説明

電磁波発生装置

【課題】大強度X線の発生が可能で、発生するX線のエネルギーを高速に切り替えられる、小型で低コストな電磁波発生装置の実現。
【解決手段】円形加速器からなる電磁波発生装置において、円形加速器を構成する偏向電磁石が、その形状により、入射または加速電子に対して収束機能を有することにより、当該加速器が、電子の入射、加速の全過程でその径方向の所定範囲で安定な電子周回軌道を有し、この安定な電子周回軌道上にターゲットが設置され、このターゲットの設置位置に対応して、周回する電子ビームが前記ターゲットに衝突する領域と、前記ターゲットに衝突しない領域が設定され、偏向電磁石の偏向磁界及び電子ビーム加速の両時間変化パターンの制御により、これらの領域間を電子が周回しつつ移動して、前記ターゲットと衝突することでX線を発生させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速器内で円形の軌道を描きながら周回する電子により、X線等の電磁波を発生させる、電磁波発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円形加速装置を利用した従来の電磁波発生装置には、ベータトロン加速原理による加速装置(ベータトロン加速装置と略称する。)を利用したもの(非特許文献1)、及び電子蓄積リングを利用したもの(特許文献1)がある。
【0003】
ベータトロン加速装置を利用した電磁波発生装置では、その装置内に入射された電子ビームが、同一半径の軌道上を周回しながら加速され、所定のエネルギーに到達した時点で、軌道を変化させられ、その結果、その変化した軌道上に設置されたターゲットに衝突し、X線が発生する。(非特許文献1)
また、電子蓄積リングを利用した電磁波発生装置は、入射器と電子蓄積リングから構成されており、所定のエネルギーにまで加速された電子ビームが入射器から電子蓄積リングに入射され、同リング内の一定軌道上を周回する。周回軌道上にはターゲットが配置されており、周回電子との衝突により、X線が発生する。(特許文献1)
【0004】
【非特許文献1】加速器科学(パリティ物理学コース)「亀井亮、木原元央共著」(丸善株式会社)平成5年9月20日発行(ISBN 4-621-03873-7 C3342)。4章ベータトロンP39〜P43。
【特許文献1】特許番号第2796071号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電磁波発生装置では下記の様な問題点があった。
ベータトロン加速装置を利用した電磁波発生装置(非特許文献1)では、加速装置内を周回する電子相互間のクーロン反発力の影響で大電流加速が難しい。その結果、加速電子ビームの強度は、線形加速器を使った電磁波発生装置よりも1〜2桁程度弱いものとなる。また、このタイプの加速装置では、電子ビームは周回中に所定エネルギーにまで加速されるが、その間、周回軌道が一定であり、ターゲットに衝突させる為には電子ビームの軌道を、X線発生用のターゲットの配置されている位置にまでずらす必要がある。しかし、周回軌道からずらしたビームは、その後安定周回することができず、ターゲットへの繰り返し衝突を図ることは困難である。このよう理由から、発生X線強度は低く、ベータトロン加速装置を利用した電磁波発生装置を産業・医療応用分野に適用することは殆どできなかった。
【0006】
また、エネルギーの異なるX線を得るには、ターゲットに衝突させる電子ビームのエネルギーを変える必要があるが、ベータトロン加速装置では、ターゲットに衝突する軌道に軌道を変化させた電子ビームは、その後安定に周回させることはできず、結果として電子は失われてしまう。従って、次のX線を発生させるためには、再度、入射・加速からはじめなければならず、エネルギーの異なるX線を高速に切り替えて発生させることはできなかった。しかも、入射毎の電子ビーム位置は必ずしも正確に再現されるものではないので、ターゲットに衝突する電子ビーム位置が微妙にずれることがある。そのため、可動体を対象に高速エネルギー差分法等による精密計測を実施しようとしてもX線エネルギー切り替えの高速性、入射毎の光源位置の再現性の問題により、対応が困難であった。また、高速性を要求されない場合でも、エネルギー差分法による計測を行う場合、ターゲットに衝突する電子ビーム位置の微妙なずれが、X線発生源位置のずれになり、精密な測定をすることは難しかった。
【0007】
電子蓄積リングを利用した電磁波発生装置(特許文献1)では、電子ビームの周回軌道は基本的には変わらないため、電子ビームをターゲットに繰り返し衝突させることは可能であるから、X線強度の点ではベータトロン加速装置の場合に比べて改善されるが、入射電流値を大きく取ることが難しいこと、及び、電子を所定のエネルギーにまで加速するための入射器と電子蓄積リングとで構成されていることによる、装置の大規模化のため、構成機器が多くなり、制御も複雑になる。そのため高コストになり、利用分野も制限されるものとなっていた。
【0008】
