説明

電線又はケーブル

【課題】耐水性に優れた充填剤を配合したゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルを提供する。
【解決手段】導体又は電線コア外周上に、ゴム又はプラスチックと無機充填剤とを含有するゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルにおいて、前記無機充填剤が、式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を部分共加水分解、縮合する(Xがハロゲン原子の場合は、部分共加水分解、縮合後、アルコキシ化する)ことにより得られた脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理されたものである電線又はケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム又はプラスチック組成物を用いて導体又は電線コア外周に被覆層を形成した電線又はケーブルに関するものである。特に、本発明は耐水性に優れた電線又はケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線又はケーブルの絶縁被覆材料としては様々なゴム材料やプラスチック材料が用いられており、ゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、含ふっ素エラストマ共重合体(ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合体、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ふっ化ビニリデン−ペンタフルオロプロペン系共重合体、ふっ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−ふっ化ビニリデン系共重合体など)等があり、また、プラスチック材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等がある。
【0003】
これらのゴム又はプラスチックに無機充填剤を混和すると、ゴム、プラスチックと無機充填剤との界面のヌレが悪く、また結合しないため、耐水性が著しく低下する傾向にあった。また、無機充填剤を大量に混和すると無機充填剤の分散性が悪化し、機械的特性が著しく低下していた。
【0004】
耐水性や機械的特性の改善のため、無機充填剤の表面をビニルトリエトキシシランやトリス(メトキシエトキシ)ビニルシラン等のシランカップリング剤により処理することが提案されているが、このようなシランカップリング剤による表面処理では、処理剤が揮発して効果を十分に発揮することができないことや、疎水性が十分ではないため、耐水性や機械的特性が不足していた。
【0005】
また、ビニル基とアルキル基を持ったアルコキシ基含有シリコーン組成物としては、特開平5−194544号公報(特許文献1)において、下記式I及びII
【化1】


[式中、mは0〜8の整数を表し、nは2〜8の整数を表し、置換基Rはビニル基、メトキシ基及び/又はエトキシ基及び/又は場合により1〜18個のC原子を有するアルキル基、イソアルキル基又はシクロアルキル基からなり、その際、珪素原子1個当り多くとも1個のビニル基が登場し、ビニル基とアルコキシ基のモル比が1:1〜1:8であり、かつビニル基とアルキル基のモル比が1:0〜1:8である。]
で示される鎖状及び環状シロキサン又はシロキサンオリゴマーの混合物が開示されており、ケーブル絶縁材料の架橋剤に用いられているが、このような化合物を無機充填剤に処理して使用し、耐水性を向上させるような例示はなく、また、たとえ無機充填剤に処理して使用しても、開示されている化合物はビニル基に対し、アルコキシ基含有量が多いため無機充填剤の耐水性改良効果が低いものであることから改良が求められていた。
また、その他の先行技術として下記特許文献2〜6が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−194544号公報
【特許文献2】特開平5−239359号公報
【特許文献3】特開2001−64452号公報
【特許文献4】特開2001−114945号公報
【特許文献5】特開2002−513427号公報
【特許文献6】特開2005−248068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、前記した従来技術の欠点を解消し、耐水性に優れた無機充填剤を配合したゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、導体又は電線コア外周上に、ゴム又はプラスチックと無機充填剤とを含有するゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルにおいて、前記無機充填剤として、下記一般式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び下記一般式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を部分共加水分解、縮合することにより得られた脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理されたものを用いることにより、無機充填剤を多量に配合しても分散性に優れ、ゴム又はプラスチックと無機充填剤との濡れ性が良好で、耐水性に優れる電線又はケーブルが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示す電線又はケーブルを提供する。
〔請求項1〕
導体又は電線コア外周上に、ゴム又はプラスチックと無機充填剤とを含有するゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルにおいて、前記無機充填剤が、下記一般式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び下記一般式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を部分共加水分解、縮合する(但し、Xがハロゲン原子の場合は、部分共加水分解、縮合後、アルコキシ化する)ことにより得られた脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理されたものであることを特徴とする電線又はケーブル。
