電荷輸送性ポリエステル樹脂、電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液、光電変換デバイス、および電子写真感光体
【課題】それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂。
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【解決手段】下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂。
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性ポリエステル樹脂、電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液、光電変換デバイス、および電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスター、有機太陽電池など、有機化合物を用いた電子デバイスが盛んに開発されている。
特に、耐熱性、強度の点においては、架橋構造とすることが有効であり、例えば、熱、あるいは光硬化した膜を用いた有機ELデバイス(例えば特許文献1参照)、電荷輸送性基を含有するアクリルポリマーを用いた電子写真感光体(例えば特許文献2乃至4参照)、電荷輸送性基と反応性基を含有するアクリルポリマーを、膜形成後に架橋した電子写真感光体(例えば特許文献5参照)、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献6参照)等が開示されている。また、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材およびバインダー樹脂の混合物を熱、あるいは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が開示され、特に、単官能メタクリル変性した電荷移動材と、電荷輸送性を有さないメタクリルモノマーと、ポリカーボネート樹脂とに有機過酸化物を用いて硬化したものが開示されている(例えば特許文献7参照)。
【0003】
また、電荷輸送性ポリエステル樹脂の末端に官能基を導入し、硬化した膜からなる有機半導体膜および電子写真感光体(例えば特許文献8参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/733193号
【特許文献2】特開平5−202135号公報
【特許文献3】特開平6−256428号公報
【特許文献4】特開平9−12630号公報
【特許文献5】特開2005−2291号公報
【特許文献6】特開平5−40360号公報
【特許文献7】特開平5−216249号公報
【特許文献8】特開2001−117252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0007】
【化1】
【0008】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記一般式(1)における前記Aが正孔輸送性を有する2価の有機基である請求項1に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(1)における前記Aが、下記一般式(2)で示される基である請求項1または請求項2に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0011】
【化2】
【0012】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基を表す請求項3に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基である請求項3または請求項4に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0015】
【化3】
【0016】
請求項6に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(B)から選択される2価の有機基である請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0017】
【化4】
【0018】
請求項7に係る発明は、
請求項1に規定される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解した電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液である。
【0019】
請求項8に係る発明は、
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える光電変換デバイスである。
【0020】
【化5】
【0021】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0022】
請求項9に係る発明は、
前記膜が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項8に記載の光電変換デバイスである。
【0023】
請求項10に係る発明は、
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備える電子写真感光体である。
【0024】
【化6】
【0025】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0026】
請求項11に係る発明は、
前記感光層が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項10に記載の電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂以外のものに比べ、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、一般式(1)におけるAが正孔輸送性を有する2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、一般式(2)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂以外のものに比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0031】
請求項5に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが群(A)から選択される2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが群(B)から選択される2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解されていない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液が提供される。
【0034】
請求項8に係る発明によれば、一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体または一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備えない場合に比べ、電気特性に優れ且つ耐溶剤性に優れた光電変換デバイスが提供される。
【0035】
請求項9に係る発明によれば、一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備えない場合に比べ、耐溶剤性に優れた光電変換デバイスが提供される。
【0036】
請求項10に係る発明によれば、一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体または一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備えない場合に比べ、電気特性に優れ且つ機械耐性に優れた電子写真感光体が提供される。
【0037】
請求項11に係る発明によれば、一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備えない場合に比べ、機械耐性に優れた電子写真感光体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図4】本実施形態に係るプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の概略断面図。
【図5】本実施形態に係るタンデム型画像形成装置の概略断面図。
【図6】(A)(B)(C)はそれぞれゴースト評価の基準を示す説明図。
【図7】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略部分断面図。
【図8】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図9】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図10】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【図11】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【図12】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0040】
<電荷輸送性ポリエステル樹脂>
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【0041】
【化7】
【0042】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【0043】
一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂は、極性基として−OHや−NH−などのキャリア輸送を妨げる極性基が比較的少ないため、これを用いて形成された膜においても電荷を捕獲するトラップの形成が抑制され、残留電位の蓄積が抑制されるものと推察される。
そのため、優れた電気特性を得たまま、更に形成する膜の厚さをより厚くし得る。
【0044】
また、形成される膜の強度を高める目的で、電荷輸送材料に対し更に多官能のアクリルモノマーを混合して成膜する場合や、重合性官能基を有するまたは有さない電荷輸送材料を混合して成膜する場合、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂は前記多官能のアクリルモノマーと類似したエステル構造を有しているため、或いは前記重合性官能基を有するまたは有さない電荷輸送材料と類似した電荷輸送性構造を有しているため、これらと相分離を生じることなく架橋され、電気特性と強度とを兼ね備えた膜が得られるものと推察される。
【0045】
更に、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて膜を形成することで、結晶化が抑制され、厚みのムラが抑制された薄膜が容易に得られ、その結果電気特性に優れるものと推察される。
尚、架橋構造とすることで一層耐熱性、耐溶剤性の高い膜が得られ、長期に渡って安定した性能が得られる。
【0046】
−一般式(1)における各基の説明−
前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂におけるAは、電荷輸送性を有する2価の有機基を示し、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物などから誘導される2価の有機基が挙げられる。この中でもトリアリールアミン骨格、ベンジジン骨格、スチルベン骨格を持つものが望ましい。
【0047】
特に一般式(1)におけるAは、下記一般式(2)で示される構造が好ましい。
【0048】
【化8】
【0049】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【0050】
前記一般式(2)におけるXは置換または未置換の2価の有機基を表し、芳香環を有する基であっても有しない基であってもよい。尚、芳香環を有する基であることがより好ましく、この中でも、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基であることがより好ましい。
【0051】
「多核芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、環同士が炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基を表す。具体的には、芳香環を構成する炭素同士が直接炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基や、芳香環同士が炭素数1以上18以下の炭素鎖(アルキル鎖又はアルキレン鎖)によって連結されている炭化水素基等が挙げられる。
多核芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、トリフェニルエチレン等の水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
なお、上記多核芳香族炭化水素基を構成する芳香環は、後述する縮合芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環であってもよい。多核芳香族炭化水素基を構成する縮合芳香族炭化水素基及び芳香族複素環の具体例としては、例えば後述する具体例の化合物と同様のものが挙げられる。
【0052】
「縮合芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が隣接して結合する1対の炭素原子を共有している炭化水素基を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等の水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0053】
「芳香族複素環」は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。
芳香族複素環の環骨格を構成する原子数(Nr)としては、例えば、Nr=5、又はNr=6等が挙げられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は限定されない。異種原子の種類としては、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が挙げられる。また芳香族複素間は、環骨格中に2個以上の異種原子が含まれていてもよく、2種以上の異種原子が含まれていてもよい
【0054】
特に、Nr=5の環骨格構造(すなわち5員環構造)を有する複素環としては、例えば、チオフェン、チオフィン、ピロール、フラン、又はこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環等が挙げられる。またNr=6の環骨格構造(すなわち6員環構造)を有する複素環としては、例えば、ピリジン環等が挙げられる。
【0055】
芳香環、多核芳香環及び縮合芳香環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが望ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のものが望ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる
【0056】
一般式(2)におけるXとしては、好ましい例として下記式(1)乃至(7)から選択された基が挙げられる。
【0057】
【化9】
【0058】
式(1)乃至(7)中、R7は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、又は置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、R8乃至R14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、aは0又は1を意味し、Vは下記の式(8)乃至(17)から選択された少なくとも1つの基を表す。
【0059】
【化10】
【0060】
上記式(8)乃至式(17)中、bは1以上10以下の整数を意味し、cは1以上3以下の整数を意味する。
【0061】
尚、一般式(2)におけるXとしては、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基が好ましく、更には以下に示す群(B)から選択される2価の有機基が特に好ましい。
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
一般式(2)におけるR1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を表す。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが望ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
置換アリール基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる
【0065】
上記R1およびR2の中でも、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基が特に好ましい。
尚、R1およびR2が置換する位置としては、窒素(N)が結合する位置に対し、メタ位またはパラ位が好ましい。
【0066】
一般式(1)におけるTは、炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を表す。尚、2価の炭化水素基が直鎖状である場合は、炭素数は1以上6以下の範囲が望ましく、2以上6以下の範囲がより望ましく、2価の炭化水素基が分枝鎖状である場合には、炭素数は2以上10以下の範囲が望ましく、3以上7以下の範囲がより望ましい。
以下に、Tで表される基の具体的な構造の例(炭化水素基T−1〜炭化水素基T−32)を示す。但し、アリールアミン骨格(即ち一般式(1)におけるA)は下記炭化水素基のどちらの側と結合してもよい
【0067】
【化13】
【0068】
一般式(1)におけるnは、5以上5000以下の整数を表し、更に好ましくは7以上4500以下であり、特に好ましくは10以上4000以下である。
【0069】
以下、上記一般式(1)におけるAが上記一般式(2)である電荷輸送性ポリエステル樹脂の具体例を示すが、これら具体例に限定されるわけではない。
【0070】
なお、下記表において「R1」および「R2」の欄に記載された数字は、結合の位置を表す。また、「T」の欄に記載される値は、上記に具体的に示した炭化水素基の構造式に付した番号(T−1)〜(T−32)を意味する。尚、「T」の欄において、たとえば「T−5r」と記す場合には構造T−5の右側に、「T−5l」と記す場合には構造T−5の左側にアリールアミン骨格(即ち、一般式(1)におけるA)が結合していることを示すものとする。また、下記表において、「結合位置」に示される値は、前記一般式(2)におけるベンゼン環に記載されている数値の箇所に結合していることを示し、更にkが1の場合、( )内のベンゼン環も数字が記載されているベンゼン環と同様の箇所に結合していることを示す。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
【化18】
【0076】
【化19】
【0077】
ついで合成方法について説明する。
モノマーとして以下の組み合わせで、本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂が合成される。
(1)HO−T−A−T−OHとイタコン酸の場合
ジオール成分モノマーとイタコン酸を当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など、通常のエステル化反応に用いるものが使用され、ジカルボン酸成分モノマー1質量部に対して、好ましくは1/10000質量部以上1/10質量部以下、より好ましくは1/1000質量部以上1/50質量部以下の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸し得る溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレンなどが有効であり、生成するポリマーの1質量部に対して好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定し得るが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0078】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合は溶解し得る溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトンなどのポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステル樹脂を析出させ、電荷輸送性ポリエステル樹脂を分離したのち、水や有機溶剤で洗浄し、乾燥させる。
【0079】
さらに、適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステル樹脂を析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラーなどで、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステル樹脂を溶解させる溶剤は、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。また、貧溶剤は生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上1000質量部以下、より好ましくは10質量部以上500質量部以下の範囲で用いられる。また、反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶剤で抽出、水洗し、さらに必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0080】
(2)HO−T−A−T−OHとイタコン酸ジエステルの場合
HO−T−A−T−OHに対しイタコン酸ジエステルを当量以上3等量以下加え、たとえば、実験化学講座、第4版、28巻、P.217などに記載されたごとく、チタン、スズ、亜鉛などの有機金属化合物、または、硫酸、リン酸などの無機酸を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成し得る。触媒は、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1/10000質量部以上1質量部以下、より好ましくは1/1000質量部以上1/2質量部以下で用いられる。反応は、好ましくは反応温度100℃以上300℃以下で行い、重合を促進するため、好ましくは0.01mmHg以上100mmHg以下、より好ましくは0.05mmHg以上20mmHg以下に減圧して反応させることが好ましい。また、1−クロロナフタレンなどの高沸点溶剤を用いて、過剰のイタコン酸ジエステルを除きながら反応させてもよい。
【0081】
(3)B−T−A−T−Bとイタコン酸の場合(Bは塩素、臭素、ヨウ素を示す)
B−T−A−T−Bとイタコン酸を当量混合し、ピリジン、ピペリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、やトリエチルアミンなどの有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基を用いて重合する。塩基は、イタコン酸に対して、好ましくは1当量以上10当量以下、より好ましくは2当量以上5当量以下で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、などが有効であり、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定し得る。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0082】
電荷輸送性ポリエステル樹脂は、1種の−T−A−T−成分とイタコン酸成分のみであっても構わないが、−T−A−T−と異なる構造の電荷輸送成分や、電荷輸送成分を有しないモノマーを混合してもよい。電荷輸送成分を有しないモノマーとしては、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸や、その酸塩化物、あるいは、ジメチルエステルが使用され、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールなどが使用される。
【0083】
これら合成方法のうち、(1)または(3)の方法が高分子量のポリマーを得やすく、好ましく使用される。また、ポリマー中で電荷輸送性を有するユニット数[J]と電荷輸送性を有さないユニット数[K]との割合は、0.5≦[J]/[J]+[K]≦1が好ましく、より好ましくは0.7≦[J]/[J]+[K]≦1、さらに好ましくは0.8≦[J]/[J]+[K]≦1に設定される。
【0084】
電荷輸送性ポリエステル樹脂の重合度pは、5以上5000以下の範囲で用いられ、好ましくは7以上3000以下、より好ましくは10以上1000以下に設定される。さらに、一般式(2)中のkは、0あるいは1から選ばれる整数を示すが、kが1のものが好ましい。
【0085】
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、電子写真感光体あるいは有機電界発光素子などへ応用され、単独で、あるいは、それと相溶し得る絶縁性ポリマーを含有してもよい。
具体的には、支持体上に上記電荷輸送性ポリエステル樹脂を含有する層を設けた構造のものが有機電子デバイスとして使用される。有機電子デバイスの代表的なものとしては、感光層を有する電子写真感光体が挙げられ、特に、本実施形態の電荷輸送性ポリエステル樹脂を該電子写真感光体の表面層に含有するものが挙げられる。また、感光層中に電荷輸送材料として、本実施形態の電荷輸送性ポリエステル樹脂と、公知の電荷発生材料を含有するもの、特に、フタロシアニン化合物結晶を含む電子写真感光体も好ましいものとして挙げられる。
本実施形態における上記電子写真感光体において、上記電荷輸送性ポリエステル樹脂と組み合せて使用されるフタロシアニン結晶としては、特開平5−98181号公報に開示されているハロゲン化ガリウムフタロシアニン結晶、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されているハロゲン化スズフタロシアニン結晶、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されているヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されているオキシチタニウムフタロシアニン水和物結晶が用いられる。
【0086】
<電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液>
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液は、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解してなる。
【0087】
この溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒が、単独または混合溶媒として用いられる。
【0088】
尚、これらの溶媒に前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を溶解する溶解方法としては、10℃から150℃、好ましくは15℃から120℃で溶剤と攪拌混合、あるいは、超音波照射しながら攪拌するなど通常の方法で行い得る。
【0089】
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液は、例えば、光電変換デバイス(有機ELデバイス、電子写真感光体等)における膜の形成や、太陽電池、有機トランジスター等の形成に用いられる。
【0090】
<光電変換デバイス>
ついで、光電変換デバイスについて説明する。