また、蓄積リングは、周回電子ビームのエネルギーを所定の値に保持する機能を有するものの、そのエネルギーを可変にする機能は有しておらず、これを変えるには、入射器で電子の加速エネルギーを変えて蓄積リングに入射する必要がある。従って、この場合も、ベータトロン加速装置の場合と同様、エネルギーの異なるX線を高速に切り替えて発生させることが困難であり、ベータトロン加速装置の場合と同様にその適用分野に制約が生じることとなる。なお、蓄積リングに加速機能を持たせ、シンクロトロン加速装置として使用すれば、加速装置内を既に周回している電子ビームのエネルギーを可変にすることは可能であるが、エネルギー切り替えの高速性を担保することは困難であり、更に問題となるのは、この装置においては、加速中も電子ビームの周回軌道は一定軌道となるため、加速途中にターゲットとの衝突を避けるためには、周回軌道外にターゲットを配置しなければならなくなる。この場合、周回電子ビームはターゲットに衝突した後、安定して周回することができなくなり、ベータトロン加速器の場合と同じく、ターゲットへの繰り返し衝突を図ることは困難となる。
【0009】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、従来に比べて強度の高いX線の発生が可能で、発生X線のエネルギーを高速で切り替えることができるコンパクトで低コストな電磁波発生装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る電磁波発生装置及び電磁波発生方法は、電子を発生させる電子発生手段と、前記電子発生手段からの電子を入射する入射手段と、前記入射された電子を加速する加速手段と、前記入射または加速電子を偏向させるための偏向磁界を発生させる偏向電磁石と、前記加速された電子を衝突させ電磁波を発生させるターゲットとを有する円形加速器からなる電磁波発生装置において、前記偏向電磁石は、その形状により、入射または加速電子に対して収束機能を有し、前記加速器は、前記収束機能を有する偏向電磁石により、電子の入射、加速の全過程で当該加速器の径方向の所定範囲で安定な電子周回軌道を有するものであり、前記ターゲットは、前記安定な電子周回軌道上に設置され、このターゲットの設置位置に対応して、前記安定な電子周回軌道の範囲内で、周回する電子ビームが前記ターゲットに衝突する領域と、この領域に隣接する、前記ターゲットに衝突しない少なくとも1の領域が設定され、偏向電磁石の偏向磁界及び電子ビーム加速の両時間変化パターンの制御により、これらの領域間を電子が周回しつつ移動して、前記ターゲットと衝突することで電磁波を発生させるものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る電磁波発生装置よれば、異なる軌道を安定に周回する電子を繰り返しターゲットに衝突させることができるので、大強度のX線の発生が可能となり、また、異なるエネルギーのX線を高速に切り替えて発生させることも可能となる。そのため、X線の撮像画像を短時間で得ることができる。また、異なるエネルギーのX線による複数のX線撮像画像を高速に取得することも可能となり、高速エネルギー差分法に適したX線発生源を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1
図1、図2は、それぞれ、実施の形態1にかかる電磁波発生装置の構成例1と構成例2とを示したものである。いずれの例もAG(Alternatig Gradient)収束加速器(図1は非特許文献2、図2は特許文献2より)を使用している点で共通しており、その特徴を生かした所定の制御を行うことにより高性能の電磁波発生装置が実現できる。
【0013】
【非特許文献2】H.Tanaka,T.Nakanishi,"DESIGN AND CONSTRUCTION OF A SPIRAL MAGNET FOR A HYBRID ACCELERATOR",Proceedings of the 1st Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and the 29th Linear Accelerator Meeting in Japan(August4-6,2004,Funabashi Japan),465p-467p
【特許文献2】特許公開番号2004-296164
【0014】
図1において11は電子ビームを発生する電子発生手段、12は紙面に垂直な方向に電子ビーム走行軌道を挟む形で、且つ紙面に垂直な方向の磁場を発生させる磁極を有するスパイラル形状のスパイラル磁極、13はリターンヨークで、スパイラル磁極12とリターンヨーク13と、記載は省略しているが磁極にまきまわしたコイルとで偏向電磁石(以下、スパイラル偏向電磁石と呼ぶ)が形成される。14は周回する電子ビームを加速するための交流磁界を発生する加速コア、15は周回電子ビームとの衝突によりX線を発生させるターゲット、16は入射時の本装置内での電子周回軌道、17は周回電子ビームがターゲット15に衝突しない領域Aと周回電子ビームがターゲット15に衝突する領域Bとの境界である境界電子周回軌道、18は電子ビームが安定周回可能な領域の最外周、19はターゲット15で発生するX線等の電磁波である(以下、X線として説明する。)。発生するX線のエネルギーは、衝突する電子ビームのエネルギーに依存して変化する。
【0015】
次に動作について説明する。
