説明

電縫鋼管の製造方法および電縫鋼管

【課題】従来技術では、電縫鋼管溶接部に稀に発生する管体表面近傍の50μm前後の微小な溶接欠陥を検出する技術は確立されておらず、かかる微小な溶接欠陥を有する電縫鋼管が製品の中に稀に混入する事態を防ぎ難い。
【解決手段】帯材を管状に成形して形成したV字状ギャップの縁部同士を連続的に溶接する電縫鋼管の製造方法において、溶接後ビード切削前の間に溶接部の輝度を輝度センサ10で監視し、その後、前記ビード切削よりも下流側で、溶接部をアレイ探触子を用いた超音波探傷装置11で検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管の製造方法および電縫鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管は帯材(鋼管素材)を成形機で円筒状に成形しながら、そのV字状ギャップをなす両縁部を高周波電流通電により加熱溶融し、スクイズロールで加圧接合することにより製造される。
【0003】
溶接状態はほぼ適度な温度と適度な成形具合,適正素材および運転レベルに反映される。ここで、計測可能な要素の変化を捉えて、溶接適否を判別すること、不適原因を判別することおよび投入電力量をフィードフォワード的に抑制し、さらに他の要因による変化を包括的に温度で捉えてフィードバック的に設定しようとするのが溶接監視および入熱制御の基本的な考え方である。
【0004】
上述した電縫管溶接において、溶接状態のうち溶接入熱状態を監視する従来の方法として以下の方法があった。
【0005】
(1)操作員の肉眼による判断方法。(2)溶接部の温度を放射温度計を用いて計測する方法であって、全放射エネルギーを温度に換算する方法と、全放射エネルギーのうち特定の2波長のエネルギーレベルの比を用いて温度に換算する方法。(3)共振周波数の変化を電気的に検出し、入熱量の過多を判別する方法。(4)溶接後のビードの突起の形状を把握する方法。
【0006】
さらには、入熱が適正でも、縁部の成形状態にねじれがあったり、縁部が振れたりあるいはスクイズロールの加圧(アップセット)が変化すると、溶接不良となることがあり、このような条件変化をも含めて把握できる監視方法として、(5)溶接部と溶接入側の発熱金属部を撮像手段によって走査して複数の画像として分割して捉えて、これらの画像の特長量を画像処理部によって求めて解析信号を得、この解析信号を基に溶接状態の適否を判定することにより、溶接状態の適正な判別と入熱制御を可能にする方法があった(例えば特許文献1)。
【0007】
一方、欠陥の検出技術については、一般に超音波斜角探傷によって溶接部のオンライン探傷が行われている。この方法は、被検材の検査面に対して斜めに超音波を入射させ、欠陥で反射した反射波から被検材の内外表面欠陥および内部欠陥を検出するものである。例えば電縫管では通常5MHzで45°の屈折角をもつ超音波ビームによる反射法が適用され、mmオーダーの大きさの欠陥、例えば溶け込み不良、溶け落ち、介在物による割れなどの欠陥が検出されている。この超音波探傷法による検査では、数100μm程度以下の微小な溶接欠陥を検出することは困難である。これに対し、例えば特許文献2に開示されているような、アレイ探触子を用いた超音波探傷法によれば、数10μm〜数100μm程度の微小な溶接欠陥を検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−318142号公報
【特許文献2】特開2008−286640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した(1)〜(5)の従来技術は、溶接状態が最適になるように工夫された方法ではある。
【0010】
しかしながら、従来技術の範囲内で溶接状態を最良に保ってもなお、極めて微細な溶接欠陥が生じることがある。これは、電縫溶接部に微細な異物が混入する場合と、帯材(管素材)の端部(縁部)に当て疵などが存在する場合である。すなわち、電縫成形溶接過程において管素材表面の酸化鉄や鉄などが剥離して、大気中に微量の粉塵として存在しており、電縫溶接過程においては、溶接時に発生する溶鋼がスパッタ粒として存在しているが、これらの粉塵やスパッタ粒が溶接部に稀に飛び込んだ場合に溶接欠陥を生じることがある。さらに、帯材の端部にわずかな疵が生じている部分が電縫溶接される場合にも、その疵が溶接欠陥の発生原因となることがある。これらの溶接欠陥はいずれも、その大きさが数10μm〜数100μm程度と微細であり、また、発生位置は溶接線に沿って管体内面から外面までの範囲内でデタラメに分布する可能性があった。
