説明

電線拘束具

【課題】簡単に安価に製作でき、高温でも性能を損なうことなく使用でき、被取付部への取り付けや取り外しが簡単にできる、電線拘束具を提供する。
【解決手段】細長い帯状のバネ材1の長手方向の端部同士を係脱自在に係合してバネ材1を環状とし、その内部を電線収容部(コード収容部2)とする電線拘束具(コードクランプC)である。バネ材1の中間部に外側に凸となり両脚片30が略V字状をなす固定用脚部3を屈曲形成し、該固定用脚部3は、幅を該固定用脚部3が取付けられる板状の被取付部4の取付用孔41の直径よりも短く形成すると共に、屈曲したバネ材1の自然状態において両脚片30の広がった端部が前記取付用孔41内に収まらない略V字状とし、両脚片30の広がった端部の幅方向の端縁に、バネ材1の長手方向の長さが前記被取付部4の厚みと略同じか若干長い長さの係合用切欠5を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にこんろ等の加熱調理器に取り付けられる、電線を拘束する電線拘束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、主にこんろ等の加熱調理器に、電線を拘束する電線拘束具を取り付けて使用されている。電線拘束具は、加熱調理器の筐体のように板状をした被取付部に取付用孔を貫通形成し、この取付用孔に取り付けるのであるが、例えば特許文献1に示されるように、電線拘束具として合成樹脂でコードクランプを製作する場合、コードクランプの取付用孔からの抜け止めのための形状として、多様な形態が選択できる。
【0003】
しかしながら合成樹脂により製作した場合、加熱調理器は高温になるため、熱変形したり軟化して十分な強度が得られず、高温での使用が困難なものであった。
【0004】
また、高温での使用を可能にするため、金属により電線拘束具を製作する場合、被取付部の取付用孔に取り付けた電線拘束具の抜け止めのための形状として、樹脂成形品のように複雑な形状にすることが困難であるため、ネジ止めにより固定するものが多く見受けられるが、取付用のネジが必要であると共に、取り付けや取り外しを行うためにドライバー等の工具が必要であった。
【特許文献1】特開2006−280096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、簡単に安価に製作でき、高温でも性能を損なうことなく使用でき、被取付部への取り付けや取り外しが簡単にできる、電線拘束具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、細長い帯状のバネ材1の長手方向の端部同士を係脱自在に係合してバネ材1を環状とし、その内部を電線収容部(コード収容部2)とする電線拘束具(コードクランプC)であって、バネ材1の中間部に外側に凸となり両脚片30が略V字状をなす固定用脚部3を屈曲形成し、該固定用脚部3は、幅を該固定用脚部3が取付けられる板状の被取付部4の取付用孔41の直径よりも短く形成すると共に、屈曲したバネ材1の自然状態において両脚片30の広がった端部が前記取付用孔41内に収まらない略V字状とし、両脚片30の広がった端部の幅方向の端縁に、バネ材1の長手方向の長さが前記被取付部4の厚みと略同じか若干長い長さの係合用切欠5を形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、一本の帯状のバネ材1からプレス加工により簡単に製作可能となる。また、金属製のバネ材1で形成することで、高温でも性能を損なうことなく使用することができる。また、電線拘束具を板状をした被取付部4に簡単に取り付けたり、取り外したりすることができる。電線拘束具を被取付部4の取付用孔41に取り付けた状態では、取付用孔41の内端縁が固定用脚部3の脚片30に形成した係合用切欠5内に挿入されて係合され、抜け止めがなされる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、バネ材1の長手方向の一端部を環状の内面側に屈曲させて係合部6を形成すると共に、他端部を環状の外面側に屈曲させて被係合部7を形成し、屈曲したバネ材1の自然状態において係合部6の外面6aが被係合部7の内面7aから離間して対向し、バネ材1を弾性変形させて係合部6の内面6bを被係合部7の外面7bに弾性力により圧接して係合するものであって、前記係合時に被係合部7の内面7aと対向する係合部6側の対向部分8を、係合部6からバネ材1の長手方向に間隔をあけた位置に形成して、前記係合時に被係合部7の内面7aと前記対向部分8との間に少なくとも拘束する電線の径よりも長い退避隙間9を形成して成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、被係合部7の内面7aと対向部分8との間に電線が位置している時に、対向部分8と被係合部7の内面7aとの間に電線が挟まって係合部6を被係合部7の外面7b側に移動させることができず係合ができない、といったことを防止することができ、作業性が良い。