電子発生手段11で発生した電子ビームは、電磁波発生装置内に入射されると、スパイラル偏向電磁石による偏向を受けることにより、装置内を周回しながら加速コア14の磁界で誘起される電界により図の周方向に加速されることになる。本装置内の電子ビームはスパイラル磁極12の部分で略円弧軌道に沿って、スパイラル磁極12がない部分は直線に近い軌道に沿って走行し、両軌道を合わせて周回軌道を構成する。スパイラル偏向電磁石部を通過するときの電子ビームの偏向半径は、加速に伴う電子ビームのエネルギーの増加と、当該偏向電磁石の偏向磁界強度に応じて変化する。通常は、加速と共に、偏向半径は増大し、電子周回軌道は径方向に拡大して行く。電子発生手段11からの電子の入射は一定時間連続して行われるので、初期に入射した電子はより外側の軌道を、後に入射した電子は内側の軌道を、そして、その間に入射した電子は、両軌道間の軌道上を周回する。そのため、加速器内での電子は径方向に広がった周回軌道を周回することになる。この点でベータトロン加速装置を利用した電磁波発生装置と基本的に異なる。
【0016】
このように電子は径方向に広がった軌道を周回することになるので、同一軌道を周回する場合に比べると、周回する電子ビーム内での電子の密度が小さくなり、電子相互間に働くクーロン反発力も小さくなる。そのため、ベータトロン加速装置や蓄積リングに比べて、大電流ビームを入射し利用することが可能となる。
【0017】
周回する電子ビームは、衝突しない領域A内で、加速と共にその周回軌道を径方向に拡大しつつ、所定のエネルギーまで加速された後、後述する制御により、境界周回電子軌道17を超えて衝突する領域Bに達し、ターゲット15に衝突し、X線19を放出する。加速中の電子ビームは、ターゲット15の設置されていない、衝突しない領域Aを周回するので、電子ビームは、加速途中にターゲット15に衝突することにより無駄に失われることはない。なお、ターゲット15は、発生したX線がターゲット15内で自己吸収されることにより減少することのないよう、電子ビーム周回方向、即ちX線発生方向に対して薄いものとなっている。衝突領域Bも電子ビームの安定周回が可能な領域であるから、電子ビームとターゲット15が衝突したのちも、電子ビーム中の衝突していない大部分の電子は安定に周回しつづけることができ、電子ビーム周回軌道の制御方法に応じて、電子ビームとターゲット15の繰り返し衝突が可能となる。
【0018】
なお、図1では電子発生手段11は電磁波発生装置の内部に設置されているが、これを電磁波発生装置の下部に設置してもよく、全く同様の効果を奏する。これは、後述の図2に示す入射方式と同種のものとなるが、加速コア14との設置位置の干渉が生じるので、電子発生手段11は加速装置の例えば下部に設置することになる。
【0019】
ここで、本願の電磁波発生装置に使用する偏向電磁石は、磁極間隔を径方向に変える等、形状を工夫することにより径方向に傾斜する磁場を実現する共に、スパイラル磁極12の磁石境界のエッジ角と漏れ磁界を利用して電子ビームを収束する所謂エッジフォーカスを利用する構成にしていることから、衝突しない領域A,衝突領域Bの何れにおいても電子ビームの安定周回が可能となっている(非特許文献2)が、必ずしもスパイラル磁極形状に限定されるものではなく、径方向への傾斜磁場を実現し、エッジ形状も含め電子ビームに対する収束力を保持できる磁極形状であればよい。
【0020】
図2は、スパイラル形状でない偏向電磁石を用いたAG収束加速装置により構成した電磁波発生装置の1例である。
図2において、21は電子発生手段11からの電子ビームを電磁波発生装置内に導くためのセプタム電極、22は走行電子ビームの軌道を偏向して周回軌道を形成するための偏向電磁石、23は電子ビームを加速する加速コア、24は電子ビームがその中を周回する真空ダクト、25a,b,c,dはそれぞれ真空ダクト24内の電子ビームの代表的な周回軌道、26は加速コア23に電力を供給するための加速コア用電源、27は偏向電磁石用電源、15はX線発生源となるターゲットである。
【0021】
次に動作について説明する。
電子発生手段11で発生した電子ビームはセプタム電極21を介して入射され、偏向電磁石23の部分では略円弧軌道となり周回軌道を形成する。周回電子ビームは加速コア23に交流磁界をかけて電磁誘導によって発生した誘導電界により加速される。電子は真空ダクト24中を周回する。25a,b,c,dは電子ビームの代表的な周回軌道である。この場合も、図1の場合と同様に、電子ビームが安定して周回できる領域内に、電子ビームがターゲット15に衝突しない領域A(周回軌道25a、bが属している領域)と、ターゲット15に衝突する領域B(周回軌道25c、dが属している領域)とを設定することができる。
【0022】
入射された電子ビームは、衝突しない領域A内で、入射時間に対応して径方向に広がった軌道を周回し、加速される。所定のエネルギーにまで加速された電子が衝突領域Bに設置されているターゲット15と衝突し、X線を発生させるのは、図1に示す例と同様である。なお、この図では径方向のターゲットサイズを特に誇張して大きく描いているが、基本的には図1の例と同じである。
【0023】
なお、図2では電子発生手段11が加速装置の外部に設置されていて、セプタム電極21を介して電子が周回軌道に入射されているが、図1に示す例と同様に、加速装置の内部に配置しても全く同様の効果を奏し、しかも装置全体がコンパクトになる。