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、該電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて膜を形成し得る。また、この膜は、前記電荷輸送性ポリエステル樹脂が重合されてなる架橋体を含有してもよい。
尚、上記電荷輸送性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂や、二重結合を有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーと混合し、硬化させた硬化膜も好ましく用いられる。
【0091】
・非反応性のバインダー樹脂
上記電荷輸送性ポリエステル樹脂を樹脂に相溶させる場合、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知の非反応性のバインダー樹脂が挙げられる。
【0092】
非反応性のバインダー樹脂の総含有量は、膜を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して、0質量%以上60質量%以下が望ましく、より望ましくは0質量%以上55質量%以下、更に望ましくは0質量%以上50質量%以下である。
【0093】
・反応性化合物
硬化する場合、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂に、さらに反応性化合物を含有させてもよく、特に、同一分子内に2つ以上の二重結合を含むモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーを混合して硬化することが好ましい。
【0094】
反応性化合物として、1官能のモノマーは、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0095】
反応性化合物として、2官能のモノマーは、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
【0096】
反応性化合物として、3官能のモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート、トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0097】
反応性化合物として、4官能のモノマーは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
反応性化合物として、5官能以上のモノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
また、反応性化合物として、反応性のポリマーは、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11―52603号公報、特開2000−264961号公報、特開2005−2291号公報などに開示されたものが挙げられる。
【0100】
反応性化合物を用いる場合には、単独または2種以上の混合物として使用される。反応性化合物は、膜を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下で用い、更に好ましくは50質量%以下で使用される。
【0101】
・重合、硬化
前記電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用い、該溶解液中の成分を重合することで硬化された膜を得る場合、その重合の際には熱、光、放射線などが用いられる。熱、光で重合、硬化を行う場合、重合開始剤は必ずしも必要ではないが、光硬化触媒または熱重合開始剤を用いてもよい。この光硬化触媒および熱重合開始剤としては、公知の光硬化触媒や熱重合開始剤が用いられる。放射線としては電子線が好ましい。
【0102】
−電子線硬化−
電子線を用いる場合、加速電圧は300KV以下が好ましく、更には150KV以下が好ましい。また、線量は好ましくは1Mrad以上100Mrad以下の範囲、より好ましくは3Mrad以上50Mrad以下の範囲である。加速電圧が300KV以下であることにより感光体特性に対する電子線照射のダメージが抑制される。また、線量が1Mrad以上であることにより架橋が行なわれ、100Mrad以下であることにより感光体の劣化が抑制される。
【0103】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm、好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、あるいは照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0104】
−光硬化−
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられ、バンドパスフィルター等のフィルターを用いて好適な波長を選択してもよい。照射時間、光強度は自由に選択されるが、例えば照度(365nm)は300mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、例えば600mW/cm2のUV光を照射する場合、5秒以上360秒以下照射すればよい。
【0105】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、あるいは照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0106】
光硬化触媒として、分子内開裂型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系などが挙げられる。
より具体的には、ベンジルケタール系として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
【0107】
また、アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
【0108】
アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
【0109】
ホスフィノキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンキサイドなどが挙げられる。
【0110】
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0111】
オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0112】
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系として、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0113】
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0114】
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0115】
これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0116】
−熱硬化−
熱重合開始剤としては、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、VE−73、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBM、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤;パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(化薬アクゾ社製)、ルルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531などが挙げられる。
【0117】
これらのうち、分子量250以上のアゾ系重合開始剤を用いると、低い温度でムラなく反応が進行することから、ムラの抑制された高強度の膜の形成が図られる。より好適には、アゾ系重合開始剤の分子量は、250以上であり、300以上が更に好適である。
【0118】
加熱は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、好ましくは50℃以上170℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下で、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上100分以下加熱する。
【0119】
光硬化触媒または熱重合開始剤の総含有量は、層形成のための溶解液中の全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、更には0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲が特に好ましい。
【0120】
〔電子写真感光体〕
本実施形にかかる電子写真感光体は、導電性基体上に、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成された層を有する。
【0121】
即ち、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する層を備える。
【0122】
【化20】
【0123】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0124】
尚、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有することがより好ましい。
【0125】
さらに、架橋性モノマー自身を多官能の電荷輸送性モノマーとしてもよい。
【0126】
本実施形態に係る電子写真感光体では、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する層を最表面層として有するものが好ましく、当該最表面層は電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、または電荷輸送層として機能する層として設けられる。
なお、最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層および電荷発生層からなる感光層、または単層型感光層を有することとなる。
【0127】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、および最表面層としての保護層を有し、該保護層が前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成されたポリマーを含有する組成物、あるいはその硬化物を含有する層である形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、および最表面層としての電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成されたポリマーを含有する組成物、あるいはその硬化物を含有する層である形態が挙げられる。
また、チオール基、不飽和結合などの反応性を有さない電荷輸送材料を混合してもよい。
【0128】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0129】
図1は、本実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一例を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0130】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(または積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、および保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2および電荷輸送層3により感光層が構成される。
【0131】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aのごとく、電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、および保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3および電荷発生層2により感光層が構成される。
【0132】
図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6)に含有するものである。図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0133】
そして、図1、図2および図3に示す電子写真感光体7A、7Bおよび7Cにおいて、保護層5が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記の構成となっている。
尚、図1、図2および図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0134】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。
【0135】
−保護層−
まず、電子写真感光体7Aにおける最表面層である保護層5について説明する。
保護層5は、電子写真感光体7Aにおける最表面層であり、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成されることが好ましく、一般式(1)に示される構造を部分構造として含むポリマーを含有することが好ましく、さらに硬化されていること、即ち上記電荷輸送性ポリエステル樹脂が重合されてなる重合体を含有することが最も好ましい。
【0136】
硬化方法としては、熱、光、または放射線などによるラジカル重合が行なわれる。反応が早く進行しすぎないよう調整すると膜のムラやシワの発生が抑制されるため、ラジカル発生が比較的ゆっくりと起こる条件下で重合させることが望ましい。この点からは、重合速度を調整しやすい熱重合が好適である。
【0137】
・非反応性の電荷輸送材料
保護層(最表面層)5を構成する膜は、非反応性の電荷輸送材料を併用してもよい。非反応性の電荷輸送材料は電荷輸送を担っていない反応性基を有さないため、非反応性の電荷輸送材料を保護層(最表面層)5に用いた場合には実質的に電荷輸送成分の濃度が高まり、電気特性を更に改善するのに有効である。また、非反応性の電荷輸送材料を添加して架橋密度を減じ、強度を調整してもよい。
【0138】
非反応性の電荷輸送材料としては、公知の電荷輸送材料を用いてもよく、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等が用いられる。
中でも、モビリティー、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが望ましい。
【0139】
非反応性の電荷輸送材料は、層形成のための塗布液中の全固形分に対して0質量%以上30質量%以下で用いられることが望ましく、より望ましくは1質量%以上25質量%以下であり、更に望ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0140】
・その他の添加剤
保護層(最表面層)5を構成する硬化膜は、更に成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、特にフッ素含有のカップリング剤と混合して用いてもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。また、ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物を用いてもよい。
【0141】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越化学工業社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0142】
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えてもよい。
【0143】
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、架橋膜の成膜性の観点から、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物としては、特開2007−11005号公報に記載の化合物などが挙げられる。
【0144】
保護層(最表面層)5を構成する硬化膜には、劣化防止剤を添加することが好ましい。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0145】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス1076、イルガノックス1010、イルガノックス1098、イルガノックス245、イルガノックス1330、イルガノックス3114、イルガノックス1076(以上、チバ・ジャパン製)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、サノールLS2626、サノールLS765、サノールLS770、サノールLS744(以上、三共ライフテック製)、チヌビン144、チヌビン622LD(以上、チバ・ジャパン製)、マークLA57、マークLA67、マークLA62、マークLA68、マークLA63(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として、スミライザーTPS、スミライザーTP−D(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として、マーク2112、マークPEP−8、マークPEP−24G、マークPEP−36、マーク329K、マークHP−10(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
【0146】
更に、保護層(最表面層)5を構成する硬化膜には導電性粒子や、有機、無機粒子を添加してもよい。
この粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、好ましくは平均粒径1nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれる。該粒子としては一般に市販されているものを使用してもよい。
【0147】
保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、保護層5の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0148】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。
表面層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層5の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0149】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集、89頁”に示される、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂で構成される粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。さらに、粒子を分散させるために公知の種々の分散材を用いてもよい。
【0150】
また、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0151】
また、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着での混合でもよい。導電性粒子の平均粒径は0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
【0152】
(組成物)
保護層5を形成するために用いる組成物は、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解してなる溶解液(保護層形成用塗布液)として調製されることが望ましい。
この保護層形成用塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒などの単独または混合溶媒を用いて調製される。
【0153】
また、前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、望ましくは室温(20℃)以上100℃以下、より望ましくは30℃以上80℃以下で、望ましくは10分以上100時間以下、より望ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温する。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
【0154】
(保護層5の作製)
保護層形成用塗布液は、被塗布面(図1に示す態様では電荷輸送層3)の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線または熱を付与してラジカル重合を生起させて、該塗膜を重合、硬化させる。
【0155】
熱により塗膜を重合、硬化させる際、加熱条件は50℃以上であることが望ましい。特に、加熱温度としては、100℃以上180℃以下が望ましい。
【0156】
光により塗膜を重合、硬化させる際、水銀灯、メタルハライドなどの公知の方法で照射して硬化膜を得る。
【0157】
上記の重合、硬化反応の際には、光、電子線または熱によって発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空または不活性ガス雰囲気下で、酸素濃度が望ましくは10%以下、より望ましくは5%以下、更に望ましくは2%以下、最も望ましくは500ppm以下の低酸素濃度で行われる。
【0158】
本実施態様では、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化方法が特に好ましい。
【0159】
保護層5の膜厚は3μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上35μm以下とするのがさらに好ましい。
【0160】
以上、図1に示される電子写真感光体7Aを参照し、機能分離型の感光層における各層の構成を説明したが、図2に示される機能分離型の電子写真感光体7Bにおける各層においてもこの構成が採用しうる。また、図3に示される電子写真感光体7Cの単層型感光層6の場合、以下の態様であることが望ましい。
【0161】
即ち、単層型感光層6中の電荷発生材料の含有量は、保護層(最表面層)5を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して5質量%以上50質量%以下が望ましく、更には10質量%以上40質量%以下がより望ましく、15質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0162】
単層型感光層6の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3における形成方法を採用しうる。単層型感光層6の膜厚は5μm以上50μm以下が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0163】
また、上述の実施形態では、最表面層が保護層5である形態を説明したが、保護層5がない層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が該最表面層となる。最表面層が電荷輸送層である場合、この層の厚みは、7μm以上70μm以下が望ましく、10μm以上60μm以下がより望ましい。
【0164】
−導電性基体−
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属または合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、および金属ベルトが挙げられる。また、導電性基体4としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属または合金を塗布、蒸着またはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も挙げられる。
ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0165】
電子写真感光体7Aがレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要ない。
【0166】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、または回転する砥石に支持体を接触し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0167】
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性または半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0168】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性である。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。
【0169】
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理またはベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸およびフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。
先ず、酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が好ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0170】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分以上60分以下浸漬すること、または90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分以上60分以下接触させて行うことが好ましい。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0171】
−下引層−
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。
【0172】
なかでも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いるのが望ましく、特に、酸化亜鉛は望ましく用いられる。
【0173】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、または、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
無機粒子のBET法による比表面積は、10m2/g以上が望ましい。
無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60nm以上1000nm以下)の範囲であることが望ましい。
【0174】
更に、無機粒子と共にアクセプター性化合物を含有させることが好ましい。
アクセプター性化合物としては、上記特性が得られるものであれば限定されず、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。更にヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0175】
これらのアクセプター性化合物の含有量は上記特性が得られる範囲であれば限定されないが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲で含有され、更に0.05質量%以上10質量%以下の範囲で添加されることが望ましい。
【0176】
