説明

電線被覆剥取具

【課題】芯線の撚りの状態を良好に保持しつつ、芯線への傷の発生を防止し、且つ、少ない力で被覆をぎ取ることができる電線被覆剥取具を提供する。
【解決手段】電線被覆剥取具1は、1対の挟持片2、2が相対回動可能となるように枢着軸4により枢着されている。枢着軸4と握り部8との間には、電線の軸線方向に対して垂直な方向に輪切り状に切れ目を入れる1対の輪切り部10が設けられている。また、枢着軸4に対して握り部8と反対側の顎部6には、枢着軸4側から順に、電線を切断する切断部22、長手方向に切れ目を形成する縦切り部12が設けられ、先端側には、被覆を剥ぎ取る外爪部及び内爪部が形成されている。また、縦切り部12の両脇には、枢着軸4の軸方向への電線のずれを規制するガイド部14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の被覆を剥ぎ取る手持ち握り型の電線被覆剥取具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の被覆を剥ぎ取る装置、工具は、従来から様々なものが考えられている。この中に、電線の軸線周りに本体を回転させながら、被覆を螺旋状に回転させる皮剥ぎ器がある。このような螺旋状に回転させながら被覆を剥ぎ取るタイプの装置、工具によれば、刃先を芯線に対して常に一定の距離に保つことができるので、芯線を傷つける虞が殆どない。
【0003】
しかし、このような回転型の皮剥ぎ器は、所定長さを剥ぎ取るのに、多数回回転させなければならず作業効率が高くない。また、対象となる電線が比較的太く且つ重量があり、回転動作に対しても安定している電線に適しており、筆記具程度の太さの電線には安定せず使い勝手が良くない。このような螺旋状に被覆を剥ぎ取るタイプの皮剥ぎ器は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、電線の軸線に垂直な方向から輪切り状に切れ目を入れ、長手方向に引き抜くことにより被覆を除去する工具も知られている。このタイプの装置、工具によれば、様々な大きさの電線に対応でき、螺旋状に回転させるタイプには難しい、筆記具程度以下の比較的細い配線にも適用可能である。
【0005】
図12は、この引き抜きタイプの被覆剥取工具100の側面図である。この被覆剥取工具100は、クランプ受け102とグリップ103とを設けた本体101にクランプアーム104と操作レバー105とが回動自在に取り付けられている。そして、このクランプアーム104には、第2スライダー106が摺動自在に取り付けられ、クランプ受け102側には、第2スライダー106と連動するように第1スライダー107が取り付けられている。また、両スライダー106、107の先端にそれぞれ電線被覆剥離用の刃108、109が内方突設されている。ここで、、第1及び第2スライダー106、107とクランプアーム104とは、リンク機構を介して連結されており、操作レバー105の握り操作により、電線の保持、被覆の切断、及び切断された被覆の芯線から引き抜きといった、一連の動作が行われる。
【0006】
このような構成の被覆剥取工具は、例えば、特許文献2に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−166872号公報
【特許文献2】特開平09−051617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電線を間に挟んで、対向する方向から刃先を接近させて被覆の輪切りを行う際には、刃毀れなどが一方側に生じていた場合、刃の入り方が均等ではなくなる。そして、このような場合、刃毀れが生じていない他方側のみ、切れ込みが大きくなり、芯線に傷を生じさせる虞がある。
【0009】
また、芯線の傷の発生を防止するために、芯線に達する直前で刃の切れ込みを規制し、抜き取る場合、輪切りにより弱化部を形成しているとは言え、その弱化部の全体に均等に
力が加わるようにして平行に引き抜く図12のような構成では、非常に大きな力を要する。
【0010】
そして、軸線に沿って真っ直ぐ(平行)に引き抜かず、軸線に対して本体が傾いた状態で引き抜かれる場合、残った被覆を介して刃先から芯線に大きな圧力が加わるので、場合によっては、芯線の撚りが潰れて甘くなってしまい、後の作業効率を低下させてしまう虞がある。
