説明

電線カバーの係止構造

【課題】大型化することなく既存の外形のままで保持力の向上を図ることができる電線カバーの係止構造を提供する。
【解決手段】電線カバー1又はコネクタ3の一方に設けられたロック爪11と、電線カバー1又はコネクタ3の他方に設けられたロックアーム10とを係止させることで、電線カバー1をコネクタ3に組み付ける電線カバーの係止構造において、少なくともロック爪11及びロックアーム10の一方に、電線を介して電線カバー1に与えられる回転力によるロック爪11又はロックアーム10の変形を防止するための変形防止機構14,17を設けた電線カバーの係止構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付電線の端子を収容し電線を外部に引き出すコネクタの電線を覆ってコネクタに組み付けられる電線カバーの係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線カバーの係止構造の一例として、図7に示すように、レバー2が回動自在に組付けられているコネクタハウジング3に係止される電線カバー1が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電線カバー1は、半円筒形状に形成されたカバー本体4の上端部の一対の端板5上にロックアーム6をそれぞれ有する。コネクタハウジング3は、不図示の端子付電線の端子を収容しており、その電線がコネクタハウジング3の前部において、ほぼ直角に折り曲げられて外部の右方に引き出されており、フード部7上に一対のロック爪8をそれぞれ有する。電線カバー1は、引き出されている電線の外側を覆うように配置されてから、ロックアーム6がロック爪8にそれぞれ係止されることで、コネクタハウジング3に組み付けられて電線を保護するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−134881号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に開示された電線カバーの係止構造は、電線カバー1がコネクタハウジング3に組み付けられている際に、電線が引っ張られたり、持ち上げられたりすると、電線カバー1に図中に矢印で示す回転方向の大きな外力f1が加えられることがある。すると、この外力f1により、電線カバー1は、ロックアーム6がロック爪8を横方向から乗り上げてしまい、係止が外れて電線カバー1がコネクタハウジング3から脱落する恐れがある。
【0006】
これに対して、外力f1に耐え得るようにするために、ロックアーム及びロック爪のボリュームを大きくして対処することが考えられるが、ボリュームの増加は、電線カバー1及びコネクタハウジング3の大型化を招くために好ましくなく、実現性に乏しい。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解消することにあり、大型化することなく既存の外形のままで保持力の向上を図ることができる電線カバーの係止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0009】
(1) 端子付電線の端子を収容し電線を外部に引き出すコネクタの前記電線を覆って前記コネクタに組み付けられる電線カバーの係止構造であって、
前記電線カバー又は前記コネクタの一方に設けられたロック爪と、前記電線カバー又は前記コネクタの他方に設けられたロックアームとを係止させることで、前記電線カバーを前記コネクタに組み付ける電線カバーの係止構造において、
前記ロック爪又は前記ロックアームの少なくとも一方に、前記電線を介して前記電線カバーに与えられる回転力による前記ロック爪又は前記ロックアームの変形を防止するための変形防止機構を設けたことを特徴とする電線カバーの係止構造。
【0010】
(2) 前記変形防止機構が、前記ロックアームに形成され前記回転力による変位方向に対して傾斜した当接面を有する突起と、前記突起を収容可能な凹部として前記ロック爪に形成され前記突起の前記当接面と係合する傾斜した当接面を有する内方広がり形状の突起収容部とからなることを特徴とする前記(1)記載の電線カバーの係止構造。
【0011】
(3) 前記変形防止機構が、前記ロック爪に形成され前記回転力による変位方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜突起と、前記ロックアームに形成され前記傾斜突起の前記傾斜面に摺接するガイド部と、前記ガイド部により案内される前記ロックアームの移動を制限する当接突部とからなることを特徴とする前記(1)記載の電線カバーの係止構造。
【0012】