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、バネ材1を弾性変形させて被係合部7の内面7aと対向部分8とが当接した時に、固定用脚部3の両脚片30の広がった端部が取付用孔41内に収まるように、屈曲したバネ材1の自然状態を設定して成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、被係合部7を側方にずらして対向部分8を越えさせるという手間がなく、外側から挟む方向に力を加えるだけで取り外すことができて、取り外しが簡単にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電線拘束具は、簡単に安価に製作でき、高温でも性能を損なうことなく使用でき、被取付部への取り付けや取り外しが簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電線拘束具の一実施形態としてのコードクランプについて、添付図面に基づいて説明する。
【0014】
コードクランプCは、図1に示すように、細長い帯状のバネ材1を屈曲させて形成される。バネ材1は、曲げ方向の弾性を有する金属製の平板を、所定長さ及び所定幅の細長い帯状(矩形状)に切断すると共に、切断により切断部に形成されるバリやカエリが無いように処理された所謂「ラウンドエッジ材」であり、これにより、拘束するコード(電線)の合成樹脂製の被覆を損傷するのが防止される。
【0015】
バネ材1は、長手方向の両側の端部同士を係脱自在に係合して環状とし、環状となった際の内部を、コードが挿通してクランプ(拘束)されるコード収容部2(電線収容部)となるものである。便宜上、以下の説明では、環状となったバネ材1の内部側を内側、外部側を外側というものとする。
【0016】
バネ材1の中間部には、外側に凸となり且つ、両側の脚片30が略V字状をなす固定用脚部3を屈曲して形成している。更に説明すると、バネ材1の中間部を外側に凸となるように屈曲させて底頂部31を形成し、底頂部31から長手方向の両側に所定の間隔をあけた部分をそれぞれ内側に凸となるように屈曲させて側曲部32を形成し、底頂部31と両側の側曲部32との間の略平坦となった部分をそれぞれ脚片30としている。
【0017】
本実施形態では、バネ材1の固定用脚部3の両方の側曲部32からそれぞれ長手方向外側に所定の間隔をあけた部分を外側に凸となるように屈曲させて下角部12を形成し、側曲部32と下角部12との間の略平坦な部分を下片11とする。更に、バネ材1の両方の下角部12からそれぞれ長手方向外側に所定の間隔をあけた部分を外側に凸となるように屈曲させて上角部14を形成し、下角部12と上角部14との間の略平坦な部分を側片13とする。更に、バネ材1の両方の上角部14からそれぞれ長手方向外側の部分を上片15とする。更に、一方の上片15(図の右側の上片)の先端部を略環状の内面側に屈曲させて係合部6を形成し、他方の上片15(図の左側の上片)の先端部を略環状の外面側に屈曲させて被係合部7を形成する。便宜上、上記のように上下関係を規定する。
【0018】
これにより、バネ材1は自然状態(外力が加えられていない状態)において、図1に示すように、係合部6と被係合部7とが離間して開いた、環状に近い形状となる。
【0019】
また、バネ材1の自然状態から両側片13に外側から挟むように力を加えて弾性変形させ、被係合部7の外面7bと係合部6の内面6bとを対向させて前記力を解くと、バネ材1の復元力により被係合部7の外面7bに係合部6の内面6bが圧接して係合し、図2に示すように環状となり、内部に略矩形状をしたコード収容部2が形成される。本実施形態では、屈曲したバネ材1の自然状態において、被係合部7の内面7aが係合部6の外面6aから離間するのに加えて、被係合部7が係合部6よりも上方に位置しており、係合部6と被係合部7との係合時に、被係合部7の外面7bに係合部6の内面6bが圧接するだけでなく、両上片15が近接するような力が働き、係合が強固に保持される。
【0020】
