説明

電磁継電器及び電磁継電器の製造方法

【課題】信頼性及び安全性の高い電磁継電器を提供する。
【解決手段】固定接点バネに設けられた固定接点と、可動接点バネに設けられた可動接点と、前記可動バネに接極子を介し力を加え、前記固定接点に前記可動接点を接触させるための電磁石と、前記固定接点と前記可動接点との間に磁界を発生させる磁石と、前記固定バネに接続され、前記固定バネとの接続部分から前記固定バネよりも離れた位置に設けられた固定側アークランナと、前記可動バネに接続され、前記可動バネとの接続部分から前記可動バネよりも離れた位置に設けられた可動側アークランナと、前記固定側アークランナの設けられている側より、前記固定接点の側に突起している固定側突起部と、前記可動側アークランナの設けられている側より、前記可動接点の側に突起している可動側突起部と、を有していることを特徴とする電磁継電器を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器及び電磁継電器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石を用いて電力のオンオフ等の制御を行なうための電子部品としてリレー等の電磁継電器がある。このようなリレー等の電磁継電器を高電圧や直流等の電力用として用いた場合、接点間にアークが発生し、このアークによりリレーの寿命が低下する場合がある。
【0003】
このため、接点近傍に永久磁石を設け、接点同士の接触が離れる際に生じるアークに、永久磁石による磁界により生じた力を加えることによりアークを飛ばし、短時間で遮断する方法が開示されている。
【0004】
また、接点近傍にアークランナを設けることにより、接点におけるアークによるダメージを抑えることのできる開閉器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−176370号公報
【特許文献2】特開2009−87918号公報
【特許文献3】特許第2658170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1から3に示す方法により、アークを早く遮断することができたとしても、接点間におけるアークの発生は防ぐことはできず、短時間であってもアークが発生する。このため、このアークにより接点及び接点近傍がダメージを受け、電磁継電器の寿命が短くなり、電磁継電器の安全性及び信頼性を低下させる場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、接点よりアークを迅速に除去することができ、または、アークが発生しても、電磁継電器の寿命等に影響を与えることのない、信頼性又は安全性の高い電磁継電器及び電磁継電器の製造方法を提供することを目的とするものであり、特に、現状の商用電源の電圧よりも高い電圧、または、直流電源等に対応した電磁継電器において、信頼性又は安全性の高い電磁継電器及び電磁継電器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固定接点バネに設けられた固定接点と、可動接点バネに設けられた可動接点と、前記可動バネに接極子を介し力を加え、前記固定接点に前記可動接点を接触させるための電磁石と、前記固定接点と前記可動接点との間に磁界を発生させる磁石と、前記固定バネに接続され、前記固定バネとの接続部分から前記固定バネよりも離れた位置に設けられた固定側アークランナと、前記可動バネに接続され、前記可動バネとの接続部分から前記可動バネよりも離れた位置に設けられた可動側アークランナと、前記固定側アークランナの設けられている側より、前記固定接点の側に突起している固定側突起部と、前記可動側アークランナの設けられている側より、前記可動接点の側に突起している可動側突起部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、固定接点と固定バネとの接続部分、可動接点と可動バネとの接続部分、固定側突起部、可動側突起部のうちから選ばれる1または2以上の部分は、厚く形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、固定接点バネに設けられた固定接点と、可動接点バネに設けられた可動接点と、前記可動バネに接極子を介し力を加え、前記固定接点に前記可動接点を接触させるための電磁石と、前記固定接点と前記可動接点との間に磁界を発生させる磁石と、前記固定バネに接続され、前記固定バネとの接続部分から前記固定バネよりも離れた位置に設けられた固定側アークランナと、前記可動バネに接続され、前記可動バネとの接続部分から前記可動バネよりも離れた位置に設けられた可動側アークランナと、を有し、前記固定接点バネと前記固定側アークランナとは同一の金属板を加工することにより