説明

電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物

【課題】安定剤としてハイドロタルサイトおよび有機酸亜鉛塩を用いた塩化ビニル系樹脂組成物の着色性、耐熱性、電気絶縁性を改善することによって、電線被被覆材料として好適な電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.001〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.001〜10質量部及び(c)テレフタル酸ジアルキルエステル化合物5〜100質量部を含有することを特徴とする電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、着色性、電気絶縁性、耐熱性に優れた電線被覆材料として好適な電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は安価で、耐熱性、耐候性、電気絶縁性に優れることから、電線被覆材料として多く使用されている。
【0003】
通常、塩化ビニル系樹脂には、加熱成形加工時、製品の使用時の熱や光に対する安定性を向上するため、金属化合物を主とした安定剤が用いられる。近年、環境あるいは人体等への悪影響を考慮して、比較的優れた性能を示すものの毒性が心配されるカドミウム系、鉛系、有機錫系などの安定剤に代えて、前者と比較して低毒のバリウム/亜鉛系、カルシウム/亜鉛系などの安定剤の開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、有機酸亜鉛塩を配合した塩化ビニル系樹脂組成物が開示され、特許文献2にはハイドロタルサイトを配合した塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、電線被覆材料は、通常、柔軟性が要求されるものである為、可塑剤成分が使用されており、例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジアルキルエステル化合物などが主として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−204525号公報
【特許文献2】特開2008−274032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、低毒性の安定剤は、カドミウム系、鉛系、有機錫系などの安定剤と比較して耐熱性が不十分であるといったことがあり、それを補うための種種の安定化助剤が使用されている。また、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物において安定剤として特にハイドロタルサイトや有機酸亜鉛塩を用いた場合、着色性、耐熱性および電気絶縁性について改善の余地が十分にあった。
【0007】
そこで本発明の目的は、安定剤としてハイドロタルサイトおよび有機酸亜鉛塩を用いた塩化ビニル系樹脂組成物の着色性、耐熱性、電気絶縁性を改善することによって、電線被被覆材料として好適な電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂に対し、ハイドロタルサイト化合物、有機酸亜鉛塩及びテレフタル酸ジアルキルエステル化合物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物が、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0009】
即ち、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.001〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.001〜10質量部及び(c)テレフタル酸ジアルキルエステル化合物5〜100質量部を含有することを特徴とする電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、さらに、(d)β−ジケトン化合物0.001〜5質量部を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、前記(a)ハイドロタルサイト化合物が下記式(I)、
Mgx1Znx2Al2・(OH)2x1+2x2+4・(CO3)1-y1/2(ClO4)y1・mH2O (I)
(式中、x1、x2及びy1は各々下記式で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す。
0≦x2/x1<10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2)で表されるものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、前記(b)有機酸亜鉛塩が、カルボン酸の亜鉛塩であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、前記(c)テレフタル酸ジアルキルエステル化合物が、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、着色性、耐熱性、電気絶縁性に優れた電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物について詳細に説明する。
【0016】
本発明に使用される塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などその重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂を挙げることができる。さらに、上記樹脂に加えて、上記樹脂相互のブレンド品、あるいは、上記塩素含有樹脂と、他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体などを挙げることができる。
【0017】
本発明に使用される(a)成分であるハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(I)で表される、マグネシウムとアルミニウム、または亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられ、また、結晶水を脱水したものであってもよい。
【0018】
Mgx1Znx2Al2・(OH)2x1+2x2+4・(CO3)1-y1/2(ClO4)y1・mH2O (I)
(式中、x1、x2及びy1は各々下記式で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す。
0≦x2/x1<10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2)
【0019】
上記ハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、合成品であってもよい。該合成品の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平3−36839号公報、及び特開昭61−174270号公報などに記載の公知の方法を例示することができる。また、本発明においては、上記ハイドロタルサイト化合物は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能であるが、好ましくは、レーザー回折散乱法により測定した平均粒径が5μm以下、特に好ましくは、1μm以下である。また、ハイドロタルサイトのBET比表面積は、好ましくは30m/g以下、より好ましくは20m/g以下である。
【0020】
また、上記ハイドロタルサイト化合物は、その表面をステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0021】
上記ハイドロタルサイト化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.005〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。0.005質量部未満の使用では、耐熱性が低下するおそれがあり、10質量部を超えて使用した場合には、着色が増大するおそれがある。
【0022】
