説明

電磁駆動装置、光制御装置および光学機器

【課題】ベース部材に取り付けられる電磁駆動装置について、簡単な構成で、外部からの衝撃によるベース部材からの脱落を回避する。
【解決手段】電磁駆動装置は、マグネットロータ2と、コイルボビン5と、該コイルボビンに巻き付けられた駆動コイル4と、駆動コイルの周囲に配置され、マグネットロータとの間に磁気回路を形成するためのヨーク3とを有する。コイルボビンは、電磁駆動装置を保持するベース部材10に設けられた弾性変形可能な保持部11と係合し、ヨークは、保持部の弾性変形を阻止して該保持部とコイルボビンとの係合を維持するように該保持部を押さえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラやデジタルカメラ等の光学機器に搭載される絞りやシャッタ等の光制御装置の駆動源として用いられる電磁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電磁駆動装置は、特許文献1にも開示されているように、マグネットロータと、コイルボビンに巻き付けられた駆動コイルと、該駆動コイルとの間に磁気回路を形成するための円筒形状のヨークとにより構成される。駆動コイル(コイルボビン)とヨークは保持ベースとなる固定部材(ベース部材)によって保持されている。駆動コイルに通電すると、固定された駆動コイルとヨークに対してマグネットロータが回転し、該マグネットロータからレバーやギヤ等の出力部材を介して回転力が取り出される。
【0003】
図4に示すように、特許文献1にて開示された電磁駆動装置では、不図示の駆動コイルが巻き付けられたコイルボビン35とその外周を囲むように配置されたヨーク33とが固定部材34によって保持されている。コイルボビン35の内側には、マグネットロータ32が回転可能に配置されている。固定部材34には、弾性変形可能な保持部31が設けられており、この保持部31の先端のフック31aが、コイルボビン35と一体化されたヨーク33に係合することでこれらを保持している。このような構成により、マグネットロータ32、コイルボビン35(駆動コイル)およびヨーク33を組み立てた状態の電磁駆動装置を、ヨーク33が保持部31のフック31aに係合するように固定部材34に組み付けることで、簡単に電磁駆動装置を固定部材34に保持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−281252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示された電磁駆動装置では、外部からの衝撃によって保持部31が弾性変形し、フック31aとヨーク33との係合が外れ、電磁駆動装置が固定部材34から脱落するおそれがある。電磁駆動装置を固定部材34に接着したり、ねじ等の締結部材によって固定部材34に固定したりして脱落を回避することも可能ではあるが、これでは構造が複雑化したり組み立て工数が増えたりして、好ましくない。
【0006】
本発明は、簡単な構成で、外部からの衝撃によるベース部材からの脱落を回避できるようにした電磁駆動装置およびこれを備えた光量制御装置、光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての電磁駆動装置は、マグネットロータと、コイルボビンと、該コイルボビンに巻き付けられた駆動コイルと、駆動コイルの周囲に配置され、マグネットロータとの間に磁気回路を形成するためのヨークとを有する。コイルボビンは、該電磁駆動装置を保持するベース部材に設けられた弾性変形可能な保持部と係合し、ヨークは、保持部の弾性変形を阻止して該保持部とコイルボビンとの係合を維持するように該保持部を押さえることを特徴とする。
【0008】
光を通過させる固定開口が形成されたベース部材と、固定開口を通過する光の量を制御する光量制御部材とを有し、ベース部材により保持され、光量制御部材を駆動する上記電磁駆動装置とを有する光量制御装置、さらに該光量制御装置を用いた光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【0009】
