説明

電線接続スリーブ、リペア電線、電線接続スリーブの製造方法、および電線の接続方法

【課題】電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、電線接続スリーブの一端に電線が予め圧着されてなるリペア電線、電線接続スリーブの製造方法、および電線の接続方法を提供する。
【解決手段】両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブ10であって、表面または裏面に凸部または凹部11が形成された金属板12を、前記凸部または凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。このような構成によれば、電線接続スリーブ10の内面に形成された凸部または凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を接続する電線接続スリーブ、リペア電線、電線接続スリーブの製造方法、および電線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両工場やディーラー等においてワイヤハーネスの取り回しの際に電線が切断されてしまった場合などには、その修繕をするために電線の継ぎ足しがなされることが多い。電線を継ぎ足す方法としては、金属製のシームレスパイプ(スリーブ)を用いて電線を接続する方法が知られている(例えば特許文献1)。この方法は、一方の電線の導体をスリーブの一端に挿入し、他方の電線の導体をスリーブの他端に挿入して、両電線の導体にスリーブを圧着させる方法である。
【特許文献1】特開2008−66034公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、導体とスリーブとの間に、導体の表面に形成された酸化皮膜が介在すると、導体とスリーブとの間の接触抵抗が大きくなって、電線の接続部分の接続信頼性が低下する傾向がある。
また、近年においては、主に自動車のワイヤハーネス等の分野で従来より一般的に用いられていた銅合金からなる導体に替えて、電線の軽量化等のため、アルミニウム合金からなる導体を用いることが多くなっている。アルミニウム合金は、銅合金に比べて酸化皮膜の除去が難しいという事情もあるため、導体の酸化皮膜を除去して電線の接続部分における接続信頼性を高めたいという要望が強くなっていた。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、リペア電線、電線接続スリーブの製造方法、および電線の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電線接続スリーブは、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、表面または裏面に凸部または凹部が形成された金属板を、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。
このような構成によれば、電線接続スリーブの両端に、一の電線の導体と他の電線の導体とをそれぞれ挿入して圧着させると、電線接続スリーブの内面に形成された凸部または凹部が導体の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブとが接触した状態になる。したがって、導体と電線接続スリーブとの間に酸化皮膜が介在している場合に比べて、導体と電線接続スリーブとの間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線の接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0006】
また、前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされているものとしてもよい。このような構成によれば、電線の導体を、折り返し部の両側に挿入して圧着することで、導体と電線接続スリーブとの接触面積を増やすことができるから、電線の接続部分における接続信頼性をより高めることができる。
【0007】
また、前記凸部または凹部は、前記金属板の巻き方向に延びる突条または溝であるものとしてもよい。
また、軸方向の中間部は、その開口寸法が、軸方向の両端の開口寸法に比べて小さくなるように潰された縮径部とされているものとしてもよい。
また、軸方向の中間部には、内側から外側に連通するスリットが形成されているものとしてもよい。
また、軸方向の一端には、電線を圧着するバレル部が備えられているものとしてもよい。
【0008】
本発明のリペア電線は、前記電線接続スリーブの軸方向の一端に、電線が予め圧着されてなる。
本発明の電線接続スリーブの製造方法は、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブの製造方法であって、金属板の表面または裏面に凸部または凹部を形成し、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして前記金属板を筒状に巻くことを経る。
【0009】