【0011】
前記アレイ探触子を用いた超音波探傷法では、原理上、管体表面近傍の欠陥検出能力は低いことから、50μm前後の微小な欠陥が管体表面近傍に存在する場合には検出感度が低下して、検出できないことがある。
【0012】
つまり、従来技術では、電縫鋼管溶接部に稀に発生する管体表面近傍の50μm前後の微小な溶接欠陥を検出する技術は確立されておらず、かかる微小な溶接欠陥を有する電縫鋼管が製品の中に稀に混入する事態を防ぎ難いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)帯材を管状に成形して形成したV字状ギャップの縁部同士を連続的に溶接する電縫鋼管の製造方法において、溶接後ビード切削前の間に溶接部の輝度を輝度センサで監視し、その後、前記ビード切削よりも下流側で、溶接部をアレイ探触子を用いた超音波探傷装置で検査することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
(2)前記アレイ探触子を用いた超音波探傷装置は、管体の管軸方向溶接部の溶接面に対して超音波を入射する送波部と、溶接部で反射した反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、前記送波部及び受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上の探傷用アレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部を備えた超音波探傷装置であることを特徴とする前項(1)に記載の電縫鋼管の製造方法。
(3)前項(1)または(2)に記載の製造方法で製造された電縫鋼管であって、その溶接部の、管体外面位置から管体肉厚の1/4だけ内側に入った位置までの部分における溶接欠陥の大きさが50μm未満、残りの部分における溶接欠陥の大きさが100μm未満であることを特徴とする電縫鋼管。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電縫鋼管溶接部に稀に発生する管体表面近傍の50μm前後の微小な溶接欠陥を精度よく検出することが可能となり、かつ、管体内部の数10μm〜数100μmの溶接欠陥も検出されるので、電縫鋼管の品質の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の1例を示す電縫鋼管製造ラインの模式図
【図2】輝度センサによる溶接部の監視状況の1例を示す模式図
【図3】輝度分布監視データの推移を示す模式図
【図4】造管長に対する瞬時輝度の総和の推移曲線の1例を示す線図
【図5】造管長に対する瞬時輝度の半値幅の推移曲線の1例を示す線図
【図6】アレイUTの原理を従来UTと比較して示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態の1例を示す電縫鋼管製造ラインの模式図である。このラインでは、初期形態がコイル状である帯材1をアンコイラー2で払い出し、ロール成形機3で管状に成形し、形成したV字状ギャップの縁部同士を、高周波加熱装置4で融点以上に加熱し、スクイズロール5で圧接することにより溶接して管8となし、ビード切削機6で溶接部の外面ビードを切削したのち、管8を切断機7で所定の長さに切断する。帯材1としては鋼帯(熱延鋼帯もしくは冷延鋼帯)あるいは該鋼帯を条切りしたものが用いられる。図1の例では、高周波加熱装置4として直接通電加熱式の装置を示したが、これに限らず、誘導加熱式の装置であってもよい(例えば図2参照)。なお、高周波電流の通電部分を含む通材方向範囲内の管素材ないし管の内面側に、図示しないインピーダを装入して電縫溶接を行う場合もある。
【0017】
本発明では、上記のようなラインにおいて、溶接後ビード切削前の間に(スクイズロールからビード切削機までの間のいずれかの箇所で)溶接部の輝度を輝度センサ10で監視する。さらに、その後、前記ビード切削機よりも下流側で、溶接部をアレイ探触子を用いた超音波探傷装置11(以下、アレイUTともいう)で検査する。なお、図1の例では、アレイUT11による検査を切断後の管8に対して行う形態(オフラインで検査する形態)を示したが、これに限らず、アレイUT11による検査をビード切削後切断前の管8に対して行う形態(オンラインで検査する形態)としてもよい。
【0018】
発明者らは、輝度センサを用いた溶接部監視実験を行い、その結果、粉塵やスパッタが被溶接部に稀に飛び込んで溶接欠陥が生じる際、あるいは帯材端部の微小な疵が生じている部分が電縫溶接されて溶接欠陥が生じる際に、溶接点出側の輝度の分布状態が瞬間的にダーク(暗い)側に変化することを見出した。