【0011】
そこで、本発明では、芯線の撚りの状態を良好に保持しつつ、芯線への傷の発生を防止し、且つ、少ない力で被覆を剥ぎ取ることができる電線被覆剥取具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の電線被覆剥取具は、1対の挟持片が相対回動可能に枢着軸にて枢着され、枢着軸を介して一方側に電線を挟持する1対の顎部を有すると共に、他方側に握り動作による力を受ける1対の握り部を有する、手持ち握り型の電線被覆剥取具であって、くさび形に形成されると共に、その傾斜面を回動半径方向に面するように配置され、各々の顎部の先端側から、互いに対向するように突設された1対の外爪部と、1対の外爪部と略同形状に形成されると共に、外爪部の回動半径方向の内側に並設され、且つ、前記外爪部との間で形成される谷部の深さよりも、外爪部との頂点同士の間隔の方が小さくなるように配置された1対の内爪部と、板状に形成され、1対の挟持片のそれぞれから、互いの端縁を突き合わせるように延び、これら端縁同士の接合状態において、電線の芯線の径よりも大きく且つ被覆の外径よりも小さい穴部が形成される切欠きが、それぞれの端縁に形成された1対の輪切り部と、挟持片の少なくとも一方側に設けられ、枢着軸の軸方向に対する電線の位置を規制するガイド部と、ガイド部による電線に対する規制幅の略中央位置に、1対の顎部が閉じた状態で、互いの刃先同士が芯線の径よりも大きく被覆の外径よりも小さくなる間隔で対向するように、1対の挟持片のそれぞれに振り分けて配置された1対の縦切り刃とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電線被覆剥取具は、上記構成に加えて、外爪部の傾斜面のうち、回動半径方向外側に面する外側傾斜面は、顎部側の基端部側よりも頂点側の方が、回動半径方向内側に傾いていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電線被覆剥取具は、上記構成に加えて、切欠きは、穴部の周縁のうち、少なくとも枢着軸側の接合端周辺に丸型の面取り加工が施されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電線被覆剥取具は、上記構成に加えて、1対の縦切り刃は、枢着軸の軸方向に対して垂直に配置され、ガイド部による枢着軸の軸方向の規制幅の中央位置を挟んで僅かに両側へ偏って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、外爪部と内爪部との間に挟み込まれた被覆は、外爪部と内爪部との頂点間隔よりも深く谷部に入り込むことができる。また、1対の輪切り部を電線に対して垂直に配置し、それぞれの端縁同士を接合状態にすることにより、電線の被覆にのみ、穴部の端縁が切り込まれ、被覆を輪切りにすることができる。更に、1対の顎部が閉じたとき、電線の被覆厚の範囲内で、1対の縦切り刃の先端が切り込まれる。
【0017】
これにより、外爪部と内爪部とにより形成される谷部に被覆が深く入り込むので、引き剥がし又は捩じり動作に対して被覆(の掴み代)に大きな形状崩れを生じさせることなく良好にグリップさせることが可能となる。また、1対の輪切り部は、電線の被覆にのみ切
れ込みを入れることができるので、芯線に傷を生じさせることを防止することが可能となる。そして、1対の顎部が閉じたとき、ガイド部による規制幅の略中央位置において、1対の縦切り刃が電線の被覆厚の範囲内で切り込まれるので、その状態で電線の長手方向へ本体を相対移動させることにより、被覆の両側に2本の切り込みを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電線被覆剥取具の全体斜視図である。
【図2】図1の電線被覆剥取具の輪切り部の使用状態を示した斜視図である。
【図3】図1の電線被覆剥取具の縦切り部の使用状態を示した斜視図である。
【図4】図1の電線被覆剥取具の外爪部及び内爪部による被覆の引き剥がし状態を示した斜視図である。
【図5】図1の電線被覆剥取具の輪切り部の作用を示しており、(a)は被覆に切れ目が形成される前、また、(b)は被覆に切れ目が形成された後の状態を示した図である。
