説明

電線への止水剤塗布方法および装置

【課題】ワイヤハーネスを製造する際に電線に止水剤を塗布する方法において、止水剤の塗布が確実にムラなく行えるとともに、電線の本数に変更があったときでも容易に対応できるようにすること。
【解決手段】複数本の電線12を上下方向で重なるように並べる並設処理と、該並設処理後に、電線12が並設されてなる電線群14に対して止水剤16を塗布する塗布処理を行う電線への止水剤塗布方法であって、上記塗布処理が、上記止水剤16を吐出すべく電線群14の両側を挟む位置に配置された一組の噴孔53を、電線群14に対して下から上へ移動しながら止水剤16を吐出して行われる電線への止水剤塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に組み込まれるワイヤハーネスを製造する時に使用される電線への止水剤塗布方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの製造においては、車体パネルの貫通孔に装着されるグロメットを挿入する部分に止水を施す必要がある。止水は電線同士の間と電線とグロメットの間を止水剤等で塞ぐことによって行われる。具体的には、上下方向で重なるように一列に並べられた電線の周面に止水剤(シリコン、ウレタン等)を塗布した後、電線をまとめ、丸くまとめた上からフィルムを被せて束ね、その上に粘着テープを巻きつけて、最後にグロメットを取り付ける。
【0003】
上記のように上下方向で重なるように並べられて止水剤が塗布された電線は、その後に束ねられるので、電線間等が確実に止水されるためには、電線の周面に満遍なく止水剤が塗布される必要がある。
【0004】
止水剤の塗布を確実に行うため、様々な工夫がなされている。その一つに、下記特許文献1に記載の技術がある。この技術は、配索板上に電線を縦2列に並べるため、電線群分散受け治具を離間配置し、これら電線群分散受け治具の間に位置する電線の一部分に対して、止水剤吐出器が降下して止水剤を塗布するというものである。この止水剤吐出器は、縦2列に並ぶ複数本の電線を覆うように、縦に長い2本の溝を有した直方体形状に形成され、電線間の周囲および隙間に止水剤を吐出すべく、電線を挟む4面に複数個のノズルを有した構造である。つまり、複数のノズルから止水剤を一気に吐出して塗布を行うというものである。
【0005】
しかし、このように電線の周囲に予め配置された複数のノズルから止水剤を吐出して塗布を行う場合には、ノズルの正面とその他の部位で止水剤の付着量に差が生じ、この結果、塗布ムラが発生するという難点がある。
【0006】
また、特許文献1の技術は、2本の電線群分散受け治具を用いて電線を縦2列に並べ、この部分に対して上記の如く電線を覆う形状に形成された止水剤吐出器を用いて止水剤の塗布を行う構成を採用している。このため、製造されるワイヤハーネスの電線の本数に変更があったときに、その変更に対応するためには、電線群分散受け治具や止水剤吐出器自体をその都度変更しなければならないという問題点もある。
【0007】
さらに、上記電線群分散受け治具は、複数本の電線を縦2列に分ける役割を果たしているので、止水剤を塗布したあとは、その後に行われるべき作業のために電線群分散受け治具を電線から外さなければならない。しかし、電線群分散受け治具は、フォークを立てたような形状であるので、電線から外すためには、電線群分散受け治具を配索板上に昇降可能に支持して、止水剤の塗布後に電線群分散受け治具を降下させるように制御する必要がある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−45251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、止水剤の塗布が確実にムラなく行えるとともに、電線本数に変更があったときでも容易に対応できるなどの利点も得られるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、複数本の電線を上下方向で重なるように並べる並設処理と、該並設処理後に、電線が並設されてなる電線群に対して止水剤を塗布する塗布処理を行う電線への止水剤塗布方法であって、上記塗布処理が、上記止水剤を吐出すべく電線群の両側を挟む位置に配置された一組の噴孔を、電線群に対して下から上へ移動しながら止水剤を吐出して行われる電線への止水剤塗布方法である。