【0024】
図1、図2の何れに示す例においても、ターゲット15は、通常、直径が10μm程度のワイヤー状の金属、より好ましくはタングステン等の重金属であり、紙面に直交する方向に当該ワイヤの長さ方向を一致させるようにこの装置内に設置されている(図では径方向を拡大して示している。)。これにより径方向のX線発生源サイズが決められることになるとともに、発生X線のターゲット15内での自己吸収が小さく抑えられている。しかし、ワイヤターゲットの場合は、ワイヤ長さ方向のX線発生源のサイズは走行する電子ビームの同方向のサイズによって決められ、通常これは数mmの大きさとなる。これを小さくするためには、カーボン等の低原子番号物質(実効原子番号を含む)からなるワイヤの途中にこのワイヤよりも原子番号(実効原子番号を含む)の高い、例えば金属、より好ましくはタングステン等の重金属の微小球を取り付けたものをターゲット15にすることも考えられる。原子番号の高い材料の方が、X線発生効率が高く、X線強度を大きくすることができると共に、2方向における光源サイズを小さくできるからである。
【0025】
次に、上記のAG収束加速装置を利用した電磁波発生装置での電子ビームの制御について説明する。図1、図2の何れの場合も、電子ビームは、主に偏向電磁石の磁界(以下偏向磁界と略称する。)の時間変化と、加速コア磁界の時間変化との組み合わせによってその動きが制御される。
【0026】
図3は偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターン1を示すものである。31は偏向磁界の時間変化を示し、32は加速コア磁界の時間変化を示す。何れにおいても横軸は時間を示しており、33a,33bで示す位置はそれぞれ入射開始時間、34a,34bで示す位置はそれぞれ入射完了時間、35a,35bで示す位置はそれぞれ偏向磁界一定制御の開始時間、36a,36bで示す位置はそれぞれ偏向磁界一定制御の終了時間を示す。37a,37bで示す時間範囲はそれぞれ電子ビームの入射が開始され完了するまでの電子ビーム入射時間を、38a,38bで示す範囲は、それぞれ入射完了後、電子ビームが所定のエネルギーにまで加速される電子ビーム加速時間を、それぞれ示している。39a,39bで示す範囲は、それぞれ所定エネルギーまで加速した電子ビームをターゲットに衝突させるため更に加速し、電子ビーム周回軌道をターゲット15の設置してある軌道にまで拡大して、ターゲット15に衝突させ、その衝突を持続させる時間に対応したターゲット衝突時間を示す。
【0027】
偏向磁界の時間変化31と、加速コア磁界の時間変化32との関係はベータトロン加速条件を満たしていない。ベータトロン加速条件とは、加速中のビームの周回軌道が一定となる様な偏向磁界と加速コア磁界の関係である。従って、ベータトロン加速条件を満たしていないということは、加速中の電子ビームの周回軌道は一定軌道にならないということになる。
【0028】
以下では、まず33aから36aまでの時間範囲での電子ビームの振る舞いについて説明する。入射開始時間33aに電磁波発生装置内への電子の入射が開始され、入射完了時間34aに入射が終了する。この時、加速コア磁界の時間変化は入射開始時間33aから始まる電子ビーム入射時間37aの間、図3下段の加速コア磁界の時間変化32に示すように、増加していく。加速コア磁界により電子ビームの進行方向には誘導電界が発生しており、入射された電子ビームは、電子ビーム入射時間37aの間も加速される。電子ビーム入射時間37aの間は、偏向磁界は一定であり、電子ビームは周回軌道25a、25bに示す様に、加速コア磁界の増加に伴い徐々に外側に広がっていく。電子ビームは電子ビーム入射時間37aの間連続的に入射されるので、入射完了時間34aの時点では、径方向に広がった電子ビームが周回していることになる。入射完了時間34aにおいては、入射開始時間33aにおいて入射された電子ビームが最も外側付近の軌道(例えば周回軌道25b)を、最も高エネルギーで周回している。また、入射完了時間34aの直前に入射された電子ビームは、最も内側付近の軌道(例えば周回軌道25a)を、最も低エネルギーで周回している。即ち、入射完了時間34aの時点において、電子は、所定のエネルギー幅を有し、径方向に広がった軌道上を、周回している。
従来のベータトロン装置は、弱収束磁場であり、半径が異なる広い領域で一定の収束力を得ることが難しいが、AG収束加速器の場合、偏向電磁石の形状の工夫により、半径が異なる広い領域で概一定な収束力を実現できるので、周回軌道を自由に変化させることができる。
【0029】
入射完了時間34aの後は電子ビーム加速時間38aに対応する状態に移行する。
電子ビームは径方向にある幅を持って、例えば偏向電磁石部における円弧軌道の半径がr1からr2の範囲(r1<r2と仮定する。)で周回しているが、このr1より大きくr2よりも小さいある半径r0で、偏向磁界と加速コア磁界とはベータトロン加速条件に近い条件を保って変化している。従って、電子ビームのエネルギーが加速により変化すると上記r0以外を周回中の電子ビームはr0周辺に集まってくる。マクロにみると加速とともにビームサイズが徐々に小さくなりながら加速されることになる。偏向磁界の増加速度と、加速コア磁界の増加速度との兼ね合いにより上記半径r0が決まる。電子ビームは所定のエネルギー幅で、且つ径方向に広がった状態で加速される。入射当初の径方向への周回軌道の広がりは、上記の様に加速と共に減少するが、軌道の広がりは依然、残った状態で加速される。いずれにせよ電子ビーム加速時間38a内では、電子ビームの周回軌道を、衝突しない領域Aの範囲内に留まるように制御する。