本発明の電線の接続方法は、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、表面または裏面に凸部または凹部が形成された金属板を、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである電線接続スリーブを使用し、一の電線と他の電線とを接続する電線の接続方法であって、前記電線接続スリーブの軸方向の両端に、前記一の電線の導体と前記他の電線の導体とをそれぞれ挿入して圧着することを経る。
【0010】
また、前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされており、前記一の電線の導体を前記折り返し部の両側のうち一方の側に挿入し、前記他の電線の導体を他方の側に挿入して圧着するものとしてもよい。これにより、折り返し部が仕切りとなり、一の電線と他の電線の導体同士が電線接続スリーブの内部で重なった状態で圧着することを防ぐことができるから、電線の導体と電線接続スリーブとの接触面積を確保することができる。
【0011】
また、前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされており、前記電線の導体を、前記折り返し部の両側に分断して挿入し圧着するものとしてもよい。これにより、電線の導体と電線接続スリーブとの接触面積が増えるから、接続信頼性を高くすることができる。
また、前記電線の導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線の接続部分における接続信頼性を高めることが可能な電線接続スリーブ、電線接続スリーブの一端に電線が予め圧着されてなるリペア電線、電線接続スリーブの製造方法、および電線の接続方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1について、図1〜図5を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態における電線接続スリーブ10は、一の電線20Aと他の電線20Bとを接続するものであり、両端が開口した筒状をなしている。
【0014】
電線接続スリーブ10は、図2に示すような、略矩形状をなす金属板12(例えば銅合金からなる金属板12に錫メッキが施されたもの)を、略円筒状に巻いてなるものである。金属板12の板面には、複数の凹部11が形成され、金属板12は、この凹部11が形成された面を内側にして巻かれている。電線接続スリーブ10の径寸法は、軸方向の全長にわたり略一定とされている。なお、図2には、金属板12の巻き方向を矢印で示した。
【0015】
凹部11は、金属板12の巻き方向に延びる溝、すなわち電線接続スリーブ10の周方向(電線接続スリーブ10に接続される電線20の軸方向に対して略直交方向)に延びる溝である。各凹部11は、金属板12の巻き方向の一端から他端にわたる長さ寸法を有し、複数の凹部11は、金属板12の板面の略全体に所定のピッチ(本実施形態では一定ピッチ)で並んで形成されている。凹部11の断面形状は、開口端縁にむかって幅寸法が少しずつ大きくなる略台形状をなしている。この凹部11が、電線接続スリーブ10の圧着に伴って電線20の導体21が食い込むセレーションを構成している。なお、図2を除く図面において、凹部11は省略されている。
【0016】
電線接続スリーブ10のうち金属板12の巻き方向における両端は、内側に折り返された折り返し部13とされている。折り返し部13は、互いに板面(凹部11が形成されている面とは反対側の面)を密着させた状態で電線接続スリーブ10を径方向に横切っており、両折り返し部13の先端は、ともに電線接続スリーブ10の内面に近接した状態、あるいは突き当たった状態になっている。
【0017】
この折り返し部13により、電線接続スリーブ10の内部は、軸方向の全体にわたり2つの空間(電線挿入空間14と称する)に仕切られている。折り返し部13を挟んで両側に位置する2つの電線挿入空間14は、略同等の広さの空間とされている。各電線挿入空間14は、電線接続スリーブ10の内面と折り返し部13の板面とにより囲まれ、この電線挿入空間14を囲む壁面には、略全体にわたり凹部11が形成されている。
【0018】
次に、電線接続スリーブ10の製造方法について説明する。
まず、金属板12の板面に凹部11を形成する。複数の突条が突出して設けられた金型(図示せず)により、金属板12をプレス加工することで凹部11を形成する。
次いで、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面が内側になるようにして、両端が開口した筒状に巻き、金属板12の巻き方向の両端を内側に折り返して、折り返し部13を形成する。
こうして、電線接続スリーブ10の製造が完了する。
【0019】
次に、電線接続スリーブ10を使用し、一の電線20Aと他の電線20Bとを接続する電線20の接続方法について説明する。
ここでは、一の電線20Aと他の電線20Bとが、ともにアルミニウム製又はアルミニウム合金製の多数本の素線を撚り合わせた導体21を絶縁被覆22で覆ってなるアルミ電線20である場合について説明する。なお、各電線20A,20Bの端末部は、絶縁被覆22が剥離されて導体21が露出している。