【0011】
別の手段は、配索板の上に布線された複数本の電線の必要部位に止水剤を塗布する電線への止水剤塗布装置であって、上記配索板上における止水剤塗布部分に対応する部位に、電線が上下方向で重なるように並設された電線群を得る並設手段と、該並設手段に対して上下動するとともに上記電線群に向けて止水剤を吐出する吐出手段とを有し、該吐出手段が、電線群の両側を挟む位置に離間配置された2本の管体と、これら管体の下端部に形成された噴孔とを有する電線への止水剤塗布装置である。
【0012】
なお、上記電線に関して「上下方向で重なるように」とは、各電線の周面が互いに接触して重なっているという意味のものではなく、電線が並ぶ方向を示す表現である。
【0013】
上記構成によれば、電線群の両側を挟む位置に配置される一組の噴孔から止水剤を吐出するとともに、この吐出に際して噴孔を電線群に対し下から上に移動する。このため、電線のある部分が噴孔の正面にあるか否かに関わりなく、電線群の各電線の周面に対して均等に止水剤を塗布することができる。しかも、噴孔は電線群に対して下から上に移動するので、塗布された止水剤と噴孔等の吐出のための手段とが接触するようなことを防止できる。
【0014】
また、電線群の両側を挟む位置に配置され移動する一組の噴孔から止水剤を吐出するので、止水剤を塗布すべき電線の本数が変わった場合でも、噴孔の移動範囲を変更すれば容易に対応できる。
【0015】
さらに、複数本の電線を並べる並設処理を行う並設手段が、棒状をなす複数本の櫛歯部材を有するものであると、櫛歯部材の本数を変更するだけで電線本数の変更に対応できるとともに、止水剤を塗布する塗布処理の後には、櫛歯部材を上方に移動させれば、止水剤が塗布された電線の拘束を解くことができ、上記移動の動作は、止水剤を吐出する吐出手段との連動を図ることができる。この結果、ワイヤハーネスをインラインで製造する場合の構成の簡素化を図れる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、電線群を構成する各電線に対して止水剤を満遍なく均等に塗布することができる。このため、確実な止水の実現が可能である。また、止水剤の塗布は電線群の左右両側に配置される一組の噴孔を移動させながら行うので、止水剤を塗布すべき電線の本数に変更があっても容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、ワイヤハーネス11(図14参照)を製造するときに用いられる止水剤塗布装置21の要部を示す正面図であり、図2はその側面図、図3はその平面図、図4はその斜視図である。
【0018】
止水剤塗布装置21は、電線12を布線する配索板22上に設けられ、ワイヤハーネス11におけるグロメット13(図14参照)を取り付ける部分に止水性能を持たせるべく、複数本の電線12の周面に止水剤を塗布するためのものである。止水剤の塗布は各電線12を縦に並べてから行う。このため、止水剤塗布装置21は、複数本の電線を縦に並べる並設装置31と、該並設装置31で並べた電線に向けて止水剤を吐出する吐出装置51とを備える。
【0019】
並設装置31は、複数本の電線12が上下方向に重なるように並んでなる電線群14を左右方向に複数列、図示例においては3列形成するように構成されるもので、配索板22上に固定されたベース32と、該ベース32上に着脱可能な電線振り分け具33および下端位置規制具34と、上記ベース32上に取り付けられる位置決め具35とを有する。
【0020】
上記ベース32は、中央部分に凹みを有する天板32aと該天板32aを支える脚部32bとを有した台形状であり、上記凹みの底には磁着性の金属からなる支持板32cが備えられている。
【0021】
上記電線振り分け具33は、図5に示したように、相互に離間配置される棒状をなす複数本の櫛歯部材41と、これら櫛歯部材41の上端部を着脱可能に連結し、櫛歯部材41の上端部における櫛歯部材間の隙間を閉塞する蓋部材46とからなる。
【0022】
電線12の振り分けは、上記の如く、3列の電線群14を得るように行うので、8本の櫛歯部材41が使用される。すなわち、図3、図4に示したように、相互間に電線12を通せるように並べられた4本一組の櫛歯部材41が、電線12を這わせる方向に適宜間隔を隔てて配置される。適宜間隔とは、その中間位置で止水剤を吐出しても止水剤が櫛歯部材41に付着しない距離である。換言すれば、止水剤を塗布する範囲の長さよりも長い距離である。
