメージング画像を効率的かつ高速に取得することができる。
【0072】
次に、本発明に係る電磁波イメージング装置20を用いて行ったパルス電磁波10の放射強度を制御する実験の結果について示す。
【0073】
図7(b)は検査対象物30をセットしない状態でパルス電磁波10(本実施例においては、テラヘルツ波)を放射した時におけるイメージングである。このときのRange(照射面面積)は、13.5mm(x軸方向)×13.5mm(y軸方向)であり、レーザースポット径は約450μmである。なお、図6に示す、横に並ぶ番号1〜4及び縦に並ぶA〜Dは図2で示した電極21の配列番号と配列記号に対応している。図7(b)の左図はグラデーションの濃淡によりテラヘルツ波の強度を示したイメージングである。図7(a)が示すように、T字状に各電極21、21、・・・に印加電圧(+10V)を付与した場合、図7(b)の左図のような各電極21、21、・・・に対応するイメージングが得られる。図7(b)の右図は、図7(b)の左図のようにバイアス制御した部分(印加電圧10V)と電圧を印加してないRef部分(0V)との差分計測した値のイメージングである。図7(b)の右図におけるグラデーションの濃淡は、差分電圧差の大きさを示している。この結果から明らかなように、上記のように所定の印加電圧パターン(本実験ではT字状のパターン)を印加し、印加した電圧とRef部分(印加電圧なし)との差分を取得することで、所望のパターンでテラヘルツ波を照射することが可能であり、さらに印加電圧を電圧印加手段3により制御することで所望の放射強度となるようにテラヘルツ波を制御することが可能である。
【0074】
次に、上述した電磁波強度制御の原理を検証するために、テラヘルツ波強度とバイアス電圧の関係を調べた。その結果を以下に示す。
図8は、テラヘルツ波強度と印加電圧の関係(バイアス依存性)を示したものである。図8に示すグラフは、電磁波波形整形素子1の電極としてAuの代わりにTi(チタン)を用いて電磁波波形整形素子を構成し、半導体23にパルスレーザー光9を照射し、チタン電極と半導体23(Si)間に直流バイアスを印加した際のテラヘルツ波強度を計測したものであり、横軸が印加電圧(バイアス電圧)[V]、縦軸はテラヘルツ波強度(任意単位)である。図8に示すように、テラヘルツ波強度と印加電圧(バイアス電圧)とはほぼリニアな関係を示し、テラヘルツ波強度は印加電圧(バイアス電圧)に依存することを確認した。この結果から、電圧印加手段3により電極21に付与する印加電圧を制御することで、放射されるパルス電磁波10を制御することが可能であることが確認できた。
以上の実験結果により、電磁波波面整形素子1が有する電極21への印加電圧の制御により、テラヘルツ波の放射強度(発生強度)を制御することが可能であることを実証できた。
【0075】
次に、本実施形態に係る電磁波イメージング装置の別実施例について説明する。
図9は、本実施例の電磁波イメージング装置20において、検出素子19の代わりにCCDカメラを配置した別実施例である。この別実施例によれば、電磁波波面制御素子1から発生したパルス電磁波10を検査対象物30に放射し、検査対象物30を透過したパルス電磁波10をCCDカメラで取得することができる。
図10は、本実施例の電磁波イメージング装置20において、検出素子19の代わりに集光手段である凹面鏡と検出器を配置するとともに、電磁波波面整形素子1の入射面23a近傍に複数のレンズを配置した別実施例である。この別実施例によれば、電磁波波面制御素子1から発生したパルス電磁波10を検査対象物30に照射し、検査対象物30を透過したパルス電磁波10を凹面鏡で集光して検出を行い、所定の画像処理によりイメージングすることができる。
【0076】
本発明の原理に基づき、あらためて上記の流れを説明すると、(1)透明基板24側からパルスレーザー光9(フェムト秒レーザー)を照射すると、半導体23内部のキャリアが変調され、テラヘルツ波が放射される。(2)電極21、半導体23間に電圧印加手段3により電圧を印加することで、電極21直下で発生するパルス電磁波10であるテラヘルツ波の強度を制御することができる。すなわち、図7で示したような放射強度のパターン分布は、電極21、21・・・への電圧印加により容易に制御することが可能であり、上記ような原理に基づいて作製した電磁波波面整形素子1は、電極21の電圧制御により高速な波面制御(変調制御)が可能である。
【0077】
つまり、上記実施例のように、電磁波波面整形素子1は、サファイア基板を用いたMOSキャパシタ構造に基板側よりパルスレーザー光9であるフェムト秒レーザーを照射することでパルス電磁波の一例であるテラヘルツ波を放射することができる素子である。電磁波波面整形素子1では、ゲート電圧を制御することで、発生するテラヘルツ波の放射強度を制御することが可能である。
【0078】
本実施形態では、上述したように、MOS構造のセンシングプレートである電磁波波面整形素子1を作製し、バイアス制御によるテラヘルツ波発生強度の制御する実験を行い、電磁波波面整形素子1から発生するテラヘルツ波の強度の制御が可能であることを実証した。
【0079】
本発明の電磁波波面整形素子は、従来技術の課題を解消するために新たなテラヘルツ波センシングデバイスとして提案するものであり、発生素子としてMOSアレイ構造を採用し、この素子への印加電圧を制御することで、電磁波発生強度を制御できるように構成したものである。また、本発明の電磁波波面整形素子は、ピコ秒以下のレーザーパルスを発生素子に照射することで電磁波を発生させるとともに、発生する電磁波の波面を電気的に制御することができる。
【0080】
次に、前述した電磁波波形整形素子1の同様の構成を用いて、電磁波波形整形素子1から発生するパルス電磁波10の放射方向を電気的に制御できるかどうかの実験及びシミュレーションを行った。
【0081】
(テラヘルツ波放射方向の制御方法)
通常、パルス電磁波によるイメージングは、パルス電磁波を発生する素子自体を駆動手段により動かして、走査することでイメージング画像を取得する。本発明によれば、上記電磁波波形整形素子1を用いて、電磁波波形整形素子1を動かさずに固定した状態で、イメージングを行うことが可能であることを図及びシミレーション結果により説明する。
【0082】
(テラヘルツ波発生パターン制御の説明)
図11は、電極の形状を横長型にした場合と、電極の形状を縦長型にした場合の各々において、パルスレーザー光9を所定の入射角度で半導体に入射し、半導体の入射面から発生するテラヘルツ波を示したものである。図11(a)では、パルスレーザー光9が所定の角度にて入射することで、横長の電極の長手方向(右方向)に行くに従って、パルスレーザー光9の到達時間の遅延が起こり、レーザー到達地点各部において発生するテラヘルツ波において位相が異なる現象が起こる(いわゆる、フェーズドアレイ効果が働く)。この複数の異なる位相同士が干渉を起こして、その干渉効果により発生するテラヘルツ波の発生方向が決定されることになる。一方、図11(b)では、パルスレーザー光9が所定の角度にて入射するが、電極が縦長であるため、電極の短手方向は短く、その結果パルスレーザー光9の到達時間の遅延はほとんど起こらず、レーザー到達地点各部において発生するテラヘルツ波において位相は同じままである(フェーズドアレイ効果が働かない)。その結果としてテラヘルツ波は、入射面に対してほぼ垂直方向に発生することになる。
上記図11で示した結果により、テラヘルツ波の発生パターンを変えることでレーザー入射角固定のままテラヘルツ波の放射方向を制御することが可能であることがわかった。換言すれば、電磁波波形整形素子1において、上述したように、電圧印加手段3により複数の電極21への前記印加電圧をそれぞれ制御して、横長型の発生パターンや縦長型の発生パターン等、テラヘルツ波の発生パターンを適宜変えることで、レーザー入射角固定のままテラヘルツ波の放射方向を制御することが可能であることがわかった。つまり、本実施例の電磁波波形整形素子1においては、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光9の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することができる。次では、さらに詳細にテラヘルツ波の発生パターンとテラヘルツ波の伝播方向との関係を説明する。
【0083】
(テラヘルツ波伝播シミュレーション)
次に、テラヘルツ波の発生パターン(印加電圧パターン)を制御することにより、テラヘルツ波の伝播方向を所定の方向に偏向することができるかをテラヘルツ波伝播シミュレーションにより検証した。
テラヘルツ波伝播シミュレーションでは、電磁波波形整形素子1の電極21を想定して、電極サンプルを図12の左図に示すように、縦5×横5のアレイ状に配列された電極(放射ブロックという)のパターンとし、ひとつの電極に相当する1ブロック:90μm×90μm、ブロック間は10μmとしている。図12の左図において、白色ブロックは印加電圧ONを示しており、黒色ブロックは印加電圧OFFの状態を示している。また、図12の右図に示すように、電磁波波形整形素子の半導体に対して入射させるパルスレーザー光は、入射角:45°、波源:球面波の正弦波、波長:300μmである。