(R1)(R2)Si(X)2・・・(1)
(式中、R1は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、R2はR1以外の1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
(R3)Si(X)3・・・(2)
(式中、R3は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
〔請求項2〕
無機充填剤を表面処理するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和基含有基とアルコキシ基とのモル比(該不飽和基含有基/アルコキシ基)が1以上であり、脂肪族不飽和基含有基と炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基とのモル比(該不飽和基含有基/該1価炭化水素基)が1以上である請求項1記載の電線又はケーブル。
〔請求項3〕
前記ゴム又はプラスチックが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1又は2記載の電線又はケーブル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被覆層中のゴム又はプラスチックと無機充填剤が均一に分散し、強固に結合しているため、機械的特性、耐水性に優れた電線又はケーブルが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、ゴム又はプラスチックとしては、特に限定するものではないが、ゴム系材料としては、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリイソプレン、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、含ふっ素エラストマ共重合体(ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン系共重合体、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ふっ化ビニリデン−ペンタフルオロプロペン系共重合体、ふっ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−ふっ化ビニリデン系共重合体など)等が挙げられる。プラスチック系材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル変性ポリ塩化ビニル、ポリふっ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシふっ素樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体、1−ジヒドロパーフルオロプロペン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミドエラストマ、ポリカーボネート、変性ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリスルフォン、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体、メタクリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、オキシベンゾイルポリエステル、フェノール樹脂、ポリアセタール、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられ、これらを変性したものであってもよく、また、必要に応じて複数組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、特に、電子線照射架橋による架橋により特性が良好であり、安価で製造が可能であることから、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体が好ましい。
【0012】
本発明において、無機充填剤としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトの如き一般の充填剤、チャネルブラック、ファーネスブラック(SAF系、HAF系、FEF系、SRF系、GPE、ECF等)、サーマルブラック(FT、MT、アセチレンブラック等)に代表されるカーボンブラック、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の酸化物、水酸化物、炭酸化合物、硫化物、硝酸化物、塩化物等が挙げられる。中でもタルク、クレー、炭酸カルシウムは、熱的安定性が良好で、多量に配合しても耐熱老化特性の低下が少ない点で好ましい。
【0013】
無機充填剤の平均粒径は、大きすぎると絶縁破壊電圧が低下し、小さすぎると耐熱性が低下する傾向にあるので、6μm以下、より好ましくは0.01〜6μm、特に0.1〜3μmのものを使用することが好ましい。なお、本発明において、平均粒径は、レーザー回折法により測定できる。
【0014】
無機充填剤は、ゴム又はプラスチック100質量部に対して5〜200質量部配合することが好ましく、特に20〜120質量部配合することが好ましい。5質量部より少ないと性能向上の効果を得ることが困難となる場合があり、200質量部より多いと機械的特性が低下する傾向にある。
【0015】
本発明においては、ゴム又はプラスチックに、後述する特定のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理した無機充填剤を配合することにより、無機充填剤がゴム又はプラスチック中に均一に分散され易くなり、多量に配合しても機械的特性の低下を抑止できる。即ち、ゴム又はプラスチック中に無処理の無機充填剤を配合した場合、ゴム又はプラスチックと無機充填剤とが親和性に乏しいため、無機充填剤が凝集したり、またゴム又はプラスチックと無機充填剤とが反応しないため、ゴム又はプラスチック界面に水分が浸入することで耐水性が悪化したりして機械的特性が低下する原因になっていたが、特定のアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理した無機充填剤を配合すると、無機充填剤表面が有機材料(ゴム又はプラスチック)と親和性の高い有機基で覆われ、これは後述するように有機官能基としてビニル基を持っているため、ゴム又はプラスチックと反応が可能となり、機械的特性の低下を抑止することができる。更に該オルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基により無機充填剤表面が疎水化されるため、もっとも吸湿の影響を受け易いゴム又はプラスチックと無機充填剤界面の耐水性が向上することから、被覆層全体の耐水性を向上させることができる。