【0019】
輝度センサによる溶接部の監視状況の1例を図2に示す。輝度センサ10は輝度カメラとも呼ばれ、溶接点13からビード切削機6までの間の溶接部14の外面側長手方向を横切るように設けた監視領域12を撮影し、該撮影した画面内の輝度分布を導出する機能を有している。このような輝度センサとしては、例えば市販のラインスキャンカメラなどが挙げられる。輝度センサ10の撮影コマごとの輝度情報(瞬時輝度)はPC(パソコン)等に取り込んで画像処理することで、図3に模式的に示すように、瞬時輝度の分布曲線に相当する画像信号の経時変化データとして監視することができる。そして、この監視される経時変化データから、粉塵やスパッタの稀な飛び込みや帯材端部の微小な疵による溶接欠陥発生に対応するDS(ダークスポット)を検出することができ、該DS検出時点情報を、通常用いられるトラッキング機能により、対応する造管長位置情報に変換して、前記溶接欠陥が発生した造管長位置を特定でき、その位置情報を造管工程の下流の精整工程に通知して、この溶接欠陥部を含む管長さ部分を製品管から確実に排除することができる。なお、図2において、1b,1cはV字状ギャップの縁部、iは高周波電流である。
【0020】
溶接欠陥部の輝度変化をより確実に検出するためには、監視領域12を溶接点13から下流側に20〜200mm離間した位置に設けるのが好ましい。
【0021】
電縫溶接の速度が100m/分を超える場合でも、溶接欠陥部の判別が確実にでき、かつ溶接欠陥部の見逃しが生じないように、輝度センサで監視する輝度分布は、撮影速度1ms以下、撮影回数1000回/s以上の撮影による画像信号として捉えることが好ましい。
【0022】
輝度センサでの撮影による画像信号として捉えられる輝度分布は、実際には、必ずしも図3の模式図に示すような単純で滑らかな山形の曲線形状を示すわけではなく、大きな凹凸を多数含む複雑な曲線形状を示す場合が少なからずあり、そのような複雑な分布曲線形状の瞬時輝度データから直ちにDS検出(すなわち瞬時的な溶接状態の適否判別)を行うのは困難である。そこで発明者らは、この困難を克服するための手法を検討し、その結果、前記画像信号を処理して瞬時輝度の総和および/または半値幅を演算した結果を用いることによりDS検出が確実かつ容易となることが分った。なお、図4には、画像信号を処理・演算してなる瞬時輝度の総和の、造管長に対する推移曲線の1例を示し、また、図5には、図4と同じ画像信号を処理・演算してなる瞬時輝度の半値幅の、造管長に対する推移曲線の1例を示す。これら図4、図5の推移曲線はほぼフラットな中に明瞭な窪み部を有する形状を示しており、これにより確実かつ容易にDSの発生した造管長部位を検出できることが分る。
【0023】
一方、監視領域12よりも下流側では、上述のようにアレイUT11を用いて溶接部をオフラインまたはオンラインで検査する。前述のように、アレイUTによれば、数10μm〜数100μm程度の微小な溶接欠陥を検出することが可能である。図6は、アレイUT11の原理を従来UTと比較して示す説明図であり、このようなアレイUTを用いることで、従来UTのφ0.5mm〜1.0mm程度に比べ、格段に微細な、例えばφ250μm以下の溶接欠陥を検出できる。
【0024】
図6に例示したアレイUTは、好適な形態として、管体(管8)の管軸方向溶接部14の溶接面に対して超音波を入射する送波部と、溶接部で反射した反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、前記送波部及び受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上の探傷用アレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部を備えた超音波探傷装置である。
【0025】
なお、より好適な形態のアレイUTとしては、管体の管軸方向溶接部の溶接面に対して超音波を入射する送波部と、溶接部で反射した反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、前記送波部及び受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上の探傷用アレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部と、管体の肉厚分布を測定するための肉厚測定用探触子と、該肉厚測定用探触子で測定した肉厚分布に基づいて、前記探傷用アレイ探触子を用いて、管体の厚さ方向に走査するための超音波の伝播経路を算出する伝播経路算出手段と、算出された伝播経路に基づいて、前記探傷用アレイ探触子上で前記送波部及び受波部に対応する振動子群を変更する、又は、前記探傷用アレイ探触子の角度を変更するように制御して、管体の厚さ方向に走査する制御を行なう制御部と、を備えた形態のもの(特許文献2に記載の発明)が挙げられる。