形成されたものであり、前記可動接点バネと前記可動側アークランナとは他の同一の金属板を加工することにより形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記固定バネとの接続部分と前記固定側アークランナとの間には、前記固定接点バネの周囲に設けられた枠部が設けられており、前記可動バネとの接続部分と前記可動側アークランナとの間には、前記可動接点バネの周囲に設けられた枠部を介し接続されており、前記固定側アークランナ及び前記可動側アークランナは、所定の位置に固定されているものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ベースに電磁石部を設置し、前記電磁石部の設置されていない領域に、固定接点、固定接点バネ及び固定側アークランナを有する固定接点部、可動接点、可動接点バネ、可動側アークランナを有する可動接点部を設置する工程と、前記固定接点と前記可動接点とを挟むようにヨークを設置する工程と、前記固定側アークランナの端部と前記可動側アークランナの端部の間に消弧グリッドを設置する工程と、前記ヨークを介し、前記固定接点と前記可動接点との間に磁束を発生させるための磁石を設置する工程と、を有し、前記固定接点部、前記可動接点部、前記ヨーク、前記消弧グリッド及び前記磁石は、同一方向より設置されるものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記固定接点バネの伸びる方向は前記同一方向と略同じ方向であり、前記可動接点バネの伸びる方向は前記同一方向と略同じ方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、信頼性又は安全性の高い電磁継電器及び電磁継電器の製造方法を提供することができる。特に、現状の商用電源の電圧よりも高い電圧、または、直流電源等に対応した電磁継電器であって、信頼性又は安全性の高い電磁継電器及び電磁継電器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における電磁継電器の構造図
【図2】本実施の形態における電磁継電器の斜視図
【図3】本実施の形態における電磁継電器の説明図(1)
【図4】本実施の形態における電磁継電器の説明図(2)
【図5】本実施の形態における電磁継電器の説明図(3)
【図6】本実施の形態における電磁継電器の固定接点部の斜視図
【図7】本実施の形態における電磁継電器の可動接点部の斜視図
【図8】本実施の形態における電磁継電器の固定接点部及び可動接点部の説明図
【図9】本実施の形態における電磁継電器の他の固定接点部の斜視図
【図10】本実施の形態における電磁継電器の他の可動接点部の斜視図
【図11】本実施の形態における電磁継電器の製造方法の説明図
【図12】本実施の形態における電磁継電器の製造方法のフローチャート
【図13】本実施の形態における電磁継電器の開口部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0017】
(電磁継電器)
本実施の形態における電磁継電器について説明する。本実施の電磁継電器は、固定接点11、固定接点バネ12及び固定側アークランナ13等が設けられた固定接点部10と、可動接点21、可動接点バネ22及び可動側アークランナ23等が設けられた可動接点部20とを有している。また、可動接点部20が設けられている側には、電磁石部30が設けられており、電磁石部30の端部には接極子40が設けられている。接極子40は、中央部分において「へ」の字状に折曲げられており、中央部分を軸に接極子40が可動するように接続されている。尚、接極子40は折曲げられた中心部分を境に、電磁石部30と接触する一方の側40aと、後述するカード41を動作させる他方の側40bとなる。
【0018】
また、本実施の形態では、電磁石部30は、ツインコイルにより形成されている。シングルコイルはツインコイルと比較して2.5倍の直径を要するため、ツインコイルとすることにより、電磁継電器をより一層小型化にすることができる。
【0019】
また、本実施の形態における電磁継電器には、アークを除去するための永久磁石50と磁性材料により形成されたヨーク60が設けられている。
【0020】
本実施の形態における電磁継電器では、電磁石部30に電流が流れることにより、電磁石部30において磁界が発生し、鉄等の磁性材料を含む材料により形成された接極子40の一方の側40aが電磁石部30に接触する。これにより、接極子40は中央部分を軸に可動し、接極子40の他方の側40bに設けられたカード41を介し可動接点バネ22が固定接点部10側に押され、可動接点21と固定接点11とが接触する。このようにして、固定接点11と可動接点21とは電気的に接続され、オン状態となる。