さらに、本発明の他の一側面としての電磁駆動装置の組み立て方法は、マグネットロータと、コイルボビンと、該コイルボビンに巻き付けられた駆動コイルと、駆動コイルの周囲に配置され、マグネットロータとの間に磁気回路を形成するためのヨークとを有する電磁駆動装置に適用される。該組み立て方法は、コイルボビンを、該電磁駆動装置を保持するベース部材に設けられた弾性変形可能な保持部と係合させるステップと、ヨークを、保持部の弾性変形を阻止して該保持部とコイルボビンとの係合を維持するように保持部と係合させるステップとを有すること特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヨークが保持部とコイルボビンとの係合を維持するように該保持部の弾性変形を阻止するので、簡単な構成でありながらも、外部からの衝撃によって保持部が弾性変形して電磁駆動装置がベース部材から脱落することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1である絞り装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】実施例1の絞り装置において電磁駆動装置をベース部材の保持部に組み込む途中の状態を示す断面図。
【図3】実施例1の絞り装置におい電磁駆動装置をベース部材の保持部に組み込んだ状態を示す断面図。
【図4】従来の電磁駆動装置の構成を示す断面図。
【図5】実施例1絞り装置を搭載した本発明の実施例2であるカメラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1および図2には、本発明の実施例1である電磁駆動装置を駆動源として用いた光量制御装置(光量調節装置)としての絞り装置の構成を示している。なお、本実施例の絞り装置は、光量を調節する絞り装置としてだけでなく、撮像時の露光量を制御するシャッタとしても用いてもよい。
【0014】
これらの図において、1は光量制御部材である絞り羽根8,9を駆動する電磁駆動装置としての駆動部であり、電磁駆動装置を構成している。該駆動部1は、ラジアル方向に2極に着磁されたマグネットロータ2と、該マグネットロータ2との間で磁気回路を構成するためのヨーク3と、不図示の駆動回路からの電流が流されることによって励磁され、マグネットロータ2を駆動するための磁力を発生する駆動コイル4と、該駆動コイル4が巻き付けられるコイルボビン5とにより構成されている。
【0015】
マグネットロータ2は、上述したように2極着磁された円柱状のマグネット2aと、該マグネット2aが一体に取り付けられた出力軸2bとにより構成されている。出力軸2bは、それが延びる方向であるロータ軸方向(図2の上下方向)においてマグネット2aの両端から突出しており、これら突出部分のうち一方は出力取出し部となっている。
【0016】
コイルボビン5は、2つの底付き円筒形状の部材の開口側端面を組み合わせて、ロータ軸方向の両端に底部を有する1つの円筒形状の部材として形成されている。マグネットロータ2の出力軸2bのうち出力取出し部は、その一部がコイルボビン5の一方の底部に形成された軸受け部によって回転自在に支持されるとともに、該底部を貫通してコイルボビン5の外部に延出している。また、出力軸2bのうち出力取出し部とは反対側の突出部分は、コイルボビン5の他方の底部に形成された軸受け部によって回転自在に支持されている。このように、マグネットロータ2は、マグネット2aがコイルボビン5の内部空間に収容された状態でコイルボビン5に対して回転可能に支持されている。
【0017】
コイルボビン5の外周には、図2に示すように、駆動コイル4が巻き付けられている。そして、コイルボビン5、駆動コイル4およびマグネットロータ2が一体に組み立てられたコイル/ロータユニットは、図2に示すように、絞り装置のベース部材である絞り地板10に組み付けられる。
【0018】
ヨーク3は中空円筒形状に形成されており、その内径は、コイルボビン5の外形よりも大きい。ヨーク3は、駆動コイル4が巻き付けられたコイルボビン5の周囲に配置される。なお、以下の説明において、コイル/ロータユニットおよびヨーク3の径方向を単に「径方向」といい、コイル/ロータユニットおよびヨーク3の周方向を単に「周方向」という。
【0019】
絞り地板10には、図1に示すように、光量調節を行う光を通過させるための固定開口12が形成されているとともに、後述するようにコイル/ロータユニットおよびヨーク3を組み付けるためのフック形状を有する保持部11が周方向複数箇所(本実施例では2箇所)に形成されている。絞り地板10は樹脂により形成されており、このため保持部11は弾性変形可能である。ただし、保持部11が弾性変形可能であれば、絞り地板10や保持部11を樹脂以外の材料により製作してもよい。
【0020】
なお、絞り地板10における固定開口12が形成された部分と保持部11が形成された部分とを一体成形してもよいし、これらを別部材として製作してネジ止めや接着によって一体化させてもよい。
【0021】
絞り地板10に組み付けられたコイル/ロータユニットから延出した出力軸2bの出力取出し部には、図1に示すように駆動アーム7が圧入または接着により取り付けられる。なお、駆動アーム7を出力軸2bと一体成形してもよい。駆動アーム7の両端に形成された駆動ピン7aは、絞り羽根8,9に形成された長穴部8a,9aに係合する。
