説明

電荷発生物質の製造方法及び製造装置、電荷発生物質並びに感光体

【課題】不純物を効率よく除去し、純度の高い電荷発生物質を製造することが可能な電荷発生物質の製造方法及び製造装置、該電荷発生物質の製造方法を用いて製造されている電荷発生物質並びに該電荷発生物質を有する感光体の提供。
【解決手段】電荷発生物質はアゾ顔料であり、製造方法は、有機溶媒中で電荷発生物質を合成する工程、合成された電荷発生物質を含有する液を遠心分離して合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する工程及び沈降物に有機溶媒又は水を添加することにより得られる液を遠心分離して合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する操作を繰り返す工程を少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷発生物質の製造方法、電荷発生物質の製造装置、電荷発生物質及び感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体における電荷発生物質としては、アゾ顔料が広く使用されている(非特許文献1参照)。アゾ顔料は、ジアゾカップリング反応により合成されるが、反応液に不純物や副生成物が共存する。しかしながら、感度が高く、また、使用に伴う電気特性の変動が少ない電子写真感光体を得るためには、電荷発生物質を高い純度で得る必要がある。そこで、アゾ顔料の合成においては、カップリング液から不純物や副生成物を除去し、アゾ顔料を高い純度で得る必要がある。アゾ顔料は、分子量が大きく、通常、ほとんどの溶媒に不溶であるため、MDC、THF、NMP、水、アルコール等の溶媒で洗浄を繰り返して精製する。このとき、洗浄により、カップリングに用いた無機塩、未反応のアミン成分、カップラー、ジアゾニウム塩の分解物、溶解度が比較的大きいモノアゾ成分等が除かれる。
【0003】
特許文献1には、超臨界流体を用いて、電子写真感光体用顔料であるシスアゾ顔料25gを抽出処理することにより、電子写真感光体用顔料を精製する方法が開示されている。実施例1の精製条件は、抽出溶媒として、二酸化炭素を使用し、圧力が500atm、温度が90℃、抽出管容量が50ml、抽出時間が30分である。しかしながら、この方法では、高温高圧の二酸化炭素を使用しなければならず、設備が高価になり、操作が難しいという問題がある。
【0004】
特許文献2には、カップラー混合物とテトラゾニウム塩をカップリング反応して得られるビスアゾ顔料混合物を、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上と有機酸アルカリ金属塩を含有する洗浄液であって、該洗浄液中の有機酸アルカリ金属塩の濃度が飽和溶液の濃度の8割以上である洗浄液で洗浄することを特徴とするビスアゾ顔料混合物の精製方法が開示されている。実施例1では、HNBI5.29g(0.0185モル)とNPAS1.76g(0.0067モル)及びジメチルスルホキシド700mlを仕込み、70℃に昇温して溶解した後20℃に冷却し、この中にジメチルスルホキド50mlに溶解したBAPO−Tz3.78g(0.0084モル)を加えて10分間撹拌した後、25%CHCOONa水溶液20gを加えて20℃で3時間撹拌してカップリング反応を終了させ、次いで反応液を濾過し、得られるビスアゾ顔料混合物のケーキを、CHCOONa3gとジメチルスルホキシド450mlを混合してなる洗浄液(CHCOONaの一部は析出している)に懸濁させて室温で2時間撹拌後、濾別したケーキを希酢酸、メタノール、テトラヒドロフランを用いて順次熱懸洗した後、乾燥して暗褐色のビスアゾ顔料混合物の粉末5.6gを得ている。しかしながら、この方法では、濾過に時間がかかるという問題がある。
【0005】
特許文献3の合成例2では、三ツロフラスコに、合成例1(A)で得られたモノアゾ顔料15g(0.038モル)、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンズオキサゾール4.2g(0.019モル)及びDMF350mlを入れ、加熱把持し、液温を120℃とし、同温度で10時間反応を行い、次に、熱濾過しDMFに不溶の顔料を濾別し、さらに、DMF400ml、MEK400mlで順次熱濾過洗浄した後、減圧熱乾燥し、目的の顔料11.3g(収率61%)を得ている。しかしながら、この方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0006】
特許文献4の合成例では、ジアゾニウム塩をカップラー溶液中に滴下し、生成した黒青色のペースト状液を室温下に戻し、さらに3時間攪拌を行い、生成した沈澱を濾過し、ジメチルホルムアミドで十分洗浄した後、熱水で洗浄し、最後にアセトンで洗浄し、80℃で減圧下乾燥させた後、1.9gのやや金属光沢を有する黒色粉末を得ている。しかしながら、この方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、特許文献5〜13でも、アゾ顔料を有機溶剤で洗浄し、濾過する方法が開示されているが、これらの方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0008】
