説明

電線被覆用ポリアミド樹脂組成物および樹脂被覆電線

【課題】本発明は、電線被覆用途に適した外観、難燃性、柔軟性と耐屈曲性に優れたポリアミド樹脂組成物で被覆された樹脂被覆電線を得る。
【解決手段】(A)相対粘度が1.5〜7.0、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気下で測定した融解ピーク温度が160℃以上であるポリアミド樹脂90〜99.9重量部および(B)トリアジン系化合物0.1〜10重量部からなる電線被覆用ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆用途に適した外観、難燃性、柔軟性、耐屈曲性および耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物および樹脂被覆電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車のエンジンルーム内などで用いられる電線またはケーブルの絶縁材料に対する温度の要求条件は向上してきている。自動車配線に大量に使用されるポリ塩化ビニル(PVC)は、耐薬品性、難燃性、絶縁性、靭性の面で優れているが、高温下での性能に問題が出始めている。また、PVC樹脂の焼却廃棄時に発生するハロゲン化ガスが、環境悪化に繋がることが指摘されていることから、燃焼時にハロゲン化ガスが発生しない非ハロゲン系難燃性樹脂に切り替わりつつある。
【0003】
非ハロゲン系難燃性樹脂で被覆された電線として、ポリオレフィン系樹脂に水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の難燃剤を多量に添加した樹脂組成物で被覆した電線が一般に使用されている。しかし、これらは燃焼時にハロゲン化ガスを発生しない反面、多量の難燃剤によってポリオレフィン単体に比べて、溶融張力が低くなるために外観が悪く、更に耐屈曲性、柔軟性が低下するために、電線を製品に組み付ける際の加工性が悪いことが問題視されている。
【0004】
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、耐熱性および耐薬品性を有しており、射出成形および押出成形を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品に使用されている。しかし、ポリアミド樹脂単体では難燃性が十分ではないために、電線被覆用途で使用するためには、難燃性を付与する必要がある。かかる難燃性を付与する手段は、各社から様々な方法が提案されている。例えば、ポリアミド樹脂/シアヌル酸メラミンからなる樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。また、難燃性を付与したポリアミド樹脂組成物からなる電線においても、様々な提案がされており、例えば、ポリオレフィン/ポリアミド12/カルボン酸変性ポリオレフィンからなる樹脂組成物に水酸化マグネシウムを多量に添加した樹脂組成物で被覆した電線が提案されている(特許文献2)。更に、ポリアミド樹脂にポリエステル系可塑剤、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、アクリルゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム等を1種または複数種配合した樹脂組成物で被覆した電線は、窒素含有量を制御して非ハロゲン化と難燃性の両立を提案している(特許文献3)。熱可塑性ポリウレタン/ポリアミドエラストマー/重合脂肪系ポリアミド/エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体からなる樹脂組成物に窒素系化合物やリン系化合物を添加した樹脂組成物で被覆した電線も非ハロゲン化と難燃性の両立を提案している(特許文献4)。
【特許文献1】特開昭53−31759
【特許文献2】特開平6−215644
【特許文献3】特開2001−354850
【特許文献4】特開2001−49053
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に具体的に記載されたポリアミド樹脂組成物を用いた場合には溶融粘度の観点から樹脂被覆電線にすることが困難である。また、特許文献2記載の電線は、非ハロゲン化と難燃性を両立するものの、難燃剤を多量に含有するため柔軟性および耐屈曲性が十分ではないという問題がある。また、特許文献3記載の電線は、可塑剤を大量に含有するため、押出し成形時にダイの吐出口に付着物がつく原因となるなど外観が悪いという問題がある。また、特許文献4記載の電線は柔軟性、耐屈曲性は改善されているものの、耐熱性が劣るという問題点がある。
【0006】
本発明では、上記事実に鑑みて検討を進めた結果達成されたものであり、その目的とするところは、電線被覆用途に適した外観、難燃性、柔軟性、耐屈曲性および耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物で被覆された樹脂被覆電線を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂にトリアジン系化合物を特定量添加した結果、前記目的を達成し得ることを見いだし本発明に到達した。すなわち、本発明は、
(1)(A)相対粘度が1.5〜7.0、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気下で測定した融解ピーク温度が160℃以上であるポリアミド樹脂90〜99.9重量部および(B)トリアジン系化合物0.1〜10重量部からなる電線被覆用ポリアミド樹脂組成物、
(2)(1)記載のポリアミド樹脂組成物により被覆された樹脂被覆電線、
(3)前記ポリアミド樹脂塑性物の曲げ弾性率が5.0GPa以下である(2)記載の樹脂被覆電線、