ここで、係合部6と被係合部7とを係合させる際、両側片13の外側から挟む方向に力を加えるだけでは、係合部6の外面6aと被係合部7の内面7aとが当接して係合部6が被係合部7を乗り越えず、被係合部7の外面7b側に位置しないため、係合部6を被係合部7の上方にずらして乗り越えさせるか、あるいは側方(図の紙面に垂直な方向)にずらして乗り越えさせる。
【0021】
また、図2に示す係合状態を解除するには、バネ材1を弾性変形させて係合部6を被係合部7の上方か側方にずらして乗り越えさせれば、バネ材1の復元力により係合部6と被係合部7とが離間して開いた自然状態に戻る。
【0022】
コードクランプCは、板状をした被取付部4に取付けられる。被取付部4は、例えばこんろ等の加熱調理器の筐体のように所定厚みの板状をしたもので、略円形状をした取付用孔41が貫通形成してある。取付用孔41は、直径を固定用脚部3の脚片30の幅よりも大きく形成するもので、本実施形態ではバネ材1全体の幅よりも大きく形成してある。また本実施形態では、被取付部4をこんろ等の加熱調理器の筐体として説明しているが、加熱調理器の筐体に限定されず板状であればよく、特に、高温雰囲気に配置される板状のものであればよい。
【0023】
コードクランプCは、固定用脚部3が上記取付用孔41に挿入されて取り付けられるもので、固定用脚部3の両脚片30の広がった上端部近傍には、幅方向の両端縁にそれぞれ、バネ材1の長手方向の長さが被取付部4の板厚と略同じかそれより若干長い長さで、且つ、奥行き(バネ材1の幅方向)に所定の長さの係合用切欠5が形成してある。
【0024】
また固定用脚部3は、自然状態において、両脚片30の広がった上端部が取付用孔41内に収まらないように底頂部31の屈曲度合いが設定される。このためコードクランプCは、自然状態では固定用脚部3全体が挿入され得ないが、コードクランプCの両側片13を挟むような力を加えて底頂部31を更に屈曲させることで、略V字状をした両脚片30が近接して細い略V字状となり、図3に示すように両脚片30が取付用孔41の中心近くに位置して固定用脚部3全体が平面視で取付用孔41内に収まり、脚片30の略全長が取付用孔41に挿通される。
【0025】
そして、両脚片30の略全長を取付用孔41に挿通させた後、底頂部31を屈曲させる力を解くと、両脚片30は離間して該両脚片30の上端部が広がって取付用孔41の内端縁に向けて移動する。そして図4に示すように、係合用切欠5内に取付用孔41の内端縁が挿入されて係合し、被取付部4からの抜け止めがなされた状態となる。
【0026】
また、コードクランプCを被取付部4から取り外すには、両側片13を挟むような力を加えて底頂部31を更に屈曲させることで、図3に示すように固定用脚部3全体が取付用孔41内に収まり、係合用切欠5内への取付用孔41の内端縁の挿入による係合が解除されて、固定用脚部3が取付用孔41から抜いて取り外される。本実施形態では図3に示すように、バネ材1を弾性変形させて被係合部7の内面7aと対向部分8とが当接した時に、固定用脚部3の両脚片30の広がった端部が取付用孔41内に収まるように、屈曲したバネ材1の自然状態を設定しているため、被係合部7を側方にずらして対向部分8を越えさせたりすることなく、両側片13の外側から挟む方向に力を加えるだけで取り外すことができて、取り外しが簡単にできる。
【0027】
万一、バネ材1を弾性変形させて被係合部7の内面7aと対向部分8とが当接しても、固定用脚部3全体が取付用孔41内に収まらない場合には、被係合部7を側方にずらして対向部分8を越えさせて更に弾性変形させることで取り外せる。
【0028】
次に、コードクランプCへのコードCdのクランプについて説明する。
【0029】
上記のように被取付部4にコードクランプCを取り付け、係合部6と被係合部7との係合がせず外力が加わらない場合、復元力により係合部6と被係合部7が離間した開放状態となる。開放状態は、固定用脚部3の両脚片30の係合用切欠5と取付用孔41の内端縁とが係合して自然状態の場合よりも両脚片30が近接しているため、係合部6と被係合部7との間の距離が自然状態より短いものの離間していて、この隙間をコードCdが挿通してコード収容部2に収容される。
【0030】