特許文献14の合成例では、アゾ顔料の洗浄(精製)方法として、アゾ顔料の粗結晶ケーキをDMF300mlに分散し、80℃で2時間攪拌した後、再び結晶を濾取し、さらに、この操作を2回繰り返すことが示されている。しかしながら、この方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0009】
特許文献15には、電子写真感光体の電荷発生用顔料を、ポアサイズが0.5μmから電荷発生用顔料の平均粒径の50倍までフィルターを使用し、少なくとも30分静置させて真空(減圧)濾過する方法が開示されている。しかしながら、この方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0010】
このように、アゾ顔料の精製処理において、濾過が使用されているが、濾過は、アゾ顔料以外でも広く使用されている。例えば、特許文献16及び17では、バナジウムフタロシアニンの製造に真空濾過が使用されている。しかしながら、これらの方法でも同様に濾過に時間がかかるという問題がある。
【0011】
非特許文献1や特許文献2〜17に示されているように、カップリング液から高い純度のアゾ顔料を得る方法として、濾過方式が用いられているのは、上記以外の方法では、純度の高いアゾ顔料が得られない、あるいは、収率が低いという問題があるためである。
【0012】
一方、濾過方式では、顔料と不純物を含有する有機溶媒を濾過して、アゾ顔料を濾滓として得ている。さらに、濾残として残ったアゾ顔料を再度溶剤中で攪拌した後に、濾過してアゾ顔料を濾滓として得ることが行われている。しかしながら、これらの方法では、初期の濾過速度(単位時間当たりの濾過液量)が充分高くても、濾過するに伴って、フィルターに目詰まりが発生し、濾過抵抗が上昇して濾過速度が低下するという問題があり、効率的な濾過が困難である。この対策として、真空濾過が知られているが、フィルターの表面に補足された濾滓にひび割れが生じ、このひび割れ部から空気がリークし、真空度が低下して、濾過速度が低下するという問題がある。また、濾過速度を高くするために、フィルターのポアサイズを大きくすると、アゾ顔料がフィルターで濾滓として補足されずに、濾液中に流出するという問題がある。
【特許文献1】特開平7−181694号公報
【特許文献2】特許第2504550号公報
【特許文献3】特公昭62−47301号公報
【特許文献4】特公平8−23703号公報
【特許文献5】特許第2612301号公報
【特許文献6】特許第2650715号公報
【特許文献7】特許第2714666号公報
【特許文献8】特許第2731555号公報
【特許文献9】特許第2876065号公報
【特許文献10】特許第2906149号公報
【特許文献11】特許第3303200号公報
【特許文献12】特許第3604167号公報
【特許文献13】特許第3673795号公報
【特許文献14】特開平3−230168号公報
【特許文献15】特開2000−258927号公報
【特許文献16】特公平7−76306号公報
【特許文献17】特公平7−17851号公報
【非特許文献1】アゾ顔料の電子写真分野への応用、日本画像学会誌 第37巻 第3号(1998)58〜66
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、不純物を効率よく除去し、純度の高い電荷発生物質を製造することが可能な電荷発生物質の製造方法及び製造装置、該電荷発生物質の製造方法を用いて製造されている電荷発生物質並びに該電荷発生物質を有する感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、電荷発生物質の製造方法において、有機溶媒中で電荷発生物質を合成する工程、該合成された電荷発生物質を含有する液を遠心分離して該合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する工程及び該沈降物に有機溶媒又は水を添加することにより得られる液を遠心分離して該合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する操作を繰り返す工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記電荷発生物質は、アゾ顔料であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記アゾ顔料は、対称アゾ顔料、非対称ビスアゾ顔料、対称トリスアゾ顔料又は非対称トリスアゾ顔料であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記合成された電荷発生物質を含有する液は、直径が0.003μm以上0.012μm以下であり、長さが0.07μm以上0.3μm以下である前記アゾ顔料の針状結晶が100個以上凝集した凝集物を含有することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記合成された電荷発生物質を含有する液は、水を1重量%以上25重量%以下含有することを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記合成された電荷発生物質を含有する液は、前記アゾ顔料を2重量%以上7重量%以下含有することを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法において、前記遠心分離する際に印加される遠心力は、3kgf以上40kgf以下であることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法を用いて電荷発生物質を製造する電荷発生物質の製造装置であって、有機溶媒中で電荷発生物質を合成する手段及び該合成された電荷発生物質を含有する液を遠心分離する手段を少なくとも有することを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、電荷発生物質において、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、感光体において、請求項9に記載の電荷発生物質を含有する感光層を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、不純物を効率よく除去し、純度の高い電荷発生物質を製造することが可能な電荷発生物質の製造方法及び製造装置、該電荷発生物質の製造方法を用いて製造されている電荷発生物質並びに該電荷発生物質を有する感光体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0026】
本発明の感光体は、後述する本発明の電荷発生物質を含有する感光層を有するが、積層型の感光層を有する感光体と単層型の感光層を有する感光体に分類できる。
【0027】
図1に、積層型の感光層(電荷発生層2及び電荷輸送層3)を有する感光体の層構成例を示す。(a)は、導電性基体1上に、電荷発生層2及び電荷輸送層3が積層されている例である。(b)は、導電性基体1上に、下引き層4、電荷発生層2及び電荷輸送層3が積層されている例である。(c)は、導電性基体1上に、電荷発生層2、電荷輸送層3及び保護層5が積層されている例である。(d)は、導電性基体1上に、下引き層4、電荷発生層2、電荷輸送層3及び保護層5が積層されている例である。
【0028】
導電性基体としては、体積抵抗が1010Ω・cm以下である導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状若しくは円筒状のプラスチック又は紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びこれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化した後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等を使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性基体として用いることができる。
【0029】
この他、上記の導電性基体に、導電性粉体を結着樹脂に分散させた導電層を形成したものも、導電性基体として用いることができる。導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
【0030】
導電層は、導電性粉体と結着樹脂を、THF(テトラヒドロフラン)、MDC(ジクロロメタン)、MEK(メチルエチルケトン)、トルエン等の溶剤に分散させた塗布液を塗布することにより形成することができる。
【0031】
さらに、円筒状の基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂に導電性粉体を分散させた熱収縮チューブを用いて、導電性層を形成したものも、導電性基体として用いることができる。
【0032】
電荷発生層は、導電性基体上に、結着樹脂、本発明の電荷発生物質及び溶剤を含有する塗布液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0033】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。中でも、ブチラール化度が70モル%未満であるブチラール系樹脂、ホルマール化度が15モル%未満であるブチラール系樹脂が好ましく、ビニル化合物の重合体又はその共重合体であるブチラール系樹脂がさらに好ましい。このような結着樹脂を用いることによって、分散性や取り扱い性が良好で安定した塗布液が得られ、形成された感光体を繰り返し使用しても長期間、高品質で安定した電子写真画像を提供することができる。なお、結着樹脂の添加量は、電荷発生物質100重量部に対して、通常、20〜200重量部であり、50〜150重量部が好ましい。
【0034】
ここで用いられる溶剤としては、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗工方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビートコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、通常、0.01〜5μmであり、0.1〜2μmが好ましい。
【0035】
電荷発生層には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することができる。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーを使用することができ、その添加量は、結着樹脂に対して、通常、0〜1重量%である。
【0036】