【図6】図1の電線被覆剥取具のガイド部の周辺について、外爪部側から見た図である。
【図7】図1の電線被覆剥取具の縦切り部の幅調整板をスライドさせた状態を示した図である。
【図8】図1の電線被覆剥取具とは異なる形態の取付座を示した図である。
【図9】図1の電線被覆剥取具とは更に異なる形態の取付座を示した図である。
【図10】外爪部及び内爪部の周辺を示した拡大図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る電線被覆剥取具のうち、外爪部及び内爪部の周辺を示した拡大図である。
【図12】従来の皮剥ぎ器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態について、図を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1に示すのは、本実施の形態における電線被覆剥取具1である。この電線被覆剥取具1は、1対の挟持片2が枢着軸4を中心として、互いに相対回動可能となるように枢着され、握り部8の握り操作によって電線を挟持し、被覆に切れ目を形成することのできる手持ち握り型の工具である。
【0021】
本実施の形態の電線被覆剥取具1は、電線の被覆に対して、長手方向に垂直な方向から輪切り状に切れ目を入れた後、その輪切り状の切れ目から長手方向に沿って縦切りの切れ目を入れ、この縦切りの切れ目が形成された範囲の被覆を引き剥がすことにより、所定領域の被覆を除去するものである。
【0022】
ここでは、先ず、この全体を示した図1を参照しながら、順にそれぞれの部分の使用例を図2から4を用いて簡単に説明し、続いて、それぞれの部分の詳細な構造及び作用について、図5から10を用いて説明する。
【0023】
図2は、図1の枢着軸4に対して握り部8側に設けられた1対の輪切り部10により、電線24の被覆28に輪切り状に切れ目を形成している様子を示している。
【0024】
この図2では、電線24の中間部ではなく、端部の被覆28を剥ぎ取る場合を例として示している。このように、端部から所定長さの位置を、1対の輪切り部10で挟持することにより、被覆28に輪切り状に切れ目が形成される。なお、後に詳細に説明するように、芯線26に傷が付かないよう、輪切り部10の端縁には切り欠きが形成されている。
【0025】
次に、図3は、図1の枢着軸4に対して握り部8とは反対側の、1対の顎部側6に設けられた1対の縦切り刃12により、電線24の長手方向に切れ目を形成している様子を示している。
【0026】
この1対の縦切り刃12は、電線24を間に挟んでそれぞれの刃先を対向させるように配置されている。そして、電線24を引き抜くことにより電線24の対極方向から上下同時に長手方向へ切れ目が形成される。
【0027】
続いて、図4は、輪切り及び縦切りによる切れ目(図中の斜線を施した部分)が形成された後、剥ぐべき被覆28の一部を、電線被覆剥取具1の顎部6の先端側に形成された外爪部16及び内爪部18により掴み、引き剥がす様子を示している。
【0028】
この図に示されるように、外爪部16を縦切りにより形成された切れ目に挿入し、内爪部18を被覆28の外側面に食い込ませるように把持すると、グリップ状態が良好となる。縦切りにより形成された切れ目は、芯線26の表面に達する直前位置まで形成されているので、芯線26に沿って薄く残った被覆28を引き千切るのに大きな力は要しない。しかし、縦切りの状態によっては被覆28が厚く残る場合がある。この場合であっても、被覆28を良好にグリップすることができるので、掴んだ被覆28の一部が型崩れして把持する力が逃げるというようなことはなく容易に引き千切ることが可能である。また、被覆28の型崩れを防止することができ、切れ端が残ることを防止できるので、絶縁不良や、無理に取り除くことによる芯線26への傷の発生を防止することができる。
【0029】
次に、上記の各部分の構成について、図5から10を用いて詳細に説明する。
【0030】
図5は1対の輪切り部10と電線24とをこの電線24の軸線方向(枢着軸4の軸方向)から見た図である。ここで、二点鎖線で示した部分は、電線24の中心と輪切り部10の中心とが一致していない状態を示しており、実線部分は両者が一致している状態を示している。そして、(a)は被覆28に切れ目が形成される前、(b)は被覆28に切れ目が形成された後の状態を示している。