【0084】
図13は、前述した横長型、縦長型の各印加電圧パターンに対応して発生するテラヘルツ波について、シミュレーションにより検証した結果である。ここで、白色ブロックはテラヘルツ波発生(印加電圧ON状態)、黒色ブロックはテラヘルツ波発生(印加電圧OFF状態)を示している。
横長型においては、y−z平面では位相の変化を生じていないが、x−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
一方、縦長型においては、y−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できるが、x−z平面では特に伝播方向に指向性がない。
横長型、縦長型の各印加電圧パターンにおいては、シミュレーション結果においても前述した図11で示した予想と同様の結果が得られた。
【0085】
図14は、右斜め型、左斜め型の各印加電圧パターンに対応して発生するテラヘルツ波について、シミュレーションにより検証した結果である。
右斜め型においては、y−z平面及びx−z平面のそれぞれにおいてテラヘルツ波の伝播方向を示す右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
一方、左斜め型においては、y−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す左斜め上方の位相パターンが発生していることが確認できるが、x−z平面では右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
以上のシミュレーション結果からテラヘルツ波放射パターンによってテラヘルツ波の伝播方向が変わることを確認できた。
【0086】
以上のシミュレーション結果より本実施例における電磁波波形整形素子1は、前記電圧印加手段3により、前記複数の電極21への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極21からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することができる。すなわち、上記のシミュレーションで検証したように、電磁波波形整形素子1は、電極21への印加電圧を制御することで発生するテラヘルツ波放射方向(伝播方向)を電気的に制御可能であるテラヘルツ波方向制御デバイスであり、これにより、テラヘルツ波によるイメージングの高速化が可能となる。
【0087】
また、上述した電磁波イメージング装置20において、電磁波波形整形素子1を備えることにより、検査対象物30にパルス電磁波10を放射するとともに、発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することで検査対象物30を走査し、当該検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出する手段を有することになる。
【0088】
また、図6に示したフローの電磁波制御工程S30において、さらに、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向し、前記検査対象物30を走査する電磁波走査工程を加えることで、検査対象物30の走査画像を取得することが可能となる。
【0089】
以上のように、本発明によれば、素子自体がアレイ状になり、電磁波を発生しながら波面整形を行うことができるため、波面整形用のフィルターを通過させる必要がない。また、発生する電磁波の放射強度や放射方向を電気的に制御することが可能であるため、リアルタイムに波面整形を行いながら検査対象物への走査をすることが可能となり、電磁波可視化速度を飛躍的に向上することができる。
【0090】
また、本発明の電磁波波面整形素子(電磁波波面制御素子ともいう)は、MOS構造の金属部分へのバイアス制御により、発生するテラヘルツ波の強度を制御し、かつ、金属部のパターニング(印加電圧制御や電圧印加のON/OFF等による電磁波放射パターン制御)によりテラヘルツ波の位相制御することで、発生するテラヘルツ波の波面制御を可能とするものである。また、本発明のように複数の金属部をパターンニングすることで、複数の金属部が複数の波源となり、当該複数の波源から放射したテラヘルツ波が干渉し、任意の位相パターンとなるように制御することが可能となる。
【0091】
本発明は、極短光パルスをMOS構造半導体に照射し、高周波電磁波(特にテラヘルツ波)を発生させる技術において、発生させる電磁波の波面を高速に制御する素子に関するものである。本発明によれば、電磁波波面に対して、2次元フーリエ変化可視化技術を高速に適用することが可能となり、高速な電磁波イメージングが可能となる。また、本発明によれば、発生する電磁波の強度分布を周期的分布とすることで、電磁波のアクティブフィルターとして使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、テラヘルツ波電磁波分析の分野に適用可能であり、特に短パルス電磁波発生に関する技術である。本発明の適用例としては、薬物非破壊検査装置やタンパク質分析装置などが挙げられる。
【符号の説明】
【0093】
1 電磁波整形波面素子
8 制御・解析装置
9 パルスレーザー光
10 パルス電磁波
21 電極
22 絶縁体
23 半導体
30 検査対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波波面を制御しながら電磁波を放射するための電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)周波数帯を利用する技術の急速な発展に伴い、多岐にわたる産業分野へのテラヘルツ波を応用した技術開発が進展しており、同時に様々なTHzコンポーネントへの需要が拡大している。例えば、テラヘルツ波の優れた透過性を利用したものとして、空港等のセキュリティチェックで使用される荷物検査装置やテラヘルツ波(テラヘルツ光)を分光計測に応用して物質の特定や薬品・食品検査に使用するなどの用途開発が期待されている。また、そのような技術としては、非特許文献1に開示されているテラヘルツ波を利用するイメージング装置があり、このようなイメージング装置においては、発生したテラヘルツ波を波面整形(変調)するためにマスク(メタルメッシュのホールフィルター:金属板に穴を開口形成したフィルター。図15参照)が一般的に用いられている。
【0003】
また、非特許文献1に記載のイメージング装置は、前記マスクにより試料に変調されたテラヘルツ波を照射することで、試料に含まれる物質の空間分布と分光特性をマップとして一度に取得することできるものである。すなわち、このようなテラヘルツ波を用いたイメージング装置では、試料の非破壊検査が可能であり、例えば、試料として内容物が不明である梱包物に対して、テラヘルツ波の照射を行い、梱包物を透過したテラヘルツ波を解析することで、内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状をマップや画像として取得することが可能である。
【0004】
一方、特許文献1には、テラヘルツ波を利用した技術として、電磁波変調装置が記載されている。この電磁波変調装置は、電磁波(テラヘルツ波)の波面を受ける面を含む電波経路において、波面内の少なくとも1つの方向にプラズマの電子密度が変化する空間的な電子密度分布を形成して電磁波の伝播状態(伝播方向)を変化させるものである。また、当該電磁波変調装置は、プラズマを発生させる発生手段と、プラズマの空間的な電子密度分布を調節する電子密度分布調節手段を有する。具体的には、特許文献1に記載の電磁波変調装置は、実施例7(特許文献1における図12)に記載されているように固定された対象物体にテラヘルツ波光源から出射されたテラヘルツ波を集光して、この集光ビームの方向を右から左へと偏向(走査)させることで、テラヘルツ波によるイメージングを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151619号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.C.Shen他、APPLIED PHYSICS LETTERS 95,231112(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載のイメージング装置においては、試料にテラヘルツ波を放射するに際し、異なる波面(変調)パターンを得るためには、マスクを機械的に交換する必要がある。そのため、イメージングによる計測速度が低下するという問題点がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の電磁波変調装置は、走査の際に用いるテラヘルツ波自体は別の装置により発生させる必要があるため、装置構成が複雑になってしまう。さらに、特許文献1に記載の電磁波変調装置においては、テラヘルツ波光源から出射されたテラヘルツを変調装置内を通過させることで偏向を行うのでテラヘルツ波の減衰が起こると考えられ、対象物体に対するテラヘルツ波の出射効率が悪化してしまう。