電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0037】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質が挙げられ、いずれも使用できる。電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等が挙げられる。一方、正孔輸送物質としては、ポリ(N−カルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0038】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0039】
電荷輸送物質の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。また、電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmであることが好ましい。ここで、用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。
【0040】
また、電荷輸送層には、電荷輸送物質としての機能と、結着樹脂としての機能を有する高分子電荷輸送物質も使用することができる。高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は、耐摩耗性に優れる。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、トリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に有するポリカーボネートが良好に用いられる。例えば、特開2000−103984号公報の(1)〜(10)式で表わされる高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
【0041】
また、本発明において、電荷輸送層には、可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものを使用することができ、その添加量は、結着樹脂に対して、通常、0〜30重量%である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーを使用することができ、その添加量は、結着樹脂に対して、通常、0〜1重量%である。
【0042】
本発明の感光体は、図1(b)及び(d)に示すように、導電性基体と感光層の間に下引き層を設けることができる。下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、下引き層上に感光層の塗布液を塗布するため、これらの樹脂は、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を添加してもよい。下引き層は、感光層の場合と同様の溶剤、塗工方法を用いて形成することができる。
【0043】
さらに、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、下引き層には、Alを陽極酸化によって設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法によって設けたものも使用することができる。なお、下引き層の膜厚は、通常、0〜5μmである。また、下引き層は、図1(b)及び(d)に示すように、一層ではなく、複数の層からなっていてもよい。
【0044】
本発明の感光体は、図1(c)及び(d)に示すように、感光層を保護する目的で、感光層上に保護層を設けることができる。保護層に使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。また、保護層には、耐摩耗性を向上させる目的で、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。
【0045】
保護層の形成方法としては、感光層の場合と同様の塗工方法を使用することができる。なお、保護層の膜厚は、通常、0.1〜7μmである。また、真空薄膜作製法で形成したα−C、α−SiC等も保護層として用いることができる。
【0046】
また、本発明においては、感光層と保護層の間に、中間層を設けることも可能である。中間層は、一般に、樹脂を主成分とする。これらの樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水酸化ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中間層の形成法としては、感光層の場合と同様の塗工方法を使用することができる。なお、中間層の膜厚は、通常、0.05〜2μmである。
【0047】
図2に、単層型の感光層を有する感光体の層構成例を示す。(a)は、導電性基体1上に、感光層6が形成されている例である。(b)は、導電性基体1上に、下引き層4及び感光層6が積層されている例である。(c)は、導電性基体1上に、感光層6及び保護層5が積層されている例である。(d)は、導電性基体1上に、下引き層4、感光層6及び保護層5が積層されている例である。
【0048】
感光層は、本発明の電荷発生物質及び結着樹脂を、必要に応じて、電荷輸送物質と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶剤を用いて分散機等で分散させた塗布液を、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等により塗布して形成することができる。なお、感光層の膜厚は、通常、5〜25μmである。
【0049】
