説明

電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物

【課題】被覆層の製造効率が良好で、十分な強度を有するとともに中心導体に対する密着性が良好な電線被覆用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)ならびに(D);
(A)脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートの混合物、
(B)環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)下記式(4a)で表される化合物
【化1】


(式(4a)中、R8はエチレン性不飽和基を有する1価の有機基であり、R9は水素原子又はエチレン性不飽和基を有していてもよい1価の有機基である)
を含有する電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線、特に動力用電線、電話線、電子機器間又は電子機器内の接続用電線等の被覆用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
動力用電線、電線、電話線ケーブル、電子機器間又は電子機器内の接続用電線、自動車用電線等は、絶縁体として電気特性、伝送特性に優れたポリエチレン(PE)とし、外側のシースにPEやポリ塩化ビニル(PVC)を用いたものが多い。テレビのリード線などにおいては、PE被覆、又はその外側シースにゴムを用いたものが使用されている。また、自動車用電線の被覆にはPVC、PET、架橋PE等が広く使用されている(特許文献1〜4)。また、電線被覆層に放射線硬化性樹脂を用いた例も開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−312925号公報
【特許文献2】特開2005−187595号公報
【特許文献3】特開2006−348137号公報
【特許文献4】特開2007−45952号公報
【特許文献5】特開2008−251435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電線被覆材には、保護材としての強度が強く求められたものの、被覆層の製造効率や、中心導体に対する密着性が不十分な場合があった。
従って、本発明の目的は、被覆層の製造効率が良好で、十分な強度を有するとともに、中心導体に対する密着性が良好な電線被覆用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、従来のPVCやPEに代わる電線被覆材を開発すべく、ウレタン(メタ)アクリレート系の放射線硬化性樹脂組成物に着目し、種々検討した結果、特定構造のウレタン(メタ)アクリレートと、環状構造と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物と、リン酸エステル構造を有する特定の化合物とを組み合せて用いれば、被覆層の製造効率が良好で、十分な強度を有するにもかかわらず、中心導体に対する密着性が良好な電線被覆材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)ならびに(D);
(A)脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートの混合物、
(B)環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)下記式(4a)で表される化合物
【0007】
【化1】

【0008】
(式(4a)中、R8はエチレン性不飽和基を有する1価の有機基であり、R9は水素原子又はエチレン性不飽和基を有していてもよい1価の有機基である)
を含有する電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
本発明において、電線被覆層(単に被覆層ということもある)とは、電線に用いられる樹脂被覆層であって、銅やアルミニウム等の金属線からなる中心導体の外側に設けられた樹脂製被覆層であれば特に限定されるものではなく、典型的には、中心導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線の絶縁層、単数又は複数の絶縁電線をシース層で被覆したケーブルのシース層、シールド層を有するケーブルのシールド層の外側に接して設けられるシース層等が含まれる。また、電線被覆材とは、電線被覆層の製造に用いられる樹脂組成物をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物を用いれば、紫外線等の放射線照射により簡便にかつ均一に強度(特にヤング率及び破断伸びで表される強度)及び耐熱性に優れた電線被覆層が形成され、かつ当該保護層は中心導体に対する密着性が良好であり、電線被覆層を効率よく製造することができる。
本発明の放射線硬化性である電線被覆材を用いることにより、薄型の被覆層であっても十分な強度を有する電線を得ることができるため、動力用電線、例えばモーターコイルなど動力用電線に、特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の組成物を構成する各成分について説明する。
本発明の(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、(A1)脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、(A2)環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートおよび(A3)ポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートの混合物である。
【0012】
(A1)脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族ポリオールに由来する比較的柔軟な構造を有しているため、硬化物のヤング率を低下させ、破断伸びを増大させて、例えば被覆電線等をボビンに巻き取る場合において加わる曲げ応力に対する耐性を向上させることができる。(A1)成分は、下記式で表される構造を有することが好ましい。
HA−(DI−aPOL−)m−DI−HA
[上記式において、aPOLは脂肪族系ポリオール由来の構造であり、DIはジイソシアネート由来の構造であり、HAは水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造である。mは1〜4であり、1が好ましい。]
【0013】
(A2)環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、環状構造を有するポリオールに由来する比較的剛直な構造を有しているため、硬化物のヤング率を増大させ、破断伸びを低下させて、外部応力が加わった場合において中心導体を有効に保護することができる。(A2)成分は、下記式で表される構造を有することが好ましい。
HA−(DI−cPOL−)n−DI−HA
[上記式において、cPOLは環式ポリオール由来の構造であり、DIはジイソシアネート由来の構造であり、HAは水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造である。nは1〜4であり、1が好ましい。]