【0016】
なお、無機充填剤に処理するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンにおいて、アルコキシ基が作用する無機充填剤表面への反応性と、脂肪族不飽和基が作用するゴム又はプラスチックとの反応性と、脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基(特にアルキル基)が作用する無機質表面の疎水化度合いの比率は重要であり、これらの基の比率としては、脂肪族不飽和基含有基とアルコキシ基とのモル比(該不飽和基含有基/アルコキシ基)が1以上となるようにすることが好ましく、更に好ましくは1よりも大きく1.5以下であり、更に脂肪族不飽和基含有基と炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基(特にアルキル基)とのモル比(該不飽和基含有基/該1価炭化水素基)が1以上となるように設計することが好ましく、更には1よりも大きく4以下であることがより好ましい。不飽和基含有基/アルコキシ基が1未満ではゴム又はプラスチックと無機充填剤との反応が不十分となったり、無機充填剤の分散性が不十分となり、ゴムやプラスチックの機械的特性が不十分となる場合があり、不飽和基含有基/1価炭化水素基が1未満では無機充填剤の分散性は良好であるが、補強効果が不十分となり、ゴムやプラスチックの機械的特性が不十分となる場合がある。
【0017】
本発明において、無機充填剤表面を処理する脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)
(R1)(R2)Si(X)2・・・(1)
(式中、R1は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、R2はR1以外の1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び下記一般式(2)
(R3)Si(X)3・・・(2)
(式中、R3は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を部分共加水分解、縮合する(但し、Xがハロゲン原子の場合は、部分共加水分解、縮合後、アルコキシ化する)ことにより得られるものである。このアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで処理することで、優れた特性をもたらすものである。
【0018】
下記一般式(1)
(R1)(R2)Si(X)2・・・(1)
で表される有機官能基含有シランにおいて、R1は、脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、R2は、炭素数1〜3の1価炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示している。
【0019】
式(1)中、R1の脂肪族不飽和基含有基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、ビニロキシプロピル基、アリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシメチル基等が例示される。これらの中で、原料の入手のし易さ、及び合成のし易さから、ビニル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基が好ましい。
また、R1の炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基としては、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−デシル基等のアルキル基などが例示される。これらの中で、原料の入手のし易さ、及び合成のし易さから、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が好ましく、特にn−プロピル基が好ましい。
【0020】
2のR1以外の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0021】
式(1)で表される有機官能基含有シランの具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、i−ブチルメチルジメトキシシラン、n−ヘキシルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、i−ブチルメチルジエトキシシラン、n−ヘキシルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−プロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0022】
下記一般式(2)
(R3)Si(X)3・・・(2)
で表される有機官能基含有シランにおいて、R3は、脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0023】
式(2)中、R3の脂肪族不飽和基含有基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、ビニロキシプロピル基、アリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシメチル基等が例示される。これらの中で、原料の入手のし易さ、及び合成のし易さから、ビニル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基が好ましい。
また、R3の炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基としては、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−デシル基等のアルキル基などが例示される。これらの中で、原料の入手のし易さ、及び合成のし易さから、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基が好ましく、特にn−プロピル基が好ましい。