【0009】
つまり、非特許文献1に記載されたイメージング装置では、機械的動作による時間的遅延を伴うため、リアルタイムに検出結果が要求されるような医療現場での検査や交通機関等で行われる荷物のセキュリティチェックに適用するには十分でない。また、特許文献1のようにテラヘルツ波の偏向手段とテラヘルツ波光源とを別々に構成するのではなく、ひとつの素子や装置としてまとめて構成ができないかということが課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電磁波によるイメージングを高速に行うための電磁波波面整形素子及びそれを備えた電磁波イメージング装置、並びに電磁波イメージング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波波面整形素子である。
【0013】
請求項2においては、
請求項1に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射して、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有する電磁波イメージング装置である。
【0014】
請求項3においては、
請求項2に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波制御工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有する電磁波イメージング方法である。
【0015】
請求項4においては、
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有する電磁波イメージング方法である。
【0016】
請求項5においては、
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向する電磁波波面整形素子である。
【0017】
請求項6においては、
前記電圧印加手段は、
前記複数の電極への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向する電磁波波面整形素子である。
【0018】
請求項7においては、
請求項5または請求項6に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射するとともに、前記発生する電磁波の放射方向を偏向することで検査対象物を走査し、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有する電磁波イメージング装置。
【0019】
請求項8においては、
請求項7に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向し、前記検査対象物を走査する電磁波走査工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有する電磁波イメージング方法。
【0020】
請求項9においては、
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有する電磁波イメージング方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
素子自体がアレイ状になり、電磁波を発生しながら波面整形を行うことができるため、波面整形用のフィルターを通過させる必要がない。また、発生する電磁波の放射強度や放射方向を電気的に制御することが可能であるため、リアルタイムに波面整形を行いながら検査対象物への走査をすることが可能となり、電磁波可視化速度を飛躍的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置の概略図。
【図2】図1における電磁波波面整形素子のA矢視図。
【図3】同じく側面概略図。
【図4】本発明に係る電磁波波面整形素子のエネルギーバンド分布の模式図。
【図5】電磁波強度制御の原理を説明するための説明図。
【図6】電磁波イメージング方法のフローを示す図。
【図7】テラヘルツ波放射強度を制御する実験の結果を示す図であり、(a)は印加電圧パターンを示す図、(b)の左図は印加電圧が10V時のイメージングを示す図、(b)の右図は印加電圧が10V時から0V時を差分したイメージングを示す図。
【図8】テラヘルツ波強度と印加電圧の関係を示す図。
【図9】電磁波イメージング装置の別実施例を示す図。
【図10】電磁波イメージング装置の別実施例を示す図。
【図11】テラヘルツ波の放射方向の制御方法を説明する説明図であり、(a)は印加電極が横長型の場合を示す図、(b)は印加電極が縦長型の場合を示す図。
【図12】シミュレーション条件を説明する説明図。
【図13】シミュレーション結果を示す図。
【図14】シミュレーション結果を示す図。
【図15】従来のマスクを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1に、本発明の電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置の実施例を示す。
電磁波イメージング装置20は、検査対象物30に対してパルス電磁波10を放射し、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10の解析を行うことで検査対象物30の非破壊検査・計測を行う装置であり、例えば、検査対象物30に含まれる内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状等をマップや画像として取得すること(イメージング)が可能である。電磁波イメージング装置20は、電磁波波面整形素子1、照射装置(光学系)、検出・変換装置4、及び制御・解析装置8等を備える。以下、装置構成の詳細及び測定原理について説明する。
【0026】
電磁波波面整形素子1は、パルス電磁波10に対して波面整形を行うための素子であり、図2に示すように、正方形状(本実施例においては、15mm×15mm)である。電磁波波面整形素子1は、電極21と、絶縁体22と、半導体23と、透明基板24と、電圧印加手段3(図1参照)とを主に具備する。すなわち、電磁波波面整形素子1は、絶縁体22と、該絶縁体22の一端面(図3においては右端面)に当接するように形成され、所定の厚さを有する半導体23と、該半導体23の一端面(図3においては右端面)に当接するように形成される透明基板24、前記絶縁体22の他端面(図3においては左端面)に当接するように形成される電極21と、を有する。電磁波波面整形素子1は、当該電磁波波面整形素子1が有する半導体23の一端面である入射面23aに前記透明基板24を介してパルスレーザー光9が入射された際に、パルス電磁波10を放射するものである。また、電磁波波面整形素子1の作製方法としては、先ず、透明基板24(膜厚:600μm)上に半導体23(本実施例においては、Si)を蒸着により薄膜形成(膜厚:150nm)し、当該半導体23上に絶縁体22(本実施例においては、SiO2)を熱酸化または蒸着により薄膜形成(膜厚:275nm)し、さらに、当該絶縁体22上に電極21(本実施例においては、Au)を蒸着によりアレイ状に薄膜形成(膜厚:200nm)することにより作製するものである。すなわち、プレート状薄膜である透明基板24に半導体23(Si)、絶縁体22(SiO2)、金属部(Metal部)である電極21(Au)と順に積層することで、いわゆるMOS構造チップを構成している。
【0027】
また、本実施例では、絶縁体22としては酸化シリコン(SiO2)を用いたが、他には窒化シリコン等を用いることが可能である。前記絶縁体22の厚さを約275ナノメートル、半導体23の厚さを約150ナノメートルとしたが、半導体23の厚さは、パルス電磁波10の大きな振幅強度を得るために、パルスレーザー光9の波長と半導体23の種類によって決定される光侵入長と同等の大きさとするのが望ましい。尚、光侵入長は、半導体23についての光吸収係数の逆数である。例えば、パルスレーザー光9の波長が790ナノメートルであり、半導体23の種類が高抵抗のシリコンである場合、半導体23の厚さは約2ミクロン程度とすることで、効率よくパルス電磁波10を発生させることができる。
【0028】
電極21は、図2、3に示すように、絶縁体22上にアレイ状に薄膜形成される複数の金属(通電可能な金属、本実施例ではAu薄膜を使用)である。電極21は、電極数が横4列×縦4列の合計16個から構成される。電極21、21、・・・は、所定間隔にて区画されており、当該電極21、21、・・・の各端部にAlボンディング(図示せず)が施され、当該Alボンディングと前記半導体23であるSi膜の基板外側にコーティングされたAgペーストを介して接続される複数の配線と、の間に電圧印加手段3(図1参照)を介装している。