【0014】
(A3)ポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール由来の構造を有さず、分子量が比較的小さく剛直な構造を有している。また、(A3)成分は、分子量が小さいためウレタン結合の密度を上げることができ、硬化物中で形成される水素結合の密度を増大させて、外部応力に対する耐性に優れた電線被覆層を形成することができる。(A3)成分は、下記式で表される構造を有することが好ましい。
HA−DI−HA
[上記式において、DIはジイソシアネート由来の構造であり、HAは水酸基含有(メタ)アクリレート由来の構造である。]
【0015】
これら(A)で表される特定構造のウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、耐熱性に優れ、中心導体に対する密着性が良好な電線被覆層を形成することができる。
【0016】
(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、(a1)脂肪族系ポリオール、(b)ポリイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A1)、(a2)環式ポリオール、(b)ポリイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A2)およびポリオールを用いずに(b)ポリイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレート(A3)を混合して得ることができる。
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、(a1)脂肪族系ポリオール、(a2)環式ポリオール、(b)ポリイソシアネートおよび(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得ることもできる。この場合、合成原料である(a1)、(a2)、(b)及び(c)の使用量は、所望の(A1)、(A2)及び(A3)の質量比並びに各ウレタン(メタ)アクリレートの構造から理論上必要とされる各原料のモル比を計算して決定することが好ましい。
【0017】
(a1)脂肪族系ポリオールは、脂肪族構造を有しており、かつ、芳香環構造や脂環構造等の環状構造を有しないポリオールであれば特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらの中では、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0018】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられる(a1)脂肪族系ポリオールの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求められるポリスチレン換算数平均分子量として1,000〜4,000が好ましく、1,500〜2,500がさらに好ましい。(a1)ポリオールの分子量が上記範囲にあることにより、電線被覆層の力学特性、特に破断伸びを好ましい範囲とすることができる。
【0019】
(a1)脂肪族系ポリオールの市販品としては、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学製)、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、PPG4000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等が挙げられ、これらの市販品の中から合成目的とするウレタン(メタ)アクリレートの種類に応じて好適な分子量の製品を選択して用いることができる。
【0020】
(a2)環式ポリオールとしては、芳香環構造や脂環構造等の環状構造を有しているポリオールであれば特に限定されないが、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオール及びそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、キレンオキシド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレノキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレノキシド付加ポリオール等が挙げられる。これらの中で、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオールが好ましい。
【0021】
(a2)環式ポリオールの好ましい分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求められるポリスチレン換算数平均分子量として300〜1,000が好ましく、300〜800がさらに好ましい。(a2)ポリオールの分子量が上記範囲にあることにより、電線被覆層の力学特性、特に破断伸びを好ましい範囲とすることができる。
【0022】
(a2)環式ポリオールとしては、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂製)、トリシクロデカンジメタノール(三菱化学製)等の市販品として入手することもできる。
【0023】
なお、(a1)脂肪族系ポリオールや(a2)環式ポリオールとしては、上記ポリエーテルポリオールの他に、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等を用いることもできる。
【0024】
(b)ポリイソシアネート、特にジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましい。これらのポリイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(c)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
これら(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートの合成反応においては、例えばナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0027】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートを合成するときの各原料の添加順序は、特に限定されないが、(b)ポリイソシアネートと(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを添加した後に(a1)及び/又は(a2)ポリオールを添加することが好ましい。このような順序で各原料を添加することにより、ポリオールとポリイソシアネートを最初に添加した場合に較べて、ポリオールとポリイソシアネートが交互に結合したオリゴマーが生じにくく、目的とする(A1)、(A2)及び(A3)の混合物を得ることが容易になるためである。
【0028】
