説明

電線分別装置

【目的】 分別される電線14のサイズが変更された場合に容易に対応できる電線分別装置10を提供する。
【構成】 電線切込部12に電線ガイド体が回転操作自在に備えられ、該電線ガイド体に径の異なる複数種類の電線貫通孔が電線ガイド体の回転軸心方向に沿って設けられる。各電線貫通孔にそれぞれその径方向に出退調整自在に切断刃が備えらる。各電線貫通孔が電線ガイド体の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置される。電線切込部12で切り込みが施された電線14を芯線部14aと被覆部14bに分離する電線分離体39が備えられる。電線分離体39に、電線14の芯線部14aが挿通される芯線挿通孔と、該芯線挿通孔の芯線部挿入端部側より漸次径大に形成された円錐状の分離部とが備えられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、不良となった電線等を芯線部と被覆部とに分別するための電線分別装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、外径等が規格範囲に納まっていない不良の電線や、製造の開始から規格範囲内に納まるまでに製造された口出しの電線等は、電線分別装置により銅線等からなる芯線部と樹脂層からなる被覆部とに分別し、資源の再利用等が図られていた。
【0003】そして、前記電線分別装置としては、図7に示される如く、電線供給部1から順次供給されてくる電線2の被覆部2aに対して、電線切込部3でその電線2の長手方向に沿った切り込みを施し、その切り込み部分を利用して電線2の芯線部2bと被覆部2aとに順次分離し、芯線部2bは巻取り装置4に順次巻き取られ、被覆部2aは送りローラ5により芯線部2bに対して上下に分離されながら送り出されるように構成されていた。
【0004】また、異なるサイズの電線2を分別する場合には、図8に示される如く、電線切込部3の電線2を挟持状に案内する上下のガイドローラ6を電線2の外径に適合させるべく上下方向に調整すると共に、被覆部2aに切り込みを入れる切断刃7を備えた左右の刃保持体8を電線2の被覆部の厚みに適合させるべく左右方向に調整することによって対応していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の電線分別装置の構造によれば、分別される電線2のサイズが変更された場合に、各ガイドローラ6や各刃保持体8をそれぞれ調整する必要があり、また、その際における各ガイドローラ6や各刃保持体8の微調整が難しく、調整が面倒な作業となっていた。
【0006】そこで、本発明は上記問題点に鑑み、分別される電線のサイズが変更された場合に容易に対応できる電線分別装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための技術的手段は、電線切込部に備えられた切断刃で、順次供給される電線の被覆部にその電線の長手方向に沿って切り込みを施し、その切り込み部分より電線の芯線部と被覆部とに順次分離する電線分別装置において、前記電線切込部に電線ガイド体が回転操作自在に備えられ、該電線ガイド体に径の異なる複数種類の電線貫通孔が電線ガイド体の回転軸心方向に沿って設けられ、各電線貫通孔にそれぞれその径方向に出退調整自在に切断刃が備えられてなる点にある。
【0008】また、前記各電線貫通孔を前記電線ガイド体の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置する構造としてもよい。
【0009】さらに、前記電線切込部で切り込みが施された電線を芯線部と被覆部に分離する電線分離体を備える構造としてもよい。
【0010】また、前記電線分離体に、電線の芯線部が挿通される芯線挿通孔と、該芯線挿通孔の芯線部挿入端部側より漸次径大に形成された円錐状の分離部とが備えられてなる構造としてもよい。
【0011】そして、前記分離部の頂部を超硬合金としてもよい。
【0012】
【作用】本発明によれば、分別される電線のサイズが変更された場合、複数種類の電線貫通孔の中から電線サイズに適合する電線貫通孔を選択し、その電線の被覆部の厚さに対応するように切断刃をその電線貫通孔の径方向に出退調整するだけでよく、分別される電線のサイズの変更に対して容易に対応できる。
【0013】また、各電線貫通孔を電線ガイド体の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置する構造とすれば、分別される電線のサイズが変更された場合においても分別される電線の案内経路を同じに構成できる。