【0021】
また、電磁石部30に流れる電流を遮断することにより、電磁石部30において発生していた磁界が消滅し、接極子40の一方の側40aを引きつけていた力がなくなる。これにより、可動接点バネ22の復元力等により、固定接点11と可動接点21とが離れ、固定接点11と可動接点21とにおける電気的な接続が解除され、オフ状態となる。
【0022】
この際、固定接点11と可動接点21との間にはアークが発生するが、本実施の形態における電磁継電器は、永久磁石50による磁界を固定接点11及び可動接点21が設けられている領域に、ヨーク60を介して印加することにより、アークを除去することができ、このアークを固定側アークランナ13及び可動側アークランナ23に転移させることができる。このように、固定接点11と可動接点21において発生したアークを固定側アークランナ13及び可動側アークランナ23に転移させることにより、固定接点11及び可動接点21から、早期にアークを取り除くことができ、固定接点11又は可動接点21が、アークにより受けるダメージを抑えることができる。
【0023】
また、固定側アークランナ13は、固定接点部10における固定接点バネ12の伸びる方向に沿って形成されており、可動側アークランナ23は、可動接点21の近傍においては可動接点バネ22の伸びる方向に沿って形成されているが、可動接点21から離れたところでは、固定側アークランナ13との距離が徐々に離れるように形成されている。このように、固定側アークランナ13と可動側アークランナ23との距離が徐々に離れるように形成することにより、固定側アークランナ13及び可動側アークランナ23において、徐々にアークの間隔を広げながら円滑にアークを走らせることができる。
【0024】
また、固定側アークランナ13の端部と可動側アークランナ23の端部との間には消弧グリッド70が設けられており、固定側アークランナ13の端部及び可動側アークランナ23の端部までアークが走行させた後、この消弧グリッド70により、アークを消弧させることができる。従って、効率よくアークを円滑に消弧グリッド70により消弧させるため、消弧グリッド70は、固定側アークランナ13の端部と可動側アークランナ23の端部との間に設けられていることが好ましい。
【0025】
本実施の形態における電磁継電器は、ベース80の一方の面の側に固定接点部10、可動接点部20、電磁石部30が設置されており、ベース80の他方の面の側には、固定接点部10、可動接点部20、電磁石部30に接続される端子81、82、83等が設けられている。筐体の一部となるケース90及びカバー92は、ベース80の一方の面の側に配置されている固定接点部10、可動接点部20、電磁石部30、接極子40、永久磁石50、ヨーク60及び消弧グリッド70等を覆うように形成されており、ベース80と接合されている。本実施の形態における電磁継電器においては、ケース90及びカバー92により排気口95が形成されているが、排気口95の詳細については後述する。
【0026】
(磁束及び電流)
次に、図3〜図5に基づき、本実施の形態における電磁継電器における磁束の向き及び電流の流れる向きについて説明する。尚、図3〜図5において、電流の流れる向きを矢印Aで示し、磁束の向きを矢印Bで示し、アークにかかる力(磁界により電子に加わる力)の向きを矢印Cで示す。また、図3は、図1と同じ面から見た要部を示す図であり、図4は、図1において矢印D1に示す方向から見た要部を示す図であり、図5は、図1において矢印D2に示す方向から見た要部を示す図である。
【0027】
最初に、永久磁石50について説明する。永久磁石50は、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、フェライト磁石等を用いることが可能であるが、磁力と耐久性等の観点からサマリウムコバルト磁石が好ましい。
【0028】
永久磁石50の両側には、固定接点11及び可動接点21を両側から挟むように2つのヨーク60が設けられている。ヨーク60は、鉄、コバルト、ニッケル等を含む材料により板状に形成されており、永久磁石50において発生する磁界を固定接点バネ12の伸びる方向及び可動接点バネ22の伸びる方向に対し、略垂直に印加することができるように配置されている。具体的には、ヨーク60は平板状に形成され、2つのヨーク60の面が相互に略平行となるように設置されており、2つのヨーク60のうち、一方が永久磁石50のS極に、他方がN極に磁力により接触している。
【0029】