【0030】
その後、電子の最大エネルギーが所定の値に達したときに、即ち時間35aにおいて、偏向磁界を一定にしてターゲット衝突時間39aに対応する状態に移行する。ここでは加速コア磁界は依然増加しているので、電子ビームの周回軌道は径方向に更に拡大し、電子ビームは衝突領域Bに導かれ、ターゲット15に衝突しX線が発生する。ここで電子ビームは径方向に広がって周回しているので、ターゲット衝突時間39aの間、最外周回軌道の電子から、内側の軌道を周回する電子まで順次ターゲット15に衝突していくが、電子ビーム周回軌道の径方向への拡大速度は大きいものではないので、周回電子ビームが軌道上のターゲット15を径方向に横断するために要する時間に比べると、電子ビームの1周回に要する時間は著しく短いものである。従って、電子ビームはターゲット15と衝突する軌道を多数回周回することとなる。そして、ターゲットの設置されている衝突領域Bは安定周回領域なので、電子ビームは、ターゲット衝突時間39aの間、安定に周回を続ける。その結果、周回電子ビームを効率よくX線に変換することが可能となる。
【0031】
このように、安定に周回してターゲットに繰り返し衝突するという点が、従来のベータトロン加速装置を利用した電磁波発生装置と大きく異なるところである。蓄積リングと比べても、同じく周回軌道の広がりという点で大きく異なる。いずれにしても、この特徴により大電流ビームの加速に適した装置となるので、小型の装置で大強度のX線を発生させることができるという効果を奏することができる。
【0032】
以上の説明では、図3のターゲット衝突時間39aにおける偏向磁界の時間変化31は一定であるとして説明したが、偏向磁界と加速コア磁界との関係は、ベータトロン加速条件からずらせば良いので、一定に限定されるものではなく、時間と共に徐々に増加する偏向磁界にしても良い。この場合の電子ビームの振る舞いとターゲット15との衝突は、この間の偏向磁界の時間変化が一定の場合と、基本的には同じであるが、周回軌道の径方向への拡大の速度は緩やかになる。その結果、このような制御をすれば、周回する電子ビームとターゲット15との衝突時間を延長できることになるため、周回電子ビームのX線への変換効率は更に向上する。
【0033】
ターゲット衝突時間39aの経過後はターゲット15との衝突により電子ビームは通常ほぼ消失している。そのため、その後、偏向磁界と加速コア磁界を初期状態に戻す過程は特に制約事項があるわけではない。図3では時間36a以降、加速時と同じ程度の速度で両磁界を減少させているが、これにこだわるものではない。偏向磁界と加速コア磁界を入射時の状態に戻した後、再度、電子ビームの入射過程以降を繰り返し、その都度新たな電子を入射、加速してターゲットに衝突させることにより、継続してX線を発生させることができる。
【0034】
この繰り返し過程で、偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンを毎回同一にすることもできるが、入射の都度変化させることもできる。その例を図3の時間33bから36bまでに示す。図3の2回目の入射では、偏向磁界を一定にするタイミングを1回目の入射の場合よりも早めた例を示している。図3の電子ビーム加速時間38bは38aよりも小さい値に設定されている。偏向磁界、加速コア磁界の時間変化の傾斜が1回目と2回目とで同じであるとしたならば、電子ビーム加速時間38bを小さく設定したことにより、2回目のケースでは、小さい偏向磁界値で一定値に保持されている。従って、時間35bにおいては、電子ビームは時間35aにおける電子ビームエネルギーに比べて、低エネルギーの状態にある。
【0035】
この状態で、増加する加速コア磁界により電子ビームは更に加速され、偏向磁界が一定値に保持されているため、周回軌道の径方向への拡大速度は1回目に比べてより早いものになる。そうすると、電子ビームはより早く衝突領域Bに達し、ターゲット15と衝突することになるので、ターゲット15と衝突する電子ビームのエネルギーは1回目のターゲット15と衝突する電子ビームのエネルギーよりも低い値となる。このようにしてターゲット15に衝突する電子ビームのエネルギーを容易に変えることができる。なお、時間35aまたは、35bに至ったときすぐに電子ビームがターゲット15に衝突するのではなく、時間35a、または35bに至った時点で、電子ビーム周回軌道とターゲット15との径方向の距離がどの程度あるのかによって衝突開始の時間が変化する。即ち、厳密には時間35a、または35bから所定時間経過後にX線が発生することになる。
【0036】
図4は衝突する電子ビームのエネルギーが高いときと低いときとでターゲット15で発生するX線のエネルギースペクトルが変化する様子を概念的に示したものである。この図から高エネルギーの電子ビームをターゲット15に衝突させた場合のほうが、より高いエネルギーのX線を発生させることができることがわかる。このように、ターゲット15に衝突する電子のエネルギーを制御することにより、発生するX線のエネルギーを制御することができる。