【0029】
電圧印加手段3は、前記複数の電極21と前記半導体23との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するものである。
すなわち、電圧印加手段3は、電極21、21、・・・に対して所定の電圧をそれぞれ印加する(バイアスの制御をする)ことが可能であり、必要に応じて電極21、21、・・・と半導体23との間に電圧をそれぞれ印加することができるようになっている。これにより、電極21、21、・・・の直下となる半導体23内の空乏層の幅を制御することができる。
なお、電極の数、形状、配置パターンは、特に本実施例に限定するものではなく、検査対象物の組成・形状・大きさ等により適宜変更してもかまわない。
ここで、図2に示すように、電極21、21、・・・の横方向における配列番号を1〜4とし、縦方向の配列記号をA〜Dと便宜上定める。
【0030】
前記透明基板24は、電極21、21、・・・、絶縁体22及び半導体23を保持するための保持部材であり、半導体23と絶縁体22と電極21、21、・・・を積層状に作製する際に必要である。さらに、電磁波波面整形素子1の機械強度を保つためにも必要である。本実施例では、透明基板24としてサファイアが用いられている。
【0031】
ここで、レーザーパルス照射による電磁波の発生原理を説明する。半導体中の電場Eが存在する場所に、バンドギャップよりも大きなエネルギーをもつレーザー光を照射すると、光励起による電子・正孔対が生成し、その電子・正孔対が電場Eによって加速されるために電流が発生する。レーザー光が連続光の場合は、定常的な電流が流れるが、レーザー光がパルス光の場合には、励起された電子・正孔対はある一定の時間で緩和し、電流も流れなくなるため、光パルスの幅と緩和時間に依存して、パルス状の電流が流れる。古典電磁気学のMaxwellの方程式から導出される下記(1)式によれば、半導体に流れる電流に時間変化が発生した場合、該半導体より電磁波が放射される。
【0032】
【数1】
【0033】
上記(1)式において、Eemissionは、電磁波の電界ベクトル、Jは、光電流密度ベクトル、nは、光励起された電子・正孔対の密度、eは、素電荷量、vは、光が照射された位置における半導体中の電場Elocalによって加速された電子・正孔対のドリフト速度、μは、電荷の移動度である。
【0034】
(1)式からわかるように、発生する電磁波の振幅強度は、光が照射された位置における半導体中の電場Elocalに比例する。
【0035】
図4は、電磁波波面整形素子1のエネルギーバンド分布の模式図であり、横軸は、位置を示しており、縦軸はエネルギーを示している。また、図中のECは伝導帯であり、EVは価電子帯である。絶縁体22と半導体23の境界には、空乏層が形成される。空乏層とは、キャリアが存在しない領域であり、該空乏層には局所電界Eが形成されている。したがって、外部から電圧を印加しなくても、空乏層には定常的に電界が存在していることになる。この空乏層に光を照射し、電子・正孔対を生成すると、(1)式にしたがって、電磁波が発生する。
【0036】
ここで、局所電界Eの向き及び大きさは、絶縁体22と半導体23の境界の状態や、半導体23の特性によって変わることがある。しかしながら、電磁波発生の原理において特に重要な点は、局所電界Eが形成されていることである。
【0037】
また、本実施例においては、電極21に電圧印加手段3により所定の印加電圧を付与することで、前記電場Elocalを制御するものであり、当該前記電場Elocalの制御により発生する電磁波の振動強度(放射強度)を制御することができる。
つまり、本実施例のMOS構造を有する電磁波波面整形素子1による電磁波強度制御の原理について図5を用いて順に説明すると、1)電圧印加手段3によりmetal−Si(電極21−半導体23)間にバイアス電圧を印加する(金属膜の仕事関数の変化が起こる)、2)半導体23(Si層)における空乏層電界が変化する、3)瞬時電流が変化、4)発生する電磁波(テラヘルツ波)の電界強度も変化、という流れに従って電磁波の放射強度を制御することを可能とするのである。
【0038】
照射装置(光学系)は、電磁波波面整形素子1が有する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aにパルスレーザー光9を照射する手段であり、パルスレーザー光源2、ビームスプリッタ14、時間遅延手段15、光チョッパー16、複数の鏡等から主に構成される。照射装置(光学系)は、電磁波波面整形素子1の半導体23に所定の波長を有するパルスレーザー光9を照射する機能を主に有する。
なお、パルスレーザー光9の方向を変更するために使用した鏡等の構成は、本実施形態に限定するものではなく、各構成部品の配置を考慮して、例えば更に鏡の数を増やす等適宜構成を変更してもかまわない。
【0039】
また、図1に示すごとく、本実施例では、パルスレーザー光9とパルス電磁波10の経路によってなす面を略水平面、即ち、図1は上面視の構成であり、この構成を側面から見た場合に、前記パルスレーザー光9とパルス電磁波10が略水平面をなすような配置構成としているが、各装置の形状及び固定方法によって適宜設定することが望ましく、前記略水平面を構成する必要はない。
【0040】
パルスレーザー光源2は、パルスレーザー光9を照射する手段である。パルスレーザー光源2は、前記電磁波波面整形素子1にパルスレーザー光9を前記半導体23のレーザー光入射面23aに照射することで、当該照射位置の直上にある電極21への印加電圧の量に依存する振幅強度を持ったパルス電磁波10を発生させる手段である。また、本実施例におけるパルスレーザー光源2としては、フェムト秒チタンサファイアレーザー(繰り返し周波数82MHz、出力890MHz、中心波長780nm、パルス幅100fs)を用いる。
【0041】
また、パルスレーザー光源2は、本実施例の如く、パルスレーザー光9を発生可能なモード同期チタンサファイアレーザー、又はフェムト秒ファイバーレーザであるのがよい。
また、このパルスレーザー光9の波長は、300ナノメートル(300nm=0.3μm)以上、2ミクロン(2μm)以下の範囲に含まれるものであり、時間平均のエネルギーが0.1mW以上、10W以下であり、パルス幅が1フェムト秒(1fs=0.001ps)以上、10ピコ秒(10ps)以下であるのがよい。
すなわち、電磁波の励起に際しては、光源として時間の幅の小さなパルスレーザー光9を用いることにより、半導体23に大きな影響を及ぼさない状態で、電磁波の励起ができる。また、特にパルスレーザー光9としてフェムト秒レーザー光を使用することで、高い時間分解能による時間分解計測が可能となり、検査対象物30をリアルタイムで観測可能となる。なお、半導体23に熱的影響を及ぼさない最大光パルス幅は、約10ピコ秒と見積ることができる。また、フェムト秒レーザーを使用することで、レーザーによる加熱の悪影響を最小限に抑えることができるという効果がある。
【0042】
また、図3に示すごとく、前記パルスレーザー光9は、前記電磁波波面整形素子1の前記電極21、21、・・・、が作製される面(絶縁体22上面)の反対側から照射されるものである。換言すれば、パルスレーザー光9は、電極21、21、・・・、に対応する前記半導体23、すなわち、図3中における電極21、21、・・・、直下の半導体23の入射面23a全体に亘って照射されるものである。このために、電磁波波面整形素子1に設けられる半導体として、前記パルスレーザー光9を透過する絶縁体基板(透明基板24)上に、半導体膜(半導体23)を作製したものが使用される。
【0043】
ビームスプリッタ14は、入射するパルスレーザー光9をプローブ光L1とポンプ光L2とに分割する手段であり、本実施例においては、直進するポンプ光L2に対してプローブ光L1を垂直方向に分割可能であるハーフミラーを用いている。また、プローブ光L1は検査対象物30の検査の際の同期を取得するために用いられる光であり、ビームスプリッタ14から鏡、時間遅延手段15、鏡、レンズ35を介して前記検出・変換装置4(後述する検出素子19)に照射される。また、ポンプ光L2は、ビームスプリッタ14から光チョッパー16、鏡を介して半導体23の入射面23aに照射される。
【0044】
前記ポンプ光L2の半導体23の入射面23aへの入射角は、パルスレーザー光9(ポンプ光L2)の有する波長が、電磁波波面整形素子1の半導体23へ最も吸収される角度とすることが好ましい。ただし、各装置の形状及び固定方法によっては、この角度に限定する必要はなく、特に限定されるものではない。
【0045】
時間遅延手段15は、前記プローブ光L1の光路に配置され、前記検出・変換装置4にて振幅強度が検出される時間を周期的に遅延可能である手段である。時間遅延手段15は、図示しない駆動手段により周期的に所定方向に移動可能である可動鏡15aと、当該可動鏡15aを保持するステージ15bとを備える。時間遅延手段15は、当該時間遅延手段15に入射されるプローブ光L1を、当該プローブ光L1の入射方向に対して、平行かつ反対方向に反射することができる。こうして、時間遅延手段15は、駆動手段により可動鏡15aをプローブ光L1の入射方向に対して平行かつ周期的に往復移動することによりプローブ光L1の光路長を調節し、光学的に時間遅延することが可能である。また、駆動手段は、制御・解析装置8により制御される。