により構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂被覆電線は、外観、難燃性、柔軟性、耐屈曲性および耐熱性が良好であることから各種用途に展開可能であり、例えば、電気・電子関連用途、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品などに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いる(A)ポリアミド樹脂としては、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0011】
また、本発明に用いるポリアミド樹脂は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気下で測定した融解ピーク温度が、160℃以上であることが必要であり、耐熱性の観点からより好ましくは170℃以上である。具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0012】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66コポリマーおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0013】
また、本発明に用いるポリアミド樹脂の重合度は、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が1.5〜7.0の範囲のものであることが必要であり、電線被覆の観点からより好ましくは2.0〜6.5の範囲である。
【0014】
本発明で用いられるポリアミド樹脂の配合量はポリアミド樹脂組成物全体を100重量部として90〜99.9重量部である。90重量部以上とすることによって、ポリアミド樹脂特有の耐熱性を発揮することができる。
【0015】
本発明の電線被覆用ポリアミド樹脂組成物においては(B)トリアジン系化合物を用いることが必要である。トリアジン系化合物とは、環内に3個の窒素原子をもつアジンのことをいい、その具体例としては、(B)トリアジン系化合物は、シアヌル酸メラミン、メラミン、硫酸ジメラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等のメラミン化合物およびポリリン酸アンモニウムをなどが挙げられ、本発明においては、各々単独または混合物の形で用いることができる。本発明では(B)トリアジン系化合物を用いることによって、電線被覆材として必要な難燃性を得ることができる。かかる、(B)トリアジン系化合物の添加量は、0.1〜10重量部であることが必要であり、難燃性、柔軟性及び耐屈曲性の観点から1.0〜8.0重量部の範囲がより好ましい。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、高い耐熱性及び熱安定性を保持するために、ポリアミド樹脂に対して、フェノール系、リン系、チオエーテル系およびアミン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることができる。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱性改良効果の点からは0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用してもよい。
【0017】
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0018】
次にリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジーブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
【0019】
また、本発明のポリアミド樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、および染料・顔料を含む着色剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂組成物の柔軟性は、ISO3167(プラスチック−多目的試験片)に基づいて得られる曲げ試験片を、ISO178(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に基づいて測定測定した曲げ弾性率によって評価することができる。また、ポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率は、絶乾状態(吸水率0.1%以下)、23℃雰囲気下において、5.0GPa以下が好ましく、電線の柔軟性の観点から4.0GPa以下がより好ましい。5.0GPaよりも大きい場合には樹脂被覆電線の柔軟性が不足し、電線を束ねて製品に組みつけることができなくなることが有る。
また、本発明の樹脂被覆電線では上記ポリアミド樹脂組成物で電線を被覆することが必要である。上記のポリアミド樹脂組成物によって電線を被覆することによって、耐熱性、難燃性を有したまま、従来の難燃剤を多量に添加しているポリオレフィン等を用いて電線を被覆した場合に比べて、柔軟なものとすることができる。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造に供する混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリ−ミキサー、ニーダー及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機であり、その製造方法は(A)ポリアミド樹脂、(B)トリアジン系化合物、その他の添加物を供給してポリアミド樹脂の融解ピーク温度+5〜60℃の加工温度で混練する方法などを代表例として挙げることができるが、加工温度が300℃を超えた場合は、トリアジン系化合物が分解するために、300℃以下で溶融混練することが好ましい。また、トリアジン系化合物の分散性を高めるためには、せん断力を比較的強くした方が好ましい。具体的には、2軸押出機を使用して、混練時の樹脂温度がポリアミド樹脂の融解ピーク温度+10〜20℃となるように混練する方法などを好ましく用いることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも可能である。