結着樹脂としては、電荷輸送層と同様の結着樹脂を用いることができ、さらに、電荷発生層と同様の結着樹脂を混合して用いてもよい。電荷発生物質の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、電荷輸送物質の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、0〜190重量部であることが好ましく、50〜150重量部がさらに好ましい。このとき、高分子電荷輸送物質も使用することができる。
【0050】
本発明の電荷発生物質は、有機溶媒中で電荷発生物質を合成する工程、合成後の電荷発生物質及び不純物を含有する反応液を遠心分離して電荷発生物質を主成分とする沈降物と不純物を含有する上澄み液に分離する工程、沈降物に有機溶媒又は水を添加して分散させることにより得られる液を遠心分離して合成された電荷発生物質を主成分とする沈降物と不純物を含有する上澄み液に分離する操作を繰り返すことにより不純物を除去する工程及び不純物が除去された電荷発生物質を乾燥させる工程を経て、製造することができる。なお、不純物としては、未反応原料、副生成物等が挙げられる。
【0051】
本発明の電荷発生物質は、アゾ顔料であることが好ましく、対称アゾ顔料、非対称ビスアゾ顔料、対称トリスアゾ顔料又は非対称トリスアゾ顔料がさらに好ましい。アゾ顔料は、ジアゾニウム塩とカップラーを有機溶媒中でカップリング反応させることにより合成することができるが、カップリング反応後の反応液には、合成されたアゾ顔料以外に、不純物が含まれており、不純物の除去が必要になる。
【0052】
本発明において、カップリング反応後の反応液は、直径が0.003〜0.012μmであり、長さが0.07〜0.3μmであるアゾ顔料の針状結晶が100個以上凝集した凝集物を含有することが好ましい。これにより、遠心分離する際に、アゾ顔料を速やかに沈降させることができ、また、沈降したアゾ顔料の再拡散を抑制することができる。その結果、アゾ顔料の凝集物と不純物を含有する上澄み液を分離することができる。
【0053】
本発明において、カップリング反応後の反応液が含有する不純物としては、モノアゾ化合物が挙げられ、これは、水に溶解せず、有機溶媒に溶解する。しかしながら、反応液中で、モノアゾ化合物を溶解させると共に、アゾ顔料を凝集させることができることから、反応液中の水の含有量が1〜25重量%であることが好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。この結果、遠心分離する際に、アゾ顔料を速やかに沈降させることができ、また、沈降したアゾ顔料の再拡散を抑制することができる。したがって、遠心分離を行うことによって、モノアゾ化合物は、上澄み液中に溶け出し、アゾ顔料は、沈降物となる。このため、遠心分離によって不純物を確実に除去することが可能になり、電気特性が安定なアゾ顔料を得ることが可能になる。
【0054】
本発明において、カップリング反応後の反応液中のアゾ顔料の含有量は、2〜7重量%であることが好ましく、3〜5重量%がさらに好ましい。これにより、遠心分離する際に、効率良く不純物を除去することができ、高純度のアゾ顔料が得られる。アゾ顔料の含有量が2重量%未満であると、遠心分離で生じる沈降物の量が少なくなると共に、沈降物が反応液中に再拡散することがある。また、遠心分離の効率が低くなる。一方、アゾ顔料の含有量が7重量%を超えると、上澄み液の量が少なくなって、効率的に不純物を除去できなくなることがある。
【0055】
本発明において、遠心分離する際に印加される遠心力は、3〜40kgfであることが好ましく、8〜20kgfがさらに好ましい。これにより、遠心分離機の設備が大規模にならず、且つ、アゾ顔料を高収率で、効率的に精製することが可能になる。具体的には、カップリング反応後の反応液が、直径が0.003〜0.012μmであり、長さが0.07〜0.3μmであるアゾ顔料の針状結晶が100個以上凝集した凝集物を含有する場合に、アゾ顔料は、30分以内で沈降し、アゾ顔料を効率的に精製することが可能になる。遠心力が3kgf未満であると、アゾ顔料の沈降が不充分となることがあり、40kgfを超えると、遠心分離機の装置コストが大きくなり、工業的に実施することが困難になることがある。
【0056】
アゾ顔料の合成例として、非対称ビスアゾ顔料をアルカリカップリング法で合成する反応式を以下に示す。
【0057】
【化1】

ジアゾニウム塩(I)と、カップラー成分Cp及びCpをジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)等の極性溶媒に溶解させた溶液に、酢酸ナトリウム、トリエチルアミン等のアルカリ溶液を滴下することによってカップリング反応を行い、非対称ビスアゾ顔料(II)が得られる。なお、Arは、アリール基である。ここで、ジアゾニウム塩の替わりに、テトラゾニウム塩、ヘキサゾニウム塩を用いてもよく、テトラゾニウム塩を用いると、トリスアゾ顔料が得られる。このカップリング反応を行った反応液には、非対称アゾ顔料(II)の他に、不純物が含まれる。不純物としては、モノアゾ化合物、ホウフッ化ナトリウム、酢酸、未反応のジアゾニウム塩(I)及びカップラー成分Cp及びCp、ジアゾニウム塩(I)及びカップラー成分Cp及びCpに含まれていた不純物が挙げられる。従って、カップリング反応でアゾ顔料を合成する際には、不純物を除去する処理が必要になる。
【0058】