すなわち、時間遅延手段15は、前記プローブ光L1の光路長を調整するための可動鏡15aを周期的に移動させることで所定時間間隔の時間遅延量を付与したプローブ光L1を前記検出・変換装置4(後述する検出素子19)に入射することができる。
【0046】
光チョッパー16は、ポンプ光L2の光路に配置され、当該ポンプ光L2を所定の周波数にてチョッピングすることが可能である。
【0047】
検出・変換装置4は、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射して、当該検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10の振幅強度を計測(検出)する手段である。検出・変換装置4は、電磁波検出手段である検出素子19と、集光手段18と、変換手段と、から構成される。検出・変換装置4は、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10を集光手段18により集光し、この集光されたパルス電磁波10を検出して、パルス電磁波10の電場振幅の時間波形に対応した時間的に変化する電圧信号に変換するものである。
【0048】
検出素子19は、例えば光伝導アンテナ等であり、半導体23の入射面23aにおけるポンプ光L2照射位置から発生するパルス電磁波10を入射可能に配置され、当該パルス電磁波10の入射と同期させて、プローブ光L1を検出素子19の所定位置に照射すると、当該照射時に入射したパルス電磁波10の電界強度(振幅強度)に比例した電流が発生する。
【0049】
集光手段18は、一対からなる軸外し放物面鏡であり、検査対象物30を放物面鏡間に配置して、当該検査対象物30に対して半導体23の入射面23aから放射されたパルス電磁波10を集光して放射するとともに、検査対象物30を透過もしくは反射してきたパルス電磁波10を集光して検出素子19の一端に照射するものである。
【0050】
変換手段は、検出素子19に接続される電流アンプ27と、当該電流アンプ27に接続されるロックインアンプ28とを備える。また、ロックインアンプ28は光チョッパー16と接続されている。この変換手段では、上記検出素子19にて発生した電流を測定することにより、プローブ光L1が検出素子19に照射した時に入射したパルス電磁波10aの振幅強度を検出することが可能である。また、前記パルス電磁波10に含まれる周波数の成分は、10ギガヘルツから100テラヘルツまでの範囲に含まれることとし、これにより、一般的な構成の検出・変換装置4の利用が可能となる。また、本発明に係る電磁波イメージング装置20を構成する上で、利用するパルス電磁波10としては、ギガヘルツ領域よりもテラヘルツ領域が好ましい。テラヘルツ領域を利用する場合は、ギガヘルツ領域を利用する場合とは異なり、ミラーやレンズ等を使用した光学的な手法により、電磁波を検出器に容易に導くことが可能となる。一方、テラヘルツ領域よりも高周波領域は、いわゆる光になるが、光を利用する場合は、周囲の光と信号の光を区別する手段を備える必要があり、装置が複雑になるため光のようなテラヘルツ領域よりも高周波の電磁波よりもテラヘルツ領域の電磁波を利用することが好ましい。
【0051】
制御・解析装置8は、前記振幅強度より、検査対象物30を定性的もしくは定量的に計測して、例えば、検査対象物30に含まれる内容物の化学成分の分光特性や物理的な形状等をマップや画像として取得して画像として解析結果を表示すること(イメージング)が可能である装置である。
すなわち、制御・解析装置8は、前記検出・変換装置4の変換手段にて変換した電圧信号から、検査対象物30に含まれる内容物(被検出物質)の有無の検出(定性的な測定)、内容物の定量的な測定、内容物の分光計測による物質の特定、並びに、検出されたパルス電磁波10の振幅強度(電圧値)の時系列波形を用いた所定の解析といった解析処理、当該解析処理結果に基づく画像処理、及び所定のフーリエ変換等の演算処理を行う装置である。また、本実施例では、制御・解析装置8は、本明細書中に説明する制御や解析の実行を可能とする画像表示部を有するコンピュータであり、図示せぬ制御信号線を介して、照射装置(光学系)、検出・変換装置4、パルスレーザー光源2及び、電極21に所定の電圧を付与するための電圧印加手段3の制御も併せて行うものである。
【0052】
また、制御・解析装置8は、電極21、21、・・・への印加電圧の制御により半導体23内の空乏層の幅を制御し、当該電極21、21、・・・の存在する位置から発生するパルス電磁波10の振幅強度を変化させることができる。また、制御・解析装置8は、電圧印加手段3を介して、複数の電極21、21、・・・に印加する電圧をそれぞれ制御することで、各電極21、21、・・・からそれぞれ振動強度や位相差の異なる電磁波が発生し、これら異なる電磁波間による位相波の干渉効果を利用して電磁波の放射方向(伝播方向)を適宜制御することが可能となる。なお、位相波の干渉効果を利用した電磁波の伝播方向を制御する方法については後述する。こうして、電磁波波面整形素子1により発生させたパルス電磁波10を検査対象物30に放射し、検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10の振幅強度の変化を捉えて制御・解析装置8により解析後、この解析結果を画像化することによって、検査対象物30内の内容物や内容物の化学組成をイメージングできる。
具体的には、各電極21、21、・・・の印加電圧を変化させることで、絶縁体22表面の電荷が変化し、当該各電極21、21、・・・の存在する位置に対応する半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10の波面整形を行うことができる。当該波面整形(変調)されたパルス電磁波10を検査対象物30に照射し、検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出して、透過(もしくは反射)後のパルス電磁波10を制御・解析装置8内の記憶装置に記憶している物質固有の電磁波周波数データベース(例えば、テラヘルツ波振動数データベース)と照合し、内容物の物質を特定することが可能となる。このように、電磁波イメージング装置20を、いわゆる非破壊検査装置として利用可能となる。
以上の装置構成及び原理によって、検査対象物30のイメージングが行われる。
【0053】
次に、以上のように構成された電磁波イメージング装置20に適用する電磁波イメージング方法を説明する。
【0054】
本実施形態に係る電磁波イメージング方法は、図6に示すフローに従って進行するものであり、照射工程S10と、電磁波放射工程S20と、電磁波制御工程S30と、電磁波検出工程S40と、画像処理工程S50を主に有する。以下、各工程について、具体的に説明する。
【0055】
照射工程S10は、前記半導体23の入射面23aにパルスレーザー光9を照射する工程である。
【0056】
すなわち、照射工程S10では、検査対象物30を非破壊検査する際に、先ず、図1に示すごとく、検査対象物30を、装置内の規定の位置(本実施形態においては、集光手段18の対向する放物面鏡の間)にセットした後、前記制御・解析装置8の制御によって、パルスレーザー光源2から照射されたパルスレーザー光9をビームスプリッタ14(本実施形態においては、ハーフミラー)によってプローブ光L1とポンプ光L2とに2分割して(パルスレーザー光分割工程)、前記ポンプ光L2を電磁波波面整形素子1における半導体23の入射面23aに向けて照射するものである。
【0057】
電磁波放射工程S20は、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射する工程である。
【0058】
すなわち、電磁波放射工程S20では、前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30の所定領域に放射する工程である。電磁波放射工程S20では、分割されたパルスレーザー光9の一方であるポンプ光L2を光チョッパー16を通過させ、当該光チョッパー16を通過したポンプ光L2は、前記半導体23の入射面23aに照射される。そうして、ポンプ光L2の照射位置である電極21、21、・・・に対応する前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10を検査対象物30に放射するものである。
【0059】
電磁波制御工程S30は、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射強度を制御する工程である。
【0060】