アクセプター化合物は、下引層形成用塗布液に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。
無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、または、湿式法が挙げられる。
【0177】
乾式法にて表面処理を施す場合には、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって処理される。添加または噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。添加または噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間は任意の範囲で実施される。
【0178】
また、湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌または分散した後、溶剤除去することで処理される。溶剤除去方法はろ過または蒸留により留去される。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去してもよく、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0179】
また、無機粒子にはアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。更にアミノ基を有するシランカップリング剤が望ましく用いられる。
【0180】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、電子写真感光体特性が得られればいかなるものを用いてもよく、具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0181】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0182】
また、これらの表面処理剤を用いた表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法または湿式法が用いられる。また、アクセプター化合物の付与と、カップリング剤等の表面処理剤による表面処理と、をいっぺんに行ってもよい。
【0183】
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は電子写真特性が得られる量であれば限定されず、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0184】
また、下引層1には結着樹脂が含有されてもよい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ、所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものを使用してもよく、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。
また、下引層1に含有される結着樹脂として、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いてもよい。なかでも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好適である。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0185】
下引層形成用塗布液中の、表面にアクセプター化合物を付与させた無機粒子(アクセプター性を付与した金属酸化物)とバインダー樹脂、または、無機粒子とバインダー樹脂との比率は電子写真感光体特性が得られる範囲で設定される。
【0186】
また、下引層1中には種々の添加物を用いてもよい。
添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層形成用塗布液に添加してもよい。
【0187】
添加剤としてのシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0188】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0189】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0190】
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物または重縮合物として用いてもよい。
【0191】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。
溶媒として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0192】
また、これらの溶剤は単独または2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0193】
下引層形成用塗布液を調製する際の無機粒子の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。
更に、下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0194】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
【0195】
また、下引層1は、ビッカース硬度が35以上とされていることが望ましい。
更に、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されてもよいが、厚さ15μm以上が望ましく、更に望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
【0196】
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)は、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整することが好ましい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。LED,有機ELイメージアレーなどの非干渉性光源を用いる場合には平滑な表面を用いてもよい。
【0197】
下引層1は、導電性基体4上に塗布した前述の下引層形成用塗布液を乾燥させることで得られるが、通常乾燥は、溶剤を蒸発させ製膜し得る温度で行われる。
【0198】
−電荷発生層−
電荷発生層2は、電荷発生材料および結着樹脂を含有する層である。また、結着樹脂を含有しない蒸着膜として形成させてもよい。特に、LED,有機ELイメージアレーなどの非干渉性光源を用いる場合には好ましい。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、金属フタロシアニン顔料、および無金属フタロシアニン顔料を用いることが望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−11172号公報、特開平5−11173号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43813号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン、特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等を用いることがより望ましい。
【0199】
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。
これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。
ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
【0200】
電荷発生層2は、上述の電荷発生材料および結着樹脂を定められた溶剤中に分散した電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。また、結着樹脂を含有しない蒸着膜として形成させてもよい。
【0201】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いる。
【0202】
また、電荷発生材料および結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法が用いられる。
更にこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下にすることが望ましく、更には0.3μm以下がより望ましく、0.15μm以下が特に望ましい。
【0203】
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0204】
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、更に望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0205】
−電荷輸送層−
図1に示す電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、または高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0206】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物や、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独でまたは2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0208】
【化21】
【0209】
(上記構造式(a−1)中、R9は、水素原子、メチル基、−C(R10)=C(R11)(R12)、または−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示す。lは1または2を示す。Ar6およびAr7は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R10)=C(R11)(R12)、または−C6H4−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示し、R10、R11、R12、R13およびR14は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。)
【0210】
ここで、上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、または炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
【0211】
【化22】
【0212】
(上記構造式(a−2)中、R15およびR15’は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、または炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R16、R16’、R17、およびR17’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R18)=C(R19)(R20)、または−CH=CH−CH=C(R21)(R22)を示し、R18、R19、R20、R21およびR22は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。mおよびnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
【0213】
ここで、前記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C6H4−CH=CH−CH=C(R13)(R14)」を有するトリアリールアミン誘導体、および「−CH=CH−CH=C(R21)(R22)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0214】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。特開平8−176293号公報および特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材料等を用いてもよい。これらのうち、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂が好適である。
これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上で用いる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
【0215】
特に、電荷輸送層3上には、反応性の電荷輸送材料とポリカーボネート樹脂とを含有する組成物の硬化膜からなる保護層(最表面層)を備える場合、電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、粘度平均分子量50000以上のものが望ましく、55000以上のものがより望ましい。
なお、電荷輸送層3に用いる結着樹脂の粘度平均分子量の上限値としては100000以下が望ましい。
ここで、本実施形態における結着樹脂の粘度平均分子量は、毛細管粘度計によって測定した値である。
なお、最表面層が電荷輸送層である場合には、その下層中に含まれる結着樹脂の粘度平均分子量が上記の範囲であることが望ましい。
【0216】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜し得るが、前述の結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0217】
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独または2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の溶解方法としては、公知の方法が使用される。
【0218】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0219】
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
電荷輸送層として本実施形態の表面層材料を使用してもよい。
【0220】
<プロセスカートリッジおよび画像形成装置>
次に、本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、潜像保持体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在であり、前記潜像保持体としての前述の本実施形態に係る電子写真感光体を少なくとも備えた構成である。
【0221】
また、本実施形態の画像形成装置は、前述の本実施形態に係る電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して該表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像を現像剤で現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備えた構成である。なお、本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本実施形態の電子写真感光体であることが望ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
【0222】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図4に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0223】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11およびクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0224】
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは使用しても、使用しなくてもよい。
【0225】
帯電装置8としては、例えば、導電性または半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0226】
なお、図示しないが、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0227】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0228】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤または二成分系現像剤等を接触または非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
【0229】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、平均形状係数((ML2/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0230】
トナーは、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤および離型剤、やその他更に帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0231】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0232】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有することが望ましく、更にシリカや帯電制御剤を含有してもよい。
【0233】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0234】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0235】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0236】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0237】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナーおよび磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0238】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子および上記外添剤をヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0239】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、およびそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0240】
現像装置11に用いるトナーには、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0241】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0242】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0243】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0244】
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0245】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更にそれより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、シリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
【0246】
また、小径無機粒子については表面処理してもよい。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも望ましい。
【0247】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、必要に応じて設定される。
【0248】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0249】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。
【0250】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0251】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図5に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0252】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有してもよい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。
【0253】
また、本実施形態の画像形成装置においては、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下とすることがより望ましい。また、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
【0254】
更に、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0255】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリアおよびトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。
【0256】
〔有機ELデバイス〕
ついで、有機ELデバイスについて説明する。
本実施形にかかる有機ELデバイスは、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成された膜を有する。
【0257】
即ち、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える。
【0258】
【化23】
【0259】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0260】
尚、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有することがより好ましい。
【0261】
有機ELデバイスや、太陽電池として用いる場合には、単層、あるいは積層のいずれの形態でも良く、いずれの層に用いてもよい。
【0262】
有機ELデバイスの例として、有機電界発光素子について図を用いて詳述する。
図7乃至図9は、本実施形態の有機電界発光素子の実施の形態を示す模式的な断面図であり、21は基板、22は陽極、23は正孔注入層、24は正孔輸送層、25は発光層、26は電子輸送層、27は陰極を各々表わすが、素子構成はこれに限るものではない。
【0263】
基板21は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。
合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。このため、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設ける方法も好ましい方法の一つである。
【0264】
基板21上には陽極22が設けられる。陽極22は正孔注入層23への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極22は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック等により構成される。陽極22の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属粒子、ヨウ化銅などの粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物粒子等を適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板21上に塗布することにより陽極22を形成してもよい。陽極22は異なる物質で積層して形成してもよい。
陽極22の厚みは、必要とする透明性により異なるが、一般には透明性が高いほど好ましいため、可視光の透過率を通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合厚みは、通常10nm以上1000nm以下、好ましくは20nm以上500nm以下である。
【0265】
端面からのレーザー発振等の目的および両電極間で反射させるなどの目的で、金属蒸着膜等を設ける場合など不透明でよい場合は陽極22には、基板21に用いたものを用いてもよい。また、上記の陽極22の上に異なる導電材料を積層してもよい。
【0266】
本実施形態の代表例として挙げた図7乃至図9の素子構造においては、陽極22の上に正孔注入層23が設けられる。
【0267】
本実施形態において、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成される層は、蒸着、あるいは塗布法により形成され、硬化させる場合には塗布法が好ましい。例えば、正孔注入層として形成する場合を例に説明する。
一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂の定められた量に、必要であれば正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤、連鎖重合性モノマー、オリゴマーなどを加えてもよい。末端にアルコキシシリル基を有する電荷輸送材を用いることも好ましく、種々の目的で他のシランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤などを添加してもよい。これらを溶解した塗布溶液を所望の濃度に調製し、スピン塗布法やディップ塗布法などの方法により陽極22上に塗布し、乾燥して正孔注入層23を形成する。
このようにして形成される正孔注入層23の膜厚は、通常5nm以上3000nm以下、好ましくは10nm以上2000nm以下である。
【0268】
正孔注入層23の上には発光層25が設けられる。発光層25は、電界を与えられた電極間において陰極27から注入された電子と正孔注入層23から輸送された正孔を効率よく再結合し、かつ、再結合により効率よく発光する材料から形成される。この条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体等が挙げられる。
【0269】
これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法や塗布法により正孔注入層23上に積層形成される。塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態においては、下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
【0270】
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープすること(J.Appl.Phys.,65巻,3610頁,1989年)等が行われている。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体(特開平4−335087号公報)、キナクリドン誘導体(特開平5−70773号公報)、ペリレン等の縮合多環芳香族環(特開平5−198377号公報)を、ホスト材料に対して0.1質量%以上10質量%以下ドープする。発光層のホスト材料に上記ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の蛍光色素をドープする方法としては、共蒸着による方法と蒸着源を予め定められた濃度で混合しておく方法がある。