【0037】
なお、上記の例では加速コア磁界による誘導電界により電子ビームを加速するとしたが、これを高周波電界による加速手段に変えても同様の効果を奏することができる。このことは後述する全ての実施の形態についても同様に成立する。
【0038】
また、上記の例では入射中は偏向磁場が一定で、時間34a,34bに至って突然に偏向磁場が一定勾配で増加し始めるとしたが、入射可能な条件であれば偏向磁場を必ずしも一定にする必要はなく、また時間34a,34bの時点での偏向磁場の変化を入射時の磁界からスムージング期間を設け徐々に増加させても良い。このようにしても、上述の電子ビームの基本的な振る舞いは変わらない。
【0039】
更に、上記の例では磁極がある部分の軌道は円弧、磁極がない部分の軌道は略直線であったが、磁極がない部分でも偏向磁界の強度が大きい場合には円弧となることがある。ただし磁極がある部分の円弧よりも半径が大きな円弧となる。それでも、上述したターゲット15に対する電子ビームの基本的な振る舞いについては変わらない。
【0040】
以上のとおり、この実施の形態によれば、この装置では大電流を加速でき、X線発生中も安定な条件下で電子ビームを周回させることができ、ターゲット15に衝突させる電子ビームのエネルギーも容易に変えられるので大強度のX線源を容易に実現することができると共に、発生するX線のエネルギーも容易に変えることができる。なお、このようにX線発生強度を改善できることから、各種のX線利用に際して、照射時間の短縮化や、計測等の高速化が図れる。また、ターゲットを微小化しても実質的に利用可能な強度のX線を発生させることができ、X線発生源サイズの微小化も実現することができる。これにより、この微小なX線発生源を、例えばX線撮像画像を得る目的に使用した場合、従来のX線発生源に比べてより解像度の高い撮像画像が得られる。具体的には装置規模にもよるが、10μm程度の光源サイズで利用可能なX線強度を有する装置を実現することが可能である。
【0041】
また、収束機能を有する偏向電磁石を採用したことにより、加速装置の大幅な小型化が可能となるため、従来型加速器を利用した電磁波発生装置に比べて大幅な小型化が可能となる。その結果、各種利用に際して便利な、使い勝手の良い光源を実現することができる。また、この小型化により、併せて低コスト化も可能となる。これは小型化と共に、偏向電磁石に収束機能を持たせたことによる構造の簡略化が大きく寄与している。
【0042】
実施の形態2
本実施の形態は入射時の電子ビーム周回軌道の径方向への広がりの程度を実施の形態1の場合に比べて大きくするというものである。その場合の偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンの例を図5に示す。図において、番号が同じものは図3の説明と同じである。図5の1回目の電子入射の例は、偏向磁界の時間変化31を全過程で一定にした例である。この場合、加速に伴う電子ビームの周回軌道の径方向への拡大は図3の場合よりも大きくなる。図5の2回目の電子入射の例は、電子ビームの入射時に偏向磁界を減少させる例である。この場合は、加速に伴う電子ビームの周回軌道の径方向への拡大は、偏向磁界を一定にした場合よりも更に大きくなる。何れの場合も、所定のエネルギーまで電子ビームを加速するために必要な装置サイズが大きくなるという欠点はあるが、逆に周回軌道上の電子ビーム密度は低減することになるため、電子の入射時間を長くして大電流を入射することができる。従って、より大きな電流ビームの加速が可能となり、実施の形態1の場合よりも更にX線強度を大きくすることが可能となる。また、上述の点以外については実施の形態1で述べた効果と同様の効果を有する。
【0043】
実施の形態3
実施の形態3は、電子の再度の入射を経ることなく高速に電子ビームのエネルギーを可変にすることにより、発生するX線のエネルギーを高速に切り替えるというものである。図6にその場合の偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンの例を示す。図において31から39aまでの説明は、図3の場合と同じである。ここで、36aは偏向磁界一定制御終了時間を示すと共に、電子ビーム加速時間38aに相当する電子ビーム再加速時間43aの開始の時間でもある。41aは電子ビーム再加速時間43aの終了の時間であるとともに、ターゲット衝突時間39aに相当するターゲット再衝突時間44aの開始の時間でもある。そして、42aはターゲット再衝突時間44aの終了時間である。
【0044】
次に動作について説明する。
時間33aから36aまでの過程は図3の場合と同じである。異なるのは、ターゲット衝突時間39aの時間の途中で再度、電子ビーム加速時間38aに相当する電子ビーム再加速時間43aを設けて電子ビームをターゲット15との衝突位置から一旦外すと共に、再加速した後に、再度ターゲット15の位置に戻す点である。
【0045】