永久磁石50により生じた磁束は、2つのヨーク60内をとおり、2つのヨーク60の間の空間に磁界を発生させる。この2つのヨーク60の間の空間には、固定接点11と可動接点21が存在しており、磁束の向きが、固定接点バネ12の伸びる方向及び可動接点バネ22の伸びる方向に対し略垂直であって、かつ、固定接点11と可動接点21との接触が離れる方向に対し略垂直となるように印加されている。尚、本実施の形態では、2つのヨーク60に挟まれた空間は、2つのヨーク60により永久磁石50により発生した磁界が所定の方向に強く印加されている。よって、この空間には、固定接点11、可動接点21、固定側アークランナ13、可動側アークランナ23、消弧グリッド70が存在している。
【0030】
以上より、本実施の形態では、永久磁石50により発生したヨーク60を介した磁束の向きと、固定接点11と可動接点21との接触が離れる方向と、固定側アークランナ13の伸びる方向は、各々相互に略直交している。
【0031】
また、本実施の形態における電磁継電器では、電流は、固定接点11から可動接点21に流れるように接続されている。即ち、固定接点11と可動接点21とが接触した際には、固定接点部10に接続された端子81から、固定接点11及び可動接点21を介し、可動接点部20に接続された端子82に電流が流れるように接続されている。
【0032】
このように、固定接点11から可動接点21に電流が流れるため、電子は可動接点21から固定接点11に向かって流れる。通常、可動接点バネ22は可動接点21を可動させる必要があることから、撓みやすく固定接点バネ12よりも薄く形成されており、このため可動接点バネ22の熱容量は小さい。従って、固定接点11と可動接点21との間でアークが発生した際、電子が衝突する側の接点は、電子の衝突により高温となることから、本実施の形態では、電流は固定接点11から可動接点21に流れるように接続されている。
【0033】
より詳細に説明すると、通常、固定接点バネ12は厚く形成されており、熱的容量が大きいため、可動接点21から固定接点11に向かって電子が衝突した場合、固定接点バネ12等が電子の衝突により受ける熱的な影響は小さいが、可動接点バネ22は薄く形成されているため、熱的容量が小さく、固定接点11から可動接点21に向かって電子が衝突した場合、電子の衝突による熱的な影響により可動接点バネ22が熱により溶け変形等したりする可能性が高い。従って、本実施の形態では、電流は固定接点11から可動接点21に流れるように、即ち、電子が可動接点21から固定接点11に流れるように接続されている。
【0034】
(電磁石部と永久磁石との関係)
本実施の形態における電磁継電器では、電磁石部30と永久磁石50とを有しており、どちらも磁界を発生させるものである。しかしながら、電磁石部30は固定接点11と可動接点21とを接触させたり、離したりする機能を有し、永久磁石は固定接点11と可動接点21との間で発生したアークを除去する機能を有しており、各々機能が異なる。
【0035】
このため、電磁石部30と永久磁石50の位置が近いと、一方において発生する磁界が他方における磁界に影響を与える場合があり、特に、電磁継電器を小型化にした際に、誤動作等の悪影響を及ぼす場合がある。このため、本実施の形態における電磁継電器では、図3に示すように、固定接点11と可動接点21とを挟むように、電磁石部30は左下部分に配置され、永久磁石50は右上に配置されている。即ち、電磁石部30と永久磁石50との間に固定接点11及び可動接点21が位置するように配置されている。このようにして、電磁石部30と永久磁石50とが設置される位置を離すことにより、一方において発生する磁界が他方における磁界に与える影響、即ち、各々の漏れ磁界による影響を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施の形態では、小型化の観点から、可動接点21を可動させるための電磁石部30が可動接点21に近い可動接点21の側に配置されており、固定接点11の側には、永久磁石50が配置されている。尚、固定接点11と可動接点21との間に強い磁界を印加するためには、固定接点11と可動接点21の近くに永久磁石50を配置することが好ましく、このことは、ヨーク60が設けられている場合においても同様である。
【0037】
(固定側アークランナ及び可動側アークランナ)
次に、本実施の形態における電磁継電器における固定側アークランナ及び可動側アークランナについて説明する。
【0038】
図6に示すように、本実施の形態における固定接点部10は、一枚の金属板を打抜き、折曲げ等の加工を施すことにより形成されている。固定接点バネ12は、一方の端部近傍に固定接点11が設けられており、他方の端部において固定側支持部14と接続されている。また、固定接点バネ12の周囲を囲むように固定側支持部14に接続された枠部15が設けられており、固定接点バネ12と枠部15とは略平行となるように形成されている。
【0039】
