説明

電線試験片の暴露試験装置と、この電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法

【課題】電柱等の立設部材における所定の位置に、例えば、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の電線に関連する様々な試験片を纏めて取り付けることにより、これらの系としての試験片が太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を観察することのできる電線試験片の暴露試験装置と、この電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法を提供。
【解決手段】本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けている。また、電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けた碍子と、両碍子に接続したクランプと、両クランプ間に架線した電線により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の、電線に関連する試験片を纏めて設置することにより、太陽光や風雨に晒されている当該系としての試験片の使用状態における腐食状態を測定するための、電線試験片の暴露試験装置と、この電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電柱等の上部においては、例えば、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の種々の構成部材が設置されている。電線は、電気を送るために、電柱等の間に設置されている。
【0003】
これらの電線に関連する様々な構成部材に腐食をもたらす腐食環境因子としては、例えば、大気中に飛来している海塩、降雨時の酸性雨、光化学スモッグや腐食性ガス(例えば、ソックスSOx)等に含まれる各種成分等が挙げられる。
【0004】
この様な腐食環境因子により、前記した電線に関連する構成部材がどのように腐食していくのかを確認する場合、例えば、図11に示すような暴露試験用架台が使用されている。
【0005】
暴露試験用架台は、四辺形の外枠100を備え、外枠100の長手方向に直交するように複数の横架材101を固定して、外枠100内に複数の区画(例えば、3区画)を設けている。
【0006】
そして、それぞれの区画に、試験片として種類の異なる電線102,103,104を複数固定している。この暴露試験用架台を、例えば、所定の沿岸部における地上に設置して、暴露試験用架台に固定している電線102,103,104の腐食状態を観察していた。
【0007】
この他、特許文献1に示すような、屋外暴露試験用台も存在している。この屋外暴露試験用台は、図12に示すように、試料取付枠200に試料取付桟201を移動可能に複数本設け、試料取付桟201にて試験片202の端部を挟持し、試料取付桟201の間に試験片202を保持するもので、前記試料取付枠200に端部を固定し、前記試料取付桟201の下側に針金203を網状に設けている。
この屋外暴露試験用台は、自動車部品の耐候性を試験するためのもので、地上に設置されて使用されている。
【0008】
さらに、特許文献2に示すような、碍子汚損検出装置も存在している。この碍子汚損検出装置は、図13に示すように、垂直方向に立設した支柱300に、パイロット碍子301を、昇降自在に取り付けて形成している。この碍子汚損検出装置は、高所における碍子の汚損度を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−264836号公報
【特許文献2】特開2000−97892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図11に示す暴露試験用架台は、電線102,103,104自体の腐食状態を観察するもので、電線102,103,104以外の碍子、クランプ、スリーブ等の、電線に関連する系としての構成部材を纏めて設置して、これらの構成部材の腐食状態を観察することを想定していない。
【0011】
また、電線に関連する試験片の腐食状態を観察するためには、当該試験片が電柱における比較的に高所に設置されて、太陽光や風雨に晒されている使用状態を再現する必要があるが、図11に示す暴露試験用架台は、基本的に地上に設置されることから、電線に関連する試験片の使用状態における腐食状態を観察することは困難である。
【0012】
この他、特許文献1に示す屋外暴露試験用台(図12参照)は、基本的に自動車部品の耐候性を試験するために、地上に設置されて使用されることから、電線に関連する系としての試験片について、使用状態における腐食状態を観察することは到底困難である。
【0013】
また、特許文献2に示す碍子汚損検出装置(図13参照)においては、垂直方向に立設した支柱300に、パイロット碍子301を取り付けているが、基本的にパイロット碍子301の高所における汚損度を測定するもので、パイロット碍子301の腐食状態を観察することを想定していない。
