説明

電磁継電器

【課題】 製造が容易で、かつ、冷熱ストレスによるカバーと封止剤間の界面剥離を防止することができる電磁継電器を提供すること。
【解決手段】 電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、本体部を上部に搭載するベース11と、ベース11の底部より外部に突出する8つの端子10と、略直方体形状でその一面方向を開口とし、本体部とベース11の側面部を覆う箱型のカバー9とで構成され、カバー9とベース11の側面部および端子10との間の間隙、およびベース11と端子10との間の間隙が封止剤13により封止され、カバーの開口付近の4つのコーナー部14の内壁に、開口に達する1つの窪み12がそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁継電器に関し、特に車載用等として好適な、基板に実装される密閉型の電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁駆動による電気接点の開閉機能を有し、車載用に多用されている電磁継電器は、電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、その本体部を上部に搭載するベースと、本体部に接続されベースの底部より外部に突出する複数の端子と、本体部とベースの側面部を覆う直方体形状の箱型のカバーとで構成されている。さらに、動作不良の原因となり得るフラックス等の電磁継電器内部への浸入を防止し、信頼性を確保するため、カバーとベースの側面部および端子との間の間隙、およびベースと端子との間の間隙が封止剤により封止され、密閉性が保たれている。
【0003】
通常、上記のような密閉型の電磁継電器では、基板に実装する際の半田付けによる熱ストレスに耐え得ることや、環境温度などの使用条件に十分に対応できることを確認するため、冷熱ストレスを繰り返し与える試験が課されている。電磁継電器に冷熱ストレスが繰り返し作用すると、構成部品であるカバーも伸縮を繰り返す。このとき、カバーと封止剤の熱膨張係数の違いから、その界面に応力が発生し、その応力が繰り返し作用することでカバーと封止剤間の接着強度では耐え切れなくなり、この界面に微小な剥離が生じる。更に、冷熱ストレスを繰り返し作用させることで剥離が成長し、最終的には密閉性を保つことができなくなるという問題があった。ここで、剥離が生じる箇所は応力が最も集中するコーナー部である。
【0004】
このカバーのコーナー部での応力の問題に対応するための従来の技術が、特許文献1に記載されている。図3は特許文献1に記載された従来の電磁継電器を底面側から見た斜視図であり、図3(a)は封止剤注入前の図、図3(b)は封止剤注入後の図である。この電磁継電器は、図3(a)に示すように、ベース4の側面部とベースの上部に搭載された本体部とがカバー1で覆われ、本体部に接続されベース4の底部より外部に突出する5つの端子3を有している。さらに、図3(b)に示すように、カバー1とベース4の側面部および端子3との間の間隙、およびベース4と端子3との間の間隙が封止剤6により封止され、密閉性が保たれている。ここで、図3の電磁継電器においては、基板実装時等の冷熱ストレスによる密閉性破壊の対策として、カバー1の各々のコーナー部7に設けられたスタンドオフ8の両側に切り欠き部5が設けられている。この切り欠き部5は、カバー1の下端2よりカバー1の一部を半円状または矩形状等に切除して形成されている。この切り欠き部5を設けることで、冷熱ストレスによるカバー1のコーナー部7の伸縮変形が抑制され、カバー1と封止剤6間の界面剥離が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−342398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電磁継電器においては、切り欠き部があるため、封止剤を注入する製造工程において、封止剤の注入ノズルの位置制御や注入量の制御が難しくなるという問題が生じていた。すなわち、切り欠き部の部分ではカバーの一部が切除された形状となっているため、封止剤をカバーの外側に溢れさせず、かつ、カバーの縁付近の位置まで注入するためには高精度の制御が必要となる。このように、特許文献1の構造は、製造歩留まりにも影響を及ぼし、製造が煩雑となるという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決し、製造が容易で、かつ、冷熱ストレスによるカバーと封止剤間の界面剥離を防止することができる電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の電磁継電器は、電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、前記本体部を上部に搭載するベースと、前記本体部に接続され前記ベースの底部より外部に突出する複数の端子と、略直方体形状でその直方体の一面方向を開口とし、前記本体部と前記ベースの側面部を覆うカバーとで構成され、前記カバーと前記ベースの側面部および前記端子との間の間隙、および前記ベースと前記端子との間の間隙が封止剤により封止されてなる電磁継電器において、前記カバーの前記開口付近のコーナー部または前記コーナー部に隣接する部分の内壁に、前記開口に達する窪みが少なくとも1つ形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記カバーを前記開口を下方にして配置した時、前記カバーの最下端が、前記コーナー部または前記コーナー部に隣接する部分以外にあるか、または、前記カバーの下端が1つの平面をなしていてもよい。すなわち、前記コーナー部に、電磁継電器の底面を基板上から持ち上げるために設けるスタンドオフが形成されていなくてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、上記のように、カバーのコーナー部の内壁に窪みが形成されているが、カバーの外側の形状は切り欠き部がない従来の形状と同様であるため、封止剤の注入は、図3の従来の構造と比べて容易となる。一方、本発明のカバーのコーナー部の内壁に窪みを設けた構造においても、図3の切り欠き部を設けた場合と同様に、カバーのコーナー部の伸縮変形が抑制され、カバーと封止剤間の界面剥離が防止されることが実験的に確認された。