【0026】
このさらなる好適形態のアレイUTによれば、内面に増肉部分が発生している電縫鋼管などの溶接部の肉厚内部に位置する数100μm程度以下の微小な欠陥を、内面から外面まで漏れなく検出できるようになるため、溶接鋼管の溶接部の機械的特性に影響を及ぼす微小欠陥が発生しないように溶接プロセスを改善したり、欠陥が流出しないように製造工程で選別できるようになり、溶接鋼管の品質を飛躍的に高めることができ、従来以上に過酷な使用条件で使用できるようになる(特許文献2に記載の発明の効果欄参照)。
【0027】
なお、さらにより一層好ましくは、送波用の振動子群および受波用の振動子群の振動子数を、溶接部に近いほど少なく、溶接部から遠いほど多く設定する。このようにすると、溶接部から近い側ほど同時励振の際の開口幅は狭くなるため、焦点距離が短くてもビーム幅が狭くなりすぎることがなく、溶接部から遠い側ほど同時励振の際の開口幅は広くなるため、焦点距離が長くても集束係数を高めることができ検出能の劣化が生じない。したがって、各振動子群からの集束特性を一定に揃えることができるため、溶接部内部の内面側から外面側まで均一の検出感度で探傷が可能となる。
【0028】
本発明において、輝度センサとアレイUTのいずれか一方ではなく、両方を用いることが必要である理由は次のとおりである。
【0029】
一般に、管を使用する際には、管の肉厚方向中央部ではなく、表面に応力は集中しやすい(管の表面にひずみは加わりやすい)。よって、管の表面に欠陥が存在する方が割れの感受性は高くなり、微小な疵であっても機械的特性は劣化しやすく、使用上の問題になりやすい。すなわち、溶接部に欠陥が存在する場合、管の肉厚方向中央部に比べて、同じ大きさの欠陥であっても、疵が管の肉厚方向中央部に存在していれば使用上の問題になりにくいが、疵が管の表面近傍に存在する場合には、使用時に割れ等の問題が生じやすいことになる。
【0030】
発明者らは、欠陥の存在形態、すなわち欠陥の位置や大きさが、溶接部の機械的特性に及ぼす影響について詳細に調査した。その結果、100μm以上の大きさの欠陥が管の溶接部の内部に存在すると、機械的特性は劣化すること、100μm未満の欠陥が管の溶接部の内部に存在しても、機械的特性に影響を及ぼさないこと、50μm以上の欠陥が管の溶接部の表面近傍に存在する場合には、機械的特性は劣化すること、50μm未満の欠陥が管の溶接部の表面近傍に存在しても機械的特性に影響を及ぼさないこと、を発見した。
【0031】
ところで、輝度センサは、被測定物の表面の輝度を測定する原理上、特に、管の溶接部表面近傍の欠陥検出能力は高く、管の溶接部表面近傍では約30μm程度の欠陥を十分に検出することができる。
【0032】
一方、アレイUTは、原理上、管の表面近傍の欠陥検出能力は低く、これを用いても、50μm前後の微小な欠陥が管表面近傍に存在する場合、検出感度は低下するために、当該欠陥を検出できないことがある。
【0033】
これらの理由から、管表面に存在する50μm程度の微小な欠陥を検出するためには、輝度センサによる監視が必要である。
【0034】
ところで、アレイUTでは、管内部の内面側から外面側まで均一の検出感度で探傷が可能である。よって、電縫鋼管溶接部の内部に存在する100μm程度の微小な欠陥を検出することが可能である。そのためには、送波用の振動子群および受波用の振動子群の振動子数を、溶接部に近いほど少なく、溶接部から遠いほど多く設定するのが好ましい。このようにすると、溶接部から近い側ほど同時励振の際の開口幅は狭くなるため、焦点距離が短くてもビーム幅が狭くなり過ぎることがなく、溶接部から遠い側ほど同時励振の際の開口幅は広くなるため、焦点距離が長くても集束係数を高めることができ検出能の劣化が生じない。従って、各振動子群からの集束特性を一定に揃えることができるため、内面側から外面側まで均一の検出感度で探傷が可能となる(特許文献2[0070]欄参照)。
【0035】
一方、輝度センサは、被測定物の表面の輝度を測定する原理上、管内部の欠陥検出能力は低く、特に、肉厚が6mmを超える厚肉管については、管溶接部に存在する100μm程度の微小な内部欠陥を検出できないことがある。
【0036】