即ち、ターゲット衝突時間39a内で、周回電子ビームが未だ完全に消失していない状態において、偏向磁界を増加させる。このときの増加の程度を電子ビーム加速時間38a内での偏向磁界の増加速度よりも大きくすることにより、電子ビームの周回軌道半径を縮小させる。これにより、周回電子ビームは衝突しない領域Aに後退する。この間加速コア磁界は増加しつづけるので電子ビームは加速されつづけ、そのエネルギーは増加するが、周回軌道はこの衝突しない領域A内に維持される。そして、所定のエネルギーになった時点41aで再度偏向磁界を一定にする。そうすると、加速コアの磁界増加により、電子ビームのエネルギーは更に増加し、周回軌道は径方向に拡大し、電子ビームはターゲット衝突時間39aにおける電子ビームよりも高いエネルギーで衝突領域Bに設置されているターゲット15に衝突する。
【0046】
このようにして、ターゲット衝突時間39a内とターゲット再衝突時間44a内とで発生するX線エネルギーを容易にしかも高速に切り変えることができる。この例ではターゲット再衝突時間44a内で発生するX線エネルギーの方がターゲット衝突時間39a内で発生するX線エネルギーよりも高い。
【0047】
なお、ターゲット衝突時間39aとターゲット再衝突時間44aにおける偏向磁界の時間変化は必ずしも一定に制御する必要はなく、時間と共に増加させても良い。その効果、及びその他の効果も実施の形態1で述べた効果と同じである。
【0048】
実施の形態4
実施の形態1から3ではいずれも電子ビームを電磁波発生装置の内側から入射するものとして説明したが、これに限定する必要はなく、電磁波発生装置の外周近傍に電子発生手段11を設置し、電子発生手段11からの電子ビームを電磁波発生装置の外周近傍から入射することもできる。このような入射を実現するためには、入射時及び加速に伴い電子ビームの周回軌道を径方向に縮小させなければならない。このことを、図3を使って説明する。
【0049】
まず電子ビーム入射時間37a内での偏向磁場は一定ではなく時間と共に増加するものにしなければならない。加速コア磁界の増加による電子ビームエネルギーの増加により偏向磁場が一定の場合は周回軌道が径方向に拡大していくところを、偏向磁場を加速と共に増加させることにより、逆に周回軌道を径方向に縮小させる。
【0050】
また、電子ビーム加速時間38aに相当する時間内での偏向磁界の時間変化も、図3に示す時間変化よりも更に急激に増加させることにより、入射完了後の加速過程においても加速と共に電子ビームの周回軌道を径方向に縮小していくことができる。そして、X線発生源となるターゲット15は、この場合、内側の周回軌道上に設置することになる。時間35aで所定のエネルギーにまで加速され、内側の所定周回軌道近傍を周回する電子を、更にその内側に設置されたターゲット15に衝突させなければならない。そのためには、ターゲット衝突時間39a内で、電子ビームを加速しつつまたは一定エネルギーに保ちつつ、偏向磁界を増加させて電子ビームの周回軌道を更に内側に縮小させていくことが必要であり、実現容易である。この状態をターゲット衝突時間39a内で継続することにより軌道上に広がって周回している電子ビームが順次ターゲット15に衝突してX線が発生することになる。
【0051】
なお、上記の例ではターゲット15を内側の周回軌道上に配置したが、外側でも良い。その場合は入射直後の電子ビームがターゲット15に衝突するので、ターゲット部分は短い時間で通過する様な入射条件を作成する必要があるが、偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンの制御により実現容易である。この場合、ターゲット15に衝突する領域Bは衝突しない領域Aよりも外側に位置し、入射に際してこの領域Bをすばやく通過した電子ビームは、領域Aで加速され、偏向磁界を弱めることにより再度領域Bを周回することになる。この時ターゲット15と衝突することにより発生するX線を利用することができる。
【0052】
入射の都度、ターゲットに衝突させる電子エネルギーを変えるには偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンを変えればよい。また、1回の入射の際にターゲット15に衝突させる電子ビームエネルギーを可変にすることも実施の形態3の場合と同様に偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンを変えればよい。このようなX線発生源としての特性は、この電磁波発生装置が径方向に幅広く安定周回軌道を有することに起因するものであり、従来のベータトロン加速器等を利用した電磁波発生装置では到底実現できない。
【0053】
このように装置外周近傍から電子ビームを入射する方式を採用することにより、電子発生手段11の配置自由度が向上し、全体としてコンパクトな装置の実現が可能となる。その他の効果は、実施の形態1、3で述べたものと同じである。
【0054】
実施の形態5
本実施の形態は電子ビームのエネルギーを保ったまま、電子ビームを、衝突しない領域Aと衝突領域Bとの間で行き来させるというものである。図6により説明する。図6では、ターゲット衝突時間39aとターゲット再衝突時間44aとでは電子ビームのエネルギーが異なっていたが、電子ビーム加速時間43aでの加速コア磁界を制御することにより電子ビームのエネルギーを一定値に保ったまま偏向磁界の増減により周回軌道を変えることができる。