【0031】
本実施の形態における電線被覆剥取具1では、輪切り部10の切欠き10dには、図5(b)のように輪切り部10が接合されたときに形成される穴部10bの周縁10cのうち、接合端10a(図5(a)参照)の周辺に丸型の面取り加工が施されている。これにより、図5(a)の二点鎖線で示されたように、電線24の中心と輪切り部10の中心とが外れていた場合であっても、この面取り加工された端縁上を滑るように中央側へ案内されて、所定の位置に収めることが可能となる。したがって、電線24及び輪切り部10の中心が互いにずれた状態で挟持され、芯線26に傷が生じることを防止することが可能である。
【0032】
次に、図6は、ガイド部14周辺を外爪部16側から見た図である。ここでは、1対の顎部6は閉じた状態となっている。顎部6のそれぞれに固定された縦切り刃12は、芯線26の径よりも大きく、被覆28の外径よりも小さい状態を保持して対向するように配置されている。ガイド部14による規制幅14aは、電線24の被覆28の外径よりも僅かに大きく設定されているが、この図6に示した電線24よりも太い電線に対しては、幅調整板30をスライドさせることにより規制幅14aを広げ、対応させることが可能である。
【0033】
この幅調整板30をスライドさせる構造について、図7に示す。図7にて明らかなように、幅調整板30には長穴30aが形成されている。ここで、縦切り刃12を締結しているボルト12aの軸は、この長穴30aを貫通して顎部6側に締結されている。これによ
り、幅調整板30は、長穴30aの形成されている長さの範囲内で簡易にスライドさせることが可能であり、太さの異なる電線に容易に対応させることができる。
【0034】
この場合、それぞれの縦切り刃12の位置も、枢着軸4の方向に調節可能である。
【0035】
図8及び図9に、この縦切り刃12を枢着軸4の軸方向に沿って移動させ、位置調整する構成を示す。
【0036】
図8には、取付座70及び縦切り刃12の周辺のみが示されている。図8中、左側に示すように、縦切り刃12と、この取付座70との間に予め板状部材72を介在させておく。そして、上述のように、太い電線の被覆を剥ぐ場合、同図右側に示すように、介装された板状部材72を取り外す。これにより、枢着軸4の方向へ板状部材72の板厚分である距離W1だけ移動させることが可能となる。このような板状部材72の取り外しにより、図6では、上側の顎部6(図1)に取り付けられた縦切り刃12が紙面左側へ移動することになる。
【0037】
図9にも、図8と同様に、取付座70a、70b及び縦切り刃12の周辺のみが示されている。図9に示す構成では、予め厚さの異なる2種類の取付座70a、70bを準備しておき、細い電線の場合には、図中左に示した厚い方の取付座70aを選択し、また、太い電線が対象となる場合には、図中右に示した薄い方の取付座70bを選択する。左の取付座70aから右の取付座70bに交換した場合、縦切り刃12の位置は、距離W2だけ顎部6側へ移動する。このような取付座70aから取付座70bへの交換により、図6では、上側の顎部6に取り付けられた縦切り刃12が紙面左側へ移動することになる。
【0038】
ここで、図6に示されているように、1対の縦切り刃12のそれぞれは、規制幅14aの中央位置14bに対して互いに逆側へ僅かに偏って配置されている。図6の状態では、上方の縦切り刃12は電線24の中心よりも紙面左側へ、また、下方の縦切り刃12は電線24の中心よりも紙面右側へずれている。
【0039】
図1に示したように、1対の縦切り刃12は、何れも、握り部8側へ向かうに連れて互いに遠ざかるように刃先が傾斜している。このため、刃先を被覆28に突き刺し、電線24を顎部6側へ引き抜く際、被覆28に対する切断抵抗を低減させようとする力がそれぞれの縦切り刃12の刃先へ働き、刃先が被覆28から浮き上がろうとする。ところが、本実施の形態における縦切り刃12は、それぞれ、電線24の中心位置から外れた位置に刃先が差し込まれている。すなわち、中心から更に外れる方向へ相対的に移動すると、刃先の差込み深さが浅く(切断抵抗が小さく)なる。このため、電線24は、上方の縦切り刃12からは紙面右方向への力を受け、逆に、下方の縦切り刃12からは紙面左方向への力を受ける。これにより、上方及び下方の縦切り刃12のそれぞれの差込み深さ(切断抵抗)のバランスが取れるように、言い換えれば、電線24が規制幅14aの中央位置14b周辺に常に戻されるように位置の自動修正が働く。