具体的には、金属板を打ち抜くことにより固定接点バネ12の3辺が形成され、固定接点バネ12の周囲には枠部15が形成される。固定接点バネ12と枠部15とは、打ち抜かれていない固定接点バネ12の残りの1辺に相当する部分において固定側支持部14を介し接続されている。これにより、固定接点バネ12は固定接点11と可動接点21との接触等に対応して変位するため、バネとして機能させることができる。尚、枠部15は、固定接点11と可動接点21との接触等に対応し変位することなく、所定の形状を保ったままであり、後述する固定側突起部16は所定の位置に保たれている。
【0040】
また、固定側支持部14とは反対側となる枠部15の端部には、固定接点バネ12の伸びる方向に形成された固定側アークランナ13が設けられている。また、固定側アークランナ13の伸びる方向とは反対方向となる固定接点11の設けられている側には、枠部15より固定接点11の側に伸びる固定側突起部16が設けられている。尚、固定側突起部16が、固定接点11と近接するように、固定側支持部14と枠部15との接続部分の近傍において折曲げられている。
【0041】
また、図7に示すように、本実施の形態における可動接点部20は、一枚の金属板を打抜き、折曲げ等の加工を施すことにより形成されている。可動接点バネ22は、一方の端部近傍に可動接点21が設けられており、他方の端部において可動側支持部24に接続されている。また、可動接点バネ22の周囲を囲むように可動側支持部24に接続された枠部25が設けられており、可動接点バネ22と枠部25とは略平行となるように形成されている。
【0042】
具体的には、金属板を打ち抜くことにより可動接点バネ22の3辺が形成され、可動接点バネ22の周囲には枠部25が形成される。可動接点バネ22と枠部25とは、打ち抜かれていない可動接点バネ22の残りの1辺に相当する部分において可動側支持部24を介し接続されている。これにより、可動接点バネ22は固定接点11と可動接点21との接触等に対応して変位するため、バネとして機能させることができる。尚、枠部25は、固定接点11と可動接点21との接触等に対応し変位することはなく、所定の形状を保ったままであり、後述する可動側突起部26は所定の位置に保たれている。
【0043】
また、可動側支持部24とは反対側となる枠部25の端部には、可動側アークランナ23が設けられている。可動側アークランナ23は、枠部25の伸びる方向に沿って形成された接続部23a、屈曲部23bにより曲げられた直線部23c、直線部23cの端を屈曲部23dにおいて曲げることにより形成された外側部23eにより形成されている。尚、直線部23cの伸びる方向は枠部25の伸びる方向に対し直角よりも小さな角度となるように屈曲部23bにおいて曲げられており、外側部23eの伸びる方向は枠部25の伸びる方向と略平行となるように屈曲部23dにおいて曲げられている。
【0044】
また、屈曲部23b及び23dには所定の丸みがつけられており、生じたアークを屈曲部23b及び23dにおいても円滑に走らせることができる。また、可動側アークランナ23とは反対方向となる可動接点21が設けられている側には、枠部24より可動接点21の側に伸びる可動側突起部26が設けられている。
【0045】
本実施の形態では、可動側アークランナ23における直線部23cと枠部25とのなす角は、直角よりも小さな角度となるように曲げられており、徐々に固定側アークランナ13との間隔が離れるように形成されている。これにより直線部23cにおいて円滑にアークを走らせることができる。尚、直線部23cと枠部25とがなす角とは、枠部25に対し曲げられる直線部23cの角度を意味するものであり、曲げられていない状態が、0°である。また、可動側突起部26が、可動接点21と近接するように、支持部24と可動バネ22との接続部分の近傍において折曲げられている。
【0046】
尚、本実施の形態においては、固定接点部10は、固定側支持部14においてベース80に固定されており、可動接点部20は、可動側支持部24においてベース80に固定されている。
【0047】
本実施の形態では、固定接点部10及び可動接点部20は、各々1枚の金属板を加工することにより形成されているため、電磁継電器を低コストで形成することができる。また、固定接点11と固定側アークランナ13との間及び可動接点21と可動側アークランナ23との間において接触抵抗を形成する接続部材等が存在していないため、この間の抵抗は低く、固定接点11と固定側アークランナ13との電位をより均一にすることができ、また、可動接点21と可動側アークランナ23との電位をより均一にすることができる。これにより、固定接点11と可動接点21との間で発生したアークをより円滑に、固定側アークランナ13及び可動側アークランナ23に転移させることができる。
【0048】
図8に、本実施の形態における電磁継電器における固定接点11と可動接点21との接触部分の拡大図を示す。固定接点11は、固定側アークランナ13と接続されている固定側突起部16と近接するように形成されており、可動接点21は、可動側アークランナ23と接続されている可動側突起部26と近接するように形成されている。