すなわち、電磁波制御工程S30では、アレイ状に配置された複数の電極21、21、・・・に対して、個々に電圧制御することにより、電極21、21、・・・の各位置に対応する半導体23のレーザー光入射面23aから個々に変調された複数のパルス電磁波10を放射するものである。
【0061】
電磁波検出工程S40は、前記検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出する工程である。
【0062】
すなわち、電磁波検出工程S40では、アレイ状に配置された複数の電極21、21、・・・の各位置に対応する半導体23のレーザー光入射面23aから放射された複数のパルス電磁波10の振幅強度が検出素子19により検出される。電磁波検出工程S40は、さらにプローブ光照射工程、時系列波形生成工程、を有する。
【0063】
プローブ光照射工程は、前記プローブ光L1を、前記時間遅延手段15を通過させ、前記ポンプ光L2により発生したパルス電磁波10の検出素子19への入射と同期させて前記検出素子19に照射する工程である。
【0064】
すなわち、プローブ光照射工程では、分割された一方のパルスレーザー光9であるプローブ光L1が鏡、時間遅延手段15、鏡、及びレンズ35を介して検出素子19の他端に照射される。この際、プローブ光L1は前記半導体23から発生するパルス電磁波10が検査対象物30を透過もしくは反射して前記検出素子19に入射するのに同期して照射される。
【0065】
時系列波形生成工程は、前記プローブ光L1と同期した、遅延時間の異なる複数の前記パルス電磁波10の振幅強度を取得して、前記検査対象物30の所定の領域を透過もしくは反射したパルス電磁波10の時系列波形を生成する工程である。
【0066】
すなわち、時系列波形生成工程では、ビームスプリッタ14により分けられたプローブ光L2が検出素子19に至る光路の途中にて時間遅延手段15を通過した際に、当該時間遅延手段15内においては、所定方向(本実施例ではプローブ光L2と平行方向)に可動自在に配置された可動鏡15aによりプローブ光L1が入射及び反射される。また、制御・解析装置8が当該可動鏡15aを所定方向に所定の周波数にて周期的に往復可動させることでプローブ光L1が検出素子19に到達する時間を光学的に時間遅延する。こうして、制御・解析装置8は、時間遅延手段15によりプローブ光L1が検出素子19へ到達する時間を周期的に変化させながら、検出素子19にプローブ光L1が入射する時間を遅延することで、プローブ光L1入射時のパルス電磁波10の振幅強度を所定の時系列で取得することが可能となる。
【0067】
具体的には、制御・解析装置8では、検出されるパルス電磁波10の振幅強度に基づいて振幅強度の時系列波形の生成が行われるが、その工程としては、まず、検出素子19に検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10が集光され、当該パルス電磁波10の入射と同期させて、プローブ光L1を検出素子19の所定位置に照射すると、当該照射時に入射したパルス電磁波10の電界強度(振幅強度)に比例した電流が発生する。当該電流は、電流アンプ27により電圧に変換後、ロックインアンプ28にて、光チョッパー16のチョッピングと同期してロックイン検出が行われる。そして、当該ロックイン検出の値はコンピュータ8に入力される。つまり、制御・解析装置8は、プローブ光L1が検出素子19に照射した時に入射したパルス電磁波10aの各振幅強度を検出することが可能である。
電磁波検出工程S40(プローブ光照射工程、時系列波形生成工程)が終了したら、次に画像処理工程S50に進む。
【0068】
画像処理工程S50は、前記電磁波検出工程S40により検出されたパルス電磁波10に基づいて画像処理をする工程である。
【0069】
すなわち、画像処理工程S50では、制御・解析装置8により前記パルス電磁波10の振幅強度より、検査対象物30を定性的もしくは定量的に計測し、所定の演算処理が行われて前記検査対象物30中の物質の分光分布等を得るものであり、前記検査対象物30を透過もしくは反射した電磁波における電磁波振幅強度の変化の有無や、電磁波振幅強度の変化の量を検出し、これらに基づいて検査対象物30中の物性・形状等の情報をイメージングとして画像取得するものである。
【0070】
以上のように、本発明に係る電磁波波面整形素子1及びそれを備えた電磁波イメージング装置20は、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光9の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射強度を制御することができる。また、本発明に係る電磁波イメージング装置20は、電磁波波面整形素子1の半導体23全体に、パルスレーザー光9を照射させ、このパルスレーザー光9の照射によって生じるパルス電磁波10をバイアス制御しつつ、検査対象物30に放射し、当該検査対象物30を通過(もしくは反射)したパルス電磁波10を検出して、この検出結果を解析することでイメージングを行うものである。
【0071】
さらに、以上の一連のイメージングの工程においては、検査対象物30を一度セットした後は、検査したい領域にパルス電磁波10を全面照射することで、検査したい領域全域の被検出物質についての解析を実施することができ、従来のように波面整形を行うためのフィルター交換の手間もかからないため作業性がよく、短時間で、効率良く多くの解析データを得ることが可能となる。すなわち、本実施例の電磁波波面整形素子1を備えた電磁波イメージング装置20では、フィルター交換が不要であり、検査対象物30の電磁波イメージング画像を効率的かつ高速に取得することができる。
【0072】
次に、本発明に係る電磁波イメージング装置20を用いて行ったパルス電磁波10の放射強度を制御する実験の結果について示す。
【0073】
図7(b)は検査対象物30をセットしない状態でパルス電磁波10(本実施例においては、テラヘルツ波)を放射した時におけるイメージングである。このときのRange(照射面面積)は、13.5mm(x軸方向)×13.5mm(y軸方向)であり、レーザースポット径は約450μmである。なお、図6に示す、横に並ぶ番号1〜4及び縦に並ぶA〜Dは図2で示した電極21の配列番号と配列記号に対応している。図7(b)の左図はグラデーションの濃淡によりテラヘルツ波の強度を示したイメージングである。図7(a)が示すように、T字状に各電極21、21、・・・に印加電圧(+10V)を付与した場合、図7(b)の左図のような各電極21、21、・・・に対応するイメージングが得られる。図7(b)の右図は、図7(b)の左図のようにバイアス制御した部分(印加電圧10V)と電圧を印加してないRef部分(0V)との差分計測した値のイメージングである。図7(b)の右図におけるグラデーションの濃淡は、差分電圧差の大きさを示している。この結果から明らかなように、上記のように所定の印加電圧パターン(本実験ではT字状のパターン)を印加し、印加した電圧とRef部分(印加電圧なし)との差分を取得することで、所望のパターンでテラヘルツ波を照射することが可能であり、さらに印加電圧を電圧印加手段3により制御することで所望の放射強度となるようにテラヘルツ波を制御することが可能である。
【0074】
次に、上述した電磁波強度制御の原理を検証するために、テラヘルツ波強度とバイアス電圧の関係を調べた。その結果を以下に示す。
図8は、テラヘルツ波強度と印加電圧の関係(バイアス依存性)を示したものである。図8に示すグラフは、電磁波波形整形素子1の電極としてAuの代わりにTi(チタン)を用いて電磁波波形整形素子を構成し、半導体23にパルスレーザー光9を照射し、チタン電極と半導体23(Si)間に直流バイアスを印加した際のテラヘルツ波強度を計測したものであり、横軸が印加電圧(バイアス電圧)[V]、縦軸はテラヘルツ波強度(任意単位)である。図8に示すように、テラヘルツ波強度と印加電圧(バイアス電圧)とはほぼリニアな関係を示し、テラヘルツ波強度は印加電圧(バイアス電圧)に依存することを確認した。この結果から、電圧印加手段3により電極21に付与する印加電圧を制御することで、放射されるパルス電磁波10を制御することが可能であることが確認できた。
以上の実験結果により、電磁波波面整形素子1が有する電極21への印加電圧の制御により、テラヘルツ波の放射強度(発生強度)を制御することが可能であることを実証できた。
【0075】
次に、本実施形態に係る電磁波イメージング装置の別実施例について説明する。
図9は、本実施例の電磁波イメージング装置20において、検出素子19の代わりにCCDカメラを配置した別実施例である。この別実施例によれば、電磁波波面制御素子1から発生したパルス電磁波10を検査対象物30に放射し、検査対象物30を透過したパルス電磁波10をCCDカメラで取得することができる。
図10は、本実施例の電磁波イメージング装置20において、検出素子19の代わりに集光手段である凹面鏡と検出器を配置するとともに、電磁波波面整形素子1の入射面23a近傍に複数のレンズを配置した別実施例である。この別実施例によれば、電磁波波面制御素子1から発生したパルス電磁波10を検査対象物30に照射し、検査対象物30を透過したパルス電磁波10を凹面鏡で集光して検出を行い、所定の画像処理によりイメージングすることができる。