【0040】
このように、本実施の形態における1対の縦切り刃12の構成によると、位置検出や複雑な機構を用いずとも、縦切り刃12による切れ目を形成しながら電線24を引き抜くだけで、刃先が常に電線24の中心近傍位置を捉えることが可能となる。
【0041】
次に、図10は顎部6の先端側の外爪部16及び内爪部18の周辺を拡大して示している。この図10から明らかなように、それぞれくさび形に形成された外爪部16及び内爪部18は、互いの頂点同士の間隔D1よりも谷部17の深さD2の方が大きくなるように形成されている。
【0042】
これにより、掴んだ被覆28が谷部17内へ深く入り込むことができるので、電線24に対して顎部6の回動半径方向へ力が加わっても、外爪部16及び内爪部18から外れにくくなる。
【0043】
そして、外爪部16の外側の傾斜面20a(20)は、基端部16b側から頂点16a側に向かって枢着軸4側(回動半径方向内側)へ近付くように傾斜している。
【0044】
これにより、縦切り刃12により形成された切れ目に差し込まれた外爪部16は、その差込み深さが増すに連れて、外側の傾斜面20a(20)に沿った摺動により頂点16aが電線24の中心から外れる方向に移動する。これにより、挟持するだけで、被覆28を引き剥がす方向への力が生じるので、引き剥がしが容易になる。
【0045】
さらに、外爪部16は、その突出長さが、内爪部18の突出長さよりも短くなるように形成されている。図6では、顎部6が閉じられた状態で、内爪部18の頂点18a同士が当接状態となるのに対して、対向する外爪部16側には頂点16a同士の間に隙間D3が形成されている。
【0046】
これにより、電線24の中心から遠い側の内爪部18も、外爪部16と同程度に被覆28へ食い込ませることが可能となる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における電線被覆剥取具について図11を用いて説明する。図11は、外爪部及び内爪部の周辺を拡大して示している。なお、これ以外の部分の構成については、第1の実施の形態と同様であるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0048】
本実施の形態における電線被覆剥取具の外爪部56は、内爪部58よりも厚肉に形成されている。このため、外爪部56が縦切り刃12により形成された切れ目に挿入されたとき、その切れ目が大きく開かれるので、挟持の力が引き剥がしの力として働く。これにより、引き剥がし作業が容易になる。
【0049】
また、内爪部58は、外爪部56よりも薄肉に形成されているので、切れ目の形成されていない被覆28の外側面に食い込ませるのに有利である。
【0050】
このように、本実施の形態における電線被覆剥取具では、第1の実施の形態における効果に加えて、さらに引き剥がしが容易になり、また、掴んだ被覆を良好な状態で保持することが可能となる。
【0051】
尚、上記各実施の形態において、1対の輪切り部が、枢着軸に対して握り部側に設けられた構成を例として示したが、これに限らず、挟持片上に設置されていれば、1対の顎部側に設けられていても構わない。
【0052】
また、上記各実施の形態において、1対の縦切り刃及びガイド部が、枢着軸に対して1対の顎部側に設けられた構成を例として示したが、これに限らず、挟持片上に設置されていれば、握り部側に設けられていても構わない。
【0053】
また、上記第1の実施の形態において、1対の輪切り部の切欠き周辺に形成された丸型の面取り部分は、切欠きに対して両側に設けられている必要はなく、少なくとも一方側に形成されていれば良い。
【0054】
また、上記第1の実施の形態において、板状に形成された1対の輪切り部10は、均一な板厚で形成されている構成、すなわち、その接合端10aが刃状ではなく、断面が矩形となるように端縁に面が形成されている例を示した。このように構成すると、仮に接合端10aが芯線26と接触した場合であっても、その芯線26に傷を生じさせ難いという効果を得ることができる。しかし、これに限らず、接合端10aの断面がくさび形、又はテーパー形状となるような刃状に形成されていても構わない。