【0014】
さらに、パイロット碍子301以外の、電線、クランプ、スリーブ等の、電線に関連する系としての構成部材を纏めて設置して、これらの構成部材の腐食状態を観察することを想定していない。
【0015】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、電柱等の立設部材における所定の位置に、例えば、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の電線に関連する様々な試験片を纏めて取り付けることにより、これらの系としての試験片が太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を観察することのできる電線試験片の暴露試験装置と、この電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことで、上述した課題を解決した。
【0017】
また、本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、それぞれの両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
さらに、電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けたクランプと、両クランプ間に架線した電線であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けた碍子と、両碍子に接続したクランプと、両クランプ間に架線した電線であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0020】
加えて、電線に関連する試験片は、分岐線を固定しているスリーブを電線に付設していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
さらに、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を複数取り付けていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
この他、本発明に係る電線試験片の腐食状態測定方法においては、前記した電線試験片の暴露試験装置を使用することで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことから、当該試験片が、電柱等の立設部材において太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を観察することができる。
【0024】
また、本発明は、電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、それぞれの両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことから、様々な種類の試験片について、太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を観察し、試験片の腐食評価(弱点部の把握)を可能としている。
【0025】
さらに、電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けたクランプと、両クランプ間に架線した電線であるときには、系としてのクランプと電線について、使用状態における腐食状態を観察することができる。
【0026】
また、電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けた碍子と、両碍子に接続したクランプと、両クランプ間に架線した電線であるときには、系としての碍子とクランプ、電線について、使用状態における腐食状態を観察し、試験片の腐食評価(弱点部の把握)を可能としている。
【0027】
加えて、電線に関連する試験片は、分岐線を固定しているスリーブを電線に付設しているときには、系としての分岐線を有するスリーブについて、使用状態における腐食状態を観察することができる。
【0028】
この他、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を複数取り付けているときには、例えば、径や材質の異なる電線を備えている複数の試験片について、その使用状態における腐食状態を同時に観察して、個々の試験片の腐食評価(弱点部の把握)を可能としている。
【0029】
また、本発明に係る電線試験片の腐食状態測定方法においては、前記した電線試験片の暴露試験装置を使用することにより、電柱等の立設部材における所定の位置に、例えば、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の電線に関連する様々な試験片を纏めて取り付けることにより、これらの系としての試験片が、太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を正確に観察し、試験片の腐食評価(弱点部の把握)を可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置した状態を示す斜視図である。