【0023】
櫛歯部材41は丸棒状に形成され、下端部は先の方が細くなるように形成されるとともに下端面は平坦に形成されている。そして、下端部には上記ベース32の支持板32cに対して吸着する磁石42が埋設されている。また、櫛歯部材41の上端部は、図5に示したように蓋部材46に対して着脱可能にするため、上端の角部にテーパ面43を有し、それより下側には、径を小さくするくびれ部44を有する。
【0024】
蓋部材46は、長方形板状をなしており、電線12を這わせる方向における中間部分に、上下方向(厚み方向)に貫通する窓部47が形成されている。この窓部47は、図3に示したように3列に並ぶ電線群14の幅よりも長く形成されており、この窓部47を通して電線に対する止水剤の塗布がなされる。
【0025】
また、櫛歯部材41を着脱可能にするため、蓋部材46には、図6に示したように櫛歯部材41の上端部を受け入れる孔部48と、該孔部48内に入った櫛歯部材41のくびれ部44に係合して抜け止めする係合板49とを有する。すなわち、下面に開口する上記孔部48が櫛歯部材41を配置すべき位置に形成されるとともに、この孔部48の深さ方向の中間部に、係合板49が横方向に摺動可能に保持される。係合板49には、櫛歯部材41の上端部の侵入を許容する貫通孔49aが形成され、上記孔部48に櫛歯部材41の上端部が挿入されたときに貫通孔49aの内周縁が櫛歯部材41のくびれ部44に係合するように一方向に向けてバネ46aで付勢されている(図5参照)。また、係合板49の付勢方向の端部には、蓋部材46の端面から突出する操作部49bが形成される。この操作部49bを押圧し、バネ46aの付勢力に抗して係合板49を押込んで横にずらすと、係合板49の貫通孔49aと蓋部材46の孔部48とが重なり合うので、櫛歯部材41を蓋部材46から分離できる。
【0026】
このような電線振り分け具33によって、電線12は図1、図3、図4に示したように3列の電線群14に分けられる。このときに、電線群14の下端位置を一定の高さに規制するため、上記下端位置規制具34がベース32の上面に対して着脱可能に取り付けられる。
【0027】
下端位置規制具34は、上記櫛歯部材41の下側部分を取り囲むような形状に形成され、櫛歯部材41をベース32にセットした状態でもベース32に対して着脱できるように、図示の如く平面視コの字形に形成されている。つまり、電線12を這わせる方向で相対向する2枚の規制板34aの上端が、櫛歯部材41の間を通る電線12の下端位置を、上記規制板34aの高さよりも下がらないようにしている。なお、電線12が下がるのを防げる形状であれば、下端位置規制具34は上記形状以外の形状であってもよい。
【0028】
また、上記ベース32における側面部分には、図1、図2、図3に示したように、基端部が枢着された支持杆35aと、該支持杆35aの遊端部に設けられた略方形板状をなす位置決め板35bとからなる位置決め具35が取り付けられている。この位置決め具35は、電線12に対してフィルム15(図13、図14参照)を巻く位置を示すためのもので、電線12に塗布される止水剤の位置から電線12がのびる方向に一定距離隔てた位置に対応する部位に取り付けられ、電線12に向けて倒すと位置決め板35bが電線12に軽く接触するように形成されている。
【0029】
上述した電線振り分け具33は、止水剤を吐出する上記吐出装置51に関連付けて配索板22の上方に着脱可能に取り付けられる。
【0030】
すなわち、吐出装置51は、配索板22の上方に、並設装置31に対して上下および左右に移動可能に支持部(図示せず)で支持され、この支持部と連動して上下動する昇降部61に取り付けられる(図7参照)。
【0031】
吐出装置51には、止水剤を吐出するための2本の管体52が垂設されており、これら管体52の下端部における相対向する面には、止水剤を吐出する噴孔53が設けられている。上記管体52の間隔は、電線群14を挟んで対峙する適宜の間隔に設定されており、上記噴孔53から止水剤が吐出されると止水剤が電線12に付着する。
【0032】
