説明

電磁調理器具

【課題】 本発明は、加熱時において底壁を厚さ方向の変形を容易に制御することができ、ひいては安定して加熱することが可能な電磁調理器具の提供を目的とする。
【解決手段】 非磁性材からなる器具本体100と、該器具本体100の底壁に接合される磁性材からなる金属板200とを備える。金属板200は、器具本体100の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板210と、器具本体100の周方向に分割又は略分割され、器具本体100の中央部を空けた状態で器具本体100の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板220、230とから構成される。器具本体100の底壁の中央部と、それに対応する第1分割金属板210の端部とが、非加熱時において厚さ方向上側に突出する態様で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱器により加熱されるアルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の電磁調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導加熱(Induction Heatingの頭文字からIHと称される)によりフライパンや鍋などの調理器具を加熱する電磁誘導加熱器が知られている。この電磁誘導加熱器に用いられるフライパンや鍋などの調理器具は総じて電磁調理器具と呼ばれ、アルミニウム又はアルミニウム合金製等の非磁性材の器具本体と、該器具本体の底面に接合される磁性材からなる金属板とを備え、電磁誘導により金属板が発熱し、その熱が器具本体に伝導して器具全体が加熱される。近年、オール電化の人気も相俟って、この電磁調理器具は広く使用されるに至っている。
【0003】
そして、この電磁調理器具として種々工夫されたものが知られている。
例えば、特許文献1は、アルミニウム合金製容器本体の底壁の構造を、内部に埋設した磁性体金属板と該磁性体金属板の両面を被覆するアルミ層との三層構造とし、容器本体の外底壁面に外底面側アルミ層を分断するスリットを設け、該スリットの底から埋設された磁性体金属板が露出するように構成したものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、磁性材からなる発熱体5を8枚の分割プレート6で構成し、これら分割プレート6を非磁性材からなる鍋本体2底面に接合して分割プレート6が鍋本体2底面に円形に配置されたIH調理用鍋1が開示されている。
【0005】
また、特許文献3は、調理用容器30の底部外面に固着される金属板40であって、この金属板40は、調理用容器30の底部31の略中央を中心とする直径30mm以上70mm未満の円形領域を囲む円環領域に配設されているものが開示されている。
【0006】
また、特許文献4は、アルミ合金製電磁調理器用調理器具の底部に一面を外部に露出して磁性材料を埋設した電磁調理器用調理器具において、該磁性材料は、外側の帯状部材、内側の帯状部材、両帯状部材をその端部間で連結する放射状の連結部材及び該内・外の帯状部材と連結部材とで囲まれた密閉空間とよりなる扇形状の有孔盤状体とし、該有孔盤状体のいくつかを、該有孔盤状体の密閉空間及びその周辺部へのアルミ合金により一体化して埋設してなるものが開示されている。
【0007】
また、特許文献5は、加熱用調理容器の本体部の底部に積層部を設け、前記積層部には本体部の素材が露出した複数の露出部を形成し、前記複数の露出部が加熱用調理容器の底面中心部から等距離の一定範囲に亘って平面的に重合した重合部を形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2558429号公報
【特許文献2】特開2001−203070号公報
【特許文献3】特開2005−205196号公報
【特許文献4】特開2006−122410号公報
【特許文献5】実用新案登録3111695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の電磁調理器具では、調理器具本体の底壁の中央部が加熱により厚さ方向に変形することから、その底壁の厚さ方向の変形を制御することが重要である。
【0010】
すなわち、電磁調理器具を加熱器に載置したときに、加熱器上で器具がぐらつかないように器具の底壁の中央部を厚さ方向上側に突出させて形成するのが一般的である。特に現在のSG規格では、非加熱時において底壁の突出高さ(加熱器の上面から器具の底壁の中央部までの距離)が調理器具の底壁の直径×0.6%以下となるように製造することが要求される。
【0011】
そして、加熱調理器具を加熱器により加熱すると、従来の電磁調理器具では底壁の中央部が厚さ方向上側にさらに突出するように変形し、電磁誘導加熱器のトッププレートから離れるという問題があった。特にSG規格では、加熱時において底壁の突出高さが調理器具の底壁の直径×0.5%以下となるように製造することが要求されている。
【0012】
このため非加熱時はもとより、加熱時においてもSG規格をパスするように、電磁調理器具の底壁の厚さ方向を制御することが問題となっていた。
【0013】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、加熱時において底壁を厚さ方向の変形を容易に制御することができ、ひいては安定して加熱することが可能な電磁調理器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成され、前記器具本体の底壁の中央部と、それに対応する前記第1分割金属板の端部とが、非加熱時において厚さ方向上側に突出する態様で形成されていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、非加熱時においては、器具本体の底壁の中央部とそれに対応する第分割1金属板の端部が厚さ方向上側に突出しているため、器具全体を電磁誘導加熱器のトッププレート上に安定良く載置することができる。そして、加熱時においては、器具本体の底壁の中央部とそれに対応する第1分割金属板の端部が厚さ方向下側に戻るように変形するため、電磁誘導加熱器の感熱センサ等が温度を感知しやすくなり、電磁誘導加熱器のトッププレートに近づいた状態にて安定良く加熱することができる。