【図2】電柱等の立設部材への、バンド部材を介した腕金部材の取り付け状態を示すもので、(a)は腕金部材側から見た分解斜視図、(b)はバンド部材側から見た分解斜視図である。
【図3】電柱等の立設部材への、腕金部材と補強アームの取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図4】電線に関連する試験片の構成を示すもので、(a)は2本の腕金部材のそれぞれに取り付けるクランプと、両クランプ間に架線した電線から成る試験片の斜視図、(b)は2本の腕金部材のそれぞれに取り付ける碍子と、両碍子に接続したクランプと、両クランプ間に架線した電線から成る試験片の斜視図である。
【図5】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、クランプと電線から成る複数の試験片を取り付けている状態を示す斜視図である。
【図6】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、碍子とクランプと電線から成る複数の試験片を取り付けている状態を示す斜視図である。
【図7】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置している状態を示す斜視図である。
【図8】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置して、それぞれの両腕金部材の間に、クランプと電線から成る複数の試験片を取り付けている状態を示す斜視図である。
【図9】電柱等の立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置して、それぞれの両腕金部材の間に、碍子とクランプと電線から成る複数の試験片と、クランプと電線から成る複数の試験片を取り付けている状態を示す斜視図である。
【図10】電線試験片の暴露試験装置の使用状態を示す斜視図である。
【図11】従来における暴露試験用架台の構成を示す斜視図である。
【図12】特許文献1に開示されている屋外暴露試験用台の構成を示す斜視図である。
【図13】特許文献2に開示されている碍子汚損検出装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る電線試験片の暴露試験装置1は、電柱等の立設部材2における所定の位置(例えば、立設部材2の比較的に上部の位置)に設置するものである。
【0033】
電線試験片の暴露試験装置1は、図1に示すように、立設部材2の側方に向けて、2本の腕金部材3A・3Bを所定の間隔を開けて配置し、図5に示すように、この両腕金部材3A・3Bの間に、電線に関連する試験片4を取り付けて構成されている。
【0034】
2本の腕金部材3A・3Bは、図2(a)(b)に示すように、所定の長さを備えており、立設部材2の側方に向けて、略水平(地面と略平行)となるように立設部材2に取り付けられている。
【0035】
腕金部材3A・3Bは、所定の強度を有する角筒状に形成されており、その先端部側部分に、電線に関連する試験片4を取り付けるために使用する複数(例えば、2個)の孔5が、所定の間隔を開けて設けられている。
【0036】
また、腕金部材3A・3Bの、基端部側部分には、腕金部材3A・3B自身を立設部材2に取り付けるために使用する、2個の孔6が設けられている。この2個の孔6は、図2(b)に示すように、立設部材2の直径に略該当する間隔を開けて設けられている。
【0037】
さらに、腕金部材3A・3Bの、基端部側部分寄りの略中間位置には、後述する補強アーム10を取り付けるために使用する孔7が設けられている。
【0038】
腕金部材3A・3Bを立設部材2に取り付けるときには、図2(a)(b)に示すように、腕金部材3A・3Bの基端部側部分を立設部材2の周面に宛がい、略U字状に形成されているバンド部材8を、立設部材2の反対側の周面に巻回する。このバンド部材8の両先端部分の周面には、雄ネジ9が形成されている。
【0039】
そして、腕金部材3A・3Bの基端部側部分に設けている2個の孔6にバンド部材8の両先端部分を挿通させ、雄ネジ9部分にナットNを螺合させて締め付けることにより、腕金部材3A・3Bを立設部材2に取り付けるのである。
【0040】
また、立設部材2に取り付けた腕金部材3A・3Bは、その水平状態を維持するための補強アーム10を備えている。
【0041】
この補強アーム10は、図1に示すように、立設部材2に取り付ける円形のバンド部分11と、棒状のアーム部12により構成されている。
【0042】
アーム部12の両端部には、図3に示すように、所定の孔12aが設けられている。また、立設部材2に取り付ける円形のバンド部分11は、立設部材2の周面において対向するように組み付ける2個の半円状部材13A・13Bにより構成されている。この半円状部材13A・13Bの両端部には、側方に向けて突出するように小板片13cが設けられている。この小板片13cには、所定の孔13dが設けられている。
【0043】