【0022】
本発明の樹脂被覆電線を製造する方法は特に制限はないが、単軸、2軸の押出し機など通常公知の溶融混練機にポリアミド樹脂組成物を供給してポリアミド樹脂の融解ピーク+5〜60℃の加工温度で混練した後、ダイ内で電線を取囲んで押出しする方法、ダイ出口で電線を取囲んで押出しする方法等により電線を被覆する方法等が挙げられる。また、ダイから出た直後の被覆電線の冷却手段は特に制限されるものではないが、冷却効率、安定性の面から水冷法が好適に用いられる。
【0023】
また、本発明の樹脂被覆電線は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂の吸水による寸法変化、絶縁抵抗の低下を防止するために吸水性を抑制する手段をとってもよい。かかる方法としては、樹脂被覆電線の最外層に吸水性をもたない樹脂を多層押出し成形、コーティング法等により積層する方法、ポリアミドとして、低吸水率のポリアミドを用いる方法、吸水性の低い他樹脂とのアロイ化等が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂被覆電線は電気・電子関連用途、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品という用途に特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、材料特性については以下の方法で行なった。
【0026】
[難燃性]
樹脂被覆電線をISO6722(耐火炎伝播性試験)に基づいて測定した。70秒以内に消炎し、試料上方55mm以上が未燃焼のまま残ったものを○、70秒に以内に消炎し、試料上方55mm〜50mmが未燃焼のまま残ったものを△、70秒以内に消炎しない場合、および/または試料上方50mm以上が燃焼したものを×とした。
【0027】
[曲げ弾性率]
射出成形機(日精工業(株)製PS60E)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件にて、ISO3167多目的試験片A形を作製し、ISO178法(試験速度2mm/min、支点間距離64mm)に基づいて測定した。
【0028】
[耐屈曲性]
試料長100mm、試料径1.2mmの樹脂被覆電線を180°まで折り曲げて、元の位置(0°)に戻す動作を繰り返し行ない、30回屈曲後の状態を観察した。規定回数後に屈曲部表面が白化しないものを○、25〜30回の回数で白化したものを△、25回以下で白化したものを×とした。
【0029】
[耐熱性]
試料長100mm、試料径1.2mmの樹脂被覆電線を150℃のオーブンで1時間熱処理した後、180°まで折り曲げて、元の位置(0°)に戻す動作を繰り返し行なった。30回屈曲後の状態を観察し、規定回数後に屈曲部表面に亀裂が生じないものを○、25〜30回の回数で亀裂が生じたものを△、25回以下で亀裂が生じたものを×とした。
【0030】
[相対粘度]
(A)ポリアミド樹脂をJIS−K6810に基づいて98%硫酸での相対粘度を測定した。
【0031】
[外観]
押出し成形後の樹脂被覆電線の外観を目視観察した。偏肉せず肉厚が一定になっているもの、表面凹凸等がほとんどないものなど外観不良のないものを○、やや外観不良が発生したものを△、外観不良が大きく発生のしたものを×とした。
【0032】
[融解ピーク温度]
示差走査熱量計(PERKIN−ELMER製 DSC7)を用いて、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気下で測定した。また、多成分が混合された樹脂組成物は、ポリアミド樹脂の融解ピーク温度を測定した。
【0033】
[実施例1]
常法に従い重合した(A)ポリアミド6樹脂(東レ(株)製アミラン、相対粘度4.4)とシアヌル酸メラミン化合物(三菱化学(株)製MCA C-0)を、表1に示す割合でドライブレンドした後、2軸押出し機(日本製鋼所(株)製TEX30型)で、シリンダー温度を250℃に設定し、200rpmのスクリュー回転数にて溶融混練し、水冷バスで冷却した後、ストランドカッターでペレット化した。その後、真空乾燥機を用いて真空状態で、処理温度80℃、処理時間12時間の真空乾燥処理を行い、水分含有率を0.07%以下に調整した。
また、導体外径0.813mmの銅線に上記ポリアミド樹脂組成物を、単軸押出機(シンコ−マシナリー社製φ40mm)を用いて、シリンダー温度を250℃に設定し、ダイ内で電線を取囲んで押出し被覆し、肉厚0.2mm、外径寸法1.2mmとなるようにスクリュー回転数および引取り速度を調整し、樹脂被覆電線を作製した。サンプルの評価結果は表1に示すとおり。外観、難燃性、柔軟性、耐屈曲性及び耐熱性の優れた樹脂被覆電線を得ることができた。
【0034】
[実施例2]
(A)ポリアミド6/ポリアミド12共重合樹脂(東レ(株)製アミラン、相対粘度2.8)とシアヌル酸メラミン化合物(三菱化学(株)製MCA C-0)を表1の配合組成で、実施例1と同様にして樹脂被覆電線を得た。サンプルの評価結果は表1に示す通りである。外観、難燃性、柔軟性および耐屈曲性の優れた樹脂被覆電線を得ることができた。
【0035】
[比較例1]
(A)ポリアミド樹脂にシアヌル酸メラミン化合物の代わりに水酸化マグネシウムを表1の配合組成で、実施例1と同様にして樹脂被覆電線を得た。サンプルの評価結果は表1に示すとおりである。水酸化マグネシウムは、10%以下の添加量では十分な難燃性を得ることができない。
【0036】
[比較例2]