【0022】
このため、不図示の駆動回路によって駆動コイル4に通電されると、マグネットロータ2が回転して駆動アーム7が揺動(回動)し、絞り羽根8,9が互いに反対方向に駆動される。これにより、絞り羽根8,9によって固定開口12に面した位置に形成される絞り開口の大きさ(径)が変化し、絞り開口を通過する光の量が調節(制御)される。絞り羽根8,9は、絞り地板10と該絞り地板10に取り付けられるカバー板(ケース)13との間に形成される空間内に移動可能に収容され、かつ絞り地板10に形成されたガイドピン(図示せず)によって移動方向にガイドされる。カバー板13にも、絞り地板10の固定開口12に対応する固定開口14が形成されている。
【0023】
次に、図2および図3を用いて、駆動部1(コイル/ロータユニットおよびヨーク3)の絞り地板10への組み付け手順(組み立て方法)について説明する。
【0024】
コイルボビン5のうち出力取出し部側の位置(出力取出し部側の端部近傍)には、凹部としての係合部6が周方向複数箇所(本実施例では2箇所)に形成されている。2つの係合部6は、絞り地板10に形成された前述した2箇所の保持部11が係合可能な凹部として形成されている。なお、係合部6および保持部11の数は、3つ以上であってもよい。
【0025】
絞り地板10に設けられた保持部11の内側(径方向の内側)には、コイルボビン5の係合部6よりも内側に突出するフック11aが形成されている。また、保持部11の内側におけるフック11aよりも先端側には、フック11aに近づくほど内側にせり出す斜面11bが形成されている。
【0026】
図2に白抜き矢印で示すように、2つの係合部6と2つの保持部11とを位置合わせしてコイル/ロータユニットを絞り地板10に対してロータ軸方向から押し付ける。すると、コイルボビン5のうち出力取出し部側の端部(絞り地板10側の端部)が、絞り地板10の2つの保持部11の斜面11bを押して、該2つの保持部11を外側(径方向の外側)に広げるように弾性変形させる。そして、コイルボビン5の各係合部6が絞り地板10の各保持部11のフック11aに対向する位置に達すると、保持部11の弾性変形が元に戻ってフック11aが係合部6内に入り込み、該係合部6に係合する。こうしてコイル/ロータユニットが絞り地板10に組み付けられる(第1の組み立てステップ)。
【0027】
この後、図3に白抜き矢印で示すように、ヨーク3をロータ軸方向からコイルボビン5の外周に配置する(第2の組み立てステップ)。このとき、ヨーク3の内周面3aは、各係合部6に係合した各保持部11の外側の面に当接する。すなわち、ヨーク3の内径は、それぞれ係合部6に係合した状態である2つの保持部11の外側面を通る円の径と同じか若干これよりも小さい。これにより、ヨーク3は、保持部11の外側への弾性変形を阻止して該保持部11と係合部6との係合を維持するように保持部11を押さえることになる。言い換えれば、ヨーク3は、該ヨーク3とコイルボビン5との間で保持部11を挟み込む。
【0028】
このような構成によれば、衝撃や振動等によって駆動部1を絞り地板10から引き抜く方向に外力が加わっても、ヨーク3によって保持部11の外側への弾性変形は阻止されているので、保持部11のフック11aがコイルボビン5の係合部6から外れて駆動部1が絞り地板10から脱落することを回避できる。
【0029】
なお、上述したように保持部11の外側の面を通る円の径よりも若干小さく内径が設定されたヨーク3によって保持部11をコイルボビン5側に軽く押圧するようにしてもよい。また、ヨーク3と保持部11との間に保持部11が係合部6から外れない程度に多少の遊び(ギャップ)を設けてもよい。ただし、遊びを設ける場合は、接着剤を用いる等してヨーク3が絞り地板10から脱落しないようにする必要がある。
【0030】
また、本実施例では、絞り地板10の保持部11は、コイルボビン5のうち出力取出し部側の端部近傍に設けられた係合部6に係合するように形成され、さらにヨーク3は、該ヨーク3のうち出力取出し部側の端部近傍部分によって保持部11を押さえるように構成されている。これにより、図4に示した従来の絞り装置のように保持部を出力取出し部側とは反対側の端部近傍まで長く延ばす場合に比べて、第1の組み立てステップにおける絞り地板10に対するコイル/ロータユニットの押し込み量や、第2の組み立てステップにおけるヨーク3の保持部11の外面に沿った押し込み量を少なくすることができる。このため、絞り地板10に対するコイル/ロータユニットおよびヨーク3の組み付けを簡単に行うことができる。
【実施例2】