そして、図3に示すように、立設部材2の周面において、2個の半円状部材13A・13Bを対向するように組み付け、2個の半円状部材13A・13Bの小板片13c同士を近接させた状態とする。この様に立設部材2の周面に2個の半円状部材13A・13Bを巻回するように組み付け、近接している小板片13c同士の孔13dにボルトBを挿通させ、ボルトBの雄ネジ部分にナットNを螺合させて締め付けることにより、立設部材2にバンド部分11を取り付けるのである。
【0044】
また、立設部材2に取り付けたバンド部分11において、同様に立設部材2に取り付けている腕金部材3A・3Bが存在している側に位置している半円状部材13Aには、図3に示すように、その中間位置において、側方に向けて突出するように棒状片13eが設けられている。この棒状片13eの周面には、雄ネジ13fが形成されている。
【0045】
尚、上方に位置している腕金部材3A用の補強アーム10は、図1・図3に示すように、立設部材2において、腕金部材3Aの下方にバンド部分11が固定される。そして、腕金部材3Aとバンド部分11の間にアーム部12を設置して、腕金部材3Aを下方から支持している。
【0046】
具体的には、図3に示すように、腕金部材3Aとバンド部分11の間に、アーム部12を傾斜状に配置する。そして、アーム部12の下端部側に設けている孔12aを、バンド部分11を構成している半円状部材13Aの棒状片13eに宛がい、この棒状片13eをアーム部12の孔12aに挿通させ、棒状片13eの雄ネジ13f部分にナットNを螺合させて締め付けることにより、バンド部分11にアーム部12の下端部側を取り付ける。
【0047】
また、図3に示すように、アーム部12の上端部側に設けている孔12aを、腕金部材3Aの孔7に宛がい、それぞれの孔7・12aにボルトBを挿通させ、ボルトBの雄ネジ部分にナットNを螺合させて締め付けることにより、腕金部材3Aにアーム部12の上端部側を取り付けるのである。そして、補強アーム10のアーム部12は、腕金部材3Aを下方から支持するように作用して、腕金部材3Aの水平状態を維持させている。
【0048】
一方、下方に位置している腕金部材3B用の補強アーム10は、図1に示すように、補強アーム10が腕金部材3Bの上方に設置されている。このとき、補強アーム10のアーム部12は、腕金部材3Bを吊り上げるように作用して、腕金部材3Bの水平状態を維持させている。
【0049】
尚、腕金部材3Bの補強アーム10は、前記した腕金部材3A用の補強アーム10と同様に、腕金部材3Bの下方に設置されるものであっても差し支えない。
【0050】
この様にして、図1に示すように、立設部材2の側方に向けて、2本の腕金部材3A・3Bを所定の間隔を開けて配置している。また、図5に示すように、両腕金部材3A・3Bの間に、電線に関連する試験片4を取り付けて、本発明に係る電線試験片の暴露試験装置1を構成している。
【0051】
電線に関連する試験片4は、例えば、図4(a)に示すように、2本の腕金部材3A・3Bのそれぞれに取り付けるクランプ20と、両クランプ20間に架線した電線21により構成されている。また、電線21の略中間位置には、分岐線22を固定しているスリーブ23を付設している。
【0052】
この電線に関連する試験片4を構成するクランプ20は、捩じりストラップ24を介して、腕金部材3A・3Bに取り付けられている。この捩じりストラップ24は、図4(a)に示すように、端部に孔25を有する2枚の捩じり板片26により構成されており、この2枚の捩じり板片26の基端部がクランプ20に取り付けられている。
【0053】
そして、図5に示すように、電線21の両端部にそれぞれ位置している2枚の捩じり板片26の孔25を、腕金部材3A・3Bにおける孔5の両側に宛がい、それぞれの孔25,5にボルトBを挿通させ、ボルトBの雄ネジ部分にナットNを螺合させて締め付けることにより、腕金部材3A・3Bに捩じりストラップ24を取り付けるのである。
【0054】
また、図5に示すように、両腕金部材3A・3Bの間に、異なる径や、異なる材質の電線21を有する試験片4を、複数(例えば、2個)取り付けても良い。
【0055】
さらに、電線に関連する試験片4は、例えば、図4(b)に示すように、2本の腕金部材3A・3Bのそれぞれに取り付ける碍子30と、両碍子30に接続したクランプ20と、両クランプ20間に架線した電線21により構成しても良い。この電線21の略中間位置にも、分岐線22を固定しているスリーブ23を付設している。
【0056】
碍子30は、個々の碍子部30a,30bを、例えば、2個接続して構成されている。また、それぞれの碍子部30aには、捩じりストラップ24が接続されており、この捩じりストラップ24を介して、それぞれの碍子部30aが腕金部材3A・3Bに取り付けられている。
【0057】
そして、図6に示すように、両腕金部材3A・3Bの間に、碍子30を備えると共に、異なる径や、異なる材質の電線21を有する試験片4を、複数(例えば、2個)取り付けるのである。
【0058】
この他、図7に示すように、立設部材2の側方に向けて、2本の腕金部材3A・3Bを所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材2の他の側方に向けて、2本の腕金部材3C・3Dを所定の間隔を開けて配置し、それぞれの両腕金部材3A・3B、3C・3Dの間に、電線に関連する試験片4を取り付けても良い。