【0020】
まず、電線接続スリーブ10の両端に、一の電線20Aの導体21と他の電線20Bの導体21とをそれぞれ挿入する。このとき、一の電線20Aの導体21を、2つの電線挿入空間14のうち一方の電線挿入空間14に挿入し、他の電線20Bの導体21を他方の電線挿入空間14に挿入する。
【0021】
次いで、電線接続スリーブ10の中間部(電線接続スリーブ10の軸方向の中央から一の電線20Aの導体21と他の電線20Bの導体21とが配置されている領域を含む部分)を押し潰して、両電線20A,20Bの導体21に圧着させる(図4参照)。すると、両電線20A,20Bの導体21は、電線接続スリーブ10に押圧されてその内面および折り返し部13の板面に形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離し新生面が露出する。そして、この新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になり、電線20と電線接続スリーブ10とが電気的に接続される。こうして、一の電線20Aと他の電線20Bとが、電線接続スリーブ10を介して電気的に接続された状態になる。
【0022】
次に、電線接続スリーブ10の軸方向における一端に、電線20が予め圧着されてなるリペア電線30を用いた電線20の接続方法について説明する。なお、リペア電線30として用いられる電線20(予め圧着される一の電線20A)は、銅製または銅合金製の導体を有する銅電線であってもよく、また前記のようなアルミ電線であってもよい。
【0023】
リペア電線30は、図5に示すように、電線接続スリーブ10の軸方向における一端の開口に、電線20Aの導体21が挿入されて圧着されたものであり、この電線接続スリーブ10の軸方向における他端は、電線20が圧着されておらず、開口した状態になっている。
【0024】
一の電線20Aの導体21は、2つの電線挿入空間14のうち一方の電線挿入空間14に挿入されて圧着されている。このリペア電線30の電線接続スリーブ10のうち電線20の導体21が圧着された一端部は、押し潰されて扁平な形状をなしている。
【0025】
そして、電線接続スリーブ10のうち開口している他端から、2つの電線挿入空間14のいずれか一方に、リペア電線30に接続する他の電線20Bの導体21を挿入し、電線接続スリーブ10の他端部(他の電線20Bの導体21が配置された部分)をかしめ付けて導体21に圧着させる。すると、電線20Bの導体21は、電線接続スリーブ10に押圧されてその内面および折り返し部13の板面に形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離して新生面が露出し、この新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になり、電線20Bとリペア電線30とが電気的に接続される。こうして、他の電線20Bとリペア電線30とが、電気的に接続された状態になる。
【0026】
次に、上記のように構成された実施形態1の作用および効果について説明する。
本実施形態にかかる電線接続スリーブ10は、両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブ10であって、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。これにより、電線接続スリーブ10の両端に、一の電線20Aの導体21と他の電線20Bの導体21とをそれぞれ挿入して圧着させると、内面に形成された凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になる。したがって、導体21と電線接続スリーブ10との間に酸化皮膜が介在している場合に比べて、導体21と電線接続スリーブ10との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20A,20Bの接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0027】
また、金属板12の巻き方向の両端は、内側に折り返された折り返し部13とされ、一の電線20Aの導体21を折り返し部13の両側のうち一方の側に挿入し、他の電線20Bの導体21を他方の側に挿入して圧着している。これにより、折り返し部13が仕切りとなり、一の電線20Aと他の電線20Bの導体21同士が電線接続スリーブ10の内部で重なった状態で圧着することを防ぐことができる。すなわち各電線20A,20Bの導体21の全周に電線接続スリーブ10を圧着させることができるから、各電線20A,20Bの導体21と電線接続スリーブ10との接触面積を確保することができ、もって電線20A,20Bの接続部分における接続信頼性を高めることができる。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2に係る電線20の接続方法を図6〜図8によって説明する。