まず、従来の不純物を除去する処理について説明する。図3に、従来の電荷発生物質の製造装置の構成例を示す。図3に示す製造装置は、カップラー成分CpのDMF溶液を入れたタンク11、カップラー成分CpのDMF溶液を入れたタンク12、DMFを入れたタンク13、メタノールを入れたタンク14、水を入れたタンク15を有し、それぞれのタンクには、バルブが設けられている。さらに、タンク16では、カップリング反応や合成したアゾ顔料の洗浄が行われるが、このとき、モーター18によって、攪拌翼19を回転させることにより、タンク16内の液体17を攪拌することができる。
【0059】
タンク16でカップリング反応を行ってアゾ顔料を合成した反応液は、バルブ20を開いて真空濾過槽21に送液し、真空濾過を行って、濾滓22として、アゾ顔料が得られる。なお、真空濾過する際には、排気管25を有する真空ポンプ24が用いられる。
【0060】
濾滓22として得られたアゾ顔料を再度タンク16に投入した後、タンク13及び/又はタンク14からDMF及び/又はメタノールを送液し、タンク16内で攪拌を行った後、再度真空濾過を行って、残滓22が得られる。この操作を数回繰り返すことによって、合成して得られたアゾ顔料から不純物を取り除く。そして、得られた濾滓22を再度タンク16に投入した後、タンク15から水を送液して充分攪拌した後、真空濾過を行い、得られた濾滓22を乾燥することによって、アゾ顔料が得られる。しかしながら、この方法は、濾過に時間がかかるという問題がある。
【0061】
次に、本発明における不純物を除去する処理について説明する。図4に、本発明の電荷発生物質の製造装置の構成例を示す。なお、図4において、図3と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
タンク16でカップリング反応を行ってアゾ顔料を合成した反応液は、バルブ20を開いて遠心分離機26の高速回転するベッセル27に送液する。ベッセル27は、モーター28によって3000〜20000rpmで回転させることができる。モーター28を運転すると、ベッセル27内の液体は、沈降物29と上澄み液に分離する。ベッセル27内の上澄み液は、遠心分離機26を運転しながら、スキミングノズル30をベッセル27に向けてゆっくりと動かし、スキミングノズル30の先端で上澄み液をすくい取るようにして取る。このようにして、上澄み液は、廃液回収タンク31内に廃液32として集められる。
【0063】
沈降物29として得られたアゾ顔料を再度タンク16に投入した後、タンク13及び/又はタンク14からDMF及び/又はメタノールを送液し、タンク16内で攪拌を行った後、再度遠心分離を行って、沈降物29が得られる。この操作を数回繰り返すことによって、合成して得たアゾ顔料から不純物を取り除く。そして、得られた沈降物29を再度タンク16に投入した後、タンク15から水を送液して充分攪拌した後、遠心分離を行い、得られた沈降物29を乾燥することによって、アゾ顔料が得られる。
【0064】
なお、遠心分離により得られた沈降物29は、真空濾過してもよい。この場合、遠心分離により大半の溶剤は除去されているので、濾過時間を短縮することができる。
【0065】
また、図5に示すように、遠心分離機26のベッセル27の内壁には、区画板33が固定されており、回転中心34の周りに回転する。これにより、ベッセル27を高速回転させた場合に、ベッセル27内の液体は、区画板33で遮られて渦状に流動しなくなる。その結果、細かく沈降しにくいアゾ顔料であっても、遠心分離中にベッセル27内で流動しなくなり、遠心沈降することが可能になる。なお、ベッセル27に設けられる区画板33の数は、6枚に限定されず、3枚以上10枚以下であることが好ましく、4枚以上6枚以下がさらに好ましい。また、区画板33の形状は、矩形に限定されず、遠心分離中にベッセル27内の液体に大きな流動が生じない程度であれば、スキミングノズル30との接触を避けるために、一部を切り欠いていてもよい。
【0066】
なお、ベッセル及び区画板の材料は、高速回転に耐えられる強度を有していればよく、アルミニウム合金、チタン又は鋼であることが好ましい。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
図4に示す電荷発生物質の製造装置を使用してアゾ顔料を製造した。具体的には、構造式
【0068】
【化2】

で表されるカップラー成分Cpの約4重量%のDMF溶液14.76kgをタンク11に入れた後、タンク11のバルブを開いてタンク16に全量を送液した。次に、モーター18で攪拌翼19を回転させることにより、タンク16内の液体17を攪拌しながら、構造式
【0069】
【化3】

で表されるジアゾニウム塩(I)の粉末1.16kgをタンク16に直接投入した。さらに、構造式
【0070】
【化4】

で表されるカップラー成分Cpの3.77重量%のDMF溶液14.7kgをタンク12に投入した後、タンク12のバルブを開いてタンク16に約500cc/分の流量で全量を送液した。次に、9.3重量%の酢酸ナトリウム水溶液7.09kgをタンク16に約250cc/分の流量で送液した後、攪拌翼19を2時間回転させた。この間、タンク16内の液体17の温度が15℃以上20℃以下になるように、タンク16の温度を制御した。この結果、タンク16内には、構造式
【0071】
【化5】

で表される非対称ビスアゾ顔料(II)と、モノアゾ化合物、ホウフッ化ナトリウム、酢酸等を含有する反応液が得られた。
【0072】