本発明に使用される(b)成分である有機酸亜鉛塩としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類の亜鉛塩などが用いられる。該カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、クロロステアリン酸、12−ケトステアリン酸、フェニルステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ブラシジン酸および類似酸ならびに獣脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸及び綿実油脂肪酸などの天然に産出する上記の酸の混合物、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、エチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、サリチル酸、5−t−オクチルサリチル酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。また、該有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどがあげられ、また、該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフエノールなどが挙げられ、これらは正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性錯体であってもよい。有機酸亜鉛塩としては、カルボン酸亜鉛塩が好ましく、ステアリン酸亜鉛塩、ラウリン酸亜鉛塩が特に好ましい。
【0023】
上記有機酸亜鉛塩の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.005〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部であり、0.005質量部未満の使用では、耐熱性が低下するおそれがあり、10質量部を超えて使用した場合には、高温での使用時に黒化を生じるおそれがあるため好ましくない。
【0024】
本発明で使用される(c)成分であるテレフタル酸ジアルキルエステル化合物としては、例えば、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジ第二ブチル、テレフタル酸ジ第三ブチル、テレフタル酸ジアミル、テレフタル酸ジイソアミル、テレフタル酸ジ第三アミル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸ジノニル、テレフタル酸ジデシル、テレフタル酸ジウンデシル、テレフタル酸ジドデシルなどが挙げられるが、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)が、可塑化効率に優れるため好ましい。
【0025】
上記テレフタル酸ジアルキルエステル化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部である。5質量部未満の使用では、柔軟性を付与する効果が不十分であるおそれがある。100質量部を超えて使用した場合には、物性を低下するおそれがある。
【0026】
また、上記テレフタル酸ジアルキルエステル化合物は主として可塑剤成分として機能するものであるが、本発明の組成物には、その他の通常塩化ビニル系樹脂に用いられる可塑剤を配合することができる。
【0027】
テレフタル酸ジアルキルエステル化合物以外の可塑剤としては、通常塩化ビニル系樹脂に用いられている可塑剤を任意に使用することができ、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレートなどのフタレート系可塑剤(オルト体);ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのホスフェート系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどと、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などとを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤などが挙げられる。
【0028】
上記(c)成分以外の可塑剤の配合量は、本発明の(c)成分であるテレフタル酸ジアルキルエステル化合物の機能を阻害しない範囲、即ち、(c)成分であるテレフタル酸ジアルキルエステル化合物の使用量を超えない範囲において任意の量使用することができるが、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、50質量部未満、特に10質量部未満の範囲で使用される。
【0029】
また、本発明の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物には、有機酸亜鉛塩以外の低毒性の有機酸金属塩を使用することができ、該有機酸金属塩としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類の金属(Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Al)塩などがあげられ、該カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、クロロステアリン酸、12−ケトステアリン酸、フェニルステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ブラシジン酸および類似酸ならびに獣脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸及び綿実油脂肪酸などの天然に産出する上記の酸の混合物、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、エチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、サリチル酸、5−t−オクチルサリチル酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。また、該有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどが挙げられる。また、該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフエノールなどがあげられ、これらは正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性錯体であってもよい。
【0030】
上記亜鉛以外の有機酸金属塩の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0031】
また、本発明の組成物に(d)β−ジケトン化合物を使用することにより、着色性を改良する効果が期待されるため好ましい。該β−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチルベンゾイル)メタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,6−ジメチル−2,4−ジオキシシクロヘキサン−1カルボン酸メチル、2−アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2−ベンゾイルシクロヘキサンなどがあげられる。また、これらβ−ジケトン化合物の金属塩も使用することができ、該β−ジケトン金属塩を提供し得る金属種としては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、アルミニウム、錫、アルキル錫などがあげられる。
【0032】
上記β−ジケトン化合物の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部である。
【0033】
また、本発明の組成物には、更に、通常塩化ビニル系樹脂用添加剤として用いられている各種の添加剤、例えば、有機ホスファイト化合物、フェノール系酸化防止剤、硫黄系抗酸化剤、エポキシ化合物、ポリオール類、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤等を配合することもできる。
【0034】