【0014】さらに、電線切込部で切り込みが施された電線を芯線部と被覆部に分離する電線分離体を備え、電線分離体に、電線の芯線部が挿通される芯線挿通孔と、該芯線挿通孔の芯線部挿入端部側より漸次径大に形成された円錐状の分離部とが備えられてなる構造とすれば、電線分離体の芯線挿通孔に挿通された芯線部を順次引き抜くことにより、円錐状の分離部で芯線部と被覆部とが自動的に分離されていく。
【0015】また、分離部の頂部を超硬合金とすれば、耐久性の向上が図れる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1および図2において、10は電線分別装置で、アングル材やパイプ材等で枠組み構成された架構体11と、架構体11の上端部側に備えられた電線切込部12および電線分離部13と、分別される電線14が巻かれた電線供給ドラム15等が設置されるサプライスタンド等を有する電線供給部16と、分別された芯線部14aを巻き取る芯線部巻取りドラム17等からなる芯線部巻取り装置18と、分別された被覆部14bを収容する被覆部収容容器19とを備えている。
【0017】前記電線切込部12は、図3ないし図5に示される如く、円柱状の電線ガイド体22を備え、該電線ガイド体22の中心には軸心方向のボルト挿通孔23が形成されている。そして、架構体11の上端部一端側に取り付けられた切込部取付ブロック24に形成された雌ネジ孔24aに螺合締結された六角穴付きボルト等よりなる支持ボルト25を介して取り付け固定され、この支持ボルト25を弛緩することによって、電線ガイド体22は支持ボルト25回り、即ち水平軸心回りに回転操作自在とされている。
【0018】また、電線ガイド体22には、径の異なる複数種類の電線貫通孔26が電線ガイド体22の軸心方向に沿ってそれぞれ形成されると共に、各電線貫通孔26は電線ガイド体22の回転軸心、即ち前記ボルト挿通孔23を中心とした同心円上に配置されている。
【0019】そして、各電線貫通孔26には、それぞれの電線貫通孔26の径方向で、かつ電線ガイド体22の径方向の適宜幅を有する割溝27が、電線ガイド体22の外周側より連通状に形成されている。
【0020】また、各割溝27の一方側端縁部に沿って、刃取付ブロック28が溶接等によりそれぞれ固着されており、各刃取付ブロック28には割溝27と連続状とされる刃取付凹部29が形成されている。
【0021】30は刃取付カバーで、前記刃取付ブロック28の刃取付凹部29に嵌合状とされる刃押さえ突部31を備え、切断刃32を刃取付凹部29に収容状とすると共に刃押さえ突部31を嵌合させた状態で、刃取付カバー30を刃取付ブロック28に六角穴付きボルト33等により締結することによって切断刃32を固定するように構成されている。この際、刃取付カバー30にはボルト33が挿通されるボルト挿通孔34が形成され、刃取付ブロック28の前記ボルト挿通孔34に対応する位置にはボルト33が螺合される雌ネジ孔35が形成されている。
【0022】また、刃取付ブロック28と刃取付カバー30によって挟持状に固定された各切断刃32は各割溝27を介して電線貫通孔26内に突出状とされると共に、各切断刃32の刃部32aは同一方向、即ち電線14が順次供給されてくる案内経路としての供給路の上流側に指向して取り付けられる。そして、各ボルト33を弛緩することにより、各切断刃32はそれぞれ電線貫通孔26の径方向に出退調整自在とされている。
【0023】さらに、図1および図2に示される如く、電線14の前記供給路における電線切込部12より上流側に位置して、電線供給ドラム15から供給される電線14を電線ガイド体22の所定の電線貫通孔26に円滑に案内すべく、電線案内筒36が支持アーム37を介して架構体11に取り付けられている。
【0024】前記電線分離部13は、図1に示される如く、電線14の前記供給路における電線切込部12より下流側に位置して備えられ、架構体11の上面側に上方突出状に固定された支持ブラケット38と該支持ブラケット38に取り付けられた電線分離体39とから構成されている。
【0025】この電線分離体39は、図6に示される如く、漸次径大に形成された円錐状の分離部40と該分離部40の径大側端面に設けられた雄ネジ部41とからなり、分離部40の頂部側から雄ネジ部41にわたって芯線部14aが挿通される芯線挿通孔42が形成されている。また、電線分離体39の分離部40頂部は超硬合金で構成され、他の部分は鉄で構成されている。
【0026】そして、支持ブラケット38に形成された雌ネジ孔(図示省略)に、電線分離体39の雄ネジ部41が螺合締結されることによって支持ブラケット38に着脱自在に取付固定されている。