高分子系の発光層材料としては、先に挙げたポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の高分子材料や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられる。
【0271】
これらの材料は正孔注入層のごとくスピンコートやディップコート等の方法により正孔注入層23上に塗布して薄膜形成され、塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態において下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
このようにして形成される発光層25の膜厚は、通常10nm以上200nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下である。
【0272】
図8に示すごとく、正孔輸送層24を正孔注入層23と発光層25との間に設けたり、さらには、図9に示すごとく電子輸送層26を発光層25と陰極27との間に設けるなど機能分離型にすることが行われる。図8および図9の機能分離型素子において、正孔輸送層24の材料としては、正孔注入層23からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送し得る材料であることが望まれる。この正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774号)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625号)、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報)、チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455号公報)、ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報)、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報)、シラザン化合物(米国特許第4,950,950号公報)、シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報)、ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、2種以上を混合して用いてもよい。上記の化合物以外に、正孔輸送層24の材料としては、ポリビニルカルバゾールやポリシラン、ポリフォスファゼン(特開平5−310949号公報)、ポリアミド(特開平5−310949号公報)、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、トリフェニルアミン骨格を有する高分子(特開平4−133065号公報)、芳香族アミンを含有するポリメタクリレート等の高分子材料が挙げられる。
【0273】
正孔輸送層24は上記の正孔輸送材料を塗布法あるいは真空蒸着法により前記正孔注入層23上に積層することにより形成される。塗布法の場合は、正孔輸送材料の1種または2種以上に、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピン塗布法などの方法により正孔注入層23上に塗布し、乾燥して正孔輸送層24を形成する。塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態において下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
【0274】
ここで、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂の添加量は、通常50質量%以下が好ましい。
【0275】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極22および正孔注入層23が形成された基板21上に正孔輸送層24を形成する。
このようにして形成される正孔輸送層24の膜厚は、通常10nm以上300nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下である。
一般には、上記の真空蒸着法がよく用いられる。
【0276】
また、この電子輸送層26に用いられる化合物には、陰極27からの電子注入が容易で、電子の輸送能力がさらに大きいことが要求される。この電子輸送材料としては、既に発光層材料において挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl.Phys.Lett.,55巻,1489頁,1989年)やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂に分散した系、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
電子輸送層26の膜厚は、通常5nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上100nm以下である。
【0277】
陰極27は、発光層25に電子を注入する役割を果たす。陰極27として用いられる材料は、前記陽極22に使用される材料が用いられるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極27の膜厚は通常、陽極22の説明において記載した範囲が挙げられる。
【0278】
低仕事関数金属から成る陰極27を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することも有効である。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。さらに、陰極27と発光層25または電子輸送層26の界面にLiF、MgF2、Li2O等の極薄絶縁膜(0.1nm以上5nm以下)を挿入することも有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年)。
【0279】
図7乃至図9は、本実施形態で採用される素子構造の一例であって、本実施形態は何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、図7とは逆の構造、即ち、基板21上に陰極27、発光層25、正孔注入層23、陽極22の順に積層してもよく、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本実施形態の有機電界発光素子を設けてもよい。また、図8および図9に示したものについても、前記各構成層を逆の構造に積層してもよい。さらに樹脂あるいは金属等の材料で封じ、大気や水より保護する封止層を形成することや、素子自体を真空系中で動作させる構造とすることも効果的である。
【実施例】
【0280】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0281】
[実施例1:化合物(II−7)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(D)20g、イタコン酸5.94g、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸水和物0.5g、トルエン200mlを入れ、窒素置換したのち、発生する水をディーンスタークトラップで除去しながら10時間加熱還流した。反応後、炭酸カリウム水溶液で洗浄し、次いで、蒸留水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、15.4gの化合物(II−7)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で15000であった。
得られた化合物(II−7)のIRスペクトルを図10に示す。
【0282】
【化24】
【0283】
[実施例2:化合物(II−29)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(E)20g、イタコン酸3.78g、パラトルエンスルホン酸0.5g、ニトロベンゼン0.1g、トルエン200mlを入れ、窒素置換したのち、発生する水をディーンスタークトラップで除去しながら10時間加熱還流した。反応後、炭酸カリウム水溶液で洗浄し、次いで、蒸留水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、16.9gの化合物(II−29)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で22000であった。
得られた化合物(II−29)のIRスペクトルを図11に示す。
【0284】
【化25】
【0285】
[実施例3:化合物(II−20)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(F)20g、イタコン酸3.90g、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸水和物0.1g、炭酸カリウム4.14g、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを入れ、窒素置換したのち、80℃で10時間加熱した。反応後、トルエン200mlを加え、希塩酸、次いで、水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、15.9gの化合物(II−20)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で25000であった。
得られた化合物(II−20)のIRスペクトルを図12に示す。
【0286】
【化26】
【0287】
[実施例4]
<感光体の作製>
(下引層の作製)
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン1.0部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛を濾別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部とをメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)45部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0288】
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を、前記下引層上に浸漬塗布し、常温(20℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0289】
(電荷輸送層の作製)
化合物(II−7)10部、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部をクロルベンゼン40部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を突き上げコートにて前記電荷発生層上に塗布し、室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例4の電子写真感光体を作製した。
【0290】
<画質の評価>
上述のようにして作製した電子写真感光体を富士ゼロックス社製、ApeosPort−IV C4470に装着し、低温低湿(8℃、20%RH)および高温高湿(30℃、85%RH)において、以下の評価を連続して行なった。
【0291】
まず低温低湿(8℃、20%RH)環境下で10000枚の画像形成テストを行い、10000枚目の画質評価(下記ゴースト、カブリ、スジ、画像流れ)を実施した。次いで、低温低湿(8℃、20%RH)環境下で24時間放置した後の最初の1枚目の画質について画質評価を行った。
【0292】
この低温低湿環境下での画質評価に続いて、高温高湿(30℃、85%RH)の環境下にて10000枚の画像形成テストを行い、10000枚目の画質評価を実施した。次いで、高温高湿(30℃、85%RH)環境下で24時間放置した後の最初の1枚目の画質について画質評価を行った。
その結果を表2および表3に示した。
【0293】
(ゴースト評価)
ゴーストは、図6(A)に示したGと画像濃度50%の灰色領域を有するパターンのチャートをプリントし、50%の灰色部分にGの文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図6(A)のように良好または軽微である。
B:図6(B)のようにやや目立つ。
C:図6(C)のようにはっきり確認される。
【0294】
(カブリ評価)
カブリ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて白地部のトナーの付着した度合いを目視にて観察し判断した。
A:良好。
B:うっすらとカブリあり。
C:画質上問題となるカブリあり。
【0295】
(スジ評価)
スジ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:部分的にスジの発生あり。
C:画質上問題となるスジ発生。
【0296】
(画像流れ評価)
画像流れは上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1日(24時間)放置後に発生。
C:連続的にプリントテストしている時にも発生。
【0297】
<残留電位の上昇分の評価>
以下の方法により、残留電位を測定し、プリントテスト前後での残留電位の上昇分評価を行った。富士ゼロックス社製、ApeosPort−IV C4470改造機に電位センサーを取り付け、低温低湿(8℃、20%RH)下でプリントテスト前の残留電位測定を行った。ついで、低温低湿(8℃、20%RH)下で1万枚のプリントテストを行った直後に、同様にして低温低湿(8℃、20%RH)下で電子写真感光体表面の残留電位測定を行った。初期および1万枚プリントテスト後の残留電位との差(1万枚プリントテスト後の残留電位−初期の残留電位)を上昇分とした。
【0298】
<電荷輸送層の磨耗量の評価>
初期の感光体膜厚と、前述した低温低湿(8℃、20%RH)環境下および高温高湿(30℃、85%RH)環境下での画像形成テストを終了した後の膜厚を渦電流測定装置(フィッシャースコープMMS)にて測定し、磨耗量を評価した。
【0299】
[実施例5〜10]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、電荷輸送層の材料を表1のように変え、実施例4と同様に電荷輸送層を作製し、評価した。使用した材料を表1にまとめて示した。
【0300】
[実施例11]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学社製)2部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.2部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で酸素濃度200ppmの窒素下で光照射を行ない、塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え膜厚17μmの表面層を形成して実施例11の感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0301】
[実施例12]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、下記構造式で示される化合物(G)2部、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例12の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0302】
【化27】
【0303】
[実施例13]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、ポリテトラフルオロエチレン粒子(ルブロンL−2、ダイキン工業社製)0.8部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、ナノマイザー(NM2−L200AR−D08、ナノマイザー社製)にて分散したのち、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部を加えて溶解させ、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例13の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0304】
[実施例14]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。この電荷発生層上に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)40質量部、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン10質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(PC(Z):粘度平均分子量:6万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解した塗布液を塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0305】
(表面層の作製)
前記化合物(II−20)を10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学社製)3部をモノクロロベンゼン20部、トルエン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度20ppmの窒素下で感光体を300rpmの速度で回転させながら照射距離が30mm、電子線加速電圧が90kV、電子線ビーム電流が2mA、電子線照射時間が1.0秒の条件で感光体に電子線を照射した。照射後すぐに、酸素濃度20ppmの窒素下で150℃に加熱し、10分保持して硬化反応を完結させ、膜厚4μmの表面層を形成して実施例14の感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0306】
[実施例15〜18]
実施例14における化合物(II−20)を表1に示すものに変えた以外は実施例14に記載の方法により感光体を作製し、評価を行った。
【0307】
[実施例19]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。
次いで、化合物(II−7)10部をクロルベンゼン40部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を突き上げコートにて前記電荷発生層上に塗布し、室温(20℃)で30分風乾した後、室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成して実施例19の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0308】
[比較例1]
実施例14の電荷輸送層を25μmとし、表面層を形成しないものを比較例1の感光体とし、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0309】
[比較例2]
実施例4おける化合物(II−7)を、下記構造式の化合物(H)に変えた以外は実施例4に記載の方法により感光体を作製し、評価を行った。
【0310】
【化28】
【0311】
[比較例3]
下記構造式の化合物(I)100質量部、グリシジルメタクリレート100質量部、アゾビスイソブチロニトリル2質量部、トルエン460質量部を3つ口フラスコに仕込み、室温で30分間窒素置換した。75℃に加熱して7時間反応させた後、トルエン200質量部で希釈して反応を終了させた。この反応液にアクリル酸28質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4質量部、トリフェニルホスフィン1質量部を加え90℃で7時間反応させた後、トルエン2000質量部で希釈しメタノール15000質量部に注入して析出させた。このポリマーをろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して特開2005−2291号公報実施例1記載の反応性電荷輸送性ポリマーを205質量部得た(P−1)。GPCでのポリスチレン換算分子量Mwは18000であった。実施例14の化合物(II−20)の代わりにこの反応性電荷輸送性ポリマーを用いた以外は実施例14と同様にして比較例3の感光体を作製した。
【0312】
【化29】
【0313】
【表1】
【0314】
【表2】
【0315】
【表3】
【0316】
上記表2および表3に示すように、実施例の電子写真感光体は、長期間に渡って繰り返し使用後における画質の低下が抑えられている。
【0317】
[実施例20]
<有機EL素子の作製>
厚さ150nmのITO膜を設けたガラス基板を、プラズマ洗浄機(サムコインターナショナル社製、BP1)を用い、酸素プラズマにて30秒間洗浄した。
前記化合物(II−7)を10部、OTazo−15(大塚化学、分子量354.4)0.2部をジクロロメタン50部に溶解した溶液を、回転数300rpmでスピンコートしたのち、酸素濃度150ppmの窒素下で160℃で1時間加熱し、硬化することにより、膜厚400nm(触針膜厚計にて測定)の正孔注入層を形成した。
得られた硬化膜(正孔注入層)はトルエンに室温および50℃にて10分浸漬しても溶解せず、溶剤、および、熱に対して安定なものであった。
【0318】
次に、この正孔注入層上に、発光層の材料としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を50nmの厚さに真空蒸着したのち、マグネシウム・銀合金陰極を200nmの厚さに蒸着し、有機EL素子を作製した。
【0319】
<評価>
この有機EL素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム・銀合金電極を陰極として、直流7Vを印加して、電流密度を以下の方法により求めるとともに、輝度を以下の方法により測定した。さらに、1000時間動作後の輝度を以下の方法により測定し、その結果を表4に示す。
【0320】
尚、電流密度、電圧、輝度は、測定装置として有機EL発光効率測定装置(東京インスツルメンツ社製)を用い、且つ測定条件を25℃に調整して測定した。
【0321】
また、有機EL素子は、ディスプレイやレーザーに利用する場合には、高電流注入が必要となる。したがって、印加電圧7Vでの電流密度と輝度を測定した。その結果を表4に示す。また、印加電圧7Vで1000時間駆動後の輝度を測定し、表4に示す。
【0322】
[実施例21−29]
実施例20における化合物(II−7)を表4に示す化合物に変えた以外は実施例20に記載の方法により有機EL素子を作製し、評価した。その結果を表4に示す。
また、これらの実施例における硬化膜(正孔注入層)は、トルエンに室温および50℃にて10分浸漬しても溶解せず、溶剤、および、熱に対して安定なものであった。
【0323】
[比較例4]
実施例20における化合物(II−7)を用いて形成した正孔注入層に代えて、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を膜厚400nmで真空蒸着した正孔注入層を適用した以外は実施例20に記載の方法により有機EL素子を作製し、評価した。結果を表4に示す
【0324】
【表4】
【0325】
上記表4に示すように、実施例の有機EL素子は、長期に渡って安定した発光特性が得られる。
【符号の説明】
【0326】
1…下引層、2…電荷発生層、3…電荷輸送層、4…導電性基体、5…保護層、6…単層型感光層、7A,7B,7C,7…電子写真感光体、8…帯電装置、9…露光装置、11…現像装置、13…クリーニング装置、14…潤滑材、21…基板、22…陽極、23…正孔注入層、24…正孔輸送層、25…発光層、26…電子輸送層、27…陰極、40…転写装置、50…中間転写体、100…画像形成装置、120…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性ポリエステル樹脂、電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液、光電変換デバイス、および電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスター、有機太陽電池など、有機化合物を用いた電子デバイスが盛んに開発されている。
特に、耐熱性、強度の点においては、架橋構造とすることが有効であり、例えば、熱、あるいは光硬化した膜を用いた有機ELデバイス(例えば特許文献1参照)、電荷輸送性基を含有するアクリルポリマーを用いた電子写真感光体(例えば特許文献2乃至4参照)、電荷輸送性基と反応性基を含有するアクリルポリマーを、膜形成後に架橋した電子写真感光体(例えば特許文献5参照)、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献6参照)等が開示されている。また、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材およびバインダー樹脂の混合物を熱、あるいは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が開示され、特に、単官能メタクリル変性した電荷移動材と、電荷輸送性を有さないメタクリルモノマーと、ポリカーボネート樹脂とに有機過酸化物を用いて硬化したものが開示されている(例えば特許文献7参照)。
【0003】
また、電荷輸送性ポリエステル樹脂の末端に官能基を導入し、硬化した膜からなる有機半導体膜および電子写真感光体(例えば特許文献8参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/733193号
【特許文献2】特開平5−202135号公報
【特許文献3】特開平6−256428号公報
【特許文献4】特開平9−12630号公報
【特許文献5】特開2005−2291号公報
【特許文献6】特開平5−40360号公報
【特許文献7】特開平5−216249号公報
【特許文献8】特開2001−117252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0007】
【化1】
【0008】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記一般式(1)における前記Aが正孔輸送性を有する2価の有機基である請求項1に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(1)における前記Aが、下記一般式(2)で示される基である請求項1または請求項2に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0011】
【化2】
【0012】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基を表す請求項3に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基である請求項3または請求項4に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0015】
【化3】
【0016】
請求項6に係る発明は、
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(B)から選択される2価の有機基である請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂である。
【0017】
【化4】
【0018】
請求項7に係る発明は、
請求項1に規定される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解した電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液である。
【0019】
請求項8に係る発明は、