上記(1)の構成の電線カバーの係止構造によれば、電線カバーがコネクタに組み付けられている際に、電線が引っ張られたり、持ち上げられたりして大きな回転力が電線カバーにかかったとしても、ロック爪とロックアームとに設けられている変形防止機構によってロック爪又はロックアームの変形が防止される。そして、変形防止機構は、既存のロック爪又はロックアームに形成されるために外形に変更はない。これにより、変形を防止されたロック爪又はロックアームによって係止が外れることがないので、大型化することなく既存の外形のままで保持力の向上を図ることができる。
【0013】
上記(2)の構成の電線カバーの係止構造によれば、変形防止機構が、ロック爪に形成され回転力による変位方向に対して傾斜した当接面を有する突起と、突起を収容可能な凹部としてロックアームに形成され突起の当接面と係合する傾斜した当接面を有する内方広がり形状の突起収容部とからなることにより、電線カバーに回転力が与えられた際に、突起収容部に収容されている突起の当接面が突起収容部の当接面に当接される。これにより、ロックアームの変形が防止されて互いの係止が外れない。突起収容部は、ロック爪の外形を変更することなく形成され、突起は、ロックアームの外形を変更することなく形成される。これにより、大きな外形の変更を伴うことなくロックアームとロック爪との確実な係止を保証することができる。
【0014】
上記(3)の構成の電線カバーの係止構造によれば、変形防止機構が、ロック爪に形成され回転力による変位方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜突起と、ロックアームに形成され傾斜突起の傾斜面に摺接するガイド部と、ガイド部により案内されるロックアームの移動を制限する当接突部とからなることにより、電線カバーに回転力が与えられた際に、ガイド部が傾斜突起の傾斜面に摺接して案内されてロックアームが当接突部に当接する。これにより、ロックアームの変形が防止されて互いの係止が外れない。傾斜突起は、ロック爪の外形を変更することなく形成され、ガイド部は、ロックアームの外形を変更することなく形成される。これにより、大きな外形の変更を伴うことなく、ロックアームとロック爪との確実な係止を保証することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端子付電線の端子を収容し電線を外部に引き出すコネクタの電線を覆ってコネクタに組み付けられる電線カバーの係止構造において、大型化することなく既存の外形のままで保持力の向上を図ることができる電線カバーの係止構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る複数の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態である電線カバーの係止構造における係止前の外観斜視図、図2は図1に示す電線カバーの係止構造の係止時の外観斜視図、図3は図2のI−I線断面図である。なお、電線カバーとコネクタハウジングとの基本的な構造は、従来のものと同様であるために、それらの図示は省略し、それらの符号を援用して用いることとする。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1実施形態である電線カバーの係止構造は、電線カバー1の端板5上に形成されたロックアーム10と、コネクタハウジング3のフード部7上に形成されたロック爪11とからなる。
【0019】
ロックアーム10は、端板5上に立設された一対の側板12と、一対の側板12の前方側に掛け渡された天板13とを備えており、天板13の後方側(図1中、左下側)に、変形防止機構を構成する突起14が形成されている。
【0020】
突起14は、断面が等脚台形形状で後方に向けて突出しており、両側部に、傾斜面状の当接面15をそれぞれ有する。当接面15は回転力による変位方向(図3中、上下方向)に対して所定角度傾斜している。なお、突起14の断面としては、等脚台形形状に代えて、半円形状や三角形状であっても良い。
【0021】
ロック爪11は、フード部7からL字形状に突出されており、前端部に係合突起16が突出形成されており、この係合突起16に近接して、変形防止機構を構成する突起収容部17が形成されている。
【0022】
突起収容部17は、ロックアーム10の突起14の最大幅よりも十分に大きい内幅を有し、突起14よりも大きい相似形状の内方広がりの凹溝状に形成されているので、係止時に突起14を収容することができる。また、突起収容部17は、両側部に、傾斜面状の当接面18をそれぞれ有する。突起収容部17は、突起14の断面が、等脚台形形状に代えて、半円形状や三角形状にされた場合、それらに対応する凹溝状に形成され、突起収容部17の当接面18もそれらに対応する形状に形成される。
【0023】
突起収容部17の後方側(図1中、右上側)には、横溝19が形成されており、この横溝19には、係止時にロックアーム10の天板13が収容される。
【0024】
係止時に、ロックアーム10は、端板5をフード部7とロック爪11との間に挿入しながら、天板13が、ロック爪11の係合突起16を乗り越えて進行される。