【0049】
このように、固定接点11と固定側突起部16とが近接しており、また、可動接点21と可動側突起部26とが近接しているため、固定接点11と可動接点21とが離れる際にはアークが発生するが、永久磁石50により生じた磁束により、発生したアークは固定接点11と可動接点21との間から固定側突起部16と可動側突起部26との間に転移しやすい。この後、固定側突起部16と可動側突起部26との間に転移したアークは、固定側アークランナ13及び可動側アークランナ23を走る。このように、本実施の形態では、固定接点11と可動接点21との間で発生したアークを円滑に固定側アークランナ13と可動側アークランナ23とに転移させることができ、固定接点11と可動接点21におけるダメージを減らすことができる。
【0050】
また、本実施の形態において、固定接点11及び可動接点21の近傍の熱容量を増やすことにより、更に、信頼性等を向上させてもよい。具体的には、図9に示すように、固定接点バネ12と固定接点11との接続部分を補強するような固定接点補助部111を設けることにより、固定接点11における熱容量を増やしてもよい。この際、固定接点11よりアークが転移する固定側突起部16にも突起部補助部116を設け、固定側突起部16における熱容量を増やしてもよい。
【0051】
また、図10に示すように、可動接点バネ22と可動接点21との接続部分を補強するような可動接点補助部121を設けることにより、可動接点21における熱容量を増やしてもよい。この際、可動接点21よりアークが転移する可動側突起部26にも突起部補助部126を設け、可動側突起部26における熱容量を増やしてもよい。
【0052】
これにより、アークによる熱的ダメージを受けにくくなり、信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0053】
(電磁継電器の製造方法)
次に、図11及び図12に基づき本実施の形態における電磁継電器の製造方法について説明する。本実施の形態における電磁継電器は、電磁継電器を構成する部材を一方向(Z軸に平行な方向)より接続することにより形成することができるものである。
【0054】
最初に、ステップ102(S102)において、ベース80に接極子40が接続された電磁石部30を設置する。電磁石部30はZ軸方向に磁界を発生させることができるよう設置され、接極子40は一方の側40aが電磁石部30の上部に位置するように設置される。
【0055】
次に、ステップ104(S104)において、固定接点部10及び可動接点部20を設置する。具体的には、Z軸方向の両側に開口を有する絶縁ケース91をZ軸に平行な方向よりベース80に設置し、更に、電磁石部30が設置されていないベース80に固定接点部10及び可動接点部20をZ軸に平行な方向より、端子81及び82がベース80側となるように設置する。この際、電磁石部30の設けられている側に可動接点部20が設置され、電磁石部30の上方向(Z軸方向)には、可動接点部20における可動側アークランナ23が位置するように設置される。
【0056】
次に、ステップ106(S106)において、ヨーク60、消弧グリッド70、永久磁石50を設置する。具体的には、Z軸方向の両側に開口を有するケース90の一方の開口とベース80とを接続する。この際、ケース90はZ軸に平行な方向よりベース80に接続する。この後、ヨーク60、消弧グリッド70、永久磁石50をZ軸に平行な方向より設置する。
【0057】
次に、ステップ108(S108)において、カバー92を設置する。具体的には、ケース90のZ軸方向における他方の開口を覆うようにカバー92をZ軸に平行な方向より接続する。これにより本実施の形態における電磁継電器を作製することができる。
【0058】
本実施の形態では、図11に示す電磁継電器を構成する部品を下から順に供給し組み立てることができるため、即ち、電磁継電器を構成する部品を同一の方向より供給し組み立てることができるため、作業効率が高く、低コストで電磁継電器を製造することができる。尚、ベース80、ケース90、絶縁ケース91、カバー92等は、樹脂材料により形成されている。
【0059】
(排気口)
このように形成されたベース80、ケース90及びカバー92は、本実施の形態における電磁継電器の筐体となるものである。本実施の形態では、図13に示すように、アークが発生した場合において筐体内の圧力が上昇することを防ぐことができ、アークにより生じた気化したガスを排出することができるように、ケース90及びカバー92により排気口95が形成されている。
【0060】