(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、電線被覆層の力学強度、及び塗布性の点から、組成物の全量100質量%に対して、合計で、通常30〜80質量%配合され、特に40〜70質量%配合されるのが好ましい。
(A1)、(A2)及び(A3)の各成分の配合量は、目的とする電線被覆層の物性に対応して調整することができる。(A1)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、組成物の全量100質量%に対して、通常20〜50質量%配合されるが、好ましくは22〜40質量%配合される。(A2)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、組成物の全量100質量%に対して、通常1〜10質量%配合されるが、好ましくは2〜8質量%配合される。(A3)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、組成物の全量100質量%に対して、通常1〜29質量%配合されるが、好ましくは10〜25質量%配合される。
【0029】
(B)成分である、環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物は、環状構造を有する重合性単官能化合物である。(B)成分として、この化合物を用いることにより、本発明組成物により得られる電線被覆層の機械的特性が調整され中心導体に対する密着性と機械強度の両立が図られる。ここで、環状構造としては、脂環式構造、窒素原子又は酸素原子を含む複素環構造、芳香族環等が挙げられ、このうち脂環式構造が特に好ましい。
【0030】
このような、環状構造を有する重合性単官能性化合物(B)としては、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、下記式(1)〜(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す)
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、R4、R5、R6及びR7は互いに独立で、水素原子又はメチル基を示し、qは1〜5の数を示す)
【0035】
これら重合性単官能化合物(B)のうち、環状構造を有する化合物が好ましく、中でもイソボルニル(メタ)アクリレート等の架橋環状構造を有する化合物が好ましい。環状構造を有する(B)成分は剛直な構造を有するため、硬化物のヤング率が過小となることを防止して、電線被覆層として好適なヤング率と破断強度、破断伸びの物性のバランスをとることができる。
【0036】
これら重合性単官能化合物(B)の市販品としては、IBXA(大阪有機化学工業製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成製)を使用することができる。
【0037】
これら(B)成分である環状構造を有する単官能化合物は、電線被覆層の強度及び中心導体に対する密着性の点から、組成物の全量100質量%に対して、15〜60質量%、さらに25〜50質量%、特に30〜50質量%配合されるのが好ましい。ただし、(B)成分であっても、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタムは、後述の(D)成分と共存すると組成物の保存安定性を低下させる場合があるため、組成物全量の5質量%以下とすることが好ましく、2質量%がさらに好ましく、全く配合しないことが最も好ましい。
また、(B)成分がイソボルニル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートの配合量が、(B)成分の全量100質量%に対して、50質量%以上であることがさらに好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートを用いることにより、機械的強度に優れた硬化物を得ることができる。
【0038】
本発明の組成物には、発明の効果を阻害しない程度において、(C)2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を配合することができる。(C)2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は、重合性多官能性化合物である。(C)成分の具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
これらの(C)2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は、組成物の全量100質量%に対して、0〜5質量%配合することができるが、より好ましくは0〜2質量%であり、全く配合しないことが最も好ましい。5質量%を超えて配合すると、電線被覆層が過度に剛直となって、機械的強度と中心導体に対する密着性が損なわれる場合がある。
【0040】
本発明の組成物に用いられる(D)成分は、下記式(4a)で表される化合物である。(D)成分を配合することにより、中心導体に対する密着性が改善される。(D)成分は、そのリン原子に結合した水酸基が中心導体を構成する金属原子に配位し、エチレン性不飽和基が樹脂マトリックスと結合することにより密着性を改善するものと推定される。このため、リン酸の有する全ての水酸基がエステル化された化合物の場合には水酸基を有しないため密着性の改善には効果的でない。また、(D)成分のリン酸エステルに代えてカルボン酸エステルとした場合には、密着性改善の効果が過小である。
【0041】
【化4】

【0042】
(式(4a)中、R8はエチレン性不飽和基を有する1価の有機基であり、R9は水素原子又はエチレン性不飽和基を有していてもよい1価の有機基である)
(D)成分は、好ましくは下記式(4)で表される化合物である。
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは0〜1である。jは1〜2であり、kは3−jである)
【0045】
上記式(4)で表される化合物の市販品としては、KAYAMER PM−2、PM−21(日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0046】
(D)成分の配合量は、電線被覆層の中心導体に対する密着性及び強度の点から、組成物全量100質量%に対して、0.01〜1質量%、さらに0.05〜0.5質量%が好ましい。
【0047】
本発明の組成物には、さらに電線被覆層の中心導体に対する密着性及び耐候性の点から、(E)シリコーン化合物を配合することもできる。当該シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ウレタンアクリレート変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0048】
さらに、本発明の組成物には(F)重合開始剤を配合することができる。(F)重合開始剤としては、光開始剤が好ましい。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製);LucirinTPO(BASF製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0049】
