説明

電線等の解体分別の装置及び方法

【課題】芯線の周りに線状体が巻回された同心より線を、2個の回転体と案内管とを用いて線状体を巻き戻して芯線を取り出すため解体分別装置において、高速で解体処理する場合であっても、円滑かつ効率的な解体作業を可能とする。
【解決手段】第1回転体10を前方に、第2回転体20を後方に設置するとともに、両回転体の間に案内管4を掛け渡し、さらに、両回転体に軸支される静止した巻き取り機構30を中間に設ける。モータ56により両回転体を線状体の巻回方向とは逆方向に同期して回転させ、芯線を巻き取り機構30の芯線巻き取りドラム33に巻き付け、線状体を両回転体の案内管4を通過させて、第2回転体20の後方で収束させる。このとき、案内管4の各々には複数の線状体を挿入して、互いに接触しながら通過させることにより、線状体の収束時に生じるたるみが吸収され、円滑な解体作業が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯線の周りに他の線状体が巻回された、例えば電線等の同心より線を解体し分別する装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品のリサイクル、つまり、廃棄する製品から使用可能な資源を回収し有効利用を図ることは、省資源あるいは環境問題への対処から各種の製品について要請されている。電線についてもその例外ではなく、耐用年数を経過した電線を交換するにあたり、回収した使用済み電線の再資源化は重要な課題である。電線のリサイクルは現実にも様々な形で実施され、また、効率的な再資源化に向けて、回収した電線を解体し材料別に分別するための技術開発も精力的に行われている。
【0003】
高圧送電線用に通常使用される鋼心アルミより線(ACSR)は、鋼の芯線の周りに多数のアルミ線をより線としたものである。このような電線においては、回収した使用済み鋼心アルミより線をリサイクルのため分別するには、一例として特開2002−100253号公報に開示されているように、電線を細かく切断し、切断した電線に振動等を与えてアルミ線と鋼線とを分離する方法がある。これにより、より線がばらばらとなり、その後電磁石を用いて鋼線とアルミ線を分別して回収することが可能であって、分別のためのコストは比較的低く、資源価値の大きいアルミニュウムを不純物の混在が殆どない状態で回収することができる。
【0004】
電線の中には、通信用の光ファイバを芯線に内蔵させ、周りにアルミ被覆鋼線等を巻回した光ファイバ複合架空地線(以下「OPGW」という。)と呼ばれる電線がある。OPGWは、例えば高圧送電線の鉄塔の最上部に敷設される避雷用の電線として用いられ、これを敷設することにより、エネルギ伝送のための送電システムが情報通信用にも利用されることとなる。図9に示されるとおり、OPGWの中心には光ファイバを収容するアルミ管が芯線として配置してあり、その周りをアルミ被覆の施された8本の鋼線(線状体)がより線となって取り巻いている。アルミ管の中にはU字状の3本の溝が形成された溝付アルミ線がはめ込まれており、各々のU字状の溝には3心、6心等多心の光ファイバケーブルが収納されている。OPGWの中には、アルミ被覆鋼線を多重に巻回したもの、鋼線とアルミ線を多重に巻回したものあるいは溝付アルミ線を備えていないものも存在する。このようなOPGWについても、耐用年数の経過したもの等は新しいOPGWと交換するため回収することとなる。
【0005】
回収した後のOPGWを再資源化するには、中心のアルミ管や溝付アルミ線を周囲のアルミ被覆鋼線と分別して取り出すことが必要である。しかし、上記の特許文献に示されるような方法を採用しOPGWを細かく切断した場合には、中心のアルミ管等に収容された光ファイバが同時に細かく切断され、その状態で分離されたアルミ管等の中に残存することとなる。短寸に切断された膨大な数のアルミ管等から光ファイバを効率よく分別するのは不可能であって、資源価値の高いアルミニュウムを不純物なく取り出すことが非常に困難である。したがって、回収したOPGWは、産業廃棄物として廃棄せざるを得ないのが現実であった。
【0006】
こうした状況を踏まえ、本出願人は、OPGW等の同心より線を解体し、中心のアルミ管等と周囲に巻回されたアルミ被覆鋼線等とを切断することなく分別するコンパクトかつ簡易な装置を開発して、先に特願2005−68490として出願した。この解体分別装置は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、その間に、2個の回転体に軸支される静止した巻き取り機構を配置する。2個の回転体の外周には、同心より線に巻かれた線状体の本数と等しい数の案内管が掛け渡され、これを通して線状体が後方に導かれる。2個の回転体は、線状体の巻き方向とは逆の方向に回転駆動され、これにより線状体が巻き戻されて、中心の芯線を巻き取り機構に巻き取ることができる。同心より線がOPGWである場合には、芯線のアルミ管をそのまま取り出すことが可能であり、取り出したアルミ管を長手方向に切開したり光ファイバを抜き取ったりすることにより光ファイバを分離し、アルミニュウムを不純物のない状態で容易に分別することができる。
つまり、この解体分別装置は、芯線及び線状体をそのままの状態で解体し分別して回収できるもので、本発明の基礎となる装置であることから、図4〜図7により、この解体分別装置の構成及びOPGWを分別するときの作動について詳しく説明する。
【0007】
本出願人が開発した解体分別装置1は、図4の全体図に示すように、OPGWを解体するための第1回転体10及び第2回転体20を備え、それらの中間に芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り機構30が配置されている。巻き取り機構30の周囲には、巻き戻されたOPGWの周囲の鋼線(線状体)のそれぞれが通過する複数の案内管4が配置され、鋼線はこれを通過した後第2回転体20に到る。案内管4としては、断面が完全に円形をなすものに限らず、一部に切り欠きのあるもの、つまり、軸方向にスリットが形成された管体を使用することもできる。解体する使用済みのOPGWは、図4の左側、すなわち解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、分離された鋼線は、第2回転体20の後方で収束されて解体分別装置から送り出される。
【0008】
第1回転体10は、図5に示すように、外周歯車12が形成された円盤体11とその前方の軸受け部13とを中空軸14によって結合したものであり、軸受け部13には、巻き戻す線条体を案内するため、線条体の数に対応する孔を設けたガイド板19が装着されている。円盤体11は第1回転体10の最大径部となっていて、外周部には案内管4が取り付けられる。また、外周歯車12の両側には、第1回転体10に作用する巻き取り機構30等の荷重を支持する平坦円形部分15が形成されている。円盤体11の周囲には、図6に示す枠体60に軸支される4個のローラ70、80が配置してあり、円盤体11の平坦円形部分15がこれらのローラと接触することによって、回転体10の支持が行われる。4個のローラの中の1個は、回転体10を回転させるための駆動ローラ70であって、外周歯車12と噛み合う駆動歯車を備えている(図4では枠体60の一部と駆動ローラ70のみを表示)。
【0009】
解体分別装置1の後部には、第1回転体10と同一の構造を有する第2回転体20が、前後方向を逆にして配置されている。すなわち、第2回転体20においては、分別装置の前方側には周辺部に案内管4を固着し外周歯車22を備えた円盤体21が、その後方側には中空軸24で連結された軸受け部23が設置される。円盤体11と円盤体21との間には、案内管4が掛け渡されており、両方の回転体は、軸55からチェーン、歯付きベルト等の伝動装置57及び駆動ローラ70を介して、駆動モータ56によりOPGWの外側に巻かれた鋼線の巻き方向とは逆の方向に回転駆動される。
【0010】
第1回転体10と第2回転体20との間には巻き取り機構30が配置され、この巻き取り機構30は、芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り装置を備えている。巻き取り機構30はフレーム31を有しており、フレーム31の前端及び後端には中空支持軸32(図5参照)が一体に設けられ、これらは第1回転体10及び第2回転体20の円盤体11,21のハブ部に圧入されたベアリングにそれぞれ嵌め込まれる。すなわち、巻き取り機構30は、いわば両円盤体11、21の中心部に吊り下げられた状態となっている。フレーム31上には、駆動モータ34により回転される芯線巻き取りドラム33、巻き取りドラム33に芯線を均一に巻きつけるためのトラバース機構43、固定案内ローラ42等からなる巻き取り装置が載置されている。
【0011】
解体分別装置1を作動させてOPGWを分別するには、解体するOPGWを中空管61に通した後、手作業により所定の長さ解きほぐし、芯線であるアルミ管と外周の複数の鋼線を分離する。分離されたOPGWのアルミ管は、図4の実線Xで示すように、ガイド板19の孔191及び第1回転体10の中空軸14中を通過させ、さらに巻き取り機構30の固定案内ローラ42及びトラバース機構43のローラの間を通過させて、芯線巻き取りドラム33に巻きつけられる。
【0012】
一方、複数の鋼線は、図4の破線Yのように、中空管61の直後で外側に広げられ、ガイド板19の孔に各々の鋼線が通された後、第1回転体10の軸受け部13に形成した中空部18を通過して、円盤体11の周辺部に取り付けた案内管4に挿入される。さらに、案内管4を通過させて鋼線を第2回転体20の円盤体22に送り、ここにおいては、第1回転体10とは逆の態様で各鋼線を後方に向けて収束させる。集合した鋼線は、分別装置1の後端の中空管62を通過させ、鋼線巻き取りドラム(図7参照)により巻き取る。鋼線にはもともと「撚り」がかかるような加工が施されているので、集合させると自動的にほぼ元のOPGWの形態に復帰し、巻き取り作業を容易に行うことができる。
【0013】
以上のような準備を行った後、OPGWを中空管61から連続的に送り込み、同時に回転体駆動モータ56を駆動して、軸55、歯付きベルト伝動装置57、駆動ローラ70等の伝動機構により、第1回転体10及び第2回転体20を鋼線の巻き方向とは逆方向に同期して回転させる。また、巻き取り機構30のモータ34を駆動し、芯線巻き取りドラム33を回転させ、トラバース機構43を作動させる。両方の回転体10,20の回転によってOPGWの鋼線の巻きが解かれ、アルミ管は、第1回転体10の中心部を通過して芯線巻き取りドラム33に均一に巻き取られる。
【0014】
このように、本出願人が開発した解体分別装置1は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、これを同心より線の外周に巻かれた線状体の巻き方向とは逆に回転させて同心より線を解体しながら、芯線及び線状体を分別して回収するものである。したがって、再資源化のための処理作業が容易となり、芯線と線状体とを別々の処理行程により再生し、効率的なリサイクルを図ることが可能である。
ちなみに、電線に巻きつけられたテープ等の線状体を、巻き方向とは逆の方向に公転し、かつ、自転するボビンに巻き取る装置が実開昭58−36510号公報に示されている。しかし、OPGWの鋼線はテープと比べるとはるかに比重が大きいとともに剛性も高く、このような装置を用いてボビンに巻き取るには、非常に大型の、所要動力の大きい装置を必要とする。解体分別装置1はコンパクトで簡易な装置であって、高圧送電線の鉄塔からOPGWを回収する現場等に本発明の装置を持ち込み、工事現場あるいはその近傍において、OPGWを解体しアルミ管等を分別することができる。このときは、図7に示すように、例えば架線ウインチを解体分別装置1の前方に据え付けるとともに後方には鋼線巻き取りドラムを据え付け、架線ウインチによりOPGWを牽引して解体分別装置1に送り込み、芯線を取り出した後の収束した鋼線を、鋼線巻き取りドラムに巻き取るようにすることができる。
【特許文献1】特開2002−100253号公報
【特許文献2】実開昭58−36510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願人が開発した解体分別装置は、前方から送り込まれた同心より線の外周に巻かれた線状体を、2個の回転体を巻き方向とは逆に回転させて巻き戻し、同心より線を解体するものである。解体された後の芯線は解体分別装置の中に置かれた巻き取りドラムに巻き取られ、また、線状体は装置の後部で収束されほぼ元の形態に復帰しながら、後方に置かれるリールワインダーに巻き取られる。こうして、この解体分別装置では同心より線を効率的かつ円滑に解体し、芯線と線状体とをドラムに巻きつけた形で分別回収することができるが、解体分別作業の処理速度を増大し同心より線を高速で通過させると、線状体が収束するときに次の現象が生じることが判明した。
【0016】
線状体は、第1回転体の前方で解きほぐされた後、それぞれが案内管を通って第2回転体に送られ、その後部で再び集合する。線状体のそれぞれには、芯線の周りに巻きつけるための加工が施され「撚り」がかかり易くなっているので、図8に示すとおり、一体に集合すると外周に巻かれる形に戻り内部には空間が形成される。このとき、全ての線状体が外周に配列される、左図のような形が常に保たれるとは限らず、右図のように、中心の空間内に1本の線状体が入り込むことがある。
【0017】
この状態となると、中心に入り込んだ線状体は、リールワインダーに巻き取られるまでの軌道が、外周に巻回される線状体に比べ短くなるので、中心に入り込んだ線状体にはいわば「余長」が生じて、弛(たる)むことになる。弛んだ線状体は曲げられ外方に押し出されて、一定の時間が経過すると再度外周の線状体に巻き込まれ、別の線状体が中心の空間に入り込むようになる。こうした状況では、リールワインダーの巻き取り過程で「余長」は吸収されるので、作業に格別支障はない。しかし、同心より線の送り速度が高速(一般的なOPGWを解体分別するときは10m/min.程度)となると、中心に入り込んだ線状体が外周に移る時間的な余裕がなくなり、「余長」の部分が前方に繰り出される。前方に移動する「余長」は、案内管内を進行して案内管入口から第1回転体のガイド板の付近に及ぶ場合がある。
【0018】
案内管入口の前方には線状体の軌道を規制するものはなく、線状体に弛みが生じたときは、遠心力で外側に膨らみ軌道は不規則となって装置に絡みつくなどの虞れがあり、この現象が発生すると解体作業の続行が不可能となる。
本発明は、簡易な手段によってこのような不具合を解消し、高速でも円滑な解体分別作業を可能として装置の処理性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題に鑑み、本発明者らは、外周に巻回された線状体を2個の回転体と案内管とを用いて巻き戻し、同心より線を解体する装置において、案内管に複数の線状体を一組として通過させ、回転体の後方に収束させて巻き取ることにより、前述の現象を回避できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、
「芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、さらに、
前記案内管の本数は、解体し分別する前記同心より線の線状体の本数よりも少ない数に設定され、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管に複数の前記線状体を通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取る」
ことを特徴とする解体分別装置となっている。
【0020】
請求項2に記載のように、前記案内管の入口には、ベルマウス形の通路を備えた入口案内部材を設置することができる。
【0021】
請求項3に記載のように、前記第2回転体の後方には、定張力機能を有するリールワインダーを配置し、前記第2回転体の後方で収束された前記線状体が、リールワインダーにより牽引され巻き取られるようにすることが好ましい。
【0022】
本発明の解体分別装置は、請求項4に記載のとおり、光ファイバを収容したアルミ管を芯線とする同心より線、すなわちOPGW、を解体し分別するために、特に好適なものである。
【0023】
本発明は、方法の発明としても実施することができる。つまり、案内管の本数が、解体し分別する同心より線の線状体の本数と同数の装置を用いた場合であっても、例えば2本の線状体を一組としこれを一つ置きの案内管を通過させるようにしてもよい。方法の発明としては、請求項5に記載のように、
「芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する方法であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置された解体分別装置を使用し、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管に複数の前記線状体を一組として通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取る」
ことを特徴とする解体分別方法となる。
【発明の効果】
【0024】
本出願人が開発した、本発明の基礎となる解体分別装置では、外周に巻回された線状体を2個の回転体と案内管とを用いて巻き戻し、回転体の後方に収束させて巻き取る。本発明においては、案内管に複数の線状体を一組として通過させるので、装置として実施するものでは、案内管の数及び線状体を案内管にガイドするガイド板に設けた孔の数は線状体の数より少なく、約半数となっており、各案内管を通過する複数の線状体を後方で収束させリールワインダーに巻き取るようにする。
【0025】
線状体を集合させたときには、元の同心より線の外周に巻かれた形に戻り内部には空間が形成される。この空間内には、やはり線状体が入り込むことがあるが、本発明では複数の線状体が一組となって相互に接触しつつ元の形状に復帰する。そして、案内管内においても一単位の線状体は互いに接触しながら送られており、中心に入り込んだ1本の線状体に「余長」が発生しても、他の線状体に拘束される結果、その「余長」の前方への進行が妨げられる。したがって、第1回転体の前方で線状体の弛みが生じることはなく、正常な解体作業が継続できる。中心の線状体の「余長」は、一定時間の後にリールワインダーの巻き取り行程で吸収される。
また、案内管に複数の線状体を通過させるから、案内管は径の大きなものとなる。径が大きくなれば、案内管の重量が増加するものの曲げに対する剛性も増大し、案内管の材質の選択等により回転に伴う遠心力による案内管の撓みを減少することができる。
【0026】
請求項2の発明のように、案内管の入口にベルマウス形の通路を備えた入口案内部材を設置したときは、線状体が案内管内に、よりスムースに導入されることとなる。
【0027】
請求項3に記載の発明のように、第2回転体の後方に定張力機能を有するリールワインダーを配置し、収束された線状体を、リールワインダーにより牽引して装置に同心より線を供給し、装置の前方に置かれる架線ウインチを省略できる。また、リールワインダーは定張力機能を備え一定張力で牽引するから、巻き数の不均一等に起因する線状体の抵抗の大小に応じて送り速度が自動的に変化し、より円滑な解体作業が実施できる。
【0028】
請求項4に記載の発明のように、本発明の解体分別装置は、OPGWを回収し再資源化を図る際に特に好適なものである。本発明の解体分別装置は、分別の作業速度を速めても正常な解体に支障はなく、OPGWの芯線であるアルミ管をそのままの形で効率的に取り出すことが可能である。
【0029】
請求項5の発明は、方法の発明であり、解体分別装置の案内管の数が線状体と同数であっても実施可能なものである。同数の場合には、複数の線状体を一組として、組の数と等しい案内管のみに線状体を通過させればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面によって本発明の同心より線の解体分別装置について説明する。ここで説明する実施例は、本発明の解体分別装置をOPGWの解体分別に適用したものである。
図1は本発明の解体分別装置の一実施例を全体的に示す正面図であり、図2は本発明の第1回転体を、図3は案内管を示す図である。これらの図面において、図4等の解体分別装置の部品と対応するものについては、同一の符号が付されている。
【0031】
図1の実施例の解体分別装置における基本的な構成及び作動は、本出願人が開発した、図4等に示される解体分別装置1と変わりはない。すなわち、ローラ70,80で支持される第1回転体10及び第2回転体20を備え、両回転体は、駆動モータ56により歯車伝動機構を介して、OPGWの周囲の鋼線(線状体)の巻き方向とは逆方向に回転駆動され、外周の鋼線を巻き戻す。第1回転体10及び第2回転体20の中間には巻き取り機構30が配置され、これは、両回転体に軸支されたフレーム31上に載置されており、OPGWの芯線であるアルミ管を巻き取る。解体するOPGWは、図1の左側、つまり解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、巻き戻され分離された鋼線は、複数の案内管4を通過し第2回転体20の後方で収束され、リールワインダー90のドラムに巻き取られる。
【0032】
この実施例の解体分別装置は、基本的な構成等においては、図4等に示される解体分別装置1と同一であるものの、幾つかの点で改良が加えられている。例えば、装置の前部には、駆動装置を備えた送り込み装置付案内ローラ91が設置され、解体分別作業の開始時に、アルミ管と外周の複数の鋼線とに分離されたOPGWを、この送り込み装置を駆動して装置の後方に送り込む。装置の中間には、回転体や案内管を覆う金網製の防護カバー92が設置されるとともに、防護カバー92が開いたときは回転体の回転を停止する制御装置が設けてあり、作業員等に危険が及ぶことがないよう安全対策が施されている。
また、この実施例の解体分別装置では、第1回転体10の中空軸14の軸受け部13に装着されるガイド部材19は、周辺部に鋼線が通過する孔が形成された円板19Aと、前方に向け先細りとなる円錐体部品19Bとから構成されている。このガイド部材19は、OPGWの鋼線を適正に解きほぐし方向付けして案内管4に送り込む機能を果たすとともに、巻き数の不均一に応じて送り速度自動的に調整する機能も果たすものである。
【0033】
そして、本発明の実施例であるこの解体分別装置では、案内管4に複数の鋼線を同時に挿入し、第2回転体20の後方で収束させるように構成されている。したがって、案内管4の本数は、外周に巻かれた鋼線よりも少なく、鋼線が偶数本であるときはその半数に設定されている。この例の解体分別装置は、主に8本の鋼線が巻かれたOPGWを解体分別するときに使用するよう設計されたものであって、案内管4の数は4本であり、鋼線は2本づつ一組として案内管4に挿入される。ガイド部材19の周辺部に設けた孔の数も案内管4の数と同じく4個である。
【0034】
図2に示すとおり、この実施例における第1回転体10の円盤体11には、4本の案内管4を取り付けるため、そのディスク部に略矩形状をなす4個の取付孔11Aが設けられている。また、図3に示すとおり、案内管4の入口側端部には、2本の線状体Yが滑らかに通過できるようベルマウス形の通路を備えた入口案内部材41が嵌め込まれて装着されており、さらに、入口案内部材41には案内管取付板42が装着される。案内管取付板42には、取付孔11Aに対応する形状の突起部42Aが形成されており、案内管取付板42は、この突起部42Aを取付孔11Aに嵌め込んで、図示しないボルトによって円盤体11のディスク部に固定される。なお、第2回転体20への案内管4の取付構造は、第1回転体の構造と同一のものとなっている。
【0035】
ここで、この実施例の解体分別装置の操作方法について説明する。まず始めに、解体するOPGWを所定の長さ解きほぐし、芯線であるアルミ管と外周の複数の鋼線とを分離する。分離されたOPGWのアルミ管は、図4の装置と同様に、第1回転体10の中空軸14中を通過させ巻き取り機構30の芯線巻き取りドラム33に巻きつけられる。
外周の複数の鋼線は2本づつまとめられ、ガイド部材の部品19Aの周辺部に形成された4個の孔を通過させて、2本を単位として各案内管4に挿入される。2本の鋼線は、相互に接触した状態で案内管4を通過して第2回転体20に送られ、その後方で収束され、リールワインダー90により巻き取られる。
【0036】
鋼線を集合させると自動的にOPGWの外周に巻かれた元の形態に復帰する。このとき1本の中心に入り込んでこの鋼線に「余長」が発生した場合は、「余長」は前方に押出されることとなるが、本発明においては、案内管4の中では他の1本の鋼線と接触しいわば相互に拘束されながら送られる状態であるから、「余長」の前方への進行が妨げられ、第1回転体10の前方に余長が移動してここで弛むような事態は生じない。第2回転体20の後方の「余長」は、ある時間が経過すると巻き取り作用によって吸収され消滅する。
【0037】
OPGWの中には、アルミ管の外周に奇数本の鋼線を卷回したものがある。このようなOPGWを解体するときは、案内管4に挿入する本数にアンバランスが生じ、回転体の重量配分が不均一となる。このときには、本数の少ない案内管内に、移動しない、いわばダミーの鋼線を取り付けることにより、回転体の静的バランスあるいは動的バランスを図ることができる。
【0038】
以上詳述したように、本発明は、外周に巻回された線状体を2個の回転体と案内管とを用いて巻き戻し、同心より線を解体する装置において、案内管に複数の線状体を一組として通過させ、回転体の後方に収束させて巻き取るようにしたものである。したがって、本発明の解体分別装置は、線状体と同数の装置を使用しても実施できること、OPGWに限らず一般的な同心より線を解体し分別する装置として適用可能であることは言うまでもない。また、上述の実施例とは異なるような種々の変形、例えば芯線の通過しない第2回転体の構造を第1回転体と変えること、リールワインダーの張力により同心より線を装置に牽引する代わりに、架線ウインチを前方に設置して同心より線を装置に押し込むようにすること、が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の解体分別装置の全体図である。
【図2】本発明の解体分別装置の円盤体を示す図である。
【図3】本発明の解体分別装置の案内管等を表す図である。
【図4】本発明の基礎となる解体分別装置の全体図である。
【図5】図4の装置の第1回転体付近の詳細図である。
【図6】図4の装置のVI−VI断面図である。
【図7】図4の装置の使用方法を示す図である。
【図8】図4の装置において生じる課題を説明する図である。
【図9】OPGWの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 解体分別装置
10 第1回転体
20 第2回転体
11、21 円盤体
11A 取付孔
12 外周歯車
13 軸受け部
14 中空軸
19 ガイド部材(ガイド板)
30 巻き取り機構
31 フレーム
33 芯線巻き取りドラム
4 案内管
41 入口案内部材
42 案内管取付板
56 駆動モータ(第1、第2回転体駆動用)
70 ローラ(駆動・支持用)
80 ローラ(支持用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、さらに、
前記案内管の本数は、解体し分別する前記同心より線の線状体の本数よりも少ない数に設定され、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管に複数の前記線状体を通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取ることを特徴とする解体分別装置。
【請求項2】
前記案内管の入口には、ベルマウス形の通路を備えた入口案内部材が設置されている請求項1に記載の解体分別装置。
【請求項3】
前記第2回転体の後方には、定張力機能を有するリールワインダーが配置され、前記第2回転体の後方で収束された前記線状体が、前記リールワインダーにより牽引され巻き取られる請求項1又は請求項2に記載の解体分別装置。
【請求項4】
前記同心より線は、光ファイバを収容したアルミ管を芯線とする光ファイバ複合架空地線である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の解体分別装置。
【請求項5】
芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する方法であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置された解体分別装置を使用し、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管に複数の前記線状体を一組として通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取ることを特徴とする解体分別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−242539(P2007−242539A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66159(P2006−66159)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(392022721)株式会社和田電業社 (8)