次に、図5に示すように、係合部6と被係合部7とを係合させる。本実施形態では、コードクランプCの両方の側片13のうち、係合部6を設けた側の側片13(図の右側の側片)の長さを、被係合部7を設けた側の側片13(図の左側の側片)の長さよりも長く形成してある。また係合部6は上片15(図の右側の上片)から下方に屈曲し、被係合部7は上片15(図の左側の上片)から上方に屈曲している。このため、係合時に、被係合部7の内面7aと、該被係合部7の内面7aに対向する、係合部6を設けた側の側片13の上端部の対向部分8と、の間にコード収容部2と連通する退避隙間9が形成される。この退避隙間9は、係止時に、被係合部7の内面7aと対向部分8との間の距離を、少なくともクランプするコードCdの径よりも長く形成してあり、本実施形態のようにコードCd数本分の径の長さとするのが好ましい。
【0031】
この退避隙間9が無い場合、コードCdをコード収容部2に収容して、係合部6を被係合部7に係合させようとする際、係合部6を設けた側の側片13の前記対向部分8と被係合部7の内面7aとの間にコードCdが挟み込まれると、係合部6を設けた側の側片13を被係合部7側に移動させることができず、係合部6を被係合部7に係合させることができない。退避隙間9を設けたことで、係合部6を設けた側の側片13の前記対向部分8と被係合部7の内面7aとの間にコードCdが挟まるといった事態が発生し難く、作業性が良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態のコードクランプの自然状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図である。
【図2】同上のコードクランプの係合状態を示す正面図である。
【図3】同上のコードクランプを被取付部に取り付けて、被係合部を対向部分に当接させた状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】同上のコードクランプを被取付部に取り付けて係合した状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のA−A断面図である。
【図5】同上のコードクランプを被取付部に取り付けてコードをクランプした状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0033】
C コードクランプ
Cd コード
1 バネ材
11 下片
12 下角部
13 側片
14 上角部
15 上片
2 コード収容部
3 固定用脚部
30 脚片
31 底頂部
32 側曲部
4 被取付部
41 取付用孔
5 係合用切欠
6 係合部
6a 外面
6b 内面
7 被係合部
7a 内面
7b 外面
8 対向部分
9 退避隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い帯状のバネ材の長手方向の端部同士を係脱自在に係合してバネ材を環状とし、その内部を電線収容部とする電線拘束具であって、バネ材の中間部に外側に凸となり両脚片が略V字状をなす固定用脚部を屈曲形成し、該固定用脚部は、幅を該固定用脚部が取付けられる板状の被取付部の取付用孔の直径よりも短く形成すると共に、屈曲したバネ材の自然状態において両脚片の広がった端部が前記取付用孔内に収まらない略V字状とし、両脚片の広がった端部の幅方向の端縁に、バネ材の長手方向の長さが前記被取付部の厚みと略同じか若干長い長さの係合用切欠を形成して成ることを特徴とする電線拘束具。
【請求項2】
バネ材の長手方向の一端部を環状の内面側に屈曲させて係合部を形成すると共に、他端部を環状の外面側に屈曲させて被係合部を形成し、屈曲したバネ材の自然状態において係合部の外面が被係合部の内面から離間して対向し、バネ材を弾性変形させて係合部の内面を被係合部の外面に弾性力により圧接して係合するものであって、前記係合時に被係合部の内面と対向する係合部側の対向部分を、係合部からバネ材の長手方向に間隔をあけた位置に形成して、前記係合時に被係合部の内面と前記対向部分との間に少なくとも拘束する電線の径よりも長い退避隙間を形成して成ることを特徴とする請求項1記載の電線拘束具。
【請求項3】
バネ材を弾性変形させて被係合部の内面と対向部分とが当接した時に、固定用脚部の両脚片の広がった端部が取付用孔内に収まるように、屈曲したバネ材の自然状態を設定して成ることを特徴とする請求項2記載の電線拘束具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−48405(P2010−48405A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215862(P2008−215862)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】