昇降部61は、図7に示したように、吐出装置51の侵入を許容すべく中央部分を開口した形態の板状をなし、その下面に、一対の係脱爪62が配設される。これら係脱爪62は、降下して並設手段31に接触したときに開いて上記電線振り分け具33の蓋部材46に係合するものである。すなわち、蓋部材46の左右両側部に係合する形状の切欠部62aを有するとともに、この切欠部62aの下側には、下側ほど外側に開く傾斜面62bが形成されている。また、2個の係脱爪62は、昇降部61の下面に対して左右方向にスライド可能に支持されており、これらは相互に枢着された連結杆63によって回動可能に連結され、連結杆63に取り付けられたバネ64によって内側に向けて閉じる方向に付勢されている。
【0033】
このような昇降部61は、降下して係脱爪62の傾斜面62bが電線振り分け具33の蓋部材46に当たると、係脱爪62が付勢力に抗して左右に開き、さらなる降下で係脱爪62の切欠部62aが蓋部材46に係合する。また、蓋部材46を係脱爪62から外すときには、少なくともいずれか一方の係脱爪62を左右に開く方向に移動させて、係脱爪62を蓋部材46から分離すればよい。上記係脱爪62を左右に開く操作を容易にするため、上記連結杆63には、相互に枢着された連結杆63同士の角度を広げるための操作レバー65が備えられている。
【0034】
なお、上記係脱爪62が備えられた昇降部61は、上記吐出装置51を支持する支持部が降下するときに適宜のタイミングで降下し、支持部が上昇するときに適宜のタイミングで上昇するように設定される。
【0035】
また、図2、図3に示したように、配索板22上における並設装置31の前後方向(電線12を這わせる方向)の両側には、電線12を受ける受け具71が取り付けられている。この受け具71は、複数本の電線12を所定の高さに支持するためのもので、電線12を振り分ける機能は必要ない。このため、支柱71bと、該支柱71bの上端に取り付けられるたとえばU字状をなす受け部71aとを有した、周知の受け具と同様の形状のものでよい。
【0036】
以上のように構成された止水剤塗布装置21を使用しての止水剤の塗布は、つぎのように行われる。
【0037】
まず、複数本の電線12を並べる並設処理を行う。この例において並設処理は、上述の如く電線12が上下方向で一列に並んだ電線群14を3列形成するように行うが、電線12を並べるのに先立って、櫛歯部材41と蓋部材46とが一体になった電線振り分け具33をベース32に対して固定する。つづいて、下端位置規制具34をベース32に対して取り付ける。次に、電線振り分け具33の蓋部材46を外し、図8に示したように、布線する電線12を櫛歯部材41間に収めるように適宜振り分けて、3列の電線群14を形成する。電線12の振り分け後、蓋部材46を櫛歯部材41に取付け一体化する。
【0038】
電線12における並設装置31の前後両側の部分は、上記受け具71で受けるとともに、その他の部分は所望とおりに布線を行う。
【0039】
並設装置31で並設された電線12は、各列縦一列に並ぶとともに、電線群14の下端位置は下端位置規制具34によって規制されるので、電線12が下端位置規制具34の高さよりも低く下がることはない。また、電線群14の上端位置は、蓋部材46で閉じられるので、電線12にたるみができても電線12が並設装置31からこぼれることもない。
【0040】
このような状態にしてから、各電線群14に対して止水剤を塗布する塗布処理を行う。
【0041】
塗布処理は、吐出装置51を降下させて行う。吐出装置51を降下すると、吐出装置51の2本の管体52が3列の電線群14のうち、予め定められた列の電線群14を左右に挟むように下がってゆき、電線群14の下端位置よりも下の所定位置まで下がる。
【0042】
上記吐出装置51の降下に伴い、予め設定された適宜のタイミングで昇降部61が降下し、昇降部61の係脱爪62が電線振り分け具33の蓋部材46に係合して一体化する。
【0043】
この状態から、上記吐出装置51を上下動および左右動して、図9に示した如く、3列の電線群14に対して順に止水剤を塗布する。
【0044】