【0076】
本発明の原理に基づき、あらためて上記の流れを説明すると、(1)透明基板24側からパルスレーザー光9(フェムト秒レーザー)を照射すると、半導体23内部のキャリアが変調され、テラヘルツ波が放射される。(2)電極21、半導体23間に電圧印加手段3により電圧を印加することで、電極21直下で発生するパルス電磁波10であるテラヘルツ波の強度を制御することができる。すなわち、図7で示したような放射強度のパターン分布は、電極21、21・・・への電圧印加により容易に制御することが可能であり、上記ような原理に基づいて作製した電磁波波面整形素子1は、電極21の電圧制御により高速な波面制御(変調制御)が可能である。
【0077】
つまり、上記実施例のように、電磁波波面整形素子1は、サファイア基板を用いたMOSキャパシタ構造に基板側よりパルスレーザー光9であるフェムト秒レーザーを照射することでパルス電磁波の一例であるテラヘルツ波を放射することができる素子である。電磁波波面整形素子1では、ゲート電圧を制御することで、発生するテラヘルツ波の放射強度を制御することが可能である。
【0078】
本実施形態では、上述したように、MOS構造のセンシングプレートである電磁波波面整形素子1を作製し、バイアス制御によるテラヘルツ波発生強度の制御する実験を行い、電磁波波面整形素子1から発生するテラヘルツ波の強度の制御が可能であることを実証した。
【0079】
本発明の電磁波波面整形素子は、従来技術の課題を解消するために新たなテラヘルツ波センシングデバイスとして提案するものであり、発生素子としてMOSアレイ構造を採用し、この素子への印加電圧を制御することで、電磁波発生強度を制御できるように構成したものである。また、本発明の電磁波波面整形素子は、ピコ秒以下のレーザーパルスを発生素子に照射することで電磁波を発生させるとともに、発生する電磁波の波面を電気的に制御することができる。
【0080】
次に、前述した電磁波波形整形素子1の同様の構成を用いて、電磁波波形整形素子1から発生するパルス電磁波10の放射方向を電気的に制御できるかどうかの実験及びシミュレーションを行った。
【0081】
(テラヘルツ波放射方向の制御方法)
通常、パルス電磁波によるイメージングは、パルス電磁波を発生する素子自体を駆動手段により動かして、走査することでイメージング画像を取得する。本発明によれば、上記電磁波波形整形素子1を用いて、電磁波波形整形素子1を動かさずに固定した状態で、イメージングを行うことが可能であることを図及びシミレーション結果により説明する。
【0082】
(テラヘルツ波発生パターン制御の説明)
図11は、電極の形状を横長型にした場合と、電極の形状を縦長型にした場合の各々において、パルスレーザー光9を所定の入射角度で半導体に入射し、半導体の入射面から発生するテラヘルツ波を示したものである。図11(a)では、パルスレーザー光9が所定の角度にて入射することで、横長の電極の長手方向(右方向)に行くに従って、パルスレーザー光9の到達時間の遅延が起こり、レーザー到達地点各部において発生するテラヘルツ波において位相が異なる現象が起こる(いわゆる、フェーズドアレイ効果が働く)。この複数の異なる位相同士が干渉を起こして、その干渉効果により発生するテラヘルツ波の発生方向が決定されることになる。一方、図11(b)では、パルスレーザー光9が所定の角度にて入射するが、電極が縦長であるため、電極の短手方向は短く、その結果パルスレーザー光9の到達時間の遅延はほとんど起こらず、レーザー到達地点各部において発生するテラヘルツ波において位相は同じままである(フェーズドアレイ効果が働かない)。その結果としてテラヘルツ波は、入射面に対してほぼ垂直方向に発生することになる。
上記図11で示した結果により、テラヘルツ波の発生パターンを変えることでレーザー入射角固定のままテラヘルツ波の放射方向を制御することが可能であることがわかった。換言すれば、電磁波波形整形素子1において、上述したように、電圧印加手段3により複数の電極21への前記印加電圧をそれぞれ制御して、横長型の発生パターンや縦長型の発生パターン等、テラヘルツ波の発生パターンを適宜変えることで、レーザー入射角固定のままテラヘルツ波の放射方向を制御することが可能であることがわかった。つまり、本実施例の電磁波波形整形素子1においては、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光9の入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することができる。次では、さらに詳細にテラヘルツ波の発生パターンとテラヘルツ波の伝播方向との関係を説明する。
【0083】
(テラヘルツ波伝播シミュレーション)
次に、テラヘルツ波の発生パターン(印加電圧パターン)を制御することにより、テラヘルツ波の伝播方向を所定の方向に偏向することができるかをテラヘルツ波伝播シミュレーションにより検証した。
テラヘルツ波伝播シミュレーションでは、電磁波波形整形素子1の電極21を想定して、電極サンプルを図12の左図に示すように、縦5×横5のアレイ状に配列された電極(放射ブロックという)のパターンとし、ひとつの電極に相当する1ブロック:90μm×90μm、ブロック間は10μmとしている。図12の左図において、白色ブロックは印加電圧ONを示しており、黒色ブロックは印加電圧OFFの状態を示している。また、図12の右図に示すように、電磁波波形整形素子の半導体に対して入射させるパルスレーザー光は、入射角:45°、波源:球面波の正弦波、波長:300μmである。
【0084】
図13は、前述した横長型、縦長型の各印加電圧パターンに対応して発生するテラヘルツ波について、シミュレーションにより検証した結果である。ここで、白色ブロックはテラヘルツ波発生(印加電圧ON状態)、黒色ブロックはテラヘルツ波発生(印加電圧OFF状態)を示している。
横長型においては、y−z平面では位相の変化を生じていないが、x−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
一方、縦長型においては、y−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できるが、x−z平面では特に伝播方向に指向性がない。
横長型、縦長型の各印加電圧パターンにおいては、シミュレーション結果においても前述した図11で示した予想と同様の結果が得られた。
【0085】
図14は、右斜め型、左斜め型の各印加電圧パターンに対応して発生するテラヘルツ波について、シミュレーションにより検証した結果である。
右斜め型においては、y−z平面及びx−z平面のそれぞれにおいてテラヘルツ波の伝播方向を示す右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
一方、左斜め型においては、y−z平面ではテラヘルツ波の伝播方向を示す左斜め上方の位相パターンが発生していることが確認できるが、x−z平面では右斜め上方の位相パターン(濃色のグラデーション部分)が発生していることが確認できる。
以上のシミュレーション結果からテラヘルツ波放射パターンによってテラヘルツ波の伝播方向が変わることを確認できた。
【0086】
以上のシミュレーション結果より本実施例における電磁波波形整形素子1は、前記電圧印加手段3により、前記複数の電極21への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極21からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することができる。すなわち、上記のシミュレーションで検証したように、電磁波波形整形素子1は、電極21への印加電圧を制御することで発生するテラヘルツ波放射方向(伝播方向)を電気的に制御可能であるテラヘルツ波方向制御デバイスであり、これにより、テラヘルツ波によるイメージングの高速化が可能となる。
【0087】
また、上述した電磁波イメージング装置20において、電磁波波形整形素子1を備えることにより、検査対象物30にパルス電磁波10を放射するとともに、発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向することで検査対象物30を走査し、当該検査対象物30を透過もしくは反射したパルス電磁波10を検出する手段を有することになる。
【0088】
また、図6に示したフローの電磁波制御工程S30において、さらに、前記半導体23にパルスレーザー光9が入射した際に、前記電圧印加手段3により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極21に対応する前記半導体23のパルスレーザー光入射面23aから発生するパルス電磁波10の放射方向を偏向し、前記検査対象物30を走査する電磁波走査工程を加えることで、検査対象物30の走査画像を取得することが可能となる。