【0024】
Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0025】
式(2)で表される有機官能基含有シランの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−プロピルトリクロロシラン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明で使用するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を必須原料とし、これらを部分共加水分解、縮合させて製造することができる。但し、Xがハロゲン原子の場合は、部分共加水分解、縮合させた後、アルコールと反応させる等の公知の方法によりアルコキシ化する必要がある。
【0027】
ここで、式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物と、式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物の使用割合としては、得られるアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンが脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するように選択すれば特に制限はないが、好ましくは式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物1モルに対して式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物が1モル以上、特に1.1〜3モルとすることが好ましい。また、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和基含有基とアルコキシ基とのモル比(該不飽和基含有基/アルコキシ基)が1以上であり、脂肪族不飽和基含有基と炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基とのモル比(該不飽和基含有基/該1価炭化水素基)が1以上であることが好ましい。
【0028】
加水分解、縮合を行う方法としては特に限定されず、従来公知の方法に基づき、例えば、上記した式(1)で表される有機官能基含有シラン及び式(2)で表される有機官能基含有シランあるいはこれらの(部分)加水分解縮合物を、加水分解・縮合反応触媒の存在下、水を加えて部分加水分解及び重縮合反応を行うことによって得ることができ、この際、必要に応じて適当な有機溶媒を使用することも可能である。
【0029】
使用される加水分解・縮合反応触媒としては、従来公知の種々のものを使用することができる。具体例としては、酢酸、トリフロロ酢酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類、ふっ化カリウム、ふっ化アンモニウムなどの含ふっ素化合物類、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジオクチル錫ジラウレート、アルミニウムキレート類などの有機金属化合物類などを挙げることができる。上記触媒は単独で使用してもよく、又は複数種を併用してもよいが、触媒の使用量は、原料全体の中に存在するSi原子モル数に対して0.0001〜10モル%の範囲とすることが好ましく、更には0.001〜3モル%の範囲とすることがより好ましい。
【0030】
また、共加水分解、縮合の際に、式(1)で表される有機官能基含有シラン及び式(2)で表される有機官能基含有シランあるいはこれらの(部分)加水分解縮合物以外の原料を、性能を損なわない程度に、更に使用することも可能であり、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの使用量は、式(1)で表される有機官能基含有シラン及び式(2)で表される有機官能基含有シランあるいはこれらの(部分)加水分解縮合物の合計100モル%に対して50モル%以下、特に20モル%以下である(この場合、(部分)加水分解縮合物はシラン換算として計算するものとし、例えば5量体であればシラン5モルとする。)。
【0031】
また、有機官能基含有シランのXがハロゲン原子の場合には、アルコキシ化が必要であるが、アルコキシ化の方法は従来知られている方法で行えばよく、例えば、部分共加水分解、縮合したオルガノポリシロキサンに、メタノールやエタノール等のアルコールを加え、脱ハロゲン化反応すればよく、その際、脱ハロゲン化剤として、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類や尿素等を使用してもよい。また、ソディウムメチラートやソディウムエチラート等を加えて脱塩反応を行うことでもアルコキシ化は可能である。
更に、このアルコキシ化反応は、加水分解縮合反応と同時に行ってもよい。
【0032】
本発明に使用するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンの重合度は任意であるが、ケイ素原子5個程度からケイ素原子100個程度のポリマーであることが好ましく、無機材料への反応性や処理のし易さから、ケイ素原子5個程度からケイ素原子30個程度のシリコーンオリゴマーであることがより好ましく、更に好ましくはケイ素原子5個程度からケイ素原子20個程度のシリコーンオリゴマーである。重合度が大きすぎると作業性や処理効率が低下することがある。
【0033】
この重合度は、共加水分解、重縮合に使用する水の量によって平均重合度が決まる。水を過剰に添加するとその分のハロゲン原子やアルコキシ基が加水分解され、分岐構造の多いレジン体となって、目的とするアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンが得られなくなるため、加水分解水量は厳密に決定する必要がある。例えば、使用するシラン原料が全てケイ素原子1個のモノマーである場合、平均重合度Zのオルガノポリシロキサンを調製するためには、Zモルのシラン原料に対して(Z−1)モルの水を使用して共加水分解、重縮合を行えばよい。
【0034】