ポリアミド6/ポリオレフィンアロイ樹脂(東レ(株)製アミランU121)と、ポリエステル系可塑剤(新日本理化を(株)サンソサイザーN−400)を、表1の配合組成で実施例1と同様にして樹脂被覆電線を得た。サンプルの評価結果は表1に示すとおりである。可塑剤の量が多いため、外観が劣った。
【0037】
[比較例3]
ポリアミドエラストマー(エルフ・アトケム(株)製PEBAX3533SA)と、硫酸ジメラミン(三和ケミカル(株)製アピノン901)を、表1に示す割合でドライブレンドした後、2軸押出し機(日本製鋼所(株)製TEX30型)で、シリンダー温度を180℃に設定し、200rpmのスクリュー回転数にて溶融混練し、水冷バスで冷却した後、ストランドカッターでペレット化した。その後、真空乾燥機を用いて真空状態で、処理温度80℃、処理時間12時間の真空乾燥処理を行い、水分含有率を0.07%以下に調整した。
また、導体外径0.813mmの銅線に上記ポリアミドエラストマー樹脂組成物を、単軸押出機(シンコ−マシナリー社製φ40mm)を用いて、シリンダー温度を180℃に設定し、ダイ内で電線を取囲んで押出し被覆し、肉厚0.2mm、外径寸法1.2mmとなるようにスクリュー回転数および引取り速度を調整し、樹脂被覆電線を作製した。サンプルの評価結果は表1に示すとおり。難燃性及び耐熱性が劣っていた。
【0038】
[比較例4]
低密度ポリエチレン樹脂(三井化学(株)製ウルトゼックス20100J、密度=0.920g/m)100重量部に無水マレイン酸0.2重量部、2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.1部をドライブレンドし、2軸押出し機(日本製鋼所(株)製TEX30型)で、シリンダー温度を220℃に設定し、200rpmのスクリュー回転数にて溶融混練し、水冷バスで冷却した後、ストランドカッターでペレット化し、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(メルトインデックス(MI)190℃=3g/10分、密度=0.920g/m)を得た。更に、上記無水マレイン酸ポリエチレン樹脂、ポリアミド12樹脂(東レ(株)製アミラン)、高密度ポリエチレン樹脂(三井化学(株)製ハイゼックス6200B、MI190℃=0.4g/10分、密度=0.958g/m)、ステアリン酸、4,4‘チオビス−(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)(化合物1)を表1に示す割合でドライブレンドした後、2軸押出し機(日本製鋼所(株)製TEX30型)で、シリンダー温度を220℃に設定し、200rpmのスクリュー回転数にて溶融混練し、水冷バスで冷却した後、ストランドカッターでペレット化した。その後、真空乾燥機を用いて真空状態で、処理温度80℃、処理時間12時間の真空乾燥処理を行い、水分含有率を0.07%以下に調整した。
【0039】
また、導体外径0.813mmの銅線に上記樹脂組成物を、単軸押出機(シンコ−マシナリー社製φ40mm)を用いて、シリンダー温度を220℃に設定し、ダイ内で電線を取囲んで押出し被覆し、肉厚0.2mm、外径寸法1.2mmとなるようにスクリュー回転数および引取り速度を調整し、樹脂被覆電線を作製した。
サンプルの評価結果は表1に示すとおり。耐熱性が劣っていた。
【0040】
【表1】

【0041】
[実施例3〜4]
(A)ポリアミド樹脂とシアヌル酸メラミン化合物(三菱化学社製MCA C-0)の配合組成が異なる以外は、実施例1と同様の方法で樹脂被覆電線を得た。
各サンプルの評価結果は表2に示すとおり。外観、難燃性、柔軟性及び耐屈曲性の優れた樹脂被覆電線を得ることができた。
【0042】
[比較例5〜6]
(A)ポリアミド樹脂とシアヌル酸メラミン化合物(三菱化学社製MCA C-0)の配合組成が異なる以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆電線を得た。
各サンプルの評価結果は表2に示すとおり。シアヌル酸メラミン化合物が、0.1重量%よりも小さい場合は、十分な難燃性を得ることができず、10重量%を超えた場合は、耐屈曲性が劣った。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例5〜6]
(A)ポリアミド樹脂組成物の相対粘度が異なる以外は実施例1と同様の方法で樹脂被覆電線を得た。
各サンプルの評価結果は表3に示すとおり。外観、難燃性、柔軟性及び耐屈曲性の優れた樹脂被覆電線を得ることができた。
【0045】
[比較例7〜8]
(A)ポリアミド樹脂の相対粘度が異なる以外は、実施例1と同様の方法で樹脂被覆電線を得た。
各サンプルの評価結果は表3に示すとおり。相対粘度が1.5より小さい場合は肉厚が安定しないため外観が悪く、更に耐屈曲性が劣った。また、相対粘度8.0以上ではメルトフラクチャーによって波打ち模様が発生し外観が悪かった。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)相対粘度が1.5〜7.0、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度20℃/分、窒素雰囲気下で測定した融解ピーク温度が160℃以上であるポリアミド樹脂90〜99.9重量部および(B)トリアジン系化合物0.1〜10重量部からなる電線被覆用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のポリアミド樹脂組成物により被覆された樹脂被覆電線。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率が5.0GPa以下である請求項2記載の樹脂被覆電線。

【公開番号】特開2006−152039(P2006−152039A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341324(P2004−341324)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】