本実施形態の電線20の接続方法は、電線20の導体21を、折り返し部13の両側に分断して挿入し圧着する点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0029】
本実施形態に係る電線接続スリーブ10は、実施形態1と同様に、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。
【0030】
そして、以下のようにして一の電線20Aと他の電線20Bとを接続する。
まず、実施形態1と同様、電線接続スリーブ10の両端のうち一方に一の電線20Aの導体21を挿入するとともに、他方に他の電線20Bの導体21を挿入する。このとき、図6および図7に示すように、各電線20A,20Bの導体21を略半分ずつに分け、折り返し部13の両側の電線挿入空間14にそれぞれ挿入し、図8に示すように、電線接続スリーブ10の端部(導体21が挿入された部分)をそれぞれかしめ付けて各導体21に圧着させる。すると、各電線20A,20Bの導体21は、各電線挿入空間14に挿入された部分ごとに押圧され、電線接続スリーブ10の内面と折り返し部13の板面とに形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離し新生面が露出する。そして、この新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になり、電線20A,20Bと電線接続スリーブ10とが電気的に接続される。こうして、一の電線20Aと他の電線20Bとが、電線接続スリーブ10を介して電気的に接続された状態になる。
【0031】
以上説明したように実施形態2によれば、電線接続スリーブ10の両端に、一の電線20Aの導体21と他の電線20Bの導体21とをそれぞれ挿入して圧着させると、実施形態1と同様、内面に形成された凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ10とが接触した状態になるから、導体21と電線接続スリーブ10との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20の接続部分における接続信頼性を高める効果を得ることができる。
【0032】
また、電線20の導体21を、折り返し部13の両側(各電線挿入空間14)に分断して挿入し圧着することで、導体21と電線接続スリーブ10との接触面積を増やすことができ、もって電線20の接続部分における接続信頼性をより高めることができる。なお、このように導体21と電線接続スリーブ10との接触面積を増やすことができる構造は、電線20の径寸法が大きいものにおいて、接続信頼性を高める上で特に有利である。
【0033】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3に係る電線接続スリーブ40を図9によって説明する。
本実施形態の電線接続スリーブ40は、軸方向の中間部の開口寸法が軸方向の両端の開口寸法に比べて小さくなるように潰された縮径部41とされている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
電線接続スリーブ40は、実施形態1と同様に、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。
電線接続スリーブ40の軸方向における中間部は、その開口寸法が両端の開口寸法に比べて小さくなるように潰された縮径部41とされている。縮径部41においては、電線接続スリーブ40の内面と折り返し部13とが密着して閉じた(開口していない)状態になっている。
【0035】
この電線接続スリーブ40の軸方向の一端に、一の電線20Aが予め圧着されてなるリペア電線42を使用して、電線20を接続する場合について説明する。
一の電線20Aの導体21は、2つの電線挿入空間14のうち一方の電線挿入空間14に挿入されて圧着されており、電線接続スリーブ40の軸方向の他端は、実施形態1と同様、電線20が圧着されておらず、開口した状態になっている。このリペア電線42の電線接続スリーブ40のうち一の電線20Aの導体21が圧着された一端部は、押し潰されて扁平な形状をなしている。
【0036】
そして、電線接続スリーブ40のうち開口している他端から、2つの電線挿入空間14のいずれか一方に、リペア電線42に接続する他の電線20Bの導体21を挿入し、この他端部(他の電線20Bの導体21が配置された部分)をかしめ付けて導体21に圧着させる。すると、電線20Bの導体21は、電線接続スリーブ40に押圧されてその内面および折り返し部13の板面に形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離し新生面が露出し、この新生面と電線接続スリーブ40とが接触した状態になり、電線20Bとリペア電線42とが電気的に接続される。こうして、他の電線20Bとリペア電線42とが、電気的に接続された状態になる。
【0037】