この際、必要に応じてアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類などの有機溶媒を使用してもよい。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などを挙げることができる。また、上記溶媒と共に、ヘキサン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒を併用してもよい。特に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を使用することが好ましい。
【0035】
有機溶媒の使用量は、原料となるシラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物の合計100質量部に対して、0〜1,000質量部の範囲とすることが好ましく、使用量が少ないと加水分解開始時の反応系が均一とならない場合があり、多すぎてもそれ以上の添加効果が見られないばかりか、ポットイールドが低下して経済的に不利となるため、10〜500質量部の範囲とすることがより好ましく、更に15〜200質量部の範囲とすることが好ましい。
【0036】
部分(共)加水分解、重縮合反応における実際の操作例としては、シラン原料、触媒及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水あるいは水/有機溶媒の混合溶液を滴下するか、シラン原料及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水/触媒の混合溶液あるいは水/触媒/有機溶媒の混合溶液を滴下することが好ましい。反応は0〜150℃の温度範囲で実施すればよいが、一般的には、室温より低い温度では反応の進行が遅くなるため実用的でなく、また高温すぎる場合、不飽和基が重合し、架橋反応が生じ増粘したり、ゲル状物となったり有機官能基への悪影響が発生するため、20〜130℃の温度範囲とすることが好ましい。反応後、使用した触媒の中和、吸着、濾過等による除去操作や、使用した有機溶媒と副生したアルコール、低沸点物の留去などによる精製工程を行い、目的とする本発明で使用するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0037】
このようにして得られた脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンは、揮発性の高い不飽和基含有アルコキシシラン化合物含有量が少ないことから揮発性が低く、無機充填剤に処理した際に揮発によるロスがなく、分子内に加水分解性アルコキシ基を有していることから、無機充填剤に含まれる水分あるいは空気中の湿気によって加水分解し、無機充填剤に強固に結合できる。更に、不飽和基を有していることからゴム又はプラスチックと混練し、電子線等で架橋した際には、ゴム又はプラスチックと反応でき、結果的にゴム又はプラスチックと無機充填剤が強固に結合できるものである。
【0038】
無機充填剤を本発明のオルガノポリシロキサンで表面処理する方法は、特に限定されるものではなく、例えば湿式ブレンドのスラリー法、ドライブレンド式のヘンシェルミキサ法等を用いることができる。
また、上記オルガノポリシロキサンの表面処理量は、無機充填剤100質量部に対して0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%とすることが好ましい。
【0039】
本発明においては、無機充填剤のほかに、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、安定剤、顔料、表面処理剤等を適宜必要に応じて適量ずつ配合することができる。架橋剤や架橋助剤を配合したときには、加熱架橋、電離放射線照射架橋等により架橋することができる。なお、非架橋であってもよい。
【0040】
本発明の電線又はケーブルは、導体又は電線コア外周上に、上記ゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成されてなるものであり、該被覆層を形成する方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば押出し被覆成形装置を用いて被覆することができる。
被覆層の厚さは、電線やケーブルの形状や大きさにより適宜選択すればよく、通常0.1〜10mm程度である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を合成例、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を意図するものに過ぎない。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されることはない。
【0042】
<合成例1>
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、ビニルメチルジエトキシシラン160g(1.0mol)、プロピルトリエトキシシラン103g(0.5mol)及びエタノール92g(2.0mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を撹拌しながら、0.05N塩酸水溶液24g(1.33mol)とエタノール46g(1.0mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
次いで、ふっ化カリウムの1質量%エタノール溶液11.2g(KF:1.92×10-3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、減圧下内温100℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサンを得た(収量:156g、収率:95.2%)。
このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量は、900であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)分析を行った結果、ビニル基とエトキシ基とのモル比(ビニル基/エトキシ基)は、6.0/5.0であり、ビニル基とプロピル基とのモル比(ビニル基/プロピル基)は、6.0/3.0であった。
【0043】
<合成例2〜6>
合成例1におけるシランの種類、水の添加量を変えて、表1に示す組成のオルガノポリシロキサンを得た。