【0025】
図2に示すように、天板13は、ロック爪11の係合突起16を乗り越えてから、横溝19に嵌め込まれ、ロックアーム10の突起収容部17に突起14が収容される。これにより、ロックアーム10は、ロック爪11に係止される。
【0026】
図3に示すように、係止時に、突起収容部17に突起14が収容されることで、突起収容部17の当接面18のそれぞれが突起14の当接面15のそれぞれに平行に配置される。
【0027】
この係止状態において、電線カバー1に大きな外力(図7参照)f1が加えられると、その外力f1が、ロックアーム10を変形しようとする、図中に示す横方向の力となって作用する。すると、ロックアーム10の突起収容部17における当接面18がロック爪11の突起14における当接面15に当接される。そこで、突起14が等脚台形形状であって当接面15が傾斜面状に形成されているとともに、突起収容部17が等脚台形形状であって当接面18が傾斜面状に形成されているために、突起14を下方に押圧する方向の分力f2が発生する。これにより、ロックアーム10とロック爪11とは、外れる方向への変形を防止されることとなって係止状態が維持される。
【0028】
また、突起14は内方広がりの突起収容部17内に楔状に係合しているので、突起14が上方に抜け出ることがなく、確実な係止状態が維持される。
【0029】
上述したように、電線カバーの係止構造の第1実施形態によれば、電線カバー1がコネクタハウジング3に組み付けられている際に、電線が引っ張られたり、持ち上げられたりして大きな回転力が電線カバー1にかかったとしても、ロックアーム10の突起14とロック爪11の突起収容部17とからなる変形防止機構によってロックアーム10とロック爪11との変形が防止される。
【0030】
そして、ロックアーム10の突起14とロック爪11の突起収容部17とは、既存のロックアーム10及びロック爪11に形成されるために外形に変更はない。これにより、変形を防止されたロックアーム10及びロック爪11によって係止が外れることがないので、大型化することなく既存の外形のままで保持力の向上を図ることができる。
【0031】
また、電線カバーの係止構造の第1実施形態によれば、変形防止機構として、ロック爪11に、断面が等脚台形で傾斜状の当接面15を有する突起14が設けられるとともに、ロックアーム10に、突起14よりも大きい相似形状の内方広がりの凹部からなる突起収容部17が設けられることで、電線カバー1に回転力が与えられた際に、突起収容部17の当接面18が、突起14の当接面15に当接されることにより、ロックアーム10の変形が防止されて互いの係止が外れない。
【0032】
また、突起収容部17は、ロック爪11の外形を変更することなく形成され、突起14は、ロックアーム10の外形を変更することなく形成される。これにより、大きな外形の変更を伴うことなくロックアーム10とロック爪11との確実な係止を保証することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、図4〜図6を参照して、本発明に係る第2実施形態の電線カバーの係止構造を説明する。
図4は本発明に係る第2実施形態である電線カバーの係止構造における係止前の外観斜視図、図5は図4に示す電線カバーの係止構造の係止時の外観斜視図、図6は図5のII−II線断面図である。なお、以下の実施形態において、上述した第1実施形態と共通する構成部分の説明は同一符号又は相当符号を付すことで簡略化あるいは省略する。
【0034】
図4に示すように、本発明の第2実施形態である電線カバーの係止構造は、電線カバー1の端板5上に形成されたロックアーム30と、コネクタハウジング3のフード部7上に形成されたロック爪31とからなる。
【0035】
ロックアーム30は、端板5上に前方に向けてL字形状に突出された一対の側板32と、一対の側板32の前方側に掛け渡された前板33とを備えており、この前板33の後方側に、変形防止機構のロックアーム側を構成するガイド部34が形成されている。そして、ガイド部34には、回転力による変位方向(図6中、紙面と直交方向)に直交する基準線に対して予め定められた傾斜角度θで傾斜された摺接面35が形成されている。
【0036】
ロック爪31は、フード部7上に立設されており、その前端部の後側に、ロックアーム30のガイド部34における摺接面35に平行な傾斜面36を有する、変形防止機構を構成する傾斜突起37が突出形成されている。傾斜突起37の前端には傾斜面39が形成されている。そして、ロック爪31の側方には、ロック爪31から所定の距離を置いて、板形状をなして変形防止機構を構成する当接突部38がフード部7上に突出形成されている。
【0037】
係止時に、ロックアーム30は、端板5をフード部7の下側に挿入させながら、前板33が、ロック爪31の傾斜面39を経て傾斜突起37を乗り越えて進行される。
【0038】