【0031】
図5には、実施例1にて説明した絞り装置が搭載された、本発明の実施例2である光学機器としてのカメラ(ビデオカメラやスチルカメラ)を示している。
【0032】
50はカメラ本体であり、51,53は複数のレンズであり、該レンズ51,53間には、絞り装置15が配置されている。レンズ51,53および絞り装置15により、撮影光学系が構成される。
【0033】
52はCCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子であり、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する。54はCPU等により構成されるコントローラであり、絞り装置15(駆動部1)や撮像素子52の動作を制御する。
【0034】
このようなカメラに、実施例1にて説明した電磁駆動装置を駆動部1として用いた絞り装置を搭載することにより、特別な部材や方法を用いることなく、衝撃や振動等による外力に対して強いカメラを実現することができる。
【0035】
なお、実施例1では、いわゆるギロチン型の絞り装置について説明したが、本発明の電磁駆動装置は、いわゆる虹彩型の絞り装置等、ギロチン型以外の様々な絞り装置の駆動源として用いることができる。
【0036】
また、実施例2では、撮影光学系一体型のカメラについて説明したが、本発明の電磁駆動装置を駆動源として用いた光量制御装置を、交換レンズ等、他の光学機器に搭載してもよい。
【0037】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
衝撃や振動等による外力に対して強い電磁駆動装置およびこれを搭載した光学機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 駆動部
2 マグネットロータ
3 ヨーク
4 駆動コイル
5 コイルボビン
6 係合部
10 絞り地板(ベース部材)
11 保持部
11a フック
15 光量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットロータと、
コイルボビンと、
該コイルボビンに巻き付けられた駆動コイルと、
前記駆動コイルの周囲に配置され、前記マグネットロータとの間に磁気回路を形成するためのヨークとを有する電磁駆動装置であって、
前記コイルボビンは、該電磁駆動装置を保持するベース部材に設けられた弾性変形可能な保持部と係合し、
前記ヨークは、前記保持部の弾性変形を阻止して該保持部と前記コイルボビンとの係合を維持するように前記保持部を押さえることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記ヨークは、該ヨークと前記コイルボビンとの間で前記保持部を挟み込むことを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記マグネットロータは、マグネットと、該マグネットからロータ軸方向に突出する出力取出し部が設けられた出力軸とにより構成されており、
前記保持部は、前記コイルボビンのうち前記出力取出し部側に形成された係合部に係合し、
前記ヨークは、該ヨークのうち前記出力取出し部側の部分によって前記保持部を押さえることを特徴する請求項1又は2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
光を通過させる固定開口が形成されたベース部材と、
前記固定開口を通過する光の量を制御する光量制御部材とを有し、
前記ベース部材により保持され、前記光量制御部材を駆動する請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁駆動装置とを有することを特徴とする光量制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光量制御装置を用いたことを特徴とする光学機器。
【請求項6】
マグネットロータと、
コイルボビンと、
該コイルボビンに巻き付けられた駆動コイルと、
前記駆動コイルの周囲に配置され、前記マグネットロータとの間に磁気回路を形成するためのヨークとを有する電磁駆動装置の組み立て方法であって、
前記コイルボビンを、該電磁駆動装置を保持するベース部材に設けられた弾性変形可能な保持部と係合させるステップと、
前記ヨークを、前記保持部の弾性変形を阻止して該保持部と前記コイルボビンとの係合を維持するように前記保持部を押さえる位置に配置するステップとを有すること特徴とする電磁駆動装置の組み立て方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate