説明

電線等の解体分別装置における送り込み装置

【課題】芯線の周りに線状体が巻回された同心より線を、2個の回転体と案内管とを用いて線状体を巻き戻して芯線を取り出すため解体分別装置において、装置の前部に案内ローラを備えた送り込み装置を設置し、解体のための準備作業を効率的に行う。
【解決手段】第1回転体10及び第2回転体20を前後に設けるとともに、両回転体に軸支される静止した巻き取り機構30を中間に設け、両回転体を線状体の巻回方向とは逆方向に回転させ、同心より線を解体して芯線を巻き取り機構30の芯線巻き取りドラム33に、線状体を後方の巻き取りドラムに巻き取る。装置の前部には案内ローラを備えた送り込み装置91が設置してあり、解体作業の準備行程では、送り込み装置91の駆動モータを回転駆動し、線状体を後方の巻き取りドラムまで送り込んでこれに巻きつける。これにより、解体のための準備作業が容易となり、効率的な解体の準備が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯線の周りに他の線状体が巻回された、例えば電線等の同心より線を解体し分別する装置に関し、さらに詳しくは、その解体分別装置に同心より線を送り込む送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品のリサイクル、つまり、廃棄する製品から使用可能な資源を回収し有効利用を図ることは、省資源あるいは環境問題への対処から各種の製品について要請されている。電線についてもその例外ではなく、耐用年数を経過した電線を交換するにあたり、回収した使用済み電線の再資源化は重要な課題である。電線のリサイクルは現実にも様々な形で実施され、また、効率的な再資源化に向けて、回収した電線を解体し材料別に分別するための技術開発も精力的に行われている。
【0003】
高圧送電線用に通常使用される鋼心アルミより線(ACSR)は、鋼の芯線の周りに多数のアルミ線をより線としたものである。このような電線においては、回収した使用済み鋼心アルミより線をリサイクルのため分別するには、一例として特開2002−100253号公報に開示されているように、電線を細かく切断し、切断した電線に振動等を与えてアルミ線と鋼線とを分離する方法がある。これにより、より線がばらばらとなり、その後電磁石を用いて鋼線とアルミ線を分別して回収することが可能であって、分別のためのコストは比較的低く、資源価値の大きいアルミニュウムを不純物の混在が殆どない状態で回収することができる。
【0004】
電線の中には、通信用の光ファイバを芯線に内蔵させ、周りにアルミ被覆鋼線等を巻回した光ファイバ複合架空地線(以下「OPGW」という。)と呼ばれる電線がある。OPGWは、例えば高圧送電線の鉄塔の最上部に敷設される避雷用の電線として用いられ、これを敷設することにより、エネルギ伝送のための送電システムが情報通信用にも利用されることとなる。図7に示されるとおり、OPGWの中心には光ファイバを収容するアルミ管が芯線として配置してあり、その周りをアルミ被覆の施された8本の鋼線(線状体)がより線となって取り巻いている。アルミ管の中にはU字状の3本の溝が形成された溝付アルミ線がはめ込まれており、各々のU字状の溝には3心、6心等多心の光ファイバケーブルが収納されている。OPGWの中には、アルミ被覆鋼線を多重に巻回したもの、鋼線とアルミ線を多重に巻回したものあるいは溝付アルミ線を備えていないものも存在する。このようなOPGWについても、耐用年数の経過したもの等は新しいOPGWと交換するため回収することとなる。
【0005】
回収した後のOPGWを再資源化するには、中心のアルミ管や溝付アルミ線を周囲のアルミ被覆鋼線と分別して取り出すことが必要である。しかし、上記の特許文献に示されるような方法を採用しOPGWを細かく切断した場合には、中心のアルミ管等に収容された光ファイバが同時に細かく切断され、その状態で分離されたアルミ管等の中に残存することとなる。短寸に切断された膨大な数のアルミ管等から光ファイバを効率よく分別するのは不可能であって、資源価値の高いアルミニュウムを不純物なく取り出すことが非常に困難である。したがって、回収したOPGWは、産業廃棄物として廃棄せざるを得ないのが現実であった。
【0006】
こうした状況を踏まえ、本出願人は、OPGW等の同心より線を解体し、中心のアルミ管等と周囲に巻回されたアルミ被覆鋼線等とを切断することなく分別するコンパクトかつ簡易な装置を開発して、先に特願2005−68490として出願した。この解体分別装置は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、その間に、2個の回転体に軸支される静止した巻き取り機構を配置する。2個の回転体の外周には、同心より線に巻かれた線状体の本数と等しい数の案内管が掛け渡され、これを通して線状体が後方に導かれる。2個の回転体は、線状体の巻き方向とは逆の方向に回転駆動され、これにより線状体が巻き戻されて、中心の芯線を巻き取り機構に巻き取ることができる。同心より線がOPGWである場合には、芯線のアルミ管をそのまま取り出すことが可能であり、取り出したアルミ管を長手方向に切開したり光ファイバを抜き取ったりすることにより光ファイバを分離し、アルミニュウムを不純物のない状態で容易に分別することができる。
つまり、この解体分別装置は、芯線及び線状体をそのままの状態で解体し分別して回収できるもので、本発明の基礎となる装置であることから、図3〜図6により、この解体分別装置の構成及びOPGWを分別するときの作動について詳しく説明する。
【0007】
本出願人が開発した解体分別装置1は、図3の全体図に示すように、OPGWを解体するための第1回転体10及び第2回転体20を備え、それらの中間に芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り機構30が配置されている。巻き取り機構30の周囲には、巻き戻されたOPGWの周囲の鋼線(線状体)のそれぞれが通過する複数の案内管4が配置され、鋼線はこれを通過した後第2回転体20に到る。案内管4としては、断面が完全に円形をなすものに限らず、一部に切り欠きのあるもの、つまり、軸方向にスリットが形成された管体を使用することもできる。解体する使用済みのOPGWは、図3の左側、すなわち解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、分離された鋼線は、第2回転体20の後方で収束されて解体分別装置から送り出される。
【0008】
第1回転体10は、図4に示すように、外周歯車12が形成された円盤体11とその前方の軸受け部13とを中空軸14によって結合したものであり、軸受け部13には、巻き戻す線条体を案内するため、線条体の数に対応する孔を設けたガイド板19が装着されている。円盤体11は第1回転体10の最大径部となっていて、外周部には案内管4が取り付けられる。また、外周歯車12の両側には、第1回転体10に作用する巻き取り機構30等の荷重を支持する平坦円形部分15が形成されている。円盤体11の周囲には、図5に示す枠体60に軸支される4個のローラ70、80が配置してあり、円盤体11の平坦円形部分15がこれらのローラと接触することによって、回転体10の支持が行われる。4個のローラの中の1個は、回転体10を回転させるための駆動ローラ70であって、外周歯車12と噛み合う駆動歯車を備えている(図3では枠体60の一部と駆動ローラ70のみを表示)。
【0009】
解体分別装置1の後部には、第1回転体10と同一の構造を有する第2回転体20が、前後方向を逆にして配置されている。すなわち、第2回転体20においては、分別装置の前方側には周辺部に案内管4を固着し外周歯車22を備えた円盤体21が、その後方側には中空軸24で連結された軸受け部23が設置される。円盤体11と円盤体21との間には、案内管4が掛け渡されており、両方の回転体は、軸55からチェーン、歯付きベルト等の伝動装置57及び駆動ローラ70を介して、駆動モータ56によりOPGWの外側に巻かれた鋼線の巻き方向とは逆の方向に回転駆動される。
【0010】
第1回転体10と第2回転体20との間には巻き取り機構30が配置され、この巻き取り機構30は、芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り装置を備えている。巻き取り機構30はフレーム31を有しており、フレーム31の前端及び後端には中空支持軸32が一体に設けられ、これらは第1回転体10及び第2回転体20の円盤体11,21のハブ部に圧入されたベアリングにそれぞれ嵌め込まれる。すなわち、巻き取り機構30は、いわば両円盤体11、21の中心部に吊り下げられた状態となっている。フレーム31上には、駆動モータ34により回転される芯線巻き取りドラム33、巻き取りドラム33に芯線を均一に巻きつけるためのトラバース機構43、固定案内ローラ42等からなる巻き取り装置が載置されている。
【0011】
解体分別装置1を作動させてOPGWを分別するには、解体するOPGWを中空管61に通した後、手作業により所定の長さ解きほぐし、芯線であるアルミ管と外周の複数の鋼線を分離する。分離されたOPGWのアルミ管は、図3の実線Xで示すように、ガイド板19の孔191及び第1回転体10の中空軸14中を通過させ、さらに巻き取り機構30の固定案内ローラ42及びトラバース機構43のローラの間を通過させて、芯線巻き取りドラム33に巻きつけられる。
【0012】
一方、複数の鋼線は、図3の破線Yのように、中空管61の直後で外側に広げられ、ガイド板19の孔に各々の鋼線が通された後、第1回転体10の軸受け部13に形成した中空部18を通過して、円盤体11の周辺部に取り付けた案内管4に挿入される。さらに、案内管4を通過させて鋼線を第2回転体20の円盤体22に送り、ここにおいては、第1回転体10とは逆の態様で各鋼線を後方に向けて収束させる。集合した鋼線は、分別装置1の後端の中空管62を通過させ、鋼線巻き取りドラム(図6参照)により巻き取る。鋼線にはもともと「撚り」がかかるような加工が施されているので、集合させると自動的にほぼ元のOPGWの形態に復帰し、巻き取り作業を容易に行うことができる。
【0013】
以上のような準備を行った後、OPGWを中空管61から連続的に送り込み、同時に回転体駆動モータ56を駆動して、軸55、歯付きベルト伝動装置57、駆動ローラ70等の伝動機構により、第1回転体10及び第2回転体20を鋼線の巻き方向とは逆方向に同期して回転させる。また、巻き取り機構30のモータ38を駆動し、芯線巻き取りドラム33を回転させ、トラバース機構43を作動させる。両方の回転体10,20の回転によってOPGWの鋼線の巻きが解かれ、アルミ管は、第1回転体10の中心部を通過して芯線巻き取りドラム33に均一に巻き取られる。
【0014】
このように、本出願人が開発した解体分別装置1は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、これを同心より線の外周に巻かれた線状体の巻き方向とは逆に回転させて同心より線を解体しながら、芯線及び線状体を分別して回収するものである。したがって、再資源化のための処理作業が容易となり、芯線と線状体とを別々の処理行程により再生し、効率的なリサイクルを図ることが可能である。
ちなみに、電線に巻きつけられたテープ等の線状体を、巻き方向とは逆の方向に公転し、かつ、自転するボビンに巻き取る装置が実開昭58−36510号公報に示されている。しかし、OPGWの鋼線はテープと比べるとはるかに比重が大きいとともに剛性も高く、このような装置を用いてボビンに巻き取るには、非常に大型の、所要動力の大きい装置を必要とする。解体分別装置1はコンパクトで簡易な装置であって、高圧送電線の鉄塔からOPGWを回収する現場等に本発明の装置を持ち込み、工事現場あるいはその近傍において、OPGWを解体しアルミ管等を分別することができる。このときは、図**に示すように、例えば架線ウインチを解体分別装置1の前方に据え付けるとともに後方には鋼線巻き取りドラムを据え付け、架線ウインチによりOPGWを牽引して解体分別装置1に送り込み、芯線を取り出した後の収束した鋼線を、鋼線巻き取りドラムに巻き取るようにすることができる。
【特許文献1】特開2002−100253号公報
【特許文献2】実開昭58−36510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願人が開発した解体分別装置は、前方から送り込まれた同心より線の外周に巻回された線状体を、2個の回転体を巻き方向とは逆に回転させて巻き戻しながら同心より線を解体する。解体された後の芯線は解体分別装置の中に置かれた巻き取りドラムに、また、線状体は装置の後方に置かれる線状体の巻き取りドラム(図6参照)に、それぞれ自動的に巻き取られる。こうして、この解体分別装置では同心より線を効率的かつ円滑に解体し、芯線と線状体とをドラムに巻きつけた形で分別回収することができるけれども、解体分別装置を駆動して解体を開始するまでには準備行程が必要となる。
【0016】
準備行程では、OPGW等の同心より線を手作業により所定の長さ解きほぐし、芯線を装置の両回転体の中間に配置された芯線巻き取りドラムに巻きつける。外周の複数の線状体は、ガイド板の孔と回転体の周辺に取り付けた案内管とを通過させた後、後方で収束させ巻き取りドラムに巻きつける。このように予め芯線及び線状体を解体分別装置にセットする作業も人力による作業となるが、案内管は曲線状であって鋼線等の線状体を通過させるときには摩擦による抵抗が大きい。しかも、線状体の巻き取りドラムは、解体作業の都合上、解体分別装置とはある程度離れた場所に据え付けられるので、複数の線状体を同時に案内管を通過させつつ線状体の巻き取りドラムの位置まで引き出して巻きつけるには相当の時間と労力を要する。
本発明の課題は、同心より線を解体するため本出願人が開発した装置において、準備作業を自動化し動力装置を用いて実行するようにして、準備行程の時間を短縮し、作業員の負担を軽減しながらスムースな作業を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題に鑑み、本発明は、第1回転体の前方に駆動装置を備えた案内ローラを設置し、解体作業を開始するにあたり同心より線の芯線及び線状体を解体分別装置にセットするときは、案内ローラを動力で駆動して同心より線を送り込むようにしたものである。すなわち、本発明は、
「芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管の各々に複数の前記線状体を通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取るように構成され、さらに、
前記第1回転体の前方には、駆動装置を備えた案内ローラが設置され、前記同心より線の解体を開始するときには、前記駆動装置により前記同心より線が送り込まれる」
ことを特徴とする解体分別装置となっている。
【0018】
請求項2に記載のように、前記案内ローラの近傍に、前記駆動装置を単独で駆動する操作スイッチを設置することができる。
【0019】
請求項3に記載のように、前記駆動装置はブレーキ機構を備え、前記第1回転体と前記第2回転体の回転が停止したときは前記ブレーキ機構が作動するものであることが好ましい。この場合には、請求項4に記載のように、前記案内ローラの近傍に、前記ブレーキ機構を解除する操作スイッチを設置することができる。
【0020】
また、請求項5に記載のように、前記案内ローラは、弾性的に前記同心より線と接触するローラ体を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の解体分別装置では、第1回転体の前方に駆動装置を備えた案内ローラを設け、解体作業の準備行程において芯線及び線状体を解体分別装置及び線状体の巻き取りドラムにセットするときは、案内ローラを動力で駆動して同心より線を送り込むようにしたものである。したがって、人力による作業と比べ準備行程の時間が大幅に短縮されるとともに、作業員が芯線及び線状体を装置に押し込み、案内管を通過させて線状体を巻き取りドラムの位置まで送り出す作業は不要となり、作業員の負担が軽減される。ちなみに、装置の前方に配置された架線ウインチは、動力により同心より線を送り込む機能あるものの、解体分別装置からは離れた位置に置かれるため、準備行程において同心より線に適正な「推力」を与えることはできない。
準備行程で同心より線を装置にセットする場合、案内ローラを単独で駆動して同心より線を解体分別装置に送り込む。請求項2の発明のように、案内ローラの近傍に駆動装置を単独で駆動する操作スイッチを設置すると、作業員が案内ローラを調整しながら駆動装置を手元で操作できるから、準備作業で同心より線を送り込む際の作業性が向上する。
【0022】
また、準備作業が終了し解体作業が開始されると、同心より線は、架線ウインチ等の張力によって自動的に装置に送り込まれる。このときは、案内ローラを駆動する必要がなくなり、当然、駆動装置への動力供給は停止されるが、同心より線は、案内ローラにガイドされ円滑に装置内に送られることとなる。なお、本発明の実施例では、後述するように、解体分別装置の後方に設置される鋼線巻き取り装置(リールワインダー)が発生する張力を一定値以上に設定し、その張力でOPGWを牽引するようにして、架線ウインチを省いている。
【0023】
ところで、解体作業中において、例えば、規定量巻かれた芯線巻き取りドラムを装置から取り出すときには、解体分別装置の一時的な停止が必要となる。装置の運転を停止すると、送り込まれる同心より線に働く張力が失われ、装置の前方の同心より線に作用する重力等のため同心より線が逆に戻される事態が発生して、再開後の作業に支障をきたすことがある。請求項3の発明のように、ブレーキ機構を備えた駆動装置、例えば機械的ブレーキを内蔵するいわゆるブレーキモータ、を使用して案内ローラを駆動したときは、一時停止の際にブレーキを作動させ、同心より線の逆行を防止することができる。装置の一時停止は、準備作業でも必要に応じて行われ、この場合においても案内ローラによる制動力の付与が実施される。
【0024】
請求項3の発明のようなブレーキ機構を設けると、回転体が停止しているときに手作業で同心より線を移動させることができなくなる。準備作業等では、手作業での調整が要請されることがあり、請求項4の発明のように、案内ローラの近傍にブレーキ機構を解除する操作スイッチを設置すると、手作業による同心より線の位置の調整などが容易に可能となる。ブレーキ機構を解除する操作スイッチは、前記の駆動装置を単独で駆動する操作スイッチと並列して、案内ローラの近傍の操作盤に配置することが望ましい。
【0025】
請求項5の発明のように、案内ローラに弾性材からなるローラ体を設け、これを同心より線に押圧するように接触させたときは、同心より線には常にローラ体の摩擦力が作用するので、同心より線を解体分別装置に確実に送り込むことができる。さらに、案内ローラによりブレーキ力を付与する際にも、確実に同心より線の逆行を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面によって本発明の同心より線の解体分別装置について説明する。ここで説明する実施例は、本発明の解体分別装置をOPGWの解体分別に適用したものである。
図1は本発明の解体分別装置の一実施例を全体的に示す正面図であり、図2はA−A矢視図及び本発明の案内ローラを有する送り込み装置を示す拡大図である。これらの図面において、図3等の解体分別装置の部品と対応するものについては、同一の符号が付されている。
【0027】
図1の実施例の解体分別装置における基本的な構成及び作動は、本出願人が開発した、図3等に示される解体分別装置1と変わりはない。すなわち、ローラ70,80で支持される第1回転体10及び第2回転体20を備え、両回転体は、駆動モータ56により歯車伝動機構を介して、OPGWの周囲の鋼線(線状体)の巻き方向とは逆方向に回転駆動され、外周の鋼線を巻き戻す。第1回転体10及び第2回転体20の中間には巻き取り機構30が配置され、これは、両回転体に軸支されたフレーム31上に載置されており、OPGWの芯線であるアルミ管を巻き取る。解体するOPGWは、図1の左側、つまり解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、巻き戻され分離された鋼線は、複数の案内管4を通過し第2回転体20の後方で収束され、鋼線巻き取り用のドラムに巻き取られる。鋼線巻き取り用のドラムを備えたリールワインダー90が発生する張力は、OPGWを解体分別装置に牽引できるよう一定値以上に設定してあり、そのため架線ウインチは設置されていない。
【0028】
この実施例の解体分別装置は、基本的な構成等においては、図3等に示される解体分別装置1と同一であるものの、幾つかの点で改良が加えられている。例えば、この解体分別装置では、案内管4に複数の鋼線を同時に挿入し、第2回転体20の後方で収束させるように構成される。これは、収束させるときに生じるたるみが装置の前方に及び不具合を招くのを防止する措置であり、そのため、案内管4の本数は、外周に巻かれた鋼線よりも少なくその半数に設定されている。回転する部分である回転体や案内管には、これらを覆う金網製の防護カバー92が設置されるとともに、防護カバー92が開いたときは回転体の回転を停止する制御装置が設けてあり、作業員等に危険が及ぶことがないよう安全対策が施されている。また、第1回転体10の中空軸14の軸受け部13に装着されるガイド部材19は、周辺部に鋼線が通過する孔が形成された円板19Aと、前方に向け先細りとなる円錐体部品19Bとから構成されている。このガイド部材19は、OPGWの鋼線を適正に解きほぐし方向付けして案内管4に送り込む機能を果たすとともに、巻き数の不均一に応じて送り速度自動的に調整する機能も果たすものである。
【0029】
そして、本発明の実施例であるこの解体分別装置においては、装置の前部の同心より線入口部には、送り込み装置91が設置される。この送り込み装置91は、第1回転体10の軸受け部53とともに架台51上に載置され、上下に配置される2個の案内ローラ91A、91Bを備えており、同心より線Zは、これらの案内ローラの間を通過して後方のガイド部材19に導かれる。上方の案内ローラ91Aは、耐磨耗性の合成樹脂からなるローラ体を有しており、ローラ体は弾性を備えたものであって同心より線Zに一定の圧力を加えながらこれと接触する。異なる径の同心より線を通過させかつ適正な圧力を付加するよう、上方案内ローラ91Aの位置は、調節機構91Cにより可変となっている。
【0030】
一方、下方の案内ローラ91Bには、駆動装置であるモータ91Dが連結されている。モータ91Dは、機械的ブレーキを内蔵する周知のブレーキモータであって、例えば、摩擦材からなるブレーキライニングをモータの回転軸とモータハウジングとに装着し、ブレーキを作動させるときは両方のブレーキライニングを密着させるものである。この実施例では、電源喪失に対処するため、ばねによりブレーキライニングを密着させ、電磁力によってブレーキを解除するよう構成されている。モータ91Dのブレーキは、解体作業中において回転体10、20の回転が停止したときは自動的に作動して同心より線に制動力を加えるようになっており、その結果、作業停止時の同心より線の戻りが防止される。
なお、この実施例では駆動装置としてブレーキ機構を内蔵するブレーキモータを使用しているが、通常のモータを使用して案内ローラ91Bと連結する軸の途中に独立のブレーキ装置を置くこともできる。
【0031】
モータ91Dを操作するため、操作盤91Eが架台51に取り付けてあり、これには、モータ91Dを単独で駆動して同心より線Zを送り込むための操作スイッチである「送り込みボタンS」と、電磁ブレーキを解除するための操作スイッチである「ブレーキ解除ボタンT」との2個のボタンが設けられる。両方のボタンは押している間だけ有効に機能するもので、「送り込みボタンS」を押すとモータ91Dの単独駆動が可能となり、「ブレーキ解除ボタンT」を押すとモータ内臓のブレーキ機構の解除が可能となる。
【0032】
次いで、本発明の送り込み装置を具備する解体分別装置の作動について説明する。解体作業の準備行程では、解体するOPGWを手作業により所定の長さ解きほぐし、芯線であるアルミ管と外周の複数の鋼線を分離して案内ローラ91A、91Bを通過させる。ここで、操作盤91Eの「送り込みボタンS」を押して駆動モータ91Dを回転させ、分離されたOPGWのアルミ管を、ガイド部材19の中心孔及び第1回転体10の中空軸14中を通して後方に送り込むとともに、複数の鋼線を、2本づつガイド板19の孔に通した後、円盤体11の周辺部に取り付けた案内管4に挿入して後方に送る。OPGWの送り込みに際しては、上方の案内ローラ91Aの位置を調節し、送り込むために適正な圧力を同心より線Zに付与する。
【0033】
後方に送られたアルミ管は、芯線巻き取りドラム33に巻きつけられ、複数の鋼線は、第2回転体20の円盤体22の出口から後方のガイド部材及び中空管を通過して元の形状に収束される。このような作業は、作業員が「送り込みボタンS」を適宜操作しながら実行する。このとき「送り込みボタンS」を離すと、駆動モータ91Dに内蔵されたブレーキ機構が自動的に作動してOPGWの逆行を防ぐ。手動でOPGWを移動させるときは、「ブレーキ解除ボタンT」を押すことによりブレーキ機構が解除され、OPGWの移動が可能となる。
【0034】
この作業が完了したときは、「送り込みボタンS」により駆動モータ91Dをさらに駆動し、収束した鋼線を後方に設置されたリールワインダー90まで送り、鋼線をその巻き取りドラムに巻きつける。リールワインダー90に送るときは、外周に卷回された鋼線を巻き戻すため、両回転体10、20を手動で回転させることもできるが、両回転体の駆動モータ56をモータ91Dと連動して低速で回転させてもよい。リールワインダー90に鋼線を巻きつけると準備行程が終了する。なお、案内ローラ91Bの駆動モータ91Dに装備されるブレーキ機構は、解体作業中に、例えば芯線巻き取りドラム33の取り出しの際に、装置が停止したときにも自動的に作動してOPGWの逆行を防止する。
【0035】
以上詳述したように、本発明は、外周に巻回された線状体を2個の回転体と案内管とを用いて巻き戻し、同心より線を解体する装置において、装置の前部に案内ローラを備えら送り込み装置を設置して、解体のための準備作業を容易化したものである。したがって、本発明の解体分別装置は、OPGWに限らず一般的な同心より線を解体し分別する装置として適用可能であることは言うまでもない。また、上述の実施例とは異なるような種々の変形、例えば2個の案内ローラを水平方向に配置すること、あるいは水平方向に配置された2個の案内ローラを別体として設置すること、が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の解体分別装置の全体図である。
【図2】図1のA−A矢視図及び本発明の送り込み装置を示す拡大図である。
【図3】本発明の基礎となる解体分別装置の全体図である。
【図4】図3の装置の第1回転体付近の詳細図である。
【図5】図3の装置のV−V断面図である。
【図6】図3の装置の使用方法を示す図である。
【図7】OPGWの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 解体分別装置
10 第1回転体
20 第2回転体
11、21 円盤体
12 外周歯車
13 軸受け部
14 中空軸
19 ガイド部材(ガイド板)
30 巻き取り機構
31 フレーム
33 芯線巻き取りドラム
4 案内管
41 入口案内部材
42 案内管取付板
56 駆動モータ(第1、第2回転体駆動用)
70 ローラ(駆動・支持用)
80 ローラ(支持用)
91 送り込み装置
91A、91B 案内ローラ
91D 駆動モータ
91E 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記案内管の各々に複数の前記線状体を通過させ、前記第2回転体の後方に収束させて巻き取るように構成され、さらに、
前記第1回転体の前方には、駆動装置を備えた案内ローラが設置され、前記同心より線の解体を開始するときには、前記駆動装置により前記同心より線が送り込まれることを特徴とする解体分別装置。
【請求項2】
前記案内ローラの近傍には、前記駆動装置を単独で駆動する操作スイッチが設置されている請求項1に記載の解体分別装置。
【請求項3】
前記駆動装置はブレーキ機構を備え、前記第1回転体と前記第2回転体の回転が停止したときは前記ブレーキ機構が作動する請求項1又は請求項2に記載の解体分別装置。
【請求項4】
前記案内ローラの近傍には、前記ブレーキ機構を解除する操作スイッチが設置されている請求項3に記載の解体分別装置。
【請求項5】
前記案内ローラは、弾性的に前記同心より線と接触するローラ体を備えている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の解体分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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