【0016】
また、前記器具本体の底壁に前記第2分割金属板が一部設けられていない部分があってもよい。
【0017】
また、前記第1分割金属板は、長さ方向に複数に分断されいてもよい。
【0018】
また、前記突出する高さは前記器具本体の底壁の直径の0.6%以下が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、非加熱時においては、器具本体の底壁の中央部とそれに対応する第1分割金属板の端部が厚さ方向上側に突出しているため、器具全体を電磁誘導加熱器のトッププレート上に安定良く載置することができる。そして、加熱時においては、器具本体の底壁の中央部とそれに対応する第1分割金属板の端部が厚さ方向下側に戻るように変形するため、電磁誘導加熱器のトッププレートに近づいた状態にて安定良く加熱することができる。このため非加熱時はもとより、加熱時においてもSG規格などの要求を満たすように底壁の厚さ方向の変形を制御し易くなり、安定した電磁調理器具の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る本器具の断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図3】第2の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図4】第3の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図5】第4の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図6】第5の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【図7】本器具の寸法を示すための構成概略図である。
【図8】従来器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【図9】本器具の実施例を示す製品写真に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施形態に係る電磁調理器具(以下、本器具という)について説明する。
【0022】
図1は第1の実施形態に係る本器具の断面図、図2は同じく本器具の底側から見た平面図である。
【0023】
本器具は、図示略の電磁誘導加熱器(IH)のトッププレート上に載置され、電磁誘導加熱される平面視円形のフライパンである。
【0024】
一般に電磁誘導加熱器のトッププレートの下方には誘導コイルが渦巻き状に配置され、その下方には高周波電流発生装置が配置される。そして、高周波電流発生装置から高周波電流を誘導コイルに供給すると、磁力線が本器具の後述する金属板200を横切るように発生し、この金属板200内部に渦電流が発生する。この渦電流がジュール熱に変換されることで金属板200が発熱して本器具を加熱する。
【0025】
本器具は、図1および図2に示すように、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金あるいはセラミック等の非磁性材からなる器具本体100を備える。この器具本体100は、例えば直径260mm、深さ60mmの上面開口の器状に形成され、一枚の板からプレス成形により形成されるのが一般的である。但し、セラミックの場合は別の形成方法で行う。
【0026】
また、器具本体100の底壁には、ほぼ全面に亘って、鉄や磁性ステンレススチール等の磁性材からなる金属板200が接合されている。接合に際しては、一般に接着剤などを使用せずに、器具本体100の底壁と金属板200を重ね合わせた状態でプレス加工により接合する。但し、セラミックの場合は別の接合方法で行う。
【0027】
この金属板200は、図2に示すように、一枚の第1分割金属板210と、複数枚の第2分割金属板220、230とから構成される。
【0028】
前記第1分割金属板210は、長さ100mm、幅35mm、厚さ0.5mmであって、器具本体100の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成されている。なお、図2のA点とは、器具本体100の中心部を示す仮想的な点であり、実際に表示されるものではない。
【0029】
前記第2分割金属板220,230は、さらに第1分割金属板210の両側に配置される2枚の第2分割金属板220と、第1分割金属板210の対向側に配置される3枚の第2分割金属板230とから構成され、それぞれ器具本体100の中央部を空けた状態で器具本体100の周方向に並んで配置されている。
【0030】
第2分割金属板220は、直角の略扇状に形成されており、第1分割金属板210と所定の隙間を空けて、第1分割金属板210の両側に対称に配置されている。また、第2分割金属板230は、鋭角の略扇状に形成されており、鋭角部を第1分割金属板210に対向させるとともに、周方向に互いに所定の隙間を空けて並んで配置されている。
【0031】
第1分割金属板210と第2分割金属板220,230には、全面に亘って直径4mmの小孔240が複数穿設されている。この小孔240は、接合時において小孔240のバリが器具本体100の底壁にめり込んで確実に接合することを目的とするものであり、従来の電磁調理器具にも使用されている。
【0032】