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える光電変換デバイスである。
【0020】
【化5】
【0021】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0022】
請求項9に係る発明は、
前記膜が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項8に記載の光電変換デバイスである。
【0023】
請求項10に係る発明は、
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備える電子写真感光体である。
【0024】
【化6】
【0025】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0026】
請求項11に係る発明は、
前記感光層が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項10に記載の電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂以外のものに比べ、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、一般式(1)におけるAが正孔輸送性を有する2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、一般式(2)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂以外のものに比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0031】
請求項5に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが群(A)から選択される2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、一般式(2)におけるXが群(B)から選択される2価の有機基でない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた正孔輸送性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂が提供される。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解されていない場合に比べ、それを用いて形成した膜において優れた電気特性および外的刺激に対する耐性を有する電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液が提供される。
【0034】
請求項8に係る発明によれば、一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体または一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備えない場合に比べ、電気特性に優れ且つ耐溶剤性に優れた光電変換デバイスが提供される。
【0035】
請求項9に係る発明によれば、一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備えない場合に比べ、耐溶剤性に優れた光電変換デバイスが提供される。
【0036】
請求項10に係る発明によれば、一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体または一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備えない場合に比べ、電気特性に優れ且つ機械耐性に優れた電子写真感光体が提供される。
【0037】
請求項11に係る発明によれば、一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備えない場合に比べ、機械耐性に優れた電子写真感光体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図4】本実施形態に係るプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の概略断面図。
【図5】本実施形態に係るタンデム型画像形成装置の概略断面図。
【図6】(A)(B)(C)はそれぞれゴースト評価の基準を示す説明図。
【図7】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略部分断面図。
【図8】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図9】本実施形態の有機電界発光素子の層構成の他の一例を示す概略部分断面図。
【図10】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【図11】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【図12】実施例にて合成した電荷輸送性ポリエステル樹脂のIRスペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0040】
<電荷輸送性ポリエステル樹脂>
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、下記一般式(1)で表される。
【0041】
【化7】
【0042】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【0043】
一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂は、極性基として−OHや−NH−などのキャリア輸送を妨げる極性基が比較的少ないため、これを用いて形成された膜においても電荷を捕獲するトラップの形成が抑制され、残留電位の蓄積が抑制されるものと推察される。
そのため、優れた電気特性を得たまま、更に形成する膜の厚さをより厚くし得る。
【0044】
また、形成される膜の強度を高める目的で、電荷輸送材料に対し更に多官能のアクリルモノマーを混合して成膜する場合や、重合性官能基を有するまたは有さない電荷輸送材料を混合して成膜する場合、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂は前記多官能のアクリルモノマーと類似したエステル構造を有しているため、或いは前記重合性官能基を有するまたは有さない電荷輸送材料と類似した電荷輸送性構造を有しているため、これらと相分離を生じることなく架橋され、電気特性と強度とを兼ね備えた膜が得られるものと推察される。
【0045】
更に、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて膜を形成することで、結晶化が抑制され、厚みのムラが抑制された薄膜が容易に得られ、その結果電気特性に優れるものと推察される。
尚、架橋構造とすることで一層耐熱性、耐溶剤性の高い膜が得られ、長期に渡って安定した性能が得られる。
【0046】
−一般式(1)における各基の説明−
前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂におけるAは、電荷輸送性を有する2価の有機基を示し、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物などから誘導される2価の有機基が挙げられる。この中でもトリアリールアミン骨格、ベンジジン骨格、スチルベン骨格を持つものが望ましい。
【0047】
特に一般式(1)におけるAは、下記一般式(2)で示される構造が好ましい。
【0048】
【化8】
【0049】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【0050】
前記一般式(2)におけるXは置換または未置換の2価の有機基を表し、芳香環を有する基であっても有しない基であってもよい。尚、芳香環を有する基であることがより好ましく、この中でも、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基であることがより好ましい。
【0051】
「多核芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、環同士が炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基を表す。具体的には、芳香環を構成する炭素同士が直接炭素−炭素結合によって結合している炭化水素基や、芳香環同士が炭素数1以上18以下の炭素鎖(アルキル鎖又はアルキレン鎖)によって連結されている炭化水素基等が挙げられる。
多核芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、ビフェニル、ターフェニル、スチルベン、トリフェニルエチレン等の水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
なお、上記多核芳香族炭化水素基を構成する芳香環は、後述する縮合芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環であってもよい。多核芳香族炭化水素基を構成する縮合芳香族炭化水素基及び芳香族複素環の具体例としては、例えば後述する具体例の化合物と同様のものが挙げられる。
【0052】
「縮合芳香族炭化水素基」とは、炭素と水素から構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が隣接して結合する1対の炭素原子を共有している炭化水素基を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、フルオレン等の水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられる。
【0053】
「芳香族複素環」は、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。
芳香族複素環の環骨格を構成する原子数(Nr)としては、例えば、Nr=5、又はNr=6等が挙げられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は限定されない。異種原子の種類としては、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が挙げられる。また芳香族複素間は、環骨格中に2個以上の異種原子が含まれていてもよく、2種以上の異種原子が含まれていてもよい
【0054】
特に、Nr=5の環骨格構造(すなわち5員環構造)を有する複素環としては、例えば、チオフェン、チオフィン、ピロール、フラン、又はこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環等が挙げられる。またNr=6の環骨格構造(すなわち6員環構造)を有する複素環としては、例えば、ピリジン環等が挙げられる。
【0055】
芳香環、多核芳香環及び縮合芳香環の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが望ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のものが望ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる
【0056】
一般式(2)におけるXとしては、好ましい例として下記式(1)乃至(7)から選択された基が挙げられる。
【0057】
【化9】
【0058】
式(1)乃至(7)中、R7は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、又は置換もしくは未置換のアラルキル基を表し、R8乃至R14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、又はハロゲン原子を表し、aは0又は1を意味し、Vは下記の式(8)乃至(17)から選択された少なくとも1つの基を表す。
【0059】
【化10】
【0060】
上記式(8)乃至式(17)中、bは1以上10以下の整数を意味し、cは1以上3以下の整数を意味する。
【0061】
尚、一般式(2)におけるXとしては、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基が好ましく、更には以下に示す群(B)から選択される2価の有機基が特に好ましい。
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
一般式(2)におけるR1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を表す。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが望ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
置換アリール基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる
【0065】
上記R1およびR2の中でも、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基が特に好ましい。
尚、R1およびR2が置換する位置としては、窒素(N)が結合する位置に対し、メタ位またはパラ位が好ましい。
【0066】
一般式(1)におけるTは、炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を表す。尚、2価の炭化水素基が直鎖状である場合は、炭素数は1以上6以下の範囲が望ましく、2以上6以下の範囲がより望ましく、2価の炭化水素基が分枝鎖状である場合には、炭素数は2以上10以下の範囲が望ましく、3以上7以下の範囲がより望ましい。
以下に、Tで表される基の具体的な構造の例(炭化水素基T−1〜炭化水素基T−32)を示す。但し、アリールアミン骨格(即ち一般式(1)におけるA)は下記炭化水素基のどちらの側と結合してもよい
【0067】
【化13】
【0068】
一般式(1)におけるnは、5以上5000以下の整数を表し、更に好ましくは7以上4500以下であり、特に好ましくは10以上4000以下である。
【0069】
以下、上記一般式(1)におけるAが上記一般式(2)である電荷輸送性ポリエステル樹脂の具体例を示すが、これら具体例に限定されるわけではない。
【0070】
なお、下記表において「R1」および「R2」の欄に記載された数字は、結合の位置を表す。また、「T」の欄に記載される値は、上記に具体的に示した炭化水素基の構造式に付した番号(T−1)〜(T−32)を意味する。尚、「T」の欄において、たとえば「T−5r」と記す場合には構造T−5の右側に、「T−5l」と記す場合には構造T−5の左側にアリールアミン骨格(即ち、一般式(1)におけるA)が結合していることを示すものとする。また、下記表において、「結合位置」に示される値は、前記一般式(2)におけるベンゼン環に記載されている数値の箇所に結合していることを示し、更にkが1の場合、( )内のベンゼン環も数字が記載されているベンゼン環と同様の箇所に結合していることを示す。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
【化17】
【0075】
【化18】
【0076】
【化19】
【0077】
ついで合成方法について説明する。
モノマーとして以下の組み合わせで、本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂が合成される。
(1)HO−T−A−T−OHとイタコン酸の場合
ジオール成分モノマーとイタコン酸を当量混合し、酸触媒を用いて重合する。酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など、通常のエステル化反応に用いるものが使用され、ジカルボン酸成分モノマー1質量部に対して、好ましくは1/10000質量部以上1/10質量部以下、より好ましくは1/1000質量部以上1/50質量部以下の範囲で用いられる。重合中に生成する水を除去するために、水と共沸し得る溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレンなどが有効であり、生成するポリマーの1質量部に対して好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定し得るが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。
【0078】
反応終了後、溶剤を用いなかった場合は溶解し得る溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトンなどのポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステル樹脂を析出させ、電荷輸送性ポリエステル樹脂を分離したのち、水や有機溶剤で洗浄し、乾燥させる。
【0079】
さらに、適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエステル樹脂を析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラーなどで、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に電荷輸送性ポリエステル樹脂を溶解させる溶剤は、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。また、貧溶剤は生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上1000質量部以下、より好ましくは10質量部以上500質量部以下の範囲で用いられる。また、反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶剤で抽出、水洗し、さらに必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0080】
(2)HO−T−A−T−OHとイタコン酸ジエステルの場合
HO−T−A−T−OHに対しイタコン酸ジエステルを当量以上3等量以下加え、たとえば、実験化学講座、第4版、28巻、P.217などに記載されたごとく、チタン、スズ、亜鉛などの有機金属化合物、または、硫酸、リン酸などの無機酸を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成し得る。触媒は、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1/10000質量部以上1質量部以下、より好ましくは1/1000質量部以上1/2質量部以下で用いられる。反応は、好ましくは反応温度100℃以上300℃以下で行い、重合を促進するため、好ましくは0.01mmHg以上100mmHg以下、より好ましくは0.05mmHg以上20mmHg以下に減圧して反応させることが好ましい。また、1−クロロナフタレンなどの高沸点溶剤を用いて、過剰のイタコン酸ジエステルを除きながら反応させてもよい。
【0081】
(3)B−T−A−T−Bとイタコン酸の場合(Bは塩素、臭素、ヨウ素を示す)
B−T−A−T−Bとイタコン酸を当量混合し、ピリジン、ピペリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、やトリエチルアミンなどの有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基を用いて重合する。塩基は、イタコン酸に対して、好ましくは1当量以上10当量以下、より好ましくは2当量以上5当量以下で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、などが有効であり、生成するポリマーの1質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定し得る。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。
【0082】
電荷輸送性ポリエステル樹脂は、1種の−T−A−T−成分とイタコン酸成分のみであっても構わないが、−T−A−T−と異なる構造の電荷輸送成分や、電荷輸送成分を有しないモノマーを混合してもよい。電荷輸送成分を有しないモノマーとしては、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸や、その酸塩化物、あるいは、ジメチルエステルが使用され、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールなどが使用される。
【0083】
これら合成方法のうち、(1)または(3)の方法が高分子量のポリマーを得やすく、好ましく使用される。また、ポリマー中で電荷輸送性を有するユニット数[J]と電荷輸送性を有さないユニット数[K]との割合は、0.5≦[J]/[J]+[K]≦1が好ましく、より好ましくは0.7≦[J]/[J]+[K]≦1、さらに好ましくは0.8≦[J]/[J]+[K]≦1に設定される。
【0084】
電荷輸送性ポリエステル樹脂の重合度pは、5以上5000以下の範囲で用いられ、好ましくは7以上3000以下、より好ましくは10以上1000以下に設定される。さらに、一般式(2)中のkは、0あるいは1から選ばれる整数を示すが、kが1のものが好ましい。
【0085】
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、電子写真感光体あるいは有機電界発光素子などへ応用され、単独で、あるいは、それと相溶し得る絶縁性ポリマーを含有してもよい。
具体的には、支持体上に上記電荷輸送性ポリエステル樹脂を含有する層を設けた構造のものが有機電子デバイスとして使用される。有機電子デバイスの代表的なものとしては、感光層を有する電子写真感光体が挙げられ、特に、本実施形態の電荷輸送性ポリエステル樹脂を該電子写真感光体の表面層に含有するものが挙げられる。また、感光層中に電荷輸送材料として、本実施形態の電荷輸送性ポリエステル樹脂と、公知の電荷発生材料を含有するもの、特に、フタロシアニン化合物結晶を含む電子写真感光体も好ましいものとして挙げられる。
本実施形態における上記電子写真感光体において、上記電荷輸送性ポリエステル樹脂と組み合せて使用されるフタロシアニン結晶としては、特開平5−98181号公報に開示されているハロゲン化ガリウムフタロシアニン結晶、特開平5−140472号公報及び特開平5−140473号公報に開示されているハロゲン化スズフタロシアニン結晶、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されているヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、特開平4−189873号公報及び特開平5−43813号公報に開示されているオキシチタニウムフタロシアニン水和物結晶が用いられる。
【0086】
<電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液>
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液は、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解してなる。
【0087】
この溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒が、単独または混合溶媒として用いられる。
【0088】
尚、これらの溶媒に前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を溶解する溶解方法としては、10℃から150℃、好ましくは15℃から120℃で溶剤と攪拌混合、あるいは、超音波照射しながら攪拌するなど通常の方法で行い得る。
【0089】
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液は、例えば、光電変換デバイス(有機ELデバイス、電子写真感光体等)における膜の形成や、太陽電池、有機トランジスター等の形成に用いられる。
【0090】
<光電変換デバイス>
ついで、光電変換デバイスについて説明する。
本実施形態に係る電荷輸送性ポリエステル樹脂は、該電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて膜を形成し得る。また、この膜は、前記電荷輸送性ポリエステル樹脂が重合されてなる架橋体を含有してもよい。
尚、上記電荷輸送性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂や、二重結合を有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーと混合し、硬化させた硬化膜も好ましく用いられる。
【0091】
・非反応性のバインダー樹脂
上記電荷輸送性ポリエステル樹脂を樹脂に相溶させる場合、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知の非反応性のバインダー樹脂が挙げられる。
【0092】
非反応性のバインダー樹脂の総含有量は、膜を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して、0質量%以上60質量%以下が望ましく、より望ましくは0質量%以上55質量%以下、更に望ましくは0質量%以上50質量%以下である。
【0093】
・反応性化合物
硬化する場合、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂に、さらに反応性化合物を含有させてもよく、特に、同一分子内に2つ以上の二重結合を含むモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーを混合して硬化することが好ましい。
【0094】
反応性化合物として、1官能のモノマーは、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0095】
反応性化合物として、2官能のモノマーは、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
【0096】
反応性化合物として、3官能のモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート、トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0097】
反応性化合物として、4官能のモノマーは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0098】
反応性化合物として、5官能以上のモノマーは、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の他、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、フォスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
また、反応性化合物として、反応性のポリマーは、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11―52603号公報、特開2000−264961号公報、特開2005−2291号公報などに開示されたものが挙げられる。
【0100】
反応性化合物を用いる場合には、単独または2種以上の混合物として使用される。反応性化合物は、膜を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下で用い、更に好ましくは50質量%以下で使用される。
【0101】
・重合、硬化
前記電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用い、該溶解液中の成分を重合することで硬化された膜を得る場合、その重合の際には熱、光、放射線などが用いられる。熱、光で重合、硬化を行う場合、重合開始剤は必ずしも必要ではないが、光硬化触媒または熱重合開始剤を用いてもよい。この光硬化触媒および熱重合開始剤としては、公知の光硬化触媒や熱重合開始剤が用いられる。放射線としては電子線が好ましい。
【0102】
−電子線硬化−