これらの理由から、管溶接部の内部に存在する100μm程度の微小な欠陥を内面側から外面側まで漏らさず検出するためには、アレイUTが必要である。
【0037】
本発明では、輝度センサとアレイUTを組み合わせることにより、管溶接部の外面近傍、例えば管溶接部の管体外面位置から管体肉厚の1/4だけ内側に入った位置までの部分、における溶接欠陥の大きさが50μm以上である電縫鋼管を排除でき、また、管溶接部の内部、例えば管溶接部において管体外面位置から管体肉厚の1/4だけ内側に入った位置までの部分を除いた残りの部分、における溶接欠陥の大きさが100μm以上である電縫鋼管を排除できるので、本発明項(3)記載の電縫鋼管、すなわち、管溶接部の管体外面位置から管体肉厚の1/4だけ内側に入った位置までの部分における溶接欠陥の大きさが50μm未満、残りの部分における溶接欠陥の大きさが100μm未満である電縫鋼管のみを確実に提供できるようになり、品質の信頼性が格段に向上する。
【実施例】
【0038】
実施例では、熱延鋼帯を条切りした帯鋼の帯幅端部に微小な疵やスパッタ等の各種の人工疵を設けた帯材を用い、図1に示した電縫鋼管製造ライン(ただし、高周波加熱装置4は図2の誘導加熱式の装置を使用する)において電縫溶接実験を行い、その際、人工疵部を含む溶接部を輝度センサ10で監視するとともに、アレイUT11で検査した。得られた電縫鋼管について、溶接部の90°偏平試験(例えばJIS G3445に規定されるへん平試験(環状試験片の場合)に準拠した試験であり、溶接部を通る管直径線が偏平方向に対して90°になるように管を配置して試験する)を行い溶接部の偏平特性を調査するとともに、溶接部(被溶接部が溶接結合したその結合界面であり管周方向にほぼ直交している)を切り出してそこに存在する溶接欠陥をSEM(走査電子顕微鏡)観察して該溶接欠陥の大きさを調査した。その結果を表1に示す。表1では各水準において、輝度センサ、アレイUTの各々の欠陥検出結果が、欠陥有りであった場合を○、欠陥無しであった場合を×とした。
【0039】
表1より、溶接部の偏平値(偏平にして溶接部に割れが生じたときの偏平方向の管外径/偏平にする前の管外径)の高い部分、すなわち不良部は、輝度センサとアレイUTを組み合わせることにより、完全に検出可能であることがわかる。
【0040】
【表1】

【符号の説明】
【0041】
1 帯材
2 アンコイラー
3 ロール成形機
4 高周波加熱装置
5 スクイズロール
6 ビード切削機
7 切断機
8 管(電縫鋼管)
10 輝度センサ
11 アレイ探触子を用いた超音波探傷装置(アレイUT)
12 監視領域
13 溶接点(被溶接部が溶接結合する点)
14 溶接部
15 アレイ探触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯材を管状に成形して形成したV字状ギャップの縁部同士を連続的に溶接する電縫鋼管の製造方法において、溶接後ビード切削前の間に溶接部の輝度を輝度センサで監視し、その後、前記ビード切削よりも下流側で、溶接部をアレイ探触子を用いた超音波探傷装置で検査することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記アレイ探触子を用いた超音波探傷装置は、管体の管軸方向溶接部の溶接面に対して超音波を入射する送波部と、溶接部で反射した反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、前記送波部及び受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上の探傷用アレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部を備えた超音波探傷装置であることを特徴とする請求項1に記載の電縫鋼管の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造された電縫鋼管であって、その溶接部の、管体外面位置から管体肉厚の1/4だけ内側に入った位置までの部分における溶接欠陥の大きさが50μm未満、残りの部分における溶接欠陥の大きさが100μm未満であることを特徴とする電縫鋼管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104627(P2011−104627A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262707(P2009−262707)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】