【0059】
そして、例えば、図8に示すように、両腕金部材3A・3Bの間と、両腕金部材3C・3Dの間に、クランプ20と電線21により構成されている試験片4を、複数(例えば、合計4個)取り付けるのである。このとき、試験片4は、異なる径や、異なる材質の電線21を有するものにすると、異なる仕様の電線21について、使用状態における腐食状態を観察することができるため、好ましい。
【0060】
さらに、例えば、図9に示すように、両腕金部材3A・3Bの間に、碍子30とクランプ20と電線21により構成されている試験片4を、複数(例えば、2個)取り付けると共に、両腕金部材3C・3Dの間に、クランプ20と電線21により構成されている試験片4を、複数(例えば、2個)取り付けても良い。
【0061】
そして、本発明に係る電線試験片の暴露試験装置1は、図10に示すように、電柱等の立設部材2に取り付けられている通常の電線等と同じ高さとなる位置に設置され、同一の環境下において試験片4の腐食状態を観察し、また、試験片4の腐食評価(弱点部の把握)を可能としている。
【0062】
尚、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【0063】
例えば、図10に示すように、立設部材2の側方に向けて、2本の腕金部材3A・3Bを配置すると共に、立設部材2の他の側方に向けて2本の腕金部材3C・3Dを配置したときに、図10に示すように、それぞれの両腕金部材3A・3B、3C・3Dを所定の角度で折曲状に配置して、両腕金部材3A・3B、3C・3Dの間に、電線に関連する試験片4を取り付けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、沿岸に沿って設置されている電柱等の立設部材における所定の位置に、碍子、クランプ、電線、スリーブ等の電線に関連する様々な試験片を纏めて取り付けることにより、これらの系としての試験片が太陽光や風雨に晒されている使用状態における腐食状態を観察することのできる電線試験片の暴露試験装置と、この電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…電線試験片の暴露試験装置
2…立設部材
3A…腕金部材
3B…腕金部材
3C…腕金部材
3D…腕金部材
4…試験片
5…孔
6…孔
7…孔
8…バンド部材
9…雄ネジ
10…補強アーム
11…バンド部分
12…アーム部
12a…孔
13A…半円状部材
13B…半円状部材
13c…小板片
13d…孔
13e…棒状片
13f…雄ネジ
20…クランプ
21…電線
22…分岐線
23…スリーブ
24…捩じりストラップ
25…孔
26…捩じり板片
30…碍子
30a…碍子部
30b…碍子部
N…ナット
B…ボルト
100…外枠
101…横架材
102…電線
103…電線
104…電線
200…試料取付枠
201…試料取付桟
202…試験片
203…針金
300…支柱
301…パイロット碍子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことを特徴とする、電線試験片の暴露試験装置。
【請求項2】
電柱等の立設部材における所定の位置に設置する電線試験片の暴露試験装置であり、立設部材の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置すると共に、立設部材の他の側方に向けて、2本の腕金部材を所定の間隔を開けて配置し、それぞれの両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を取り付けたことを特徴とする、電線試験片の暴露試験装置。
【請求項3】
電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けたクランプと、両クランプ間に架線した電線である請求項1または2に記載の電線試験片の暴露試験装置。
【請求項4】
電線に関連する試験片は、2本の腕金部材のそれぞれに取り付けた碍子と、両碍子に接続したクランプと、両クランプ間に架線した電線である請求項1または2に記載の電線試験片の暴露試験装置。
【請求項5】
電線に関連する試験片は、分岐線を固定しているスリーブを電線に付設している請求項3または4に記載の電線試験片の暴露試験装置。
【請求項6】
両腕金部材の間に、電線に関連する試験片を複数取り付けている請求項1乃至5のいずれかに記載の電線試験片の暴露試験装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載されている電線試験片の暴露試験装置を使用した、電線試験片の腐食状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−53885(P2013−53885A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191201(P2011−191201)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】