【0027】また、各種径の芯線部14aに対応できるように、芯線挿通孔42の芯線部14a挿入端側の径が異なる複数種類の電線分離体39が予め準備されており、支持ブラケット38に取付固定された電線分離体39と適宜交換自在に構成されている。
【0028】本発明の実施例は以上のように構成されており、その使用に際しては、例えば、分別する電線14が巻かれた電線供給ドラム15を電線供給部16にセットする。
【0029】次に、電線切込部12の電線ガイド体22を支持ボルト25回りに回転操作して、分別する電線14のサイズ、いわゆる外径に適合する電線貫通孔26を選択して上側位置にセットした状態で支持ボルト25を締結する。そして、電線14の樹脂層等からなる被覆部14bの厚さに対応するように切断刃32をその電線貫通孔26の径方向に出退調整した後、各ボルト33を締結する。
【0030】また、分別する電線14の銅線等からなる芯線部14aの径に適合する芯線挿通孔42を有する電線分離体39を選択して支持ブラケット38に取付固定する。例えば、芯線部14aの外径より0.2mm程度大きな内径の芯線挿通孔42を有する電線分離体39を取付固定すればよい。
【0031】そして、電線供給ドラム15から引き出された電線14を電線案内筒36を挿通させた後、電線ガイド体22の前記セットされた上側位置の電線貫通孔26に挿通させる。この際、切断刃32の刃部32aによって電線14の被覆部14bに切り込みが自動的に施される。
【0032】その後、切り込み部分を利用して電線14の芯線部14aと被覆部14bとを分離させ、芯線部14aを電線分離体39の分離部40頂部側より芯線挿通孔42に挿入し、その挿入端側を芯線部巻取りドラム17に巻き付ける。この際、電線14の被覆部14bは分離部40で分離されて下方に落下する。
【0033】この状態で、芯線部巻取りドラム17を回転駆動させれば、順次芯線部14aが芯線部巻取りドラム17に巻取られていく。そして、この巻取りによって、電線供給ドラム15側から順次電線14が供給される。また、この電線14の供給により、電線切込部12位置で、切断刃32により電線14の被覆部14bに長手方向に沿って順次切り込みが施され、電線分離部13位置で、分離部40により強制的に芯線部14aと被覆部14bとが分離される。
【0034】また、分離された被覆部14bは被覆部収容容器19内に落下していき、回収される。
【0035】次に、分別される電線14のサイズが変更された場合には、支持ボルト25を弛緩して、その電線14の外径に適合する電線貫通孔26を選択して上側位置にセットした状態で支持ボルト25を締結する。そして、電線14の被覆部14bの厚さに対応するように切断刃32をその電線貫通孔26の径方向に出退調整した後、各ボルト33を締結する。
【0036】また、分別する電線14の芯線部14aの径に適合する芯線挿通孔42を有する電線分離体39を選択して支持ブラケット38に取付固定する。その後は上記と同様である。
【0037】以上のように、分別される電線14のサイズが変更された場合であっても、複数種類の電線貫通孔26の中から電線14の外径に適合する電線貫通孔26を選択してセットし、その電線14の被覆部14bの厚さに対応するように切断刃32を径方向に出退調整するだけでよく、調整作業が容易となる。また、電線分離体39を電線14の芯線部14aの径に対応する芯線挿通孔42を有する電線分離体39に交換すればよい。ここに、分別される電線14のサイズの変更に対して容易に対応できる。
【0038】また、各電線貫通孔26が電線ガイド体22の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置されているため、分別される電線14のサイズが変更された場合においても分別される電線14の案内経路を同じに構成できる。
【0039】さらに、漸次径大に形成された円錐状の分離部40を備えた電線分離体39が設けられているため、電線分離体39の芯線挿通孔42に挿通された芯線部14aを順次引き抜くことにより、円錐状の分離部40で芯線部14aと被覆部14bとを自動的に分離でき、芯線部14aと被覆部14bの分離のための構造の簡素化が図れる。
【0040】また、分離部40の頂部が超硬合金で構成されているため、耐久性に優れる利点もある。
【0041】なお、電線14の外径サイズに応じて被覆部14bの厚さが予め決まっていれば、各電線貫通孔26の内径に応じて各切断刃32の出退量を予め調整しておけば、分別される電線14のサイズの変更に際しては、単に各電線貫通孔26の中から適合する電線貫通孔26を回転操作により選択してセットするだけでよく、サイズ変更の都度の切断刃32の出退調整が不要となり、より容易に対応できる。