【0011】
以上のように、本発明により、製造が容易で、かつ、冷熱ストレスによるカバーと封止剤間の界面剥離を防止することができる電磁継電器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による電磁継電器の第1の実施の形態を底面側から見た斜視図であり、図1(a)は封止剤注入前の図、図1(b)は封止剤注入後の図、図1(c)は封止剤注入後のコーナー部の拡大図である。
【図2】本発明による電磁継電器の第2の実施の形態を底面側から見た斜視図であり、図2(a)は封止剤注入前の図、図2(b)は封止剤注入後の図、図2(c)は封止剤注入後のコーナー部の拡大図である。
【図3】従来の電磁継電器を底面側から見た斜視図であり、図3(a)は封止剤注入前の図、図3(b)は封止剤注入後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明による電磁継電器の第1の実施の形態を底面側から見た斜視図であり、図1(a)は封止剤注入前の図、図1(b)は封止剤注入後の図、図1(c)は封止剤注入後のコーナー部の拡大図である。図1(a)において、本実施の形態の電磁継電器は、電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、本体部を上部に搭載するベース11と、本体部に接続されベース11の底部より外部に突出する8つの端子10と、略直方体形状でその直方体の一面方向を開口とし、本体部とベース11の側面部を覆う箱型のカバー9とで構成されている。また、図1(b)に示すように、カバー9とベース11の側面部および端子10との間の間隙、およびベース11と端子10との間の間隙が封止剤13により封止されている。本実施の形態においては、図1(b)および図1(c)に示すように、カバーの開口付近の4つのコーナー部14の内壁に、開口に達する1つの窪み12がそれぞれ形成されている。ここで、窪み12の深さ、幅およびカバーの上方への長さはカバーの形状、厚さ、ベースの厚さなどに依存して、カバーと封止剤間の界面剥離を防止する目的を達成できる条件の範囲内で決定することができる。
【0015】
本実施の形態の電磁継電器においては、カバーの外側の形状は切り欠き部がない従来の形状と同様であるため、例えばエポキシ樹脂等の封止剤13の注入は、図3の従来の構造と比べて容易となる。また、カバーのコーナー部の伸縮変形が抑制され、カバーと封止剤間の界面剥離が防止されることが実験的に確認されている。
【0016】
図2は、本発明による電磁継電器の第2の実施の形態を底面側から見た斜視図であり、図2(a)は封止剤注入前の図、図2(b)は封止剤注入後の図、図2(c)は封止剤注入後のコーナー部の拡大図である。図2(a)において、本実施の形態の電磁継電器は、電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、本体部を上部に搭載するベース20と、本体部に接続されベース20の底部より外部に突出する8つの端子19と、略直方体形状でその直方体の一面方向を開口とし、本体部とベース20の側面部を覆う箱型のカバー17とで構成されている。また、図2(b)に示すように、カバー17とベース20の側面部および端子19との間の間隙、およびベース20と端子19との間の間隙が封止剤22により封止されている。本実施の形態においては、図2(b)および図2(c)に示すように、カバーの開口付近の4つのコーナー部23に隣接する部分の内壁に、開口に達する2つの窪み21がそれぞれ形成されている。ここで、それぞれの窪み21の深さ、幅およびカバーの上方への長さはカバーの形状、厚さ、ベースの厚さなどに依存して、カバーと封止剤間の界面剥離を防止する目的を達成できる条件の範囲内で決定することができる。
【0017】
本実施の形態の電磁継電器においても、カバーの外側の形状は切り欠き部がない従来の形状と同様であるため、封止剤22の注入は、図3の従来の構造と比べて容易となる。また、カバーのコーナー部の伸縮変形が抑制され、カバーと封止剤間の界面剥離が防止されることが実験的に確認されている。
【0018】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことはいうまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、本体部やベース、端子の構成や構造、カバーの形状などにより限定されるものではなく、カバーのコーナー部にスタンドオフを設けた電磁継電器においても適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1、9、17 カバー
2 下端
3、10、19 端子
4、11、20 ベース
5 切り欠き部
6、13、22 封止剤
7、14、23 コーナー部
8 スタンドオフ
12、21 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接点部と電磁駆動部とからなる本体部と、前記本体部を上部に搭載するベースと、前記本体部に接続され前記ベースの底部より外部に突出する複数の端子と、略直方体形状でその直方体の一面方向を開口とし、前記本体部と前記ベースの側面部を覆うカバーとで構成され、前記カバーと前記ベースの側面部および前記端子との間の間隙、および前記ベースと前記端子との間の間隙が封止剤により封止されてなる電磁継電器において、前記カバーの前記開口付近のコーナー部または前記コーナー部に隣接する部分の内壁に、前記開口に達する窪みが少なくとも1つ形成されていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記カバーを前記開口を下方にして配置した時、前記カバーの最下端が、前記コーナー部または前記コーナー部に隣接する部分以外にあるか、または、前記カバーの下端が1つの平面をなすことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101836(P2013−101836A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245047(P2011−245047)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)