以上説明したように実施形態3によれば、電線接続スリーブ40の端部に、電線20の導体21を挿入して圧着させると、実施形態1と同様、内面に形成された凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ40とが接触した状態になるから、導体21と電線接続スリーブ40との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20の接続部分における接続信頼性を高める効果を得ることができる。
【0038】
また、電線接続スリーブ40の中間部が縮径部41とされていることにより、この部分が電線接続スリーブ40の両端の間の仕切りとなるので、他の電線20Bの導体21を、一の電線20Aの導体21に接触させることなく、他端部内に保持することができる。
【0039】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4に係る電線接続スリーブ50を図10によって説明する。
本実施形態の電線接続スリーブ50は、軸方向の中間部に、電線接続スリーブ50の内側から外側に連通するスリット51が形成されている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
電線接続スリーブ50は、実施形態1と同様に、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。
電線接続スリーブ50の軸方向の中間部には、スリット51が形成されている。スリット51は、電線接続スリーブ50の軸方向の中間部を、周方向の一部分を残して切り欠かいてなり、スリット51の軸方向の幅寸法は、全体にわたり略一定とされている。このスリット51が設けられることで、電線接続スリーブ50の中間部は、一枚の板部52により構成されている。電線接続スリーブ50の一端部と他端部とは、それぞれ軸方向の両側に開口した形態をなしている。
【0041】
この電線接続スリーブ50の軸方向の一端に、一の電線20Aが予め圧着されてなるリペア電線53を使用して電線20を接続する場合について説明する。
電線接続スリーブ50のうち電線20Aの導体21が圧着された一端部には、一の電線20Aの導体21が、折り返し部13の両側(各電線挿入空間14)に分断して挿入され圧着されている。電線接続スリーブ50の一端部は、板部52の板面に対して略垂直方向に押し潰され、板部52の板面に対して略平行方向に扁平な形状をなしている。そして、電線接続スリーブ50の軸方向の他端は、実施形態1と同様、電線20が圧着されておらず、開口した状態になっている。
【0042】
電線接続スリーブ50のうち開口している他端から、他方の電線20Bの導体21を折り返し部13の両側(各電線挿入空間14)に分断して挿入し、この他端部(他の電線20Bの導体21が配置された部分)をかしめ付けて導体21に圧着させる。すると、電線20Bの導体21は、電線接続スリーブ50に押圧されてその内面および折り返し部13の板面に形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離し新生面が露出し、この新生面と電線接続スリーブ50とが接触した状態になり、電線20Bとリペア電線53とが電気的に接続される。こうして、他の電線20Bとリペア電線53とが、電気的に接続された状態になる。
【0043】
以上説明したように実施形態4によれば、電線接続スリーブ50の端部に、電線20の導体21を挿入して圧着させると、実施形態1と同様、内面に形成された凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ50とが接触した状態になるから、導体21と電線接続スリーブ50との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20の接続部分における接続信頼性を高める効果を得ることができる。
【0044】
また、電線接続スリーブ50の中間部にスリット51が設けられていることにより、電線20の導体21が電線接続スリーブ50に対して所定位置まで挿入したことを視認することができるから、電線20の導体21と電線接続スリーブ50との接触面積を確実に確保することができる。
【0045】
<実施形態5>
次に、本発明を具体化した実施形態5に係る電線接続スリーブ60を図11によって説明する。
本実施形態の電線接続スリーブ60は、その軸方向の一端に、電線20を圧着するバレル部61が備えられている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
電線接続スリーブ60は、実施形態1と同様に、板面に凹部11が形成された金属板12を、凹部11が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである。
この電線接続スリーブ60の軸方向における一端には、バレル部61が設けられている。バレル部61は、電線20の導体21に圧着する前の状態では、底板62の両側縁から一対のかしめ片63が所定間隔をあけて対向して起立した形状をなしている。
【0047】
この電線接続スリーブ60のバレル部に、一の電線20Aが予め圧着されてなるリペア電線64を使用して電線20を接続する場合について説明する。バレル部61は、両かしめ片63の先端が底板62側に屈曲されて、一の電線20Aの導体21の幅方向略中央位置に食い込むようにかしめ付けられている。電線接続スリーブ60は、電線20が圧着されておらず、開口した状態になっている。