(F)重合開始剤は、組成物の全量100質量%に対して、0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
【0050】
本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0051】
なお、本発明の組成物は、放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいい、典型的には紫外線である。
【0052】
本発明の組成物の粘度は、25℃において、0.5〜10Pa・sであることが好ましく、1〜5Pa・sであることがさらに好ましい。粘度がこの範囲内にあることによって、電線を製造する際に電線被覆材の塗布が容易となり、電線の製造効率を改善することができる。
【0053】
本発明の組成物を硬化して得られる電線被覆層のヤング率は、電線被覆層の種類によって異なるが、被覆電線の絶縁層の場合には、300〜1,500MPaであることが好ましく、400〜1,200MPaであることがさらに好ましく、500〜1,000MPaであることが特に好ましい。ヤング率がこの範囲内にあることによって、外部応力に対して強固な電線被覆層を得ることができる。
【0054】
本発明の組成物を硬化して得られる電線被覆層の破断強度と破断伸びは、電線被覆層の種類によって異なるが、被覆電線の絶縁層の場合には、破断強度が、20〜60MPaであることが好ましく、30〜50MPaであることがさらに好ましい。破断伸びは、80〜250%であることが好ましく、90〜200%であることがさらに好ましい。破断強度と破断伸びがこの範囲内にあることによって、外部応力に対する耐久性の高い電線を得ることができる。
【0055】
本発明組成物は、電線、特に動力用電線、電話線、自動車用電線等の被覆用放射線硬化性樹脂組成物として有用である。本発明の組成物を塗布して放射線を照射すれば、均一かつ強度に優れた電線被覆層が容易に形成できる。また、本発明により形成された電線被覆層は、優れた強度を有し、かつ中心導体に対する密着性が良好であることから、配線の操作性が良好である。
【実施例】
【0056】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
[製造例1:(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、イソボロニルアクリレート15.38g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.015g、トルエンジイソシアナート7.80g、ジブチル錫ジラウレート0.023gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20℃〜15℃になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレート6.00gを加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、上記の混合物に数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール28.34g、数平均分子量400のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール1.79g、ジブチル錫ジラウレート0.022gを加え、1時間室温で攪拌後、油浴にて65℃で2時間拡販した。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。各原料の使用量は、下記式(5)で表される構造を有するウレタンアクリレートを5.0質量部、下記式(6)で表される構造を有するウレタンアクリレートを30.0質量部及び下記式(7)で表される構造を有するウレタンアクリレートを18.0質量部得るための使用量に相当する。得られた(A)ウレタンアクリレートを、UA−1とする。UA−1は、下記式(5)〜(7)で表される構造を有するウレタンアクリレートの混合物である。
【0058】
HEA−TDI−DA400−TDI−HEA (5)
HEA−TDI−PTMG2000−TDI−HEA (6)
HEA−TDI−HEA (7)
[式(5)〜(7)中で、HEAは、ヒドロキシエチルアクリレート由来の構造を示し、TDIは、トルエンジイソシアナート由来の構造を示し、DA400は、数平均分子量400のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール由来の構造を示し、PTMG2000は、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール由来の構造を示す]
【0059】
[比較製造例1:(A)成分に該当しないウレタン(メタ)アクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、トルエンジイソシアナート13.46g、ジブチル錫ジラウレート0.024gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20℃〜15℃になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレート8.98gを加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、上記の混合物に数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール77.46g加え、1時間室温で攪拌後、油浴にて65℃で2時間拡販した。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートを、UA−2とする。UA−2は、前記式(6)で表される構造を有するウレタンアクリレートである。
【0060】
[比較製造例2:(A)成分に該当しないウレタン(メタ)アクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、イソボロニルアクリレートアクリレート36.92g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.015g、トルエンジイソシアナート11.54g、ジブチル錫ジラウレート0.025gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20℃〜15℃になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレート7.70gを加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、上記の混合物に数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール38.15g、数平均分子量400のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール5.63g、ジブチル錫ジラウレート0.025gを加え、1時間室温で攪拌後、油浴にて65℃で2時間拡販した。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。各原料の使用量は、前記式(5)で表される構造を有するウレタンアクリレートを11.2質量部、前記式(6)で表される構造を有するウレタンアクリレートを40.0質量部得るための使用量に相当する。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA−3とする。UA−3は、前記式(5)〜(6)で表される構造を有するウレタン(メタ)アクリレートの混合物である。