電子線を用いる場合、加速電圧は300KV以下が好ましく、更には150KV以下が好ましい。また、線量は好ましくは1Mrad以上100Mrad以下の範囲、より好ましくは3Mrad以上50Mrad以下の範囲である。加速電圧が300KV以下であることにより感光体特性に対する電子線照射のダメージが抑制される。また、線量が1Mrad以上であることにより架橋が行なわれ、100Mrad以下であることにより感光体の劣化が抑制される。
【0103】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm、好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、あるいは照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0104】
−光硬化−
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられ、バンドパスフィルター等のフィルターを用いて好適な波長を選択してもよい。照射時間、光強度は自由に選択されるが、例えば照度(365nm)は300mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、例えば600mW/cm2のUV光を照射する場合、5秒以上360秒以下照射すればよい。
【0105】
照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、さらに照射中、あるいは照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0106】
光硬化触媒として、分子内開裂型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系などが挙げられる。
より具体的には、ベンジルケタール系として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
【0107】
また、アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
【0108】
アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
【0109】
ホスフィノキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンキサイドなどが挙げられる。
【0110】
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0111】
オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0112】
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系として、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0113】
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0114】
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0115】
これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0116】
−熱硬化−
熱重合開始剤としては、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、VE−73、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBM、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤;パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(化薬アクゾ社製)、ルルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531などが挙げられる。
【0117】
これらのうち、分子量250以上のアゾ系重合開始剤を用いると、低い温度でムラなく反応が進行することから、ムラの抑制された高強度の膜の形成が図られる。より好適には、アゾ系重合開始剤の分子量は、250以上であり、300以上が更に好適である。
【0118】
加熱は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下で行い、好ましくは50℃以上170℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下で、好ましくは10分以上120分以下、より好ましくは15分以上100分以下加熱する。
【0119】
光硬化触媒または熱重合開始剤の総含有量は、層形成のための溶解液中の全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、更には0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲が特に好ましい。
【0120】
〔電子写真感光体〕
本実施形にかかる電子写真感光体は、導電性基体上に、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成された層を有する。
【0121】
即ち、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する層を備える。
【0122】
【化20】
【0123】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0124】
尚、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有することがより好ましい。
【0125】
さらに、架橋性モノマー自身を多官能の電荷輸送性モノマーとしてもよい。
【0126】
本実施形態に係る電子写真感光体では、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する層を最表面層として有するものが好ましく、当該最表面層は電子写真感光体自体の最上面を形成していればよく、保護層として機能する層、または電荷輸送層として機能する層として設けられる。
なお、最表面層が保護層として機能する層である場合、この保護層の下層には、電荷輸送層および電荷発生層からなる感光層、または単層型感光層を有することとなる。
【0127】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、および最表面層としての保護層を有し、該保護層が前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成されたポリマーを含有する組成物、あるいはその硬化物を含有する層である形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、および最表面層としての電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成されたポリマーを含有する組成物、あるいはその硬化物を含有する層である形態が挙げられる。
また、チオール基、不飽和結合などの反応性を有さない電荷輸送材料を混合してもよい。
【0128】
以下、最表面層が保護層として機能する層の場合の、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一または相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0129】
図1は、本実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一例を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0130】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(または積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、および保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2および電荷輸送層3により感光層が構成される。
【0131】
図2に示す電子写真感光体7Bは、図1に示す電子写真感光体7Aのごとく、電荷発生層2と電荷輸送層3とに機能が分離された機能分離型感光体である。
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に、電荷輸送層3、電荷発生層2、および保護層5が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Bにおいては、電荷輸送層3および電荷発生層2により感光層が構成される。
【0132】
図3に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層6)に含有するものである。図3に示す電子写真感光体7Cにおいては、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0133】
そして、図1、図2および図3に示す電子写真感光体7A、7Bおよび7Cにおいて、保護層5が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記の構成となっている。
尚、図1、図2および図3に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0134】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。
【0135】
−保護層−
まず、電子写真感光体7Aにおける最表面層である保護層5について説明する。
保護層5は、電子写真感光体7Aにおける最表面層であり、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成されることが好ましく、一般式(1)に示される構造を部分構造として含むポリマーを含有することが好ましく、さらに硬化されていること、即ち上記電荷輸送性ポリエステル樹脂が重合されてなる重合体を含有することが最も好ましい。
【0136】
硬化方法としては、熱、光、または放射線などによるラジカル重合が行なわれる。反応が早く進行しすぎないよう調整すると膜のムラやシワの発生が抑制されるため、ラジカル発生が比較的ゆっくりと起こる条件下で重合させることが望ましい。この点からは、重合速度を調整しやすい熱重合が好適である。
【0137】
・非反応性の電荷輸送材料
保護層(最表面層)5を構成する膜は、非反応性の電荷輸送材料を併用してもよい。非反応性の電荷輸送材料は電荷輸送を担っていない反応性基を有さないため、非反応性の電荷輸送材料を保護層(最表面層)5に用いた場合には実質的に電荷輸送成分の濃度が高まり、電気特性を更に改善するのに有効である。また、非反応性の電荷輸送材料を添加して架橋密度を減じ、強度を調整してもよい。
【0138】
非反応性の電荷輸送材料としては、公知の電荷輸送材料を用いてもよく、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等が用いられる。
中でも、モビリティー、相溶性など点から、トリフェニルアミン骨格を有するものが望ましい。
【0139】
非反応性の電荷輸送材料は、層形成のための塗布液中の全固形分に対して0質量%以上30質量%以下で用いられることが望ましく、より望ましくは1質量%以上25質量%以下であり、更に望ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0140】
・その他の添加剤
保護層(最表面層)5を構成する硬化膜は、更に成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、特にフッ素含有のカップリング剤と混合して用いてもよい。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。また、ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物を用いてもよい。
【0141】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越化学工業社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0142】
また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えてもよい。
【0143】
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、架橋膜の成膜性の観点から、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。更に、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
ラジカル重合性基を有するシリコン化合物、フッ素含有化合物としては、特開2007−11005号公報に記載の化合物などが挙げられる。
【0144】
保護層(最表面層)5を構成する硬化膜には、劣化防止剤を添加することが好ましい。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0145】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス1076、イルガノックス1010、イルガノックス1098、イルガノックス245、イルガノックス1330、イルガノックス3114、イルガノックス1076(以上、チバ・ジャパン製)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、サノールLS2626、サノールLS765、サノールLS770、サノールLS744(以上、三共ライフテック製)、チヌビン144、チヌビン622LD(以上、チバ・ジャパン製)、マークLA57、マークLA67、マークLA62、マークLA68、マークLA63(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として、スミライザーTPS、スミライザーTP−D(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として、マーク2112、マークPEP−8、マークPEP−24G、マークPEP−36、マーク329K、マークHP−10(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
【0146】
更に、保護層(最表面層)5を構成する硬化膜には導電性粒子や、有機、無機粒子を添加してもよい。
この粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、好ましくは平均粒径1nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれる。該粒子としては一般に市販されているものを使用してもよい。
【0147】
保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、保護層5の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0148】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。
これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。
表面層中のシリコーン粒子の含有量は、保護層5の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0149】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集、89頁”に示される、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂で構成される粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。さらに、粒子を分散させるために公知の種々の分散材を用いてもよい。
【0150】
また、シリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0151】
また、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着での混合でもよい。導電性粒子の平均粒径は0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
【0152】
(組成物)
保護層5を形成するために用いる組成物は、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解してなる溶解液(保護層形成用塗布液)として調製されることが望ましい。
この保護層形成用塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレンなどの芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系等の溶媒などの単独または混合溶媒を用いて調製される。
【0153】
また、前述の成分を反応させて塗布液を得るときには、各成分を単純に混合、溶解させるだけでもよいが、望ましくは室温(20℃)以上100℃以下、より望ましくは30℃以上80℃以下で、望ましくは10分以上100時間以下、より望ましくは1時間以上50時間以下の条件で加温する。また、この際に超音波を照射することも望ましい。
【0154】
(保護層5の作製)
保護層形成用塗布液は、被塗布面(図1に示す態様では電荷輸送層3)の上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット塗布法等の通常の方法により塗布される。
その後、得られた塗膜に対して、光、電子線または熱を付与してラジカル重合を生起させて、該塗膜を重合、硬化させる。
【0155】
熱により塗膜を重合、硬化させる際、加熱条件は50℃以上であることが望ましい。特に、加熱温度としては、100℃以上180℃以下が望ましい。
【0156】
光により塗膜を重合、硬化させる際、水銀灯、メタルハライドなどの公知の方法で照射して硬化膜を得る。
【0157】
上記の重合、硬化反応の際には、光、電子線または熱によって発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、真空または不活性ガス雰囲気下で、酸素濃度が望ましくは10%以下、より望ましくは5%以下、更に望ましくは2%以下、最も望ましくは500ppm以下の低酸素濃度で行われる。
【0158】
本実施態様では、ラジカルの発生が比較的ゆっくりと起こる熱による硬化方法が特に好ましい。
【0159】
保護層5の膜厚は3μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上35μm以下とするのがさらに好ましい。
【0160】
以上、図1に示される電子写真感光体7Aを参照し、機能分離型の感光層における各層の構成を説明したが、図2に示される機能分離型の電子写真感光体7Bにおける各層においてもこの構成が採用しうる。また、図3に示される電子写真感光体7Cの単層型感光層6の場合、以下の態様であることが望ましい。
【0161】
即ち、単層型感光層6中の電荷発生材料の含有量は、保護層(最表面層)5を形成する際に用いられる組成物の全固形分に対して5質量%以上50質量%以下が望ましく、更には10質量%以上40質量%以下がより望ましく、15質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0162】
単層型感光層6の形成方法は、電荷発生層2や電荷輸送層3における形成方法を採用しうる。単層型感光層6の膜厚は5μm以上50μm以下が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0163】
また、上述の実施形態では、最表面層が保護層5である形態を説明したが、保護層5がない層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する電荷輸送層が該最表面層となる。最表面層が電荷輸送層である場合、この層の厚みは、7μm以上70μm以下が望ましく、10μm以上60μm以下がより望ましい。
【0164】
−導電性基体−
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属または合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、および金属ベルトが挙げられる。また、導電性基体4としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属または合金を塗布、蒸着またはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も挙げられる。
ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0165】
電子写真感光体7Aがレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要ない。
【0166】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、または回転する砥石に支持体を接触し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0167】
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性または半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0168】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性である。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。
【0169】
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理またはベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸およびフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。
先ず、酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が好ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0170】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分以上60分以下浸漬すること、または90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分以上60分以下接触させて行うことが好ましい。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0171】
−下引層−
下引層1は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)102Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。
【0172】
なかでも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いるのが望ましく、特に、酸化亜鉛は望ましく用いられる。
【0173】
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、または、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
無機粒子のBET法による比表面積は、10m2/g以上が望ましい。
無機粒子の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60nm以上1000nm以下)の範囲であることが望ましい。
【0174】
更に、無機粒子と共にアクセプター性化合物を含有させることが好ましい。
アクセプター性化合物としては、上記特性が得られるものであれば限定されず、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。更にヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0175】
これらのアクセプター性化合物の含有量は上記特性が得られる範囲であれば限定されないが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲で含有され、更に0.05質量%以上10質量%以下の範囲で添加されることが望ましい。
【0176】
アクセプター化合物は、下引層形成用塗布液に添加するだけでもよいし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。
無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、または、湿式法が挙げられる。
【0177】
乾式法にて表面処理を施す場合には、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって処理される。添加または噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。添加または噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間は任意の範囲で実施される。
【0178】
また、湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌または分散した後、溶剤除去することで処理される。溶剤除去方法はろ過または蒸留により留去される。溶剤除去後には更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分を除去してもよく、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0179】
また、無機粒子にはアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。更にアミノ基を有するシランカップリング剤が望ましく用いられる。
【0180】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、電子写真感光体特性が得られればいかなるものを用いてもよく、具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0181】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0182】
また、これらの表面処理剤を用いた表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法または湿式法が用いられる。また、アクセプター化合物の付与と、カップリング剤等の表面処理剤による表面処理と、をいっぺんに行ってもよい。
【0183】
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は電子写真特性が得られる量であれば限定されず、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0184】
また、下引層1には結着樹脂が含有されてもよい。
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ、所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものを使用してもよく、例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。
また、下引層1に含有される結着樹脂として、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いてもよい。なかでも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好適である。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0185】