【0048】
そして、電線接続スリーブ60の他端(バレル部61が設けられている側とは反対側の端)から、他方の電線20Bの導体21を折り返し部13の両側(各電線挿入空間14)に分断して挿入し、他の電線20Bの導体21が配置された部分をかしめ付けて導体21に圧着させる。すると、電線20Bの導体21は、電線接続スリーブ60に押圧されてその内面および折り返し部13の板面に形成された凹部11に落ち込み、導体21の表面に形成された酸化皮膜が凹部11の開口縁に擦られることで剥離して新生面が露出し、この新生面と電線接続スリーブ60とが接触した状態になり、電線20Bとリペア電線64とが電気的に接続される。こうして、他の電線20Bとリペア電線64とが、電気的に接続された状態になる。
【0049】
以上説明したように実施形態5によれば、電線接続スリーブ60に電線20の導体21を挿入して圧着させると、実施形態1と同様、内面に形成された凹部11が導体21の酸化皮膜を突き破って新生面を露出させ、新生面と電線接続スリーブ60とが接触した状態になるから、導体21と電線接続スリーブ60との間の接触抵抗を小さくすることができ、もって電線20の接続部分における接続信頼性を高める効果を得ることができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)上記実施形態では、金属板12の巻き方向の両端が内側に折り返されて折り返し部13とされているが、これに限らず、例えば一方の端のみ内側に折り返して折り返し部としてもよい。このときには、金属板のうち折り返し部となる部分の板面の両方に凸部または凹部を形成しておくのがよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、金属板12の巻き方向の両端が内側に折り返されて折り返し部13とされているが、これに限らず、例えば金属板の両端部が内外に重なるようにしてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、電線接続スリーブ10を用いて一のアルミ電線20Aと他のアルミ電線20Bとを接続する作業について説明したが、これに限らず、例えば銅製または銅合金製の導体を有する一の銅電線と他の銅電線とを接続してもよく、また、アルミ電線と銅電線とを接続してもよい。この場合においても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(4)上記実施形態では、凹部11は金属板12の板面の略全体に形成されているが、凹部または凸部は金属板の板面のうち少なくとも両端部(電線の導体に圧着される部分)のみに形成されていればよい。
【0055】
(5)上記実施形態では、金属板12の板面には、凹部11として金属板12の巻き方向に延びる溝が形成されているが、金属板の板面に形成する凸部または凹部はどのような形態であってもよく、例えば図12に示すように、金属板12の巻き方向に対して傾斜する方向に延びる複数の溝70が、並んで配置されたものであってもよい。
【0056】
(6)上記実施形態では、金属板12の板面には、凹部11として金属板12の巻き方向に延びる溝が形成されているが、金属板の板面に形成する凸部または凹部はどのような形態であってもよく、例えば図13に示すように、金属板12の巻き方向に対して傾斜する一の方向に延びる溝80と、金属板12の巻き方向に対して傾斜するとともに一の方向とは異なる他の方向に延びる溝81とが互いに交差するように形成されたものであってもよい。
【0057】
(7)上記実施形態では、金属板12の板面には、凹部11として金属板12の巻き方向に延びる溝が形成されているが、金属板の板面に形成する凸部または凹部はどのような形態であってもよく、例えば図14に示すように、複数のドット状をなす凹部90が、金属板12の巻き方向および巻き方向と直交方向に間隔を空けて並んで配置されたものであってもよい。
【0058】
(8)上記実施形態では、金属板12の板面には、凹部11として金属板12の巻き方向に延びる溝が形成されているが、金属板の板面に形成する凸部または凹部はどのような形態であってもよく、例えば図15に示すように、金属板の巻き方向と直交方向に並んで形成された一対の凹部100からなる凹部群101が、互いに間隔を空けて複数形成されたものであってもよい。
【0059】
(9)上記実施形態では、金属板12の板面には、凹部11として金属板12の巻き方向に延びる溝が形成されているが、金属板の板面に形成する凸部または凹部はどのような形態であってもよく、例えば図16に示すように、複数のドット状をなす凹部110が、金属板の巻き方向および巻き方向と直交方向に間隔を空けて並んで配置され、各凹部110の略中心位置に、凸部111を形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態1にかかる電線接続スリーブおよび電線の端末部を表す斜視図
【図2】金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【図3】電線を接続する前の状態を表す断面図