反応液の一部をイオン交換水で約1重量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製の150メッシュのネットですくい取り、乾燥させた後、透過型電子顕微鏡H−9000NAR(日立社製)を用いて、15000倍で観察し、写真撮影を行った。その透過型電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0073】
アゾ顔料の合成が終了してから2時間経過した後に、遠心分離機26のベッセル27をモーター28により8500rpmで回転させながら、バルブ20を開き、タンク16内の液体17をベッセル27へ送液した。ここで、ベッセル27は、内径が約20cm、深さが約25cm、最高回転数が12000rpmである。
【0074】
遠心分離機26を50分間運転させた後、遠心分離機26を運転させながら、スキミングノズル30をベッセル27の内壁に向けて移動させ、上澄み液を取り出した。このようにして上澄み液を取り出した後、遠心分離機26のモーター28を止め、ベッセル27の内壁に堆積した沈降物29を取り出した。これは、アゾ顔料の粗精製物である。このとき、1回の処理時間は約15分であった。これをタンク16内の液体17が空になるまで繰り返した。反応液の全量を遠心分離するためには、約4時間を要した。
【0075】
遠心分離で取り出した沈降物29をタンク16に再度投入した後、タンク13のバルブを開いてタンク16にDMFを送液した。そして、攪拌翼19を回転させながら、1時間攪拌を行った。このとき、タンク16内の液体17の温度が60±10℃になるように制御した。次に、遠心分離機26を運転し、バルブ20を開いてタンク16内の液体17をベッセル27に送液した。そして、上記と同様に遠心分離を行って、沈降物29を取り出した。全量を遠心分離するためには、約4時間を要した。このような操作を、さらに3回繰り返した。この3回の処理には、約15時間を要した。
【0076】
次に、遠心分離で取り出した沈降物29をタンク16に再度投入した後、タンク14のバルブを開いてタンク16にメタノールを送液した。そして、1時間の攪拌を行った後に上記と同様に遠心分離を行って、沈降物29を取り出した。全量を遠心分離するためには、約4時間を要した。
【0077】
次に、遠心分離で取り出した沈降物29をタンク16に再度投入した後、タンク15のバルブを開いてタンク16に水を送液した。そして、1時間の攪拌を行った後に上記と同様に遠心分離を行って、沈降物29を取り出した。全量を遠心分離するためには、約4時間を要した。アゾ顔料の合成が終了した後の処理時間の合計は、約34時間であった。
【0078】
さらに、遠心分離で取り出した沈降物29を真空乾燥し、アゾ顔料の粉末を約1400g得た。
【0079】
次に、アゾ顔料を用いた電子写真感光体の製造について説明する。
【0080】
アルコール可溶性ポリアミドCM−8000(東レ社製)3重量部をメタノール/n−ブタノール=8/2(体積比)の混合溶媒100重量部に加熱溶解させて、下引き層塗工液を調製した。外径30mm、長さ340mmの表面を切削加工したアルミニウム製パイプに下引き層塗工液を浸漬塗布し、100℃で40分間乾燥させて、膜厚が0.1μmの下引き層を形成した。
【0081】
次に、ASTM1396−58で定義されるポリビニルアルコール分が18〜20%、ポリビニルアセテート分が1.7%以下であるブチラール樹脂(UCC社製)3重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解させた溶液にアゾ顔料6重量部を加え、ボールミルで120時間分散させた。さらに、シクロヘキサノン300重量部を加え、3時間分散させて、電荷発生層塗工液を調製した。下引き層上に電荷発生層用塗工液を塗布し、130℃で10分間乾燥させて、膜厚が0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0082】
次に、構造式
【0083】
【化6】

で表される電荷輸送物質8重量部、ポリカーボネート樹脂Z−200(三菱ガス化学社製)10重量部及びシリコーンオイルKF−50(信越化学工業社製)0.002重量部をテトラヒドロフラン85重量部に溶解させて、電荷輸送層塗工液を調製した。電荷発生層上に電荷輸送層塗工液を塗布し、130℃で20分間乾燥させて、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0084】
得られた電子写真感光体をIPSIO Color 8000(リコー社製)に取り付け、濃度8%の文字チャートで20枚連続出力し、30秒間停止する操作を繰り返して、A4サイズ1万枚の印字出力を行い、随時画像品質を目視確認したが、全ての画像に問題は無かった。
(比較例1)
図3に示す電荷発生物質の製造装置を使用した以外は、実施例1と同様にしてアゾ顔料を合成した。すなわち、タンク16内には、非対称ビスアゾ顔料(II)と、モノアゾ化合物、ホウフッ化ナトリウム、酢酸等を含有する反応液が得られた。
【0085】
アゾ顔料の合成が終了してから2時間経過した後に、バルブ20を開き、タンク16内の液体17を真空濾過槽21へ送液した。ここで、真空濾過槽21は、濾過面積が5000cm、フィルターのポアサイズ(開口部の大きさ)が20μmであり、濾過時の真空度は、0.5atmであった。この真空濾過槽21で濾過を行ったところ、反応液の全量を濾過するためには、7日間を要した。このようにして濾過を行った後、フィルターの表面に集まった濾滓22を取り出した。これは、アゾ顔料の粗精製物である。
【0086】