図5、図6に示すように、前板33が、ロック爪31の傾斜突起37を乗り越えることで、前板33が傾斜突起37に係止され、ガイド部34の摺接面35が傾斜突起37の傾斜面36に平行に配置される。
【0039】
この係止状態において、電線カバー1に大きな外力(図7参照)f1が加えられると、ロックアーム30に、端板5の後方に向けた力が作用する。すると、ロックアーム30においてガイド部34の摺接面35が、ロック爪31の傾斜突起37における傾斜面36に摺接することで、ロック爪31に右方向の分力f3が発生し、この分力f3により、ロックアーム30が当接突部38に近づく方向に、ロックアーム30とロック爪31とが相対的に変位する。そして、ロックアーム30は当接突部38に当接することとなり、ロックアーム30は、ロック爪31から外れずに、係止状態が維持される。
【0040】
上述したように、電線カバーの係止構造の第2実施形態によれば、変形防止機構として、ロック爪31に、傾斜面36を有する傾斜突起37が設けられるとともに、ロックアーム30に、摺接面35を有するガイド部34が設けられることで、電線カバー1に回転力が与えられた際に、ガイド部34の摺接面35が傾斜突起37の傾斜面36に摺接案内されて、ロックアーム30が当接突部38に当接する。これにより、ロックアーム30の変形が防止されて互いの係止が外れない。
【0041】
また、傾斜突起37は、ロック爪31の外形を変更することなく形成され、ガイド部34は、ロックアーム30の外形を変更することなく形成される。これにより、大きな外形の変更を伴うことなく、ロックアーム30とロック爪31との確実な係止を保証することができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
例えば、上記実施形態において、ロック爪に設けられた変形防止機構がロックアームに設けられ、ロックアームに設けられた変形防止機構がロック爪に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る第1実施形態である電線カバーの係止構造における係止前の外観斜視図である。
【図2】図1に示した電線カバーの係止構造の係止時の外観斜視図である。
【図3】図2のI−I線断面図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態である電線カバーの係止構造における係止前の外観斜視図である。
【図5】図4に示した電線カバーの係止構造の係止時の外観斜視図である。
【図6】図5のII−II線断面図である。
【図7】従来の電線カバーの係止構造の外観図である。
【符号の説明】
【0045】
1 電線カバー
3 コネクタハウジング
10,30 ロックアーム
11,31 ロック爪
14 突起(変形防止機構)
15 当接面
17 突起収容部(変形防止機構)
18 当接面
34 ガイド部(変形防止機構)
35 摺接面
36 傾斜面
37 傾斜突起(変形防止機構)
38 当接突部(変形防止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子付電線の端子を収容し電線を外部に引き出すコネクタの前記電線を覆って前記コネクタに組み付けられる電線カバーの係止構造であって、
前記電線カバー又は前記コネクタの一方に設けられたロック爪と、前記電線カバー又は前記コネクタの他方に設けられたロックアームとを係止させることで、前記電線カバーを前記コネクタに組み付ける電線カバーの係止構造において、
前記ロック爪又は前記ロックアームの少なくとも一方に、前記電線を介して前記電線カバーに与えられる回転力による前記ロック爪又は前記ロックアームの変形を防止するための変形防止機構を設けたことを特徴とする電線カバーの係止構造。
【請求項2】
前記変形防止機構が、前記ロックアームに形成され前記回転力による変位方向に対して傾斜した当接面を有する突起と、前記突起を収容可能な凹部として前記ロック爪に形成され前記突起の前記当接面と係合する傾斜した当接面を有する内方広がり形状の突起収容部とからなることを特徴とする請求項1に記載した電線カバーの係止構造。
【請求項3】
前記変形防止機構が、前記ロック爪に形成され前記回転力による変位方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜突起と、前記ロックアームに形成され前記傾斜突起の前記傾斜面に摺接するガイド部と、前記ガイド部により案内される前記ロックアームの移動を制限する当接突部とからなることを特徴とする請求項1に記載した電線カバーの係止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−41443(P2008−41443A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214586(P2006−214586)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】