【0055】
また、上記第1の実施の形態において、1対の縦切り刃12は、ガイド部14により電線の動きが規制される規制幅14aの中央位置14bに対して、それぞれ、幅方向の両側へ僅かずつ偏って配置された例を図6により示した。しかし、これに限らず、1対の縦切り刃12が同一平面内に配置されていても構わない。
【0056】
また、上記第1の実施の形態において、外爪部16の突出長さは、内爪部18の突出長さに比べて短く形成されている例を図10により示した。しかし、これに限らず、くさび形に形成され、且つ、外爪部16及び内爪部18の頂点間隔が、これらの谷部17の深さよりも小さく形成されていれば、外爪部16の突出長さの方が長くなるように形成されていても、また、同じ突出長さであっても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 電線被覆剥取具
2 1対の挟持片
4 枢着軸
6 1対の顎部
8 1対の握り部
10 1対の輪切り部
10a 接合端(端縁)
10b 穴部
10c 穴部の周縁
10d 切欠き
12 1対の縦切り刃
14 ガイド部
14a 規制幅
14b 中央位置
16、56 1対の外爪部
17 谷部
18、58 1対の内爪部
16a、18a 頂点
16b、18b 基端部
20 傾斜面
20a 外側傾斜面
24 電線
26 芯線
28 被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の挟持片が相対回動可能に枢着軸にて枢着され、前記枢着軸を介して一方側に電線を挟持する1対の顎部を有すると共に、他方側に握り動作による力を受ける1対の握り部を有する、手持ち握り型の電線被覆剥取具であって、
くさび形に形成されると共に、その傾斜面を回動半径方向に面するように配置され、各々の前記顎部の先端側から、互いに対向するように突設された1対の外爪部と、
前記1対の外爪部と略同形状に形成されると共に、前記外爪部の回動半径方向の内側に並設され、且つ、前記外爪部との間で形成される谷部の深さよりも、前記外爪部との頂点同士の間隔の方が小さくなるように配置された1対の内爪部と、
板状に形成され、1対の前記挟持片のそれぞれから、互いの端縁を突き合わせるように延び、これら端縁同士の接合状態において、前記電線の芯線の径よりも大きく且つ前記被覆の外径よりも小さい穴部が形成される切欠きが、それぞれの前記端縁に形成された1対の輪切り部と、
前記挟持片の少なくとも一方側に設けられ、前記枢着軸の軸方向に対する前記電線の位置を規制するガイド部と、
前記ガイド部による前記電線に対する規制幅の略中央位置に、1対の前記顎部が閉じた状態で、互いの刃先同士が前記芯線の径よりも大きく前記被覆の外径よりも小さくなる間隔で対向するように、1対の前記挟持片のそれぞれに振り分けて配置された1対の縦切り刃とを備えた
ことを特徴とする電線被覆剥取具。
【請求項2】
前記外爪部の前記傾斜面のうち、回動半径方向外側に面する外側傾斜面は、前記顎部側の基端部側よりも頂点側の方が、回動半径方向内側に傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載の電線被覆剥取具。
【請求項3】
前記切欠きは、前記穴部の周縁のうち、少なくとも前記枢着軸側の接合端周辺に丸型の面取り加工が施されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電線被覆剥取具。
【請求項4】
1対の前記縦切り刃は、前記枢着軸の軸方向に対して垂直に配置され、前記ガイド部による前記枢着軸の軸方向の規制幅の中央位置を挟んで僅かに両側へ偏って配置されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電線被覆剥取具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−42617(P2013−42617A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178832(P2011−178832)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】