この排気口95は、外部からのゴミ等の侵入を防ぐため、複数の屈曲部分を有している。このような屈曲部分を形成することによりゴミ等の侵入を可能な限り防ぐことができる。また、排気口95の一部には、ゴミ溜まり部96が設けられており、外部より開口部95に侵入したゴミ等の異物をゴミ溜まり部96に溜めることができる。
【0061】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 固定接点部
11 固定接点
12 固定接点バネ
13 固定側アークランナ
14 固定側支持部
15 枠部
16 固定側突起部
20 可動接点部
21 可動接点
22 可動接点バネ
23 可動側アークランナ
24 可動側支持部
25 枠部
26 可動側突起部
30 電磁石部
40 接極子
50 永久磁石
60 ヨーク
70 消弧グリッド
80 ベース
81、82、83 端子
90 ケース
91 絶縁ケース
92 カバー
95 排気口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点バネに設けられた固定接点と、
可動接点バネに設けられた可動接点と、
前記可動バネに接極子を介し力を加え、前記固定接点に前記可動接点を接触させるための電磁石と、
前記固定接点と前記可動接点との間に磁界を発生させる磁石と、
前記固定バネに接続され、前記固定バネとの接続部分から前記固定バネよりも離れた位置に設けられた固定側アークランナと、
前記可動バネに接続され、前記可動バネとの接続部分から前記可動バネよりも離れた位置に設けられた可動側アークランナと、
前記固定側アークランナの設けられている側より、前記固定接点の側に突起している固定側突起部と、
前記可動側アークランナの設けられている側より、前記可動接点の側に突起している可動側突起部と、
を有していることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
固定接点と固定バネとの接続部分、可動接点と可動バネとの接続部分、固定側突起部、可動側突起部のうちから選ばれる1または2以上の部分は、厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
固定接点バネに設けられた固定接点と、
可動接点バネに設けられた可動接点と、
前記可動バネに接極子を介し力を加え、前記固定接点に前記可動接点を接触させるための電磁石と、
前記固定接点と前記可動接点との間に磁界を発生させる磁石と、
前記固定バネに接続され、前記固定バネとの接続部分から前記固定バネよりも離れた位置に設けられた固定側アークランナと、
前記可動バネに接続され、前記可動バネとの接続部分から前記可動バネよりも離れた位置に設けられた可動側アークランナと、
を有し、
前記固定接点バネと前記固定側アークランナとは同一の金属板を加工することにより形成されたものであり、
前記可動接点バネと前記可動側アークランナとは他の同一の金属板を加工することにより形成されたものであることを特徴とする電磁継電器。
【請求項4】
前記固定バネとの接続部分と前記固定側アークランナとの間には、前記固定接点バネの周囲に設けられた枠部が設けられており、
前記可動バネとの接続部分と前記可動側アークランナとの間には、前記可動接点バネの周囲に設けられた枠部を介し接続されており、
前記固定側アークランナ及び前記可動側アークランナは、所定の位置に固定されているものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項5】
ベースに電磁石部を設置し、前記電磁石部の設置されていない領域に、固定接点、固定接点バネ及び固定側アークランナを有する固定接点部、可動接点、可動接点バネ、可動側アークランナを有する可動接点部を設置する工程と、
前記固定接点と前記可動接点とを挟むようにヨークを設置する工程と、
前記固定側アークランナの端部と前記可動側アークランナの端部の間に消弧グリッドを設置する工程と、
前記ヨークを介し、前記固定接点と前記可動接点との間に磁束を発生させるための磁石を設置する工程と、
を有し、前記固定接点部、前記可動接点部、前記ヨーク、前記消弧グリッド及び前記磁石は、同一方向より設置されるものであることを特徴とする電磁継電器の製造方法。
【請求項6】
前記固定接点バネの伸びる方向は前記同一方向と略同じ方向であり、
前記可動接点バネの伸びる方向は前記同一方向と略同じ方向であることを特徴とする請求項5に記載の電磁継電器の製造方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−256451(P2012−256451A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127740(P2011−127740)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)