下引層形成用塗布液中の、表面にアクセプター化合物を付与させた無機粒子(アクセプター性を付与した金属酸化物)とバインダー樹脂、または、無機粒子とバインダー樹脂との比率は電子写真感光体特性が得られる範囲で設定される。
【0186】
また、下引層1中には種々の添加物を用いてもよい。
添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層形成用塗布液に添加してもよい。
【0187】
添加剤としてのシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0188】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0189】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0190】
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物または重縮合物として用いてもよい。
【0191】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。
溶媒として、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0192】
また、これらの溶剤は単独または2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0193】
下引層形成用塗布液を調製する際の無機粒子の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。
更に、下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0194】
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
【0195】
また、下引層1は、ビッカース硬度が35以上とされていることが望ましい。
更に、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定されてもよいが、厚さ15μm以上が望ましく、更に望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
【0196】
また、下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)は、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整することが好ましい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。LED,有機ELイメージアレーなどの非干渉性光源を用いる場合には平滑な表面を用いてもよい。
【0197】
下引層1は、導電性基体4上に塗布した前述の下引層形成用塗布液を乾燥させることで得られるが、通常乾燥は、溶剤を蒸発させ製膜し得る温度で行われる。
【0198】
−電荷発生層−
電荷発生層2は、電荷発生材料および結着樹脂を含有する層である。また、結着樹脂を含有しない蒸着膜として形成させてもよい。特に、LED,有機ELイメージアレーなどの非干渉性光源を用いる場合には好ましい。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、金属フタロシアニン顔料、および無金属フタロシアニン顔料を用いることが望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−11172号公報、特開平5−11173号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43813号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対応させるためには、電荷発生材料として、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン、特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等を用いることがより望ましい。
【0199】
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。
これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。
ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
【0200】
電荷発生層2は、上述の電荷発生材料および結着樹脂を定められた溶剤中に分散した電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。また、結着樹脂を含有しない蒸着膜として形成させてもよい。
【0201】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いる。
【0202】
また、電荷発生材料および結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法が用いられる。
更にこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下にすることが望ましく、更には0.3μm以下がより望ましく、0.15μm以下が特に望ましい。
【0203】
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0204】
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、更に望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0205】
−電荷輸送層−
図1に示す電荷輸送層3は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、または高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0206】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物や、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独でまたは2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0208】
【化21】
【0209】
(上記構造式(a−1)中、R9は、水素原子、メチル基、−C(R10)=C(R11)(R12)、または−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示す。lは1または2を示す。Ar6およびAr7は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R10)=C(R11)(R12)、または−C6H4−CH=CH−CH=C(R13)(R14)を示し、R10、R11、R12、R13およびR14は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。)
【0210】
ここで、上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、または炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。
【0211】
【化22】
【0212】
(上記構造式(a−2)中、R15およびR15’は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、または炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。R16、R16’、R17、およびR17’は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R18)=C(R19)(R20)、または−CH=CH−CH=C(R21)(R22)を示し、R18、R19、R20、R21およびR22は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。mおよびnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
【0213】
ここで、前記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C6H4−CH=CH−CH=C(R13)(R14)」を有するトリアリールアミン誘導体、および「−CH=CH−CH=C(R21)(R22)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下「ゴースト」と言う場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0214】
電荷輸送層3に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。特開平8−176293号公報および特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材料等を用いてもよい。これらのうち、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂が好適である。
これらの結着樹脂は1種を単独でまたは2種以上で用いる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1から1:5までが望ましい。
【0215】
特に、電荷輸送層3上には、反応性の電荷輸送材料とポリカーボネート樹脂とを含有する組成物の硬化膜からなる保護層(最表面層)を備える場合、電荷輸送層3に用いる結着樹脂としては、粘度平均分子量50000以上のものが望ましく、55000以上のものがより望ましい。
なお、電荷輸送層3に用いる結着樹脂の粘度平均分子量の上限値としては100000以下が望ましい。
ここで、本実施形態における結着樹脂の粘度平均分子量は、毛細管粘度計によって測定した値である。
なお、最表面層が電荷輸送層である場合には、その下層中に含まれる結着樹脂の粘度平均分子量が上記の範囲であることが望ましい。
【0216】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は特に望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜し得るが、前述の結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0217】
電荷輸送層3は、上記構成材料を含有する電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独または2種以上混合して用いられる。また、上記各構成材料の溶解方法としては、公知の方法が使用される。
【0218】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0219】
電荷輸送層3の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下である。
電荷輸送層として本実施形態の表面層材料を使用してもよい。
【0220】
<プロセスカートリッジおよび画像形成装置>
次に、本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、潜像保持体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在であり、前記潜像保持体としての前述の本実施形態に係る電子写真感光体を少なくとも備えた構成である。
【0221】
また、本実施形態の画像形成装置は、前述の本実施形態に係る電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して該表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像を現像剤で現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備えた構成である。なお、本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本実施形態の電子写真感光体であることが望ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
【0222】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図4に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0223】
図4におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11およびクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0224】
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは使用しても、使用しなくてもよい。
【0225】
帯電装置8としては、例えば、導電性または半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0226】
なお、図示しないが、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0227】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0228】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤または二成分系現像剤等を接触または非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
【0229】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、平均形状係数((ML2/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0230】
トナーは、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤および離型剤、やその他更に帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤および離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0231】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0232】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有することが望ましく、更にシリカや帯電制御剤を含有してもよい。
【0233】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0234】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0235】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0236】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0237】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナーおよび磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0238】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子および上記外添剤をヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0239】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、およびそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、または2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0240】
現像装置11に用いるトナーには、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0241】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0242】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0243】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0244】
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0245】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更にそれより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、シリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
【0246】
また、小径無機粒子については表面処理してもよい。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも望ましい。
【0247】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、必要に応じて設定される。
【0248】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0249】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。
【0250】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0251】
図5は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図5に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0252】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有してもよい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。
【0253】
また、本実施形態の画像形成装置においては、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下とすることがより望ましい。また、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
【0254】
更に、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0255】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリアおよびトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。
【0256】
〔有機ELデバイス〕
ついで、有機ELデバイスについて説明する。
本実施形にかかる有機ELデバイスは、前記一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶解した溶解液を用いて形成された膜を有する。
【0257】
即ち、下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える。
【0258】
【化23】
【0259】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【0260】
尚、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有することがより好ましい。
【0261】
有機ELデバイスや、太陽電池として用いる場合には、単層、あるいは積層のいずれの形態でも良く、いずれの層に用いてもよい。
【0262】
有機ELデバイスの例として、有機電界発光素子について図を用いて詳述する。
図7乃至図9は、本実施形態の有機電界発光素子の実施の形態を示す模式的な断面図であり、21は基板、22は陽極、23は正孔注入層、24は正孔輸送層、25は発光層、26は電子輸送層、27は陰極を各々表わすが、素子構成はこれに限るものではない。
【0263】
基板21は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。
合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。このため、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設ける方法も好ましい方法の一つである。
【0264】
基板21上には陽極22が設けられる。陽極22は正孔注入層23への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極22は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック等により構成される。陽極22の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属粒子、ヨウ化銅などの粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物粒子等を適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板21上に塗布することにより陽極22を形成してもよい。陽極22は異なる物質で積層して形成してもよい。
陽極22の厚みは、必要とする透明性により異なるが、一般には透明性が高いほど好ましいため、可視光の透過率を通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合厚みは、通常10nm以上1000nm以下、好ましくは20nm以上500nm以下である。
【0265】
端面からのレーザー発振等の目的および両電極間で反射させるなどの目的で、金属蒸着膜等を設ける場合など不透明でよい場合は陽極22には、基板21に用いたものを用いてもよい。また、上記の陽極22の上に異なる導電材料を積層してもよい。
【0266】
本実施形態の代表例として挙げた図7乃至図9の素子構造においては、陽極22の上に正孔注入層23が設けられる。
【0267】
本実施形態において、一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂を用いて形成される層は、蒸着、あるいは塗布法により形成され、硬化させる場合には塗布法が好ましい。例えば、正孔注入層として形成する場合を例に説明する。
一般式(1)で示される電荷輸送性ポリエステル樹脂の定められた量に、必要であれば正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤、連鎖重合性モノマー、オリゴマーなどを加えてもよい。末端にアルコキシシリル基を有する電荷輸送材を用いることも好ましく、種々の目的で他のシランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤などを添加してもよい。これらを溶解した塗布溶液を所望の濃度に調製し、スピン塗布法やディップ塗布法などの方法により陽極22上に塗布し、乾燥して正孔注入層23を形成する。
このようにして形成される正孔注入層23の膜厚は、通常5nm以上3000nm以下、好ましくは10nm以上2000nm以下である。
【0268】
正孔注入層23の上には発光層25が設けられる。発光層25は、電界を与えられた電極間において陰極27から注入された電子と正孔注入層23から輸送された正孔を効率よく再結合し、かつ、再結合により効率よく発光する材料から形成される。この条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体等が挙げられる。
【0269】
これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法や塗布法により正孔注入層23上に積層形成される。塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態においては、下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
【0270】
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザ用蛍光色素をドープすること(J.Appl.Phys.,65巻,3610頁,1989年)等が行われている。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体(特開平4−335087号公報)、キナクリドン誘導体(特開平5−70773号公報)、ペリレン等の縮合多環芳香族環(特開平5−198377号公報)を、ホスト材料に対して0.1質量%以上10質量%以下ドープする。発光層のホスト材料に上記ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の蛍光色素をドープする方法としては、共蒸着による方法と蒸着源を予め定められた濃度で混合しておく方法がある。
高分子系の発光層材料としては、先に挙げたポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の高分子材料や、ポリビニルカルバゾール等の高分子に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられる。
【0271】
これらの材料は正孔注入層のごとくスピンコートやディップコート等の方法により正孔注入層23上に塗布して薄膜形成され、塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態において下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
このようにして形成される発光層25の膜厚は、通常10nm以上200nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下である。
【0272】
図8に示すごとく、正孔輸送層24を正孔注入層23と発光層25との間に設けたり、さらには、図9に示すごとく電子輸送層26を発光層25と陰極27との間に設けるなど機能分離型にすることが行われる。図8および図9の機能分離型素子において、正孔輸送層24の材料としては、正孔注入層23からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送し得る材料であることが望まれる。この正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774号)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625号)、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報)、チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報)、スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号公報)、トリアミン化合物(特開平5−239455号公報)、ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報)、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報)、フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報)、ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報)、シラザン化合物(米国特許第4,950,950号公報)、シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報)、ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、2種以上を混合して用いてもよい。上記の化合物以外に、正孔輸送層24の材料としては、ポリビニルカルバゾールやポリシラン、ポリフォスファゼン(特開平5−310949号公報)、ポリアミド(特開平5−310949号公報)、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、トリフェニルアミン骨格を有する高分子(特開平4−133065号公報)、芳香族アミンを含有するポリメタクリレート等の高分子材料が挙げられる。