止水剤の塗布は、具体的には図10に示したように行われる。吐出装置51の管体52の下端部に形成された噴孔53は、その向きがそれぞれ相対向するように設定されているので、これら一対の噴孔53から吐出される止水剤は電線12に向けて飛散し、電線12の周面に付着する。噴孔53からの止水剤16の吐出に伴って吐出装置51は上方に移動するので、電線群14に対しては、下端に位置する電線12から順次、その上に位置する電線12に向けて塗布がなされる。噴孔53は、電線12の下端の曲面部分に対応する位置から、噴孔53に正対して噴孔との距離が近くなる直径部分に対応する位置、さらには電線12の上端の曲面部分に対応する位置と、各電線12の周面をなめるように順に塗布してゆく。このように止水剤16の吐出に伴って噴孔53の位置が移動するので、塗布が全体に均等に行え、ムラのない塗布ができる。しかも、止水剤の吐出は機械的に行われるので、止水剤16は一定の勢いで吐出される。この点からも塗布ムラの発生を防止できる。
【0045】
このようにして一つの電線群14に対する止水剤の塗布を行った後は、吐出装置51を左右方向に移動し、吐出装置51を別の電線群14の下端位置よりも下まで下げてから、上記と同様に塗布を順次行う。
【0046】
そして、全ての電線群14に対して止水剤16の塗布を行ってから、図11に示したように並設装置31の電線振り分け具33を上方の退避位置に移動させて電線を解放する解放処理を行う。すなわち、止水剤の塗布が完了したあと吐出装置51を上昇させると、適宜のタイミングで昇降部61も上昇する。この昇降部61の上昇で、係脱爪62に結合された電線振り分け具33も上昇し、図12に示したよう電線12は完全に解放される。
【0047】
つぎに、止水剤16が塗布された電線12に対してシート巻きつけ等の仕上げ処理を行う。まず先に、完全に開放された電線12を作業者が束ねるように手でまとめ、位置決め具35を電線12に向けて倒す。このとき、下端位置規制具34は必要に応じて外しておくことができる。
【0048】
位置決め具35を倒すとその位置決め板35bが図13に示したように電線12に軽く接触するので、位置決め板35bに沿うようにしてフィルム15の巻き付けを行う。次いで、フィルム15を巻きつけて束になった電線12の上に粘着テープ17を巻く。粘着テープ17は、図14に示したようにフィルム15の両側部分に対して行い、締め付けて、止水剤16のはみ出しを防止する。そして最後にグロメット13を取付け、粘着テープ18で固定する。
【0049】
上述のように、止水剤16をすべての電線12に対して満遍なく均等に塗布することができるので、確実な止水の実現が可能である。しかも、塗布に際して一組の噴孔53は電線群14に対し下から上に移動する。このため、塗布された止水剤と噴孔53等の吐出のための手段とが不測に接触するのを防止でき、満遍なく行った塗布状態を確保し、確実な止水に資することができる。
【0050】
また、ワイヤハーネス11を構成する電線12の本数に変更があった場合には、吐出装置51の移動距離や範囲の設定を変えたり、下端位置規制具34の高さを変えたりすればよい。電線12の本数に大幅な変更があり、電線群14の数を変える必要が生じた場合には、櫛歯部材41の本数を変更するとよい。吐出装置51による止水剤の塗布は、一組の噴孔53からの止水剤の吐出で行うので、吐出装置51の側に変更を加える必要はない。このため、電線の本数が変わっても容易に対応できる。
【0051】
さらに、止水剤を塗布する塗布処理の後、電線振り分け具33を上昇させると電線12はフリーな状態になるので、そのまま続いての処理を行うことができる。しかも、上記電線振り分け具33の上昇は、吐出装置51の上昇と連動しているので、別の駆動装置を設ける必要はなく、装置全体の構成の簡素化を図ることもできる。
【0052】
しかも、上記電線振り分け具33の上昇は機械的に行われるので、電線振り分け具33は上昇に際して所定の軌道を通る。このため、電線振り分け具33の上昇は左右にぶれることなく正確に行える。この結果、人手によって電線振り分け具33を外す場合とはことなり、電線振り分け具33が止水剤と接触して止水剤の塗布量が減少したりすることを防止でき、止水不良の発生を防ぐことができる。
【0053】
また、並設装置31には位置決め具35が備えられ、フィルム15の巻きつけ位置を明示することができるので、作業員の違いなど、フィルム15の巻きつけに際しての条件に違いがあっても、フィルム15を正確な位置に巻くようにすることが可能である。このことによっても止水不良をなくすことができる。
【0054】
この発明の構成と上記一形態の構成との対応において、
この発明の並設手段は上記一形態の構成における並設装置31に対応し、
以下同様に、
吐出手段は吐出装置51に対応し、
結合手段は係脱爪62に対応し、
位置決め手段は位置決め具35に対応するも、