【図4】電線を接続した状態を表す断面図
【図5】リペア電線に電線を接続する前の状態を表す斜視図
【図6】実施形態2にかかる電線接続スリーブおよび電線の端末部を表す斜視図
【図7】電線を接続する前の状態を表す断面図
【図8】電線を接続した状態を表す断面図
【図9】実施形態3にかかるリペア電線に電線を接続する前の状態を表す斜視図
【図10】実施形態4にかかるリペア電線に電線を接続する前の状態を表す斜視図
【図11】実施形態5にかかるリペア電線に電線を接続する前の状態を表す斜視図
【図12】他の実施形態(5)にかかる金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【図13】他の実施形態(6)にかかる金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【図14】他の実施形態(7)にかかる金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【図15】他の実施形態(8)にかかる金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【図16】他の実施形態(9)にかかる金属板を巻く前の状態を表す斜視図
【符号の説明】
【0061】
10,40,50,60…電線接続スリーブ
11…凹部
12…金属板
13…折り返し部
20…電線
20A…一の電線
20B…他の電線
21…導体
30,42,53,64…リペア電線
41…縮径部
51…スリット
61…バレル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、
表面または裏面に凸部または凹部が形成された金属板を、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである電線接続スリーブ。
【請求項2】
前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされている請求項1に記載の電線接続スリーブ。
【請求項3】
前記凸部または凹部は、前記金属板の巻き方向に延びる突条または溝である請求項1または請求項2に記載の電線接続スリーブ。
【請求項4】
軸方向の中間部は、その開口寸法が、軸方向の両端の開口寸法に比べて小さくなるように潰された縮径部とされている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線接続スリーブ。
【請求項5】
軸方向の中間部には、内側から外側に連通するスリットが形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線接続スリーブ。
【請求項6】
軸方向の一端には、電線を圧着するバレル部が備えられている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線接続スリーブ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電線接続スリーブの軸方向の一端に、電線が予め圧着されてなるリペア電線。
【請求項8】
両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブの製造方法であって、
金属板の表面または裏面に凸部または凹部を形成し、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして前記金属板を筒状に巻くことを経る電線接続スリーブの製造方法。
【請求項9】
両端が開口した筒状をなす電線接続スリーブであって、表面または裏面に凸部または凹部が形成された金属板を、前記凸部または凹部が形成された面を内側にして筒状に巻いたものである電線接続スリーブを使用し、一の電線と他の電線とを接続する電線の接続方法であって、
前記電線接続スリーブの軸方向の両端に、前記一の電線の導体と前記他の電線の導体とをそれぞれ挿入して圧着することを経る電線の接続方法。
【請求項10】
前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされており、
前記一の電線の導体を前記折り返し部の両側のうち一方の側に挿入し、前記他の電線の導体を他方の側に挿入して圧着する請求項9に記載の電線の接続方法。
【請求項11】
前記金属板の巻き方向の両端のうち少なくとも一方の端は内側に折り返された折り返し部とされており、
前記電線の導体を、前記折り返し部の両側に分断して挿入し圧着する請求項9に記載の電線の接続方法。
【請求項12】
前記電線の導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の電線の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−176886(P2010−176886A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15496(P2009−15496)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】