【0061】
実施例1〜3及び比較例1〜5
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0062】
試験例
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0063】
1.ヤング率:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、ヤング率測定用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0064】
2.破断強度および破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度および破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
【0065】
3.ガラス転移温度(Tg):
樹脂液をガラス板上にアプリケーターを用いて200μm厚になるよう塗布し、1.0J/cm2の照射量で光硬化させ、硬化フィルムを得た。このフィルムから3mm×35mmの試験片を切り出し、ORIENTEC社製RHEOVIBRON DDV−01FPにて動的粘弾性を測定した。振動周波数3.5Hzの損失正接(tanδ)の最大値を示す温度をガラス転移温度と定義し、ガラス転移温度を評価した。
【0066】
4.銅及びアルミに対する密着性:
実施例および比較例で得られた組成物に関し、その硬化物の密着力を測定した。
液状組成物を190μm厚のアプリケーターを用いて銅板上に塗布し、窒素雰囲気下で0.5J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約130μmの硬化フィルムを得た。このサンプルを温度23℃、湿度50%下に24時間静置した。その後、この硬化フィルムから幅10mmとなるように短冊状サンプルを銅版上で作成した。このサンプルを引っ張り試験機を用いてJIS Z0237に準拠して密着力試験を行った。引張速度は50mm/minでの抗張力から金属との密着力を求めた。また、銅板に替えてアルミ板を用いた場合の密着力も同様にして評価した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1において、
イソボルニルアクリレート:IBXA(大阪有機合成社製)
アクリロイルモルホリン:ACMO(興人社製)
ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製)
Irgacure 184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製)
Igranox 254:トリエチレングリコ−ルビス[3(3−T−ブチル,4−ヒドロキシ,5−メチルフェニル)プロピオネ−ト](チバスペシャルティケミカルズ社製)
PM−21:前記式(4)で、R=メチル基、n=1、j=2、k=1である化合物(KAYAMER PM−21、日本化薬社製)
【0069】
表1から明らかなように、成分(A)、(B)及び(D)を含有する本発明の樹脂組成物で形成された硬化物は、電線被覆材として良好な性質を有し、かつ中心導体に対する密着性が良好であることから電線被覆用組成物として有用である。
(A)成分に替えて(A)成分に該当しないウレタンアクリレートを含有する比較例1では、UA−2が柔軟な構造を有しているためヤング率が過小となった。同じく(A)成分を含まない比較例2では、UA−3が(A3)成分を含まないために(A)成分よりも柔軟であり、ヤング率が過小となった。UA−3は、UA−2よりは剛直な構造であるため、比較例2は比較例1よりも高いヤング率の値を有していた。(D)成分を含まない比較例3は、アルミ板や銅板に対する密着力が低下した。(D)成分に替えてアクリル酸を配合した比較例4においても、アルミ板や銅板に対する密着力は低く、アクリル酸は(D)成分を代替できないことが確認された。(B)成分に替えて(B)成分に該当しない2−エチルヘキシルアクリレートを配合した比較例5は、ヤング率が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)ならびに(D);
(A)脂肪族系ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、環式ポリオール由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレートおよびポリオール由来の構造を有しないウレタン(メタ)アクリレートの混合物、
(B)環状構造及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)下記式(4a)で表される化合物
【化1】

(式(4a)中、R8はエチレン性不飽和基を有する1価の有機基であり、R9は水素原子又はエチレン性不飽和基を有していてもよい1価の有機基である)
を含有する電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)中にイソボルニル(メタ)アクリレートを含み、その含有量が成分(B)中の50質量%以上である請求項1に記載の電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分が、下記式(4)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは0〜1である。jは1〜2であり、kは3−jである)
【請求項4】
N−ビニル基含有ラクタム化合物の含有量が、組成物全体の5質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一に記載の電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量が、組成物全体の5質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一に記載の電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
絶縁電線の絶縁層用である、請求項1〜5のいずれか一に記載の電線被覆用放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を硬化させて得られる電線被覆層。
【請求項8】
請求項7記載の被覆層を有する電線。

【公開番号】特開2010−254966(P2010−254966A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63760(P2010−63760)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】