【0055】
なお、これまで衝突しない領域Aと衝突領域Bとはそれぞれ1領域のみを考え、電子ビームは領域Aと領域Bの周回軌道間を行き来するとして説明した。しかし、ターゲット15の設置位置を周回する軌道を衝突領域Bとし、ターゲットとの衝突領域Bに対して、径方向において、これまで説明してきた衝突しない領域Aとは反対側にもターゲット15と衝突しない領域A1を設定し、偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターンを制御することにより、領域A、B、A1間で電子ビームの周回軌道を移動させて、X線発生のON/OFFを制御することができる。また、その際、これまで説明してきたとおり、電子ビームのエネルギーを可変にできるので、上記ON/OFFに合わせて発生するX線のエネルギーを高速に切り替えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の電磁波発生装置の構成例1
【図2】本発明の電磁波発生装置の構成例2
【図3】偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターン1
【図4】電子ビームエネルギーとX線のエネルギースペクトル
【図5】偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターン2
【図6】偏向磁界と加速コア磁界の時間変化パターン3
【符号の説明】
【0057】
11:電子発生手段、12:スパイラル磁極、13:リターンヨーク、14:加速コア、15:ターゲット、16:入射時の周回軌道、17:境界電子周回軌道、18:ビームが安定周回可能な領域の最外周、19:X線(電磁波)、21:セプタム電極、22:偏向電磁石、23:加速コア、24:真空ダクト、25a,b,c,d:電子ビームの代表的周回軌道、26:加速コア用電源、27:偏向電磁石用電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を発生させる電子発生手段と、前記電子発生手段からの電子を入射する入射手段と、前記入射された電子を加速する加速手段と、前記入射または加速電子を偏向させるための偏向磁界を発生させる偏向電磁石と、前記加速された電子を衝突させ電磁波を発生させるターゲットとを有する円形加速器からなる電磁波発生装置において、前記偏向電磁石は、その形状により、入射または加速電子に対して収束機能を有し、前記加速器は、前記収束機能を有する偏向電磁石により、電子の入射、加速の全過程で当該加速器の径方向の所定範囲で安定な電子周回軌道を有するものであり、前記ターゲットは、前記安定な電子周回軌道上に設置され、このターゲットの設置位置に対応して、前記安定な電子周回軌道の範囲内で、周回する電子ビームが前記ターゲットに衝突する領域と、この領域に隣接する、前記ターゲットに衝突しない少なくとも1の領域が設定され、偏向電磁石の偏向磁界及び電子ビーム加速の両時間変化パターンの制御により、これらの領域間を電子周回軌道が移動して、前記ターゲットと周回電子ビームとが衝突することで電磁波を発生させることを特徴とする電磁波発生装置。
【請求項2】
1回の入射において、ターゲットに衝突しない領域からターゲットに衝突する領域への電子ビームの移動を2回以上とすることを特徴とした請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項3】
1回の入射毎に、入射完了時を起点とした、電子周回軌道を、ターゲットに衝突しない領域から、ターゲットに衝突する領域へ移動させるタイミングを可変に制御することを特徴とした請求項1または2に記載の電磁波発生装置。
【請求項4】
電子ビームの入射、加速中、偏向磁界を一定に制御することを特徴とした請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項5】
電子ビームの入射時間中、偏向磁界を時間と共に減少させる制御をすることを特徴とした請求項1に記載の電磁波発生装置。
【請求項6】
電子が電磁波発生装置の外周から入射され、加速に伴い、当該電子の周回軌道が径方向に縮小されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項7】
ターゲットが、ワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電磁波発生装置。
【請求項8】
ターゲットは、ワイヤーに取り付けられた、ワイヤーを構成する材料の実効原子番号よりも大きな実効原子番号を有する材料であることを特徴とする請求項7に記載の電磁波発生装置。
【請求項9】
ターゲットは、重金属材料であることを特徴とする請求項8に記載の電磁波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−309968(P2006−309968A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128120(P2005−128120)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】