【0042】また、各電線貫通孔26を電線ガイド体22の回転軸心を中心とした同心円上に配置した構造とし、刃取付ブロック28、刃取付カバー30等も同一部品を使用すれば、同じ長さの切断刃32を各刃取付ブロック28の同じ位置に取り付けた場合、各電線貫通孔26の中心から同じ距離だけ離れた位置に切断刃32の挿入端位置が位置し、切断刃32のセットの容易化が図れる。
【0043】さらに、電線分離体39の分離部40頂部側は、分離作用の都合上、角張って構成されていることがより好ましい。
【0044】
【発明の効果】以上のように、本発明の電線分別装置によれば、電線切込部に電線ガイド体が回転操作自在に備えられ、該電線ガイド体に径の異なる複数種類の電線貫通孔が電線ガイド体の回転軸心方向に沿って設けられ、各電線貫通孔にそれぞれその径方向に出退調整自在に切断刃が備えられてなるものであり、分別される電線のサイズが変更された場合、複数種類の電線貫通孔の中から電線サイズに適合する電線貫通孔を選択し、その電線の被覆部の厚さに対応するように切断刃をその電線貫通孔の径方向に出退調整するだけでよく、分別される電線のサイズの変更に対して容易に対応できる利点がある。
【0045】また、各電線貫通孔を電線ガイド体の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置する構造とすれば、分別される電線のサイズが変更された場合においても分別される電線の案内経路を同じに構成できる利点がある。
【0046】さらに、電線切込部で切り込みが施された電線を芯線部と被覆部に分離する電線分離体を備え、電線分離体に、電線の芯線部が挿通される芯線挿通孔と、該芯線挿通孔の芯線部挿入端部側より漸次径大に形成された円錐状の分離部とが備えられてなる構造とすれば、電線分離体の芯線挿通孔に挿通された芯線部を順次引き抜くことにより、円錐状の分離部で芯線部と被覆部とを自動的に分離できる利点がある。
【0047】また、分離部の頂部を超硬合金とすれば、耐久性の向上が図れる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図2】同左側面図である。
【図3】電線切込部の要部断面図である。
【図4】図3のIVーIV線矢視図である。
【図5】切断刃取付部分の分解図である。
【図6】電線分離体の半断面図である。
【図7】従来例を示す説明図である。
【図8】同電線切込部の説明図である。
【符号の説明】
10 電線分別装置
11 架構体
12 電線切込部
13 電線分離部
14 電線
14a 芯線部
14b 被覆部
22 電線ガイド体
25 支持ボルト
26 電線貫通孔
28 刃取付ブロック
30 刃取付カバー
32 切断刃
39 電線分離体
40 分離部
42 芯線挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電線切込部に備えられた切断刃で、順次供給される電線の被覆部にその電線の長手方向に沿って切り込みを施し、その切り込み部分より電線の芯線部と被覆部とに順次分離する電線分別装置において、前記電線切込部に電線ガイド体が回転操作自在に備えられ、該電線ガイド体に径の異なる複数種類の電線貫通孔が電線ガイド体の回転軸心方向に沿って設けられ、各電線貫通孔にそれぞれその径方向に出退調整自在に切断刃が備えられてなることを特徴とする電線分別装置。
【請求項2】 前記各電線貫通孔が前記電線ガイド体の回転軸心を中心とした同心円上にそれぞれ配置されてなることを特徴とする請求項1記載の電線分別装置。
【請求項3】 前記電線切込部で切り込みが施された電線を芯線部と被覆部に分離する電線分離体が備えられてなることを特徴とする請求項2記載の電線分別装置。
【請求項4】 前記電線分離体に、電線の芯線部が挿通される芯線挿通孔と、該芯線挿通孔の芯線部挿入端部側より漸次径大に形成された円錐状の分離部とが備えられてなることを特徴とする請求項3記載の電線分別装置。
【請求項5】 前記分離部の頂部が超硬合金とされてなることを特徴とする請求項4記載の電線分別装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【公開番号】特開平8−31250
【公開日】平成8年(1996)2月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−158949
【出願日】平成6年(1994)7月11日
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)