上記有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C1215混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイトなどが挙げられる。上記有機ホスファイト化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0035】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン−ビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミドなどが挙げられる。上記フェノール系抗酸化剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0036】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。上記硫黄系抗酸化剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0037】
上記エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油などのエポキシ化動植物油、エポキシ化ステアリン酸メチル、−ブチル、−2−エチルヘキシル、−ステアリルエステル、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロヘキセンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシ化合物などが挙げられる。上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0038】
上記ポリオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールのステアリン酸ハーフエステル、ビス(ジペンタエリスリトール)アジペート、グリセリン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。上記ポリオール化合物の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0039】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類などが挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0040】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラエチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカンなどのヒンダードアミン化合物が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である。
【0041】
充填剤の具体例としては炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナけい酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、けい酸アルミニウム、けい酸マグネシウム、けい酸カルシウム、ゼオライト等のけい酸金属塩、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモンなどである。
【0042】
また、本発明の組成物には、通常塩化ビニル系樹脂に使用される安定化助剤を添加することができる。かかる安定化助剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩などが挙げられる。
【0043】
その他、本発明の組成物には、必要に応じて通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合することができる。
【0044】
本発明の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂と添加剤とをドライブレンドで混合してもよく、添加剤の一部をプレブレンドした後、残りの成分とドライブレンドしてもよい。ドライブレンドの後に、例えば、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサーなどを用いて混合し、単軸あるいは二軸押出機等を用いて混練してもよい。
【0045】
また、本発明の組成物は、塩化ビニル系樹脂の加工方法には無関係に使用することが可能であり、例えば、ロール加工、押出成型加工、溶融流延法、加圧成型加工等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0047】
(実施例1)
下記の配合物を予備混練し、ロール条件170℃、30rpmで7分間ロール上で混練した後、190℃で30分間もしくは60分間プレス加工した1mm厚シートについて汎用型色差計カラーエースTC−8600A(有限会社東京電色製)を用いて黄色度を測定した。
また、200℃のギヤーオーブンに入れて黒化するまでの時間(分、熱安定性)を測定した。また、JIS K 6723に従い、200℃でコンゴーレッド紙を用いた熱安定性試験(コンゴーレッド試験)を行った。
さらに、印加電圧500V、温度30℃、湿度42%の条件にて体積固有抵抗率(VR値)を測定した。
【0048】
また、JIS K 7113に準じて、規定の試験片を作成して引張試験を実施し、伸び(%)及び引張り強さ(MPa)を測定した。さらに、その試験片を100℃のギヤーオーブン中にて168時間劣化促進した後に引張試験を実施し、伸び(%)及び引張強さ(MPa)を測定した。劣化試験前後の伸びから伸び残率(%)を求めた。
その結果を〔表1〕に示す。
【0049】
(配合) 質量部
塩化ビニル樹脂(重合度1000) 100
炭酸カルシウム 20
無水ケイ酸 0.2
ステアリン酸亜鉛 0.5
ハイドロタルサイト 2.7
(組成式:MgAl(OH)12CO・3HO、
BET比表面積:9m/g、平均粒径:0.48μm)
ジベンゾイルメタン 0.15
テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル− 0.3
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
ソルビトール 0.05
水酸化マグネシウム 0.1
試験化合物(表1) 表1
【0050】
【表1】

*1:テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
*2:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
*3:フタル酸ジイソノニル
*4:トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)
【0051】
上記実施例より明らかなように、本願発明の組成物は、高温放置下での着色性が少なく、コンゴーレッド試験において高い耐熱性を示し、さらにVR試験において高い絶縁性を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.001〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.001〜10質量部及び(c)テレフタル酸ジアルキルエステル化合物5〜100質量部を含有することを特徴とする電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、(d)β−ジケトン化合物0.001〜5質量部を含有する請求項1記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)ハイドロタルサイト化合物が下記式(I)、
Mgx1Znx2Al2・(OH)2x1+2x2+4・(CO3)1-y1/2(ClO4)y1・mH2O (I)
(式中、x1、x2及びy1は各々下記式で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す。
0≦x2/x1<10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2)で表されるものである請求項1または2記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)有機酸亜鉛塩が、カルボン酸の亜鉛塩である請求項1〜3のうち何れか一項記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)テレフタル酸ジアルキルエステル化合物が、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−190320(P2011−190320A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56271(P2010−56271)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】