また、器具本体100の中央部と、それに対応する第1分割金属板210の端部とは、非加熱時において厚さ方向上側に突出するように形成されている。このときの突出高さはSG規格に適合するように、器具本体100の直径の底壁の0.6%以下(本実施形態では1.2mm以下)とするのがよい。このように非加熱時において厚さ方向上側に突出させることにより、本器具を電磁誘導加熱器のトッププレート上に安定して載置することができる。なお、実際には突出高さは非常に低いため、図1ではその突出高さが表現されていない。
【0033】
而して、本器具を電磁誘導加熱器により加熱すると、金属板200が上述の電磁誘導加熱の原理により発熱して、その熱が器具本体100に伝導して器具本体100全体が加熱される。このとき加熱によって器具本体100と金属板200に応力が加わるが、器具本体100の底壁の中央部とそれに対応する第1分割金属板の端部は厚さ方向下側に変形する。すなわち、電磁誘導加熱器のトッププレート側に変形して、非加熱時の突出高さを下げるように変形する。そして、通常、SG規格に適合するように器具本体100の底壁の直径の0.5%以下(本実施形態では1.0mm以下)となる。
【0034】
従来、同種の電磁調理器具は、同じく器具本体100の底壁の中央部を厚さ方向上側に突出するように形成しているが、加熱するとさらに厚さ方向上側に突出するものであった。しかしながら、本器具によれば、器具本体100の底壁の中央部とそれに対応する第1分割金属板210の端部は厚さ方向下側に変形する。
【0035】
これは、本器具が、上述の第1分割金属板210と第2分割金属板220,230の形状と位置によるものである。すなわち、第1分割金属板210を器具本体100の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成するとともに、第2分割金属板220、230を器具本体の中央部を空けた状態で器具本体の周方向に並んで配置することにより、加熱時に生じる応力が分散するためであると考えられる。このような第1分割金属板210の形状は従来には全くない発想のものである。
【0036】
図3は第2の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【0037】
本実施形態では、第1分割金属板210’が、長さ75mm、幅35mm、厚さ0.5mmと、第1の実施形態の第1分割金属板210よりも短く形成されている。ただし、この第1分割金属板210’は、その端部が器具本体100の中心部A点にまで到達していないものの、器具本体100の中央部(中心部A点を含む中央付近)まで延びる態様で形成されている。
【0038】
図4は第3の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【0039】
本実施形態では、3枚の第2分割金属板230のうち、中央に位置する第2分割金属板230が設けられていない状態となされている。
【0040】
図5は第4の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【0041】
本実施形態では、第1分割金属板210が、周辺側の金属板片211と中央部側の金属板片212とに長さ方向の中央部付近で2つに分断されている。もとより、3つ以上に分断されていてもよい。
【0042】
図6は第5の実施形態に係る本器具の底側から見た平面図である。
【0043】
本実施形態では、第2分割金属板250は、互いに一部連結した略分割した状態となされている。また、第1分割金属板210と第2分割金属板250も一部連結した状態となっている。要は第2分割金属板250は何らか周方向に分割したとみなせる状態であればよい。
【0044】
なお、第2分割金属板250の一部において完全に分割されていてもよいし、第1分割金属板210と第2分割金属板250とが完全に分割されてもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、電磁調理器具として平面視円形のフライパンに適用した例を説明したが、平面視四角形など他の形状のフライパンや鍋などにも適用可能である。
また、第1分割金属板、第2分割金属板は上記実施形態の形状に限定されるものではない。要は、第1分割金属板は前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成されるとともに、第2分割金属板は器具本体の周方向に分割又は略分割され、器具本体の中央部を空けた状態で器具本体の周方向に並んで配置されるものであれば他の形状であってもよい。
【実施例】
【0046】
次に本器具の実施例について、従来の電磁調理器具の比較例と対比しつつ説明することとする。
【0047】
本実施例では、図7に示すように、L、Xを次のとおり定義する。なお、図7では、説明の便宜上、突出高さXを実際の突出高さよりも高く表現している。
【0048】
L:器具本体100の底壁の直径
X:非加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中央部までの距離)
【0049】
また、同じく本実施例では、Y、Zを次のとおり定義する。
Y:加熱時の高さ変化量(加熱によって非加熱時の底壁外面の中心部Aの位置から変化した高さ)
Z:加熱時の底壁の突出高さ(トッププレートTから底壁外面の中心部Aまでの距離)
<従来器具A>
【0050】
従来器具Aは、図8(a)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0051】
この従来器具Aの非加熱時の突出高さXは1.5mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以上であり、SG規格に適合していない。
【0052】
従来器具Aを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表1のとおりとなる。
【表1】