この発明は上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の様々な形態を採用することができる。
【0055】
たとえば、上記の例では電線振り分け具33を8本の櫛歯部材41で構成したが、10本の櫛歯部材で構成しておけば、電線群14を3列や2列にして止水剤の塗布を行うことはもちろん、4列にして塗布を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】止水剤塗布装置の要部の正面図。
【図2】止水剤塗布装置の要部の側面図。
【図3】止水剤塗布装置の要部の平面図。
【図4】止水剤塗布装置の要部の斜視図。
【図5】電線振り分け具の分解斜視図。
【図6】蓋部材の断面図。
【図7】止水剤塗布装置の正面図。
【図8】作用状態の斜視図。
【図9】作用状態の説明図。
【図10】塗布状態の説明図。
【図11】止水剤塗布後の止水剤塗布装置の正面図。
【図12】止水剤塗布後の止水剤塗布装置の側面図。
【図13】作用状態の側面図。
【図14】ワイヤハーネスの一部断面側面図。
【符号の説明】
【0057】
12…電線
14…電線群
16…止水剤
21…止水剤塗布装置
22…配索板
31…並設装置
33…電線振り分け具
35…位置決め具
41…櫛歯部材
46…蓋部材
51…吐出装置
52…管体
53…噴孔
61…昇降部
62…係脱爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を上下方向で重なるように並べる並設処理と、該並設処理後に、電線が並設されてなる電線群に対して止水剤を塗布する塗布処理を行う電線への止水剤塗布方法であって、
前記塗布処理が、前記止水剤を吐出すべく電線群の両側を挟む位置に配置された一組の噴孔を、電線群に対して下から上へ移動しながら止水剤を吐出して行われる
電線への止水剤塗布方法。
【請求項2】
前記電線群を複数列設けるとともに、これら複数列の電線群に対して前記一組の噴孔からの吐出で止水剤を順次塗布する
請求項1に記載の電線への止水剤塗布方法。
【請求項3】
前記並設処理が、電線を並べる位置の上方に昇降可能に備えられた棒状をなす複数本の櫛歯部材で振り分けて行われる
請求項1または請求項2に記載の電線への止水剤塗布方法。
【請求項4】
配索板の上に布線された複数本の電線の必要部位に止水剤を塗布する電線への止水剤塗布装置であって、
前記配索板上における止水剤塗布部分に対応する部位に、電線が上下方向で重なるように並設された電線群を得る並設手段と、
該並設手段に対して上下動するとともに前記電線群に向けて止水剤を吐出する吐出手段とを有し、
該吐出手段が、電線群の両側を挟む位置に離間配置された2本の管体と、これら管体の下端部に形成された噴孔とを有する
電線への止水剤塗布装置。
【請求項5】
前記吐出手段が、電線群に対して下から上に移動するときに止水剤が吐出されるように設定された
請求項4に記載の電線への止水剤塗布装置。
【請求項6】
前記並設手段が、棒状をなす複数本の櫛歯部材と、これら櫛歯部材の上端部を着脱可能に連結して櫛歯部材の上端部における櫛歯部材間の隙間を閉塞する蓋部材とを有するとともに、
前記並設手段が、前記配索板の上方に昇降可能に備えられた
請求項4または請求項5に記載の電線への止水剤塗布装置。
【請求項7】
前記吐出手段の近傍に、吐出手段に連動し電線に対して上下動する昇降部が設けられるとともに、
該昇降部には、降下して前記並設手段に接触したときに、並設手段に対して着脱可能に結合する結合手段が形成された
請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載の電線への止水剤塗布装置。
【請求項8】
前記並設装置に、電線における止水剤が塗布される位置に対して一定の位置に接離する位置決め手段が設けられた
請求項4から請求項7のうちのいずれか一項に記載の電線への止水剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−265748(P2007−265748A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87920(P2006−87920)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】