【0089】
以上のように、本発明によれば、素子自体がアレイ状になり、電磁波を発生しながら波面整形を行うことができるため、波面整形用のフィルターを通過させる必要がない。また、発生する電磁波の放射強度や放射方向を電気的に制御することが可能であるため、リアルタイムに波面整形を行いながら検査対象物への走査をすることが可能となり、電磁波可視化速度を飛躍的に向上することができる。
【0090】
また、本発明の電磁波波面整形素子(電磁波波面制御素子ともいう)は、MOS構造の金属部分へのバイアス制御により、発生するテラヘルツ波の強度を制御し、かつ、金属部のパターニング(印加電圧制御や電圧印加のON/OFF等による電磁波放射パターン制御)によりテラヘルツ波の位相制御することで、発生するテラヘルツ波の波面制御を可能とするものである。また、本発明のように複数の金属部をパターンニングすることで、複数の金属部が複数の波源となり、当該複数の波源から放射したテラヘルツ波が干渉し、任意の位相パターンとなるように制御することが可能となる。
【0091】
本発明は、極短光パルスをMOS構造半導体に照射し、高周波電磁波(特にテラヘルツ波)を発生させる技術において、発生させる電磁波の波面を高速に制御する素子に関するものである。本発明によれば、電磁波波面に対して、2次元フーリエ変化可視化技術を高速に適用することが可能となり、高速な電磁波イメージングが可能となる。また、本発明によれば、発生する電磁波の強度分布を周期的分布とすることで、電磁波のアクティブフィルターとして使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、テラヘルツ波電磁波分析の分野に適用可能であり、特に短パルス電磁波発生に関する技術である。本発明の適用例としては、薬物非破壊検査装置やタンパク質分析装置などが挙げられる。
【符号の説明】
【0093】
1 電磁波整形波面素子
8 制御・解析装置
9 パルスレーザー光
10 パルス電磁波
21 電極
22 絶縁体
23 半導体
30 検査対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御することを特徴とする電磁波波面整形素子。
【請求項2】
請求項1に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射して、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有することを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波制御工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有することを特徴とする電磁波イメージング方法。
【請求項4】
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の電磁波イメージング方法。
【請求項5】
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向することを特徴とする電磁波波面整形素子。
【請求項6】
前記電圧印加手段は、
前記複数の電極への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向することを特徴とする請求項5に記載の電磁波波面整形素子。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射するとともに、前記発生する電磁波の放射方向を偏向することで検査対象物を走査し、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有することを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項8】
請求項7に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向し、前記検査対象物を走査する電磁波走査工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有することを特徴とする電磁波イメージング方法。
【請求項9】
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の電磁波イメージング方法。
【請求項1】
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御することを特徴とする電磁波波面整形素子。
【請求項2】
請求項1に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射して、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有することを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射強度を制御する電磁波制御工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有することを特徴とする電磁波イメージング方法。
【請求項4】
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の電磁波イメージング方法。
【請求項5】
電磁波に対して波面整形を行うための電磁波波面整形素子であって、
半導体と、
当該半導体上に形成される絶縁体と、
当該絶縁体上にアレイ状に形成される複数の電極と、
前記複数の電極と前記半導体との各間に所定の印加電圧をそれぞれ付与するとともに、前記印加電圧をそれぞれ制御するための電圧印加手段と、を具備し、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向することを特徴とする電磁波波面整形素子。
【請求項6】
前記電圧印加手段は、
前記複数の電極への前記印加電圧のON又はOFFをそれぞれ制御し、前記印加電圧が付与された電極からなる所定のパターンを形成させることで、当該所定のパターンを形成した電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向することを特徴とする請求項5に記載の電磁波波面整形素子。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する手段と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射するとともに、前記発生する電磁波の放射方向を偏向することで検査対象物を走査し、当該検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する手段と、を有することを特徴とする電磁波イメージング装置。
【請求項8】
請求項7に記載した電磁波波面整形素子を備えた電磁波イメージング装置に適用する電磁波イメージング方法であって、
前記半導体のパルスレーザー光入射面に前記パルスレーザー光を照射する照射工程と、
前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波を検査対象物に放射する電磁波放射工程と、
前記半導体にパルスレーザー光が入射した際に、前記電圧印加手段により前記印加電圧をそれぞれ制御することで、前記印加電圧が付与された電極に対応する前記半導体のパルスレーザー光入射面から発生する電磁波の放射方向を偏向し、前記検査対象物を走査する電磁波走査工程と、
前記検査対象物を透過もしくは反射した電磁波を検出する電磁波検出工程と、を有することを特徴とする電磁波イメージング方法。
【請求項9】
前記電磁波検出工程により検出された電磁波に基づいて画像処理をする画像処理工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の電磁波イメージング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図15】
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図15】
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−179989(P2011−179989A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44794(P2010−44794)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【特許番号】特許第4534027号(P4534027)
【特許公報発行日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【特許番号】特許第4534027号(P4534027)
【特許公報発行日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]