【0053】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.25mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.5mm)に当該高さ変化量Y200(2.25mm)と加えた3.75mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具B>
【0054】
従来器具Bは、図8(b)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(チタンハード)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0055】
この従来器具Bの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0056】
従来器具Bを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表2のとおりとなる。
【表2】

【0057】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.70mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.70mm)と加えた4.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具C>
【0058】
従来器具Cは、図8(c)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの中国製のフライパン(メリアックス)であって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.4mmの金属板が接合されている。
【0059】
この従来器具Cの非加熱時の突出高さXは0.60mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0060】
従来器具Cを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表3のとおりとなる。
【表3】

【0061】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.60mm)に当該高さ変化量Y200(3.30mm)と加えた3.90mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具D>
【0062】
従来器具Dは、図8(d)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmの韓国製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.5mmの金属板が接合されている。
【0063】
この従来器具Dの非加熱時の突出高さXは1.00mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0064】
従来器具Dを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表4のとおりとなる。
【表4】

【0065】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に2.30mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(1.00mm)に当該高さ変化量Y200(2.30mm)と加えた3.30mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<従来器具E>
【0066】
従来器具Eは、図8(e)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ3.0mmのベトナム製のフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.45mmの金属板が接合されている。
【0067】
この従来器具Eの非加熱時の突出高さXは0.30mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0068】
従来器具Eを徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表5のとおりとなる。
【表5】

【0069】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向上側に3.50mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.30mm)に当該高さ変化量Y200(3.50mm)と加えた3.80mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以上であり、SG規格に適合していない。
<本器具1>
【0070】
本発明に係る本器具1は、図9(a)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。本器具1は、図2の実施形態1に示すものに対応している。
【0071】
この本器具1の非加熱時の突出高さXは0.90mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0072】
本器具1を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表6のとおりとなる。
【表6】

【0073】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.20mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.90mm)に当該高さ変化量Y200(0.20mm)と引いた0.70mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具2>
【0074】
本発明に係る本器具2は、図9(b)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。本器具1は、図4の実施形態3に示すものに対応している。
【0075】
この本器具2の非加熱時の突出高さXは0.90mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0076】
本器具1を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表7のとおりとなる。
【表7】

【0077】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.05mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.90mm)に当該高さ変化量Y200(0.05mm)を引いた0.85mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以下であり、SG規格に適合している。
<本器具3>
【0078】
本発明に係る本器具3は、図9(c)に示すように、底壁の直径200mm、厚さ2.6mmのフライパンであって、器具本体100の底壁全体にステンレス製の厚さ0.50mmの金属板が接合されている。本器具1は、図5の実施形態4に示すものに対応している。
【0079】
この本器具3の非加熱時の突出高さXは0.90mmであり、底壁の直径の0.6%(1.2mm)以下であり、SG規格に適合している。
【0080】
本器具1を徐々に加熱していき、加熱時の50℃(Y50)、100℃(Y100)、150℃(Y150)、200℃(Y200)のときの高さ変化量Yをとると、下表8のとおりとなる。
【表8】

【0081】
最高加熱時の200℃における高さ変化量Y200は、厚さ方向下側に0.23mmである。よって、底壁の突出高さZは、非加熱時の突出高さX(0.90mm)に当該高さ変化量Y200(0.23mm)を引いた0.67mmとなる。これは底壁の直径の0.5%(1.0mm)以下であり、SG規格に適合している。
【符号の説明】
【0082】
100・・・器具本体
200・・・金属板
210・・・第1分割金属板
220、230・・・第2分割金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材からなる器具本体と、該器具本体の底壁に接合される磁性材からなる金属板とを備える電磁調理器具であって、
前記金属板は、前記器具本体の周縁部から中央部にかけて径方向に延びる態様に形成された第1分割金属板と、前記器具本体の周方向に分割又は略分割され、前記器具本体の中央部を空けた状態で前記器具本体の周方向に並んで配置される複数の第2分割金属板とから構成され、
前記器具本体の底壁の中央部と、それに対応する前記第1分割金属板の端部とが、非加熱時において厚さ方向上側に突出する態様で形成されていることを特徴とする電磁調理器具。
【請求項2】
前記器具本体の底壁に前記第2分割金属板が一部設けられていない部分がある請求項1に記載の電磁調理器具。
【請求項3】
前記第1分割金属板は、長さ方向に複数に分断されている請求項1または請求項2に記載の電磁調理器具。
【請求項4】
前記突出する高さは前記器具本体の底壁の直径の0.6%以下である請求項1から請求項3のいずれかに記載の電磁調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83451(P2011−83451A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238884(P2009−238884)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(505297312)有限会社タカ商 (3)
【Fターム(参考)】