【0273】
正孔輸送層24は上記の正孔輸送材料を塗布法あるいは真空蒸着法により前記正孔注入層23上に積層することにより形成される。塗布法の場合は、正孔輸送材料の1種または2種以上に、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピン塗布法などの方法により正孔注入層23上に塗布し、乾燥して正孔輸送層24を形成する。塗布法を用いる場合、正孔注入層23を実質的に溶解しない溶剤を用いることが好ましいが、本実施形態において下層が三次元架橋されている場合には、溶剤に対する耐性が高く、溶剤は広範な範囲の中から選択し得る。
【0274】
ここで、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂の添加量は、通常50質量%以下が好ましい。
【0275】
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極22および正孔注入層23が形成された基板21上に正孔輸送層24を形成する。
このようにして形成される正孔輸送層24の膜厚は、通常10nm以上300nm以下、好ましくは30nm以上100nm以下である。
一般には、上記の真空蒸着法がよく用いられる。
【0276】
また、この電子輸送層26に用いられる化合物には、陰極27からの電子注入が容易で、電子の輸送能力がさらに大きいことが要求される。この電子輸送材料としては、既に発光層材料において挙げた8−ヒドロキシキノリンのアルミ錯体、オキサジアゾール誘導体(Appl.Phys.Lett.,55巻,1489頁,1989年)やそれらをポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂に分散した系、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
電子輸送層26の膜厚は、通常5nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上100nm以下である。
【0277】
陰極27は、発光層25に電子を注入する役割を果たす。陰極27として用いられる材料は、前記陽極22に使用される材料が用いられるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極27の膜厚は通常、陽極22の説明において記載した範囲が挙げられる。
【0278】
低仕事関数金属から成る陰極27を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することも有効である。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。さらに、陰極27と発光層25または電子輸送層26の界面にLiF、MgF2、Li2O等の極薄絶縁膜(0.1nm以上5nm以下)を挿入することも有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年)。
【0279】
図7乃至図9は、本実施形態で採用される素子構造の一例であって、本実施形態は何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、図7とは逆の構造、即ち、基板21上に陰極27、発光層25、正孔注入層23、陽極22の順に積層してもよく、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本実施形態の有機電界発光素子を設けてもよい。また、図8および図9に示したものについても、前記各構成層を逆の構造に積層してもよい。さらに樹脂あるいは金属等の材料で封じ、大気や水より保護する封止層を形成することや、素子自体を真空系中で動作させる構造とすることも効果的である。
【実施例】
【0280】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0281】
[実施例1:化合物(II−7)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(D)20g、イタコン酸5.94g、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸水和物0.5g、トルエン200mlを入れ、窒素置換したのち、発生する水をディーンスタークトラップで除去しながら10時間加熱還流した。反応後、炭酸カリウム水溶液で洗浄し、次いで、蒸留水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、15.4gの化合物(II−7)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で15000であった。
得られた化合物(II−7)のIRスペクトルを図10に示す。
【0282】
【化24】
【0283】
[実施例2:化合物(II−29)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(E)20g、イタコン酸3.78g、パラトルエンスルホン酸0.5g、ニトロベンゼン0.1g、トルエン200mlを入れ、窒素置換したのち、発生する水をディーンスタークトラップで除去しながら10時間加熱還流した。反応後、炭酸カリウム水溶液で洗浄し、次いで、蒸留水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、16.9gの化合物(II−29)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で22000であった。
得られた化合物(II−29)のIRスペクトルを図11に示す。
【0284】
【化25】
【0285】
[実施例3:化合物(II−20)の合成]
500mlフラスコに、下記構造式で示される化合物(F)20g、イタコン酸3.90g、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸水和物0.1g、炭酸カリウム4.14g、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを入れ、窒素置換したのち、80℃で10時間加熱した。反応後、トルエン200mlを加え、希塩酸、次いで、水で洗浄した後、メタノール2000ml中に滴下してポリマーを析出させた。メタノールで洗浄したのち、乾燥して、15.9gの化合物(II−20)を得た。GPCで分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で25000であった。
得られた化合物(II−20)のIRスペクトルを図12に示す。
【0286】
【化26】
【0287】
[実施例4]
<感光体の作製>
(下引層の作製)
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン1.0部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛を濾別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部とをメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)45部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0288】
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を、前記下引層上に浸漬塗布し、常温(20℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0289】
(電荷輸送層の作製)
化合物(II−7)10部、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部をクロルベンゼン40部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を突き上げコートにて前記電荷発生層上に塗布し、室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例4の電子写真感光体を作製した。
【0290】
<画質の評価>
上述のようにして作製した電子写真感光体を富士ゼロックス社製、ApeosPort−IV C4470に装着し、低温低湿(8℃、20%RH)および高温高湿(30℃、85%RH)において、以下の評価を連続して行なった。
【0291】
まず低温低湿(8℃、20%RH)環境下で10000枚の画像形成テストを行い、10000枚目の画質評価(下記ゴースト、カブリ、スジ、画像流れ)を実施した。次いで、低温低湿(8℃、20%RH)環境下で24時間放置した後の最初の1枚目の画質について画質評価を行った。
【0292】
この低温低湿環境下での画質評価に続いて、高温高湿(30℃、85%RH)の環境下にて10000枚の画像形成テストを行い、10000枚目の画質評価を実施した。次いで、高温高湿(30℃、85%RH)環境下で24時間放置した後の最初の1枚目の画質について画質評価を行った。
その結果を表2および表3に示した。
【0293】
(ゴースト評価)
ゴーストは、図6(A)に示したGと画像濃度50%の灰色領域を有するパターンのチャートをプリントし、50%の灰色部分にGの文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図6(A)のように良好または軽微である。
B:図6(B)のようにやや目立つ。
C:図6(C)のようにはっきり確認される。
【0294】
(カブリ評価)
カブリ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて白地部のトナーの付着した度合いを目視にて観察し判断した。
A:良好。
B:うっすらとカブリあり。
C:画質上問題となるカブリあり。
【0295】
(スジ評価)
スジ評価は上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:部分的にスジの発生あり。
C:画質上問題となるスジ発生。
【0296】
(画像流れ評価)
画像流れは上述のゴースト評価と同じサンプルを用いて目視にて判断した。
A:良好。
B:連続的にプリントテストしている時は問題ないが、1日(24時間)放置後に発生。
C:連続的にプリントテストしている時にも発生。
【0297】
<残留電位の上昇分の評価>
以下の方法により、残留電位を測定し、プリントテスト前後での残留電位の上昇分評価を行った。富士ゼロックス社製、ApeosPort−IV C4470改造機に電位センサーを取り付け、低温低湿(8℃、20%RH)下でプリントテスト前の残留電位測定を行った。ついで、低温低湿(8℃、20%RH)下で1万枚のプリントテストを行った直後に、同様にして低温低湿(8℃、20%RH)下で電子写真感光体表面の残留電位測定を行った。初期および1万枚プリントテスト後の残留電位との差(1万枚プリントテスト後の残留電位−初期の残留電位)を上昇分とした。
【0298】
<電荷輸送層の磨耗量の評価>
初期の感光体膜厚と、前述した低温低湿(8℃、20%RH)環境下および高温高湿(30℃、85%RH)環境下での画像形成テストを終了した後の膜厚を渦電流測定装置(フィッシャースコープMMS)にて測定し、磨耗量を評価した。
【0299】
[実施例5〜10]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、電荷輸送層の材料を表1のように変え、実施例4と同様に電荷輸送層を作製し、評価した。使用した材料を表1にまとめて示した。
【0300】
[実施例11]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学社製)2部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.2部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で酸素濃度200ppmの窒素下で光照射を行ない、塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え膜厚17μmの表面層を形成して実施例11の感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0301】
[実施例12]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、下記構造式で示される化合物(G)2部、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例12の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0302】
【化27】
【0303】
[実施例13]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。ついで、化合物(II−7)10部、ポリテトラフルオロエチレン粒子(ルブロンL−2、ダイキン工業社製)0.8部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、ナノマイザー(NM2−L200AR−D08、ナノマイザー社製)にて分散したのち、OTazo−15(大塚化学社製、分子量354.4)0.2部を加えて溶解させ、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度200ppmの窒素下で室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚18μmの電荷輸送層を形成して実施例13の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0304】
[実施例14]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。この電荷発生層上に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)40質量部、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン10質量部、及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(PC(Z):粘度平均分子量:6万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解した塗布液を塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0305】
(表面層の作製)
前記化合物(II−20)を10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学社製)3部をモノクロロベンゼン20部、トルエン40部に溶解し、突き上げコートにて電荷輸送層上に塗布した。室温(20℃)で30分風乾した後、酸素濃度20ppmの窒素下で感光体を300rpmの速度で回転させながら照射距離が30mm、電子線加速電圧が90kV、電子線ビーム電流が2mA、電子線照射時間が1.0秒の条件で感光体に電子線を照射した。照射後すぐに、酸素濃度20ppmの窒素下で150℃に加熱し、10分保持して硬化反応を完結させ、膜厚4μmの表面層を形成して実施例14の感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0306】
[実施例15〜18]
実施例14における化合物(II−20)を表1に示すものに変えた以外は実施例14に記載の方法により感光体を作製し、評価を行った。
【0307】
[実施例19]
電荷発生層までは実施例4に記載の方法により作製した。
次いで、化合物(II−7)10部をクロルベンゼン40部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を突き上げコートにて前記電荷発生層上に塗布し、室温(20℃)で30分風乾した後、室温(20℃)から10℃/分の速度で150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱乾燥して、膜厚25μmの電荷輸送層を形成して実施例19の電子写真感光体を作製し、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0308】
[比較例1]
実施例14の電荷輸送層を25μmとし、表面層を形成しないものを比較例1の感光体とし、実施例4に記載の方法により評価を行った。
【0309】
[比較例2]
実施例4おける化合物(II−7)を、下記構造式の化合物(H)に変えた以外は実施例4に記載の方法により感光体を作製し、評価を行った。
【0310】
【化28】
【0311】
[比較例3]
下記構造式の化合物(I)100質量部、グリシジルメタクリレート100質量部、アゾビスイソブチロニトリル2質量部、トルエン460質量部を3つ口フラスコに仕込み、室温で30分間窒素置換した。75℃に加熱して7時間反応させた後、トルエン200質量部で希釈して反応を終了させた。この反応液にアクリル酸28質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4質量部、トリフェニルホスフィン1質量部を加え90℃で7時間反応させた後、トルエン2000質量部で希釈しメタノール15000質量部に注入して析出させた。このポリマーをろ過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して特開2005−2291号公報実施例1記載の反応性電荷輸送性ポリマーを205質量部得た(P−1)。GPCでのポリスチレン換算分子量Mwは18000であった。実施例14の化合物(II−20)の代わりにこの反応性電荷輸送性ポリマーを用いた以外は実施例14と同様にして比較例3の感光体を作製した。
【0312】
【化29】
【0313】
【表1】
【0314】
【表2】
【0315】
【表3】
【0316】
上記表2および表3に示すように、実施例の電子写真感光体は、長期間に渡って繰り返し使用後における画質の低下が抑えられている。
【0317】
[実施例20]
<有機EL素子の作製>
厚さ150nmのITO膜を設けたガラス基板を、プラズマ洗浄機(サムコインターナショナル社製、BP1)を用い、酸素プラズマにて30秒間洗浄した。
前記化合物(II−7)を10部、OTazo−15(大塚化学、分子量354.4)0.2部をジクロロメタン50部に溶解した溶液を、回転数300rpmでスピンコートしたのち、酸素濃度150ppmの窒素下で160℃で1時間加熱し、硬化することにより、膜厚400nm(触針膜厚計にて測定)の正孔注入層を形成した。
得られた硬化膜(正孔注入層)はトルエンに室温および50℃にて10分浸漬しても溶解せず、溶剤、および、熱に対して安定なものであった。
【0318】
次に、この正孔注入層上に、発光層の材料としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を50nmの厚さに真空蒸着したのち、マグネシウム・銀合金陰極を200nmの厚さに蒸着し、有機EL素子を作製した。
【0319】
<評価>
この有機EL素子のITO電極を陽極とし、マグネシウム・銀合金電極を陰極として、直流7Vを印加して、電流密度を以下の方法により求めるとともに、輝度を以下の方法により測定した。さらに、1000時間動作後の輝度を以下の方法により測定し、その結果を表4に示す。
【0320】
尚、電流密度、電圧、輝度は、測定装置として有機EL発光効率測定装置(東京インスツルメンツ社製)を用い、且つ測定条件を25℃に調整して測定した。
【0321】
また、有機EL素子は、ディスプレイやレーザーに利用する場合には、高電流注入が必要となる。したがって、印加電圧7Vでの電流密度と輝度を測定した。その結果を表4に示す。また、印加電圧7Vで1000時間駆動後の輝度を測定し、表4に示す。
【0322】
[実施例21−29]
実施例20における化合物(II−7)を表4に示す化合物に変えた以外は実施例20に記載の方法により有機EL素子を作製し、評価した。その結果を表4に示す。
また、これらの実施例における硬化膜(正孔注入層)は、トルエンに室温および50℃にて10分浸漬しても溶解せず、溶剤、および、熱に対して安定なものであった。
【0323】
[比較例4]
実施例20における化合物(II−7)を用いて形成した正孔注入層に代えて、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を膜厚400nmで真空蒸着した正孔注入層を適用した以外は実施例20に記載の方法により有機EL素子を作製し、評価した。結果を表4に示す
【0324】
【表4】
【0325】
上記表4に示すように、実施例の有機EL素子は、長期に渡って安定した発光特性が得られる。
【符号の説明】
【0326】
1…下引層、2…電荷発生層、3…電荷輸送層、4…導電性基体、5…保護層、6…単層型感光層、7A,7B,7C,7…電子写真感光体、8…帯電装置、9…露光装置、11…現像装置、13…クリーニング装置、14…潤滑材、21…基板、22…陽極、23…正孔注入層、24…正孔輸送層、25…発光層、26…電子輸送層、27…陰極、40…転写装置、50…中間転写体、100…画像形成装置、120…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化1】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)における前記Aが正孔輸送性を有する2価の有機基である請求項1に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記一般式(1)における前記Aが、下記一般式(2)で示される基である請求項1または請求項2に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化2】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【請求項4】
前記一般式(2)における前記Xが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基を表す請求項3に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基である請求項3または請求項4に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化3】
【請求項6】
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(B)から選択される2価の有機基である請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化4】
【請求項7】
請求項1に規定される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解した電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える光電変換デバイス。
【化5】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【請求項9】
前記膜が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項8に記載の光電変換デバイス。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備える電子写真感光体。
【化6】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【請求項11】
前記感光層が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項1】
下記一般式(1)で表される電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化1】
[前記一般式(1)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)における前記Aが正孔輸送性を有する2価の有機基である請求項1に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記一般式(1)における前記Aが、下記一般式(2)で示される基である請求項1または請求項2に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化2】
[前記一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、置換または未置換のアリール基を、Xは置換または未置換の2価の有機基を、kおよびmはそれぞれ独立に0または1を示す。]
【請求項4】
前記一般式(2)における前記Xが、置換または未置換の2価の芳香族基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素基、置換または未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合芳香族炭化水素基、或いは置換または未置換の2価の芳香族複素環基を表す請求項3に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(A)から選択される2価の有機基である請求項3または請求項4に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化3】
【請求項6】
前記一般式(2)における前記Xが、以下に示す群(B)から選択される2価の有機基である請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の電荷輸送性ポリエステル樹脂。
【化4】
【請求項7】
請求項1に規定される電荷輸送性ポリエステル樹脂が溶媒中に溶解した電荷輸送性ポリエステル樹脂溶解液。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する膜を備える光電変換デバイス。
【化5】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【請求項9】
前記膜が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項8に記載の光電変換デバイス。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される構造を部分構造として有するポリエステル重合体、または下記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する感光層を備える電子写真感光体。
【化6】
[前記一般式(1)および一般式(1’)中、Aは電荷輸送性を有する2価の有機基を、Tは炭素数1以上10以下の直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を、nは5以上5000以下の整数を示す。また、一般式(1’)では[*]の位置で架橋重合していることを表す。]
【請求項11】
前記感光層が、前記一般式(1’)で表される構造を部分構造として有するポリエステル架橋重合体を含有する請求項10に記載の電子写真感光体。
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−73015(P2013−73015A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211942(P2011−211942)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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