【0044】
【表1】

【0045】
<実施例1>
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(日本合成ゴム(株)製、EP−1)を100質量部、架橋剤のジクミルパーオキサイドを2質量部、酸化防止剤のイルガノックス1010(チバガイギー社商品名)を0.2質量部、滑剤のステアリン酸を1質量部、無機充填剤として合成例1のオルガノポリシロキサン1質量%をドライブレンド法で表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部それぞれ秤量し、これらを容量60mlの小型ミキサに投入し、120℃で混練りしてコンパウンドを得た。
上記コンパウンドを、180℃に保持したプレスを用い、100気圧で10分間加圧架橋して厚さ1mm(10cm×10cm)の架橋シートを作製した。
【0046】
<実施例2〜6>
無機充填剤として、表1の合成例2〜6のオルガノポリシロキサン1質量%でそれぞれ表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例1と同様にして架橋シートを作製した。
【0047】
<比較例1>
無機充填剤として、未処理の平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例1と同様にして架橋シートを作製した。
【0048】
<比較例2>
無機充填剤として、ビニルトリエトキシシラン1質量%で表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例1と同様にして架橋シートを作製した。
【0049】
<比較例3,4>
無機充填剤として、表1の比較合成例1,2のオルガノポリシロキサン1質量%でそれぞれ表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例1と同様にして架橋シートを作製した。
【0050】
<実施例7>
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体に代えてエチレン−酢酸ビニル共重合体(三菱化学(株)製、X−501)を使用した以外は実施例1と同様にして架橋シートを作製した。
【0051】
<実施例8〜12>
無機充填剤として、表1の合成例2〜6のオルガノポリシロキサン1質量%でそれぞれ表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例7と同様にして架橋シートを作製した。
【0052】
<比較例5>
無機充填剤として、未処理の平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例7と同様にして架橋シートを作製した。
【0053】
<比較例6>
無機充填剤として、ビニルトリエトキシシラン1質量%で表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例7と同様にして架橋シートを作製した。
【0054】
<比較例7,8>
無機充填剤として、表1の比較合成例1,2のオルガノポリシロキサン1質量%でそれぞれ表面処理した平均粒径0.8μmのミストロンベーパータルクAを60質量部使用した以外は実施例7と同様にして架橋シートを作製した。
【0055】
表2,3は、実施例1〜12及び比較例1〜8の各例の架橋シートについて無機充填剤分散性及び耐水性を評価した結果である。
【0056】
無機充填剤分散性は、架橋シートをミクロトームにて極薄切りし、断面を走査型電子顕微鏡で観察し、無機充填剤の凝集体の大きさが5μm未満のものを○、5〜10μmのものを△、10μmを超えるのものを×として判定した。
【0057】
耐水性は、50℃の温水中に60日間浸漬後の吸水量(質量%)を測定し、その値を示した。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体又は電線コア外周上に、ゴム又はプラスチックと無機充填剤とを含有するゴム又はプラスチック組成物による被覆層が形成された電線又はケーブルにおいて、前記無機充填剤が、下記一般式(1)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物、及び下記一般式(2)で表される有機官能基含有シラン及び/又はその(部分)加水分解縮合物を部分共加水分解、縮合する(但し、Xがハロゲン原子の場合は、部分共加水分解、縮合後、アルコキシ化する)ことにより得られた脂肪族不飽和基含有基及び炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を含有するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンで表面処理されたものであることを特徴とする電線又はケーブル。
(R1)(R2)Si(X)2・・・(1)
(式中、R1は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、R2はR1以外の1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
(R3)Si(X)3・・・(2)
(式中、R3は脂肪族不飽和基含有基又は炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
無機充填剤を表面処理するアルコキシ基含有オルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和基含有基とアルコキシ基とのモル比(該不飽和基含有基/アルコキシ基)が1以上であり、脂肪族不飽和基含有基と炭素数3〜10の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基とのモル比(該不飽和基含有基/該1価炭化水素基)が1以上である請求項1記載の電線又はケーブル。
【請求項3】
前記ゴム又はプラスチックが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1又は2記載の電線又はケーブル。

【公開番号】特開2011−18497(P2011−18497A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161359(P2009−161359)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】