濾過で取り出した濾滓22をタンク16に再度投入した後、タンク13のバルブを開いてタンク16にDMFを送液した。そして、攪拌翼19を回転させながら、1時間攪拌を行った。このとき、タンク16内の液体17の温度が60±10℃になるように制御した。次に、上記と同様に濾過を行って濾滓22を取り出した。このような操作を、さらに3回繰り返した。
【0087】
次に、濾過で取り出した濾滓22をタンク16に再度投入した後、タンク14のバルブを開いてタンク16にメタノールを送液した。そして、1時間攪拌を行った後、上記と同様に濾過を行って濾滓22を取り出した。
【0088】
次に、濾過で取り出した濾滓22をタンク16に再度投入した後、タンク15のバルブを開いてタンク16に水を送液した。そして、1時間攪拌を行った後、上記と同様に濾過を行って濾滓22を取り出した。アゾ顔料の合成が終了した後の処理時間の合計は、約30日間であった。
【0089】
さらに、濾過で取り出した濾滓22を真空乾燥し、アゾ顔料の粉末約1350gを得た。
【0090】
このようにして得られたアゾ顔料を使用した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、画像品質を目視確認したが、全ての画像に問題は無かった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の感光体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図3】従来の電荷発生物質の製造装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の電荷発生物質の製造装置の構成例を示す図である。
【図5】遠心分離機のベッセルを示す斜視透過図である。
【図6】アゾ顔料が凝集した状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0092】
1 導電性基体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 下引き層
5 保護層
6 感光層
11、12、13、14、15、16 タンク
17 液体
18 モーター
19 攪拌翼
20 バルブ
21 濾過槽
22 濾滓
23 廃液タンク
24 真空ポンプ
25 排気管
26 遠心分離機
27 ベッセル
28 モーター
29 沈降物
30 スキミングノズル
31 廃液タンク
32 廃液
33 区画板
34 回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中で電荷発生物質を合成する工程、該合成された電荷発生物質を含有する液を遠心分離して該合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する工程及び該沈降物に有機溶媒又は水を添加することにより得られる液を遠心分離して該合成された電荷発生物質を含有する沈降物と上澄み液に分離する操作を繰り返す工程を少なくとも有することを特徴とする電荷発生物質の製造方法。
【請求項2】
前記電荷発生物質は、アゾ顔料であることを特徴とする請求項1に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項3】
前記アゾ顔料は、対称アゾ顔料、非対称ビスアゾ顔料、対称トリスアゾ顔料又は非対称トリスアゾ顔料であることを特徴とする請求項2に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項4】
前記合成された電荷発生物質を含有する液は、直径が0.003μm以上0.012μm以下であり、長さが0.07μm以上0.3μm以下である前記アゾ顔料の針状結晶が100個以上凝集した凝集物を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項5】
前記合成された電荷発生物質を含有する液は、水を1重量%以上25重量%以下含有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項6】
前記合成された電荷発生物質を含有する液は、前記アゾ顔料を2重量%以上7重量%以下含有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項7】
前記遠心分離する際に印加される遠心力は、3kgf以上40kgf以下であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法を用いて電荷発生物質を製造する電荷発生物質の製造装置であって、
有機溶媒中で電荷発生物質を合成する手段及び該合成された電荷発生物質を含有する液を遠心分離する手段を少なくとも有することを特徴とする電荷発生物質の製造装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電荷発生物質の製造方法を用いて製造されていることを特徴とする電荷発生物質。
【請求項10】
請求項9に記載の電荷発生物質を含有する感光層を少なくとも有することを特徴とする感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−13708(P2008−13708A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187996(P2006−187996)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】